説明

溶断シール性に優れたポリオレフィン系熱収縮性フィルム

【課題】架橋を行うことなく、また、収縮仕上がり性、静電シール性、印刷適性等の特性を低下させることなく、溶断シール時の糸引きを抑制出来、溶断シール線をより美麗に仕上げることが可能なポリオレフィン系熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】平均重合度が4〜15のポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルを、オレフィン系樹脂からなる多層または単層のフィルムの少なくとも1層に0.05〜3.0%配合したフィルムを、縦または横に1軸延伸、あるいは縦横2軸延伸してなる、溶断シール包装用のポリオレフィン系熱収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収縮包装材料に関し、より詳しくは、溶断シール性に優れたポリオレフィン系熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱収縮性包装材料としては、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルム、ポリプロピレン系シュリンクフィルム、ポリエチレン系シュリンクフィルム等が知られているが、低価格、使用後の廃棄処理の容易さなどの点でポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系シュリンクフィルムが好んで用いられている。
【0003】
この中で、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂を表層や内部層に、単独又はブレンドしたものを、単層、又は積層した、ポリオレフィン系シュリンクフィルムが開示されている(特許文献1〜3)。これらの熱収縮性フィルムでは、溶断シール方式の自動包装機が好適に用いられるが、溶断シールする際に、シールバーに樹脂が付着する事によって、フィルムとシールバーの間に溶融樹脂が糸のようになり(以下、糸引きと記す)、シール線が汚くなり、包装体の見栄えが悪くなるという問題を有していた。
【0004】
これらの欠点を改善すべく、プロピレン系樹脂またはエチレン系樹脂の融解挙動、MFR等を規定したポリオレフィン系熱収縮性フィルムが開示されている(特許文献4〜5)。これらのフィルムでは、溶断シールバー表面に施されているテフロン(登録商標)コート(溶融樹脂の付着を抑制する効果がある)が摩耗して剥がれてくると、糸引きが発生しやすくなるという問題を有していた。
【0005】
また、ポリオレフィン系樹脂中に、結晶核剤であるプロピレン/3-メチルブテン−1共重合体を添加し、溶断シール後の溶融樹脂の固化を早める事で、糸引きを改善したポリオレフィン系熱収縮性フィルムが開示されている(特許文献6)。このフィルムでは、糸引きは殆ど発生しないものの、結晶核剤添加によって引張弾性率が高くなるため、収縮包装体にコーナーシワが発生しやすくなり、収縮包装体の外観を損なうという問題を有していた。
【0006】
その他、エチレン系樹脂に架橋処理を施して、糸引きを改善したポリエチレン系架橋シュリンクフィルムが開示されている(特許文献7)。これらのポリエチレン系架橋シュリンクフィルムでは、糸引きは殆ど発生しないものの、架橋処理を施されているため、製造工程や規格外製品で発生するスクラップを再利用し難く、製品のコストアップを招く、省資源性が低下するといった問題を有していた。
【0007】
一方、ポリオレフィン系熱収縮性フィルムにおいて、防曇剤としてグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを用いうることが開示されているが、当該ポリグリセリン脂肪酸エステルはジグリセリン脂肪酸エステルを主成分とするものであり(特許文献8)、溶断シール時の糸引きを防止する効果を奏するものではなかった。また、このフィルムでは、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルが過剰にブリードアウトするため、静電シール方式を採用しているオーバーラップ用自動包装機におけて良好な静電シール性が得られ難いという問題や、印刷適性が損なわれ易いという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−160837号公報
【特許文献2】特開2005−144725号公報
【特許文献3】特開2009−39950号公報
【特許文献4】特開平5−131599号公報
【特許文献5】特開平11−70625号公報
【特許文献6】特開2009−101682号公報
【特許文献7】特開2001−1468号公報
【特許文献8】特開平7−9640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、架橋を行うことなく、また、収縮仕上がり性、静電シール性、印刷適性等の特性を低下させることなく、溶断シール時の糸引きを抑制出来、溶断シール線をより美麗に仕上げることが可能な溶断シール包装に用いるポリオレフィン系熱収縮性フィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、平均重合度が4〜15のポリグリセリン脂肪酸エステルを樹脂に適量配合することで、溶断シール時の糸引きを防止できることを見出した。
すなわち本発明は、
(1)平均重合度が4〜15のポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルを、オレフィン系樹脂からなる多層または単層のフィルムの少なくとも1層に0.05〜3.0%配合したフィルムを、縦または横に1軸延伸、あるいは縦横2軸延伸してなる、溶断シール包装用のポリオレフィン系熱収縮性フィルム、
(2)前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸と、平均重合度が4〜15のポリグリセリンとのエステル化生成物からなることを特徴とする上記(1)に記載のポリオレフィン系熱収縮性フィルム、
(3)前記オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂、あるいはエチレン系樹脂からなることを特徴とする上記(1)〜(2)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系熱収縮性フィルム、
