説明

溶液の精製装置および精製方法

【課題】大量且つ安価に入手可能な植物材料や廃棄物を簡単に確実にしかも低コストで精製すること。
【解決手段】精製装置10は、溶液が収容される溶液収容パン12と、溶液中に下部が浸漬される中空状のドラム14と、ドラム14を回転させる回転駆動手段16と、ドラム14の内部から前記ドラム14の外周面14Aを加熱する加熱手段18と、外周面14Aから蒸発する蒸発物を取り出す取り出し手段20と、ドラム14の外周面14Aに接触することでドラム14上に付着する溶液を前記ドラム14の回転に伴って掻き取るヘラ22と、ヘラ22により掻き取られた溶液を、フィルター34により溶液中の残渣を取り除いて収容する収容部24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、廃棄物として排出するグリストラップ・廃食油、有機物を糖化・発酵して出来るエタノール溶液・無精製な植物油などを、温度、回転速度を変化させ、ヘラを使用して異物も取り除き、最適な蒸留・気化状況を設定してバイオ燃料として加工する又乾燥・濃縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の使用に伴って発生する炭酸ガスによる地球温暖化が世界的規模で問題となっており、その解決策が強く望まれている。このような解決策の一つとしてとうもろこしを原料とするガソリン・軽油代替品が開発され、世界的規模で利用されつつある。利用方法の多くは、ガソリン等の化石燃料にわずかに1.5〜3%程度混入して自動車用等の燃料油として利用するものであるが、このことがとうもろこし等の原料植物の相場を高騰させている。とうもろこしは南米大陸、アフリカ、南アジア等の多くの国で主食として利用されており、代替燃料としての利用は、価格および供給量の両面から世界的規模で食糧事情を悪化させるという大きなマイナス効果をもたらしている。
一方、食品廃棄物を糖化、発酵、蒸留してバイオ燃料(エタノール)を製造する方法、あるいは、廃食油などをバイオ燃料として使用する方法が種々提案されている(特許文献1参照)。
これらの方法では、バイオ燃料の製造時に発生する残渣である固形物の処理を遠心分離機を用いて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、設備コストがかかるのみならず、設備の保守作業が必要となることから、エタノールや油の製造コストの低減を図る上で改善が望まれている。
本発明の目的は、各種の溶液を簡単に確実にしかも低コストで精製できる装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明の精製装置は、溶液が収容される溶液収容パンと、軸心を水平方向に向けて配設され前記収容された溶液中に下部が浸漬される中空状のドラムと、前記ドラムを回転させる回転駆動手段と、前記ドラムの内部から前記ドラムの外周面を加熱する加熱手段と、前記外周面から蒸発する蒸発物を取り出す取り出し手段とを備えることを特徴とする。
また本発明の、有機物を糖化・発酵して出来るエタノール溶液の精製方法は、前記エタノール溶液を溶液収容パンに供給し、軸心を水平方向に向けた中空状のドラムの下部を前記エタノール溶液中に浸漬し、前記ドラムの外周面の温度を70℃〜90℃に設定して前記ドラムを回転させ、前記エタノール溶液の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記エタノール溶液中のエタノールを水と共に供沸させ、供沸させたエタノールと水を取り出すようにしたことを特徴とする。
また、本発明の無精製な植物油の精製方法は、前記植物油を溶液収容パンに供給し、軸心を水平方向に向けた中空状のドラムの下部を前記植物油中に浸漬し、前記ドラムの外周面の温度を100℃〜110℃に設定して前記ドラムを回転させ、前記植物油の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記植物油中の水を蒸発させ、同時に、ヘラを前記ドラムの外周面に接触させ、前記ドラムの回転により、前記外周面に付着されている植物油を掻き取り、フィルターにより異物を取り除いて収容部に収容し、つぎに、前記ヘラを前記ドラムから離し、前記収容部に収容された植物油を前記溶液収容パンに供給し、前記ドラムの外周面の温度を200℃〜400℃に設定して前記ドラムを回転させ、前記植物油の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記植物油を熱分解させて気化し、前記気化した植物油を取り出すようにしたことを特徴とする。
