説明

溶接構造および抵抗溶接による溶接方法

【課題】抵抗溶接により溶接される金属部材の溶接部および溶接用電極の損傷を防止する
【解決手段】一方の金属部材110には、一面側に突起部112が形成され、他面側に突起部112に対応する形状の陥没部が形成されている。他方の金属部材120には、突起部112に対応して、突起部112側の面と反対面側に凹部121が形成されている。可動電極57に加圧P3を与えながら抵抗溶接する際、予め凹部121が形成されているので、固定電極58と他方の金属部材120の接触面積の低減を抑制することができ、発熱を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶接構造および抵抗溶接による溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を局所的に溶接する方法として抵抗溶接が知られている。抵抗溶接は、溶接したい母体に電流を流してジュール熱を発生させ、それと同時に加圧することにより溶接する方法である。
母材に流す電流を集中させるためには、接触面積を小さくし電流密度を大きくすることが有利である。このため、通常は、溶接したい一方の金属部材に突起部を設け、相手方の金属部材に点接触または線接触させるようにする。
この場合、抵抗溶接は、溶接する金属部材同士を突起部で接触させた状態で、両金属部材における溶接面とは反対面に、それぞれ、正極または負極の溶接用電極を押し当て、加圧して行う。
【0003】
金属部材に突起部を形成する場合、突起部が形成された金属部材の厚さを周囲の領域より厚くする構造とする方法がある。しかし、この構造では、材料の活用効率が低くなる。
そこで、板状の金属部材を用いて、プレスにより突起部を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようにすれば、材料の活用効率を向上し、コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−032072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した如く、抵抗溶接を行う場合には、溶接する金属部材同士を突起部で接触させた状態で、両金属部材における溶接面とは反対面(外面)に、それぞれ、正極または負極の溶接用電極を押し当て、加圧する。溶接用電極によって加圧されることにより、上記従来のいずれの方法においても、突起部に対向する側の金属部材には、突起部に当接する部分に集中応力が生じる。このため、突起部に対向する側の金属部材には、突起部を中心としてその周縁領域が相手方の部材側に向けて上昇するような反りが発生する。
このような反りが発生するために、突起部に対向する側の金属部材の外面は、溶接用電極の上面とは、反りが発生しない中心領域、すなわち、突起部に対応する小さい面積の領域でのみ接触する。つまり、電流通路の面積が狭くなってしまう。このため、金属部材に流れる電流密度が大きくなり、発熱が大きくなって、溶接部が損傷して必要な接合力が確保できなくなったり、金属部材の溶融部が溶接用電極に張り付いて溶接用電極を損傷したりする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溶接構造は、一方の面に突起部が、他方の面に突起部に対応する陥没部が形成された第1の金属部材と第2の金属部材とが突起部の頂部を含む溶接部において溶接された溶接構造において、第1の金属部材と第2の金属部材の少なくとも一方には、他方の金属部材との対面側とは反対面側における溶接部に対応する領域に、周囲領域から陥没する凹部が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の抵抗溶接による溶接方法は、一方の面に突起部が、他方の面に突起部に対応する陥没部が形成された第1の金属部材と第2の金属部材とを正極および負極の電極で加圧して突起部の頂部を含む溶接部において抵抗溶接する方法において、第1の金属部材と第2の金属部材の少なくとも一方に、他方の金属部材との対面側とは反対面側における溶接部に対応する領域に、周囲領域から陥没する凹部を形成し、抵抗溶接する際、凹部の少なくとも一部を正極または負極の電極に接触させずに溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属部材における溶接部側とは反対側の面に、すなわち、溶接用電極が当接する面側に、周囲領域から陥没する凹部が形成されているので、金属部材の反りが小さくなり、溶接用電極との接触面積が増大する。このため、電流密度を低減し、溶接時の発熱を低減することができ、これに伴って、溶接部が損傷したり、溶接用電極が損傷したりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態の円筒形二次電池の断面図。
【図2】図1に図示された円筒形二次電池の分解斜視図。
【図3】図1に図示された電極群の詳細を示すための一部を切断した状態の斜視図。
【図4】図1に図示された円筒形二次電池のA部の拡大断面図。
【図5】図4に図示された溶接構造を得る方法を説明するための溶接前の金属部材の拡大断面図。
【図6】図5に続く工程を説明するための拡大断面図。
【図7】(a)、(b)は、図5に図示された一方の金属部材を形成する方法を説明するための拡大断面図。
【図8】(a)、(b)は、図5に図示された他方の金属部材を形成する方法を説明するための拡大断面図。
【図9】抵抗溶接機の外観斜視図。
【図10】溶接用電極における一方の金属部材との接触領域を説明するための外観斜視図。
【図11】溶接用電極における他方の金属部材との接触領域を説明するための外観斜視図。
【図12】比較例における溶接前の金属部材の構造を示す拡大断面図。
【図13】図12に続く工程を説明するための拡大断面図。
【図14】比較例の溶接用電極における一方の金属部材との接触領域を説明するための外観斜視図。
【図15】比較例の溶接用電極における一方の金属部材との接触領域を説明するための外観斜視図。
【図16】この発明の実施形態2を示す拡大断面図。
【図17】(a)、(b)は、図16に図示された金属部材を形成する方法を説明するために拡大断面図。
【図18】この発明の実施形態3を示す拡大断面図。
【図19】この発明の実施形態4を示す拡大断面図。
【図20】この発明の実施形態5を示す拡大断面図。
【図21】この発明の実施形態6を示し、(a)は金属部材の拡大断面図、(b)は金属部材の外観斜視図。
【図22】この発明の実施形態7を示し、(a)は金属部材の拡大断面図、(b)は金属部材の外観斜視図。
【図23】この発明の実施形態8を示し、(a)は金属部材の拡大断面図、(b)は金属部材の外観斜視図。
【図24】この発明の実施形態9を示し、(a)は金属部材の拡大断面図、(b)は金属部材の外観斜視図。
【図25】この発明の実施形態10を示し、(a)は金属部材の拡大断面図、(b)は金属部材の外観斜視図。
【図26】この発明の実施形態11を示し、(a)は金属部材の拡大断面図、(b)は金属部材の外観斜視図。
【図27】この発明の実施形態12を示し、車両用交流発電機の一部を断面とした側面図。
【図28】図27のB部の拡大断面図。
【図29】この発明の実施形態13を示し、内燃機関用点火装置の側面図。
【図30】図29に図示されたコイルケースの平面図。