(4)前記オレフィン系樹脂として、プロピレン系樹脂を表層、エチレン系樹脂を芯層に用いた少なくとも3層からなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系熱収縮性フィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリオレフィン系熱収縮性フィルムは、オレフィン系樹脂中に、溶断シール時の糸引きを抑制する効果のある特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05〜3.0%配合させ、縦または横に1軸延伸する、あるいは縦横2軸延伸することで、溶断シール方式を採用している自動包装機を用いた包装において、溶断シール時の糸引きが殆ど発生せず、シール線をより美麗に仕上げることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、オレフィン系樹脂中に配合するポリグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度が4〜15、好ましくは4〜10であるポリグリセリンに脂肪酸がエステル結合した化合物からなり、0.05〜3.0%配合させることで、溶断シール方式を採用している自動包装機を用いた包装において、溶断シール時の糸引きを抑制する作用を成す。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの作用メカニズムについては、明確な要因特定はできていないが、本発明者らは以下の様に推定している。すなわち、フィルム表面にブリードアウトしたポリグリセリン脂肪酸エステルが、溶断シールする際に、シールバー表面に随時移行し、シールバー表面にポリグリセリン脂肪酸エステルの膜を形成する。この膜の形成により、フィルムとシールバーとの間に界面ができることから、溶融樹脂のシールバーへの付着を抑えられ、糸引きを抑制できるとの考えである。従って、シールバー表面に施されているテフロン(登録商標)コートが摩耗により剥がれても、本発明においては、糸引きが発生しやすくなることはない。
【0014】
オレフィン系樹脂中に配合するポリグリセリン脂肪酸エステルが0.05%未満では溶断シール時の糸引きを抑制する効果が発揮されず、3.0%を超えると糸引き抑制効果は十分に得られる一方で、静電シール方式を採用しているオーバーラップ用自動包装機において、満足な静電シール性が得られなくなる。
【0015】
ポリグリセリン脂肪酸エステル中のポリグリセリンの平均重合度が4未満ではシールバー糸引き抑制効果が十分に得られず、15を超えるとフィルム化した際にフィルム表面にポリグリセリン脂肪酸エステルがブリードアウトし難くなり、糸引き抑制効果が十分に得られなくなる。
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステル中の脂肪酸は、炭素数8〜22、さらには10〜18の飽和または不飽和脂肪酸であることが好ましい。炭素数が8未満では静電シール性が低下し易く、22を超えるとフィルム化した際にフィルム表面にポリグリセリン脂肪酸エステルがブリードアウトし難くなり、糸引き抑制効果が十分に得られ難くなる。
【0017】
本発明に用いられるオレフィン系樹脂は、前記に規定しているポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05〜3.0%配合して糸引き抑制作用を発現出来るものであれば、特に限定されるものではない。例えば、一般的に多用されているオレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂が上げられる。
【0018】
ここで、プロピレン系樹脂とは、プロピレン含量が50mol%以上からなる重合体のことであり、メタロセン触媒やチーグラー・ナッタ触媒等により製造された、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンの共重合体、例えばプロピレン−エチレン、プロピレン−ブテン共重合体等、及びプロピレン−エチレン−ブテン3元共重合体が挙げられる。
【0019】
エチレン系樹脂とは、エチレン含量が50mol%以上からなる重合体のことであり、たとえばプロピレン、ブテン−1、ペンテンー1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1のうち1種以上のα−オレフィンとエチレンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン単独重合体等が挙げられる。
【0020】
オーバーラップ用自動包装においては、包装機適性の付与し易さの観点から、プロピレン系樹脂、あるいは、エチレン系樹脂を単層で、または2層以上に積層して用いることが好ましい。また、静電シール性、印刷適性と糸引き抑制効果とを両立させる観点から、プロピレン系樹脂を表層、エチレン系樹脂を芯層に用いた少なくとも3層からなる構成がさらに好ましい。表層にエチレン系樹脂を積層した場合は、表層にプロピレン系樹脂を積層した場合に比べ、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルがフィルム表面に過剰にブリードし易くなり、帯電性の低下により静電シール性が損なわれ易く、また印字適性の低下により印刷適性が損なわれ易くなる。
【0021】
オレフィン系樹脂を積層する場合のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合の仕方としては、本発明の目的に支障をきたさない範囲であれば、各層均一な濃度、または各層不均一な濃度、どちらの場合でも構わない。
【0022】
本発明において、フィルムの全体厚みについては、特に限定されないが、熱収縮性包装材料用途としては7〜35μmであることが好ましい。
【0023】
本発明の目的に支障をきたさない範囲であれば、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤等の添加剤がそれぞれの有効な作用を具備させる目的で適宜使用することができる。
【0024】
本発明の熱収縮性フィルムは、前記の原料を用いて得られた未延伸原反フィルムを、縦または横に1軸延伸加工、あるいは縦横2軸延伸加工して得られる。1軸延伸加工、2軸延伸加工は公知の延伸方法によって行う事ができ、例えば、前者はテンター1軸延伸等であり、後者は、チューブラー同時2軸延伸、テンター同時2軸延伸、テンター逐次2軸延伸等である。
