説明

溶液供給装置

【課題】標準溶液の混入量が精密に調節された試料溶液を供給する溶液供給装置を実現し、
【解決手段】溶液供給装置は、第1の流路(101)と第2の流路(102)とそれら2つの流路の途中をそれらの流路抵抗よりも大きな流路抵抗で連通させる第3の流路(103)とを有する混合手段(100)と、第1の流路の一端側に連通し試料溶液を貯蔵する第1の貯蔵手段(10)と、第1の流路の他端側に連通し試料溶液を吸引する吸引手段(20)と、第2の流路の一端側に開閉弁(31)を介して連通し標準溶液を貯蔵する第2の貯蔵手段(30)と、第2の流路の他端側に連通し開閉弁の開状態および閉状態においてそれぞれ標準溶液を吸引および吐出するシリンジポンプ(40)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液供給装置に関し、特に、質量分析装置や分光分析装置等に試料溶液と標準溶液の混合液を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析装置や分光分析装置等では、試料溶液に標準溶液を混入して分析を行う場合がある。標準溶液の混入をオンラインで行う場合は、ペリスタルティックポンプが用いられる。標準溶液が混入された試料溶液はネブライザー等を通じて分析装置に注入される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第5646727号明細書(第11−12欄、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
試料溶液への標準溶液の混入量は精密に調節されなければならないが、ペリスタルティックポンプは、ローラーでチューブをしごいて液体を圧送する方式なので、標準溶液の混入量を精密に調節することは困難である。
【0004】
そこで、本発明の課題は、標準溶液の混入量が精密に調節された試料溶液を供給する溶液供給装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明は、第1の流路と第2の流路とそれら2つの流路の途中をそれらの流路抵抗よりも大きな流路抵抗で連通させる第3の流路とを有する混合手段と、前記混合手段の第1の流路の一端側に連通し試料溶液を貯蔵する第1の貯蔵手段と、前記混合手段の第1の流路の他端側に連通し試料溶液を吸引する吸引手段と、前記混合手段の第2の流路の一端側に開閉弁を介して連通し標準溶液を貯蔵する第2の貯蔵手段と、前記混合手段の第2の流路の他端側に連通し前記開閉弁の開状態および閉状態においてそれぞれ標準溶液を吸引および吐出するシリンジポンプと、を具備することを特徴とする溶液供給装置である。
【0006】
上記溶液供給装置は、試料溶液の流量を検出する検出手段と、前記検出手段の検出信号に基づいて前記シリンジポンプを制御する制御手段とを具備することが、標準溶液の混入量を試料溶液の流量に比例させる点で好ましい。
【0007】
上記溶液供給装置は、前記検出手段の検出信号をモニターするモニター手段を具備することが、試料溶液の吸引状態の把握が容易な点で好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶液供給装置は、第1の流路と第2の流路とそれら2つの流路の途中をそれらの流路抵抗よりも大きな流路抵抗で連通させる第3の流路とを有する混合手段と、前記混合手段の第1の流路の一端側に連通し試料溶液を貯蔵する第1の貯蔵手段と、前記混合手段の第1の流路の他端側に連通し試料溶液を吸引する吸引手段と、前記混合手段の第2の流路の一端側に開閉弁を介して連通し標準溶液を貯蔵する第2の貯蔵手段と、前記混合手段の第2の流路の他端側に連通し前記開閉弁の開状態および閉状態においてそれぞれ標準溶液を吸引および吐出するシリンジポンプとを具備するので、標準溶液の混入量が精密に調節された試料溶液を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、発明を実施するための最良の形態に限定されるものではない。図1に溶液供給装置の構成を模式的に示す。本装置は発明を実施するための最良の形態の一例である。本装置の構成によって、溶液供給装置に関する発明を実施するための最良の形態の一例が示される。
【0010】
図1に示すように、本装置は、混合モジュール100を有する。混合モジュール100は4つのポートを持つ。それらポートは内部の流路によって連通している。4つのポートには、チューブ1,2,3,4の一端がそれぞれ接続されている。なお、チューブ3は開閉弁31を介して接続される。
【0011】
チューブ1の他端は試料溶液貯蔵部10に接続されている。これによって、チューブ1は試料溶液流入用のチューブとなる。チューブ2の他端はネブライザー20に接続されている。これによって、チューブ2は試料溶液流出用のチューブとなる。なお、チューブ2内の試料溶液には、後述のようにして内部標準溶液が混入される。
【0012】
ネブライザー20は、試料溶液を分析装置200に注入する。分析装置200は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)等である。
【0013】
チューブ3の他端は内部標準溶液貯蔵部30に接続されている。これによって、チューブ3は内部標準溶液流入用のチューブとなる。チューブ4の他端はシリンジポンプ40に接続されている。これによって、チューブ4は内部標準溶液流出入用のチューブとなる。
【0014】
シリンジポンプ40は、コントロールモジュール400内に設けられている。コントロールモジュール400は後述のコントローラを内蔵する。コントロールモジュール400には、チューブ1に沿って設けられた2つの流量センサー11,12の検出信号が入力される。コントロールモジュール400は、出力信号によってシリンジポンプ40を制御する。コントロールモジュール400は、また、開閉弁31を制御するとともに、試料溶液貯蔵部10に備わる図示しないオートサンプラーを制御する。
【0015】
図2に、混合モジュール100の詳細な構成を断面図によって示す。図2に示すように、混合モジュール100は、4つのポートA,B,C,Dを有する。これらのポートA,B,C,Dに、チューブ1,2,3,4がそれぞれ接続される。
【0016】
混合モジュール100は、その内部に、流路101,102,103を有する。流路101は直線的な流路であり、ポートAとポートBを連通させる。これによって、流路101は試料溶液用の流路となる。流路102は直角に曲がった流路であり、ポートCとポートDを連通させる。これによって、流路102は内部標準溶液用の流路となる。流路103は直線的な流路であり、流路101と流路102を連通させる。これによって、流路103は試料溶液用流路と内部標準溶液用流路をつなぐ流路となる。
【0017】