【図31】図30のC部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1]
(二次電池の全体構成)
以下、この発明の溶接構造および溶接方法を、図面を参照して説明する。
先ず、本発明の溶接構造を、円筒形二次電池を一実施の形態として説明することとする。
図1は、この発明の一実施の形態としてのリチウムイオン円筒形二次電池の断面図であり、図2は、図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図である。
円筒形二次電池1は、例えば、外形40mmφ、高さ100mmの寸法を有する。
この円筒形二次電池1は、有底円筒形の電池缶2とハット型の電池蓋3とを、通常、ガスケットと言われるシール部材43を介在してかしめ加工を行い、外部から密封された構造の電池容器4を有する。有底円筒形の電池缶2は、鉄、ステンレス等の金属板をプレス加工して形成され、内面および外面の表面全体にニッケル等のめっき層が形成されている。電池缶2は、その開放側である上端部側に開口部2b有する。電池缶2の開口部2b側には、電池缶2の内側に突き出した溝2aが形成されている。電池缶2の内部には、以下に説明する発電用の各構成部材が収容されている。
【0010】
10は、電極群であり、中央部に軸芯15を有し、軸芯15の周囲に正極電極および負極電極が捲回されている。図3は、電極群10の構造の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図である。図3に図示されるように、電極群10は、軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12、および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された構成を有する。
軸芯15は、中空円筒状を有し、軸芯15には、負極電極12、第1のセパレータ13、正極電極11および第2のセパレータ14が、この順に積層され、捲回されている。最内周の負極電極12の内側には第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数周(図3では、1周)捲回されている。電極群10の最外周は負極電極12およびその外周に捲回された第1のセパレータ13の順となっている。最外周の第1のセパレータ13が接着テープ19で留められる(図2参照)。
【0011】
正極電極11は、アルミニウム箔により形成され長尺な形状を有し、正極シート11aと、この正極シート11aの両面に正極合剤11bが塗布された正極処理部を有する。正極シート11aの長手方向に沿う上方側の一側縁は、正極合剤11bが塗布されずアルミニウム箔が表出した正極合剤未処理部11cとなっている。この正極合剤未処理部11cには、軸芯15と平行に上方に突き出す多数の正極リード16が等間隔に一体的に形成されている。
【0012】
正極合剤11bは正極活物質と、正極導電材と、正極バインダとからなる。正極活物質はリチウム酸化物が好ましい。例として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム複合酸化物(コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる2種類以上を含むリチウム酸化物)などが挙げられる。正極導電材は、正極合剤中におけるリチウムの吸蔵放出反応で生じた電子の正極電極への伝達を補助できるものであれば制限は無い。しかし中でも上述の材料である、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウムとニッケル酸リチウムとからなるリチウム複合酸化物を使用することにより良好な特性が得られる。
【0013】
正極バインダは、正極活物質と正極導電材を結着させ、また正極合剤と正極シート11aを結着させることが可能であり、非水電解液との接触により、大幅に劣化しなければ特に制限はない。正極バインダの例としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。正極合剤層の形成方法は、正極電極上に正極合剤が形成される方法であれば制限はない。正極合剤11bの形成方法の例として、正極合剤11bの構成物質の分散溶液を正極シート11a上に塗布する方法が挙げられる。このような方法で製造することにより特性の優れた正極合剤が得られる。
【0014】
正極合剤11bを正極シート11aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法、などが挙げられる。正極合剤11bに分散溶液の溶媒例としてN−メチルピロリドン(NMP)や水等を添加し、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、裁断する。正極合剤11bの塗布厚さの一例としては片側約40μmである。正極シート11aを裁断する際、正極リード16を一体的に形成する。すべての正極リード16の長さは、ほぼ同じである。
【0015】
負極電極12は、銅箔により形成され長尺な形状を有し、負極シート12aと、この負極シート12aの両面に負極合剤12bが塗布された負極処理部を有する。負極シート12aの長手方向に沿う下方側の側縁は、負極合剤12bが塗布されず銅箔が表出した負極合剤未処理部12cとなっている。この負極合剤未処理部12cには、正極リード16とは反対方向に延出された、多数の負極リード17が等間隔に一体的に形成されている。この構造により電流を略均等に分散して流すことができ、リチウムイオン二次電池の信頼性の向上に繋がっている。
【0016】
負極合剤12bは、負極活物質と、負極バインダと、増粘剤とからなる。負極合剤12bは、アセチレンブラックなどの負極導電材を有しても良い。負極活物質としては、黒鉛炭素を用いること、特に人造黒鉛を使用することが好ましい。しかしその中でも次に記載する方法により優れた特性の負極合剤が得られる。黒鉛炭素を用いることにより、大容量が要求されるプラグインハイブリッド自動車や電気自動車向けのリチウムイオン二次電池が作製できる。負極合剤12bの形成方法は、負極シート12a上に負極合剤12bが形成される方法であれば制限はない。負極合剤12bを負極シート12aに塗布する方法の例として、負極合剤12bの構成物質の分散溶液を負極シート12a上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法などが挙げられる。
【0017】
負極合剤12bを負極シート12aに塗布する方法の例として、負極合剤12bに分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンや水を添加し、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、裁断する。負極合剤12bの塗布厚さの一例としては片側約40μmである。負極シート12aを裁断する際、負極リード17を一体的に形成する。すべての負極リード17の長さは、ほぼ同じである。
【0018】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の幅WSは、負極シート12aに形成される負極合剤12bの幅WCより大きく形成される。また、負極シート12aに形成される負極合剤12bの幅WCは、正極シート11aに形成される正極合剤11bの幅WAより大きく形成される。
