説明

溶液中の分析物濃度を決定する方法

溶液中の1つの分析物または複数の分析物の濃度を測定するための方法が開示される。方法は多くの異なるアッセイ方式で行うことができるが、1つの態様において、アッセイは、光ファイバーストランドの遠位端により少なくとも部分的に規定された反応容器中で実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
米国政府は、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)海軍研究事務所によって供与された規約番号N00014−01−1に従って、本発明において所定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0002】
背景
低レベルの分析物の高感度での検出を、迅速かつ再現可能な実験プロトコルと組み合わせて実施する方法は、近代的な分析学的測定法の礎石である。現在、サンプルマトリックス中の低レベルの分析物を定量するための最も知られている技術は、レポーター分子数を増大させてそれにより測定可能なシグナルを得る増幅手順を用いる。かかる知られた方法として、抗体に基づくアッセイにおいてシグナルを増幅するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ならびにDNAに基づくアッセイにおいて標的DNA鎖を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。免疫PCRと称される、より高感度であるが間接的なタンパク質標的増幅技術(Sano, T.; Smith, C. L.; Cantor, C. R. Science 1992, 258, 120-122を参照)は、オリゴヌクレオチドマーカーを利用し、オリゴヌクレオチドマーカーを、その後PCRを用いて増幅し、DNAアッセイを用いて検出することができる(Nam, J. M.; Thaxton, C. S.; Mirkin, C. A. Science 2003, 301, 1884-1886;Niemeyer, C. M.; Adler, M.; Pignataro, B.; Lenhert, S.; Gao, S.; Chi, L. F.; Fuchs, H.; Blohm, D. Nucleic Acids Research 1999, 27, 4553-4561;および Zhou, H.; Fisher, R. J.; Papas, T. S. Nucleic Acids Research 1993, 21, 6038-6039を参照)。免疫PCR法によって超低レベルのタンパク質の検出が可能となるが、これは複雑なアッセイ手順であり、擬陽性シグナルを生じる傾向があり得る(Niemeyer, C. M.; Adler, M.; Wacker, R. Trends in Biotechnology 2005, 23, 208- 216を参照)。
【0003】
溶液中の特定分析物の濃度を正確に定量するための知られた方法の欠点の1つは、これらが全て、多数の分析物分子が測定シグナルを生じさせるという、集合的応答に基づいていることである。ほとんどの検出スキームは、総合シグナルが検出閾値を超えるために、集合として多数の分子の存在を必要とする。この欠点は、多くの検出技術の感度およびダイナミックレンジ(すなわち検出可能な濃度範囲)を制限する。
【0004】
したがって、当分野において、分析物検出の改善された方法およびシステムが必要とされている。特に、分子の集合ではなく、個別の分子を検出および測定する方法は、分析物検出の感度、ダイナミックレンジおよび精度を改善するであろう。本明細書に記載の発明は、分析されるサンプルを、統計的に1つのみの分析物分子が存在するか、あるいは全く存在しないような、少量のサンプルに分配する。次にこれらの分析物分子を、デジタル化様式で検出およびカウントして、分析物濃度を決定する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、流体サンプル中の単数または複数の分析物の濃度を測定するための、方法、システムおよびデバイスに関する。方法は、種々のアッセイプラットフォーム、試薬、検出可能な標識、反応条件、および検出システムを用いて実施することができ、これらは本明細書に詳細に記載される。
【0006】
1つの態様において、本発明は、流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。方法は、ステップ:(a)流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を、複数の反応容器にわたって分配して、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有し、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有しないようにすること;(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定し、分析物を含有する反応容器の数を同定すること、および/または分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;および(c)前記分析物を含有する反応容器の数から、前記流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;を含む。
【0007】
この方法において、少なくとも95%、任意に90%、任意に80%、任意に40%、任意に5%の反応容器が、分析物を含有しない。選択した反応条件および、分析物の1または2以上の分子を含有するウェル数に依存して、流体サンプル中の分析物の濃度を、分析物を含有する反応容器の数のポアソン分布解析またはガウス分布解析のどちらかにより、決定することができる。
【0008】
反応容器は、目的の分析物を捕捉するように適合可能である。例えば、選択したアッセイの方式に依存して、反応容器は、マイクロウェルおよびマイクロセル内に流体を連結および密封する任意の密封要素を含むことができる。したがって、分析物を捕捉するための捕捉成分は、マイクロウェルのサンプル接触面または密封要素のサンプル接触面上に固定することができる。代替的に、捕捉成分は、反応容器内に配置された粒子の表面上に固定することもできる。
【0009】
方法は好ましくは、少なくとも1000個の反応容器を用いて実施する。さらに具体的には、一定の状況下で、約10,000〜約200,000個の異なる反応容器を、より好ましくは約50,000〜約100,000個の異なる反応容器を用いて同時に実施する。さらに、ある態様において、反応容器の少なくとも一部は、光ファイバーの遠位端により規定される。その結果、例えばレーザーまたはランプなどの光源からの光を、光ファイバーに沿って光ファイバーの遠位端に位置する反応容器へと送達することができる。そこで、所与のアッセイに対して選択された標識に依存して、標識の光励起がシグナルを生成し、これは次に、好適な検出器により検出可能である。
【0010】
多数の態様が開示されるが、本発明のさらに他の態様もまた、本発明の説明的態様を示しこれについて述べる以下の詳細な説明により、当業者には明らかとなる。認識されるように、本発明は種々の明白な側面において変更が可能であり、これらは全て、本発明の精神および範囲から逸脱するものではない。したがって、図面および詳細な説明は、本来説明的とみなされるものであり、限定的とみなされるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1a、1b、および1cは、本発明の1つの態様による、マイクロウェルのアレイを形成するエッチングされた光ファイバー束を示す、横から見た断面模式図である。図1e、1fおよび1gは、マイクロウェル内の捕捉成分の局在化を示す、横から見た断面模式図である。
【0012】
【図2】図2a、2b、および2cは、本発明の1つの態様によるサンドイッチアッセイを表す、横から見た断面模式図である。
【0013】
【図3】図3aおよび3bは、本発明の1つの態様による、(a)光ファイバー束の遠位端における、マイクロウェルの未研磨のビオチン修飾アレイおよび(b)マイクロウェルの研磨ビオチン修飾アレイに結合する、ストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を示す写真である。
【0014】
【図4】図4a、4b、4c、4d、4eおよび4fは、本発明の一態様による実験を示す写真であり、ここでβ−ガラクトシダーゼは、RDGを加水分解してレゾルフィンを形成する。より具体的には、これらの図の各々は、異なる濃度のSβGを有する異なるサンプルを表す。濃度は、(a)128amol、(b)51amol、(c)25amol、(d)7.5amol、および(e)2.6amolであり、(f)はコントロールであった。
【0015】
【図5】図5は、本発明の一態様による、サンプル中に存在する分析物のモル数と、得られた活性な反応容器のパーセンテージのlog対logプロットを表す。
【0016】
【図6a】図6aは、本発明の一態様による、光ファイバー束の遠位端に形成されたマイクロウェル全体の顕微鏡写真と、マイクロウェルアレイの挿入拡大図である。
【0017】
【図6b】図6bは、本発明の一態様による、エッチングされたマイクロウェルアレイの一部のAFM画像である。
【0018】
【図7】図7a、7bおよび7cは、本発明の一態様による、反応容器の封入(enclosure)および密封要素(sealing component)の評価を示す。図7aは、反応容器のアレイ中に封入されたRu(bpy)Clの溶液の顕微鏡写真である。図7bは、UV光により光脱色された反応容器の小八角形の部分の顕微鏡写真である。図7cは、60分後に撮影された図7bの顕微鏡写真である。
【0019】
【図8】図8a、8bおよび8cは、本発明の種々の態様による、β−ガラクトシダーゼの1個の分子の活性の検出を表す顕微鏡写真である。図8aは、反応容器のアレイの一部のバックグラウンド画像の顕微鏡写真である。図8bは、酵素対反応容器の比率が1:5であるアッセイの一部を撮影した画像の顕微鏡写真である。図8cは、酵素対反応容器の比率が1:80であるアッセイの顕微鏡写真である。
【0020】
【図9】図9は、例3で用いたアッセイ方式の模式図である。
【0021】
【図10】図10は、試験サンプル中に存在する、誘導性タンパク質10(IP−10)の濃度と、得られた活性な反応容器のパーセンテージのプロットである。プロットは、アッセイがバイナリ読み出しを可能とする条件下で実施されたことを示す。
【0022】
詳細な説明
本発明は、サンプル中の1つの分析物または複数の分析物の、検出および定量のための方法、システムおよびデバイスに関する。本明細書に記載の方法は、多くの異なる方式で、種々の異なる検出可能な標識、試薬、反応条件および検出システムを用いて実施できることが意図される。
【0023】
1つの側面において、本発明は、試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。方法は、ステップ:(a)流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を、複数の反応容器にわたって分配して、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有し、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有しないようにすること;(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する反応容器の数を同定すること、および/または分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;および(c)前記分析物を含有する反応容器の数から、前記流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;を含む。
【0024】
他の側面において、本発明は、試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。方法は、ステップ:(a)反応容器の統計的に有意なフラクションに分析物が捕捉されるような条件下で、流体サンプルを複数の反応容器に暴露すること、ここで各々の反応容器はマイクロウェルおよび任意の密封要素を含み、各々の反応容器は、捕捉成分をその上に固定させた結合表面を規定しており;(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、捕捉分析物を含有する反応容器の数、および/または捕捉分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;および(c)前記分析物を含有する、および/または含有しない反応容器の数から、前記試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;を含む。
【0025】
他の側面において、本発明は、試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。方法は、ステップ:(a)流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を複数の反応容器に分配して、実質的に全ての反応容器について、各々の反応容器が、分析物を含有しないか、または分析物の1個の分子を含有するかのどちらかであるようにすること;(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する反応容器の数を提供すること;および(c)前記分析物を含有する反応容器の数から、前記流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;を含む。
【0026】
他の側面において、本発明は、試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。方法は、ステップ:(a)試験すべきサンプルを、複数の等容積の第2少量流体サンプルに分配して、第2少量流体サンプルの統計的に有意なフラクションが、分析物の1個の分子を含有するか、または分析物を含有しないようにすること;(b)各々の第2サンプル中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する第2サンプルの数を同定すること;および(c)前記分析物を含有する第2サンプルの数から、前記試験すべきサンプル中の分析物の濃度を決定すること;を含む。
【0027】
