説明

溶断シール袋及びその製造方法

【課題】柔軟性、機械強度及び耐熱性等の特性に優れるとともに、溶断シール部の外観に優れ、且つ、高い溶断シール強度を有する溶断フィルム袋及びその溶断フィルム袋を簡便で再現性良く作製可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸及び脂肪族ポリエステルを95:5〜55:45の重量比率で含むポリ乳酸系樹脂100重量部、並びに、トリグリセリド系可塑剤5〜35重量部を含有するフィルムを延伸して得られる、引張弾性率が200〜950MPaの二軸延伸フィルムを積層し、溶断刃及び刃受けの間でピンチすることにより溶断シールし、二軸延伸フィルムの端部に形成される溶断シール部の破断強度を10N/10mm幅以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂の延伸フィルムを溶断シールして製袋した溶断シール袋及びその製造方法に関し、特に、ポリ乳酸を可塑剤で改質した柔軟且つ機械強度に優れるポリ乳酸系樹脂フィルムを、溶断シールにて製袋した新規技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレン等を原料とするポリオレフィン系のフィルム袋が広く使用され、例えば、開口部分に開閉可能なジッパーを取り付けた溶断シール袋が、食品、雑貨、機械、電子、薬品及び化粧品の収納等において汎用されている。なかでも、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンは、柔軟且つ高強度なので、収納物の形状に追従でき、しかも、収納物による変形や破れに強い特性を有し、さらに、溶断シール加工性に富み、シール部の強度や外観にも優れている。
しかしながら、かかるポリエチレン等に代表されるポリオレフィン系のフィルムは、発熱量が高いので、焼却処理の際に燃焼炉にダメージを与え得る。また、ポリオレフィン系のフィルムを廃棄物として埋め立て処理することもなされているが、この場合は、埋め立て場所の確保が問題となる。そこで、焼却時の燃焼熱量が低いフィルム袋や、焼却以外の方法で減容が可能なフィルム袋の開発が望まれている。
【0003】
そのため、植物由来の乳酸を主原料とするポリ乳酸系樹脂をフィルム袋の原料に用いることが検討されている。ポリ乳酸は、ポリエチレン等の燃焼熱量の半分以下であり、コンポスト等の水分が豊富な条件下で加水分解が進行し、その加水分解物が微生物により分解され、無毒物へ分解される特性を有する。
【0004】
一方、ポリ乳酸系樹脂フィルムは、ポリスチレンに近い機械特性を有するものの、脆いという特性を有することが知られている。
そのため、特開平05−508819号公報には、ポリ乳酸系樹脂フィルムの機械強度を改良する方法として、ポリ乳酸系樹脂フィルムを二軸方向に延伸処理して配向させることにより、優れた機械強度を発現させる技術が開示されている。ポリ乳酸は、ポリエチレンと比較して結晶化速度が遅いが、かかる延伸加工における配向結晶化により、工程内で高い結晶化が達成され、優れた機械強度を有するフィルムを得ることができる。
また、特開平9−95605号公報には、ポリ乳酸系樹脂を用いてポリエチレンのように柔軟で且つ機械強度に優れる特性を発現させるために、ポリ乳酸に可塑剤を添加して改質する技術が開示されている。
さらに、特開2000−302956号公報には、優れた柔軟性及び耐熱性を有するとともに可塑剤のブリードを抑制すべく、ポリ乳酸系樹脂に2種のグリセリンエステルを配合する技術が開示されている。
【0005】
さらに、特開2004−82512号公報には、ポリプロピレン延伸フィルム(OPP)に類似した物理特性を得るために、ポリ乳酸に脂肪族ポリエステルを添加した積層構造体を用いることにより、フィルム表面の滑り性を改良してシワやカールの発生を抑制する技術が開示されている。
同様に、特開2004−90522号公報には、ポリプロピレン延伸フィルム(OPP)に類似した物理特性を得るために、ポリ乳酸に不活性粒子と可塑剤とを添加した積層構造体を用いることにより、柔軟性を発現させるとともにフィルム表面の滑り性を改良してシワやカールの発生を抑制する技術が開示されている。
【0006】
一方、フィルム袋の溶断シールは、通常、フィルムの溶融温度以上に加熱した溶断刃にて二枚に重ねたフィルムを切断し、その切断面を溶断刃との接触によりシールすることにより実施される。
しかしながら、上記のように配向結晶化した延伸フィルムは、優れた機械強度を実現可能であるものの、加熱した溶断刃との接触時に熱収縮し易いので、未延伸フィルムと比較して、シール面の直線性に劣る等、溶断シール加工性に劣る傾向にある。また、ポリ乳酸のような結晶化速度が遅い樹脂では、溶断刃にて溶解された部分の結晶構造が不規則となるので、溶断シール部において高い機械強度が得られない傾向にある。
【0007】
延伸フィルムの溶断シールにおいて、溶断シール部の機械強度を向上させる方法としては、シール温度の高温化及びシール時間の長時間化と、フィルム材料の改質とが考えられる。
シール強度を高温化する手法としては、例えば、溶断刃の温度を上げることが考えられる。このようにすると、シールする二枚のフィルムの界面が充分に溶解し、溶断シール部の機械強度を向上させ得ると考えられる。ところが、溶断刃を高温化すると、二枚のフィルム界面以外の部分も溶解し得るので、その界面以外の部分の強度が著しく低下したり、フィルム形状が変形したりする等の不具合が発生し得る。また、溶断刃の高温化により、溶融したフィルムが溶断刃の一部に付着し、工程トラブルを誘発し得る。
一方、シール時間の長時間化は、溶断シール部の機械強度を向上させ得る点において有効であると考えられるが、生産性の低下及び溶断後に溶断刃をフィルムから離間させる際に溶断刃とフィルム面とが接着してフィルムが溶断刃に同伴する工程トラブルを誘発し得る。
他方、フィルム材料を改質する手法としては、融点を低下させることが考えられる。しかしながら、融点を低下させると、フィルムの耐熱性も低下するので、例えば、溶断シール袋を夏季の自動車の車内等の高温下で放置した場合にフィルム同士がブロッキングしたり、溶断シール袋内の収納物の重量により袋内部に応力が印加された状態で加熱された場合に溶断シール袋が変形したりする等の不具合が発生し得る。
【0008】
