説明

溶液製膜方法及び設備

【課題】容器開閉作業を不要として、効率良く濾材を洗浄する。
【解決手段】複数の濾過器51,52を選択的に用いてドープ40を連続的に濾過する。一方の濾過器51でドープ40を濾過している時に、他方の濾過器52に対し、第1及び第2洗浄を行う。第1洗浄では、溶剤洗浄部53により溶剤を用いて濾過器52内の金属フィルタを洗浄する。第2洗浄では、超臨界炭酸ガス洗浄部54を用いて、第1洗浄後の金属フィルタに対し、超臨界炭酸ガスを循環させて、金属フィルタを洗浄する。洗浄によりポリマーが含まれる超臨界炭酸ガスは、分岐弁71により、超臨界炭酸ガス分離系64に送られる。超臨界炭酸ガス分離系64では、超臨界炭酸ガスを減圧部72及び分離器73により減圧し、炭酸ガスとポリマー粉末に分離する。第2濾過器52を開けることなく、濾過器52の洗浄が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の濾過器を用いて、ポリマーと溶剤とが含まれるドープを濾過し、この濾過済みドープを、エンドレスで走行する支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有した後に前記支持体から剥ぎ取り、乾燥させてフィルムとする溶液製膜方法及び設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の各種表示装置には、偏光板の保護フィルムや視野角拡大フィルムをはじめとする様々なポリマーフィルムが使用されている。このような光学用途のポリマーフィルムの製法としては、溶融製膜方法、溶液製膜方法などがある。溶液製膜方法では、ポリマーと溶媒と含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を、走行する支持体上に流延して流延膜を形成した後、流延膜を支持体から剥ぎ取り、乾燥してフィルムとする方法であり、溶融製膜方法のような熱ダメージの問題がない。したがって、透明度の高さや光学特性が求められるポリマーフィルムの製造方法としては最適である。
【0003】
ところで、ドープの中には、ドープの溶媒に不溶な異物であって、元々ドープの原料に含まれていたものや、ドープを調製する際に混入したゴミや埃等の不純物が含まれている。ただし、不純物を含むドープを使用すると、支持体上に不純物が汚れとして析出し、支持体から流延膜を剥ぎ取ることが困難となる他、完成したフィルムでは不純物のところで光の散乱を生じる等の問題を引き起こす。このため、流延に供する前に、ドープ中の不純物をできる限り取り除く必要がある。
【0004】
そこで、通常、溶液製膜方法では、ドープ中の不純物を取り除くことを目的として、流延する前のドープを濾過器で濾過している。濾材としては、濾紙や金属フィルタ、濾布等が使用される。例えば、濾紙の1段濾過と金属繊維による2段濾過又は3段濾過からなる濾過装置が用いられる。これらの濾材は濾過開始から時間が経つほど通液孔が閉塞し、濾過時間が長引いたり、濾圧の上昇や濾過流量が減少し濾過効率が低下したりするという問題を抱える。
【0005】
このため、特許文献1のように、洗浄液で洗浄した後に、金属フィルタを濾過器から取り出して焙焼することにより、金属フィルタを再生して使用することが行われている。また、特許文献2のように、オフラインで金属フィルタ中の異物を高温で炭化させる焙焼した後に、アルカリ洗浄や超音波洗浄を行い、付着物を除去している。また、アルカリ洗浄では金属の耐腐蝕製が低下するため、不動態化などの耐腐蝕性付与処理を行っている。
【特許文献1】特開2006−281200号公報
【特許文献2】特開2004−358730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
濾材の交換には、容器開閉作業が必要になる。また、洗浄処理だけでは、金属繊維の隙間である微小空間に入った異物は通常の物理的な洗浄方法では除去することができないため、上記のような焙焼処理、アルカリ洗浄、超音波洗浄などを行っている。しかも、生産速度の向上を目指す場合には、生産能力増大に伴い、濾材の交換を頻繁に行う必要がある。