前述の方法は、多くの異なるアッセイ方式、異なる反応条件、検出可能標識および検出システムを用いて実施できることが理解される。1つの態様において、例えば、本発明はマイクロスケールからナノスケールサイズの反応容器のアレイを用いた分析物の検出および/または定量を可能とする。1つのアプローチにおいて、反応容器は、反応容器内の分析物を捕捉する、捕捉成分を含有する。かかるアプローチにおいて、固定された捕捉成分を含有する反応容器のアレイを、少なくとも1つの分析物を含有するサンプルと接触させる。分析物の捕捉に続いて、用いる標識に応じて、分析物の存在を、直接または間接的に検出することができる。
【0028】
直接的アプローチは、例えば分析物が酵素である状況を含むことができる。この場合、発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質を反応混合物に含有させて、分析物の酵素活性により、検出可能産物が産生される。間接的アプローチは、例えば、分析物が本来的に酵素活性を有さず、標識が、例えば二次結合リガンドを介して分析物に結合可能となるような状況を含むことができる。例えば、二次結合リガンド(例えば、分析物を捕捉するのに用いるものとは異なる、捕捉成分)に複合化された検出可能標識を、標識された二次結合リガンドが固定された分析物に結合することを可能とする条件下で、捕捉分析物に加える。その後、標識の存在を決定して、反応容器中に分析物が存在するかどうかの指示を提供する。以下にさらに詳細に述べるように、種々の異なる標識を本発明の実施に用いることができる。酵素標識を用いる程度まで、酵素基質を反応容器に加えることができ、ここで酵素は、基質を発色、蛍光発生、または化学発光検出可能産物へと変換して、分析物の検出を可能とする。捕捉分析物を有する反応容器の数またはパーセンテージを用いて、バイナリ読み出し法を用いてサンプル中の分析物の量を計算することができる。
【0029】
同様に、一定のアッセイ方式において、いくつかの、または全ての反応容器を、マイクロウェルのアレイの凹部内ではなく、平坦な支持体上に規定することができる。例えば、分析物を含有するサンプルを、複数の等容量の第2少量流体サンプルに分割する。第2流体サンプルを、次に液滴として平坦な結合面の表面に適用して、液滴のアレイを作製する。各液滴を、その上に固定された捕捉成分を有する平坦な結合面の領域に適用する。サンプルを次にインキュベートして、分析物を、平坦な結合面上に固定された捕捉成分に結合させる。その後、用いる標識に応じて、分析物の存在を直接または間接的に決定でき、分析物を含有する流体サンプルの数および分析物を含有しない流体サンプルの数の同定が可能となる。一定の態様において、例えば、標識が酵素標識である場合、酵素基質を、平坦な結合面の表面に、および捕捉成分を含有する種々の領域(分析物の存在または不在において)に添加することができる。平坦な結合基質を次に、マイクロウェルのアレイについて密封して、反応容器のアレイを形成し、各反応容器中に検出可能産物の生成を許容する。反応容器のアレイ中の、分析物を含有する反応容器の数から、試験溶液中の分析物の濃度の決定が可能である。
【0030】
1つの態様において、本発明は、捕捉成分により特別に官能化され、分析物分子を捕捉することができる、マイクロスケールまたはナノスケールのサイズの反応容器のアレイを用いる。分析物を捕捉する能力により、以下に概説するように、洗浄のステップおよび間接的アッセイを用いることが可能となる。1つの態様において、捕捉分析物の検出に用いる標識は、酵素である。個々の反応容器に一旦捕捉されると、酵素は、検出可能なシグナルを生成するのに十分な数の発色、蛍光発生、または化学発光産物分子の産生を触媒する。低い分析物濃度を有するサンプルに関連する1つの態様により、反応容器の一部のみが分析物分子を捕捉し、これにより反応容器のアレイからの分析物濃度のバイナリ読み出しが可能となる。本発明の方法およびシステムにおける、直接的酵素増幅は、検出可能なシグナルの直接的増幅を可能とする。
【0031】
本発明は、タンパク質などの、低濃度の分析物の検出を可能とする。低濃度において、統計的に有意な数の反応容器が、0個、1個、または数個の標的分析物分子を含有する。各反応容器中に存在する検出可能な標識の存在または不在を観察することにより、バイナリ読み出し法を用いて、1個または2個以上の分析物分子を含有する反応容器の数を同定することができる。その結果、分析物に占有されている反応容器のパーセンテージを用いて、目的サンプル中の分析物の元のバルク濃度を計算することができる。以下の節では、反応容器のアレイ、捕捉成分、本発明により検出可能な分析物、検出可能標識およびシグナル検出プロトコル、アッセイ法などの例、および本発明の使用例について述べる。
【0032】
I.反応容器のアレイ
本発明は、反応容器のアレイを用いて、目的分析物の濃度を決定するのに利用するアッセイにおけるステップを実施する。反応容器のアレイの目的は、反応容積を、アッセイの1または2以上のステップの間に、複数の離散的反応容積に分配することである。本明細書の「アレイ」とは、複数の類似した反応容器を意味する。
【0033】
反応容器は、全てが同一の容積を有してよく、または異なるがただし既知の容積であってもよい。各個々の反応容器の容積は、目的分析物および、その分析物の溶液中における予測濃度に応じて、アトリットル〜ナノリットルの範囲であってよい。1つの態様において、反応容器のサイズは、目的濃度において、0〜10個の目的分析物分子を各反応容器中で見出すことが期待されるように、選択してよい。本発明の1つの態様にしたがって、反応容器は約10アトリットル〜約50ピコリットルの範囲の容積を有する。代替的に、反応容器のサイズは、約1ピコリットル〜約50ピコリットルの範囲である。さらなる代替案において、反応容器のサイズは、約1フェムトリットル〜約1ピコリットルの範囲である。さらなる代替案において、反応容器のサイズは、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である。
【0034】
アレイ内の反応容器の数は、アレイの構成および最終用途に依存する。約2個〜数十億個の反応容器を含むアレイは、種々の技術および材料を利用して作製することができる。アレイ内の反応容器の数を増加させて、アッセイのダイナック・レンジを増加させ、または複数サンプルもしくは複数分析物の平行したアッセイを可能にすることができる。一般に、アレイは、分析するサンプル当たり、1000〜100万個の反応容器を含む。複数サンプルを同時に分析するのに用いるアレイは、一般に10,000〜100億個の反応容器を含む。
【0035】
反応容器のアレイは、平面構造またはいくつかの3次元配置に配置することができる。これらは、規則的なデザインであるか、またはランダムに分散させることができる。好ましい態様では、平面構造上の規則的パターン位置を、これらの位置がX−Y座標面でアドレスできるようになっているものを利用する。
【0036】
反応容器は、固体材料で形成することができる。当業者が理解するように、可能性のある材料数は非常に大きく、限定することなく以下を含む:ガラスおよび改質または機能性ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)など)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、複合材料、セラミクス、およびプラスチックレジン、シリカまたはシリカベースの材料であってケイ素および変性ケイ素を含むもの、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光ファイバー束、および種々の他のポリマー。一般に、基質は光学検出を可能とし、感知できる蛍光性はない。
【0037】
反応容器はまた、封液が反応容器を規定する液体と混合せず、かつ反応容器が安定であるとの条件下で、液体中に形成することができる。水性反応を封じ込めるための好適な液体の例としては、油中水型乳濁液、押出し脂質凝集体、脂質の安定懸濁液、液晶凝集体、水中のミセル、油中の逆ミセル、ならびに細胞、細菌およびウイルスの懸濁液が挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
個々の反応容器は、結合表面を含んでよい。結合表面は、反応容器の内部表面の全てまたは一部であってよく、または、反応容器内に封じこめられた何かの表面、例えばビーズ、または粒子(例えば微粒子またはナノ粒子)の表面であってもよい。
【0039】
1つの態様において、反応容器のアレイは、マイクロウェルのアレイを密封要素と適合させることにより形成される。マイクロウェルは支持体材料の第1表面の小さな窪みである。マイクロウェルは、フォトリソグラフィ、スタンピング技術、成形技術およびマイクロエッチング技術などを含むがこれには限定されない種々の技術を用いて、当分野に一般に知られているように形成してよい。当業者が理解するように、用いる技術は、支持体材料の構成および形状に依存する。密封要素は、第1表面と同じトポロジーの第2表面を有し、これは第1表面と接触させられると、密封反応容器のアレイを作る。第1表面または第2表面のどちらかは、適合(compliant)材料から製造されて、密封を支援する。一方または両方の表面は、マイクロリアクターからの漏れを最小化するために、疎水性であるか、または疎水性領域を含む。
【0040】
他の態様において、反応容器のアレイは、離散的反応容積を分離するために閉じることができるチャネルおよびバルブを含む、マイクロ流体デバイスを用いて形成される。
【0041】
1つの好ましい態様において、反応容器のアレイは、光ファイバー束の遠位端にマイクロウェルを作り、平面適合面を密封要素として利用して形成される。かかる反応容器のアレイは、次のようにして作製することができる。最初に、マイクロウェルのアレイを研磨した光ファイバー束の遠位端にエッチングする。光ファイバーの直径およびエッチングの深さを変えて、所望の容積のマイクロウェルを作製可能である。エッチング工程によって、マイクロウェルを束の中の個々のガラスファイバーのコア材料中に作製するが、ここで、各ウェルが1つのファイバーに同調され、隣接するウェルからは低速(slower)エッチングのクラッド材によって分離されているような様式で作製する。光ファイバーアレイ形式の1つの利点は、千個から百万個もの反応容器を、複雑なマイクロファブリケーション操作の必要なしに作製でき、多数の反応容器を同時に観察する能力を提供できることである。
【0042】
各マイクロウェルは束の中の光ファイバーに同調され、そのため光ファイバー束は、励起光および発光の両方を、ウェルへまたウェルから送達できて、ウェルの内容の遠隔調査が可能である。さらに、光ファイバーのアレイは、ファイバー間のシグナルの「クロストーク」なしで、隣接する容器中の分子を同時に励起する能力を提供する。すなわち、1つのファイバーに伝達された励起光は、隣接ファイバーに漏れ出すことはない。本発明の1つの側面において、米国特許第6,023,540号、第6,327.410号、および第6,858,394号における教示のようにして物理的代替案を作ることができ、これらの文献の各々は、本明細書にその全体が参照として組み込まれる。ガラスマイクロウェルの表面、密封要素の表面、または粒子のいずれかは、結合表面を作製するために官能化することができる。
【0043】
代替的に、等価な構造を、光ファイバー束の端を含まない他の方法を用いて製造することができる。例えばアレイは、当分野に知られたフォトリソグラフィ基板上にスポットするか印刷してもよく、例えば以下を参照のこと:WO 95/25116;WO 95/35505;PCT US98/09163;米国特許第5,700,637号;第5,807,522号;および第5,445,934号;およびU.S.S.N.s 08/851,203および09/187,289;これらの全ては参照として明示的に組み込まれる。
【0044】
II.捕捉成分
本発明の実践中、反応容器内の結合表面(光ファイバー束に規定されたマイクロウェルを含む)は、少なくとも1つの捕捉成分を組み込む。捕捉成分(また一般に「捕捉結合リガンド」、「結合リガンド」、「捕捉結合種」、または「捕捉プローブ」としても言及される)は、分析物がアッセイの間固定されるように、固体支持体上に配置された分析物を、探る(probe)か、これに付着するか、結合するか、または他の方法でこれを捕捉するために用いることができる、任意の分子、化合物、または固体支持体修飾である。一般に捕捉成分は、検出、定量または他の分析目的のための、分析物の固体支持体(すなわち、マイクロウェル、密封要素またはナノ粒子の表面)への付着を可能にする。
【0045】
当業者が理解するように、捕捉成分の組成は分析物の組成に依存する。多様な分析物のための捕捉成分が公知であるか、または知られた技術を用いて容易に見出すことができる。例えば、分析物がタンパク質である場合、捕捉成分として、タンパク質(特に抗体またはそのフラグメント(FAbなど)を含む)、または小分子が挙げられる。好ましい捕捉成分タンパク質として、ペプチドが挙げられる。例えば、分析物が酵素である場合、好適な捕捉成分として、基質および阻害剤が挙げられる。抗原−抗体のペア、受容体−リガンド、ならびに炭水化物およびそれらの結合パートナーもまた、好適な分析物−捕捉成分のペアである。さらに、分析物が一本鎖核酸である場合、捕捉成分は、相補的な核酸であってもよい。同様に、分析物が核酸結合タンパク質であってもよく、捕捉成分は、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸である;あるいは、分析物が一本鎖または二本鎖の核酸である場合、捕捉成分は、核酸結合タンパク質であってもよい。あるいは、本明細書により援用される米国特許第5,270,163号、同第5,475,096号、同第5,567,588号、同第5,595,877号、同第5,637,459号、同第5,683,867号、同第5,705,337および関連特許において一般に記載されるように、ほぼ全ての分析物を捕捉するための、核酸「アプタマー」を開発してもよい。当業者が理解するように、会合する任意の2個の分子を、分析物としてまたは捕捉成分として用いることができる。同様に、分析物が炭水化物の場合、好適な捕捉成分としては、抗体およびレクチンが挙げられる。コンビナトリアル化学法に基づく捕捉成分の開発に関連する、広範な文献が存在することが理解される。
【0046】
好適な分析物/捕捉成分のペアとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗体/抗原、受容体/リガンド、タンパク質/核酸、酵素/基質および/または阻害剤、炭水化物(糖タンパク質および糖脂質を含む)/レクチン、タンパク質/タンパク質、タンパク質/小分子;ならびに、炭水化物およびそれらの結合パートナーもまた、好適な分析物−捕捉成分のペアである。これらは、野生型であっても誘導体の配列であってもよい。一態様によれば、捕捉成分は、成長ホルモン受容体、グルコーストランスポーター(特に、GLUT 4受容体)、およびT細胞受容体などの、多量体を形成することが知られている細胞表面受容体の部分(特に、細胞外部位)である。