そのため、延伸フィルムの溶断シールにおいて、フィルムの柔軟性、機械強度及び耐熱性等の特性を損なわずに、溶断シール部の機械強度を向上させるべく、種々の提案が為されている。
例えば、特許第3167595号公報には、高いフィルム強度及び耐熱性を維持しつつ、高い溶断シール強度を実現するために、フィルムの分子配向と結晶化を特定範囲とすることが開示されている。
また、特開2003−291984号公報には、良好な溶断シール強度を得るために、ポリ乳酸系樹脂を用いた配向フィルムを用いて特定の断面形状の溶断シールを形成することが開示されている。
さらに、特許第3703795号公報には、良好な溶断シール強度を得るために、特定のポリ乳酸及び共重合ポリエステル用いた二軸延伸フィルムを用いることが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平05−508819号公報
【特許文献2】特開平9−95605号公報
【特許文献3】特開2000−302956号公報
【特許文献4】特開2004−82512号公報
【特許文献5】特開2004−90522号公報
【特許文献6】特許第3167595号公報
【特許文献7】特開2003−291984号公報
【特許文献8】特許第3703795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂フィルムを用いた溶断シール袋において、フィルムの柔軟性、機械強度及び耐熱性等の特性を損なわずに、溶断シール部の外観に優れ、且つ、溶断シール部の機械強度を向上させ得る、簡便で再現性の良い製法は、未だ確立していない。
本発明は、かかる課題を解決するために為されたものであり、フィルムの柔軟性、機械強度及び耐熱性等の特性に優れるとともに、溶断シール部の外観に優れ、且つ、高い溶断シール強度を有する溶断フィルム袋及びその溶断フィルム袋を簡便で再現性良く作製可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下(1)〜(6)を提供する。
(1)ポリ乳酸及び脂肪族ポリエステルを95:5〜55:45の重量比率で含むポリ乳酸系樹脂100重量部、並びに、トリグリセリド系可塑剤5〜35重量部を含有するフィルムを延伸して得られる、引張弾性率が200〜950MPaの二軸延伸フィルムを袋状に成形してなり、前記二軸延伸フィルムの端部に溶断シール部を有し、前記溶断シール部の破断強度が10N/10mm幅以上である、溶断シール袋。
(2)前記トリグリセリド系可塑剤は、グリセリンのアシル化物である、(1)に記載の溶断シール袋。
(3)前記ポリ乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸を100:0〜94:6又は6:94〜0:100のモル比で含む、(1)又は(2)に記載の溶断シール袋。
(4)前記脂肪族ポリエステルは、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とを少なくとも反応させて得られるものである、(1)から(3)のいずれか1項に記載の溶断シール袋。
(5)前記脂肪族ポリエステルは、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを少なくとも反応させて得られるものである、(4)に記載の溶断シール袋。
(6)ポリ乳酸及び脂肪族ポリエステルを95:5〜55:45の重量比率で含むポリ乳酸系樹脂100重量部、並びに、トリグリセリド系可塑剤5〜35重量部を含有するフィルムを延伸して得られる、引張弾性率が200〜950MPaの二軸延伸フィルムを準備する工程と、前記二軸延伸フィルムを積層する工程と、前記積層フィルムを溶断刃及び刃受けの間でピンチすることにより溶断シールする工程と、を有し、前記溶断シールする工程においては、断面径又は先端相当径が0.2〜1.0mmの溶断刃とゴム硬度がデュロメータ硬さ45〜65ポイントの刃受けとを用い、該溶断刃の先端温度及び該刃受けの表面温度を250〜500℃及び40〜70℃に温度制御した状態で、圧力0.2〜10MPaにて前記積層フィルムをピンチする、請求項1に記載の溶断シール袋の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物由来で且つ生分解性機能を持つポリ乳酸を用いて、フィルムの柔軟性、機械強度及び耐熱性等の特性に優れるとともに、溶断シール部の外観に優れ、且つ、高い溶断シール強度を有する溶断シール袋及びその溶断フィルム袋を簡便で再現性良く作製可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態の溶断シール袋は、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルの混合物からなるポリ乳酸系樹脂及びトリグリセリド系可塑剤を含有する特定のフィルムを延伸して得られる二軸延伸フィルムを、溶断シールすることにより得られる。
【0014】
ポリ乳酸は、例えば、L−乳酸、D−乳酸又はこれらの混合物を脱水縮合することにより得ることができ、好ましくは、乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合することにより得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、及びD−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソラクチドがあるが、これらのうち少なくとも一種以上を用いることが好ましい。ここで、ラクチドの開環重合により得られるものが好ましいのは、ラクチドの重合が容易であるとともに、高重合度品が得られ易いからである。
【0015】
L−乳酸及びD−乳酸のモル比は、100:0〜94:6又は6:94〜0:100の範囲であることが好ましい。乳酸に含まれるL−乳酸及びD−乳酸の多い方のモル比が、94%以上の場合、フィルムの耐熱性が向上する傾向にある。
【0016】
脂肪族ポリエステルは、一般に、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル反応により得られる。
【0017】