負極合剤12bの幅WCが正極合剤11bの幅WAよりも大きいことにより、異物の析出による内部短絡を防止する。これは、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質であるリチウムがイオン化してセパレータを浸透するが、負極側に負極活物質が形成されておらず負極シート12aが露出していると負極シート12aにリチウムが析出し、内部短絡を発生する原因となるからである。
【0019】
第1、第2のセパレータ13、14は、例えば、厚さ40μmのポリエチレン製多孔膜である。
図1および図3において、中空な円筒形状の軸芯15は軸方向(図面の上下方向)の上端部の内面に径大の溝15aが形成され、この溝15aに正極集電部材27が圧入されている。
【0020】
正極集電部材27は、例えば、アルミニウムにより形成され、円盤状の基部27a、この基部27aの内周部において軸芯15側に向かって突出し、軸芯15の内面に圧入される下部筒部27b、および外周縁において電池蓋3側に突き出す上部筒部27cを有する。正極集電部材27の基部27aには、過充電等によって、電池内部で発生するガスを放出するための開口部27d(図2参照)が形成されている。また、正極集電部材27には開口部27eが形成されているが、開口部27eの機能については後述する。
【0021】
正極シート11aの正極リード16は、すべて、正極集電部材27の上部筒部27cに溶接される。この場合、図2に図示されるように、正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27c上に重なり合って接合される。各正極リード16は大変薄いため、1つでは大電流を取りだすことができない。このため、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまでの全長に亘り、多数の正極リード16が所定間隔に形成されている。
【0022】
正極集電部材27は、電解液によって酸化されるので、アルミニウムで形成することにより信頼性を向上することができる。アルミニウムは、なんらかの加工により表面が表出すると、直ちに、表面に酸化アルミウム皮膜が形成され、この酸化アルミニウム皮膜により、電解液による酸化を防止することができる。
また、正極集電部材27をアルミニウムで形成することにより、正極シート11aの正極リード16を超音波溶接またはスポット溶接等により溶接することが可能となる。
【0023】
正極集電部材27の上部筒部27cの外周には、正極シート11aの正極リード16およびリング状の押え部材28が溶接されている。多数の正極リード16は、正極集電部材27の上部筒部27cの外周に密着させておき、正極リード16の外周に押え部材28を巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
【0024】
軸芯15の下端部の外周には、外径が径小とされた段部15bが形成され、この段部15bに負極集電部材21が圧入されて固定されている。負極集電部材21は、例えば、抵抗値の小さい銅により形成され、円盤状の基部21aに軸芯15の段部15bに圧入される開口部21bが形成され、外周縁に、電池缶2の底部側に向かって突き出す外周筒部21cが形成されている。
負極シート12aの負極リード17は、すべて、負極集電部材21の外周筒部21cに超音波溶接等により溶接される。各負極リード17は大変薄いため、大電流を取りだすために、軸芯15への巻き始めから巻き終わりまで全長にわたり、所定間隔で多数形成されている。
【0025】
負極集電部材21の外周筒部21cの外周には、負極シート12aの負極リード17およびリング状の押え部材22が溶接されている。多数の負極リード17は、負極集電部材21の外周筒部21cの外周に密着させておき、負極リード17の外周に押え部材22を巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
負極集電部材21の下面には、ニッケルからなる負極通電リード23が抵抗溶接等により接合されている。この場合、負極集電部材21と負極通電リード23とは、平面視では、軸芯15と同軸の円周上において複数の箇所で接合されている。
負極通電リード23は、鉄製の電池缶2の底部において、電池缶2に溶接されている。
電池缶2は、例えば、0.5mmの厚さの炭素鋼で形成し、内面側および外面側の表面にニッケルめっきを施して形成することが望ましい。負極集電部材21を抵抗値の小さい銅で形成する場合、銅と鉄を、直接、抵抗溶接により溶接すると接合力が不足する。負極通電リード23をニッケルにより形成し、電池缶2の内面にニッケルめっきを施すことにより、負極通電リード23を、電池缶2に抵抗溶接により強固に溶接することができる。また、ニッケルからなる負極通電リード23と銅からなる負極集電部材21とは、抵抗溶接により強固に溶接することができる。
【0026】
負極集電部材21と負極通電リード23とを、抵抗溶接により溶接する接合構造および抵抗溶接による接合方法は、本発明における重要な要部であり、その詳細については後述する。
【0027】
ここで、正極集電部材27に形成された開口部27eは、負極通電リード23を電池缶2に溶接するための電極棒(図示せず)を挿通するためのものである。電極棒を正極集電部材27に形成された開口部27eから軸芯15の中空部に差し込み、その先端部で負極通電リード23を電池缶2の底部内面に押し付けて抵抗溶接を行う。負極集電部材21に接続されている電池缶2は一方の出力端として作用し、電極群10に蓄電された電力を電池缶2から取り出すことができる。
【0028】
多数の正極リード16が正極集電部材27に溶接され、多数の負極リード17が負極集電部材21に溶接されることにより、正極集電部材27、負極集電部材21および電極群10が一体的にユニット化された発電ユニット20が構成される(図2参照)。但し、図2においては、図示の都合上、負極集電部材21、押え部材22および負極通電リード23は発電ユニット20から分離して図示されている。
【0029】
また、正極集電部材27の基部27aの上面には、複数のアルミニウム箔が積層されて構成されたフレキシブルな接続部材33が、その一端を溶接されて接合されている。接続部材33は、複数枚のアルミニウム箔を積層して一体化することにより、大電流を流すことが可能とされ、且つ、フレキシブル性を付与されている。つまり、大電流を流すには接続部材の厚さを大きくする必要があるが、1枚の金属板で形成すると剛性が大きくなり、フレキシブル性が損なわれる。そこで、板厚の小さな多数のアルミニウム箔を積層してフレキシブル性を持たせている。接続部材33の厚さは、例えば、0.5mm程度であり、厚さ0.1mmのアルミニウム箔を5枚積層して形成される。
【0030】
正極集電部材27の上部筒部27c上には、円形の開口部34aを有する絶縁性樹脂材料からなるリング状の絶縁板34が配置されている。
絶縁板34は、開口部34a(図2参照)と下方に突出す側部34bを有している。絶縁板34の開口部34a内には接続板35が嵌合されている。接続板35の下面には、フレキシブルな接続部材33の他端が溶接されて固定されている。
【0031】