【0047】
好ましい態様において、捕捉成分は、「付着成分(attachment component)」(明細書中において「付着リンカー」としても言及される)を介して、結合表面(例えば、マイクロウェルの表面)に付着している。「付着成分」とは、本明細書において使用される場合、捕捉成分の付着をもたらす任意の成分、結合表面の官能化または修飾として定義され、結合剤(bond)および/またはリンカーを含み得る。あるいは、捕捉成分は、捕捉拡張成分(capture extender component)を利用することができる。この態様において、捕捉成分は、分析物に結合する第1の部分と、結合表面への付着のために用いることができる第2の部分を含む。
【0048】
この付着成分はまた、例えば光ファイバー束のガラスなどの結合表面をアッセイ溶液から遮蔽する、保護層を提供することができる。その結果、付着成分は、アッセイおよび検出の間において、望ましくない蛍光ウェルおよび擬陽性シグナルを導く可能性のある、非標的分子の結合表面への非特異的付着を最小化する。
【0049】
捕捉成分の付着成分への付着の方法は、一般に、当該分野において公知であるように行われ、付着成分および捕捉成分の組成に依存する。一般に、捕捉成分は、その後に付着のために用いることができる官能基の各々に対する使用を介して、付着成分に付着する。一態様によれば、官能基は化学官能基である。すなわち、結合表面を、化学官能基が結合表面に提示されるように誘導体化する。付着のための好ましい官能基は、アミノ基、カルボキシ基、エポキシド基、マレイミド基、オキソ基、およびチオール基である。これらの官能基を、直接的にまたはリンカーの使用を介して付着させることができ、その組合せは本明細書においてしばしば「クロスリンカー」として言及される。リンカーは、当該分野において公知である。例えば、ホモまたはヘテロ−二官能性リンカーなどが公知である(本明細書において参考として援用される1994 Pierce Chemical Company catalog, technical section on cross-linkers, pages 155-200を参照)。好ましいリンカーとして、以下が限定せずに挙げられる:短いアルキル基、エステル、アミド、アミンを有するアルキル基(置換アルキル基およびヘテロ原子部分を含有するアルキル基を含む)、エポキシ基、およびエチレングリコールおよび誘導体が好ましい。リンカーは、スルホンアミドを形成するスルホン基であってもよい。
【0050】
一態様によれば、官能基は、光によって活性化される官能基である。すなわち、光によって官能基を活性化し、捕捉成分または付着成分に付着させることができる。一例は、SurModics,Inc.(Eden Prairie、MN)から市販されるPhotoLink(登録商標)技術である。
【0051】
代替的に、付着成分を、結合表面を共有結合的に修飾することなく添加する。すなわち、付着成分は、官能基と結合表面に対して結合親和性を有する基の両方を有する分子を用いて、結合表面に添加することができる。代替的に、付着成分は、結合表面に結合または固着することができる任意のタンパク質である。さらなる代替において、付着成分は、容器表面に結合または固着することができる任意の分子である。一例において、付着成分は、遊離アミン基を表面に有する血清アルブミンである。次いで、クロスリンカーを添加して、アルブミンのアミン基を捕捉成分に付着させることができる。
【0052】
捕捉成分が化学的クロスリンカーである1つの態様によれば、分析物を、以下の様式において、化学的架橋を用いて結合表面上に捕捉する。第1に、結合表面を、アミン基などの官能基を用いて誘導体化する。次に、クロスリンカーの一端がアミン基に付着し、分析物がクロスリンカーの他の端に付着するにようにして、クロスリンカーおよび分析物を結合表面と接触させて配置する。以下により詳細に説明する分析物が酵素ではない一代替的態様において、酵素成分を有する標識を分析物に付着させてもよい。
【0053】
この方法において、タンパク質、レクチン、核酸、有機小分子、炭水化物などを含む捕捉成分を添加してもよい。
【0054】
一態様は、タンパク質性の捕捉成分を利用する。当該分野において公知であるように、タンパク質性捕捉成分を付着させるためにあらゆる数の技術を用いることができる。「タンパク質」は、この意味において、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドを含み、例えば、酵素および抗体を含む。タンパク質に部分を追加するための多様な技術が知られている。1つの好ましい方法は、その全体が本明細書により参考として援用される米国特許第5,620,850号において概説される。表面へのタンパク質の付着は公知である;Heller, Ace. Chem. Res. 23:128 (1990)および関連文献も参照。
【0055】
代替的な態様は、例えば、当該分野において周知であるように、分析物が核酸または核酸結合タンパク質である場合に関して、または、核酸がタンパク質に結合するためのアプタマーとして役立つ場合に関して、核酸を捕捉成分として用いる。
【0056】
一態様によれば、各々の結合表面は、複数の捕捉成分分子を提示する。本発明の一側面において、複数の捕捉成分分子は、結合表面上に、「芝(lawn)」のように分配される。あるいは、捕捉成分は、任意の知られた様式において分配される。
【0057】
一態様によれば、捕捉成分と分析物との間の結合は特異的であり、捕捉成分は、結合ペアの一部である。すなわち、捕捉成分は、分析物に特異的に結合するか、または分析物に対する特異性を有する、標的特異的捕捉成分である。より具体的には、捕捉成分は、分析物に特異的かつ直接的に結合する。本明細書において、「特異的に結合する」または「結合特異性」により、捕捉成分が分析物に、分析物と試験サンプル中の他の成分または夾雑物との間を区別するために充分な特異性で結合することを意味する。例えば、一態様による捕捉成分は、分析物のある一部に特異的に結合する抗体である。一態様によれば、抗体は、分析物に特異的に結合することができる任意の抗体であってよい。例えば、好適な抗体として、以下が限定せずに挙げられる:モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディー(minibody)、ドメイン抗体、合成抗体(しばしば「抗体模倣物(antibody mimetics)」として言及される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合物(しばしば「抗体複合体」として言及される)、および各々の断片。
【0058】
しかしながら、当業者に理解されるとおり、特異性が高くない結合を用いて分析物を検出することが可能である。例えば、システムは、例えば、異なる結合リガンドのパネルなどの異なる捕捉成分を用いてもよく、任意の特定の分析物の検出は、「電子鼻(electronic nose)」が作動する様式と同様に、その結合リガンドのパネルへの結合の「サイン(signature)」を介する。このことから、化学分析物の検出における特段の有用性を見出す。非特異的結合を除去する洗浄のステップを含むアッセイの条件下において結合したままでいるために、分析物と捕捉成分の間の親和性は充分であるべきである。一部の態様において、例えば特定の生体分子の検出において、分析物の捕捉成分への結合定数は、少なくとも約10〜10−1であり、少なくとも約10〜10−1であることが好ましく、少なくとも約10〜10−1であることが特に好ましい。
【0059】
分析物が例えば細菌細胞を含む細胞である一態様によれば、捕捉成分はアドヘシン受容体分子であることができる。使用においては、アドヘシン受容体分子は、標的細胞の細胞外表面上のアドヘシンと称される表面タンパク質と結合することにより、細胞を固定または捕捉する。あるいは、細胞が別の型の細胞(非細菌細胞)である場合、捕捉成分は、分析物細胞に結合する好適な細胞表面受容体である。分析物が細胞であるさらなる態様において、捕捉成分はフィブロネクチンである。例えば、フィブロネクチンは、分析物が神経細胞である場合に用いることができる。
【0060】
あるいは、捕捉成分は、非特異的な捕捉成分である。すなわち、捕捉成分は分析物に特異的に結合しないが、むしろ、分析物に会合するかまたは付着する、対応する結合パートナーに結合する。例えば、一態様による非特異的捕捉成分は、上記のような化学的クロスリンカーである。一態様によれば、分析物サンプル中の全てのペプチド分子が、化学的クロスリンカーに付着することができる。一態様による非特異的捕捉成分の例において、捕捉成分は、ストレプトアビジンである。ストレプトアビジンは、ビオチンに対して高い親和性で結合し、したがって、ビオチンが付着している任意の分子を捕捉する。あるいは、捕捉成分がビオチンであり、分析物がビオチンによって捕捉可能であるように、ストレプトアビジンが分析物に付着または会合している。
【0061】
一態様によれば、以下の様式において捕捉成分を結合表面に添加する。第1に、光ファイバー束の遠位端上のマイクロウェルのアレイを、捕捉成分(単数または複数)の付着のために準備する。すなわち、捕捉成分(単数または複数)がマイクロウェルの結合表面に付着するように、マイクロウェルの結合表面を修飾するか、またはマイクロウェルの結合表面に付着成分を添加する。一態様において、マイクロウェルの結合表面は、上記のように、化学官能性のもので誘導体化される。次いで、捕捉成分を添加する。
【0062】
捕捉成分の付着の一例を図1に示す。ここで、本発明のマイクロウェルのアレイの結合表面は、ビオチンを用いて官能化される。図1aに示すとおり、この例における本発明のマイクロウェルのアレイは、光ファイバー束26の遠位端に形成される。捕捉成分を付着させるために、マイクロウェルの結合表面を、第1に、付着成分28により修飾する。付着成分28は、この例においては、図1bにおいて示すように、ファイバー束26の遠位端のコア30の表面とクラッド(cladding)32の表面との両方に結合するアミノプロピルシラン28である。NHS−ビオチンがアミノシラン化表面28に付着するので、アミノプロピルシランによる修飾は、この例において効果的である。しかしながら、捕捉成分はマイクロウェルの中にのみ存在すべきであるので、光ファイバー束の外部表面、例えばクラッド32の外部表面は、シラン化されるべきではない。すなわち、ビオチン付着を避けるために、外部クラッド表面32からシラン化を除去しなければならない。この例において、図1cに示すとおり、アミノシラン化光ファイバー束を10秒間0.3μmのラッピングフィルムで研磨し、それによりアミノシラン化されたクラッド層を除去することにより、シラン化28を外部クラッド層32から除去する。
【0063】
付着成分28がマイクロウェルの結合表面に添加された後で、捕捉成分を付着させることができる。捕捉成分はビオチンであることができる。例えば図1dについて、ビオチンスクシンイミジルエステルは、マイクロウェル10の結合表面上のアミノ基28に付着する。
【0064】
マイクロウェル10内の捕捉成分の例を、図1e〜1gに示す。捕捉成分16は、任意のシール38を含んでよいマイクロウェル10の表面上に局在化してよく(図1e)、任意のシール38を含んでよいマイクロウェル10内に含まれる微粒子34上に局在化してよく(図1f)、および/または、マイクロウェル10のシール36上に局在化してよい(図1g)。
【0065】
捕捉成分の付着の別の例を図9に示す。ここで、本発明のマイクロウェルの結合表面は、目的分析物に対する抗体を用いて官能化される。例3においてより詳細に説明される、図9に示すように、マイクロウェルのアレイは、光ファイバー束10の遠位端に形成される。抗体捕捉成分16を付着させるために、マイクロウェルの結合表面を最初に付着成分で修飾し、該付着成分は、例3においてはホモ二官能性クロスリンカーであるN,N’−ジスクシンイミジルカーボネートを用いて反応させた、アミノプロピルシランである。この表面を次に抗体上のリジン基と反応させて、マイクロウェルの結合表面において捕捉成分を提示させる。
【0066】
III.分析物
本明細書において議論されるように、本発明の反応容器のアレイは、分析物の検出、定量、およびさらなる分析を提供する。本明細書における「分析物」または文法的に同等のものにより、検出されるかまたは評価されるべき任意の原子、分子、イオン、分子イオン、化合物、粒子、細胞、またはウイルスを意味する。
【0067】
一態様によれば、分析物は酵素である。例えば、酵素は、次の酵素分類:酸化還元酵素、転移酵素、キナーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼおよびリガーゼ、のいずれかからの酵素であってよい。したがって、好適な酵素として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリメラーゼ類、カテプシン類、カルパイン類、例えばASTおよびALTなどのアミノ転移酵素、例えばカスパーゼ類などのプロテアーゼ類、ヌクレオチドシクラーゼ類、転移酵素類、リパーゼ類、心臓発作に関連する酵素など。本発明のシステムをウイルスまたは細菌の標的物に用いる場合、好適な酵素は、ウイルスまたは細菌のポリメラーゼ類、ならびにウイルスまたは細菌のプロテアーゼ類を含む他のかかる酵素を含む。
【0068】
あるいは、分析物は、酵素成分を有する。例えば、分析物は、その細胞外表面上に存在する酵素または酵素成分を有する細胞であってもよい。あるいは、分析物は、その表面上に酵素成分を有さない細胞である。かかる細胞は、典型的には、「サンドイッチ」アッセイなどの以下に記載される間接的アッセイ方法を用いて同定される。
【0069】
別の態様によれば、分析物は酵素ではない。当業者によって理解されるように、本発明において多数の分析物を用いることができる。基本的に、捕捉成分および/または二次結合リガンドに結合するあらゆる分析物を用いることができる。以下にさらに詳細に説明するように、これらの分析物は、典型的には、「サンドイッチ」アッセイなどの間接的なアッセイを用いて同定される。上記のように、1つの好適な分析物は細胞である。さらに、好適な分析物として、生体分子を含む有機および無機の分子が挙げられる。好ましい態様において、分析物は、タンパク質である。当業者によって理解されるとおり、本発明を用いて検出されるかまたは結合パートナーについて評価することができる多数の可能なタンパク質性分析物が存在する。上記のような酵素に加えて、好適なタンパク質分析物として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(1)免疫グロブリン;(2)ホルモンおよびサイトカイン(これらの多くは、細胞受容体に対するリガンドとして作用する);(3)癌マーカー;ならびに(4)他のタンパク質。
