説明

溶液中におけるタンパク質の安定化

【課題】タンパク質、特に、ビタミンK-依存性凝固タンパク質、例えばVIIa因子のようなタンパク質の薬学的製剤を封じ込めて貯蔵するためのコンテナにおける内壁物質の提供。
【解決手段】シリカ被覆ガラス、シリコーン被覆ガラス、非環式オレフィンのポリマー、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィン/直鎖オレフィンのコポリマーから成る群から選択される物質の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、タンパク質、特に、ビタミンK-依存性凝固タンパク質、例えばVIIa因子のようなタンパク質の薬学的製剤を封じ込めて貯蔵するためのコンテナにおける内壁物質としての物質の使用であって、問題のタンパク質がダイマー、オリゴマー、及び/又はポリマーに変化する傾向、及び/又は、問題のタンパク質の活性を損失させるのに寄与する他の起こり得るプロセスを減少させるか又は最小化する物質の使用に関する。本発明は特に、タンパク質の液体製剤−とりわけ水性液体製剤−の封じ込め及び一時的な貯蔵に関連性を有する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンK-依存性凝固チモーゲンタンパク質として知られるタンパク質のグループは(VII因子(FVII)がその例である)、本発明において特に興味深い。問題のタンパク質(類似的なタンパク質ドメインを共有し、また9〜12Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有する)は、止血として知られる自然に生じる生理学的なプロセスに関与する凝固因子の重要な分類を構成する。この止血プロセスは、例えば外傷又は外科的方法によって受けた血管壁の障害によって生じた出血発症に反応して生じるが、組織因子(TF)(血管壁の損傷に続いて、循環血液に露出される)と活性型VII因子(FVIIa)(全FVIIタンパク質量の約1%に想到する量で循環中に存在している)の間の複合体の形成によって開始される。この複合体は、TFを有する細胞に固定され、そして細胞表面でX因子(FX)及びIX因子(FIX)をその活性型の形態(それぞれFXa及びFIXa)に活性化する。FXaはプロトロンビンをトロンビンに活性化し、これはVIII因子(FVIII)、V因子(FV)、XI因子(FXI)及びXIII因子(FXIII)をその活性型の形体(それぞれ、FVIIIa、FVa、FXIa及びFXIIIaに活性化する。
【0003】
さらにその上、この止血開始工程において形成された限られた量のトロンビンは、血小板を、その形を変化させ、それらの表面上で帯電したリン脂質に曝露することによって、活性化する。この活性化された血小板表面は、引き続くさらなるFX活性化及び全トロンビン生成のためのテンプレートを形成する。活性化された血小板表面におけるさらなるFXの活性化は、活性化された血小板表面上で形成されたFIXa-FVIIIa複合体を経由して生じ、次いでFXaはさらに表面上でプロトロンビンをトロンビンに転換する。次いでトロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンに転換する。これは不溶性であり、初期の血小板栓を安定化する。この過程は区画化される、即ち、TF発現部位又は曝露部位に局在化され、これによって凝固システムが全身的に活性化する危険を最小化している。栓を形成するこの不溶性フィブリンは、フィブリン繊維のFXIII-触媒架橋結合によってさらに安定化される。
【0004】
本発明の中で特に興味深いタンパク質は、VII因子(FVII);哺乳類(ヒトを含む)及び他の多くの動物属(例えばある魚)において生じるVII因子タンパク質である。FVIIは主に一本鎖チモーゲンとして血漿中に存在し、これはFXaによって切断されてその二本鎖活性化形態(FVIIaと表される)になる。組換え活性化VIIa因子(rFVIIa)は、前止血剤として開発された。rFVIIaの投与の結果、抗体形成のためにFVIII又はFIXのような凝固因子産物によって治療できない出血発症を経験する血友病患者において急速で高い有効性の前止血応答が得られることが、研究によって示されている。さらに、VII因子欠損の出血している被験者、並びに、正常な凝固システムを有しているが過剰に出血している被験者(例えば、重症の結果として)は、FVIIaで上手く治療できる。これらの研究において、rFVIIaの有害な副作用(特に血栓塞栓症の発症)が生じたことはなかった。
【0005】
外来性FVIIaの投与は、活性化された血小板表面でのトロンビンの形成を増加させる;これは、FIX又はFVIIIを欠損しており、それ故に完全なトロンビン形成のための最も強力な経路を欠いている血友病患者によって証明されている。同様に、減少した血小板数又は欠陥のある血小板機能を示す被験者においても、外来性FVIIaの投与はトロンビン形成を増加させる。
【0006】
組換えヒトFVIIa(rhFVIIa)の商業的な製剤は、ノボセブン(NovoSeven)(登録商標)(Novo Nordisk A/S, Denmark)として市販されており、これはバイアル中の凍結乾燥製剤として提供されており、中に例えば1.2 mgのrhFVIIa、5.84 mgのNaCl、2.94 mgのCaCl2・2 H2O、2.64 mgのグリシルグリシン(glygly)、0.14 mgのポリソルベート(登録商標)80、60.0 mgのマンニトールを含んでおり、使用前に注射用の水(WFI) 2.0 mlを用いて再構成される。一度再構成されれば、得られた溶液は、最高で25℃で貯蔵したとき24時間以内に使用する。液体又は高濃縮FVIIa製剤は、現在商業的に入手不可能であるが、適切な活性と安定性を有するFVIIaの液体製剤が強く望まれていることは明らかであろう。
【0007】
一般に、溶液中のタンパク質の安定性は、とりわけ、イオン強度、pH、温度、凍結/解凍の繰り返しサイクル、或いは剪断力への曝露などのような要因によって影響され得る。活性化タンパク質は、多様な種類の物理的又は物理化学的な不安定性(変性及び/又は凝集(可溶性及び/又は不溶性の凝集体の形成)を起こす傾向を含む)、並びに化学的不安定性(幾つか名前を挙げると、例えば加水分解、脱アミド分解、及び/又は酸化を受けやすい傾向を含む)の結果として失われることがある。タンパク質製薬の安定性についての一般的な概説は、例えば、「Manning et al., Pharmaceutical Research 6: 903-918 (1989)」を参照されたい。
【0008】
タンパク質の不安定性が発生する可能性は広く認識されている一方、特定のタンパク質に予期される不安定性の問題の種類に関して確かな予測をすることはほとんど不可能である。多数の種類の不安定性の結果として、タンパク質副産物、或いは、例えば活性の減少、毒性の増加及び/又は免疫原生の増加を示すタンパク質誘導体の形成を生じ得る。従って、例えば、FVIIaがセリンプロテアーゼの場合、自己タンパク分解によるタンパク質の断片化は、考慮されるべき分解経路である。
【0009】
溶液からのタンパク質の沈殿は、良くても剤形及び量の非均一性、並びに、シリンジの目詰まりをもたらし、悪くて治療される被験者における血栓症を導き得る。さらにその上、
例えばタンパク質のN末端におけるグルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、又は糖側鎖の導入のような翻訳後修飾は、潜在的に貯蔵中の化学的修飾に感受性の高いサイトを提供し得る。
【0010】
従って、何れのタンパク質の薬学的製剤の安全性及び有効性は、その安定性に直接関係している。これに関して、液体剤形における安定性の維持は、一般に、固体製剤(例えば、投与の直前に適切な液体溶媒に溶解又は再構成されるよう意図された凍結乾燥製剤)の場合よりもさらに要求される。というのも、液相では分子運動のポテンシャルが非常に大きい−そしてそれ故、分子相互作用の可能性が増加する−からである。さらにその上、タンパク質の濃縮液形態での安定性の維持は、一般に、希薄な液体製剤の場合よりもさらに要求される。というのも、高いタンパク質濃度では、凝集形成の傾向が極めて大きいからである。
【0011】
本発明は、ある種のタイプのコンテナで貯蔵されたFVII(この場合はFVIIa)の水性液体製剤/剤形は、不十分に高い割合及び/又は凝集形成の程度を示すという発明者らの知見によって生じたものである。これらの知見に基づいて、本発明者らは、FVIIのみならず、関連するタイプのタンパク質の液相安定性が著しく改善されたことによって導かれる程度の調査を行った。
【発明の概要】
【発明の詳細な説明】
【0012】
本発明者らの調査は、凝集体(ダイマー、オリゴマー又はポリマー)の形成に関する水性溶液(即ち水性製剤)中のVIIa因子(FVIIa)の安定性が、水性製剤が貯蔵されるコンテナの内壁物質に含まれる天然物質によって著しく影響されることを示した。また発明者らは、多くのタイプの物質が、凝集体の形成(及び他の形態の分解の可能性)を最小化することに関して望ましい物質であり、またそれ故タンパク質の活性の損失を最小化することを発見した。
【0013】
既に上記で述べたように、FVIIは、類似したタンパク質ドメイン構造を共有し、また、アミノ末端に9〜12Gla残基を含むγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有する多くのタンパク質(例えば、所謂ビタミンK-依存性凝固チモーゲンタンパク質、同様に上記のもの)の一つである;この種のタンパク質は、時に便宜上「Gla-ドメインタンパク質」と呼ばれる。FVII(FVIIaを与える)のみならず、この種の他のタンパク質の生理学的活性形態の形成は、特に、これらのタンパク質中のGlaドメインのカルシウムイオン(Ca2+)結合に対する親和性に関連していることが示されている。FVII(FVIIaとして)についての本発明によって得られた結果に基づいて(本明細書に記載された実施例を参照)、本発明におけるコンテナの内壁物質として、ある種のタイプの物質を用いることで見られるタンパク質凝集の形成の最小化は、内壁物質がある種の金属イオン、特にある種の三価の、また或いは二価の金属イオンを溶液中に放出する能力の程度に−逆の作用で−付随し得るということが示されている。そして、この結論は、FVIIより他のGlaドメインタンパク質にも推定することができると考えられる。
【0014】
如何なる特定の理論に縛られるものではなく、本発明の一つの側面は、(i)壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、且つ、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含むコンテナの内壁物質としての、以下のものから選択される物質の使用に関する:
シリカ被覆ガラス、
シリコーン被覆ガラス、
非環式オレフィンのポリマー、
シクロオレフィンポリマー、及び
シクロオレフィン/直鎖オレフィンのコポリマー。
【0015】
本発明のさらなる側面は、コンテナの内壁物質として、直前に記載したものから選択される物質を有する、少なくとも部分的に充填されたコンテナであり、該コンテナは、(i)壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、且つ、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含む。
【0016】
本発明の側面に関するさらなる詳細及び態様を以下に記載する。
【実施例】
【0017】
実験部
例1:異なる物質から成るコンテナにおけるダイマー/オリゴマーの形成
pH5.0(少量の0.1 M又は1 M HCl又はNaOHを加えて調整した)の水性rFVIIa製剤(下記参照)を新しく調製した一部を、下記表1に示した種々の物質から成るバイアル(コンテナ)中で、30℃で12週間貯蔵した。rFVIIa製剤は下記の組成である:
rFVIIa 1 mg/ml
塩化カルシウム 1.47 mg/ml
塩化ナトリウム 2.92 mg/ml
グリシルグリシン 1.32 mg/ml
ヒスチジン 1.55 mg/ml
酢酸ナトリウム 0.82 mg/ml
0時間、及び2,4,8及び12週間後のそれぞれのダイマー+オリゴマーの含有割合(組成物中のFVIIaの最初の量に対する割合で表示)を、ゲル透過液体クロマトグラフィー(GP-HPLC)で測定した(Waters Protein Pak(登録商標)300 SW カラム、7.5×300 mm, 移動相として0.2 M 硫酸アンモニウム、pH 7.0を使用;流速 0.5 ml/min)。分光光度的に215 nmでの吸光によって検出した。結果を表1に要約した。
【0018】
その結果から、I型ガラスコンテナにおけるrFVIIaのダイマー+オリゴマーの形成は、コンテナを洗浄して熱した(滅菌した)とき大きく減少することが明らかになった。しかし、最も良好な結果は、シリカ被覆I型ガラスバイアル及びCZ(登録商標)樹脂バイアルで得られ、その性能はダイマー/オリゴマー形成の最小化にほぼ等しいことが明らかになった。
【表1】

【0019】
例2:カートリッジ内でのダイマー/オリゴマーの形成
上記例1で記載されたものと同じ組成を有し、同様にpH5.0に調整された、新たに調製された水性 rFVIIa製剤の一部を、未処理のI型ガラス (ホウケイ酸のガラス)(Ph. Eur.)及び、洗浄処理、シリコン処理及び熱処理されたI型ガラス(ホウケイ酸のガラス)(Ph. Eur.)のそれぞれで製造されたカートリッジ(コンテナ)に、30℃で12週間貯蔵した。ダイマー+オリゴマーの含有割合を、0時間、2、4及び12週間後のそれぞれにおいて測定した(上記例1に記載したように)。結果を下記表2にまとめる。
【表2】

【0020】
例3:添加されたアルミニウムイオン (Al3+)の存在下における、rFVIIaのダイマー/オリゴマーの形成
アルミニウムイオン(脱イオン化水中に、AlCl3.6H2O の100μM水溶液として)を、
上記例1で記載されたものと同じ組成を有し、CZ(登録商標)樹脂で製造されたバイアルに入れられ、0.1M又は1MのHCl又はNaOH溶液の一定分量を加えて調整された4.0〜6.0の異なる pH値を有する、新たに調製された水性rFVIIa製剤の一部に加えた(二つの異なる最終濃度で)。このバイアルを30℃で貯蔵した。
【0021】
FVIIのダイマー+オリゴマーの凝集体の含有割合を、0時間、1及び2週間後のそれぞれにおいて測定した(上記例1に記載のように)。結果を書き表3にまとめた。rFVIIaのダイマー+オリゴマーの含有割合は、試験された4つのpH値の全てにおいて、加えられたAl3+ の最終濃度が上昇すると共に、期間中上昇することが明らかになった。
【表3】

【0022】
[発明の詳細な説明]
上記で既に示したように、本発明の第一の側面は、(i)壁部及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、また、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含むコンテナの内壁物質としての、以下から選択される物質の使用に関する:
シリカ被覆ガラス、
シリコーン被覆ガラス、
非環式オレフィンのポリマー、
シクロオレフィンポリマー、及び
シクロオレフィン/直鎖オレフィンのコポリマー。
【0023】
本発明の後者の側面に密接な関係において、本発明のさらなる側面は、コンテナの内壁物質として、直前に述べたものから選択される物質を有する、少なくとも部分的に充填されたコンテナであり、該コンテナは、(i)壁部及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、また、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含む。
【0024】
上記のように、本発明においてコンテナの内壁に好ましい物質は、シリカのコーティング(二酸化ケイ素, SiO2)が適用された種々のグレード/型のガラスを含み;非常によく適合するそのような物質の一つは、シリカで被覆された「I型」ガラス(欧州薬局方、Ph. Eur.で定義されたように)と呼ばれている。I型ガラス及び他の型の薬学的に適用可能なガラス(II型、III型及びIV型)の定義及びその性質決定試験のためには、例えば、欧州薬局方(第4版)の3.2.1節を参照されたい。
【0025】
I型ガラスコンテナは、欧州薬局方(第4版、オンライン)の3.2.1節において、次のように記載されている:
「それらは中性ガラスであり、そのガラス自身の化学的組成のために、高い加水分解耐性を有する」。中性ガラスはそこで次のように定義されている:
「中性ガラスは、かなりの量の三酸化二硼素、アルミニウム又はアルカリ土類を含有するホウケイ酸のガラスである。その組成のために、中性ガラスは高い熱衝撃耐性を有し、また極めて高い加水分解耐性を有する。」
このタイプのコンテナ内壁を被覆するシリカは、好ましくは、少なくとも約0.05 μmの実質的に均一な厚さを有し、さらには約0.1 μm〜約0.2 μmの範囲の実質的に均一な厚さがより望ましいと一般には信じられている。化学蒸着法(CVD)は、ガラス表面に実質的に均一な厚さでシリカコーティングするのに極めて適している技術であることが明らかである。また、コンテナ内表面がCVD技術によって堆積されたシリカ被覆を有し、本発明において使用するのに極めて適したI型ガラスコンテナ(例えばバイアル)(例えば「Schott Type I plus(登録商標)コンテナ」)は、「Schott Glaskontor, Mullheim/Baden, Germany」から商業的に入手可能である。
【0026】
CVD技術の説明には、例えば以下のワールドワイドウェブ上の記事が参考にされる: http://www.azom.com/details.asp?ArticleID=1552。
【0027】
上記のように、本発明においてコンテナの内壁にさらに好ましい物質は、シリコーンで被覆された種々のグレード/タイプのガラス(通常、水に浸出する物質又は種を除去するための、最初の洗浄又は水又は他の水性媒体に浸した後の)を含む。先と同様に、これに関連して好ましいガラスのタイプはI型ガラス (Ph. Eur.)である。
【0028】
「シリコーン」という用語は、ここでは広義に用いられ、シリコーンそれ自体(典型的には、重合体のジアルキル化された、ジアリル化された又はモノアルキル化+モノアリル化されたシロキサン)のみならず、コポリマー、典型的にはシリコンセグメント及び例えばポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド又はポリウレタンのような他の重合体の物質のセグメントを含む、ブロック及びグラフトコポリマーを意味する。
【0029】
コーティング物質は、適切にはポリ(ジアルキル-シロキサン)オイル又はコポリマーであり、適切なタイプの関連するポリ(ジアルキル-シロキサン)は、ポリ(ジメチル-シロキサン)(PDMS)、オイル(ジプロピル-シロキサン)及びポリ(ジヘキシル-シロキサン)を含む。
【0030】
該成分に適用する場合、オイルの粘度が重要であり、特に、例えば問題のコンテナが、コンテナから液体(タンパク質製剤)を排出するのに用いる転移可能(displaceable)なプランジャーを具備するカートリッジ等である場合に生じ得るスリップスティック減少の排除のために重要である。粘稠であるほどスリップスティック減少の危険は少なくなるが、それによってプランジャーの滑らかな動きが妨げられる。本発明の一つの態様において、コーティングは、直鎖又は分枝鎖の親水性化されたポリ(ジアルキル-シロキサン)オイルを含む。オイルの粘度は、200,000センチストーク以上が好ましく、該成分に適用される場合例えば500,000センチストーク以上が好ましい。
【0031】
好ましい態様において、シリコンコーティングは、架橋結合されたシリコンオイル又はゲル化されたシリコンオイルを含み、例えば親水化されたポリ(ジアルキル-シロキサン)オイル、又は架橋結合されたオイルと架橋結合されていないオイルとの混合物を含む。架橋結合されたオイル又はゲル化されたオイルを用いることによって、オイルの遊走能力が著しく減少し、コーティングを固体物質のようにみなすことができる。
【0032】
架橋結合されたシリコンオイル、又は硬化されたシリコンオイルは、典型的には、直鎖又は分枝鎖のシリコンオイルに反応性の官能基(これは次の工程においてコーティングを架橋結合するのに用いられる)を適用することによって得られる。利用可能な架橋結合方法には多くの異なる方法があり、例えば、UV光の照射による硬化、上昇温度で熱することによる硬化、及び水の存在下における硬化などである。架橋結合されたシリコンオイルも、最初に直鎖又は分枝鎖シリコンオイルを施用し、次いで、オイルを高エネルギー放射源、例えば電子源又はX線源で照射することによって得られる。架橋結合可能なシリコンオイルは、医療用グレードの一つが適しており、例えば「Dow Corning (MDX4-4159 Fluid)」から供給されるMDX(登録商標)である;他の適切なタイプには、約35%の水溶性エマルジョンとして供給される「Wacker E2 シリコンオイル」が含まれる。
【0033】
