説明

溶接検査装置

【課題】多様な仕様の強度部品の溶接状態を、工場内で全品検査することを現実的に可能とする簡便でコンパクトな構成の溶接検査装置を提供する。
【解決手段】溶接検査装置1の検査部30は、金属製のプレス成形品に対して撃力を印加する打撃部材104、打撃部材に駆動力を印加する駆動機構108、及び駆動機構による駆動力の印加方向とは逆向きに打撃部材を付勢する付勢部材110を有する打撃装置と、打撃部材により打撃されたプレス成形品から発生する音波が入力されるマイクロホン120と、マイクロホンに入力された音波の波形特性に応じてプレス成形品の溶接状態を検出する検出装置130と、を備える。ここで、打撃部材が、駆動機構による駆動力が切られ、かつ、付勢部材により印加方向とは逆向きに付勢された状態で、プレス成形品に撃力を印加すると共に、プレス成形品に撃力を印加した後は、付勢部材により印加方向とは逆向きに強制的に引き戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接検査装置に関し、特に、自動車等の車両の強度部品の溶接状態を、それから発せられる音波を用いて検査する溶接検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気部品等の半田の接合状態や機械部品等の溶接の溶接状態を非破壊で検査する検査装置が提案されてきている。
【0003】
かかる非破壊の検査装置には、検査対象部品に振動を与えることにより検査対象部品から発生する音波や振動を用いて、その半田の接合状態や溶接の溶接状態を非破壊で検査する構成を有するものがある。
【0004】
かかる状況下で、特許文献1は、音響変換器あるいは振動器7を導線2の先端に配置すると共に、音響の受信装置8を導線2の根元端に配置して、種々の周波数における音響インピーダンスと既知の半田接続部の音響インピーダンスと比較することにより、検査対象の半田接続部の検査を行う構成を開示する。
【0005】
また、特許文献2は、多点溶接品に対する溶接状態の判定装置に関し、自動車のドアTの加振点Vを加振するインパルスハンマー1と、計測点M1〜M7の振動を検出する複数の加速度ピックアップ2と、加振・振動検出部3A、FFT処理部3B、データ記憶部3C、OK/NG判定部3D及び表示部4を含む制御・解析手段5と、を備えた構成を開示する。
【0006】
また、特許文献3は、計測対象に一定の衝撃力を与えるインパルスハンマー装置に関し、図3及び図4では、移動可能に配置された剛体のハンマー1、ハンマー1の弾性式の移動復元手段である戻しばね14と、ハンマー1に移動力を与える弾性式の駆動手段である回転駆動ばね21と、を備えた構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公表昭56−501176号公報
【特許文献2】特開平9−171007号公報
【特許文献3】特開平10−185754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1の構成においては、検査対象の音響インピーダンスを所定の音響インピーダンスと比較することにより、検査対象の半田接続部の検査を行う構成が開示されてはいるが、自動車等の車両の強度部品の溶接状態を検査するための具体的な開示や示唆は全くなされていない。
【0009】
また、特許文献2においては、自動車のドアにおける多点溶接の溶接状態の判定を行う構成が開示されてはいるが、複数の加速度ピックアップを溶接状態の検査の都度に自動車のドアに脱着する必要があり、その構成は煩雑である。
【0010】
また、特許文献3においては、弾性式の駆動手段及び弾性式の移動復元手段を利用して、計測対象に印加する衝撃力を一定にすることを企図した構成が開示されてはいるが、自
動車等の車両の強度部品の溶接状態を検査するための具体的な開示や示唆は全くなされていない。
【0011】
特に、自動車等の車両の強度部品、例えば自動車のシャシー部品のように多様な仕様の強度部品の溶接状態を工場内で全品検査する場合には、高効率と高精度とを両立させた溶接状態の非破壊検査が求められるが、特許文献1から特許文献3の構成においては、そのための具体的な開示や示唆は全くなされていない。
【0012】
従って、現状では、多様な仕様で量産される強度部品の溶接状態を、工場内で正確に全品検査することを現実的に可能とする新規な構成の実現が待望された状況にあるといえる。
【0013】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、自動車等の車両の強度部品、例えば自動車のシャシー部品のように多様な仕様で量産される強度部品の溶接状態を、工場内で正確に全品検査することを現実的に可能とする簡便でコンパクトな構成の溶接検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成すべく、本発明の第1の局面における溶接検査装置は、金属製の第1の部材と金属製の第2の部材とが溶接されて形成されたプレス成形品の溶接状態を、前記プレス成形品からの音波を利用して検査する検査部と、前記検査部に対して前記プレス成形品の搬送方向の上流側に設けられて、前記プレス成形品を前記検査部に向かって導入する導入部と、前記検査部に対して前記搬送方向の下流側に設けられて、前記検査部から送出される前記プレス成形品を前記検査部が検査した前記プレス成形品の溶接状態に応じて仕分けする仕分け部と、を備え、前記検査部は、前記プレス成形品に対して撃力を印加する打撃部材、前記打撃部材が前記プレス成形品に前記撃力を印加するように前記打撃部材に駆動力を印加する駆動機構、及び前記駆動機構による前記駆動力の印加方向とは逆向きに前記打撃部材を付勢する付勢部材を有する打撃装置と、前記打撃部材により印加された前記撃力により前記プレス成形品から発生する音波が入力されるマイクロホンと、前記マイクロホンに入力された前記音波の波形特性に応じて前記プレス成形品の前記溶接状態を検出する検出装置と、を備え、前記打撃部材は、前記駆動機構による前記駆動力が切られ、かつ、前記付勢部材により前記印加方向とは逆向きに付勢された状態で、前記プレス成形品に前記撃力を印加すると共に、前記プレス成形品に前記撃力を印加した後は、前記付勢部材により前記印加方向とは逆向きに強制的に引き戻される構成を有するものである。
【0015】
また、本発明は、かかる第1の局面に加え、前記検査部は、更に、前記プレス成形品を載置する載置部材を備え、前記載置部材は、前記打撃部材が前記プレス成形品に前記撃力を印加する印加方向に関して、前記プレス成形品を前記載置部材と前記プレス成形品との間で生じる摩擦力のみにより保持することを第2の局面とする。