脂肪族多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、その他のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジ−、トリ−、テトラプロピレングリコール、カーボネート結合を有するジオール類等が挙げられ、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等も使用することが可能である。なお、これら成分を複数組み合わせて用いてもよい。
【0018】
脂肪族多価カルボン酸類としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−ジシクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、及びこれらのエステル誘導体、酸無水物等が挙げられる。なお、これら成分を複数組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ここで、脂肪族ポリエステルは、脂肪族多価アルコールとして1,4−ブタンジオールを、脂肪族多価カルボン酸としてコハク酸を各々用いて得られる、ポリブチレンサクシネート(PBS)を用いることが好ましい。ポリ乳酸とPBSとの混合物は、後述するトリグリセリド系可塑剤との併用により、溶断シール袋の柔軟化が十分に確保できるとともに、溶断シール強度の低下を十分に抑制することが可能となる。
【0020】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとの混合比率は、95:5〜55:45の重量比率とする。ポリ乳酸の配合比率が95wt%を超えると、溶断シール袋が剛直となり袋の開閉が困難になる傾向にあり、一方、ポリ乳酸の混合比率が55wt%未満になると、溶断シール袋の耐熱性が著しく低下する傾向にある。
【0021】
トリグリセリド系可塑剤は、一般に、グリセリンと脂肪酸とをエステル化して得られるものであり、本実施形態では、目的とする溶断シール袋に良好な柔軟性を付与するために、グリセリンの3つのアルコール基すべてが、アシル基又はアセチル基とエステル結合したアシル化物であることが好ましく、グリセリンの3つのアルコール基すべてが、アセチル基又は炭素数8〜18のアシル基とエステル結合した化合物を用いることがより好ましい。ここで、トリグリセリド系可塑剤が炭素数18以下のアシル基を有する場合、可塑化効果に優れ、より柔軟な溶断シール袋が得られる。とりわけ、グリセリンの3つのアルコール基に、炭素数8〜18のアシル基が1個、アセチル基が2個エステル結合した化合物からなるトリグリセリド系可塑剤を用いると、優れた可塑化性能が発揮されるとともに、溶断シール界面の結晶化が促進され、高い溶断シール強度が得られる。
【0022】
トリグリセリド系可塑剤は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、5〜35重量部を添加する。トリグリセリド系可塑剤の添加量が5重量部未満であると、柔軟な溶断シール袋が得難い傾向にあり、一方、35重量部を超えると、溶断シール界面に過多の可塑剤がブリードして十分なシール強度が得難い傾向にある。トリグリセリド系可塑剤の添加量は、より好ましくは10〜25重量部であり、さらに好ましくは15〜25重量部である。
【0023】
本実施形態のフィルムは、ポリ乳酸系樹脂とトリグリセリド系可塑剤の混合物の他に、さらに無機剤を含有するものであることが好ましい。このような無機剤の添加により、溶断シール直後のフィルム形状の変形を抑制しながら、溶断シール界面の結晶化をより一層促進させることが可能とある。無機剤の具体例としては、例えば、アルミノケイ酸塩、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム及び酸化チタン等が挙げられ、これらのなかでも、ナトリウムカルシウムアルミノシリケートを用いることがより好ましく、粒径10μm以上の粒子が1wt%以下である粒径分布の均一なナトリウムカルシウムアルミノシリケートを用いることがさらに好ましい。
【0024】
本実施形態のフィルムには、ポリ乳酸系樹脂とトリグリセリド系可塑剤の混合物の他に、これらの特性を損なわない範囲で、種々の助剤を添加することが可能である。この助剤とは、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び着色剤等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の延伸フィルムは、上記のポリ乳酸系樹脂とトリグリセリド系可塑剤とを少なくとも含有する未延伸フィルムを、延伸することにより得られる。
【0026】
未延伸フィルムの製造方法は、通常、押出成形により作製される。具体的には、例えば、二軸押出機やミキサー等を用いて予めポリ乳酸系樹脂とトリグリセリド系可塑剤とを混合したペレットを作製し、得られたペレットを押出成形機に投入し、押出機先端に取り付けたTダイから溶融物を押し出し、Tダイから押出された溶融物を冷却することにより、未延伸フィルムが得られる。未延伸フィルムの厚みは、40〜800μmであることが好ましい。
ここで、成形用押出機を二軸押出機として、ポリ乳酸系樹脂を押出機のフィードゾーンから投入し、可塑剤をバレル途中から圧入することにより、混錬と押出成形を同時に実施することも可能である。また、Tダイから押出された溶融物を、60℃以下の温度に制御したキャストロールと接触させて急冷し、非晶状態の未延伸フィルムを得ることが好ましい。この押出溶融物を徐冷した場合、結晶が成長して後述する二軸延伸加工が阻害され得る。
【0027】
上記した押出成形等により得られる未延伸フィルムを、二軸延伸することにより、二軸延伸フィルムが得られる。この二軸延伸の方法としては、例えば、逐次二軸延伸や同時二軸延伸、バブル法による延伸等が挙げられ、これらのなかでも、逐次二軸延伸法を用いることが好ましい。
【0028】
逐次二軸延伸法では、一般に、押出機先端に取り付けたダイから押出された溶融混合物を急冷・固定化して得られる未延伸フィルムを、ロールによる縦延伸を行った後に、テンターによる横延伸を行う。