また、本発明の海水を精製して純水を得る海水の精製方法は、海水を溶液収容パンに供給し、軸心を水平方向に向けた中空状のドラムの下部を前記海水中に浸漬し、前記ドラムの外周面の温度を100℃〜110℃に設定して前記ドラムを回転させ、前記海水の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記海水中の水分を蒸発させ、蒸発した水分を取り出し、冷却して純水としてタンクに収容し、同時に、ヘラをドラムの外周面に接触させ、ドラムの回転により、前記外周面に付着されている海水および異物、結晶化された塩分を掻き取り、フィルターによりそれら異物、塩分を取り除いて収容部に収容し、前記収容部に収容された海水を、再度、前記溶液収容パンに収容し、前記ドラムの回転により前記海水中の水分を蒸発させて取り除き、以上の工程を繰り返して行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、安価且つ大量に入手しうるパーム油等植物油脂や廃棄物として排出されるグリストラップ・廃食油を原料としてバイオ燃料を高収率で得ることができ、環境問題上からも社会的意義が極めて高いものである。特にパーム油の原料であるパーム椰子などの果実は東南アジア等で大量に自生しており、しかも年に3回以上収穫可能でありながら、その利用は化粧品や石鹸等極く一部に限られており、とうもろこしのガソリン・軽油化リサイクルにみられるような既存用途からの原料の転用の必要性も全くない。
本発明は有機物を糖化・発酵したエタノール溶液や廃棄物として排出する廃食油、植物油のパーム油からバイオ植物油の沸点は300℃度前後であり、ドラムの外周面上での加熱温度は200〜400℃、特に250〜350℃が好ましい。また常温近傍から徐々に加熱し、たとえばドラムの外周面上において100〜110℃でパーム油中に存在しうる水分を除いてから、さらに昇温してパーム油を熱分解を伴ってガス化させることが望ましい。本発明方法は他の植物油に対しても適用可能である。
本発明の精製装置は、回転しながら温度を変化させ、水分や夾雑物を含んだ植物油脂、グリストラップ、廃食油、エタノール溶液などからバイオ燃料を高効率に生産することが出来、また、海水も精製できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】精製装置の正面図である。
【図2】精製装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明の精製装置から説明する。
精製装置10は、溶液収容パン12と、中空状のドラム14と、回転駆動手段16と、加熱手段18と、取り出し手段20、ヘラ22と、収容部24とを有している。
溶液収容パン12は上部が開放されている。
中空状のドラム14は、例えば、ステンレスなどからなる金属製であり、外周面14Aと両側の端面とを備え、両側の端面の中央から回転軸1402が突設されている。ドラム14は、軸心を水平方向に向けて回転軸1402が軸受用ローラ1404により回転可能に支持され、ドラム14の下部は溶液収容パン12に収容されている。
本実施の形態では、ドラム14の直径は1.5mで、長さは2mである。
回転駆動手段16は、減速機付きのモータの出力軸1602と、出力軸1602と回転軸1402とを連結するチェーンスプロケット機構1604を含んで構成されている。
なお、溶液収容パン12またはドラム14の少なくとも一方を昇降調節可能に設けてもよい。このように構成すると、溶液収容パン12内の液面の高さに応じてドラム14の浸漬量を調節でき、便利となる。
【0009】
加熱手段18は、ドラム14の内部からドラム14の外周面14Aを加熱するものである。
本実施の形態では、加熱手段18は、加熱媒体供給装置1802により加熱媒体を管路1804、回転軸1402の内部を介して一方の端面からドラム14の内部に供給し、内部で外周面14Aの内側を加熱したのち他方の端面から回転軸1402の内部、管路1804を介してドラム14の外部に排出し、加熱媒体供給装置1802に戻し、加熱媒体を循環使用するものである。