【0016】
また、本発明は、かかる第1又は第2の局面に加え、前記導入部は、前記検査部に向かって張り出すように傾斜して延在し前記プレス成形品を導入する導入経路部及び前記導入経路部に対して前記搬送方向の前記下流側に設けられて上下方向に延在し前記プレス成形品を貯留する貯留経路部を有する搬入経路部材と、前記貯留経路部に貯留された前記プレス成形品を1個毎前記経路部材の下部に落下させるように前記プレス成形品に対して進退自在である保持部材と、を備えることを第3の局面とする。
【0017】
また、本発明は、かかる第1から第3のいずれかの局面に加え、前記導入部に対して前
記搬送方向の前記上流側には、前記プレス成形品を冷却する冷却部が設けられることを第4の局面とする。
【0018】
また、本発明は、かかる第1から第4のいずれかの局面に加え、前記検査部と前記仕分け部との間には、前記検査部が検出した前記プレス成形品の前記溶接状態に応じて前記プレス成形品に刻印を施す刻印部が設けられることを第5の局面とする。
【0019】
また、本発明は、かかる第1から第5のいずれかの局面に加え、前記導入部と前記検査部との間には、前記プレス成形品を撮像して前記プレス成形品の仕様を検出する撮像部が設けられることを第6の局面とする。
【0020】
また、本発明は、かかる第6の局面に加え、前記導入部は、更に、前記撮像部に対して前記プレス成形品の姿勢を変更する姿勢変更部材を備えることを第7の局面とする。
【0021】
また、本発明は、かかる第6又は第7の局面に加え、前記仕分け部は、配置位置が固定された貯留箱と、前記貯留箱の上方領域に対して進退自在な搬出経路部材と、を備え、前記搬出経路部材は、前記検査部が前記プレス成形品における前記溶接状態が不合格であると検出した場合に、前記貯留箱の前記上方領域から退いて開放し前記プレス成形品を前記貯留箱に落下自在とし、前記検査部が前記プレス成形品における前記溶接状態が合格であると検出した場合に、前記貯留箱の前記上方領域に進入して塞ぎ前記撮像部が検出した前記仕様に応じて前記プレス成形品を搬出自在であることを第8の局面とする。
【0022】
また、本発明は、かかる第8の局面に加え、前記仕分け部は、更に、前記貯留箱又は前記搬出経路部材に対して前記プレス成形品を案内自在な案内部材を備えることを第9の局面とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の局面における構成によれば、金属製のプレス成形品の溶接状態をプレス成形品からの音波を利用して検査する検査部と、検査部に対してプレス成形品の搬送方向の上流側に設けられてプレス成形品を検査部に向かって導入する導入部と、検査部に対して搬送方向の下流側に設けられて検査部から送出されるプレス成形品を検査部が検査したプレス成形品の溶接状態に応じて仕分けする仕分け部と、が設けられ、更にかかる検査部が、プレス成形品に対して撃力を印加する打撃部材、打撃部材がプレス成形品に撃力を印加するように打撃部材に駆動力を印加する駆動機構、及び駆動機構による駆動力の印加方向とは逆向きに打撃部材を付勢する付勢部材を有する打撃装置と、打撃部材により印加された撃力によりプレス成形品から発生する音波が入力されるマイクロホンと、マイクロホンに入力された音波の波形特性に応じてプレス成形品の溶接状態を検出する検出装置と、を備える。ここで、打撃部材が駆動機構による駆動力が切られ、かつ、付勢部材により印加方向とは逆向きに付勢された状態で、プレス成形品に撃力を印加すると共に、プレス成形品に撃力を印加した後は、打撃部材が付勢部材により印加方向とは逆向きに強制的に引き戻される構成が採用される。以上の構成により、簡便でコンパクトな構成の溶接検査装置を得ながら、多様な仕様で量産される強度部品であるプレス成形品の溶接状態を、工場内で正確に全品検査することを現実的に可能とすることができる。
【0024】
また、本発明の第2の局面における構成によれば、検査部が、更に、プレス成形品を載置する載置部材を備え、載置部材は、打撃部材がプレス成形品に撃力を印加する印加方向に関して、プレス成形品を載置部材とプレス成形品との間で生じる摩擦力のみにより保持することにより、多様な仕様で量産されるプレス成形品の溶接状態を、工場内でより正確に全品検査することができる。
【0025】
また、本発明の第3の局面における構成によれば、導入部が、検査部に向かって張り出すように傾斜して延在しプレス成形品を導入する導入経路部及び導入経路部に対して搬送方向の下流側に設けられて上下方向に延在しプレス成形品を貯留する貯留経路部を有する搬入経路部材と、貯留経路部に貯留されたプレス成形品を1個毎経路部材の下部に落下させるようにプレス成形品に対して進退自在である保持部材と、を備えることにより、溶接検査装置の全高及び全長を低減すると共に保持部材にかかる荷重を抑制した態様で、プレス成形品を1個毎確実に検査部に送りながら、その溶接状態を、工場内でより正確に全品検査することができる。
【0026】
また、本発明の第4の局面における構成によれば、 導入部に対して搬送方向の上流側には、プレス成形品を冷却する冷却部が設けられることにより、プレス成形品を1個毎確実に検査部に送りながら、その溶接状態を、工場内でより正確に再現性よく全品検査することができる。
【0027】
また、本発明の第5の局面における構成によれば、検査部と仕分け部との間に、検査部が検出したプレス成形品の溶接状態に応じてプレス成形品に刻印を施す刻印部が設けられることにより、プレス成形品の溶接状態が目視でも確認できて、その溶接状態の検査をより正確にすることができる。
【0028】
また、本発明の第6の局面における構成によれば、導入部と検査部との間には、プレス成形品を撮像してプレス成形品の仕様を検出する撮像部が設けられることにより、プレス成形品の各種仕様を判別でき、その溶接状態の検査をかかる仕様に対応してより正確にすることができる。
【0029】
また、本発明の第7の局面における構成によれば、更に、撮像部に対してプレス成形品の姿勢を変更する姿勢変更部材を備えることにより、プレス成形品の各種仕様をより正確に判別でき、その溶接状態の検査をかかる仕様に対応してより正確にすることができる。
【0030】
