説明

溶接装置用粉末処理装置

少なくとも1つの溶接電極(3)を溶接部(4)へ運ぶための溶接ヘッド(2)と、粉末を容器(6)から溶接部(4)へ運ぶための粉末運搬装置(5)とを備える、粉末溶接用溶接装置(1)を記載する。粉末運搬装置(5)は、少なくとも、第1端部においてフラックス剤を容器(6)から運ぶために容器(6)中に配置された開口部(9)を備える第1パイプ(8)を備える。粉末運搬装置(5)は、少なくとも、第1パイプ(8)の第2端部に接続されており、加圧ガスを用いて第1パイプ(8)を通して粉末を容器(6)から運ぶように配置された第1エジェクター(7)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末溶接用溶接装置のための粉末を処理する装置および方法に関する。より具体的には、本発明は、粉末溶接において、粉末を容器から溶接部へ運ぶための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、粉末形状のフラックス化合物が、溶接が行われる表面に塗布される、周知の溶接技術である粉末溶接に関する。少なくとも1つの溶接電極が、粉末が塗布される表面に移動され、前記少なくとも1つの溶接電極とこの表面との間に電圧が印加される。溶接部全体の中の粉末で溶接が行われるのが望ましい。
【0003】
高速での溶接に適合した現在の粉末溶接用溶接装置では、単位時間当たりに多くの粉末が消費される。現在の溶接装置は、新しい粉末が溶接中に消費されなかった使用済粉末と混合される少なくとも1つの粉末用容器を備える。フラックス化合物は、この容器から第1および第2圧力容器へ交互に運ばれる。粉末は、圧縮空気を用いて、これらの圧力容器から落下放出容器(drop release container)へ運ばれ、そこから溶接粉末は溶接部へ落ちる。第1圧力容器が部分的に空になった場合、そこからフラックス剤が落下放出容器へ運ばれる圧力容器が、第1圧力容器から第2圧力容器へ交換される。フラックス剤が第1圧力容器から落下放出容器へ運ばれるのと同時にフラックス剤が第2圧力容器へ充填され、その逆もまた同様である。現在の溶接装置の他の課題は、圧力容器の形状をした機器、および粉末をリザーバーから落下放出容器へ運ぶための他の機器が、複雑で、高価であり、据え付けおよび取り扱いが厄介であるということである。さらに、圧力容器の使用中、圧力容器に関して種々の調節をしなければならない。上記による圧力容器を用いた運搬は、溶接産業において1950年代から使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の課題のいくつかを少なくとも部分的に解決する、粉末溶接用溶接装置、および粉末を処理する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的の少なくとも1つは、添付の独立請求項による溶接装置および方法によって果たされる。
【0006】
さらに、本発明の利点は、従属請求項の特徴により達成される。
【0007】
本発明の基本概念は、粉末形状のフラックス剤を容器から溶接部へ運ぶためのエジェクター(ejector)を使用することである。エジェクターは、以前から他の用途における使用で周知であり、加圧ガスがノズルを通って圧縮され、ノズルを取り囲むガスが加圧ガスとともに運ばれるという原理に基づく。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの溶接電極を溶接部へ運ぶための溶接ヘッドと、粉末を容器から溶接部へ運ぶための粉末運搬装置とを備え、粉末運搬装置が、少なくとも、第1端部において粉末を容器から運ぶために容器中に配置された開口部を備える第1パイプを備える粉末溶接用溶接装置が提供される。溶接装置は、粉末運搬装置が、少なくとも、第1パイプの第2端部に接続されており、加圧ガスを用いて第1パイプを通して粉末を容器から運ぶように配置された第1エジェクターを備えることを特徴とする。空気供給パイプは、空気を第1パイプの開口部へ運ぶために、その開口部が第1パイプの第1端部の開口部の1つに隣接して配置される。このようにして、第1パイプへの空気供給が確保され、それにより、弱すぎる空気の流れのために吸引が悪いという問題が避けられる。
【0009】
本発明による粉末運搬装置によって、運搬容器から直接溶接粉末を吸引することが可能になる。これにより、従来技術による装置が使用されている場合と比べて、粉末の処理が容易になる。
【0010】
粉末運搬装置は、そこから粉末が溶接部へ落ちるように配置されている落下放出容器を備え、第1エジェクターが粉末を第1容器から落下放出容器のほうへ運ぶように配置されていてもよい。このような落下放出容器によって、そうでなければ可能なことではない粉末形状のフラックス剤のより均一な運搬が達成される。
【0011】
第1エジェクターは、入口および出口を備え、粉末運搬装置は、第1エジェクターの出口に固定して配置され、粉末を第1エジェクターから運ぶように配置された第2パイプを備え、第1パイプの第2端部は、第1エジェクターの入口に固定して配置されてもよい。エジェクターは、好ましくは、フラックス剤が吸引されなければならない距離が比較的短く保たれるよう、フラックス剤用の容器に隣接して配置される。
【0012】