未延伸の場合には、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルがフィルム表面に過剰にブリードし、帯電性の低下により静電シール性が損なわれる、また印字適性の低下により印刷適性が損なわれる等の問題が発生する。
【0025】
以下、チューブラー同時2軸延伸法を例に挙げ、本発明の製造方法を説明するが、これに限定されるものではない。
まず、前記の原料を、押出機により溶融混練し、押出機先端に接合した環状ダイより環状に押し出し、延伸することなく一旦急冷固化してチューブ状の未延伸原反フィルムを作製する。得られたチューブ状未延伸原反フィルムを、チューブラー延伸装置に供給し、原反を加熱させながら、チューブ内部にガス圧を適用して膨張延伸させ、縦横とも延伸倍率3〜8倍で同時二軸配向を起こさせる。延伸装置から取り出したフィルムは、希望によりアニーリングすることができ、このアニーリングにより保存中の自然収縮を抑制することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例おける測定及び評価の方法は、以下に示す通りに行った。
【0027】
1.厚み比:フィルムの断面を顕微鏡で観察することにより測定した。
【0028】
2.MI:JIS−K7210に準拠して、190℃、2.16kg荷重条件で測定した。
【0029】
3.MFR:JIS−K7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重条件で測定した。
【0030】
4.融解ピーク温度:示差走査熱量計(DSC)を用いて、JIS−K7121に準じて測定した。
【0031】
5.糸引き評価:協和電機(株)製のL型シール式半折自動包装機(型式:AT-500
)を用いて、溶断シール温度200℃、溶断シール時間2秒の条件にて市販の化粧箱を200個連続して包装した。その後、包装サンプルの溶断シール部を観察し、以下
の基準にて、糸引き性を評価した。
<評価基準>
○:糸引き発生数が、包装サンプル1個あたりの平均(包装サンプル100個中の全
糸引き発生数/包装サンプル100個)で1本未満。
△:糸引き発生数が、包装サンプル1個あたりの平均で1本以上3本未満。
×:糸引き発生数が、包装サンプル1個あたりの平均で3本以上。
【0032】
6.静電シール性評価:(株)ハナガタ製の静電シール自動包装機(型式:HP-20SA)にて、900mlの酒パックを包装し、フィルムの耐熱限界5℃手前に設定した収縮トンネル内を5秒間滞留させ、トンネル通過後の包装サンプルの中から無作為に10個を選び、縦シール部の静電シール性を以下の基準にて評価した。
<評価基準>
○:包装サンプルの静電シール部が開かず、綺麗にシールされている。
×:包装サンプルの静電シール部に開きが見られる。
【0033】
原料として用いた樹脂を以下に示す。
A1;
デカグリセリンオレート
A2;
デカグリセリンステアレート
A3;
デカグリセリンラウレート
A4;
テトラグリセリンステアレート
A5;
ヘキサグリセリンオレート
A6;
ヘキサグリセリンラウレート
A7;
ジグリセリンラウレート
A8;
トリグリセリンラウレート
B1;
プロピレン−ブテン−1共重合体 (融解ピーク温度75℃、MFR=7.0g/10分)
B2;
プロピレン−エチレンランダム共重合体 (融解ピーク温度145℃、MFR=2.3g/10分)
B3;
プロピレン−エチレンランダム共重合体 (融解ピーク温度125℃、MFR=2.0g/10分)
C1;
エチレン−オクテン−1共重合体 (密度=0.905g/cm3、MI=0.8g/10分)
C2;
エチレン−オクテン−1共重合体 (密度=0.916g/cm3、MI=1.0g/10分)
【0034】
実施例1
B1/B2=35重量部/65重量部の樹脂組成物を両表面層、C1を芯層とした3層構成からなるオレフィン系樹脂中に、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA1を全層1%になるように配合し、3台の押出機で溶融混練した後、厚み比が1/5/1になるように各押出機の押出量を設定し、3層環状ダイスにより下向きに共押出した。形成された3層構成チューブを、内側は冷却水が循環している円筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引き取り、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸チューブをチューブラー二軸延伸装置に導き、加熱しながら縦横それぞれ5倍に延伸し、積層二軸延伸フィルムを得た。
表1に示すように得られたフィルムは、溶断シール時の糸引きが殆ど無く、外観美麗なシール線が得られるものであった。また、静電シール性も特に問題なく良好であった。
【0035】
実施例2
B2を両表面層、B3を中間層、C2を芯層とした5層構成からなるオレフィン系樹脂中に、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA2を全層0.5%になるように配合し、5台の押出機で溶融混練した後、厚み比が1/1/6/1/1になるように各押出機の押出量を設定し、5層環状ダイスにより下向きに共押出した。形成された5層構成チューブを、内側は冷却水が循環している円筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引き取り、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸チューブをチューブラー二軸延伸装置に導き、加熱しながら縦横それぞれ5倍に延伸し、積層二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果は、表1に示す通りで、実施例1同様、良好な特性であった。
【0036】
実施例3
B2単層からなるオレフィン系樹脂中に、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA3を全層0.1%になるように配合し、1台の押出機で溶融混練した後、環状ダイスにより下向きに押し出した。形成された単層チューブを、内側は冷却水が循環している円筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引き取り、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸チューブをチューブラー二軸延伸装置に導き、加熱しながら縦横それぞれ4倍に延伸し、積層二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果は、表1に示す通りで、実施例1同様、良好な特性であった。