また、本発明の第8の局面における構成によれば、仕分け部が、配置位置が固定された貯留箱と、貯留箱の上方領域に対して進退自在な搬出経路部材と、を備え、搬出経路部材が、検査部がプレス成形品における溶接状態が不合格であると検出した場合に、貯留箱の上方領域から退いて開放しプレス成形品を貯留箱に落下自在とし、検査部がプレス成形品における溶接状態が合格であると検出した場合に、貯留箱の上方領域に進入して塞ぎ撮像部が検出した仕様に応じてプレス成形品を搬出自在であることにより、溶接状態が不合格であると検出されたプレス成形品を確実に貯留箱内に留めながら、溶接状態が合格であると検出されたプレス成形品を確実にその仕様に応じて外部へと搬出することができる。
【0031】
また、本発明の第9の局面における構成によれば、仕分け部が、更に、貯留箱又は搬出経路部材に対してプレス成形品を案内自在な案内部材を備えることにより、溶接状態が不合格であると検出されたプレス成形品をより確実に貯留箱内に留めながら、溶接状態が合格であると検出されたプレス成形品をより確実にその仕様に応じて外部へと搬出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態における溶接検査装置の構成を示す概略斜視図であり、図1(b)は、本実施形態における溶接検査装置の冷却部の構成を示す模式的な側面図である。
【図2】図2は、本実施形態における溶接検査装置の構成を示す部分断面図であり、図1(a)のA−A部分断面図に相当する。
【図3】図3(a)は、本実施形態における溶接検査装置の検査部の要部を示す部分断面を含んだ平面図であり、かかる検査部に載置されたプレス成形品の構成を示す平面図を含み、図2の検査部の部分を上方から下方に見た図に相当する図である。また、図3(b)は、図3(a)のB−B部分断面図に相当する。
【図4】図4は、本実施形態における溶接検査装置の検査制御装置に関連するブロックである。
【図5】図5は、本実施形態における溶接検査装置の導入部の動作を主として示す部分断面図であり、図5(a)から図5(c)へと経時的に示している。
【図6】図6は、本実施形態における溶接検査装置の導入部よりも搬送方向の下流側に配置された構成要素の動作を主として示す部分断面図であり、図6(a)から図6(c)へと経時的に示している。
【図7】図7は、本実施形態における溶接検査装置の導入部よりも搬送方向の下流側に配置された構成要素の動作を図6に引き続き主として示す部分断面図であり、図7(a)から図7(b)へと経時的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における溶接検査装置につき、詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、z軸に平行な方向が、鉛直方向であると共に、適宜、z軸の正方向を上方、z軸の負方向を下方というものとする。
【0034】
まず、本実施形態における溶接検査装置の構成につき、図1から図4を参照して、詳細に説明する。
【0035】
図1(a)は、本実施形態における溶接検査装置の構成を示す概略斜視図であり、図1(b)は、本実施形態における溶接検査装置の冷却部の構成を示す模式的な側面図である。図2は、本実施形態における溶接検査装置の構成を示す部分断面図であり、図1(a)のA−A部分断面図に相当する。図3(a)は、本実施形態における溶接検査装置の検査部の要部を示す部分断面を含んだ平面図であり、かかる検査部に載置されたプレス成形品の構成を示す平面図を含み、図2の検査部の部分を上方から下方に見た図に相当する図である。また、図3(b)は、図3(a)のB−B部分断面図に相当する。また、図4は、本実施形態における溶接検査装置の検査制御装置に関連するブロックである。
【0036】
図1から図4に示すように、溶接検査装置1は、プレス成形品10を搬送方向Dに沿って順次搬送しながらプレス成形品10の溶接状態を検査するものである。かかる溶接検査装置1は、支持台20上に検査部30を備え、更に、検査部30に対して搬送方向Dの上流側に導入部40及び撮像部50を備えると共に、検査部30に対して搬送方向Dの下流側に刻印部60及び仕分け部70を備える。ここで、搬送方向Dの上流側から下流側に向かって、導入部40、撮像部50、検査部30、刻印部60及び仕分け部70の順で配設されることになる。また更に、溶接検査装置1は、導入部40に対して搬送方向Dの上流側に冷却部80を備えていることも好ましい。かかる冷却部80は、導入部40と一体に設けられていてもよいし、別体に設けられていてもよい。なお、プレス成形品10の搬送方向Dは、導入部40においては一部斜行しながら上下方向に延在し、撮像部50、検査部30及び刻印部60においては、x軸の方向に延在し、仕分け部70においては、概ねプレス成形品10が落下する方向に相当する。
【0037】
具体的には、検査部30は、支持台20上に固設されたケース102、及びケース102に相対移動自在に支持されると共にその一端104aがプレス成形品10をy軸の負方向に打撃自在であるようにケース102から突出して設けられた鉄製で円柱状の打撃部材104を有する打撃装置100を備える。
【0038】
ここで、かかるプレス成形品10は、特に図3(a)及び図3(b)にその詳細を示すように、ロッド12の両端にカラー14を各々固設した構成を有し、各カラー14は、ロッド12に対して溶接部16で溶接されている。なお、溶接検査装置1の導入部40、撮像部50、検査部30及び刻印部60において、ロッド12の延在軸は、y軸の方向に整列される。また、かかるプレス成形品10の構成は、限定的なものではなく、任意の箇所に任意の個数の溶接部を有して、溶接検査装置1で搬送自在なような構成であればよい。また、溶接検査装置1の構成も、プレス成形品10の構成に応じて、同様な機能を発揮するように適宜適応化可能である。更に、プレス成形品10は、その仕向地等に対応した各種の仕様を有していてもよい。
【0039】
より詳しくは、打撃装置100は、更に、図示を省略する支持部材を介してケース102に固設され打撃部材104の周囲に設けられた樹脂製のボビン106、ボビン106に装着されて打撃部材104の周りに巻回されたエナメル線である励磁コイル108、及び打撃部材104の他端104bとケース102との間に懸架されて打撃部材104に対してy軸の正方向に常時引っ張り力を印加する引っ張りスプリング110を有する。かかるボビン106に巻回された励磁コイル108は、打撃部材104の一端104aがプレス成形品10の一方のカラー14を打撃するように駆動する駆動機構である。なお、打撃部材104、ボビン106及び励磁コイル108の各々の材質は、限定的なものではなく、実用上充分な耐久性を有しながら打撃部材104を励磁して駆動可能な材質の組み合わせであればよい。