上記の縦延伸は、周速の異なるロール群等を用いて、好ましくは30〜90℃、より好ましくは30〜80℃で行う。縦延伸倍率は、好ましくは3〜6倍である。また、上記の横延伸は、テンター式延伸機を用いて40〜110℃で行うことが好ましく、より好ましくは40〜100℃である。横延伸倍率は、好ましくは2〜10倍である。この横延伸は、上記の縦延伸に引き続いて連続して行うことが好ましい。
そして、テンターにて横延伸を行った後、連続的に熱固定を行うことにより、二軸延伸フィルムが得られる。熱固定は、横延伸に用いたテンター内の下流側、又は、横延伸に用いたテンターの後に連続的に取り付けられたクリップレールに接続した延伸炉にて、100〜140℃で且つ横延伸温度よりも20℃以上高い温度で行うことが好ましい。このようにして得られた二軸延伸フィルムは、一般的に、巻取機により巻き取ることで、以降の加工に供される。
【0029】
本実施形態では、得られる溶断シール袋に適度な柔軟性を付与し、且つ、優れた機械強度を発現させる観点から、引張弾性率が200〜950MPaの二軸延伸フィルムを用いる。かかる引張弾性率は、ASTMD882に準拠して測定される。具体的には、ASTMD882に準拠して、まず、製袋された溶断シール袋から長さ200mm、幅10mmの試験片を切り出し、得られた試験片を、引張試験機の掴み冶具に固定する。このときの掴み間隔は100mmとする。そして、試験速度を毎分5mmとして、2%伸びの応力から弾性率を算出する。
【0030】
上記の二軸延伸フィルムを、製袋工程にて、袋状に成形加工するとともに袋の端部を溶断シールすることにより、本実施形態の溶断シール袋が作製される。この袋状の成形加工と袋の端部の溶断シールは、「包装機械とメカニズム 第三版(社団法人 日本包装機械工業会出版、2002年7月20日発行)」の第283頁に、溶断シーラーとして記載されている方法で、一般的に、実施される。
具体的には、まず、製膜工程で製造された原反(二軸延伸フィルム)を、二つ折三角板を用いて二つ折りにし、これを間欠送りニップローラにより一定長ずつサイドシール工程に送る。サイドシール工程では、特許第3308645号に記載されているような方法を用いて、加熱された鋭利な溶断刃(ワイヤ又は金属刃)と刃受けとの間で、二つ折りされた二軸延伸フィルムをピンチする。この工程で、二軸延伸フィルムを切断しながら、重ねられた二枚の二軸延伸フィルム端部を溶断シールする。また、特許第1287997号に記載されているような方法を用いて、加熱された鋭利な溶断刃(ワイヤ又は金属刃)が設置されたドラムに、二つ折りされた二軸延伸フィルムを巻きつけ、切断と同時に重ねられた二枚の二軸延伸フィルム端部を溶断シールすることにより、生産性を向上することができる。
【0031】
かかる溶断シール工程においては、図1(a)〜(d)及び図2(a),(b)に示すように、加熱された鋭利な溶断刃の先端で二軸延伸フィルムを切断すると同時に、加熱された溶断刃の側面で切断面を溶かして二枚のフィルムを溶断シールすることが望まれる。そのため、溶断シール工程においては、以下に記す溶断刃と刃受け(柔軟平面)とを用い、これら両者間に溶断する二軸延伸フィルムを挟みこんで、以下に記す特定条件下にて溶断シールを行うことが好ましい。
【0032】
溶断シールする溶断刃は、高温加熱が可能であること、二軸延伸フィルムと接触した際に急激に温度が低下しないような十分な熱容量があること、及び、二軸延伸フィルムを連続的に溶断する際に撓まない十分な剛性を持っていることが望ましい。かかる溶断刃としては、断面径が0.2〜1.0mmのワイヤ又は先端相当径が0.2〜1.0mm(曲率半径Rが0.2〜1.0mm)の金属刃が好適に用いられる。
【0033】
溶断刃としてワイヤを用いる場合、そのワイヤ形状が円形、楕円形、三角形、四角形等の断面の金属線を、張力を印加した状態で加熱して用いることが好ましい。ワイヤの加熱方法は、特に限定されないが、ワイヤ本体に電気抵抗が大きい金属を使用して、通電により金属線本体を発熱させる方法がよく用いられる。この場合、金属線の材質は、ニッケル系の合金を使用することが好ましく、ハステロイ(登録商標)、ニクロム(登録商標)、インコネル(登録商標)、モネル(登録商標)等であることが好ましい。このような金属線を用いる場合は、二軸延伸フィルムの切断時の金属線の撓みを防ぐために、金属線を補強支持する保持材を併せて用いることが好ましい。この保持材は、高温加熱された金属線と接触しても溶解しないこと、金属線からの熱移動による金属線の温度は低下しないよう熱伝導率が低いこと、及び溶断シールされた二軸延伸フィルムが接触した際に溶断面と保持材とが接着しないように剥離性を有することが必要であり、特に限定されるものではないが、ガラス繊維等で補強されたテフロン(登録商標)テープ等が好適に用いられる。
【0034】
溶断刃として金属刃を用いる場合、図3(a)及び(b)に示すように、刃先角度θが10〜50°で先端相当径が0.2〜1.0mm(先端の曲率半径Rが0.2〜1.0mm)の鋭利なものを用いることが好ましい。溶断刃として金属刃を用いると、連続生産時の耐久性に優れるので、生産性が高められる。また、直線的な溶断シールが要求される場合には、ワイヤを用いると撓み易い傾向にあり、及び連続生産時にワイヤの破断等の不具合が発生する可能性があるので、金属刃を用いる優位性が高まる。金属刃の加熱方法は、特に限定されるものではないが、金属刃の材質を低熱伝導率のものを使用して通電による自己発熱による方法や、金属刃の根元部分に発熱ヒーターを埋め込んで、ヒーターからの伝熱による加熱方法が考えられる。ここで、ヒーターによる伝熱を採用する場合、金属刃の長手方向における温度斑が懸念されるので、金属刃の材質として、熱伝導率の高い銅等を用いることが好ましく、銅にニッケル系のメッキ等を行い、溶断された二軸延伸フィルムとの剥離性を高めたものを用いることがより好ましい。
【0035】
刃受け(柔軟平面)としては、ゴム硬度が、デュロメータ硬さ45〜65ポイントのものを用いることが好ましい。このデュロメータ硬さが45ポイント未満であると、図4(a)に示すように、溶断刃にて二軸延伸フィルムを切断する際に、溶断刃の押圧力によって切断される前の二軸延伸フィルムが柔軟平面に押し込まれ、その結果、図4(b)に示すように、溶断シール面が極度に折れ曲がる等の不具合が生じ得る。一方、デュロメータ硬さが65ポイントよりも大きいと、図5(a)及び(b)に示すように、溶断刃の先端と刃受けとの接触面積が不足し、二軸延伸フィルムが切断されずに溶断シール部から糸引きSが発生する等の外観不具合を発生させ得る。