各流路の寸法は、例えば、流路101が、内径0.5mm、全長20mmであり、流路102が、内径0.75mm、全長15mmであり、流路103が、内径0.1mm、全長10mmである。なお、流路102は、全長15mmのうち、ポートC側に直角に曲がっている部分が5mm、残りが10mmである。
【0018】
このような流路構成により、溶液の流通に対する流路抵抗は、流路103が流路101および流路102よりもはるかに大きくなる。すなわち、試料溶液用流路と内部標準溶液用流路は、流路抵抗の大きい流路で結ばれる。
【0019】
図3に、本装置における溶液流路の系統図を示す。図3に示すように、試料溶液貯蔵部10、チューブ1、流路101およびチューブ2が試料溶液の流路系統を構成する。内部標準溶液貯蔵部30、チューブ3、開閉弁31、流路102、チューブ4およびシリンジポンプ40が内部標準溶液の流路系統を構成する。さらに、混合モジュール100内の流路103が両者の連絡流路を構成する。
【0020】
試料溶液貯蔵部10の試料溶液は、ネブライザー20が発生する負圧の吸引作用により試料溶液の流路系統をネブライザー20に向かって移送される。なお、試料溶液の移送はネブライザー20による吸引に限らず、例えば、ペリスタルティックポンプ等、他の手段によって移送するようにしてもよい。
【0021】
そのようにして移送される試料溶液に、シリンジポンプ40により、混合モジュール100内の流路103を通じて内部標準溶液が混入される。内部標準溶液の混入にシリンジポンプを用いるので、従来のようにペリスタルティックポンプを用いる方式よりも、内部標準溶液の少量の混入量をはるかに精密に調節することができる。なお、このとき、開閉弁31は閉じており、内部標準溶液が内部標準溶液貯蔵部30に戻らないようになっている。
【0022】
一方、シリンジポンプ40への内部標準溶液の充填は、開閉弁31を開き、シリンジポンプ40で内部標準溶液貯蔵部30から内部標準溶液を吸引することによって行われる。このような吸引を行っても、混合モジュール100内の流路103の流路抵抗が大きいことにより、試料溶液が一緒に吸引されることはない。したがって、内部標準溶液が試料溶液で汚染されることはない。このため、内部標準溶液の汚染を防止するための切替弁等を省略することができる。
【0023】
混合モジュール100は、本発明における混合手段の一例である。試料溶液貯蔵部10は、本発明における第1の貯蔵手段の一例である。ネブライザー20は、本発明における吸引手段の一例である。内部標準溶液貯蔵部30は、本発明における第2の貯蔵手段の一例である。開閉弁31は、本発明における開閉弁の一例である。シリンジポンプ40は、本発明におけるシリンジポンプの一例である。
【0024】
シリンジポンプ40による内部標準溶液の混入は、コントローラ401による制御の下で行われる。コントローラ401は、流量センサー11,12の検出信号に基づいてシリンジポンプ40を制御する。これにより、試料溶液の流量が変化しても、それに追随して常に適正量の内部標準溶液を混入することができる。
【0025】
コントローラ401は、また、開閉弁31の開閉制御を行う。流量センサー11,12の検出信号はモニター402によってモニターされ、試料溶液の吸引状態が容易に把握できるようになっている。コントローラ401およびモニター402はコントロールモジュール400に含まれる。
【0026】
流量センサー11,12は、本発明における検出手段の一例である。コントローラ401は、本発明における制御手段の一例である。モニター402は、本発明におけるモニター手段の一例である。
【0027】
流量センサー11,12としては、レーザーを利用するレーザーセンサー、超音波を利用する超音波センサー、静電容量を検出する静電容量センサー、マスフローメーター等の流量を測定する装置が用いられる。
【0028】
以上、内部標準溶液を添加する装置を例に挙げて本発明を説明したが、本発明は、単なる標準溶液を添加することで標準添加法の検量線をオンライン生成するのにも効果的に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の一例の溶液供給装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】混合モジュールの内部構成を示す図である。
【図3】溶液流路の系統を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1,2,3,4 : チューブ
10 : 試料溶液貯蔵部
11,12 : 流量センサー
20 : ネブライザー
30 : 内部標準溶液貯蔵部
31 : 開閉弁
40 : シリンジポンプ
100 : 混合モジュール
101,102 ,103 : 流路
200 : 分析装置
400 : コントロールモジュール
401 : コントローラ
402 : モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流路と第2の流路とそれら2つの流路の途中をそれらの流路抵抗よりも大きな流路抵抗で連通させる第3の流路とを有する混合手段と、
前記混合手段の第1の流路の一端側に連通し試料溶液を貯蔵する第1の貯蔵手段と、
前記混合手段の第1の流路の他端側に連通し試料溶液を吸引する吸引手段と、
前記混合手段の第2の流路の一端側に開閉弁を介して連通し標準溶液を貯蔵する第2の貯蔵手段と、
前記混合手段の第2の流路の他端側に連通し前記開閉弁の開状態および閉状態においてそれぞれ標準溶液を吸引および吐出するシリンジポンプと、
を具備することを特徴とする溶液供給装置。
【請求項2】
試料溶液の流量を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号に基づいて前記シリンジポンプを制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の溶液供給装置。
【請求項3】
前記検出手段の検出信号をモニターするモニター手段、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の溶液供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−57420(P2007−57420A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244110(P2005−244110)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(505322131)株式会社 イアス (10)
【出願人】(592204347)ホーユーテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】