【0040】
ここで、打撃部材104を駆動する駆動機構による駆動力は、打撃部材104の一端104aがプレス成形品10の一方のカラー14を打撃するように、打撃部材104に対して一旦印加状態とされる一方で、その後一端104aがかかるカラー14に当接する前に迅速に切られて、打撃部材104に対して非印加状態とされることが必要である。また、打撃部材104には、引っ張りスプリング110により打撃部材104をプレス成形品10の一方のカラー14から遠ざけようとする引っ張り力が常時印加されているものであるが、その初期位置はケース102に固設された図示を省略するストッパにより規定される。よって、打撃部材104の一端104aがプレス成形品10の一方のカラー14を一旦打撃した後には、打撃部材104は、かかる一方のカラー14を不要に二度打ちすることなくそれから遠ざかってストッパに当接し、その初期位置に復帰することになる。なお、打撃部材104を駆動する駆動力は、かかる短時間の迅速な印加状態・非印加状態の切り替えが可能であるものであれば、励磁力以外の駆動力であってもかまわない。
【0041】
更に、検査部30は、打撃部材104により打撃されるプレス成形品10のカラー14の近傍に配置されると共に打撃部材104により打撃されたプレス成形品10から発生する音波が入力されるマイクロホン120、及びマイクロホン120に入力された音波に対応してマイクロホン120から出力される電気信号が入力される音波検出装置130を備える。かかる音波検出装置130は、図示を省略する演算処理装置やメモリ等を内蔵して、典型的には、マイクロホン120から入力された電気信号から得られる波形スペクトルパターンと、内蔵されるメモリに予め記憶された所定の波形スペクトルパターンと、を比較して、それらのピーク値等の特徴点の一致度や近似度を判定することにより、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態を検出自在である。つまり、かかるマイクロホン120から入力された電気信号の波形スペクトルパターンは、マイクロホン120から入力された電気信号の所定時刻における周波数分析により得られ、所定の各周波数に対する電圧値の対応関係で規定されて、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態を反映自在である。また、メモリに予め記憶された所定の波形スペクトルパターンは、プレス成形品10が各種仕様を有する場合には、かかる各種仕様に対応して設定されているものである。
【0042】
ここで、検査部30は、更に、支持台20上にy軸方向に離間して固設されてプレス成
形品10のロッド12をその両端部で対応して載置自在な2個の載置部材140を備える。かかる載置部材140は、ロッド12を挟持すべくx−z平面と平行な断面においてV字状の傾斜保持面142を有し、プレス成形品10は、支持台20側に対しては、載置部材140の傾斜保持面142のみに接触する。
【0043】
つまり、プレス成形品10は、そのロッド12において載置部材140の断面V字状の傾斜保持面142のみにより接触されて支持されている。よって、プレス成形品10が打撃部材104の一端104aでy軸の負方向に打撃される際には、プレス成形品10は、ロッド12と傾斜保持面142との間の静止摩擦力のみによって打撃部材104から印加される撃力に抗することになり、かつその位置を実質動かされることがないため、載置部材140の残余の部分に不要に当接して干渉音等の雑音を発することがない。なお、プレス成形品10に対する載置部材140の接触面は、ロッド12の形状に応じて接触面積を必要充分に設定できるように適宜設定可能であるが、かかる接触面は、打撃部材104から印加される撃力により充分に抗すべく接触面積を増大することができるように、ロッド12の形状に倣った面形状、例えばロッド12が円筒状である場合にはその外周面に当接するような円周面であることがより好ましい。
【0044】
更に、検査部30は、支柱22に固設されたカバー駆動装置160により上下移動自在に設けられたカバー150を備える。かかるカバー150は、打撃部材104がプレス成形品10を打撃する際にはカバー駆動装置160により降下されてプレス成形品10を覆うものである。その際に打撃部材104及びマイクロホン120が不要にカバー150に干渉しないように、カバー150は、打撃部材104及びマイクロホン120を逃げる切欠き152を有する。
【0045】
次に、導入部40は、支持台20上に固設されてその内部をプレス成形品10が搬送方向Dに沿って移動自在なように一部斜行しながら上下方向に延在する経路部材200を備える。かかる経路部材200は、検査部30に向かって張り出すように傾斜して延在しその上端からプレス成形品10を順次導入する導入経路部202、及び導入経路部202の下方に連続して設けられて上下方向に延在しプレス成形品10を一旦貯留する貯留経路部204を有する。
【0046】
ここで、導入部40は、更に、貯留経路部204に対応して、上方保持部材駆動装置210によりx軸の方向に進退自在に駆動される上方保持部材212、上方保持部材212の下方に配置されて下方保持部材駆動装置214によりx軸の方向に進退自在に駆動される下方保持部材216、及び支持台20上にy軸方向に離間して固設されプレス成形品10のロッド12をその両端部で対応して載置自在な2個の載置部材220を備える。かかる上方保持部材212及び下方保持部材216が協働して進退移動しながらプレス成形品10の位置を操作することにより、貯留経路部204に貯留されたプレス成形品10を1個毎貯留経路部204の下方にその自重で落下させて載置部材220上に載置自在である。この際、導入経路部202が、検査部30に向かって張り出すように傾斜して延在しているため、溶接検査装置1全体の高さ及び長さを低く抑えながら、導入経路部202内に互いに当接して留まる複数のプレス成形品10の重量に起因する上方保持部材212に印加される荷重を抑制し得て、上方保持部材212に要求される部材強度を抑制する。なお、上方保持部材駆動装置210及び下方保持部材駆動装置214は、共に支持台20に固設されている。
【0047】
更に、導入部40は、載置部材220に対して搬送方向Dの下流側で支持台20上にy軸方向に離間して固設された2個の姿勢変更部材230を備える。かかる姿勢変更部材230は、その縦壁232にプレス成形品10のカラー14を各々当接させることにより、プレス成形品10の姿勢を撮像部50の撮像に適するように変更自在である。