接続板35は、アルミニウム合金で形成され、中央部を除くほぼ全体が均一で、かつ、中央側が少々低い位置に撓んだ、ほぼ皿形状を有している。接続板35の厚さは、例えば、1mm程度である。接続板35の中心には、薄肉でドーム形状に形成された突起部35aが形成されており、突起部35aの周囲には、複数の開口部35b(図2参照)が形成されている。開口部35bは、過充電等により電池内部に発生するガスを放出する機能を有している。
【0032】
接続板35の突起部35aはダイアフラム37の中央部の底面に抵抗溶接または摩擦拡散接合により接合されている。ダイアフラム37はアルミニウム合金で形成され、ダイアフラム37の中心部を中心とする円形の切込み37aを有する。切込み37aはプレスにより上面側をU字形状に押し潰して、残部を薄肉にしたものである。
【0033】
ダイアフラム37は、電池の安全性確保のために設けられており、電池内部に発生したガスの圧力が上昇すると、第1段階として、上方に反り、接続板35の突起部35aとの接合を剥離して接続板35から離間し、接続板35との導通を絶つ。第2段階として、それでも電池内圧が上昇する場合は切込み37aにおいて開裂し、内部のガスを放出する機能を有する。
【0034】
ダイアフラム37は周縁部において電池蓋3の周縁部3aを固定している。ダイアフラム37は図2に図示されるように、当初、周縁部に電池蓋3側に向かって垂直に起立する側部37bを有している。この側部37b内に電池蓋3を収容し、かしめ加工により、側部37bを電池蓋3の上面側に屈曲して固定する。
電池蓋3は、炭素鋼等の鉄で形成され、外側および内側の表面全体にニッケル等のめっき層が施されている。電池蓋3は、ダイアフラム37に接触する円盤状の周縁部3aとこの周縁部3aから上方に突出す有頭無底の筒部3bを有するハット型を有する。筒部3bには開口部3cが形成されている。この開口部3cは、電池内部に発生するガス圧によりダイアフラム37が開裂した際、ガスを電池外部に放出するためのものである。
なお、電池蓋3が鉄で形成されている場合には、別の円筒形二次電池と直列に接合する際、鉄で形成された別の円筒形二次電池とスポット溶接により接合することが可能である。
【0035】
電池蓋3、ダイアフラム37、絶縁板34および接続板35は、一体化され電池蓋ユニット30を構成する。電池蓋ユニット30を組立てる方法を下記に示す。
まず、ダイアフラム37に電池蓋3を固定しておく。ダイアフラム37と電池蓋3との固定は、かしめ等により行う。図2に図示された如く、当初、ダイアフラム37の側部37bは基部37aに垂直に形成されているので、電池蓋3の周縁部3aをダイアフラム37の側部37b内に配置する。そして、ダイアフラム37の側部37bをプレス等により変形させて、電池蓋3の周縁部の上面および下面、および外周側面を覆って圧接する。
【0036】
一方、接続板35を絶縁板34の開口部34aに嵌合して取り付けておく。次に、絶縁板34を間に挟持した状態で、接続板35の突起部35aを、電池蓋3が固定されたダイアフラム37の底面に溶接する。この場合の溶接方法は、抵抗溶接または摩擦拡散接合を用いることができる。これにより、電池蓋3により固定されたダイアフラム37に、接続板35が絶縁板34を介在させて溶接され、一体化された電池蓋ユニット30が構成される。
上述したように、電池蓋ユニット30の接続板35は接続部材33により正極集電部材27と接続されている。従って、電池蓋3は正極集電部材27と接続されている。このように、正極集電部材27と接続されている電池蓋3は他方の出力端として作用し、この他方の出力端として作用する電池蓋3と一方の出力端として作用する電池缶2より電極群10に蓄えられた電力を出力することが可能となる。
【0037】
ダイアフラム37の側部37bの周縁部を覆って、通常、ガスケットと言われるシール部材43が設けられている。シール部材43は、ゴムで形成されており、限定する意図ではないが、1つの好ましい材料の例として、エチレンプロピレン共重合体(EPDM)をあげることができる。また、例えば、電池缶2が厚さ0.5mmの炭素鋼板により、外径が40mmΦで形成されている場合、シール部材43の厚さは1.0mm程度とされる。
【0038】
シール部材43は、当初、図2に図示されるように、リング状の基部43aの周側縁に、上部方向に向けてほぼ垂直に起立して形成された外周壁部43bを有する形状を有している。
【0039】
そして、プレス等により、電池缶2と共にシール部材43の外周壁部43bを屈曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と電池蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、電池蓋3、ダイアフラム37、絶縁板34および接続板35が一体に形成された電池蓋ユニット30がシール部材43を介して電池缶2に固定される。
【0040】
電池缶2の内部には、非水電解液が所定量注入されている。非水電解液の一例としては、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液を用いることが好ましい。リチウム塩の例として、フッ化リン酸リチウム(LiPF)、フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、などが挙げられる。また、カーボネート系溶媒の例として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、或いは上記溶媒の1種類以上から選ばれる溶媒を混合したもの、が挙げられる。
【0041】
(溶接構造)
次に、負極集電部材21と負極通電リード23との溶接構造について説明する。
図4は、図1に図示されたA部の拡大断面図である。図4では、複数の接合箇所のうちの1箇所のみを示している。なお、本発明の溶接構造および抵抗溶接による溶接方法は、負極集電部材21と負極通電リード23への適用に限られるものではなく、一般的に広く適用することができる。このため、以下の説明においては、負極集電部材21と負極通電リード23の一方を一方の金属部材110とし、他方を他方の金属部材120として説明する。
【0042】
一方の金属部材110と他方の金属部材120とは、抵抗溶接により溶接部130で接合されている。一方の金属部材110の溶接部130に対応する反対面側には、表面から陥没する陥没部111が形成されている。他方の金属部材120の溶接部130に対応する反対面側には、表面から陥没する凹部121が形成されている。陥没部111および凹部121は、断面形状が円推状または皿状を有し、平面形状は溶接部130と同心のリング形状を有する。一方の金属部材110と他方の金属部材120とは、溶接部130の周囲における対向面が離間され、間隙131が設けられている。
好ましい一例として、一方の金属部材110は銅により形成され、他方の金属部材120はニッケルにより形成されたものを挙げることができる。
【0043】
図5は、図4に図示された溶接構造を形成する方法を説明するための拡大断面図である。
一方の金属部材110は、溶接前は突起部112を有している。突起部112は、プレス加工により形成されたものであり、陥没部111は、突起部112を形成する際に形成されるものである。突起部112は、幅方向(図5の左右方向)における中心部分が表面から最も高く突き出しており、従って、陥没部111の深さが最大の位置は、幅方向における中心部分である。他方の金属部材120の凹部121における深さの最大位置は、突起部112の幅方向の中心部に対応する部分である。凹部121の最大深さは、陥没部111の最大深さよりも小さくてもよい。