他の態様において、該シリコンコーティングは、親水性化されたポリ(ジアルキル-シロキサン)ブロック及びグラフトコポリマーを含む。該コポリマーは、ポリ(ジアルキル-シロキサン)の重合体のセグメントを含む任意のブロック及びグラフトコポリマー、例えばPDMSである。重合体のセグメントは、例えば、所望のコポリマーを形成するために、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド又はポリウレタンの重合体のセグメントと組み合わされてよい。コポリマーは、任意の適切な周知の方法、例えばシーケンシャル陰イオンポリメライゼーション、又は種々のグラフティング方法によって調製され得る。
【0034】
シリコンコーティングの親水性化は、任意の適切な方法によって達成される。例えば、コーティングをガラス表面に適用した後、プラズマ処理又はコロナ処理のような酸化処理に供することによって達成される。
【0035】
親水性化は、コポリマーを親水性基又は鎖セグメントでエンドキャッピングすることにより達成し得る。親水性基は、例えば、負電荷を有する化学基又はホスホリルコリン(PC)基であり、鎖セグメントは、例えばポリ(エチレンオキシド)(PEO)又はポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)である。
【0036】
プラズマ処理表面は、タンパク質の吸着を減少させるために、親水性ポリマーセグメント又は官能基をカップリングさせることによって修飾されてよい。これらのポリマーセグメント又は官能基は、上記のものと同様の種であってよく、また、プラズマ処理の間に生成された官能基とさらに結合してもよい。
【0037】
シリコンコーティングの厚さは、具体的なコーティングに依存し、好ましくは0.005〜10μmであり、より好ましくは0.01〜1μmである。最適な厚さは、コンテナの寸法、形状及び型に依存し、当業者には容易に決定できるであろう。例えば転移可能なプランジャー又はピストン部を有するカートリッジの場合、コーティングが薄すぎると、使用中に破れ、それによってプランジャーと壁部との間の摩擦が上昇し得る。コーティングの厚さがあるプラトー値に達した時、その厚さがさらに上昇しても摩擦力はほぼ一定である。何れのコーティング組成物にせよ、コストを減少させるためにコーティングは可能な限り薄いことが好ましい。そのような薄いコーティングは、適切には0.005〜0.4μm、例えば0.015〜0.25μmであり、より好ましくは約0.2μmである。
【0038】
シリコンコーティングの遊走能力に依存して、コーティングの親水性基は、周囲の空気が疎水性であるために表面が疎水的であるコーティングの中に動こうとする傾向がある。Gla-ドメインタンパク質の水性液体製剤で充填されるコンテナの場合、−それらの水性液体製剤中のタンパク質がコンテナ内表面へ吸着する傾向を最小にするために−コーティングは、液体タンパク質製剤がそのコンテナ中に導入されるまでの貯蔵の間、親水性に維持されることが望ましい。これは、コーティングが行われたすぐ後にコンテナをタンパク質製剤で充填することによって最も簡単に達成される。
【0039】
上記で示したように、本発明においてコンテナの内壁にさらに好ましい物質は、非環式(即ち、直鎖又は分枝鎖)オレフィンのポリマー、即ち、ポリアルケンを含む。そのような物質の中で、シングルモノマーに由来する有用なポリマーは、その多くのグレードが構造中で部分的な結晶である、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む。非環式オレフィンのコポリマー[例えば、エチレン(エテン)及びプロピレン(プロペン)のコポリマー]が、本発明における内壁物質として同様に興味の対象となる。
【0040】
また、上記で示したように、本発明におけるコンテナの内壁にさらに好ましい物質は、シクロオレフィンポリマーを含み、その適切なタイプには、実質的に100%の5〜7員脂肪族環式炭化水素環から成るものが含まれる。シクロオレフィンポリマー物質からなる商業的に入手可能な適切なコンテナは、「Daikyo Seiko Ltd., Tokyo, Japan」から入手可能なCZ樹脂から製造されたコンテナを含む。他のこの種の関連するポリマー物質には、何れも「Nippon Zeon Co. Ltd. Tokyo, Japan」のZeonor(登録商標)及びZeonex(登録商標)が含まれる。
【0041】
適切なタイプのシクロオレフィン/直鎖オレフィンのコポリマーには、アモルファス構造を有する物質、例えば、Topas(登録商標)タイプ(Ticona GmbH, Frankfurt am Main, Germanyから入手可能)の極めて透明なコポリマー(種々のグレードで入手可能(例えばTopas 8007, Topas 5013, Topas 6013, Topas 6015 及び Topas 6017))が含まれる。
【0042】
本発明の他の側面は、(i)壁部及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、また、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含むコンテナの内壁物質としての、pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で、少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、三価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出する固相物質の使用に関する。
【0043】
本発明のこの後者の側面に密接に関連して、本発明のさらに他の側面は、少なくとも部分的に充填されたコンテナであって、コンテナの内壁物質として、pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で、少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、三価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出する固相物質を有するコンテナであり、(i)壁部及び(ii)該壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖手段を具備し、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含んでいるコンテナを提供する。
【0044】
三価の金属イオンの放出されるレベル/濃度の許容される上限が約3μMである(即ち、放出されたレベル≦約3μM)と考えられる(上記のように)とはいえ、放出されるレベルは最大で約2.5μM(即ち、≦約2.5μM)、より望ましくは最大で約1μM(即ち、≦約1μM)、例えば最大で約0.5μM(即ち、≦約0.5μM)であることが、有利であると思われる。
【0045】
本発明の後者の二つの側面における三価の金属イオンに関し、Al3+の放出がとりわけ望ましくないように思われる;Fe3+は、その溶液中への放出が避けられるべき三価の金属イオンのさらなる例である。
【0046】
三価の金属イオンの溶液中への放出の回避に加えてさらに、ある種の二価の金属イオン、特にZn2+の溶液中への放出を避けることが望ましいと考えられる。これに関して、放出レベルは、おそらく約3μMを超えず(即ち、放出されたレベル≦約3μM)、より好ましくは約1μM(即ち、放出されたレベル≦約1μM)であり、例えば最大で約0.5μM(即ち、≦約0.5μM)であることが好ましい。
【0047】
この点において、被覆されたガラス物質、特にシリカで被覆されたガラス(特にシリカで被覆されたI型ガラス)及びシリコンで被覆されたガラス(特にシリコンで被覆されたI型ガラス)は、本発明の種々の側面においてとりわけ好ましい内壁物質であるといえるが、−三価又は二価のイオンの溶液中への放出に関し上記で設定した判定基準に従うために−幾つかの態様において、ガラス、特にI型(Ph. Eur.)ガラスの使用が十分であり、これは、硝子の表面上/中に存在する三価及び二価の金属イオンの抽出物のレベルを減少させる洗浄又は抽出処理に供される。そのような処置には、熱水(好ましくは少なくとも90℃)又は他の水性媒体、例えば硫酸アンモニウム溶液に浸す(それによる抽出)こと、又は二酸化硫黄による処理が含まれる。
【0048】
既に示したように、本発明に特に関連するタンパク質は、9〜12Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質である。そのようなタンパク質には、「ビタミンK-依存性凝固チモーゲンタンパク質」と呼ばれるものが含まれ、その例はプロトロンビン、VII因子(FVII)、IX因子、X因子及びタンパク質Cである。そのようなタンパク質のGlaドメインは、そのようなタンパク質によるカルシウムイオンの結合に関与すると思われ、また、該カルシウム結合形態は、リン脂質膜の結合を媒介する原因であると思われる;そのようなGla-ドメインタンパク質に関するさらなる情報及び構造的詳細については、例えば「H.R, Roberts et al. , “Molecular Biology and Biochemistry of the Coagulation Factors and Pathways of Hemostasis”, pp. 1409 et seq., Chapter 112, in Williams Hematology, 6th edition (editors E. Beutler et al.), McGraw-Hill, 2001」が参考にできる。
【0049】
問題のタイプのGla-ドメインタンパク質は、最初の42残基のアミノ酸配列において極めて高い程度の相同性を示す。「H.R. Roberts et al. (loc. cit.)」によれば、現在は一般に、Gla-含有凝固因子タンパク質の脂質表面への結合は、Glaドメインの最初の10アミノ酸における疎水性残基の膜挿入によって媒介されること、及び、Ca2+ のGla残基への結合が、タンパク質の表面上の「パッチ」中の疎水性アミノ酸残基を露出する劇的なコンホメーション変化を引き起こすために(この「パッチ」は、タンパク質がリン脂質膜中に挿入するのを可能にする)、この結合においてカルシウムイオンが必須であると考えられている。
【0050】
本発明の使用の態様及び少なくとも部分的に充填されたコンテナは、特に、問題のタンパク質製剤がVII因子(FVII)又はその活性型(FVIIa)を含むものである。重要な態様において、本発明に従って使用されるVII因子ポリペプチドはヒトVII因子であるが、他の態様においては、VII因子は、例えばウシ、ブタ、イヌ、ウマ、マウス、又はサケのVII因子であってよい。問題のVII因子ポリペプチドは、血漿から得られるか又は組替え的に調製され得る。ヒトの治療に用いられるVII因子ポリペプチドは、組換え的に調製されたヒトFVII(rhFVII)が好ましい(例えば米国特許4,784,950号を参照)。