【0070】
分析物が酵素でなく、以下により詳細に記載するサンドイッチアッセイが行われる一態様によれば、以下により詳細に記載する酵素標識は、ベータガラクトシダーゼであってよい。あるいは、酵素標識は、アルカリホスファターゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼであってよいが、これらに限定されない。
【0071】
さらに、好適な分析物として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:環境汚染物質(農薬、殺虫剤、毒素などを含む);化学物質(溶媒、ポリマー、有機物質などを含む);治療性分子(therapeutic molecule)(治療性および乱用薬物、抗生物質などを含む);生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜抗原、および受容体(神経、ホルモン、栄養因子、および細胞表面受容体)またはそれらのリガンドなど);全細胞(whole cell)(原核細胞(病原性細菌など)および真核細胞を含み、哺乳動物の腫瘍細胞を含む);ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む);ならびに胞子など。
【0072】
ある態様において、分析物は翻訳後修飾タンパク質(例えばリン酸化、メチル化、グリコシル化)であってよく、捕捉成分は、翻訳後修飾に特異的な抗体であってよい。修飾タンパク質は、複数の特異的抗体により捕捉され、次いで翻訳後修飾に特異的な二次抗体を用いて視覚化されることができる。代替的に、修飾タンパク質は翻訳後修飾に特異的な抗体により捕捉され、次いで各修飾タンパク質に特異的な抗体を用いて視覚化されてもよい。
【0073】
別の態様において、分析物は核酸である。核酸は、捕捉核酸(例えばオリゴヌクレオチド)により捕捉され、次いで別の特異的に標識されたオリゴヌクレオチドにより視覚化されることができる。
【0074】
IV.検出可能な標識およびシグナル検出
種々の検出可能な標識が、本明細書に記載の方法の実践に使用可能であることが理解される。例えば、本発明の実践において、種々の着色標識(例えば金属ナノ粒子(例えば金ナノ粒子)、半導体ナノ粒子、半導体ナノ結晶(例えば量子ドット)、分光標識(例えば蛍光標識)、放射標識、および酵素標識を用いてよいことが理解される。
【0075】
特定のアッセイ形式に依存して、検出可能な標識を、捕捉成分に捕捉された後の分析物に、例えば、検出可能な標識に複合化されて捕捉分析物に結合する二次結合リガンドを介して、間接的に付着させる。標識が分析物に付着すると、標識の存在は、当分野に知られている、例えば光学検出器(例えば強化CCDカメラ)、蛍光検出器などの好適な検出システムを用いて、検出することができる。
【0076】
1つの態様において、標識は酵素標識である。この場合、発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質を酵素に接触させて、検出可能産物を産生する。当分野では発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質は知られており、または多くの異なる酵素について作製できることが理解される。したがって、特定酵素との反応で検出可能な標識を産生する、任意の既知の発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質を、本発明において用いることができ、これにはThe Handbook--A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Tenth Ed, Chapter 10, http://probes.invitrogen.com/handbook/sections/1000.htmlに開示された任意の発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質を含む;この文献は、本明細書にその全体が参照として組み込まれる。
【0077】
本明細書にさらに記載されるようにサンドイッチアッセイを用いて分析物を検出する、酵素標識がβ−ガラクトシダーゼである1つの態様によれば、アレイに添加される酵素基質は、レゾルフィン−β−Dガラクトピラノシドなどのβ−ガラクトシダーゼ基質である。
【0078】
V.アッセイ方法
本発明の反応容器のアレイは、いくつかの異なるアッセイ方法のために用いることができる。より具体的には、本発明は、(a)分析物の検出、および(b)サンプル中の分析物濃度の定量の両方を提供する。
【0079】
一般に、本発明のマイクロウェルのアレイは、目的の分析物に暴露され(または、目的の分析物を含有するサンプルと接触させ)、分析物は、少なくとも1つの捕捉成分による分析物の捕捉に好適な条件、すなわち、一般的な生理学的条件下において、各マイクロウェル内で結合表面上の捕捉成分により捕捉される。本発明の用途を目的とする場合、用語「固定化」とは、結合表面上で捕捉成分に捕捉、付着、結合または付加(affix)されることを意味する。例えば、マイクロウェルを用いる状況において、任意の分析物分子とマイクロウェルの結合表面上の捕捉成分との間の相互作用は、そのマイクロウェル内での分析物分子の固定化をもたらす。
【0080】
本発明の一側面において、目的のサンプルを、分析物の濃度とサンプルの容積に応じて、約30分間〜約12時間の期間にわたり、本発明のマイクロウェルのアレイと接触させて配置する(または、マイクロウェルのアレイをサンプル中でインキュベートする)。1つの態様において、マイクロウェルのアレイとサンプルを、約50分間〜約70分間の期間にわたり接触させる。さらなる態様において、インキュベーションの期間は、約1時間である。
【0081】
一態様によれば、マイクロウェルのアレイをサンプルに接触させた後に、洗浄のステップを行う。洗浄のステップは、捕捉成分に結合していないあらゆる分析物または非分析物分子を洗い流すことを目的とする。あるいは、洗浄のステップは必要でない。
【0082】
本発明の一側面において、次いで、二次結合リガンドをマイクロウェルのアレイに添加する。一般に、二次結合リガンドを添加するのは、本明細書においてより詳細に記載されるように、分析物を検出する方法が「サンドイッチアッセイ」などの間接的アッセイである場合(分析物が酵素でない場合)である。上記のとおり、二次結合リガンドは、捕捉された分析物に会合するかまたは結合し、例えば酵素成分などの検出可能な標識を含む。二次結合リガンドは、二次結合リガンドがマイクロウェルのアレイの結合表面上の全ての結合した分析物と確実に接触するために充分な量で添加する。あるいは、例えば分析物が直接的に検出される場合、二次結合リガンドは添加しない。
【0083】
着色標識および分光標識を用いる場合、標識は、適切な検出システムを用いて検出することができる。対照的に、標識が酵素標識の場合、酵素標識を発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質と接触させて、検出可能産物を産生させる。
【0084】
酵素標識の場合、次に上記の発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質をマイクロウェルのアレイに導入または添加する。発色、蛍光発生、または化学発光酵素基質は、それ自体酵素である分析物、または例えば酵素標識抗体を介して酵素に結合した、任意の捕捉された分析物と接触するのに十分な量で、提供される。選択された酵素基質は、酵素成分と反応するか、または酵素成分により修飾され、このとき、該反応が発色、蛍光発生、または化学発光産物を産生し、したがって光学シグナルを産生するような様式において行われる。反応容器のアレイ中の発色、蛍光発生、または化学発光産物の存在は(以下に記載するように)、分析物と捕捉成分および酵素基質(および場合によっては二次結合リガンド)との相互作用に基づき、分析物の個性、および/またはその濃度についての情報を提供することができる。
【0085】
本発明の一態様において、酵素基質を添加して反応容器のアレイを形成した後に、マイクロウェルのアレイを密封する。すなわち、密封要素をマイクロウェルのアレイの面と接触させることにより、各々のマイクロウェルを流体的に分離し、その内容物を密封する。本明細書において「密封要素」とは、マイクロウェルのアレイ全体を覆うために充分に大きく、各々の反応容器の内容物が反応容器から漏出できないように各々の反応容器が密封されるかまたは分離されるようにマイクロウェルのアレイの外表面(例えば、光ファイバー束のクラッド)と接触することができる、任意の材料またはデバイスとして定義される。一態様によれば、密封要素は、シリコーンエラストマーのガスケットであって、基質の全体にわたって均一な圧力を伴ってマイクロウェルのアレイに対して配置される。各々のマイクロウェル中に内容物を密封することにより、酵素反応がこうして形成されたマイクロウェル中で進行することができ、それによって検出可能な量の発色、蛍光発生、または化学発光産物が産生され、それが反応容器中に検出の目的のために保持される。すなわち、酵素は基質を、発色、蛍光発生、または化学発光産物に変換し、これが各々の密封された反応容器中で局所的に高い濃度に蓄積し、検出可能な発色、蛍光発生、または化学発光性シグナルを生じる。
【0086】
一態様によれば、本発明は、密封要素を適用する機械的なプラットフォームを備えた顕微鏡システムを提供する。プラットフォームは、顕微鏡のステージの下で、顕微鏡システム上に配置される。酵素基質をマイクロウェルのアレイに添加した後、密封要素を、機械的プラットフォームにより適用される均一な圧力を用いて、平らな表面(例えば、顕微鏡スライドグラス)とマイクロウェルのアレイとの間にサンドイッチする。
【0087】
分析物を検出するためのアッセイは、当業者に理解されるように、多様な実験条件下において行うことができる。多様な他の試薬をスクリーニングアッセイにおいて含めることができる。これらは、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、洗剤などの試薬を含み、これらは、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進するため、および/または非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用を低減するために用いることができる。また、その他にアッセイの効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などを用いてもよい。成分の混合物は、必要な結合を提供する任意の順序で添加することができる。当該分野において公知であるように、多様なブロッキングおよび洗浄のステップを利用することができる。
【0088】
酵素活性またはその光学的特性の変化を示す反応容器を、従来の光列(optical train)および光学検出システムにより同定することができる。用いられる特定の酵素基質およびそれらの産物の作動波長に依存して、特定の波長のために設計された光学フィルターを、反応容器の光学調査のために用いることができる。好ましい態様において、本発明の反応容器のアレイは、光ファイバー束の一部として直接形成される。
【0089】
一態様によれば、本発明の反応容器のアレイは、その全体が本明細書において参考として援用される米国特許出願第09/816,651号において記載されるシステムのような光学検出システムと組み合わせて用いてもよい。例えば、一態様によれば、本発明の反応容器のアレイは、光ファイバーの集合の遠位端であって、クラッドファイバーから構成される光ファイバー束を含み、したがって、光はファイバー間で混じらない。09/816,651出願において示されるように、束の近位端は、z−翻訳ステージおよびx−yマイクロポジショナーにより受容される。
【0090】
米国特許出願第09/816,651号の光学検出システムは、以下のように作動する。光ファイバー束の遠位端から戻る光はアタッチメントを通って倍率交換装置(magnification changer)に入り、該倍率交換装置は、ファイバーの近位または遠位端の画像サイズの調整を可能にする。倍率交換装置を通過する光は、次いで、第2ホイールによりシャッターを閉めてフィルタリングされる。光は、次いで、電荷結合素子(CCD)カメラで画像化される。コンピューターが画像処理ソフトウェアを実行してCCDカメラからの情報を処理し、また、可能であれば第1および第2のシャッターおよびフィルターホイールを制御する。
【0091】
本発明の反応容器のアレイは、多様な適合する方法を用いて、光ファイバー束の遠位端に一体化するか、またはこれに取り付けることができる。光ファイバー束の各個々のファイバーの中心にマイクロウェルを形成し、反応容器は、このマイクロウェルのアレイを密封要素で密封することにより形成される。したがって、光ファイバー束の各々の光ファイバーが、そのファイバーの遠位端の中心に形成された1つのマイクロウェルからの光を運搬する。この特徴は、個々の反応容器の光学的特性の調査を可能とし、各々のマイクロウェル中の反応物を同定するために必要である。したがって、束の末端をCCDアレイ上に画像化することにより、反応容器の光学的特性を個々に調査することができる。
【0092】
A.検出
前に記載したように、検出システムは検出される標識に依存する。例えば、標識が光学標識、分光標識または放射標識の場合、標識の存在は当分野に知られている市販の検出器を用いて決定することができる。
【0093】
標識が酵素標識の場合、標識は直接的に(例えば、分析物が固有の酵素活性を持つ場合)、または間接的に(例えば、分析物が酵素活性を示さない場合)、当分野に知られた技術を介して検出することができる。言い換えれば、分析物が酵素であれば、分析物は直接的検出法により同定することができる。代替的に、標的分析物が酵素ではなく、したがって酵素基質の存在下において発色、蛍光発生、または化学発光産物を産生できない場合、分析物は間接的検出法により同定される。
【0094】
酵素である分析物に関する直接的検出法は、次のように進行する。第1に、目的のサンプルとマイクロウェルのアレイとを、上記でより詳細に記載したように、好適な条件下において接触させる。酵素基質を、サンプルと同時に、またはサンプルの添加後に、添加する。
【0095】