【0036】
溶断シール時においては、溶断刃の(先端の)表面温度を250〜500℃とすることが好ましい。溶断刃の先端表面温度が250℃未満であると、切断面が十分に溶融されず、溶断シール不良が発生する不具合や、溶融するための切断面と溶断刃との接触時間が長く必要となり、生産性の著しい低下が生じ得る。一方、溶断刃の先端表面温度が500℃よりも高いと、切断時の溶融体積が大きくなり、溶断シール部の外観を損ねる場合がある。また、溶断シール時においては、刃受けの表面温度を40〜70℃とすることが好ましい。
【0037】
溶断刃と刃受けとの間でフィルムを挟んで溶断する際の押圧力は、0.2〜10MPaとすることが好ましい。溶断圧力が0.2MPa未満であると、二軸延伸フィルムの切断に必要とされる応力に満たない場合が生じ得る他、シール不良が発生し得る。一方、10MPaより大きいと、端部が溶融シールされる前に、二軸延伸フィルムから溶断刃が離れてしまう等の不都合が生じて、シール不良が発生し得る。
かかる溶断刃と刃受けとを挟む押圧力は、エアシリンダー又は油圧シリンダー等の公知の手法を用いて発生させることができる。このようにシリンダーにて稼動させる場合は、押圧力の制御が容易である。一方、高速で挟み込みの繰り返しを行う場合は、生産性を高めるため、カム駆動を採用することが好ましい。カム駆動にて押圧力を設定する場合は、運転前に感圧紙等を用いて設定した圧力にて、溶断刃と刃受けとで袋を挟み込む押し込み量を調整すればよい。
【0038】
上記した特定の組成物を特定条件下にて溶断シールを行うことで、ポリエチレン並みの柔軟性を持ち、且つ、十分な溶断シール強度を有する溶断シール袋が得られる。
上記した従来技術のように、ポリ乳酸単体では、優れた溶断シール強度を得ることは可能である。しかしながら、従来技術では、柔軟化したポリ乳酸系樹脂フィルムを得るためには、可塑剤を添加する方法や柔軟性ポリマーを添加する方法を採用せざるを得ない。ところが、従来技術のように単に可塑剤を添加するのみでは、ポリ乳酸の柔軟化は可能であるが、溶断シール面に可塑剤が存在するので、十分な溶断シール強度が得られない。また、単に柔軟性ポリマーを添加するのみでは、改質効果が低く、ポリエチレン並みの柔軟性が得られない。
これに対し、本発明は、ポリ乳酸に脂肪族ポリエステルとトリグリセリド系可塑剤とを併用した特定の組成物を用い、且つ、溶断シール部の結晶化状態に着目して、溶断シール時の溶断条件を特定することにより、ポリエチレン並みの柔軟性を持ち、且つ、十分な溶断シール強度を有する溶断シール袋が得られることを初めて見出したものである。
【0039】
すなわち、溶断シール部において十分な強度を得るためには、溶融界面の均一性が要求される。ところが、従来の製法においては、溶断シール時に溶断シール部周辺領域が溶融・冷却されるので、延伸工程により配向結晶化した配向結晶構造とは異なる高次構造が形成され、溶融界面が不均一な状態になっていたものと推察される。このことは、溶断シール袋から溶断シール部を含む短冊を切り出し、この短冊を定速で引っ張った場合に、配向結晶化部分と高次構造部分との溶融界面にて破断する傾向が見られることからも裏付けられる。
よって、本発明は、この溶断シール時に新たに形成される高次構造を最適化し、従前に比して、配向結晶構造と高次構造とをより均一化させることにより、溶断シール部のシール強度を高めたものであると言える。
【0040】
具体的には、溶断シール部が冷却される際に樹脂は結晶化するが、このとき、ポリ乳酸及び脂肪族ポリエステルは粘度が高いので、冷却時に生成する結晶構造の欠損を生じ得る。よって、この結晶構造の欠損によって、溶断シール部のシール強度が低下し得る。また、溶断シール部の強度は冷却速度によっても変化し、特に、ポリ乳酸系樹脂を用いて急冷する場合は、溶融界面に、非晶状態のまま固定化される部分と結晶化する部分とが混在し得るので、界面強度がより一層低下し得る。しかも、ポリエチレン等の溶断シール袋を製造する設備では、通常、溶断時に二軸延伸フィルムをピンチする刃受けは、溶断シール部が刃受けに張り付かないようにする目的で、又は、溶断シール部の変形を防止する目的で、冷却制御され、溶断後も溶断シール部と接触している。
これに対し、本発明は、ポリ乳酸に、脂肪族ポリエステルとトリグリセリド系可塑剤とを併用し、且つ、種々の溶断シール条件、特に溶断シール直後に接触する刃受けの温度を特定することにより、溶断シール部の結晶化挙動を制御でき、柔軟性及び溶断シール強度に優れる溶断シール袋が得られることを見出したものである。
【0041】
上記の配向結晶構造及び高次構造は、結晶の融解挙動により特定できる。すなわち、溶断シール部を切り出して得たサンプルを昇温させたときに、未結晶成分は結晶化挙動が見られるので、示差走査熱量測定における結晶化熱量により、配向結晶構造及び高次構造の結晶状態を把握することができる。
【0042】
上記のようにして作製される溶断シール部は、破断強度が10N/10mm幅以上である。本発明において、かかる溶断シール部の破断強度は、下記の方法にて算出する。
まず、JIS−Z1711に基づいて、溶断シール袋から、長さ100mm×幅15mmの短冊状の試験片を切り出す。このとき、短冊試験片は、溶断シール部が垂直に、且つ溶断シール部が試験片の長辺の略中央部に位置するものとする。そして、溶断シール部が中央に位置するように短冊試験片を180°開いて、その両端を引張試験機の掴み冶具に固定する。このときの掴み間隔は、50mmとする。そして、試験速度を毎分500mmとして、溶断シール部分が破断するまで測定し、破断するまでの最大応力を破断強度とする。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに特に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、「重量部」及び「重量%」を各々意味する。
【0044】
各実施例及び各比較例において用いる測定法を以下に示す。
(1)フィルムの弾性率
ASTM D882に基づいて、溶断シール袋から、フィルムを切り出して、一枚の引張弾性率を測定した。溶断シール袋のジッパーと平行方向と垂直方向の2方向にて、幅10mm、長さ200mmの試料を切り出して、チャック間を100mmとして、引張速度5mm/分にて測定した。歪量0%から2%の変位の傾きから、引張弾性率を算出し、平行方向と垂直方向のデータを平均した。