第1エジェクターの入口は入口方向を規定し、第1エジェクターの出口は出口方向を規定して良く、入口方向は出口方向とある角度を形成する。入口方向に対してある角度をなして出口方向を配置することにより、オリフィスへの加圧ガスの供給が容易になる。入口方向を出口方向と平行にすることは、本発明の範囲内で当然可能である。
【0013】
第1パイプおよびエジェクターの入口は、5〜100mmの間、好ましくは10〜50mmの間、最も好ましくは15〜30mmの間の内径を有し得る。対応して、エジェクターの出口および第2パイプは、5〜100mmの間、好ましくは10〜50mmの間、最も好ましくは15〜30mmの間の内径を有し得る。前記内径が、粉末形状のフラックス剤の運搬中に満足な結果を与えることが分かった。
【0014】
第1エジェクターは、加圧ガスをエジェクターの出口に向かう方向に吹きつけるように配置された開口部を備える。この開口部が、エジェクターの出口の方に直接向けられていることは必ずしも必要ではない。
【0015】
加圧ガス用のエジェクターのオリフィスは、エジェクターの出口の内径の2〜50%の間、好ましくはエジェクターの出口の内径の5〜20%の内径を有し得る。
【0016】
加圧ガス用のオリフィスは、エジェクターの出口に関して中心に置かれ得る。このような配置が、エジェクターの機能にとって有利であることが分かった。
【0017】
溶接装置は、第1エジェクターに加えて、少なくとも1つのさらなるエジェクターを備えてもよく、さらに、この少なくとも1つのさらなるエジェクターは第1容器と溶接部との間に配置される。これは、第1容器と溶接部との間の距離が広い場合に必要となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による溶接装置を概略的に示す図である。
【図2】エジェクター7を横断面でより詳細に示す図である。
【図3】代替実施形態による溶接装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下で、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
以下の本発明の好ましい実施形態の説明において、異なる図中の同様の部品は、同じ参照番号によって表示する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態による粉末溶接用溶接装置1を概略的に示している。溶接装置1は、少なくとも1つの溶接電極3をワークピース20上の溶接部4へ供給するための溶接ヘッド2と、粉末形状のフラックス剤を容器6から溶接部4へ運ぶための粉末運搬装置5とを備える。粉末運搬装置5は、エジェクター7と、第1端部において、粉末を容器6から運ぶために容器中に配置された開口部9を備え、第2端部において、エジェクター7に接続されている第1パイプ8とを備える。粉末運搬装置はまた、落下放出容器11と、エジェクター7と落下放出容器11との間に配置された第2パイプ12とを備える。エジェクター7は、加圧ガスを用いて、粉末形状のフラックス剤を、容器6から第1パイプ8、エジェクター7および第2パイプ12を通って落下放出容器まで運ぶように配置される。フラックス剤は、落下放出容器から溶接部4の上に落ちるように配置される。このため、エジェクター7は、加圧ガス用入口10を備える。加圧ガスは、例えば圧縮機を用いるなどの多くの異なる方法のいずれによっても供給され得る。図1では、加圧ガスの供給源は示されていない。粉末運搬装置5はまた、容器6を取り囲む空気中にある第1開口部14、および第1パイプ8の開口部9に隣接して配置された第2開口部15を備えて配置された空気供給パイプ13を備える。空気供給装置13は、図1に示されるものとは異なる方法で配置され得る。例えば、空気供給パイプが第1パイプ8を取り囲むようにすることが可能である。
【0022】
図2では、エジェクター7が横断面でより詳細に示されている。エジェクター7は、第1パイプ8に接続された第1パイプ部16と、第2パイプ12に接続された第2パイプ部17とを備える。エジェクターは、入口方向25の入口21と、出口方向26の出口22とを備える。加圧ガス用入口10は、第2パイプ部17に関して基本的に中心に置かれるオリフィス19を備えるエジェクターパイプ18の中へ続く。第1パイプ8、第2パイプ12、第1パイプ部16、第2パイプ部17、ならびにエジェクターの入口21および出口22も、5〜100mmの間、好ましくは10〜50mmの間、最も好ましくは15〜30mmの間の内径を有する。エジェクターパイプ18のオリフィス19は、第2パイプの内径の2〜50%の間、好ましくは第2パイプの内径の5〜20%の間の内径を有する。エジェクターパイプ18およびそのオリフィス19を図に示される方法とは異なる方法で配置することも当然可能である。
【0023】
記載される実施形態による溶接装置の運転中、例えば加圧空気などの加圧ガスは、入口10を通って吹き入れられ、エジェクターパイプ18を通って吹き出され、エジェクターパイプを取り囲む空気が動かされるだろう。それにより、容器6から、第1パイプ8、エジェクター7および第2パイプ12を通って、落下放出容器11までの空気流が作り出される。粉末は、空気流とともに容器6から落下放出容器11まで運ばれるだろう。第1パイプ8への十分な空気供給を確保するため、空気供給パイプ13は、容器6を取り囲む空気中にある第1開口部14、および第1パイプ8の開口部9に隣接して配置された第2開口部15を備えて配置される。粉末が落下放出容器11に達した後、粉末はワークピース20上の溶接部4の上へ落ちる。溶接中、ワークピース20は矢印の方向へ動かされ、粉末は、溶接が行われる前に溶接部4の上に塗布される。