【0048】
ここで、導入部40の経路部材200の前段、つまり導入部40に対して搬送方向Dの上流側には、プレス成形品10の温度を冷却自在な冷却部80が配設されることが好ましい。かかる冷却部80は、プレス成形品10が、導入部40に対して導入される以前にロッド12の両端にカラー14が各々溶接されて数百℃程度の高温になることを考慮して、数十℃程度の低温になるまで冷却するように構成されており、典型的には、複数のプレス成形品10を支持する支持部材82、及びこれらのプレス成形品10を強制空冷自在なファン84を備える。もちろん冷却に要する時間が比較的長時間であってもよい場合には、ファン84を省略して自然空冷をしてもよいし、冷却に要する時間が比較的短時間である場合には、単独に又はファン84に加えてより強力に強制冷却が可能な図示を省略する熱交換器を配設してもよい。
【0049】
このように導入部40の経路部材200の前段に冷却部80設けて、プレス成形品10の温度を数十℃程度まで低下させるのは、打撃部材104により打撃されてプレス成形品10から発生する音波の周波数特性を安定化させて、その溶接状態を正確に再現性よく検出するためである。また、音波検出装置130のメモリに予め記憶された所定の波形スペクトルパターンは、かかる温度レベルに対応して設定されているものである。
【0050】
次に、撮像部50は、姿勢変更部材230により姿勢が変更されて搬送されてきたプレス成形品10の外形を所要の解像度で静止画として撮像自在な典型的にはデジタルスチルカメラである撮像装置300、支持台20上にy軸方向に離間して固設されプレス成形品10のロッド12をその両端部で対応して載置自在な2個の載置部材310、及び図示を省略する演算処理装置やメモリ等を内蔵して撮像装置300から出力される電気信号が入力される画像検出装置320を備える。なお、載置部材310に加えて、プレス成形品10の軸方向を規制して保持する保持部材を設けてもよい。
【0051】
つまり、撮像装置300は、載置部材310に載置されたプレス成形品10を撮像して、プレス成形品10の輪郭形状等の形状に関する情報を反映自在な電気信号を画像検出装置320に送出する。画像検出装置320は、撮像装置300から入力された電気信号からプレス成形品10の輪郭形状等の形状に関する画像情報を抽出して、その抽出した画像情報と、内蔵したメモリに予め記憶された所定の画像情報と、を比較して、それらの輪郭等の特徴点の一致度や近似度を判定することにより、プレス成形品10の各種仕様を検出自在である。この際、載置部材310に載置されたプレス成形品10の姿勢は、姿勢変更部材230により、撮像装置300がプレス成形品10の各種仕様に対応した輪郭形状等の形状を撮像するに適合した姿勢になるように変更されている。
【0052】
次に、刻印部60は、支持台20上に固設された刻印駆動装置400、刻印駆動装置400により駆動される刻印部材402、及び支持台20上にy軸方向に離間されて固設されプレス成形品10のロッド12をその両端部で対応して載置自在な2個の載置部材410を備える。なお、載置部材410に加えて、プレス成形品10の軸方向を規制して保持する保持部材を設けてもよい。
【0053】
ここで、刻印駆動装置400は、音波検出装置130が検出したプレス成形品10の溶接部16の溶接状態に対応して刻印部材402を駆動し、刻印部材402は、その駆動に応じた刻印をプレス成形品10の一方のカラー14に施す。かかる刻印部材402の施す刻印は、典型的には、溶接部16の溶接状態の合格・不合格に応じた放電式刻印である。なお、かかる刻印部材402の施す刻印は、更に、画像検出装置320が検出したプレス成形品10の仕様を単独で又は溶接部16の溶接状態の合格・不合格と組み合わせて刻印するものであってもよく、その方式も、放電式刻印以外のインクジェット式の刻印等であってもよい。
【0054】
次に、仕分け部70は、載置部材410に対して搬送方向Dの下流側で支持台20上にy軸方向に離間して固設された2個の案内部材500、支持台20に固設された搬出駆動機構510、搬出駆動機構510により各々駆動される第1の搬出経路部材520、第2の搬出経路部材522及び第3の搬出経路部材524、並びに溶接部16の溶接状態が不合格であると検出されたプレス成形品10を一旦貯留する貯留箱530を備える。かかる案内部材500は、その傾斜案内面502にプレス成形品10のロッド12を摺接させながら滑落させることにより、プレス成形品10を第1の搬出経路部材520又は貯留箱530に案内自在である。また、貯留箱530は、第2の搬出経路部材522及び第3の搬出経路部材524よりもx軸の方向において案内部材500に近接し固定して配置されている。
【0055】
ここで、搬出駆動機構510は、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態が不合格であると検出された場合には、第1の搬出経路部材520をx軸の正方向に移動させて貯留箱530の上方領域を開放し、対応して、かかるプレス成形品10は、そのロッド12が傾斜案内面502上を滑落した後に、その自重で第2の搬出経路部材522及び第3の搬出経路部材524の間を落下して、最終的に貯留箱530内に落下自在である。
【0056】
一方で、搬出駆動機構510は、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態が合格であると検出された場合には、第1の搬出経路部材520を、x軸の負方向に移動させると共にかかるプレス成形品10における画像検出装置320により検出された仕様に対応して回転して傾斜させ、対応して、かかるプレス成形品10は、そのロッド12が傾斜案内面502上を滑落した後に、その自重で第1の搬出経路部材520の上面に沿って滑落してその仕様に応じ第2の搬出経路部材522及び第3の搬出経路部材524の一方に案内され、更に引き続きその上面を滑落して溶接検査装置1の外部に搬出自在である。なお、このように搬出されたプレス成形品10は、次段の塗装工程に送られる。
【0057】
ここで、溶接検査装置1は、更に、支持台20に固設された搬送駆動装置90、並びに搬送駆動装置90により各々駆動される上流側搬送部材92及び下流側搬送部材94を備える。かかる上流側搬送部材92及び下流側搬送部材94は、各々、それらに設けられた凹部にプレス成形品10のロッド12の両端部を載置した状態でプレス成形品10を搬送すべく、y軸方向に対向して2個設けられている。
【0058】