○・・・・溶断シール袋から切り出されたフィルムの引張弾性率が、200MPa以上でかつ950MPa以下。
×・・・・溶断シール袋から切り出されたフィルムの引張弾性率が、950MPaより大きい、もしくは200MPa未満。
(2)フィルムの耐熱性
まず、袋の内面が接触した状態の溶断シール袋から、その接触状態を保持しながら、80mm×80mmの大きさの二枚の積層されたフィルムを切り出す。次に、前述の接触状態を保持しながら、切り出した二枚のフィルムを、100mm×100mm×厚み5mmの表面が平滑なステンレス板二枚にて挟み込み、その後、ステンレス板を水平に置く。
次いで、ステンレス板1枚との合計重量が合計1kgとなる錘を準備し、その錘をステンレス板の上に載せ、錘を載せたステンレス板を、所定の温度に設定されたオーブン内に入れて5分間放置する。5分経過後、二枚の積層されたフィルムを速やかに取り出し、23℃にて1時間放置した後に、以下の手順にしたがって、剥離抵抗を測定する。
剥離抵抗の測定においては、二枚に重ね合わせた80mm×80mmのフィルムの端部を一枚ずつクリップで挟み、200mm/分の速度で180°の方向に引っ張り、その剥離した際の応力を測定する。二枚のフィルムが極めて容易に剥離するか、剥離応力の平均値が0.5N以下である場合は、当該測定温度のブロッキング特性を合格とする。上記の測定は、処理温度30℃から10℃間隔で順次行い、ブロッキング特性が合格となる上限温度を、耐熱温度とする。なお、40℃以上のテストの場合は、ステンレス板と錘をあらかじめ測定温度に加熱しておき、サンプルをセットする際は、速やかに実施する。
○ ・・・ 耐熱温度 70℃以上
△ ・・・ 耐熱温度 50℃以上70℃未満
× ・・・ 耐熱温度 50℃未満
(3)フィルムのヘーズ
JIS K7105に基づいて、溶断シール袋からフィルムを切り出し、一枚のヘーズを測定した。
(4)溶断シール外観
長さ300mmの溶断シール部の外観を目視にて観察し、溶断シール部の均一性及び糸の発生有無に基づき、下記の基準で判別を行った。
○ ・・・ 0.1mm以上の凹凸、及び溶断シール部からの糸引き(図5中の記号S)がともに観察されない。
△ ・・・ 0.1mm以上の凹凸は観察されないが、溶断シール部からの糸引きSが観察される。
× ・・・ 0.1mm以上の凹凸が1個以上観察される。
(5)リーク強度
MOCON社製バースト/シール強度試験機 SKYE 2000a(登録商標)を用いて、溶断シール袋の耐圧強度を測定した。内圧の増加速度は、206kPa/分(30psi/分)とした。耐圧強度測定にて、溶断シール部以外のフィルム部が破断した場合は合格とし、リークした部分が溶断シール部分の場合は下記の基準で判別を行った。
○ ・・・ 耐圧強度が20kPa以上
△ ・・・ 耐圧強度が15kPa以上、20kPa未満
× ・・・ 耐圧強度が15kPa未満
合格・・・ 溶断シール部以外が破断
【0045】
(実施例1)
L−乳酸からなる構造単位とD−乳酸からなる構造単位の割合が略96:4であり(以下及び表では、PLA:D4と記載する。)重量平均分子量が約19万のポリL−乳酸と、1,4−ブタンジオールとコハク酸との重合体からなるポリブチレンサクシネート(以下及び表では、PBSと記載する。)である三菱化学製のGSPla(登録商標)AZ91Tを、75:25重量%の割合で混合した。さらに、無機材として、ナトリウムカルシウムアルミノシリケートである水澤化学製のシルトン(登録商標)JC 30(平均粒径 3μm)を、PLAとPBSの混合物100重量部に対し、0.1重量部添加した。
得られた混合物を、同方向回転二軸押出機にて押し出し、この際バレル途中から加圧ポンプを用いて、可塑剤としてグレセリンジアセトモノラウレート(以下及び表では、DALGと記載する。)を添加した。可塑剤の添加量は、PLAとPBSとの混合物100重量部に対し、17重量部とした。次いで、180℃にて、押出機先端に取り付けたTダイから溶融体を押し出し、これをキャスティングロールと接触することにより急冷させて、未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを、40℃に加熱した3倍の周速差のあるニップロールを通過させることにより、縦延伸を行った。得られた縦延伸フィルムを、さらに連続的にテンター式横延伸装置にて4倍の倍率にて延伸した。その後、テンター内の延伸ゾーンにおいて、45℃の熱風にてフィルムを加熱し、さらに熱固定ゾーンにおいて130℃の熱風にて加熱を行い、熱固定した。得られた二軸延伸フィルムの厚みは、40μmであった。
得られた二軸延伸フィルムを二つ折にして、二辺を溶断シールした。ここでは、刃先角度θが30°、先端Rが0.40mmの溶断刃を用い、溶断刃の表面温度300℃とした。また、溶断シール時に溶断刃と対にてフィルムをピンチする刃受け(柔軟平面)として、ゴム硬度がデュロメータ硬さ60ポイントのシリコーンゴムを用い、刃受けの表面温度を45℃とした。そして、押圧力を5MPaとし、溶断時間1秒で溶断シールすることで、溶断シール袋を製袋した。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
可塑剤を、グリセリンモノカプリレートアセテートとグリセリンモノカプレートアセテートとの混合物(以下及び表では、DACGとする。)である理研ビタミン製のPL−019とする以外は、実施例1と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例3)
可塑剤を、グリセリントリアセテート(以下及び表では、TAGとする。)とする以外は、実施例1と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例4)
ポリL−乳酸とPBSとの混合比を90:10重量%とし、縦延伸温度を55℃、横延伸温度を65℃、熱固定温度を135℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度400℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた実施例4の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例5)