加熱媒体供給装置1802は、外周面14Aの温度に対応する溶液液面表面の温度を検出する液面温度センサ1810から検出される温度に基づき、外周面14Aを所望の温度の範囲に入るように加熱媒体の温度を調節する。
加熱媒体供給装置1802として水蒸気やガスなどを用いる従来公知の様々な装置が使用可能である。また、水蒸気やガスに代え、外周面14Aの内側にニクロム線などの発熱体を取着して加熱手段18を構成することも可能である。
【0010】
また、本実施の形態では、さらに以下の構成を備えている。
加熱媒体供給装置1802からドラム14の内部に加熱媒体を供給する管路に、外気を吸入する管路が設けられ、この管路に外気の吸入量を弁の開閉により調整する吸気調整弁1812が設けられている。
また、ドラム14の内部の加熱媒体の一部を排出する管路が設けられ、この管路に排気の排気量を弁の開閉により調整する排気調整弁1814が設けられている。
ドラム14の内部から排出される排気の温度を検出する排気温度センサ1816が設けられている。
液面温度センサ1810および排気温度センサ1816から供給される検出信号に基づいて、吸気調整弁1812および排気調整弁1814の開閉を制御することで、外周面14Aが所望の温度の範囲に入るように加熱媒体の温度を調節する第1コントローラ1818が設けられている。
排気温度センサ1816から供給される検出信号に基づいて、回転駆動手段16の回転速度を制御することで、外周面14Aが所望の温度の範囲に入るように加熱媒体の温度を調節する第2コントローラ1820が設けられている。
回転駆動手段16のモータとして、可変電圧可変周波数制御(VVVF制御)を用いたモータなど従来公知のさまざまな回転速度が調整可能なモータが使用可能である。
すなわち、第1コントローラ1818は、液面温度センサ1810および排気温度センサ1816の検出信号に基づいて外周面14Aの温度が所望の温度よりも高くなったと判断すると、吸気調整弁1812および排気調整弁1814の双方を開放し、外気をドラム14の内部に導入し、外周面14Aの温度を低下する方向に制御する。
また、第1コントローラ1818は、液面温度センサ1810および排気温度センサ18166の検出信号に基づいて外周面14Aの温度が所望の温度が所望の温度範囲内になったと判断すると、吸気調整弁1812および排気調整弁1814の双方を閉塞して外周面14Aの温度を所望の温度範囲内に制御する。
また、第2コントローラ1820は、排気温度センサ1816の検出信号に基づいて回転駆動手段16の回転速度を制御することによっても、外周面14Aの温度制御を行う。
このように外気の吸引あるいはドラム14の回転速度の制御を行うことにより、外周面14Aの温度制御をより的確に行う上で有利となっている。
【0011】
取り出し手段20は、ドラム14の外周面14Aから蒸発する蒸発物を取り出すものであり、ドラム14の上方を覆うように設けられたカバー2001と、カバー2001の中央に設けられた取り出し口(吸い込み口)2002を含んで構成されている。なお、溶液収容パン12やドラム14を区画された空間内に設置する場合には、取り出し口2002を設ける箇所は、上方のみに限定されず、側方であってもよい。
取り出し口2002は、管路2002を介して複式ディーゼルエンジンの燃焼室に接続されあるいは、管路2002、ポンプ28、冷却装置30を介してタンク32に接続され、いずれの場合にも本実施の形態では取り出し口2002に負圧が作用する。
【0012】
ヘラ22は、上端がドラム14の外周面14Aに接触、離間可能に設けられ、上端がドラム14の外周面14Aに接触することでドラム14上に付着する液体および異物をドラム14の回転に伴って掻き取るものである。したがって、ヘラ22の上端の幅は、ドラム14の外周面14Aの幅に対応した寸法で形成され、下端は後述する収容部(収容タンク)24に挿入できるように上端よりも小さい幅で形成されている。なお、ヘラ22は、ドラム14の長手方向に沿って複数設けてもよい。
ヘラ22は、例えば、合成樹脂製であり、ドラム14に接触する上端に、液体および異物の掻き取りが効率よく行なわれるように合成ゴムなどからなる弾性部材が取着されている。
収容部24は、ヘラ22により掻き取られた液体および残渣(異物)をフィルター34を通して収容するものである。
【0013】
次に、精製装置10の使用方法について説明する。