より詳しくは、上流側搬送部材92は、搬送駆動装置90により駆動されることにより、プレス成形品10を、搬送方向Dに沿って導入部40から撮像部50へと、つまり載置部材220に載置された状態から姿勢変更部材230を介して載置部材310に載置された状態へと搬送すると共に、搬送方向Dに沿って撮像部50から検査部30へと、つまり、載置部材310に載置された状態から載置部材140に載置された状態へと搬送する。
【0059】
また、下流側搬送部材94は、搬送駆動装置90により駆動されることにより、プレス成形品10を、搬送方向Dに沿って検査部30から刻印部60へと、つまり載置部材140に載置された状態からを載置部材410に載置された状態へと搬送すると共に、搬送方向Dに沿って刻印部60から仕分け部70へと、つまり、載置部材410に載置された状態から案内部材500の傾斜案内面502上に位置された状態へと搬送する。
【0060】
更に、溶接検査装置1は、図4に示すように、その構成要素の動作を制御する検査制御装置600を備える。
【0061】
より詳しくは、検査制御装置600は、図示を省略する演算処理装置やメモリ等を内蔵して、マイクロホン120に接続した音波検出装置130からプレス成形品10の溶接部
16の溶接状態を検出した検出結果を担持する電気信号が入力自在であると共に、撮像装置300に接続した画像検出装置320からプレス成形品10の仕様を検出した検出結果を担持する電気信号が入力自在である。
【0062】
更に、検査制御装置600は、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態の検出結果及びプレス成形品10の仕様の検出結果に適宜基づいて、又は所要のタイミングで、搬送駆動装置90、打撃装置100の励磁コイル108、マイクロホン120、カバー駆動装置160、上方保持部材駆動装置210、下方保持部材駆動装置214、撮像装置300、刻印駆動装置400及び搬出駆動機構510の各々を駆動制御自在である。なお、検査制御装置600及び以上のようなその関連装置は、図示を省略する電源に接続されている。
【0063】
さて、以上の構成の溶接検査装置1の動作につき、更に図5から図7をも参照して、以下詳細に説明する。
【0064】
図5は、本実施形態における溶接検査装置の導入部の動作を主として示す部分断面図であり、図5(a)から図5(c)へと経時的に示している。また、図6及び図7は、本実施形態における溶接検査装置の導入部よりも搬送方向の下流側に配置された構成要素の動作を主として示す部分断面図であり、図6(a)から図7(b)へと経時的に示している。
【0065】
まず、導入部40の搬送動作について説明すると、図5(a)に示すように、経路部材200において、導入経路部202の上端から順次導入されたプレス成形品10は、導入経路部202の下方に連続して設けられ貯留経路部204に至る。この際、貯留経路部204の下方に位置するプレス成形品10は、下方保持部材駆動装置214によりx軸の正方向に駆動されて貯留経路部204内に進入した下方保持部材216でもって、その上方のプレス成形品10に当接しないように切り離されてそのロッド12が支持される一方で、その上方のプレス成形品10は、上方保持部材駆動装置210によりx軸の正方向に駆動されて貯留経路部204内に進入した上方保持部材212でもって、そのロッド12が支持されている。かかる上方保持部材212に支持されたプレス成形品10及びそれよりも搬送方向Dの上流側に位置するプレス成形品10に関しては、それらの隣接するもの同士が互いのカラー14で当接するため、それらの重量は上方保持部材212に加わるが、導入経路部202が検査部30に向かって張り出すように傾斜して延在しているため、それらの重量の一部は導入経路部202で受けられ、対応して上方保持部材212に印加される荷重が低減されている。つまり、上方保持部材212に要求される強度が抑制されるので、その重量やサイズが低減される。
【0066】
ここで、貯留経路部204の最下方に配設された載置部材220に載置されていたプレス成形品10は、上流側搬送部材92により撮像部50に向けて搬送され始めている。この際、プレス成形品10のカラー14が姿勢変更部材230の縦壁232に当接されており、プレス成形品10の姿勢は、その形状を撮像部50により撮像されるにより適するように変更され始めることになる。
【0067】
次に、図5(b)に示すように、下方保持部材駆動装置214により下方保持部材216をx軸の負方向に駆動して貯留経路部204外に退出させると、それに支持されていたプレス成形品10は、下方保持部材216から解放されてその下方に配設された載置部材220上にその自重で落下して載置される一方で、その上方のプレス成形品10は、上方保持部材駆動装置210によりx軸の正方向に駆動されて貯留経路部204内に進入した上方保持部材212でもって支持され続けている。ここで、貯留経路部204の最下方に配設された載置部材220に載置されるプレス成形品10には、上流側搬送部材92が接近していく。
【0068】
次に、図5(c)に示すように、上方保持部材駆動装置210により上方保持部材212をx軸の負方向に駆動して貯留経路部204外に退出させると共に、下方保持部材駆動装置214により下方保持部材216をx軸の正方向に駆動して貯留経路部204内に進入させると、上方保持部材212に支持されていたプレス成形品10は、解放されて下方保持部材216上にその自重で落下して保持されることになる。ここで、貯留経路部204の最下方に配設された載置部材220に載置されていたプレス成形品10は、上流側搬送部材92により保持されて撮像部50に向けて搬送され始める。
【0069】
つまり、導入部40は、以上のような動作を順次繰り返すことになる。なお、導入部40にプレス成形品10を導入する前に、冷却部80でその温度を所定の数十℃レベルの温度まで低下させている。
【0070】
更に、導入部40よりも搬送方向Dの下流側の構成要素の搬送動作の動作について説明すると、上流側搬送部材92は、まず図6(a)に示すように、載置部材220に載置されているプレス成形品10及び載置部材310に載置されているプレス成形品10を各々保持して、ついで図6(b)に示すように、搬送方向Dの下流側に向けて、対応する撮像部50及び検査部30に搬送を開始し、ついで図6(c)に示すように、対応する撮像部50及び検査部30に接近する。ここで、図6(b)に示す状態では、プレス成形品10のカラー14が姿勢変更部材230の縦壁232に当接され、図6(c)に示す状態では、プレス成形品10が回転して、その姿勢は、その形状を撮像部50により撮像されるにより適するように水平方向に変更されている。