【0051】
本発明において言及されるGla-ドメインタンパク質は、野生型(天然)アミノ酸配列(即ち、ヒト又は他の動物種における天然のGlaドメインタンパク質のアミノ酸配列)を有するタンパク質のみならず、例えば、野生型配列と比較して一以上のアミノ酸残基が置換し(交換し)、欠損し、又は挿入し、しかし9〜12のGla残基は保持したタンパク質のような種々の配列を含むと理解される。
【0052】
本発明において、ヒトと関連して用いられる「VII因子」、「VII因子ポリペプチド」及び「VII因子関連ポリペプチド」という用語は、野生型ヒトVII因子(即ち、米国特許第4, 784,950号に記載されたアミノ酸配列を有するポリペプチド)、並びに、活性型において、野生型VII因子と実質的に同じか改良された生物活性を示す、ヒトVII因子の変異体を包含する。「VII因子」という用語は、未切断(チモーゲン)形態のVII因子ポリペプチド、並びに、タンパク分解的処理されてそれぞれの生理活性形態になったもの(これはVIIa因子と命名される)をも広く包含するよう意図される。典型的には、VII因子は、残基152と153の間で切断されてVIIa因子を産する。
【0053】
本発明において所望されるVII因子関連ポリペプチドは、そのVIIa因子生物活性が、野生型VIIa因子の活性から実質的に改変されたか又は減少された変異体を含むポリペプチドをも包含する。これらのポリペプチドは、これらに限定されないが、ポリペプチドの生理活性を改変するか又は乱す特定のアミノ酸配列変化が導入されたVII因子又はVIIa因子を含む。このカテゴリーは、その活性サイトが抑制された改変形態のFVIIポリペプチドであり、例えばその産物は時に「ASIS」(Activated Site Inhibited (human) factor Seven)と称され、そのヒトFVIIがD-Phe-Phe-Argクロロメチルケトンの形態のセリンプロテアーゼ阻害剤(例えば WO 02/087605を参照)と反応して改変されたものである。
【0054】
血液凝固におけるVII因子の生物活性(VIIa因子として)は、(i)組織因子(TF)と結合する能力及び(ii)IX因子又はX因子のタンパク分解的切断を触媒して活性化IX因子又はX因子(それぞれIXa因子又はXa因子)を生成する能力に由来する。本発明の目的のために、ヒトVIIa因子生物活性は、製剤が血液凝固を促進する能力を、例えば米国特許第5, 997,864に記載されているように、VII因子欠損血漿及びトロンボプラスチンを用いて測定することによって定量し得る。このアッセイにおいて、生物活性は、コントロールサンプルと比較した凝固時間の減少として表され、また、1ユニット/mlのVII因子活性を含有するプールされたヒト血清標準と比較することによって「VII因子ユニット」に転換される。或いは、VIIa因子生物活性は、(i) 脂質膜に包離されたTF及びX因子を含む系において、Xa因子を生成するVIIa因子の能力を測定すること(Persson et al., J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997);(ii) 水系におけるX因子の加水分解を測定すること;(iii) TFへの物理的な結合を、表面プラスモンに基づく装置を用いて測定すること (Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997) 及び (iv) 合成基質の加水分解を測定すること、によって定量することができる。
【0055】
野生型VIIa因子と比較して実質的に同じか又は改変された生物活性を有するVII因子変異体には、上記のような凝固アッセイ、タンパク分解アッセイ、又はTF結合アッセイの一以上で試験したとき、同じ細胞型において生産されたVIIa因子の比活性の、少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、及び最も好ましくは少なくとも約90%を示すものが包含される。野生型VIIa因子と比較して実質的に減少した生物活性を有するVII因子変異体は、上記のような凝固アッセイ、タンパク分解アッセイ、又はTF結合アッセイの一以上で試験したとき、同じ細胞型において生産されたVIIa因子の比活性の、約25%より低い、好ましくは約10%より低い、より好ましくは約5%より低い、及び最も好ましくは約1%より低い比活性を示すものが包含される。野生型VII因子と比較して実質的に改変された生物活性を有するVII因子変異体は、これらに限定されないが、TF非依存性X因子タンパク分解活性を示すVII因子変異体、及び、TFに結合するがX因子を切断しないものを含む。
【0056】
野生型VII因子より実質的に同じかより高い生理活性を示すか、或いは、野生型VII因子と比較して実質的に改変されたか又は減少された生理活性を示すかに関わらず、VII因子変異体は、これらに限定されないが、一以上のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換によって、野生型VII因子の配列とは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0057】
活性化(FVIIa)形態で、野生型VII因子と実質的に同じ生物活性を有するヒトVII因子(FVII)変異体の非限定的な例には、S52A-FVII、S60A-FVII ( Lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998);米国特許第5,580,560に記載されたような、上昇したタンパク分解安定性を示すFVII変異体;残基290と291の間で、又は残基315と316の間でタンパク分解的に切断されたVII因子(Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995);酸化型形態のVII因子 (Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999);PCT/DK02/00189に開示されたようなFVII変異体;及びWO 02/38162 (Scripps Research Institute)に開示されたような、上昇したタンパク分解安定性を示すFVII変異体;WO 99/20767(ミネソタ大学)に開示されたような、修飾されたGla-ドメインを有し、増強した膜結合を示すFVII変異体;及び WO 01/58935(Maxygen ApS)に開示されたようなFVII変異体が含まれる。
【0058】
活性化(FVIIa)形態で、野生型VIIa因子と比較して上昇した生物活性を有するVII因子変異体の非限定的な例には、WO 01/83725、WO 02/22776、WO 02/077218、PCT/DK02/00635、デンマーク特許出願PA 2002 01423、デンマーク特許出願PA 2001 01627に開示されたようなFVII変異体;WO 02/38162 (Scripps Research Institute);及び JP 2001061479 (Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示された増強された活性を持つFVII変異体が含まれる。
【0059】
活性化された(FVIIa)形態で、野生型のVIIa因子と比較して実質的に減少したか又は改変された生物活性を有するVII因子変異体の非限定的な例には、R152E-FVII (Wildgoose et al., Biochem 29:3413-3420, 1990)、S344A-FVII (Kazama et al., J. Biol. Chem. 270:66-72, 1995)、FFR-FVII (Holst et al., Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15:515-520, 1998)、及びGlaドメイン欠損VII因子、(Nicolaisen et al., FEBS Letts. 317:245-249, 1993)が含まれる。
【0060】
関連するヒトVII因子又はVII因子関連ポリペプチドの例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる[ここで、(i) 配列位置数の前の1文字のアミノ酸残基シンボルは、野生型の配列での位置に存在するアミノ酸残基を示し、配列位置数の後の1文字アミノ酸残基シンボルは、置換アミノ酸残基を示す;(ii)同じポリペプチドにおける複数アミノ酸置換は、それぞれの置換を分けるスラッシュ(「/」)によって示される;及び(iii) 以下の段落における「FVII」は、野生型ヒトVII因子を表す]
野生型VII因子、L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、 V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、and