マイクロウェルを密封した後、任意の所与の反応容器中の分析物の存在または不在を、次いで光学的調査により検出する。すなわち、発色、蛍光発生、または化学発光産物の産生によって引き起こされる光学的シグナルのあらゆる変化を検出する。分析物を含有する任意の反応容器中で、分析物は、何らかの方法で酵素基質を修飾するかまたは酵素基質に作用し、それにより発色、蛍光発生、または化学発光産物の放出をもたらし、該反応容器からの光学シグナルの変化を生じる。次いで、発色、蛍光発生、または化学発光産物を、光学的に検出する。
【0096】
本発明の一態様において、上記のように、マイクロウェルのアレイは、酵素基質の添加後に密封要素により密封されて、反応容器を形成する。
【0097】
間接的検出法は、酵素特性を有さない分析物に関する。本発明と共に用いることができる2つの間接的方法は、「サンドイッチ」アッセイおよび「競合的」アッセイである。標識が光学標識、分光標識および放射標識の場合、類似のアッセイ方式を使用可能であることが意図される。
【0098】
サンドイッチアッセイは、図2に示すように行うことができる。第1に、目的のサンプルとマイクロウェルのアレイ10とを、図2aに示すように、および上記により詳細に記載するように接触させる。好適な条件下において、サンプル中に存在する分析物12は、図2bに示すように、マイクロウェル14の結合表面上に提示された捕捉成分16によって捕捉される。一態様によれば、次いで洗浄のステップを行う。
【0099】
次に、図2cに示すように、「二次結合リガンド」18をマイクロウェルのアレイ10に添加する。二次結合リガンド18は、分析物12に結合する点において捕捉成分16と類似する。二次結合リガンド18は、捕捉成分16と同一であっても異なっていてもよい。捕捉された分析物12に対する二次結合リガンド18の結合は、ある種の「サンドイッチ」を形成する。分析物が不在の場合、二次結合リガンド18は洗い流される。
【0100】
二次結合リガンド18は、結合成分22および酵素標識または酵素を捕捉可能な標識24の、2つの成分を有する。結合成分22は、分析物12に結合する二次結合リガンド18の一部分である。典型的には、二次結合リガンド18は、捕捉成分16とは異なる、分析物12の部分に結合する。なぜならば、捕捉成分16と二次結合リガンド18との両方が同一の部分に結合する場合、二次結合リガンド18は、捕捉された分析物12には結合することができないからである。したがって、選択された二次結合リガンド18は、分析物12が捕捉成分16を介して結合表面14に結合した状態で、分析物12に結合することができる。
【0101】
標識24は、酵素活性を奏するか、または続いて酵素を捕捉するために用いることのできる、二次結合リガンド18の部分である。一態様によれば、標識24は、二次結合リガンド18に付着した酵素である。
【0102】
その後、酵素基質を添加する。本発明の一態様において、上記のように酵素基質が添加された後に、マイクロウェルのアレイを密封し、反応容器を形成する。次いで、任意の所与の反応容器中の分析物の存在または不在を、光学的調査によって検出する。すなわち、発色、蛍光発生、または化学発光産物の産生によって引き起こされる光学的シグナルのあらゆる変化が検出される。分析物および二次結合リガンドを含有する任意の反応容器中で、二次結合リガンドに会合した酵素は、何らかの方法で酵素基質を修飾するかまたは酵素基質に作用し、それにより発色、蛍光発生、または化学発光産物を産生し、該反応容器からの光学シグナルの変化を生じる。次いで、産物を光学的に検出する。
【0103】
競合的アッセイは以下のように操作される。第1に、標識された分子を本発明のマイクロウェルのアレイに添加する。ここで、標識は、酵素または酵素成分である。この態様において、選択された標識分子は、標識分子のアレイへの添加がマイクロウェルの結合表面上の捕捉成分への標識分子の結合をもたらすように、捕捉成分に結合する。
【0104】
次いで、目的のサンプルとマイクロウェルのアレイとを、上でより詳細に記載したように接触させる。マイクロウェルのアレイ中の分析物の存在は、標識された分子の移動(displacement)、および分析物の捕捉成分への結合を引き起こす。移動は、以下の理由により起こる:この態様において、選択された捕捉成分は、標識された分子または分析物のいずれかに結合することができ、したがって、競合的結合状態をもたらす。その結果、標識された分子がマイクロウェルの結合表面上の捕捉成分に結合しており、分析物が添加される場合、分析物は、好適な条件下において標識された分子を移動させる。
【0105】
一態様によれば、次いで、あらゆる非結合の標識された分子をマイクロウェルのアレイの結合表面から除去するために、洗浄のステップを行う。
【0106】
その後、酵素基質を添加する。そして、上記のように、本発明の一側面によれば、酵素基質を添加した後にマイクロウェルのアレイを密封して、反応容器を形成する。あるいは、マイクロウェルのアレイは密封しない。次に、任意の所与の反応容器中の分析物の存在または不在を、光学的調査により検出する。しかし、上記の光学的調査とは異なり、この調査においては、発色、蛍光発生、または化学発光産物を欠いていることが、反応容器中の分析物の存在を示す。分析物を含有する任意の反応容器において酵素反応は起こらず、該反応容器からの光学的シグナルの変化は起こらない。対照的に、標識された分子が未だ存在する任意の反応容器において、光学的シグナルが検出される。
【0107】
競合的アッセイの態様の代替的バージョンにおいて、標識された分子および目的のサンプルの両方をマイクロウェルのアレイに同時に決まった容積で添加する。このバージョンにおいて、分析物および標識された分子は、捕捉成分の結合部位について直接的に競合する。
【0108】
さらに、本明細書に記載された方法および組成物は、多様な多重アッセイにおいて、サンプル中の1または2種以上の分析物の存在を検出するために使用可能であることが理解される。例示の多重アッセイについては、以下の節に記載する。
【0109】
1.同一の標的分析物に対する多数の異なる捕捉成分
一態様による本発明の反応容器アレイは、単一の標的分析物に指向するが同一ではない複数の捕捉成分を利用する。すなわち、複数の結合成分は、分析物の異なる結合部位に結合する。したがってこの態様は、1より多くの異なる捕捉成分を各々の結合表面上に、または異なる捕捉成分を異なる結合表面上に提供する。一例において、1つの分析物を、2または3以上の捕捉成分であって、各々が分析物の異なる部位に結合可能である前記捕捉成分により、調査する。このことにより、非特異的結合相互作用が統計的に最少化されるので、信頼度が高まる。この態様において、タンパク質性分析物を評価する場合、好ましい態様は、標的の異なる部分に結合する捕捉成分を利用する。例えば、同一の分析物タンパク質の異なる部分に対する2または3以上の抗体(または抗体フラグメント)を捕捉成分として使用する場合、好ましい態様は、異なるエピトープに対する抗体を利用する。同様に、核酸分析物を評価する場合、余剰の核酸プローブは、オーバーラップしているか、隣接しているか、または空間的に分離していてよい。しかしながら、2つのプローブが単一の結合部位について競合しないことが好ましく、したがって、隣接しているか分離しているプローブが好ましい。
【0110】
この態様において、複数の異なる捕捉成分を用いてもよく、約2〜約20が好ましく、約2〜約10がより好ましく、および2〜約5が特に好ましく、これは、2、3、4または5を含む。しかしながら、上記のように、用途に依存して、より多くを用いてもよい。
【0111】
2.複数の標的分析物に対する複数の異なる捕捉成分
別の態様によれば、本発明の反応容器アレイは、同一でも異なっていてもよい複数の標的分析物に指向された、複数の異なる捕捉成分を利用する。この態様は、各々の結合表面上の1より多くの異なる捕捉成分、または異なる結合表面上の異なる捕捉成分を含む。一例において、同一の結合表面または異なる結合表面上の2または3以上の捕捉成分が結合することができる、2または3以上の分析物を提供してもよい。
【0112】
この態様において、1より多くの標的分析物を同定することができる。例えば、直接アッセイの場合は各々の異なる分析物が異なる酵素であるか、または間接アッセイの場合は各々の標的が異なる標識と複合化された結合部分に結合する限り、2または3以上の標的分析物を同定することができる。一態様において、分析物は、複数の酵素基質を用いて同定され、ここで、各々の基質は、適切な酵素との相互作用の際に異なる色を生じる。したがって、各々の標的分析物は、酵素基質との反応により生じた色に基づいて区別することができる。酵素以外の標識を用いる場合、異なる標識は異なる特性を有するべきであり、これにより各々の異なる標識が、適切な検出器により同定可能である。
【0113】
逐次アプローチと呼ばれる代替的アプローチにおいて、分析物は、同一または異なる標識を用いて同定される。このアプローチにおいて、1または2以上の目的分析物は、1または2以上の結合表面上に捕捉される。次に、分析物に結合する第1標識結合部分を、第1固定化分析物に結合させる。標識の存在は、適切な検出システムにより検出可能である。その後、第1標識結合部分を、例えば洗浄により除去する。次に、第2の異なる分析物に結合する、第2標識結合部分を、第2分析物に結合させる。標識の存在は、適切な検出システムにより検出可能である。その後、第2標識結合部分は、洗浄により除去することができ、このプロセスは所望のように繰り返すことができる。このアプローチにおいては、同一または異なる標識が、第1および第2標識結合部分に存在可能であることが理解される。本明細書に記載された全ての標識を、このアプローチに使用可能であることが理解される。標識が酵素の場合、逐次反応は、各々が同一または異なる色を生じる基質を用いて実施可能であることが理解される。
【0114】
この態様において、複数の異なる捕捉成分を用いることができ、約2〜約100が好ましく、約2〜約20がさらに好ましく、および2〜約10が特に好ましく、これは、2、3、4または5、6、7、8、9を含む。しかしながら、上記のように、用途に依存してより多くを用いてもよい。
【0115】
空間的(spatial)アプローチと呼ばれる他のアプローチにおいて、(i)結合表面の別の領域内に配置された2つの異なる捕捉成分、(ii)結合表面の別の領域に適用された、2つの異なる標識結合部分、または(iii)(i)と(ii)の組合せ、のいずれかを用いることも可能である。
【0116】
空間的アプローチの第1例において、異なる捕捉成分を結合表面の別の領域に適用する。例えば、これは、ファイバーマイクロアレイが結合表面として用いられる場合にはファイバーマイクロアレイの異なる領域上に、または密封要素が結合表面として用いられる場合は密封要素に、微液滴を配置することにより、実現することができる。各々の微液滴は異なる捕捉成分を含有し、これは表面を、異なる捕捉成分と接触することにより官能化する。この方法により、液滴の大きさに依存して、空間的に離れた結合表面上に異なる捕捉成分のアレイを作製することが可能である。この様式で検出可能な多重分析物の数は、異なる捕捉成分領域のサイズおよび、反応容器のアレイのサイズに依存する。
【0117】
空間的アプローチの第2の例において、目的分析物は、結合表面にわたり、または結合表面の分離された領域内で、均一に捕捉することができる。しかしこのアプローチにおいて、第1標識結合部分を結合表面の第1領域に適用して、第1分析物の存在を検出する。同時に、または順次に、第2標識結合部分を結合表面の第2領域に適用して、第2分析物の存在を検出する。
【0118】
異なる分析物を指向する捕捉成分および同一分析物を指向する複数の捕捉成分を含む、上記の異なるアッセイ形態の各々は、以下に記載するように、定量についても利用可能であることが理解される。
【0119】
さらに、一定の状況下で、順次アッセイの間にマイクロウェルのアレイを再利用可能であることが理解される。このアプローチにおいては、第1アッセイにおいて分析物を含有するウェルのログを記録し、次に、続くアッセイにおいて、前に分析物を含有したウェルを、次のアッセイで用いるマイクロウェルのアッセイから数学的に差し引く。
【0120】
B.定量
本発明の一態様によれば、本発明の方法、システム、およびデバイスを用いて、サンプル中の分析物の存在および濃度の両方を検出することができる。すなわち、1または2以上の分析物分子を含有する反応容器のパーセンテージと、サンプル中の分析物の濃度との間に、相関関係が存在する。したがって、本発明の定量方法により、分析物分子を含有する反応容器のパーセンテージに基づき、サンプル中の分析物の量の計算が可能となる。
【0121】
本発明は、個々の分子の少数を定量するその能力により識別され、したがって、標的分析物の非常に低い濃度を測定するのに適している。この能力は、1個の分析物分子を、例えば反応容器のアレイ内などに、空間的に分離し、次に任意に、例えば蛍光標識などの発色産物を反応容器中に生成して封じ込めることにより、達成される。分析物分子の存在は、少なくとも1つの分析物分子を含有する任意の反応容器中での、発色産物の高い濃度により、バイナリ様式で(分子が不在の場合は0、分子が存在する場合は1)容易に計測できる。
【0122】
理論に拘束されることなく、定量方法は、使用される反応容器の数および容積が、この技術により決定することができる濃度のダイナミックレンジを支配するという事実によって、部分的に駆動される。すなわち、本発明のアレイ中の反応容器の数および容積に基づき、溶液中の標的分析物の濃度の範囲を概算することができ、これにより、本発明の方法を用いて濃度を決定することができる。
【0123】
例えば、例2において開示されるアレイは、各々が46fLの容積を有する反応容器を備え、3.6×10−11Mの濃度を有するβ−ガラクトシダーゼの溶液は、平均して、1容器あたり1酵素分子をもたらす。しかしながら、適切な範囲の標的分析物濃度を有する溶液を反応容器のアレイ中に分配することは、正確に1容器あたり1酵素分子の分配をもたらすものではないことに留意することが重要である。統計的には、一部の容器は複数の分子を有し、他の容器はゼロ個の分子を有する。1または2以上の酵素分子を含有する容器の数の、酵素分子を含有しない容器の数に対する比率が高い場合には、データをガウス分布に適合させることができる。酵素分子含有反応容器の、酵素分子非含有の容器に対する比がゼロに近づくにつれ、ポワソン分布が適用される。この極限分布を用いて、多数の試行において起こる稀な事象の確率を計算することができる。例えば、ポワソン統計に基づき、3.6×10−11Mの濃度について、1容器あたりゼロ〜5の間の酵素分子の分布が予測され、最もあり得る値は、ゼロおよび1である。
【0124】
方程式1は、1試行あたりの事象の期待平均数μに基づいてv事象を観察する確率を決定するために用いることができる。
方程式1: Pμ(v)=e−μ(μ/v!)