このため、効率のよい濾材の洗浄処理や再生処理の開発の要請がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、容器開閉作業を不要として効率のよい濾材洗浄を可能とし、生産性の向上が図れる溶液製膜設備及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、複数の濾過器を用いて、ポリマーと溶剤とが含まれるドープを濾過し、この濾過済みドープを、エンドレスで走行する支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有した後に前記支持体から剥ぎ取り、乾燥させてフィルムとする溶液製膜方法において、前記濾過器の内、濾過能力が低下した濾過器への前記ドープ供給を停止して、前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤を送って循環させ前記濾過器を洗浄する第1洗浄工程と、前記第1洗浄工程を終了した前記濾過器に超臨界流体を送って循環させ前記濾過機を洗浄する第2洗浄工程と、前記第2洗浄工程後の前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤の飽和ガスを充填する飽和ガス充填工程とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数の濾過器を用いて、ポリマーと溶剤とが含まれるドープを濾過し、この濾過済みドープを、エンドレスで走行する支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有した後に前記支持体から剥ぎ取り、乾燥させてフィルムとする溶液製膜設備において、前記濾過器の内、濾過能力が低下した濾過器への前記ドープ供給を停止して、前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤を送って循環させ前記濾過器を洗浄する第1洗浄部と、前記第1洗浄部による洗浄を終了した後に、前記濾過器に超臨界流体を送って循環させ前記濾過機を洗浄する第2洗浄部と、前記第2洗浄工程後の前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤の飽和ガスを充填する飽和ガス充填部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記第1洗浄工程前に、洗浄対象の前記濾過器に対し、不活性ガス又は前記溶剤と同種の溶剤の飽和ガスを用いて、前記ドープをガスに置換するガス置換工程を有することを特徴とする。そして、前記超臨界流体は超臨界炭酸ガスであり、前記ポリマーはセルロースアセテートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、濾過器から濾材を取り出すことなく効率良く濾材を洗浄することができ、作業負荷や再生コストを低く抑えることができる。超臨界流体は、気体と液体とが共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超えた状態にある。このため、通常の気体、液体とは異なる性質を有し、気体の性質からくる拡散性と、液体の性質からくる溶解性とを持つため、溶剤による洗浄のみでは除去することができない濾滓を効率よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、溶液製膜設備10は、例えばセルローストリアセテートを原料として用いた原料ドープ調製ユニット11と、製膜ユニット12とを備える。
【0013】
原料ドープ調製ユニット11は、計量器13、溶媒タンク14、添加剤タンク15、溶解タンク16、貯留タンク17、流延ドープ貯留タンク50及び第1及び第2濾過ユニット41,42を備える。計量器13にはポリマー20が入れられており、このポリマー20は計量されて溶解タンク16に投入される。溶媒タンク14には溶媒21が貯留されており、開閉弁23を制御することにより溶解タンク16への投入量が調整される。また、添加剤タンク15には添加剤22が貯留されており、開閉弁24を制御することにより溶解タンク16への投入量が調整される。
【0014】
溶解タンク16は、モータ26によって回転する攪拌翼27を備えている。攪拌翼27が回転することにより、溶解タンク16内のポリマー20、溶媒21、添加剤22が攪拌される。この攪拌により、ポリマー20などの溶質が溶媒21に完全には溶けていない粗溶解液30が得られる。
【0015】
溶解タンク16内の粗溶解液30は、貯留タンク17に一旦貯蔵される。これにより溶解タンク16は空になり、粗溶解液30を繰り返し形成する連続バッチ式が可能になる。貯留タンク17も、モータ31で回転する攪拌翼32を備えている。攪拌翼32を回転することにより、粗溶解液30が攪拌され均一にされる。
【0016】