S336G-FVII、L305V/K337A-FVII、L305V/V158D-FVII、L305V/E296V-FVII、L305V/M298Q-FVII、L305V/V158T-FVII、L305V/K337A/V158T-FVII、L305V/K337A/M298Q-FVII、L305V/K337A/E296V-FVII、L305V/K337A/V158D-FVII、L305V/V158D/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V-FVII、L305V/V158T/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V-FVII、L305V/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/K316H-FVII、S314E/K316Q-FVII、S314E/L305V-FVII、S314E/K337A-FVII、S314E/V158D-FVII、S314E/E296V-FVII、S314E/M298Q-FVII、S314E/V158T-FVII、K316H/L305V-FVII、K316H/K337A-FVII、K316H/V158D-FVII、K316H/E296V-FVII、K316H/M298Q-FVII、K316H/V158T-FVII、K316Q/L305V-FVII、K316Q/K337A-FVII、K316Q/V158D-FVII、K316Q/E296V-FVII、K316Q/M298Q-FVII、K316Q/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D-FVII、S314E/L305V/E296V-FVII、S314E/L305V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/K337A/E296V-FVII、S314E/L305V/K337A/V158D-FVII、S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V-FVII、S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V-FVII、S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D-FVII、K316H/L305V/E296V-FVII、K316H/L305V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/K337A/E296V-FVII、K316H/L305V/K337A/V158D-FVII、K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V-FVII、K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V-FVII、K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D-FVII、K316Q/L305V/E296V-FVII、K316Q/L305V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII、K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII、K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII、K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/K337A-FVII、F374Y/V158D-FVII、F374Y/E296V-FVII、F374Y/M298Q-FVII、F374Y/V158T-FVII、F374Y/S314E-FVII、F374Y/L305V-FVII、F374Y/L305V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D-FVII、F374Y/L305V/E296V-FVII、F374Y/L305V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T-FVII、F374Y/L305V/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E-FVII、F374Y/K337A/V158T-FVII、F374Y/K337A/M298Q-FVII、F374Y/K337A/E296V-FVII、F374Y/K337A/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q-FVII、F374Y/V158D/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q-FVII、F374Y/V158T/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E-FVII、F374Y/S314E/M298Q-FVII、F374Y/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158D-FVII、F374Y/L305V/K337A/E296V-FVII、F374Y/L305V/K337A/M298Q-FVII、F374Y/L305V/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/E296V/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/V158T-FVII、F374Y/L305V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/S314E-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158T-FVII、F374Y/K337A/S314E/M298Q-FVII、F374Y/K337A/S314E/E296V-FVII、F374Y/K337A/S314E/V158D-FVII、F374Y/K337A/V158T/M298Q-FVII、F374Y/K337A/V158T/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/E296V-FVII、F374Y/K337A/M298Q/V158D-FVII、F374Y/K337A/E296V/V158D-FVII、F374Y/V158D/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158D/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158D/M298Q/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/E296V-FVII、F374Y/V158T/S314E/M298Q-FVII、F374Y/V158T/M298Q/E296V-FVII、F374Y/E296V/S314E/M298Q-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII、F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII、F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII、S52A-VII因子、S60A-VII因子; R152E-VII因子、S344A-VII因子、Glaドメイン欠損VIIa因子;及びP11Q/K33E-FVII、T106N-FVII、K143N/N145T-FVII、V253N-FVII、R290N/A292T-FVII、G291N-FVII、R315N/V317T-FVII、K143N/N145T/R315N/V317T-FVII;及びアミノ酸配列の233Thrから240Asnまでにおいて、置換、付加又は欠失を有するFVII、並びに、アミノ酸配列の304Argから329Cysまでの間において、置換、付加又は欠失を有するFVII。
【0061】
一般に、本発明のヒトVII因子の関連する配列変異体は、米国特許第4,784,950号に開示されている野生型ヒトVII因子のアミノ酸配列と比べて、20までの-好ましくは15未満、より好ましくは10未満(例えば9,8,7,6,5,4,3,2又は1)-アミノ酸残基が置換、欠失又は挿入した変異体である。
【0062】
本発明において用いられるコンテナは、内壁物質の性質に関する本発明の要求と矛盾しない任意のタイプのものであり、その中に含まれるGlaドメインタンパク質製剤を、それらを必要とする被験者又は患者への投与に関する使用に都合が良いものである。都合の良いタイプのコンテナには-特に、問題のタンパク質が液体注射によって投与されるための場合-バイアル又は小型ガラス瓶(phials)、カートリッジ及びシリンジ針によって貫通することができる自己封着エラストマー隔壁又は膜を具備する閉鎖部分又は閉鎖手段を有するものが含まれる。カートリッジタイプのコンテナは、さらに適切に、それによってその中に存在する液体がコンテナから排出されることができ、或いはコンテナの中に引き込むことが可能である、転移可能なピストン手段を含んでよい(例えば、プランジャー等、典型的にはエラストマー物質から成る)。カートリッジタイプのコンテナは、「ペン」タイプの注入デバイスと組み合わせて使用するのに特に適している;適切なペン型のデバイスの例には、FlexPen(登録商標)、NovoLet(登録商標)及びNovoPen(登録商標)(全てNovo Nordisk A/S, Denmark製)のペンが含まれる。
【0063】
他の適用可能なコンテナの型には、柔軟なサッシェ、ポーチ、ボトル詰、瓶又は柔軟な内壁物質を具備するようなもの(本発明において言及されたような)、例えばポリプロピレン又はポリエチレン、及びそれらに圧力を与えることによってその中に存在する液体が排出可能なものが含まれる。そのような柔軟なコンテナは、「ルアー」フィッティング、針フィッティング、又はシリンジ針の取り付けのための周知のタイプの他のフィッティングの適切な形態で閉鎖部分と共に適切に提供されることができ、そして、針-付属フィッティングは、例えば破裂可能な膜又は隔壁、例えばエラストマーの膜又は隔壁を適切に具備することができ、これは、使用の前にその液体内容物を有するコンテナの結着性(integrity)を維持するための封着として機能する。しかし使用においては、例えば、コンテナにおいて適度に高い圧力を加えることによって、或いは、適切な設計のシリンジ針を内方へ伸長することによる膜の貫通によって破裂し得る[そのようなシリンジ針は、円錐状のキャップ、針キャップ又は注射針自体が内向き(即ち、コンテナの方向)及び外向き(即ち、コンテナから離れる)の何れにも伸長するようなものを備えており、例えば、針が貫通できる隔壁又は膜を有するカートリッジタイプのコンテナに適応するように設計されたペン型の注入デバイスとしばしば組み合わせて使用されるタイプのシリンジ針である。
【0064】
コンテナの中に含まれる水性液体タンパク質製剤と長く接触することになるコンテナの閉鎖部分(ストッパー、エラストマー隔壁、プランジャー、針付属フィッティング等)は、本発明においてコンテナの内壁部分のために上記で設定された一以上の判定基準に従うことが好ましい。ある種の物質(例えばシリコンゴム/エラストマーなど)は、さらなる処置を必要とすることなくこれらの要求に適することが多く、一方ある種の他の物質(例えば、ある種のゴム、例えばブロモ-ブチルゴム、注入膜、隔壁、ストッパー、プランジャーなどに共通して用いられる)は、適切には上記概要のようなシリコン表面処置の手段による、適切な表面処置を必要とする。当該分野で通常の技術を有する者には、どの程度の表面処理がここで定められた判定基準に適合するために望ましいのか、特に、露出した未処理の閉鎖物質それ自体が望ましくない金属イオンを溶液中に放出し得るものかどうかを、簡単な試験、及び/又は、製造者のデータに基づいて評価することができる。