【0044】
図7(a)、(b)は、他方の金属部材120に、凹部121を形成する方法を説明するための断面図である。
図7(a)に図示されるように、平板状の他方の金属部材120’の下面側に、上面が平坦な受け型141を配置する。また、他方の金属部材120’の上面側に、凹部121に対応する突起142aを有する成形パンチ142を配置する。成形パンチ142の周囲における他方の金属部材120’の部分を、押さえ型143により受け型141に押付ける。
【0045】
この場合、押さえ型143に付与する加圧力P1は、他方の金属部材120に塑性変形が生じない程度とする。この状態で、図7(b)に図示されるように、成形パンチ142を駆動して、他方の金属部材120’に加圧力P2を付与する。これにより、他方の金属部材120’における加圧力P2が付与された部分に、成形パンチ142の突起142aに対応する形状の凹部121が形成され、他方の金属部材120が形成される。
【0046】
図8(a)、(b)は、一方の金属部材110に、突起部112を形成する方法を説明するための断面図である。
図8(a)に図示されるように、平板状の一方の金属部材110’の下面側に、溝152が形成された受け型151を配置する。また、一方の金属部材110’の上面側に、突起部112に対応する突起153aを有する成形パンチ153を配置する。成形パンチ153の周囲における一方の金属部材110’の部分を、押さえ型154により受け型151に押付ける。
【0047】
この場合、押さえ型154に付与する加圧力P1は、一方の金属部材110’に塑性変形が生じない程度とする。この状態で、図8(b)に図示されるように、成形パンチ153を駆動して、一方の金属部材110’に加圧力P2を付与する。成形パンチ153の突起153aに対応する受け型151には溝152が形成されている。このため、一方の成形パンチ153の突起153aに対応する部分が受け型151の溝152に突き出され、突起部112が形成される。このとき、突起部112に対応する一方の金属部材110の上面には陥没部111が形成されており、一方の金属部材110が形成される。
【0048】
上記の方法で形成された一方および他方の金属部材110、120を、図5に図示された状態に配置し、図6に図示されるように抵抗溶接を行う。
図9は、抵抗溶接機50の外観斜視図である。
抵抗溶接機50は、上下一対の電極ホルダ51、52、一方の電極ホルダ51を上下に移動するエアーシリンダ53、溶接用電源54、電極ホルダ51、52を溶接用電源54に接続する接続導体55、56を備えている。電極ホルダ51には、クランプボルト61の締結により可動電極57が取り付けられる。電極ホルダ52には、クランプボルト62の締結により固定電極58が取り付けられる。他方の金属部材120を固定電極58の上面で支持し、一方の金属部材110の上面に可動電極57の下面を接触させ、加圧する。
【0049】
つまり、固定電極58と可動電極57により一方の金属部材110と他方の金属部材120を挟み込み、図5に図示されるように一方の金属部材110の突起部112に他方の金属部材120が接触する状態に支持する。エアーシリンダ53により可動電極57に加圧力を付与し、設定した加圧力P3に達した時点(図6参照)で、溶接用電源54から接続導体55、56を介して通電する。すなわち、一方の金属部材110と他方の金属部材120に電流を供給する。
電流の供給により、可動電極57、一方の金属部材110、他方の金属部材120および固定電極58の各抵抗値および接触抵抗と、供給される電流値に対応するジュール熱が発生し、一方および他方の金属部材110、120が固相接合または溶融接合で接合される。
【0050】
可動電極57にはエアーシリンダ53から所定の加圧力P3が付与されているため、接合時に、一方の金属部材110と他方の金属部材120とが接触している突起部112には集中応力が発生する。このため、この反力により、他方の金属部材120には、突起部112を中心としてその周囲領域が一方の金属部材110側に向かって上昇する方向の反りが生じる。
しかし、本実施形態においては、他方の金属部材120には、溶接部130に対応する領域の外面側に予め凹部121が形成されている。このため、他方の金属部材120は、この凹部121の深さが浅くなるように変形し、集中応力を緩和する。これにより、他方の金属部材120における突起部112の周囲領域が、一方の金属部材110側に向かって上昇する方向の反りは小さくなる。従って、図6に図示されるように、溶接時においても、他方の金属部材120は、凹部121の周囲領域の広い範囲において固定電極58の上面と接触している。
【0051】
図10は、固定電極58の上面における他方の金属部材120との接触領域を示す斜視図である。図中、58aは、他方の金属部材120の凹部121に対応する非接触領域である。また、58bは、他方の金属部材120との接触領域であり、58cは、他方の金属部材120が変形することにより非接触となった領域である。上述した如く、他方の金属部材120に予め凹部121が形成されていることにより、他方の金属部材120の変形が小さくなるので、図10に示されるように、接触領域58bは、幅広いリング形状、すなわち、大きい接触面積を有する。このため、他方の金属部材120と固定電極58に通電される溶接時の電流密度を小さくすることができ、これに伴い、発生するジュール熱の上昇が抑えられる。
【0052】
図11は、可動電極57の下面における一方の金属部材110との接触領域を示す斜視図である。図中、57aは、一方の金属部材110の陥没部111に対応する非接触領域である。また、57bは、一方の金属部材110との接触領域であり、57cは、一方の金属部材110が変形することにより非接触となった領域である。上述した如く、他方の金属部材120に予め凹部121が形成されているため、他方の金属部材120の変形が小さくなり、他方の金属部材120と固定電極58に通電される溶接時の電流密度が小さくなり、発熱が小さくなる。このため、可動電極57の加圧力P3の負荷の下においても、他方の金属部材120側からの熱の影響は小さく、一方の金属部材110における変形量も小さい。
【0053】
従って、図11に図示されるように、溶接時においても、一方の金属部材110は、陥没部111の周囲領域の広い範囲において可動電極57の下面と接触している。このため、一方の金属部材110と可動電極57に通電される溶接時の電流密度も小さくすることができ、これに伴い、発生するジュール熱を抑えることができる。
【0054】
図12および図13は、本実施形態と対比するための比較例としての溶接方法に関するものであり、それぞれ、溶接前の金属部材の構造を示す拡大断面図、および図12に続く工程を説明するための拡大断面図である。
図12に図示された一方の金属部材110は突起部112および陥没部111を有し、図5に図示された一方の金属部材110と同一である。しかし、他方の金属部材120Aは、凹部121を有していない、平坦な板状部材である点で、図5に図示された他方の金属部材120と相違する。
【0055】
上述した如く、可動電極57にはエアーシリンダ53から所定の加圧力P3が付与されているため、接合時に、一方の金属部材110と他方の金属部材120Aとが接触している突起部112には集中応力が発生する。このため、この反力により、図13に図示されるように、他方の金属部材120Aには、突起部112を中心としてその周囲領域が一方の金属部材110側に向かって上昇する方向の大きな反りが生じる。