【0071】
一方で、下流側搬送部材94は、まず図6(a)に示すように、載置部材140に載置されているプレス成形品10及び載置部材410に載置されているプレス成形品10を各々保持して、ついで図6(b)に示すように、搬送方向Dの下流側に向けて、対応する刻印部60及び仕分け部70に搬送を開始し、ついで図6(c)に示すように、対応する刻印部60及び仕分け部70に接近する。
【0072】
次に、上流側搬送部材92は、図7(a)に示すように、対応する撮像部50及び検査部30の各々の上方にプレス成形品10を位置させ、ついで図7(b)に示すように、対応する載置部材310及び載置部材140上にプレス成形品10を載置して搬送方向Dの上流側に復帰していく。
【0073】
ここで、撮像部50においては、検査制御装置600から入力される制御信号に従って、撮像装置300が、載置部材310に載置されたプレス成形品10を撮像して、プレス成形品10の形状に関する情報を担持した電気信号を画像検出装置320に送出する。そして、画像検出装置320は、撮像装置300から入力された電気信号からプレス成形品10の輪郭形状等の形状に関する画像情報を抽出して、その抽出した画像情報と、内蔵したメモリに予め記憶された所定の画像情報と、を比較して、それらの輪郭等の特徴点の一致度や近似度を判定することにより、プレス成形品10の仕様を検出すると共に、その検出したプレス成形品10の仕様を担持した電気信号を検査制御装置600に送出する。
【0074】
また、検査部30においては、検査制御装置600から入力される制御信号に従って、カバー150でプレス成形品10を覆うと共に、打撃装置100の励磁コイル108が励磁されることにより、打撃部材104が、引っ張りスプリング110の引っ張り力に抗しながら、プレス成形品10の対向するカラー14に向かって初期位置から移動してそのカラー14を打撃し撃力を印加した後、引っ張りスプリング110の引っ張り力により強制的に初期位置に戻される。ここで、励磁コイル108は、一旦このように励磁状態にされた後、打撃部材104の一端104aがプレス成形品10の対向するカラー14に当接す
る前に迅速に駆動電力が切られて非励磁状態とされるため、打撃部材104の一端104aがプレス成形品10の対向するカラー14を打撃する際やその後に引っ張りスプリング110の引っ張り力により引き戻される際には、打撃部材104に対しては、引っ張りスプリング110の引っ張り力のみが印加されていることになる。
【0075】
更に、検査部30においては、プレス成形品10が、そのロッド12において載置部材140の断面V字状の傾斜保持面142のみにより接触されて支持されているため、打撃部材104が、プレス成形品10の対向するカラー14を打撃して撃力を印加する際には、プレス成形品10は、ロッド12と傾斜保持面142との間の静止摩擦力のみによって、打撃部材104から印加される撃力に抗して載置部材140上に支持されることになり、載置部材140の残余の部分に不要に当接して干渉音等の雑音を発することがない。
【0076】
同時に、検査部30においては、検査制御装置600から入力される制御信号に従って、マイクロホン120が、打撃部材104がプレス成形品10の対向するカラー14を打撃して撃力を印加することによりプレス成形品10から発生した音波を受けて、それに対応する電気信号を音波検出装置130に送出し、対応して、音波検出装置130は、マイクロホン120から入力された電気信号から得られる波形スペクトルパターンと、内蔵されるメモリに予め記憶された基準の波形スペクトルパターンと、を比較して、それらのピーク値等の特徴点の一致度や近似度を判定することにより、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態を検出する。ここで、かかる基準の波形スペクトルパターンは、検査制御装置600からプレス成形品10の仕様情報を担持した制御信号を入力された音波検出装置130が、その仕様情報に対応して選択する。このように音波検出装置130が検出したプレス成形品10の溶接部16の溶接状態は、その情報を担持した電気信号として、音波検出装置130から検査制御装置600に送出される。
【0077】
一方で、下流側搬送部材94は、図7(a)に示すように、刻印部60の上方にプレス成形品10を位置させると共に、案内部材500の傾斜案内面502の上方にプレス成形品10を位置させ、ついで、図7(b)に示すように、刻印部60の載置部材410上にプレス成形品10を載置し、かつ案内部材500の傾斜案内面502を経て仕分け部70にプレス成形品10を送出したならば、搬送方向Dの上流側に復帰していく。なお、図7(b)中では、便宜上、仕分け部70に導入されたプレス成形品10が、第1の搬出経路部材520上に導かれた状態で示す。
【0078】
ここで、刻印部60においては、検査制御装置600から入力される制御信号に従って、刻印駆動装置400が、検査制御装置600から入力された制御信号が担持するプレス成形品10の溶接部16の溶接状態に対応して刻印部材402を駆動し、刻印部材402は、その駆動に応じた刻印をプレス成形品10の一方のカラー14に施す。かかる刻印部材402の施す刻印は、更に、画像検出装置320が検出したプレス成形品10の仕様を単独で又は溶接部16の溶接状態の合格・不合格と組み合わせて刻印するものであってもよい。
【0079】
また、仕分け部70においては、検査制御装置600から入力される制御信号に従って、搬出駆動機構510が、検査制御装置600から入力された制御信号が担持するプレス成形品10の溶接部16の溶接状態に対応して、第1の搬出経路部材520を移動させる。
【0080】
具体的には、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態が不合格であると検出された場合には、搬出駆動機構510は、第1の搬出経路部材520をx軸の正方向に移動させて貯留箱530の上方領域を開放し、対応して、かかるプレス成形品10は、そのロッド12が傾斜案内面502上を滑落した後に、その自重で第2の搬出経路部材522及び第3