【0065】
上記の範囲で既に示したように、本発明のコンテナに含まれるタンパク質製剤は、液体水性製剤に極めて適している。問題のタイプのタンパク質(Glaドメインタンパク質)のために、そのような水性製剤のpHは、一般に約3〜約8の範囲内であり、しかし通常約4〜約7の範囲内である。VII因子又はVIIa因子の場合、特にヒトVII因子又はVIIa因子[本発明における水性製剤の重要な態様は、組替え的に生産されたVII因子(rhFVII)又はVIIa因子(rhFVIIa)である]の場合、約5〜約7の範囲のpH、例えば約5.5〜約6.5の範囲、又は約6.0〜約6.5の範囲pHが最も有利である。
【0066】
上記に記載したような液体水性製剤に加えて、実質的に固相の形態のタンパク質製剤例えば、所望のタンパク質を含み、使用前に水又は水性媒体(担体、溶媒)に溶解/再構成するよう意図される凍結乾燥のような製剤も、本発明の重要な態様である。従って、例えばNovoSeven(登録商標)(rhFVIIa;Novo Nordisk A/S)―すでに上記で言及した―は、現在、エラストマー隔壁を備えたバイアル中に、rhFVIIa、NaCl、CaCl2・2 H2O、グリシルグリシン、ポリソルベート(登録商標)80及びマンニトール、を含み、また、使用前に(即ち、患者に投与する前に)、注射のための滅菌水(WFI)を使って再構成されるよう意図される、凍結乾燥製剤の形態で供給されている。後者に関して、その使用適性期間の間、得られた再構成された水性FVIIa溶液のFVIIa活性の保持率の最大化への貢献として、その中の容量の水(又は他の水性媒体)に凍結乾燥タンパク質製剤(剤形)が溶解される(凍結乾燥製剤を含むバイアル中に必要な量の水又は溶媒を注入した後)、コンテナの内壁物質が、本発明で記載される(上記)設定基準の一以上に適合する物質であるべきことは、上記の議論から明らかである。
【0067】
本発明のさらなる側面は、従って、以下に関連する:
(1)(i)壁部及び(ii)壁部を構成しない閉鎖部分(例えば、エラストマー隔壁を具備する)を具備し、水(例えば注射のための滅菌水)又は他の水性溶媒を含む、コンテナ(例えばバイアル)内の内壁物質としての、上記に既に開示されたタイプの一つの物質(固相物質)の使用;
及び、同様に、
(2)コンテナ内壁物質として上記に既に開示されたタイプの一つの物質を有する、少なくとも部分的に充填されたコンテナであり、該コンテナは、(i)壁部及び(ii)壁部の部分を構成しない閉鎖手段(例えば、エラストマー隔壁を備える)を備え、水(例えば注射用の滅菌水)又は他の水性溶媒を含む。
【0068】
本発明のさらに他の側面は、(a) 9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有する、ここで開示されたタイプのタンパク質の固体製剤[例えば、rhFVII、rhFVIIa又は「ASIS」(vide supra)]を含む、上記で開示されたタイプの一つの部分的に充填されたコンテナ、問題の固体製剤は水又は水性溶媒に使用前に溶解されるよう意図される、及び、(b) 使用前に問題の固体製剤の溶解/再構成のために適した水(例えば注射用の滅菌水)又は他の水性溶媒を含む、開示されたタイプの一つの部分的に充填されたコンテナ、を含む医療用キットに関する。
【0069】
ここに開示した本発明の全ての側面に関連して、本発明におけるコンテナの内壁物質として特定のタイプの一つの物質を用いて達成されたタンパク質の安定性を最大にするために、問題の物質が該コンテナの壁部の内表面領域の実質的に全て(即ち実質的に100%)を覆うべきことが明らかに望ましい[コンテナの閉鎖部分の内表面領域をカウントしない]。
【0070】
[Gla-ドメインタンパク質の薬学的製剤及び投与]
一般に、本発明に従って、部分的に充填されたコンテナ内に含まれるGla-ドメインタンパク質製剤の水性液体製剤(水性薬学的製剤)は−水性製剤が、開始時から水性液体形態で存在するか、或いは水又は他の水性担体又は溶媒の添加による実質的に固体製剤(例えば、凍結乾燥製剤)の溶解/再構成によって調製されるかに無関係に−、一般に、非経口的に(即ち、静脈内、皮下、又は筋肉内に)適切に投与される、或いは連続的又はパルス状注入によって投与される。
【0071】
より具体的なレベルにおいて、VII因子ポリペプチド及びヒト被験者に関係し、非経口的投与のための組成物は、通常、VII因子ポリペプチドを、溶解される薬学的に許容される水性担体と組み合わせて具備することが好ましい。種々の水性担体、例えば水、緩衝剤水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン等を用いることができる。本発明におけるVII因子ポリペプチドは、障害の部位に輸送するための、或いは障害の部位を目的にする、リポソーム製剤中に処方されることもできる。リポソーム製剤は、例えば米国特許第4,837,028号、米国特許第4,501,728号、及び米国特許第4,975,282号に一般的に記載されている。その組成物は、従来周知の滅菌技術によって滅菌され得る。得られた水性溶液は、そのように使用されるために包装され、又はそれらは無菌条件下でろ過されて凍結乾燥され、該凍結乾燥製剤は、滅菌水又は滅菌水溶液(担体、溶媒)と、投与の前に組み合わせられる。該組成物は、およその生理学的条件に必要とされるため、及び/又は組成物の化学的及び/又は物理的安定性を増強するために、薬学的に許容される助剤物質を含む。これらは、以下のものを含む:
[pH調整剤及び/又は緩衝剤]例えばクエン酸(ナトリウム又はカリウム)、酢酸(アンモニウム、ナトリウム又はカルシウム)、ヒスチジン(L-ヒスチジン)、リンゴ酸、リン酸(ナトリウム又はカリウム)、酒石酸、コハク酸、MES(2-N-モルフォリノ-エタンスルホン酸)、HEPES (4-(2-ヒドロキシ-エチル)-ピペラジン-1-エタン-スルホン酸)、イミダゾール、TRIS [トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、乳酸、及びグルタミン酸。緩衝剤の濃度範囲は、溶液の好ましいpHを維持するために選択される。緩衝剤は、二以上の緩衝剤を混合してもよく、例えば、特定の範囲のpH値を提供し得るような二つの緩衝剤の混合物であってもよい。一つの態様において、緩衝剤は、クエン酸と少なくとも一つの緩衝剤、酢酸(アンモニウム、ナトリウム又はカルシウム)、ヒスチジン(L-ヒスチジン)、リンゴ酸、リン酸(ナトリウム又はカリウム)、酒石酸、コハク酸、MES、HEPES、イミダゾール、TRIS、乳酸及びグルタミン酸との混合物である。緩衝剤の総濃度は、典型的には約1mM〜約100mMであり、例えば約1mM〜約50mMであり、例えばしばしば、約1mM〜約25mMであり、例えば約2mM〜約20mMである。
【0072】
[カルシウム塩]:組成物は−液体、凍結乾燥、又は再構成形態に関わらず−、任意にカルシウム塩を含むことができる。カルシウム塩は、低濃度で存在してよく、例えば約0. 1mM〜約5mMで存在してよい;例えば約5mM〜約15mMの培地濃度で存在してよく;或いは例えば約15mM〜約1000mMの高い濃度で存在してもよい。一つの側面において、カルシウム塩は次から選択される:塩化カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、及びカルシウムラエブレート(calcium laevulate)、及びそれらの二以上の混合物。或いは、組成物中のカルシウムイオンの濃度は、0.1mM以下であり、カルシウムイオン濃度は、例えばイオン交換、ダイアフィルトレーション又は他の同様の方法により能動的に減じられることができる。
【0073】
他の側面から、非複合体カルシウムイオン(Ca2+)のVII因子ポリペプチドに対するモル比は、0.5より低く、例えば0.001-0.499の範囲であり、例えば0.005-0.050、又は0.000-0.499の範囲、例えば0.000-0.050の範囲であり、或いは約0.000である。カルシウムイオン(Ca2+)とVII因子ポリペプチドの間のそのような低いモル比を得るために、過剰のカルシウムイオンを結合(複合化)するためのカルシウムキレート剤を加えることが必要であるか又は望ましい。これは特に、処方工程に先行する加工工程に由来する溶液中のカルシウムイオン及びVII因子ポリペプチドの間の比が上記制限を超えるときに関係する。「カルシウムキレート剤」の例には、これらに限定されないが、次のものが含まれる:エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその塩;ジ-又はトリカルボキシル酸の塩、例えばクエン酸、酒石酸、グルタル酸、リンゴ酸、マレイン酸又はコハク酸;ニトリロ三酢酸(NTA)及びDTPA;乳酸及びその塩;及びHIMDA、ADA及び同様の化合物。
【0074】
後者に記載した多くの物質が、キレート化性質を有することに加えて、本発明の緩衝剤(上記参照)に適することに注意すべきである。これに関連して、カルシウムイオン(特に)よりもより強力にある種の不安定化する金属イオン(例えばアルミニウムイオン)に結合する緩衝剤/キレート剤をある組成物に取り込むことが有利である状況もあり得ることが言及される。
【0075】
[張度(tonicity)-調整剤](製剤の重量オスモル濃度に貢献する、張度-改変物質)、例えばアミノ酸、小さいペプチド(例えば2〜5アミノ酸残基を有する)、中性塩、モノサッカリド又はジサッカリド、ポリサッカリド、糖アルコール、又はそれらの物質の少なくとも2以上の混合物。具体的な例には、これらに限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム、スクロース、グルコース及びマンニトールが含まれる。張度調整剤の濃度は、製剤中に存在する他の成分に依存して、等張近くに調整される。一般に、張度調整剤は、約1〜約500mM、例えば約1〜約300mM、しばしば約10〜約200mM、例えば約20〜約150mMの濃度で、存在する他の成分に依存して組み込まれる。中性塩、例えば塩化ナトリウム又は塩化カリウムが用いられ得る。「中性塩」という用語は、実質的に酸でも塩基でもなく、即ち溶解したとき製剤のpHに与える影響が小さいか又は影響がない塩を意味する;