【0056】
図14は、固定電極58の上面における他方の金属部材120Aとの接触領域を示す斜視図である。他方の金属部材120Aには、溶接前に凹部121は形成されていないので、これに対応する非接触領域はない。このため、他方の金属部材120Aには大きな変形量の反りが生じ、固定電極58における他方の金属部材120Aとの接触領域58b’は、小さい円形面積となり、非接触領域58c’は接触領域58b’の周囲の大きい面積となる。従って、他方の金属部材120Aと固定電極58に通電される溶接時の電流密度が大きくなり、これに伴って、大きなジュール熱が発生する。
【0057】
図15は、可動電極57の下面における一方の金属部材110との接触領域を示す斜視図である。図中、57a’は、一方の金属部材110の陥没部111に対応する非接触領域である。また、57b’は、一方の金属部材110との接触領域であり、57c’は、一方の金属部材110が変形することにより非接触となった領域である。上述した如く、溶接時における他方の金属部材120Aと固定電極58の電流密度は大変大きくなり、発熱が大きくなる。このため、可動電極57の加圧力P3の負荷の下において、他方の金属部材120側からの発熱の影響を受け、一方の金属部材110に、他方の金属部材120A方向に接近する方向の大きな反りが生じる。このため、溶接時の固定電極58における可動電極57下面の一方の金属部材110との接触領域57b’は、図10に図示された本実施形態の場合の接触領域57bよりも面積が小さいものとなる。
【0058】
従って、比較例として図14および図15に図示される溶接構造および抵抗溶接による溶接方法では、溶接時の大きな発熱により、溶接部が損傷して必要な接合力が確保できなくなったり、金属部材の溶融部が溶接用電極に張り付いて溶接用電極を損傷したりする。
【0059】
これに対し、本実施形態の溶接構造および抵抗溶接による溶接方法によれば、溶接時に、可動電極57、一方の金属部材110、他方の金属部材120、固定電極58に通電される電流密度を小さくし、過剰な発熱を抑制することができる。このため、過剰な発熱により溶接部が損傷したり、金属部材の溶融部が溶接用電極に張り付いたりすることが無く、生産効率の高く、かつ、信頼性の高い接合構造を得ることができる。
なお、本発明の溶接構造および抵抗溶接による溶接方法は、上記実施形態以外にも、種々の実施形態とすることができる。以下、他の種々の実施形態について説明をする。
【0060】
[実施形態2]
図16は、本発明の実施形態2を示す。図16は、溶接電流を流す直前の溶接構造を説明するための拡大断面図である。
図16に図示された一方の金属部材110Aには、陥没部111の上部に、陥没部111より幅(直径)の大きい凹部113が形成されている。また、他方の金属部材120Aは、凹部が形成されていない、全体が均一な厚さの板状部材である。
【0061】
一方の金属部材110Aに形成された凹部113の底面113aは、溶接時においても、可動電極57の下面とは接触しない。このため、一方の金属部材110Aの突起部112に作用する集中応力を分散して、一方の金属部材110Aの反りによる変形量を低減する。従って、実施形態1と同様な作用により、電流密度の増大を抑制することができる。
【0062】
図17(a)、(b)は、一方の金属部材110Aを形成する方法を説明するための断面図である。
図17(a)に図示されるように、平板状の一方の金属部材110A’の下面側に、溝152が形成された受け型151配置する。また、一方の金属部材110A’の上面側に、陥没部111と凹部113が組み合わされた形状に対応する突起155aを有する成形パンチ155を配置する。成形パンチ155の周囲における一方の金属部材110A’の部分を、押さえ型154により受け型151に押付ける。
【0063】
この場合、押さえ型154に付与する加圧力P1は、一方の金属部材110に塑性変形が生じない程度とする。この状態で、図17(b)に図示されるように、成形パンチ155を駆動して、一方の金属部材110A’に加圧力P2を付与する。成形パンチ155の突起155aに対応する受け型151には溝152が形成されている。このため、一方の成形パンチ155の突起155aに対応する部分が受け型151の溝152に突き出され、突起部112が形成される。このとき、突起部112に対応する一方の金属部材110の上面には陥没部111および凹部113が形成され、一方の金属部材110Aが形成される。
【0064】
実施形態2においても、実施形態1と同様な効果を奏することができる。また、実施形態2では、他方の金属部材120Aを形成するに際してプレス加工が必要ではなく、一方の金属部材110Aを形成する際、形状は異なるものの、作業工程としては一度のプレス加工ですむので、実施形態1の場合よりも生産性を向上することができる。
【0065】
[実施形態3]
図18は、本発明の実施形態3を示す。図18は、溶接電流を流す直前の溶接構造を説明するための拡大断面図である。
図18に図示された実施形態3が図16に図示された実施形態2と相違する点は、他方の金属部材120が、図5に図示された実施形態1と同様、凹部121を有する点である。
すなわち、実施形態3においては、一方の金属部材110Aに可動電極57に接触しない凹部113が形成され、他方の金属部材120に固定電極58に接触しない凹部121が形成されている。このため、溶接時に作用する加圧力P3をより確実に分散し、一方の金属部材110Aおよび他方の金属部材120の変形量を低減して、溶接時の発熱量を低減することができる。
このような実施形態3においても、実施形態1と同様な効果を奏することができる。
【0066】
図19は、本発明の実施形態4を示す。図19は、抵抗溶接による接合が完了した状態の溶接構造の拡大断面図である。
実施形態4は、可動電極57と固定電極58とが下面を下に向けて軸心が平行に配置された状態で溶接を行う方法である。一方の金属部材110は、突起部112および突起部112に対応する陥没部111を有し、陥没部111が形成された面を下に向けて、図示しない台上に載置される。他方の金属部材120は、突起部112に対応する位置に、突起部112の反対面側に凹部121を向けて配置される。可動電極57は、他方の金属部材120の凹部121が形成された面上に、凹部121と同心に配置される。固定電極58は、一方の金属部材110の突起部112が形成された部分から外れた領域の、一方の金属部材110の上面に、軸心を可動電極57に平行にした姿勢で配置される。
【0067】
可動電極57に加圧力P3を加え、可動電極57と固定電極58間に溶接電流を供給する。他方の金属部材120には、予め、可動電極57に接触しない凹部121が形成されているので、他方の金属部材120の変形量を低減し、過剰な発熱を抑制することができる。従って、実施形態4によっても、実施形態1と同様な効果を奏する。
【0068】
[実施形態5]
図20は、本発明の実施形態5を示す。図20は、抵抗溶接による接合が完了した状態の溶接構造の拡大断面図である。
実施形態5は、実施形態4と同様、可動電極57と固定電極58とが下面を下に向けて軸心が平行に配置された状態で溶接を行う方法である。