ポリL−乳酸とPBSとの混合比を60:40重量%とし、熱固定温度を120℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度250℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた実施例5の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例6)
可塑剤であるDACGの添加量を8重量部とし、縦延伸温度を45℃、横延伸温度を50℃、熱固定温度を135℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度400℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた実施例6の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例7)
可塑剤であるDACGの添加量を32重量部とし、熱固定温度を120℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度250℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた実施例7の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例8)
脂肪族ポリエステルとして、1,4−ブタンジオールとコハク酸とアジピン酸との重合体であるポリブチレンサクシネートアジペートである三菱化学製のGSPla(登録商標)AD92Wを用いた以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表2に示す。
【0053】
(実施例9)
無機材として、微粉末タルク(松村産業株式会社製 ハイ・フィラー#5000PJ)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表2に示す。
【0054】
(実施例10)
溶断刃の刃先先端のRを0.25mmとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。その結果を表2に示す。
(実施例11)
溶断刃の刃先先端のRを0.90mmとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表2に示す。
(実施例12)
溶断刃を断面径が0.30mmの円形ワイヤとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表2に示す。
【0055】
(実施例13)
溶断刃の表面温度を260℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表2に示す。
(実施例14)
溶断刃の表面温度を480℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表2に示す。
【0056】
(実施例15)
溶断刃の押圧力を0.3MPaとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表3に示す。
(実施例16)
溶断刃の押圧力を3MPaとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表3に示す。
(実施例17)
溶断刃の押圧力を8MPaとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表3に示す。
【0057】
(実施例18)
溶断シール時に二軸延伸フィルムをピンチする刃受けの材質をゴム硬度がデュロメータ硬さ40ポイントのシリコーンゴムとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表3に示す。
(実施例19)
溶断シール時に二軸延伸フィルムをピンチする刃受けの材質をゴム硬度がデュロメータ硬さ50ポイントのシリコーンゴムとした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表3に示す。
【0058】
(実施例20)
溶断シール時に二軸延伸フィルムをピンチする刃受けの表面温度を55℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表3に示す。
(実施例21)
溶断シール時に二軸延伸フィルムをピンチする刃受けの表面温度を65℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表3に示す。
【0059】
(比較例1)
可塑剤を、アセチルクエン酸トリブチル(以下及び表では、ATBCとする。)とする以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表4に示す。比較例1の溶断シール袋は、耐熱性が不十分で、また、溶断シール強度及び耐圧強度も不十分なものであった。
(比較例2)
可塑剤を、ジグリセリンテトラアセテート(以下及び表では、DGTAとする。)とする以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜及び溶断シール袋の製袋を行った。結果を表4に示す。比較例2の溶断シール袋は、耐熱性が不十分で、また、溶断シール強度及び耐圧強度も不十分なものであった。
【0060】
(比較例3)
ポリL−乳酸とPBSとの混合比を98:2重量%とし、縦延伸温度を55℃、横延伸温度を65℃、熱固定温度を135℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度400℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた比較例3の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表4に示す。が、比較例3の溶断シール袋は、溶断シール強度が不十分なものであり、且つ、フィルムが硬く柔軟性に劣るものであり、袋の開閉や収納物の出し入れに支障があるものであった。