(エタノール溶液の精製)
まず、有機物を糖化・発酵して出来るエタノール溶液の精製について説明する。
この場合、有機物とは、例えば、菓子工場から排出される廃棄物であり、従来、有料で焼却処分されているものである。
エタノール溶液は、この廃棄物に酵素、酵母を混ぜて発酵させることで得られ、溶液は約、水が9割で、エタノールが1割の割合である。
【0014】
このエタノール溶液を、弁36、管体38を介して溶液収容パン12に供給する。これによりドラム14の下部がエタノール溶液中に浸漬される。
そして、エタノールの沸点は70℃であり、水の沸点は100℃であることから、加熱手段18によりドラム14の外周面14Aの温度を100℃〜110℃に設定し、ヘラ22の上端をドラム14の外周面14Aに接触させ、回転駆動手段16によりドラム14を回転させる。
【0015】
ドラム14の回転により、エタノール溶液はドラム14の外周面14Aに付着し、ドラム14の回転に伴って上方に変位していく。
エタノール溶液の液面から上昇した外周面14A上において、エタノール溶液中のエタノールは水と共に供沸する。
そして、供沸したエタノールの蒸気と、水の蒸気とが、取り出し口2002から取り出される(吸い込まれる)。
そして、取り出し口2002から取り出されたエタノールの蒸気と、水の蒸気は、管路2002を通って直接、複式ディーゼルエンジンの燃焼室に供給され、燃焼させ、燃料として使用され、あるいは管路2002から冷却装置30に至り、冷却され液体とされてタンク32に収容される。
タンク32に収容された液体は約、水が1割で、エタノールが9割の割合であり、エタノール溶液が精製され、濃縮されることになり、バイオ燃料として使用可能となる。
すなわち、取り出し口2002から取り出されたエタノールの蒸気と、水の蒸気は、上述のように直接、複式ディーゼルエンジンの燃焼室に供給してバイオ燃料として使用してもよいし、液化してタンク32に収容し、運搬して他の箇所でバイオ燃料として使用してもよい。
【0016】
一方、ヘラ22に到達するまで外周面14Aに付着されていたエタノール溶液は、ヘラ22により掻き取られ、フィルター34を介して収容部24に収容される。
エタノール溶液中のもろみや異物はフィルター34により取り除かれ、もろみや異物が取り除かれたエタノール溶液が収容部24に収容される。
この収容部24に収容されたエタノール溶液は、再度、溶液収容パン12に供給される。なお、溶液収容パン12内に、もろみや異物が取り除かれたエタノール溶液のみが収容された場合には、ヘラ22は不要となるので、ヘラ22を外周面14Aから切り離し、ドラム14のみを回転させることになる。
【0017】
本実施の形態によれば、簡単な構成の装置で、しかも簡単な動きをさせることでエタノール溶液の精製、濃縮を行うことが可能となる。
したがって、従来、有料で焼却処分されていた菓子工場から排出される廃棄物から、低コストでバイオ燃料を作製できる。
【0018】
(無精製な植物油の精製)
つぎに、パーム油の精製について説明する。
パーム油の原料であるパーム椰子などの果実は東南アジア等で大量に自生しており、しかも年に3回以上収穫可能でありながら、その利用は化粧品や石鹸等極く一部に限られているものである。
パーム油を含む、ジャトロファ、グリストラップなどの無精製な植物油の沸点は約300℃である。
【0019】
第1工程では次のことがなされる。
パーム油を、弁36、管体38を介して溶液収容パン12に供給する。これによりドラム14の下部がパーム油中に浸漬される。
そして、加熱手段18によりドラム14の外周面14Aの温度を100℃〜110℃に設定し、ヘラ22の上端をドラム14の外周面14Aに接触させ、回転駆動手段16によりドラム14を回転させる。
【0020】
ドラム14の回転により、パーム油はドラム14の外周面14Aに付着し、ドラム14の回転に伴って上方に変位していく。
パーム油の沸点は300℃であり、水の沸点は100℃であることから、パーム油の液面から上昇した外周面14A上において、外周面14Aに付着したパーム油中の水分は蒸発する。すなわち、水分を気化させ取り除く。
【0021】
一方、ヘラ22に到達するまで外周面14Aに取着されていたパーム油は、ヘラ22により掻き取られ、フィルター34を介して収容部24に収容される。
パーム油中の異物はフィルター34により取り除かれ、異物が取り除かれたパーム油が収容部24に収容される。