【0037】
実施例4
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてA1の代わりに、A4を全層2.5%になるように配合した以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果は、表1に示す通りで、実施例1同様、良好な特性であった。
【0038】
実施例5
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてA1の代わりに、A5を全層2.0%になるように配合した以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果は、表1に示す通りで、実施例1同様、良好な特性であった。
【0039】
実施例6
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてA1の代わりに、A6を全層2.0%になるように配合した以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果は、表1に示す通りで、実施例1同様、良好な特性であった。
【0040】
比較例1
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA1を配合しない点以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
表2に示すように、得られたフィルムでは、溶断シール時に糸引きが頻発し、シール線の外観を著しく損なう結果であった。
【0041】
比較例2
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA1の配合量を全層0.03%にした以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
表2に示すように、得られたフィルムでは、溶断シール時に糸引きが散発し、シール線の外観を損なう結果であった。
【0042】
比較例3
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA1の配合量を全層3.5%にした以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
表2に示すように、得られたフィルムは、溶断シール時の糸引きが殆ど無く、外観美麗なシール線が得られるものであったが、一方で、静電シール性が悪く、静電シール部が収縮トンネル内で開くといった不具合が見られる結果であった。
【0043】
比較例4
実施例3において、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA3を配合しない点以外は、実施例3と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
表2に示すように、得られたフィルムでは、溶断シール時に糸引きが散発し、シール線の外観を損なう結果であった。
【0044】
比較例5
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA1は配合せず、代わりにジグリセリンラウレート(A7)を全層2.0%になるように配合した以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
表2に示すように、得られたフィルムでは、溶断シール時に糸引きが散発し、シール線の外観を損なう結果であった。
【0045】
比較例6
実施例1において、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるA1は配合せず、代わりにトリグリセリンラウレート(A8)を全層2.0%になるように配合した以外は、実施例1と同様の方法で、積層二軸延伸フィルムを得た。
表2に示すように、得られたフィルムでは、溶断シール時に糸引きが散発し、シール線の外観を損なう結果であった。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の熱収縮性包装材料は、溶断シール方式を採用している自動包装機において、溶断シールする際に、糸引きを殆ど発生させることなく、外観美麗なシール線が得られるポリオレフィン系熱収縮性フィルムとして好適に用いることができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が4〜15のポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルを、オレフィン系樹脂からなる多層または単層のフィルムの少なくとも1層に0.05〜3.0%配合したフィルムを、縦または横に1軸延伸、あるいは縦横2軸延伸してなる、溶断シール包装用のポリオレフィン系熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸と、平均重合度が4〜15のポリグリセリンとのエステル化生成物からなることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系熱収縮性フィルム。
【請求項3】
前記オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂、あるいはエチレン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載のポリオレフィン系熱収縮性フィルム。
【請求項4】
前記オレフィン系樹脂として、プロピレン系樹脂を表層、エチレン系樹脂を芯層に用いた少なくとも3層からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系熱収縮性フィルム。



【公開番号】特開2011−126581(P2011−126581A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288609(P2009−288609)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】