[界面活性剤]、典型的には非イオン界面活性剤、ポリソルベート又はトゥイーン(登録商標)タイプ(例えば、ポリソルベート(登録商標)20又は80、又はトゥイーン80)、或いはポロキサマー(Poloxamer)又はプルロニック(登録商標)タイプ(例えば、ポロキサマー(登録商標188又は407)が適切である。取り込まれる界面活性剤の量は、典型的には約0.005〜約1% 重量/重量(w/w)の範囲であり、例えば約0.005〜約0.1% w/wであり、例えば約0.005〜0.02% w/wであることが、典型的には好ましい。ある状況において、相対的に高い濃度、例えば約0.5% w/wまでが、タンパク質の安定性を維持するために望ましい。しかしながら、実際の使用に用いられる界面活性剤のレベルは、臨床的な実行によって習慣的に制限される;
[抗酸化剤]、例えばアスコルビン酸、システイン、ホモシステイン、シスチン、シスタチオニン、メチオニン、グルタチオン、又はシステイン又はメチオニンを含むペプチド;メチオニン、特にL−メチオニンが典型的には極めて適した抗酸化剤である。抗酸化剤は、典型的には約0.1〜約2 mg/mlの濃度で導入される。
【0076】
[保存剤](微生物の清澄を遅延させるために製剤に含まれる。これによって例えばFVIIポリペプチドの「複数使用」パッケージングが可能になる)、例えばフェノール、ベンジルアルコール、オルト-クレゾール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンズアルコニウムクロリド又はベンゼトニウムクロリド。保存剤は典型的には、約0.1〜約2mg/mlの濃度で導入される;
製剤中のVII因子ポリペプチドの濃度は極めて広くすることができ、典型的には約0.01% w/w〜約 2% w/w (即ち、約 0.1 mg/ml〜約 20 mg/ml)、例えば約 0.05% w/w〜約 1.5% w/w (即ち約0.5 mg/l〜約15 mg/ml)、例えば約 0.05% w/w〜約1% w/w (即ち約0.5 mg/ml〜約10 mg/ml)、及び主に流体容積、粘度等に基づいて、選択された投与の特定の様式に従って選択される。VIIa因子の場合、濃度はしばしばmg/mlとして表され、或いは国際単位/ml (IU/ml)として表される。1 mg のFVIIaは通常、43000-56000 IU 以上に対応する。
【0077】
非経口的に投与可能な組成物の調製方法は、当該分野の技術者には既知であるか又は明らかである。より詳細には、例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences, 18版, Mack Publishing Company, Easton, PA (1990)」に開示されている。
【0078】
慎重な処置(interventions)(例えば、外科的方法)と関連して、VII因子ポリペプチドは典型的には、その処置を行う前24時間以内に投与され、その後7日間かそれ以上の間投与される。凝固剤としての投与は、ここに記載した種々の経路によって行うことができる。VII因子ポリペプチド(例えばrhFVIIa)の投与は、70 kg の被験者への負荷として、通常約0.05 mg/日〜500 mg/日、好ましくは約1 mg/日〜約 200 mg/日、より好ましくは約 10 mg/日〜約175 mg/日である。そして、維持用量は、被験者の体重及び症状の重篤度に依存する。
【0079】
VII因子ポリペプチドを含む組成物は、予防的な処置及び/又は治療的な処置のために投与されてもよい。治療的な適用において、組成物は、上記のように既に症状に苦しんでいる被験者に、症状及びその合併症の治癒、軽減、又は部分的な停止に十分な量で投与される。これを達成するのに適切な量は、「治療的に有効な量」として定義される。当該分野の技術者には理解されるように、この目的に有効な量は、症状又は障害の重篤度、並びに、体重及び被験者の一般的な身体的な症状に依存する。
【0080】
VII因子ポリペプチド(例えばrhFVIIa)の薬学的組成物が、生命を脅かすか又は生命を脅かす可能性がある医学的な症状又は状態に関して通常使用されるような場合、−外来性の物質の量を最小にしようとすることに関連して一般に有利な観点において、また、ヒトVII因子ポリペプチドの免疫原生の通常の欠如を考慮して−治療する医師によって問題のVII因子ポリペプチドをかなり過剰に投与することは可能であり、また、望ましいと思われる。
【0081】
予防的な適用において、VII因子ポリペプチドを含む組成物は、被験者自身の凝固能力が増強することにより、疾病状態又は障害に感受性が高いか、又はその危険がある被験者に投与される。そのような目的のために用いられる投与量は(「予防的有効量」と称す)、ここでもまた被験者の体重及び一般的な健康状態に依存するが、ここでも、70キログラムの被験者には、一般的に約0.05 mg/日〜約500 mg/日、さらに通常約 1.0 mg/日〜約200 mg/日である。
【0082】
特に、ヒト被験者にrhFVIIaを投与する場合は、投与量レベルは通常、投与当り約90〜120μg/体重kgである。しかしながら、現在の選択はいくらか高い用量であり、例えば、150μg/体重kgを超過し、ある場合では、約250〜300μg/kgである。
【0083】
問題の製剤の単一投与又は複数投与は、治療する医師によって選択された用量レベル及び投与措置を用いて行われ得る。毎日の維持レベルを必要とする外来患者には、VII因子ポリペプチドは、例えば携帯型のシステムを用いて、連続的に注入することによって投与することもできる。
【0084】
VII因子ポリペプチドの局所的投与、例えば局所的な適用は、例えばスプレー、灌流、ダブルバルーンカテーテル又はステントの使用、バルーンカテーテルを被覆するためのヒドロゲルの形態で、血管移植片又はステントへの導入、或いは他のよく確立された方法によって行うことができる。何れの事象においても、問題の薬学的組成物は、患者を効果的に治療するのに適切なVII因子ポリペプチドの量を提供すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、且つ、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含むコンテナの内壁物質としての、以下のものから成る群から選択される物質の使用:
シリカ被覆ガラス、
シリコーン被覆ガラス、
非環式オレフィンのポリマー、
シクロオレフィンポリマー、及び
シクロオレフィン/直鎖オレフィンのコポリマー。
【請求項2】
pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、三価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出する固相物質の、(i)壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、且つ、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含むコンテナの内壁物質としての使用。
【請求項3】
前記三価の金属イオンがAl3+である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、前記固相物質が二価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出することを特徴とする、請求項2又は3に記載の使用。
【請求項5】
前記二価の金属イオンがZn2+である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記タンパク質が、ビタミンK-依存性凝固チモーゲンタンパク質又はその活性型である、請求項1〜5の何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ビタミンK-依存性凝固チモーゲンタンパク質が、プロトロンビン、VII因子(FVII)、IX因子(FIX)、X因子(FX)及びタンパク質Cから成る群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記製剤がVII因子(FVII)又は活性化VII因子(FVIIa)を含む、請求項1〜7の何れか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記FVIIが、組換えヒトFVII(rhFVII)である、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記タンパク質が、FVII-関連ポリペプチド又はその活性型である、請求項1〜5の何れか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記コンテナが、針が貫通できる自己封着エラストマーの隔膜を具備する閉鎖手段を備えたバイアル又はカートリッジである、請求項1〜10の何れか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記コンテナが、それによって該コンテナ中に存在する液体が該コンテナから排出され得る転移可能なピストン手段をさらに具備するカートリッジである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記コンテナの内壁物質が、シリカ(SiO2)で被覆されたI型ガラス(Ph. Eur.)である、請求項1〜12の何れか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記シリカ被覆ガラスは、約0.1μm〜約0.2μmの範囲の厚さの実質的に純粋なSiO2の表層を有する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記SiO2の層は、化学蒸着法(CVD)により析出された層である、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記コンテナの内壁物質は、実質的に100%の5〜7員の脂肪族で環式の炭化水素環から成るシクロオレフィンポリマーである、請求項1〜12の何れか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記製剤は液体水性製剤である、請求項1〜16の何れか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記水性製剤はpHが約3〜約8の範囲である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記液体水性製剤は、rhFVIIaを含有し、pH値が約5.5〜約6.5の範囲である、請求項17又は18に記載の使用。
【請求項20】
前記製剤は、使用前に水又は水性溶媒に溶解されるための実質的に固体製剤である、請求項1〜16の何れか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記内壁物質は、前記壁部の内表面領域を実質的に100%覆っている、請求項1〜20の何れか一項に記載の使用。