このようにして水と異物を取り除いたパーム油を収容部24に収容し、溶液収容パン12内に残存するパーム油をドレン弁40を開いて溶液収容パン12外に貯留する。
【0022】
次に、第2工程では次のことがなされる。
今度は、収容部24に収容された、水と異物を取り除いたパームを溶液収容パン12に供給し、加熱手段18によりドラム14の外周面14Aの温度を300℃〜350℃に設定し、ヘラ22をドラム14から切り離し、回転駆動手段16によりドラム14を回転させる。
ドラム14の回転により、パーム油はドラム14の外周面14Aに付着し、ドラム14の回転に伴って上方に変位し、パーム油の液面から上昇する。
パーム油の沸点は300℃であるため、外周面14Aに付着されたパーム油は熱分解し気化(ガス化)する。
そして、気化したパーム油は取り出し口2002から取り出される。
取り出し口2002から取り出された気化したパーム油は、管路2002を通って直接、複式ディーゼルエンジンの燃焼室に供給され、燃焼させ、燃料として使用され、あるいは管路2002から冷却装置30に至り、冷却され液体とされバイオ燃料としてタンク32に収容される。
すなわち、取り出し口2002から取り出された気化したパーム油は、上述のように直接、複式ディーゼルエンジンの燃焼室に供給してバイオ燃料として使用してもよいし、液化してタンク32に収容し、運搬して他の箇所でバイオ燃料として使用してもよい。
【0023】
本実施の形態によれば、簡単な構成の装置で、しかも簡単な動きをさせることでパーム油の精製、濃縮を行うことが可能となる。
したがって、従来、大量に自生し化粧品や石鹸等極く一部の用途にしか使用されていないパーム油から、低コストでバイオ燃料を作製できる。
なお、このパーム油からバイオ燃料を作製する方法は、すなわち、上述の第1工程と第2工程との2つの工程からなる方法は、レストランなどの排水口に溜まる油であるグリストラップや、廃食油など、無精製な植物油の精製に広く適用可能である。
すなわち、本発明によれば、とうもろこしなど食料原料の燃料へのリサイクルにみられるマイナス効果を事実上伴うことなく、世界的にみて大量且つ安価に入手可能な植物材料や廃棄物を用いて、環境にやさしいバイオ燃料を極めて効率的に製造する装置および方法が得られる。
【0024】
(海水の精製)
次に、精製装置10により海水を精製して純水を得る場合について説明する。
海水を、弁36、管体38を介して溶液収容パン12に供給する。これによりドラム14の下部が海水中に浸漬される。
そして、加熱手段18によりドラム14の外周面14Aの温度を100℃〜110℃に設定し、ヘラ22の上端をドラム14の外周面14Aに接触させ、回転駆動手段16によりドラム14を回転させる。
【0025】
ドラム14の回転により、海水はドラム14の外周面14Aに付着し、ドラム14の回転に伴って上方に変位し、海水の液面から上昇する。
水の沸点は100℃であることから、外周面14Aに付着した海水中の水は蒸発する。
そして、水蒸気は、取り出し口2002から管路を通って冷却装置30に至り、冷却され水とされてタンク32に収容される。
【0026】
一方、ヘラ22に到達するまで外周面14Aに取着されていた海水は、ヘラ22により掻き取られ、フィルター34を介して収容部24に収容される。
海水中の異物や結晶化された塩は、フィルター34により取り除かれ、それらが取り除かれた海水が収容部24に収容される。
この収容部24に収容された海水は、再度、溶液収容パン12に供給され、同様な工程が繰り返して行なわれる。
【0027】
本実施の形態によれば、簡単な構成の装置で、しかも簡単な動きをさせることで海水を精製して純水を得ることが可能となる。
したがって、極めて低コストで海水から純水を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
10……精製装置、12……溶液収容パン、14……ドラム、16……回転駆動手段、18……加熱手段、20……取り出し手段、22……ヘラ、24……収容部、32……タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液が収容される溶液収容パンと、
軸心を水平方向に向けて配設され前記収容された溶液中に下部が浸漬される中空状のドラムと、
前記ドラムを回転させる回転駆動手段と、