【0061】
(比較例4)
ポリL−乳酸とPBSを50:50重量%とし、熱固定温度を120℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度250℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた比較例4の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表4に示す。比較例4の溶断シール袋は、耐熱性が不十分なものであり、また、溶断シール部に、0.1mm未満の凹凸及び糸引きが観察された。
【0062】
(比較例5)
可塑剤であるDACGの添加量を3重量部とし、縦延伸温度を45℃、横延伸温度を50℃、熱固定温度を135℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度400℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた比較例5の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表4に示す。
が、比較例5の溶断シール袋は、フィルムが硬く柔軟性に劣るものであり、袋の開閉や収納物の出し入れに支障があるものであった。
【0063】
(比較例6)
可塑剤であるDACG添加量を40重量部とした以外は、実施例2と同様の方法で、二軸延伸フィルムの成膜を行った。また、溶断刃温度250℃とした以外は、実施例2と同様の方法で、得られた比較例5の二軸延伸フィルムから溶断シール袋の製袋を行った。結果を表4に示す。比較例6の溶断シール袋は、溶断シール強度が不十分なものであり、且つ、フィルムが硬く柔軟性に劣るものであり、袋の開閉や収納物の出し入れに支障があるものであった。また、比較例6の溶断シール袋は、溶断シール部に、0.1mm未満の凹凸及び糸引きが観察された。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、植物由来のポリ乳酸を主原料とし、柔軟性に富み、且つ溶断シール強度及びシール外観に優れる溶断シール袋を簡便に且つ再現性良く提供できるので、食品、雑貨、機械、電子、医療、薬品、化粧品等の各種包装用フィルム、工業用保護フィルム、農業用フィルム及び粘着テープ等において、広く且つ有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)乃至(d)は、溶断シールの概略手順の一例を示す工程図である。
【図2】(a)及び(b)は、溶断シールの概略手順の一例を示す工程図である。
【図3】(a)及び(b)は、金属刃の概略構成を示す要部拡大図である。
【図4】(a)及び(b)は、ゴム硬度がデュロメータ硬さ45ポイント未満の刃受け3を用いた場合における、溶断シールの概略手順の一例を示す参考図である。
【図5】(a)及び(b)は、ゴム硬度がデュロメータ硬さ65ポイントを超える刃受け3を用いた場合における、溶断シールの概略手順の一例を示す参考図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・二軸延伸フィルム、2・・・溶断刃(金属刃)、3・・・刃受け(柔軟平面)、4・・・溶断シール部、S・・・糸引き、R・・・曲率半径、θ・・・刃先角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸及び脂肪族ポリエステルを95:5〜55:45の重量比率で含むポリ乳酸系樹脂100重量部、並びに、トリグリセリド系可塑剤5〜35重量部を含有するフィルムを延伸して得られる、引張弾性率が200〜950MPaの二軸延伸フィルムを袋状に成形してなり、
前記二軸延伸フィルムの端部に溶断シール部を有し、
前記溶断シール部の破断強度が10N/10mm幅以上である、
溶断シール袋。
【請求項2】
前記トリグリセリド系可塑剤は、グリセリンのアシル化物である、
請求項1に記載の溶断シール袋。
【請求項3】
前記ポリ乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸を100:0〜94:6又は6:94〜0:100のモル比で含む、
請求項1又は2に記載の溶断シール袋。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステルは、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とを少なくとも反応させて得られるものである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の溶断シール袋。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステルは、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを少なくとも反応させて得られるものである、
請求項4に記載の溶断シール袋。
【請求項6】
ポリ乳酸及び脂肪族ポリエステルを95:5〜55:45の重量比率で含むポリ乳酸系樹脂100重量部、並びに、トリグリセリド系可塑剤5〜35重量部を含有するフィルムを延伸して得られる、引張弾性率が200〜950MPaの二軸延伸フィルムを準備する工程と、
前記延伸フィルムを積層する工程と、
前記積層フィルムを溶断刃及び刃受けの間でピンチすることにより溶断シールする工程と、を有し、
前記溶断シールする工程においては、断面径又は先端相当径が0.2〜1.0mmの溶断刃とゴム硬度がデュロメータ硬さ45〜65ポイントの刃受けとを用い、該溶断刃の先端温度及び該刃受けの表面温度を250〜500℃及び40〜70℃に温度制御した状態で、圧力0.2〜10MPaにて前記積層フィルムをピンチする、
請求項1に記載の溶断シール袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−73498(P2009−73498A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241808(P2007−241808)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】