実施形態5が、図19に図示された実施形態4と相違する点は、実施形態5では、一方の金属部材110Aおよび他方の金属部材120Aによる図16に図示された組み合わせとした点である。
【0069】
すなわち、他方の金属部材120Aは、凹部が形成されていない、全体が均一な厚さの板状部材である。他方の金属部材120Aの下面は図示しない台上に載置される。また、一方の金属部材110Aには、陥没部111の上部に、陥没部111より幅(直径)の大きい凹部113が形成されている。一方の金属部材110Aは、突起部112を下に向けて、他方の金属部材120Aの上面に配置される。
可動電極57は、一方の金属部材110Aの凹部113が形成された上面上に、凹部113と同心に配置される。固定電極58は、一方の金属部材110Aの突起部112に対応する領域から外れた領域の、他方の金属部材120Aの上面に、軸心を可動電極57と平行にした姿勢で配置される。
【0070】
可動電極57に加圧力P3を加え、可動電極57と固定電極58間に溶接電流を供給する。実施形態2において説明した如く、一方の金属部材110Aに形成された凹部113の底面113aは、溶接時においても、可動電極57の下面とは接触しない。このため、一方の金属部材110Aの変形量を低減し、過剰な発熱を抑制することができる。実施形態5によっても、実施形態2と同様な効果を奏する。
【0071】
[実施形態6]〜[実施形態11]
図21(a)、(b)〜図26(a)、(b)は、それぞれ、一方または他方の金属部材の断面図および外観斜視図である。
金属部材は一方および他方のいずれとしてよいので、ここでは代表して、単に、金属部材とする。
図21(a)、(b)に図示された実施形態6の金属部材160は、円錐状の凹部161を有する。
【0072】
[実施形態7]
図22(a)、(b)に図示された実施形態7の金属部材160は、半球状またはドーム状の凹部162を有する。
【0073】
[実施形態8]
図23(a)、(b)に図示された実施形態8の金属部材160は、矩形形の凹部163を有する。
【0074】
[実施形態9]
図24(a)、(b)に図示された実施形態9の金属部材160は、外形が帯状またはリボン形状を有し、凹部164は、断面形状が円弧状の筒型形状に形成されている。つまり、実施形態9においては、凹部164は、帯状の金属部材の幅方向全体に、断面形状が半円より小さい円弧状の円筒形に形成されている。
【0075】
[実施形態10]
図25(a)、(b)に図示された実施形態10の金属部材160は、外形が帯状またはリボン形状を有する。
金属部材160は、一面側に幅方向全体に亘って延設された断面山形の突起165aを有し、また他面側に突起165aに対応して幅方向全体に亘って延設された断面山形の陥没部165bと、この陥没部165b上に形成された矩形の凹部165cを有する。
【0076】
[実施形態11]
図26(a)、(b)に図示された実施形態11の金属部材160は、一面側に円錐形状の突起166aが形成され、他面側に突起166aに対応して円錐形状に形成された陥没部166bと、この陥没部166b上に形成された矩形の凹部166cを有する。
【0077】
上記実施形態6〜11に示された金属部材160は、いずれも、可動電極57または固定電極58に接触しない凹部を有している。このため、加圧力P3を付与した状態で、溶接電流を供給して抵抗溶接した場合、金属部材160を貫通する電流密度を小さくして、発熱量を抑制することができ、溶接部の接合力を確保し、また、溶接用電極の損傷を防止することができる。
なお、本発明は実施形態1において適用した二次電池以外の装置にも適用が可能であり、以下、本発明が適用された他の装置について説明する。
【0078】
[実施形態12]
図27は、車両用交流発電機200の一部を断面とした側面図である。
車両用交流発電機200は、プーリ214側に配置されるフロントブラケット210及びプーリ214の反対側に配置されるリアブラケット204の2個のブラケットを備える。フロントブラケット210とリアブラケット204はプーリ側ベアリング213とリア側ブラケット207を介してシャフト212を支持している。シャフト212の一方の端部にプーリ214が取り付けられている。プーリ214は、図示はしないが、ベルトを介してエンジン出力軸に接続されている。
【0079】
シャフト212には、界磁コイル211を備えたポールコア202が取り付けられている。フロントブラケット210とリアブラケット204の間には、ステータコア203が配置され、ステータコア203と所定幅のエアギャップを介してポールコア202が配置される。ポールコア202の内側には界磁コイル211が設けられ、ステータコア203には、ステータコイル209が3相に巻かれている。ポールコア202の両面側に、ステータコイル209で発生する発熱を冷却するための2個の冷却用遠心ファン201が配置されている。
【0080】
車両用交流発電機200は、エンジンの駆動によってプーリ214が回転すると、シャフト212が回転する。シャフト212の回転に伴って、シャフト212に取り付けられたポールコア202と共に界磁コイル211が回転する。界磁コイル211の回転によりN極、S極の回転次回が形成され、N極からの磁束がステータコア203を通り、S極の磁極に戻る磁気回路を形成する。この磁気回路の磁束がステータコイル209と交差することにより3相の誘起電圧が発生する。
図27に図示される車両用交流発電機200において、冷却用遠心ファン201が抵抗溶接によりポールコア202に溶接されている。
【0081】
図28は、図27のB部の拡大断面図である。冷却用遠心ファン201は、例えば、鉄で形成された板状部材であり、一面側には突起部112が形成され、他面側には、突起部112に対応する形状の陥没部111と、この陥没部111の上部に配置された凹部113とが形成されている。凹部113の幅(直径)は、陥没部111の幅(直径)よりも大きく形成されている。ポールコア202は、例えば鉄で形成されており、一面が平坦面とされている。この平坦面側が溶接部130において、冷却用遠心ファン201の突起部112に抵抗溶接により溶接されている。
このような溶接構造は、図16に図示された実施形態2の溶接方法により得ることができる。図28に図示された溶接構造は一例であって、上述した実施形態1〜11のいずれの溶接構造でも適用することが可能である。
【0082】
[実施形態13]
図29は、内燃機関用点火装置の全体を示す側面図であり、図30は、図29に図示されたコイルケースの平面図である。
内燃機関用点火装置300は、絶縁性のコイルケース312、図示はしない点火プラグに接続するためのアダプタ部303および一次コイルに電力を供給するコネクタ端子301を備えている。
コイルケース312内には、一次コイル313が巻装された一次ボビン306、二次コイル308が数層に亘り積層された二次ボビン307が配置されている。一次ボビン306および二次ボビン307に巻装された一次コイル313および二次コイル308は絶縁樹脂で被覆された状態でコイルケース312内に収容されている。一次コイル313の一端は、端子板305に固定接続され、コネクタ端子301から電力が供給される。この端子板305には中間端子311が抵抗溶接により溶接されている。
【0083】
図31は、図30のC部の拡大断面図である。