【0125】
用いられる濃度が3.6×10−11Mよりはるかに低い場合、期待平均値は例外的に低くなり、分布は狭まり、1試行あたり0または1の事象以外を観察する確率は、全ての実験ケースにおいて起こり得ない。これらの低い濃度では、活性な反応容器のパーセンテージとバルク酵素濃度との間の関係は、ほぼ直線的である。したがって、この知見に基づき、本明細書において記載されるような単純なデジタル読み出しシステムにより、すなわち活性ウェルを「計測」することにより、サンプル中の標的分析物の濃度を決定するために、本発明のアレイを用いることができる。
【0126】
一態様によれば、本発明の定量方法は、以下のように行うことができる。方法は、第1に上記の任意の検出方法により反応容器のアレイ中の分析物を検出することを含む、デジタル読み出しシステム(また、「バイナリ読み出しシステム」としても言及される)である。次いで、反応容器の数を計数し、反応容器の全数のパーセンテージを計算する。すなわち、高密度の反応容器のアレイと組み合わせての応(yes)または否(no)の応答の利用により、例えば酵素β−ガラクトシダーゼなどの目的標識で標識された、分析物分子のバルク濃度のデジタル読み出しを可能とする。この読み出しは、活性な酵素分子を含有する容器をアレイにわたって計数することにより達成され、結果として生じる「活性ウェル」のパーセンテージは、標的分子当たり1つの酵素標識を仮定すると、分析物濃度に相関する。本発明のアレイにおいては同時に多数の容器が調査されることを前提とすると、低い比率においても多数のウェルが統計的に有意なシグナルを提供するので、酵素分子の反応容器に対する比率は1:1000以下であることができる。
【0127】
理論に限定されることなく、本発明の定量方法は、製造し調査することができる、個々の反応容器の数によってのみ限定されると考えられる。したがって、反応容器の数を拡大することは、アッセイのダイナミックレンジおよび感度の両方を増加させる。
【0128】
この技術の制限は、ダイナミックレンジの閾値の上下で見出される。濃度がダイナミックレンジの下限を下回ると、酵素分子の数が少なすぎ、充分な数の占有されたウェルを観察することができず、したがって、統計的に有意な数のウェルが酵素分子により占有されることを確実にするために、ウェルの数を増やさなければならない。極めて希釈された濃度についての結果は、活性を示すと予測される反応容器の数が非常に少ないことに起因して、それらに関連する大きな相対的誤差を有する。予測されるポアソン値からのわずかな偏差が、この場合、大きな誤差を生じる。反応容器の100%が少なくとも1個の酵素分子を含有する場合に、この技術に対する究極的な上限が生じる。この限界において、高い酵素濃度の2つの溶液の間の区別は不可能である。
【0129】
少なくとも1個の分子を含有する反応容器のフラクションが約20%未満の範囲において、任意のウェルが2または3個以上の分析物分子を含有する確率は非常に小さく、分析物分子の数は、占有された反応容器の数と緊密に釣り合う。20%の占有〜100%の占有の間で、1個を超える分子を含有するウェルの数は増加するが、しかし、占有率が100%に到達するまでは、占有率と濃度の相関にはガウス統計をまだ用いることができる。
【0130】
実際、非特異的シグナルは低い「ノイズフロア(ノイズレベル)」を生じ、誤った反応容器は上限の「ノイズ天井」を生じる。さらに、分析物による占有または非占有のウェルの数を参照して、統計的に有意な占有率を、当分野で知られた標準的統計手法を用いて決定することができる。例えば、統計的に有意な測定は、平均値からの標準偏差の3倍であるものである。
【0131】
必要に応じて、方法の実用的ダイナミックレンジを、幾つかの方法により増加することができる。1つのアプローチにおいて、サンプルを10以上の係数で希釈する。サンプルおよび希釈サンプルの両方を、本発明の方法を用いて同時にアッセイすることができる。2つのアッセイのダイナミックレンジは重なるが、希釈係数によりオフセットされており、こうしてダイナミックレンジを拡張することができる。
【0132】
第2のアプローチにおいて、各反応容器のシグナルの量を、全反応容器が分析物について陽性となる時刻の前の複数時点で測定する。初期の時点で陽性であるウェルのフラクションは、分析されるサンプルの濃度を決定するために、既知の参照標準に対して較正することができる。光ファイバー束およびCCDカメラを用いる本発明の態様において、全てのウェルをほぼリアルタイムで画像化することは容易である。
【0133】
第3のアプローチにおいて、反応容器の複数のアレイを、異なる容積、異なる結合表面の領域、または結合表面上の捕捉成分の濃度の異なる密度で用いることができる。これらのアレイは、別個のアレイとして、または種々の特性のサブアレイを有する大きな1つのアレイとして、構成することができる。所与の反応容器中に検出される分析物分子の確率は、容積、結合表面、および捕捉成分の密度に関連するため、サブアレイは、異なる感度範囲をカバーするように設計してよい。これらの範囲が重なる場合、組み合わせアレイの有効範囲が拡張される。
【0134】
別の側面において、本発明は、試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。方法は、ステップ:(a)流体サンプルをウェルのアレイに分配し、これにより、実質的に全てのウェルについて、各々のウェルが分析物を含有しないか、または分析物の1つの分子を含有するようにすること;(b)各々のウェル中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有するアレイのウェルの数を提供すること;および(c)試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を、分析物を含有するアレイのウェルの数から決定すること;を含む。
【0135】
1つの態様において、ウェル総数の約20%が、少なくとも1個の分子を含有する。これらの状況下で、少なくとも1個の分子を含有するウェルの数は、ポアソン分布の線形の範囲内にある。他の態様において、ウェル総数の約20%未満は、約1個の分子を含有する。他の態様において、ウェル総数の約20%より大で約60%未満は、少なくとも1個の分子を含有する。これらの状況下で、少なくとも1個の分子を含有するウェルの数は、ポアソン分布の非線形の範囲内にある。他の態様において、ウェル総数の約20%より大で約60%未満は、約1個の分子を含有する。他の態様において、ウェル総数の約60%より大で約95%未満は、少なくとも1個の分子を含有する。これらの状況下で、少なくとも1個の分子を含有するウェルの数は、ポアソン分布の高度に非線形の範囲内にある。他の態様において、ウェル総数の約60%より大で約95%未満は、約1個の分子を含有する。
【0136】
他の側面において、本発明は、試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。方法は、ステップ:(a)試験すべきサンプルを、複数の等容積の第2の少量流体サンプルに分配して、第2の少量流体サンプルの統計的に有意なフラクションが、分析物を含有しないか、または分析物の1個の分子を含有するようにすること;(b)各々の第2の少量流体サンプル中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する第2の少量流体サンプルの数を同定すること;および(c)前記分析物を含有する第2の少量流体サンプルの数から、前記試験すべきサンプル中の分析物の濃度を決定すること;を含む。
【0137】
このアプローチにおいて、分析物を含有しないかまたは分析物の1個の分子を含有する第2の少量流体サンプルの統計的に有意なフラクションは、分析物を含有しないかまたは分析物の1個の分子を含有する第2の流体サンプルの総数の50%、任意に75%、任意に95%と定義される。
【0138】
本発明の1つの側面において、アレイはまた、酵素反応速度論を解析するために用いることができる。本明細書において「酵素反応速度論」は、酵素が制御する反応の速度についての研究を意味する。酵素反応速度論の分野において、低濃度の基質における酵素反応の速度は、基質濃度に比例する(「基質依存性」である)ことが理解される。これは一次として言及される。高濃度の基質における反応速度は最大速度に到達し、反応が飽和するために基質濃度から独立していることが、さらに理解される。したがって、反応速度(velocity)を基質濃度の関数としてプロットすると、プロット線は初めに基質濃度の増加と共に線形に増加し、次に基質濃度が飽和に近づくに従って水平となり始める。
【0139】
したがって、1つの態様によれば、任意の特定の酵素の反応速度を、本システムおよびアレイを用いて試験することができる。反応速度は、例えばアロステリック阻害による反応阻害などの種々の理由から、酵素にわたって変化する。本発明のアレイにより、これらの変化する反応速度特性を試験することができる。
【0140】
1つの態様により、反応速度を次の様式で検討する。標的分析物を捕捉成分に結合させ、基質を加え、反応容器を密封する。反応容器内に無限量の基質が存在し、容器を密封したためにさらなる基質が添加されないとすると、反応速度は、時間と共に検出される発色産物の量に基づいて決定することができる。
【0141】
VI.本発明の使用例
本発明のシステムおよびアレイは多くの使用を有する。例えば、基本的な酵素学研究およびデジタル濃度測定に用途を有する。さらに、アレイは複数の異なる酵素を用いる研究を可能とし、タンパク質およびDNA標的の超低濃度検出の限界を広げる。反応容器の大きなアレイの同時モニタリングの能力により、単一分子の酵素学を用いて、バルクの反応速度シグナルから個別の酵素分子の振舞いを決定することができる。
【0142】
他の使用としては、例えば、細菌またはウイルスまたはこの両方の環境モニタリングである。ある種の細菌を含有する可能性のある環境サンプルを、本発明のアレイに接触させて置くことができる。細菌を検出するには、細菌細胞を溶解し、1つの細菌酵素(または2つ以上の酵素)を検出標的とする。1つの態様によれば、細胞をアレイに添加する前に溶解する。あるいは、細胞を捕捉し、溶解のステップは、検出の前にアレイ上で行う。さらなる代替法では、細胞表面マーカーを標的とする場合には、溶解は不要である場合もある。例えば、目的の細菌またはウイルスを標的上の表面マーカーに特異的な抗体で捕捉し、次にこの捕捉を、サンドイッチ型のアッセイにより、他の位置において標的に結合する酵素標識抗体を添加して、検出することができる。
【0143】
例えば他の使用は、遺伝子発現の測定が関与する。1つの態様において、標的分析物は細胞であり、これらを、いくつかの反応容器が単一細胞を含有するような条件下で、反応容器のアレイ内に導入する。これは、遺伝子発現の測定の第1のステップであり、これは、必要に応じて、表面タンパク質および分泌タンパク質を検出することにより、全細胞レベルで行うことができる。代替的に、細胞を溶解し、細胞からの転写物(または他の成分)を調査することができる。1つの態様において、各部位は1個または0個の転写物を含有する。1つの態様において、正常細胞と癌細胞を比較する。遺伝子発現における細胞間の変化は、単一細胞レベルにおける遺伝子発現を試験することにより、検討することができる。
【0144】
本明細書において本発明を好ましい態様を参照して説明したが、当業者は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、形態および詳細において修正が可能であることを認識する。
【0145】

例1
この例において、概念実証(proof-of-concept)結合アッセイを、フェムトリットルサイズの反応容器のアレイにおける酵素シグナル増幅を用いて行う。より具体的には、種々のアッセイを実施し、本発明のビオチン化アレイを用いて溶液中のストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)の様々な量を検出し、次いで捕捉したSβG分子を有するウェルの数とサンプル中のSβGの濃度の間の相関を試験する。
【0146】
この例において、エッチングされた光ファイバーアレイを用いて、各々が特異的に官能化され、酵素標識された標的分子を捕捉することができる、フェムトリットルサイズの反応容器のアレイの集合を作製する。単一の酵素分子をそれぞれの反応容器に封じ込め、陽性シグナルの生成に十分な数の蛍光産物分子の産生を触媒する。標的分子の低い濃度においては、捕捉位置の一部しか標的分子に結合せず、高密度アレイからの標的濃度のバイナリ読み出しが可能となる。
【0147】
材料
この例における反応容器アレイを、それぞれが4.5μmの光ファイバー24,000本からなる、研磨された1mmの光ファイバーアレイの遠位面の酸エッチングを用いて作製する。コアファイバー材料はシリカであり、各ファイバーの周囲のクラッドは、酸化ゲルマニウムでドーピングしたシリカであり、これはより低い速度で腐食する。4.5μmのファイバーを2.9μmの深さまでエッチングし、各々が46fLの容積の反応容器のアレイを生成する(図1a参照)。
【0148】
ファイバーは、最初に、コアとクラッド表面の両方に結合するアミノプロピルシランで修飾した(図1b参照)。クラッドへのビオチン付着を防止するため、アミノシラン化ファイバーを0.3μmのラッピングフィルムで10秒間研磨し、これによりファイバーアレイから、最上部にあるアミノシラン化クラッド層を取り除いた(図1c参照)。研磨の後、NHS−ビオチンをウェル表面のアミノ基に付着させた(図1d参照)。
【0149】
方法
最初に、捕捉成分の有効性を試験した。基質のビオチン化の有効性を試験するために、ストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を研磨および未研磨のファイバー両方の表面のビオチン基に直接付着させ、続いて修飾表面の画像を取得した(図3参照)。図3は、ストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)の、(a)未研磨ビオチン修飾光ファイバーアレイ、および(b)研磨ビオチン修飾光ファイバーアレイへの結合を示す。結合がマイクロウェル反応器の表面のみにおいて起きた(b)と比較した場合、画像(a)において観察されるように、ストレプトアビジンの結合は、全ての表面において起きた。したがって、未研磨のファイバーは、クラッド表面を含むアレイ全体にわたって色素を示すが、研磨されたファイバーは、ウェル表面のみに局在した色素を示す。
【0150】
アレイの修飾の後で、ビオチン化ファイバーアレイを、1時間室温で、種々の量のSβGを含有する150μLのPBSバッファー中でインキュベートした。インキュベーション時間の間に統計的に1または0個の分子が各々のウェルに結合するように、SβGの濃度を選択した。次いで、未結合の標的を確実に除去するために、アレイをPBSバッファー中で繰り返し洗浄した。
【0151】
SβGの結合のバイナリ読み出しのために、ファイバーアレイを、機械的プラットフォームを備えた正立顕微鏡システムに載せて固定した。β−ガラクトシダーゼの基質であるレゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RDG)の溶液を、反応容器を含有するファイバーの遠位端に導入し、その後密封した。顕微鏡のステージの下に位置する機械的プラットフォームにより顕微鏡スライドグラスとファイバーアレイとの間でサンドイッチされた0.01インチの厚さのシリコーンエラストマーガスケットを用いて、基質を密封した。このプラットフォームが、束全体にわたりガスケット材料に対して均一な圧力を適用し、これにより各々の反応チャンバーを密封し、ウェル間での酵素活性の調査を可能にする。β−ガラクトシダーゼは、RDGを加水分解してレゾルフィンを形成し、これが各々の密封された反応容器中で局所的に高い濃度に蓄積し、検出可能な蛍光シグナルを生成する(図4)。
【0152】
図4は、各々の実験について、ファイバーアレイの一部を示す。実験の各々は、異なる濃度のSβGを有する異なるサンプルを試験した。各々の実験についての濃度は、以下の通りであった:(a)128amol、(b)51amol、(c)25amol、(d)7.5amol、および(e)2.6amol。図4(f)は、コントロールを示す。
【0153】
各々の実験について5000個を超える反応容器の解析により、酵素分子を捕捉した反応容器のパーセンテージと調査されたサンプル中に存在する酵素の量との間の相関が可能となった。活性ウェル間の輝度(intensity)の差異において観察される変動は、表面効果と組み合わせての分子間の触媒活性の差異の結果である可能性が最も高い。表面効果は、反応チャンバー表面に対する酵素分子の配向に基づいて、酵素分子の相対的活性を変化させ得る。
【0154】
また、反応器の表面に対する酵素の結合がビオチン−ストレプトアビジンの相互作用にのみ基づいており、ガラス表面への非特異的な結合に基づくものではなかったことを確認するために、2つのコントロール実験を行った。1つのコントロール実験は、最も濃縮されたSβG標的溶液(150μL中128amol)でインキュベートされた、エッチングされた未修飾のファイバーからなった。第2のコントロール実験は、ストレプトアビジンを欠くβ−ガラクトシダーゼの溶液(150μL中128amol)中でインキュベートされた修飾ファイバーを用いて行った。両方のコントロール実験から、無視することができる活性ウェルのパーセンテージを得た(以下に議論する2.6amolの実験に関する0.2%に対して、0.06%未満)。