【0024】
図3は、代替実施形態による溶接装置を概略的に示している。図3では、容器6と落下放出容器11との間の距離は十分に広いので、粉末を容器6から落下放出容器11へ確実に運ぶことができるようにするためには、さらに第2エジェクター23および第3エジェクター24が必要である。
【0025】
エジェクターからのおよびエジェクターまでのパイプは、パイプ中の任意の止め具が、例えばホースを揺することによってより容易に働くように、好ましくはホースとされる。
【0026】
記載される実施形態は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの方法で変えられ得る。
【0027】
容器6と落下放出容器11との間に任意の数のエジェクターを配置することが当然可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの溶接電極(3)を溶接部(4)へ運ぶための溶接ヘッド(2)と、粉末を容器(6)から前記溶接部(4)へ運ぶための粉末運搬装置(5)とを備え、前記粉末運搬装置(5)が、少なくとも、第1端部において粉末を前記容器(6)から運ぶために前記容器(6)中に配置された開口部(9)を備える第1パイプ(8)を備える粉末溶接用溶接装置(1)であって、
前記粉末運搬装置(5)が、少なくとも、前記第1パイプ(8)の第2端部に接続されており、加圧ガスを用いて前記第1パイプ(8)を通して粉末を前記容器(6)から運ぶように配置された第1エジェクター(7)と、空気を前記第1パイプ(8)の開口部に供給するために、その開口部(15)の1つが前記第1パイプ(8)の第1端部の開口部に隣接して配置される空気供給パイプ(13)とを備えることを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記粉末運搬装置(5)が、そこから粉末が前記溶接部(4)上へ落ちるように配置されている落下放出容器(11)を備え、前記第1エジェクター(7)が粉末を前記第1容器(6)から前記落下放出容器(11)のほうへ運ぶように配置された、請求項1に記載の溶接装置(1)。
【請求項3】
前記第1エジェクター(7)が、入口(21)、出口(22)を備え、前記粉末運搬装置が、前記第1エジェクター(7)の出口(22)に固定して配置され粉末を前記第1エジェクター(7)から運ぶように配置された第2パイプ(12)を備え、前記第1パイプ(8)の第2端部が、前記第1エジェクター(7)の入口(21)に固定して配置された、請求項1または請求項2に記載の溶接装置(1)。
【請求項4】
前記第1エジェクター(7)の前記入口(21)が入口方向を規定し、前記第1エジェクターの出口が前記出口方向を規定し、前記入口方向が前記出口方向とある角度を形成する、請求項3に記載の溶接装置(1)。
【請求項5】
前記第1パイプ(8)が、5〜100mmの間、好ましくは10〜50mmの間、最も好ましくは15〜30mmの間の内径を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項6】
前記エジェクター(7)の前記出口(22)および前記第2パイプ(12)が、5〜100mmの間、好ましくは10〜50mmの間、最も好ましくは15〜30mmの間の内径を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項7】
前記第1エジェクター(7)が、加圧ガスを前記エジェクター(7)の前記出口(22)に向かう方向に吹きつけるように配置されたオリフィス(19)を備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。
【請求項8】
加圧ガス用の前記エジェクターの前記オリフィス(19)が、前記第2パイプ(12)の内径の2〜50%の間、好ましくは前記第2パイプ(12)の内径の5〜20%の内径を有する、請求項7に記載の溶接装置(1)。
【請求項9】
前記第1エジェクターに加えて、少なくとも1つのさらなるエジェクター(23、24)を備え、さらに前記少なくとも1つのさらなるエジェクター(23、24)が前記第1容器(6)と前記溶接部(4)との間に配置される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の溶接装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−526837(P2011−526837A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516221(P2011−516221)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050715
【国際公開番号】WO2010/002328
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(509242048)イーエスエービー エービー (6)
【Fターム(参考)】