【請求項22】
コンテナの内壁物質として、下記からなる群から選択される物質を有する、少なくとも部分的に充填されたコンテナ:
シリカ被覆ガラス、
シリコーン被覆ガラス、
非環式オレフィンのポリマー、
シクロオレフィンポリマー、及び
シクロオレフィン/直鎖オレフィンのコポリマー;
ここで前記コンテナは、(i)壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、且つ、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含む。
【請求項23】
少なくとも部分的に充填されたコンテナであって、コンテナの内壁物質として、pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、三価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出する固相物質を有するコンテナであり;
該コンテナが、(i)壁部、及び(ii)該壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖手段を具備し、9-12 Gla残基を含むアミノ末端γ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを有するタンパク質の製剤を含むコンテナ。
【請求項24】
前記三価の金属イオンがAl3+である、請求項23に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項25】
前記固相物質が、pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、二価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出することを特徴とする、請求項23又は24に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項26】
前記二価の金属イオンがZn2+である、請求項25に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項27】
前記タンパク質が、ビタミンK-依存性凝固チモーゲンタンパク質又はその活性型である、請求項22〜26の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項28】
前記ビタミンK-依存性凝固チモーゲンタンパク質が、プロトロンビン、VII因子(FVII)、IX因子(FIX)、X因子(FX)及びタンパク質Cから成る群から選択される、請求項27に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項29】
前記製剤が、VII因子(FVII)又は活性型VII因子(FVIIa)を含む、請求項22〜28の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項30】
前記FVIIが組換えヒトFVII(rhFVII)である、請求項28又は29に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項31】
前記タンパク質が、FVII-関連ポリペプチド又はその活性型である、請求項22〜26の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項32】
前記コンテナが、針が貫通できる自己封着エラストマーの隔膜を具備する閉鎖手段を備えたバイアル又はカートリッジである、請求項22〜31の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項33】
前記コンテナが、それによって該コンテナ中に存在する液体が該コンテナから排出され得る転移可能なピストン手段をさらに具備するカートリッジである、請求項32に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項34】
前記コンテナの内壁物質が、シリカ(SiO2)で被覆されたI型ガラス(Ph. Eur.)である、請求項22〜33の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項35】
前記シリカ被覆ガラスは、約0.1μm〜約0.2μmの範囲の厚さの実質的に純粋なSiO2の表層を有する、請求項34に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項36】
前記SiO2の層が、化学蒸着法(CVD)により析出された層である、請求項34又は35に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項37】
前記コンテナの内壁物質は、実質的に100%の5〜7員の脂肪族で環式の炭化水素環から成るシクロオレフィンポリマーである、請求項22〜33の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項38】
前記製剤が液体水性製剤である、請求項22〜37の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項39】
前記水性製剤は、pH値が約3〜約8の範囲である、請求項38に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項40】
前記液体水性製剤がrhFVIIaを含有し、且つ約5.5〜約6.5の範囲のpH値を有する、請求項38又は39に記載の使用。
【請求項41】
前記製剤が、使用前に水又は水性溶媒に溶解されるための実質的に固体製剤である、請求項22〜37の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項42】
前記内壁物質は、前記壁部の内表面領域を実質的に100%覆っている、請求項22〜41の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項43】
コンテナの内壁物質として、下記からなる群から選択される物質を有する、少なくとも部分的に充填されたコンテナ:
シリカ被覆ガラス、
シリコーン被覆ガラス、
非環式オレフィンのポリマー、
シクロオレフィンポリマー、及び
シクロオレフィン/直鎖オレフィンのコポリマー;
ここで前記コンテナは、(i)壁部、及び(ii)前記壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖部分を具備し、且つ、水又は他の水性溶媒を含む。
【請求項44】
少なくとも部分的に充填されたコンテナであって、コンテナの内壁物質として、pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、三価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出する固相物質を有するコンテナであり;
該コンテナが、(i)壁部、及び(ii)該壁部の部分を構成しない一以上の閉鎖手段を具備し、水又は他の水溶性溶媒を含むコンテナ。
【請求項45】
前記三価の金属イオンがAl3+である、請求項44に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項46】
前記固相物質が、pHが約3〜約8である水又は水溶液と接触させて、40℃を超えない温度で少なくとも24ヶ月インキュベートしたとき、二価の金属イオンを溶液中に多くとも約3μM放出することを特徴とする、請求項44又は45に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項47】
前記二価の金属イオンがZn2+である、請求項46に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項48】
前記コンテナが、針が貫通できる自己封着エラストマーの隔膜を具備する閉鎖手段を備えたバイアル又はカートリッジである、請求項43〜47の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項49】
前記コンテナがバイアルである、請求項48に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項50】
前記コンテナの内壁物質が、シリカ(SiO2)で被覆されたI型ガラス(Ph. Eur.)である、請求項43〜49の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項51】
前記シリカ被覆ガラスが、約0.1μm〜約0.2μmの範囲の厚さの実質的に純粋なSiO2の表層を有する、請求項50に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項52】
前記SiO2の層が化学蒸着法(CVD)により析出された層である、請求項50又は51に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項53】
前記コンテナの内壁物質は、実質的に100%の5〜7員の脂肪族で環式の炭化水素環から成るシクロオレフィンポリマーである、請求項43〜49の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項54】
前記内壁物質は、前記壁部の内表面領域を実質的に100%覆っている、請求項43〜53の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナ。
【請求項55】
請求項41に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナを、請求項43〜53の何れか一項に記載の少なくとも部分的に充填されたコンテナと共に具備する医薬キット。

【公開番号】特開2012−229230(P2012−229230A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−139978(P2012−139978)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2006−529638(P2006−529638)の分割
【原出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstrasse 36/38, CH−8050 Zurich, Switzerland
【Fターム(参考)】