【0155】
結果
図5は、サンプル中に存在する標的のモル数と、その結果得られる活性な反応容器のパーセンテージのlog対logプロットを表す。図5に示すlog対logプロットにおける、活性な反応容器のパーセンテージと標的のモル数の間の直線的関係は、DNAおよび抗原などの実際の標的の検出のためにバイナリ読み出し検出法を用い得ることを示唆する。この方法により、直接的なアッセイの手段を維持しつつ、デジタル読み出しを介した迅速な分析および正確な濃度情報が可能となる。
【0156】
この例における、ビオチン化されたフェムトリットルのアレイに対するストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼの結合についての最低検出限界(lowest limit of detection:LOD)が、1時間の標的インキュベーション時間を用いて2.6amole(150μLの17fM溶液)であったこともまた重要である。
【0157】
実施例2
この例において、β−ガラクトシダーゼの単一の分子を、2.0×10個の個々に密封されたフェムトリットルのマイクロウェル反応器にわたって、直径1mmの光ファイバー束を用いてモニタリングした。反応容器のアレイにわたる、単一の酵素分子の触媒からの蛍光産物の蓄積を観察し、ポワソン統計分析を適用することにより、デジタル濃度読み出しを得た。
【0158】
材料
1mmの束にした4.5μmの光ファイバーを、Illumina(San Diego、CA)から購入した。β−ガラクトシダーゼおよびRu(bpy)Clを、Sigma-Aldrich(St. Louis、MO)から入手した。レゾルフィン−D−β−ガラクトピラノシドを、Molecular Probes(Eugene、OR)から購入した。0.01インチの非強化光沢シリコーンシート材料を、Specialty Manufacturing Inc.(Saginaw、MI)から購入した。使用した他の全ての化学物質は試薬グレードであり、Sigma-Aldrich(St. Louis、MO)から入手した。
【0159】
特注の正立落射蛍光イメージングシステムにより、水銀光源、励起フィルターホイールおよび発光フィルターホイール、顕微鏡対物およびCCDカメラ(QE、Sensicam)を用いて、全ての蛍光画像を得た。フィルターホイールおよびシャッターをコンピューターにより制御し、IPlabソフトウェア(Scanalytics、Fairfax、VA)により解析を行った。システムには、全実験にわたり、光ファイバーアレイをシステムに固定する固定デバイスが備えられた。ステージの下の機械的プラットフォームを用いて、シリコーン密封層を収納し、その後ファイバーアレイの遠位端と接触させ、各々の反応容器を密封した。全ての測定を、光ファイバー束の遠位端で、フェムトウェル(femtowell)アレイを用いて行った。
【0160】
およそ2.4×10個の個々の直径4.5μmの光ファイバーを含む光ファイバー束を、フェムトリットルの反応容器のアレイを作製するための基質として用いた。エッチングの深さはエッチング時間およびエッチャント濃度により変化するので、ウェルの容積は正確に制御することができる。これらの実験において用いた光ファイバーを、およそ2.9μmの深さまでエッチングし、46fLのウェル容積を得た。図6は、光ファイバー束のエッチングされた表面の画像である。より具体的には、図6aは、ファイバーアレイ全体およびファイバー束の拡大顕微鏡画像を表し、アレイおよび個々の光ファイバーの両方の規則性を強調している。図6bは、エッチングされた表面の一部のAFM画像であり、エッチングのプロセスから作製されたウェルを示す。
【0161】
方法
アッセイ
β−ガラクトシダーゼアッセイのために用いた基質は、レゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシドであった。アレイ中の個々のウェルを酵素および基質の存在下において密封した後、容器のアレイにわたり、酵素産物であるレゾルフィン(ex558nm/em573nm)について蛍光強度をモニタリングした。2.0mMのKClおよび0.lmMのMgClを含む100mMのTrisバッファー、pH8.0中、100μMのレゾルフィン−D−β−ガラクトピラノシド(RDG)の溶液を調製した。全ての酵素溶液を、同じ反応バッファーから予め分注して凍結したストックサンプルから調製した。実験の直前に、2つのサンプルを2分間7000RPMで遠心分離し、シリコーンによる密封の機構に干渉し得る全ての粒子状の物質を除去した。およそ1cmのシリコーンおよび顕微鏡スライドを、無水エタノールで清浄にした。シリコーンシート材をガラス表面に置き、接着させた。その後、75μLの容積の酵素およびRDG溶液を、シリコーンのガスケット上でピペットを用いて混合した。ガスケットを、ファイバー束の遠位端に向かって、密封が形成されたことを示唆する抵抗を感じるまで機械的に上昇させた。最初の蛍光画像を得、その後、およそ2時間にわたり定期的に画像を得た。
【0162】
密封要素
フェムトリットルアレイを密封するために、0.01インチの厚みのシリコーンエラストマーのガスケットを、顕微鏡スライドグラスとファイバーアレイとの間で、機械的プラットフォームを用いてサンドイッチした。プラットフォームは、束全体にわたってガスケット材に均一な圧力を適用し、各々のマイクロウェルを密封して反応容器を作製した。
【0163】
フェムトリットル容器を作製して分離するために用いたシリコーン/ガラスの密封を、光脱色実験を行うことにより、その密封能力について検査した(図7を参照)。図7は、マイクロチャンバー中への溶液の封入、およびシリコーンの密封の完全性についての評価を示す。図7aは、アレイにわたる赤色蛍光により観察された、チャンバーのアレイ中に封入されたRu(bpy)C1の溶液を表す。図7bは、UV光を介して光脱色されたファイバー束の小八角形部分を表す。図7cは、60分後のアレイを表す。図において示すとおり、不完全なシリコーン密封の結果としての1つのウェルから別のウェルへのRu(bpy)C1の拡散は、光脱色されたウェルにおける蛍光強度の増大を示すと考えられるが、これは観察されなかった。実験は、密封が容器のアレイを首尾よく分離する能力についての完全性を立証した。ガラス表面上での酵素分子の変性を、BSAブロッキングバッファーを用いたブロッキングにより防止した。用いられた酵素対容器の比は、1:5から1:500までの範囲であり、2桁にわたる正確な検出を達成した。
【0164】
光脱色実験
DI水中、1mMのRu(bpy)C1の溶液を、光脱色実験のために用いた。およそ1cmのシリコーン片および顕微鏡スライドグラスを、糸くずの出ないスワブを用いて無水エタノールで洗浄した。シリコーンシート材をガラスの表面上に置き、接着させた。50μLのRu(bpy)C1溶液をシリコーン上に置き、その後ファイバー束と接触させ、個々の容器中に溶液を封入した。イメージングシステムの視野絞りを用いて、UV光を用いてアレイの小さな部分に10分間照射し、Ru(bpy)C1を光脱色した。次いで、視野絞りを開放し、蛍光の差異を示す画像を得た。次いで、アレイを、密封が維持された状態で静置した。最後の画像を60分後に取得し、密封の完全性を確認した。
【0165】
上記のように、使用される反応容器の数および容積が、この技術により決定することができる濃度のダイナミックレンジを支配する。この例において使用される反応容器の容積は、46fL(下記参照)である;したがって、3.6×10−11Mのβ−ガラクトシダーゼの溶液が、平均して、1容器あたり1個の酵素分子を生じると計算された。また上記のように、使用される濃度が3.6×10−11Mより遙かに低い場合、全ての実験ケースにおいて、予測される平均値は極めて低くなり、分布は狭くなり、1回の試行あたり0または1以外の事象を観察する確率は極めて低い。これらの低い濃度において、活性な反応容器のパーセンテージとバルク酵素濃度との間の関係は、ほぼ線形である。酵素触媒を起こすために充分な時間待った後で、各々の容器が酵素活性を有するかまたは欠いているかのいずれかに相関するオン/オフ応答について、個々の容器を調査した。
【0166】
基質であるレゾルフィン−D−β−ガラクトピラノシド(RDG)を、実験のための基質として用い、シリコーンガスケット材および機械アームを用いて、全ての容器中へ、トラップされた酵素分子と共に密封した。ポワソン分布統計を適用することにより、用いた各々の濃度について、活性ウェルの期待されるパーセンテージを計算した。
【0167】
結果
図8に示すように、β−ガラクトシダーゼアッセイについて、異なるバルク溶液酵素濃度は、容器容積に対する酵素の異なる比に対応し、酵素分子を含有する容器のパーセンテージの変化をもたらす。図8は、β−ガラクトシダーゼの単一分子の活性の検出を表す。図8aは、アレイの一部のバックグラウンド画像であり、一方、図8bは、酵素対容器が1:5であるアッセイの一部を取得した画像を表し、図8cは、酵素対容器が1:80であるアッセイを示す。
【0168】
表1は、占有された容器のパーセンテージをポワソン分布から計算した、各々の実験の結果の比較である。表中のデータにより示されるように、アレイの測定値は、調査された濃度の全範囲にわたり、単一の酵素β−ガラクトシダーゼ分子の数と首尾よく相関した。観察されたシグナルにおいて、分子間での触媒活性の差異の結果として、わずかな差異が存在した。この結果は、表面効果に加えて、酵素活性の変化をもたらす、酵素固有の確率論的な性質に起因するものである可能性が最も高い。
表1.酵素濃度のデジタル読み出し
【表1】

表1.アレイからのデジタル読み出し。活性を示すチャンバーの、ポワソン分布から計算される期待されるパーセンテージに対する実際のパーセンテージを、分析された多様な濃度について列記した。
【0169】
計算結果と実験結果との間の差異は、確率分布に関連する特有の差異、および酵素溶液の調製における実験誤差に起因し得る。
【0170】
例3
この例において、フェムトリットルサイズの反応容器を用いて非酵素標的タンパク質を検出するために、概念実証サンドイッチアッセイを行った(図9参照)。より具体的には、種々のアッセイを実施して、反応容器の表面上に配置された捕捉成分である抗IP−10抗体のアレイを用いて、溶液中のインターフェロン誘発性タンパク質10(IP−10)の種々の量を検出した。捕捉標的IP−10を次に、二次結合リガンド(ビオチン標識抗IP−10)およびストレプトアビジン複合β−ガラクトシダーゼ(SβG)により標識した。捕捉したSβG分子を有するウェルの数とサンプル中のIP−10の濃度の相関を試験した。
【0171】
材料
この例における反応容器アレイは、それぞれが4.5μmの光ファイバー24,000本からなる、研磨された1mmの光ファイバーアレイの遠位面の酸エッチングを用いて作製した。コアファイバー材料はシリカであり、各ファイバーの周囲のクラッドは、酸化ゲルマニウムでドーピングしたシリカであり、これはより低い速度で腐食する。4.5μmのファイバーを2.9μmの深さまでエッチングし、各々が46fLの容積の反応容器のアレイを生成した(図1a参照)。
【0172】
ファイバーは、最初にアミノプロピルシランで修飾した(図1b参照)。次にこれらのアミノ提示ファイバーを100mMのN,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)と反応させて、これらをスクシンイミドのエステルで活性化した。得られた基質を次に、0.1mg/mLの抗IP−10捕捉抗体と反応させて洗浄した。
【0173】
方法
アレイの修飾の後で、抗IP−10抗体をその上に載せたファイバーアレイを、様々な量のIP−10を含有する150μLのPBSバッファー中で室温で1時間インキュベートした。捕捉したIP−10アレイを次に、2μg/mLの二次結合リガンド、すなわちビオチン標識された検出抗IP−10抗体でインキュベートした。これらのアレイを次に300pMのSβGでインキュベートし、結合IP−10分子を酵素で標識した。次にアレイを、未結合の標的、抗体、およびSβGを確実に除去するため、各インキュベーション後にPBSバッファー中で繰り返し洗浄した。
【0174】
IP−10に結合したSβGのバイナリ読み出しのために、ファイバーアレイを、機械的プラットフォームを備えた正立顕微鏡システムに載せて固定した。β−ガラクトシダーゼ基質であるレゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RDG)の溶液を、反応容器を含有するファイバーの遠位端に導入し、その後密封した。顕微鏡のステージの下に位置する機械的プラットフォームにより、顕微鏡スライドグラスとファイバーアレイとの間でサンドイッチされた0.01インチ厚さのシリコーンエラストマーガスケットを用いて、基質を密封した。このプラットフォームが、束全体にわたりガスケット材料に対して均一な圧力を適用し、これにより各々の反応チャンバーを密封し、ウェル間での酵素活性の調査を可能にする。β−ガラクトシダーゼは、RDGを加水分解してレゾルフィンを形成し、これが各々の密封された反応容器中で局所的に高い濃度に蓄積し、検出可能な蛍光シグナルを生成する。
【0175】
各々の実験について5000個を超える反応容器の解析により、酵素分子を捕捉した反応容器のパーセンテージと、調査されたサンプル中に存在するIP−10の量との間の相関が可能となった。
【0176】
結果
図10は、サンプル中に存在するIP−10濃度と、得られた活性反応容器のパーセンテージをプロットしたものである。図10のプロットが示す活性反応容器のパーセンテージと標的の濃度の線形な関係は、バイナリ読み出し検出法が、サンドイッチ検出アプローチを用いた非酵素タンパク質標的の検出に使用可能であることを示唆する。
【0177】
以下の各参考文献は、その全体が全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれる。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、次のステップ:
(a)流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を、複数の反応容器にわたって分配して、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有し、反応容器の統計的に有意なフラクションが分析物を含有しないようにすること;
(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する反応容器の数を同定すること、および/または、分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;および
(c)前記分析物を含有する反応容器の数から、前記流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、次のステップ:
(a)反応容器の統計的に有意なフラクションに分析物が捕捉されるような条件下で、流体サンプルを複数の反応容器に暴露すること、ここで、各々の反応容器はマイクロウェルを含み、かつ各々の反応容器は、捕捉成分をその上に固定させた結合表面を規定する;
(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、捕捉分析物を含有する反応容器の数、および/または捕捉分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;および
(c)前記分析物を含有する、および/または含有しない反応容器の数から、前記試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項3】
試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、次のステップ:
(a)流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を複数の反応容器に分配して、実質的に全ての反応容器について、各々の反応容器が、分析物を含有しないか、または分析物の1個の分子を含有するかのどちらかであるようにすること;
(b)各々の反応容器中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する反応容器の数を提供すること;および
(c)前記分析物を含有する反応容器の数から、前記流体サンプル中の分析物の濃度を決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項4】
試験すべき流体サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、次のステップ:
(a)試験すべきサンプルを、複数の等容積の第2少量流体サンプルに分配して、第2少量流体サンプルの統計的に有意なフラクションが、分析物の1個の分子を含有するか、または分析物を含有しないようにすること;
(b)各々の第2サンプル中の分析物の存在または不在を決定して、分析物を含有する第2サンプルの数を同定すること;および
(c)前記分析物を含有する第2サンプルの数から、前記試験すべきサンプル中の分析物の濃度を決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項5】
流体サンプル中の分析物分子または粒子を検出する方法であって、