中間端子311は、例えば、黄銅で形成された板状部材であり、一面側には突起部112が形成され、他面側には、突起部112に対応する形状の陥没部111と、この陥没部111の上部に配置された凹部113とが形成されている。凹部113の幅(直径)は、陥没部111の幅(直径)よりも大きく形成されている。端子板305は、例えば、黄銅で形成された板状部材であり、突起部112と反対面側には凹部121が形成されている。中間端子311と端子板305とは溶接部130において、抵抗溶接により溶接されている。
このような溶接構造は、図18に図示された実施形態3の溶接方法により得ることができる。図31に図示された溶接構造は一例であって、上述した実施形態1〜11のいずれの溶接構造でも適用することが可能である。
【0084】
以上のように、本発明に係る溶接構造および抵抗溶接による溶接方法によれば、金属部材における溶接部側とは反対側の面に、すなわち、溶接用電極が当接する面側に、周囲領域から陥没する凹部が形成されているので、金属部材の反りが小さくなり、溶接用電極との接触面積が増大する。このため、電流密度を低減し、溶接時の発熱を低減することができ、これに伴って、溶接部が損傷したり、溶接用電極が損傷したりすることを防止することができる。このため、生産性を向上し、信頼性の高い接合構造を得ることができるという効果を奏する。
【0085】
なお、上記各実施形態では、溶接構造を円筒形二次電池1、車両用交流発電機200および内燃機関用点火装置300に適用した場合で説明したが、本発明の適用はこれらの装置に限られるものではなく、他の装置にも適用が可能である。また、上記各実施形態では金属部材同士の抵抗溶接を点(スポット)溶接としたが、シーム溶接としてもよい。
【0086】
さらに、実施形態1〜11に示した溶接構造は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して適用することが可能であり、要は、一方の面に突起部が、他方の面に突起部に対応する陥没部が形成された第1の金属部材と第2の金属部材とが突起部の頂部を含む溶接部において溶接された溶接構造において、第1の金属部材と第2の金属部材の少なくとも一方には、他方の金属部材との対面側とは反対面側における溶接部に対応する領域に、周囲領域から陥没する凹部が形成されていればよい。
また、本発明の抵抗溶接による溶接方法は、一方の面に突起部が、他方の面に突起部に対応する陥没部が形成された第1の金属部材と第2の金属部材とを正極および負極の電極で加圧して突起部の頂部を含む溶接部において抵抗溶接する方法において、第1の金属部材と第2の金属部材の少なくとも一方に、他方の金属部材との対面側とは反対面側における溶接部に対応する領域に、周囲領域から陥没する凹部を形成し、抵抗溶接する際、凹部の少なくとも一部を正極または負極の電極に接触させずに溶接するものであればよい。
【符号の説明】
【0087】
1 円筒形二次電池
2 電池缶
10 電極群
57 可動電極
58 固定電極
110 一方の金属部材
111 陥没部
112、165a、166a 突起部
120、120A 他方の金属部材
113、121、165c、166c 凹部
130 溶接部
160 金属部材
161〜164、165b、166b 陥没部
200 車両用交流発電機
201 冷却用遠心ファン
202 ポールコア
300 内燃機関用点火装置
305 端子板
311 中間端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に突起部が、他方の面に前記突起部に対応する陥没部が形成された第1の金属部材と第2の金属部材とが前記突起部の頂部を含む溶接部において溶接された溶接構造において、
前記第1の金属部材と前記第2の金属部材の少なくとも一方には、他方の金属部材との対面側とは反対面側における前記溶接部に対応する領域に、周囲領域から陥没する凹部が形成されていることを特徴とする溶接構造。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接構造において、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とは異なる抵抗値を有し、前記凹部が形成された金属部材は、他方の金属部材より抵抗値が大きいことを特徴とする溶接構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の溶接構造において、前記凹部は、前記陥没部が形成された前記一方の金属部材の前記陥没部の周囲に形成されていることを特徴とする溶接構造。
【請求項4】
請求項3に記載の溶接構造において、前記他方の金属部材は、前記一方の金属部材との対面側とは反対面側における前記溶接部に対応する領域が、周囲領域と平坦であることを特徴とする溶接構造。
【請求項5】
請求項3に記載の溶接構造において、前記他方の金属部材は、前記一方の金属部材との対面側とは反対面側における前記溶接部に対応する領域が、周囲領域から陥没していることを特徴とする溶接構造。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の溶接構造において、前記凹部は、円錐状の形状を有することを特徴とする溶接構造。
【請求項7】
請求項1乃至5に記載の溶接構造において、前記凹部は、半球状またはドーム状の形状を有することを特徴とする溶接構造。
【請求項8】
請求項1乃至5に記載の溶接構造において、前記凹部は、筒型の形状を有することを特徴とする溶接構造。
【請求項9】
請求項1乃至5に記載の溶接構造において、前記凹部は、矩形形状を有することを特徴とする溶接構造。
【請求項10】
請求項1乃至5に記載の溶接構造において、前記凹部は、一定の幅で所定長の棒型の形状を有することを特徴とする溶接構造。
【請求項11】
請求項10に記載の溶接構造において、前記凹部は、幅方向における断面が円弧形状であることを特徴とする溶接構造。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の溶接構造において、前記第1の金属部材は銅により形成され、前記第2の金属部材はニッケルにより形成されていることを特徴とする溶接構造。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の溶接構造において、前記第1の金属部材は、二次電池の電極集電板であり、前記第2の金属部材は、二次電池の電池缶と前記電極集電板との間に配置された通電リードであることを特徴とする溶接構造。
【請求項14】
一方の面に突起部が、他方の面に前記突起部に対応する陥没部が形成された第1の金属部材と第2の金属部材とを正極および負極の電極で加圧して前記突起部の頂部を含む溶接部において抵抗溶接する方法において、
前記第1の金属部材と前記第2の金属部材の少なくとも一方に、他方の金属部材との対面側とは反対面側における前記溶接部に対応する領域に、周囲領域から陥没する凹部を形成し、抵抗溶接する際、前記凹部の少なくとも一部を前記正極または負極の電極に接触させずに溶接することを特徴とする抵抗溶接による溶接方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−125819(P2012−125819A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280493(P2010−280493)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】