の搬出経路部材524の間を落下して、最終的に貯留箱530内に落下されてそこに貯留される。一方で、プレス成形品10の溶接部16の溶接状態が合格であると検出された場合には、搬出駆動機構510は、第1の搬出経路部材520を、x軸の負方向に移動させると共にかかるプレス成形品10における画像検出装置320により検出された仕様に対応して回転して傾斜させ、対応して、かかるプレス成形品10は、そのロッド12が傾斜案内面502上を滑落した後に、その自重で第1の搬出経路部材520の上面に沿って滑落してその仕様に応じ第2の搬出経路部材522及び第3の搬出経路部材524の一方に案内され、更に引き続きその上面を滑落して溶接検査装置1の外部に搬出され、次段の塗装工程に送られる。
【0081】
そして、溶接検査装置1は、以上のようなプレス成形品10の導入、仕様の判別、溶接状態の検査及び仕分けといった各工程を順次繰り返していくことになる。
【0082】
なお、本発明は、部材の形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明においては、自動車等の車両の強度部品、例えば自動車のシャシー部品のように多様な仕様の強度部品の溶接状態を、工場内で全品検査することを現実的に可能とする簡便でコンパクトな構成の溶接検査装置を提供することができるものであるため、その汎用普遍的な性格から広範に車両等の移動体の構成部品の溶接検査の分野に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0084】
1 溶接検査装置
10 プレス成形品
12 ロッド
14 カラー
16 溶接部
20 支持台
22 支柱
30 検査部
40 導入部
50 撮像部
60 刻印部
70 仕分け部
80 冷却部
82 支持部材
84 ファン
90 搬送駆動装置
92 上流側搬送部材
94 下流側搬送部材
100 打撃装置
102 ケース
104 打撃部材
106 ボビン
108 励磁コイル
110 引っ張りスプリング
120 マイクロホン
130 音波検出装置
140 載置部材
142 傾斜保持面
150 カバー
152 切欠き
160 カバー駆動装置
200 搬入経路部材
202 導入経路部
204 貯留経路部
210 上方保持部材駆動装置
212 上方保持部材
214 下方保持部材駆動装置
216 下方保持部材
220 載置部材
230 姿勢変更部材
300 撮像装置
310 載置部材
320 画像検出装置
400 刻印駆動装置
402 刻印部材
410 載置部材
500 案内部材
502 傾斜案内面
510 搬出駆動機構
520 第1の搬出経路部材
522 第2の搬出経路部材
524 第3の搬出経路部材
530 貯留箱
600 検査制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の第1の部材と金属製の第2の部材とが溶接されて形成されたプレス成形品の溶接状態を、前記プレス成形品からの音波を利用して検査する検査部と、
前記検査部に対して前記プレス成形品の搬送方向の上流側に設けられて、前記プレス成形品を前記検査部に向かって導入する導入部と、
前記検査部に対して前記搬送方向の下流側に設けられて、前記検査部から送出される前記プレス成形品を前記検査部が検査した前記プレス成形品の溶接状態に応じて仕分けする仕分け部と、を備え、
前記検査部は、前記プレス成形品に対して撃力を印加する打撃部材、前記打撃部材が前記プレス成形品に前記撃力を印加するように前記打撃部材に駆動力を印加する駆動機構、及び前記駆動機構による前記駆動力の印加方向とは逆向きに前記打撃部材を付勢する付勢部材を有する打撃装置と、前記打撃部材により印加された前記撃力により前記プレス成形品から発生する音波が入力されるマイクロホンと、前記マイクロホンに入力された前記音波の波形特性に応じて前記プレス成形品の前記溶接状態を検出する検出装置と、を備え、
前記打撃部材は、前記駆動機構による前記駆動力が切られ、かつ、前記付勢部材により前記印加方向とは逆向きに付勢された状態で、前記プレス成形品に前記撃力を印加すると共に、前記プレス成形品に前記撃力を印加した後は、前記付勢部材により前記印加方向とは逆向きに強制的に引き戻される溶接検査装置。
【請求項2】
前記検査部は、更に、前記プレス成形品を載置する載置部材を備え、前記載置部材は、前記打撃部材が前記プレス成形品に前記撃力を印加する印加方向に関して、前記プレス成形品を前記載置部材と前記プレス成形品との間で生じる摩擦力のみにより保持する請求項1に記載の溶接検査装置。
【請求項3】
前記導入部は、前記検査部に向かって張り出すように傾斜して延在し前記プレス成形品を導入する導入経路部及び前記導入経路部に対して前記搬送方向の前記下流側に設けられて上下方向に延在し前記プレス成形品を貯留する貯留経路部を有する搬入経路部材と、前記貯留経路部に貯留された前記プレス成形品を1個毎前記経路部材の下部に落下させるように前記プレス成形品に対して進退自在である保持部材と、を備える請求項1又は2に記載の溶接検査装置。
【請求項4】
前記導入部に対して前記搬送方向の前記上流側には、前記プレス成形品を冷却する冷却部が設けられる請求項1から3のいずれかに記載の溶接検査装置。
【請求項5】
前記検査部と前記仕分け部との間には、前記検査部が検出した前記プレス成形品の前記溶接状態に応じて前記プレス成形品に刻印を施す刻印部が設けられる請求項1から4のいずれかに記載の溶接検査装置。
【請求項6】
前記導入部と前記検査部との間には、前記プレス成形品を撮像して前記プレス成形品の仕様を検出する撮像部が設けられる請求項1から5のいずれかに記載の溶接検査装置。
【請求項7】
前記導入部は、更に、前記撮像部に対して前記プレス成形品の姿勢を変更する姿勢変更部材を備える請求項6に記載の溶接検査装置。
【請求項8】
前記仕分け部は、配置位置が固定された貯留箱と、前記貯留箱の上方領域に対して進退自在な搬出経路部材と、を備え、前記搬出経路部材は、前記検査部が前記プレス成形品における前記溶接状態が不合格であると検出した場合に、前記貯留箱の前記上方領域から退いて開放し前記プレス成形品を前記貯留箱に落下自在とし、前記検査部が前記プレス成形品における前記溶接状態が合格であると検出した場合に、前記貯留箱の前記上方領域に進
入して塞ぎ前記撮像部が検出した前記仕様に応じて前記プレス成形品を搬出自在である請求項6又は7に記載の溶接検査装置。
【請求項9】
前記仕分け部は、更に、前記貯留箱又は前記搬出経路部材に対して前記プレス成形品を案内自在な案内部材を備える請求項8に記載の溶接検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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