分析物分子または粒子を含有する、または含有することが疑われる流体サンプルを、複数の反応容器を含むアレイにわたって分配して、少なくともいくつかの反応容器が分析物分子または粒子を含有せず、少なくともいくつかの反応容器が少なくとも1個の分析物分子または粒子を含有するようにすること;
少なくとも1個の分析物分子または粒子を含む反応容器の各々の中に、標識を含む第1結合リガンドを固定すること;
酵素を前記アレイに適用し、標識により前記酵素を捕捉すること;
前記酵素を酵素基質に接触させること、ここで、該酵素基質は、前記酵素と接触すると、検出可能な産物を産生する;
検出可能な産物を検出すること;および
検出可能な産物の存在を検出することから、分析物分子または粒子を含有する反応容器の数を決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項6】
流体中の分析物分子または粒子を検出する方法であって、
分析物分子または粒子を含有する、または含有することが疑われる流体を、複数の反応容器を含むアレイにわたって分配して、少なくともいくつかの反応容器が分析物分子または粒子を含有せず、少なくともいくつかの反応容器が少なくとも1個の分析物分子または粒子を含有するようにすること;
反応容器を酵素基質に暴露すること、ここで該酵素基質は、少なくとも1個の分析物分子または粒子を含有する反応容器内で、検出可能な産物を産生する;
検出可能な産物を検出すること;および
検出可能な産物の存在を検出することから、少なくとも1個の分析物分子または粒子を含有する反応容器の数を決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項7】
流体中の分析物分子または粒子を検出する方法であって、
各々の分析物分子または粒子について、酵素分子を固定すること;
酵素分子を、複数の反応容器を含むアレイにわたって分配して、少なくともいくつかの反応容器が酵素分子を含有せず、少なくともいくつかの反応容器が少なくとも1個の酵素分子を含有するようにすること;
反応容器を酵素基質に暴露すること、ここで該酵素基質は、少なくとも1個の酵素分子を含有する反応容器内で、検出可能な産物を産生する;および
検出可能な産物の存在を検出することから、少なくとも1個の酵素分子を含有する反応容器の数を決定すること;
を含む、前記方法。
【請求項8】
分析物分子が複数の反応容器にわたって分配された後に、分析物分子が複数の二次結合リガンドに暴露され、ここで、少なくとも1つの二次結合リガンドは、各々の分析物分子と会合することになる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
各々の反応容器内の分析物の存在または不在が、各々の反応容器内の二次結合リガンドの存在または不在を決定することにより決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分析物を含有するか、または含有していない反応容器の数が、二次結合リガンドを含有するか、または含有していない反応容器の数を決定することにより決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの洗浄ステップを実施する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
反応容器が、少なくともステップ(b)の間密封されている、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
各々の反応容器が複数の反応成分に暴露され、ここで、発色産物、蛍光発生産物、化学発光産物の少なくとも1つが、複数の反応成分を二次結合リガンドに暴露すると産生される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
各々の反応容器中の分析物の存在または不在が、各々の反応容器中の発色産物、蛍光発生産物、化学発光産物の少なくとも1つの存在または不在を決定することにより決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
流体サンプル中の分析物の濃度が、発色産物、蛍光発生産物、化学発光産物の少なくとも1つを含有するかまたは含有しない反応容器の数を決定することにより決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
流体サンプル中の分析物分子の少なくとも一部を、複数の反応容器にわたって分配することが、流体サンプルを、複数のウェルを含むアレイの該複数のウェルにわたって分配することを含む、請求項1または3に記載の方法。
【請求項19】
第1種類の少なくとも1つの分析物および第2種類の少なくとも1つの分析物を、複数の反応容器にわたって分配する、請求項1または3に記載の方法。
【請求項20】
反応容器が、反応容器毎に少なくとも1つの捕捉成分を含み、ここで該捕捉成分は、少なくとも1個の分析物分子を固定することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1分析物または第2分析物が、第1捕捉成分に関して固定されることができる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
反応容器が、反応容器毎に少なくとも1つの第1種類の捕捉成分と、反応容器毎に少なくとも1つの第2種類の捕捉成分とを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの第1種類の分析物が、少なくとも1つの第1種類の捕捉成分と会合し、少なくとも1つの第2種類の分析物が、少なくとも1つの第2種類の捕捉成分と会合する、請求項23に記載の方法。
【請求項24】
複数の反応容器が、複数の第1種類の二次結合リガンドおよび複数の第2種類の二次結合リガンドに暴露され、ここで、少なくとも1つの第1種類の二次結合リガンドが、少なくとも1つの第1種類の分析物と複合体を形成し、および少なくとも1つの第2種類の二次結合リガンドが、少なくとも1つの第2種類の分析物と複合体を形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
各々の反応容器中の、少なくとも1つの第1種類の分析物および/または少なくとも1つの第2種類の分析物の存在または不在が、各々の反応容器中の第1種類の二次結合リガンドおよび/または第2種類の二次結合リガンドの存在または不在を決定することにより決定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
流体サンプル中の第1種類の分析物の濃度と、流体サンプル中の第2種類の分析物の濃度の両方を決定する、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
複数の反応容器が再利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
複数の反応容器を再利用することが、追加のステップ:
第1流体サンプルからの分析物を含む反応容器のログを決定すること;
第2流体サンプル中の第2分析物を、反応容器にわたって分配すること;
各々の反応容器中の第1分析物または第2分析物の存在または不在を決定して、第1または第2分析物を含有する反応容器の数を同定すること、および/または、第1または第2分析物を含有しない反応容器の数を同定すること;
第2分析物を含有する反応容器の数を、第1または第2分析物を含有する反応容器の数から、第1分析物を含有する反応容器のログを数学的に差し引くことにより、決定すること;
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
流体サンプル中の分析物の濃度を、請求項1または3に記載の方法を用いて決定する方法であって、流体サンプル中の分析物分子の一部を、複数の第1反応容器および複数の第2反応容器にわたって分配し、ここで複数の第2反応容器の容積が、複数の第1反応容器の容積と異なっている、前記方法。
【請求項30】
第1反応容器の容積が、第2反応容器の容積より約10倍大きい、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第1反応容器の容積が、第2反応容器の容積より約100倍大きい、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも95%の反応容器が、分析物を含有しない、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
少なくとも90%の反応容器が、分析物を含有しない、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
少なくとも80%の反応容器が、分析物を含有しない、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
少なくとも40%の反応容器が、分析物を含有しない、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
少なくとも5%の反応容器が、分析物を含有しない、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
反応容器の総数の約20%未満が、約1分子の分析物を含有する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
ステップ(c)において、流体サンプル中の分析物の濃度を、分析物を含有する反応容器数のポアソン分布解析により決定する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
ステップ(c)において、流体サンプル中の分析物の濃度を、分析物を含有する反応容器数のガウス分布解析により決定する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
分析物を、マイクロウェルにより規定される結合表面上に固定された捕捉成分により、反応容器中に捕捉する、請求項1または3に記載の方法。
【請求項41】
分析物を、マイクロウェル内に配置された粒子上に固定された捕捉成分により、反応容器中に捕捉する、請求項1または3に記載の方法。
【請求項42】
分析物を、マイクロウェルを密封する密封要素上に固定された捕捉成分により、反応容器中に捕捉する、請求項1または3に記載の方法。
【請求項43】
反応容器の総数の約20%未満が、約1分子の分析物を含有する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
反応容器の総数の約10%未満が、約1分子の分析物を含有する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
反応容器の総数の約5%未満が、約1分子の分析物を含有する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
反応容器の総数の約5%未満が、約1分子の分析物を含有する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
複数の第2少量流体サンプルを基質に暴露し、ここで、複数の発色産物、蛍光発生産物、化学発光産物が、基質を第2少量流体サンプルに暴露すると産生される、請求項4に記載の方法。
【請求項48】
第2サンプル中の分析物の存在または不在が、各々の第2少量流体サンプル中の複数の発色産物、蛍光発生産物、化学発光産物の存在を決定することにより決定される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
流体サンプル中の分析物の濃度が、複数の発色産物、蛍光発生産物、化学発光産物を含有する、第2の少量流体の数を決定することにより決定される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
第2サンプルの総数の60%が、分析物を含有しないか、または分析物の1個の分子を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項51】
第2流体サンプルの総数の80%が、分析物を含有しないか、または分析物の1個の分子を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項52】
第2流体サンプルの総数の90%が、分析物を含有しないか、または分析物の1個の分子を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項53】
試験すべきサンプルを、少なくとも1,000個の反応容器に分配する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
試験すべきサンプルを、約10,000〜約200,000個の反応容器に分配する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
試験すべきサンプルを、約50,000〜約100,000個の反応容器に分配する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ステップ(a)において、試験すべきサンプルを、少なくとも1,000個の第2少量サンプルに分配する、請求項4に記載の方法。
【請求項58】
ステップ(a)において、試験すべきサンプルを、約10,000〜約200,000個の第2少量サンプルに分配する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ステップ(a)において、試験すべきサンプルを、約50,000〜約100,000個の第2少量サンプルに分配する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
分析物が生体分子である、請求項1〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
生体分子が、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、ホルモン、サイトカイン、抗体、および細胞抗原からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
反応容器が、約10アトリットル〜約50ピコリットルの容積を有する、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
第2少量サンプルが、約10アトリットル〜約50ピコリットルの容積を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項64】
反応容器の少なくとも1部が、光ファイバー束の遠位端に形成された複数のマイクロウェルを含む、請求項1〜63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
分析物が、環境汚染物質、農薬、殺虫剤、薬物、および毒素からなる群から選択される、請求項1〜3または5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
分析物が酵素である、請求項1〜65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
捕捉成分が、抗体またはDNAプローブである、請求項2または9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
各分析物分子または粒子が、酵素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項69】
酵素が、分析物分子または粒子に結合リガンドを介して結合する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
各分析物分子または粒子に対して、第1結合リガンドを固定することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項71】
結合リガンドを、少なくとも1つの分析物分子または粒子を含有する各々の反応容器内に固定する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
第1結合リガンドが、酵素成分を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
第1結合リガンドが、標識を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
酵素をアレイに適用し、標識により該酵素を捕捉するステップをさらに含む、請求項73に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−538260(P2010−538260A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522877(P2010−522877)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/019184
【国際公開番号】WO2009/029073
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(399127843)トラスティーズ・オブ・タフツ・カレッジ (12)
【氏名又は名称原語表記】TRUSTEES OF TUFTS COLLEGE
【Fターム(参考)】