前記ドラムの内部から前記ドラムの外周面を加熱する加熱手段と、
前記外周面から蒸発する蒸発物を取り出す取り出し手段と、
を備えることを特徴とする精製装置。
【請求項2】
前記ドラムの外周面に接触、離間可能に設けられ、前記ドラムの外周面に接触することで前記ドラム上に付着する溶液を前記ドラムの回転に伴って掻き取るヘラと、
前記ヘラにより掻き取られた溶液をフィルターにより該溶液中の残渣を取り除いて収容する収容部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の精製装置。
【請求項3】
有機物を糖化・発酵して出来るエタノール溶液の精製方法であって、
前記エタノール溶液を溶液収容パンに供給し、
軸心を水平方向に向けた中空状のドラムの下部を前記エタノール溶液中に浸漬し、
前記ドラムの外周面の温度を70℃〜90℃に設定して前記ドラムを回転させ、
前記エタノール溶液の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記エタノール溶液中のエタノールを水と共に供沸させ、
供沸させたエタノールと水を取り出すようにした、
ことを特徴とするエタノール溶液の精製方法。
【請求項4】
前記供沸され取り出されたエタノールと水は、複式ディーゼルエンジンの燃料とされ、あるいは、冷却して液体としてタンクに収容されることを特徴とする請求項3記載のエタノール溶液の精製方法。
【請求項5】
ヘラをドラムの外周面に接触させ、ドラムの回転により、前記外周面に付着されているエタノール溶液を掻き取り、フィルターにより該溶液中の残渣を取り除いて収容部に収容することを特徴とする請求項3または4記載のエタノール溶液の精製方法。
【請求項6】
無精製な植物油の精製方法であって、
前記植物油を溶液収容パンに供給し、
軸心を水平方向に向けた中空状のドラムの下部を前記植物油中に浸漬し、
前記ドラムの外周面の温度を100℃〜110℃に設定して前記ドラムを回転させ、
前記植物油の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記植物油中の水を蒸発させ、
同時に、ヘラを前記ドラムの外周面に接触させ、前記ドラムの回転により、前記外周面に付着されている植物油を掻き取り、フィルターにより異物を取り除いて収容部に収容し、
つぎに、前記ヘラを前記ドラムから離し、前記収容部に収容された植物油を前記溶液収容パンに供給し、
前記ドラムの外周面の温度を200℃〜400℃に設定して前記ドラムを回転させ、
前記植物油の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記植物油を熱分解させて気化し、
前記気化した植物油を取り出すようにした、
ことを特徴とする無精製な植物油の精製方法。
【請求項7】
前記気化され取り出された植物油は、複式ディーゼルエンジンの燃料とされ、あるいは、冷却して液体としてタンクに収容されることを特徴とする請求項6記載の無精製な植物油の精製方法。
【請求項8】
海水を精製して純水を得る海水の精製方法であって、
海水を溶液収容パンに供給し、
軸心を水平方向に向けた中空状のドラムの下部を前記海水中に浸漬し、
前記ドラムの外周面の温度を100℃〜110℃に設定して前記ドラムを回転させ、
前記海水の液面から上昇する前記ドラムの外周面上において前記海水中の水分を蒸発させ、
蒸発した水分を取り出し、冷却して純水としてタンクに収容し、
同時に、ヘラをドラムの外周面に接触させ、ドラムの回転により、前記外周面に付着されている海水および異物、結晶化された塩分を掻き取り、フィルターによりそれら異物、塩分を取り除いて収容部に収容し、
前記収容部に収容された海水を、再度、前記溶液収容パンに収容し、前記ドラムの回転により前記海水中の水分を蒸発させて取り除き、
以上の工程を繰り返して行なうことを特徴とする海水の精製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−5998(P2012−5998A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146524(P2010−146524)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(507360313)
【Fターム(参考)】