貯留タンク17内の粗溶解液30はポンプ33及び配管34を介して、加熱器35に送られる。加熱器35は、多管式熱交換器や静止型混合器などのインラインミキサが用いられる。この加熱器35により粗溶解液30が加熱される。加熱温度は50〜120℃が好ましく、加熱時間は5〜30分が好ましい。この加熱により、溶液製膜に必要なポリマー20などの溶質は変性することなく完全に溶解し、原料ドープ40が調製される。このようにして調製される原料ドープ40は、セルロースエステルの固形分濃度として14〜24重量%にされる。なお、必要に応じてフラッシュ濃縮法等により、原料ドープ40を濃縮してもよい。
【0017】
加熱器35により加熱された原料ドープ40は、冷却器39に送られる。冷却器39によって原料ドープ40を構成する主要溶媒の沸点以下にまで冷却される。冷却された原料ドープ40はポンプ38により第1濾過ユニット41に送られて、第1濾過ユニット41で濾過された後に、流延ドープ貯留タンク50に貯留される。
【0018】
第1濾過ユニット41は、複数の濾過器が並列に接続されており、これら複数の濾過器を選択的に使用することにより、連続濾過を可能にしている。例えば、一方の濾過器で原料ドープ40を濾過しているときに、他方の濾過器では、洗浄処理や再利用処理が行われる。この第1濾過ユニット41の濾材は限定されない。例えば、濾紙、金属フィルタなどの濾過方式の他に、原料ドープに珪藻土などの濾過助剤を混在させて濾過を行う方式であってもよい。
【0019】
この第1濾過ユニット41は、複数の濾過器を選択して洗浄処理するための洗浄処理装置やケーク濾過方式ではプレコート形成処理装置が付設されており、一方の濾過器を使用中に、他方の濾過器で洗浄処理や再生処理が行われる。なお、ケーク濾過方式とする場合には、濾過助材の種類、組成、平均粒径、嵩密度や濾過助剤による濾過方法に関しては、特開2004−107629号公報に詳しく記載されており、この記載も本発明に適用することができる。
【0020】
第1濾過ユニット41により濾過された原料ドープは、流延ドープ貯留タンクに貯留された後に、ポンプ43により第2濾過ユニット42に送られて、濾過される。濾過後の原料ドープは、製膜ユニット12の流延ダイに送られる。
【0021】
図2に示すように、第2濾過ユニット42には、オンラインで洗浄処理が可能なように、金属フィルタ方式の第1及び第2濾過器51,52が用いられる。濾過器51,52が複数設けられることにより、一方の濾過器51で濾過しながら、他方の濾過器52で濾材の洗浄が行われる。
【0022】
第1,2濾過器51,52の金属フィルタは、微細な不純物でさえも取り除くことができるように、その平均孔径が100μm以下であることが好ましい。平均孔径が小さすぎると濾過に要する時間が長くなるので濾過効率が低下する。また、反対に、平均孔径が大きすぎると流延ドープ中の微細な不純物を捕捉するのが難しくなる。
【0023】
第1,第2濾過器51,52には、溶剤洗浄部53と、超臨界炭酸ガスによる超臨界炭酸ガス洗浄部54と、飽和ガス置換部55とが接続されている。これら溶剤洗浄部53、超臨界炭酸ガス洗浄部54及び飽和ガス置換部55は、図示を省略した弁により、各濾過器51,52に選択的に接続され、溶剤洗浄、超臨界流体洗浄、飽和ガス置換を行う。なお、図2は、第2濾過器52に、各部が接続されていることを示している。第1濾過器51にも、同様に弁の切り替えにより接続されるが、図2では、省略する。
【0024】
第2濾過器52の濾過能力が低下したときに、第2濾過器52へのドープの供給を停止して、第1濾過器51にドープの供給を切り替える。ここで、濾過能力が低下したというのは、具体的には、濾過器51,52が使用により濾過圧力が高くなり、濾過効率が低下した時のことをいう。この切り替えは、濾過器51,52の出口に設けられる図示しない圧力計が所定値に達したときに行う。また、圧力計を用いる代わりに、または、加えて、濾過時間が所定に達したときに、濾過器51,52を切り替えてもよい。
【0025】
溶剤洗浄部53は、第1濾過器51で濾過が行われているときに、他方の第2濾過器52に対して洗浄処理を行う(第1洗浄工程)。この洗浄処理では、洗浄対象濾過器に対して、原料ドープの出口側から入口側に向けて洗浄液が送られる。そして、この洗浄液が濾過器と洗浄処理部との間で循環される。この洗浄液による循環により、第2濾過器52において、濾材としての金属フィルタで捕捉された異物が溶剤洗浄部側の濾過器(図示せず)により捕捉される。また、この洗浄液は、ドープに含まれる溶剤と同じ溶剤が用いられるが、異物によっては、同種や他の種別の溶剤の方が効率良く行える場合には、これら同種の溶剤や他の溶剤を用いた洗浄液を用いてもよい。
【0026】
溶剤洗浄方法は、本実施形態のように、一定量の洗浄液を循環させて、溶剤洗浄部側の濾過器で異物を取って洗浄する方式の他に、新鮮な洗浄液を洗浄対象濾過器に送り、濾過器を洗浄してもよい。なお、洗浄回数は1回以上であればよい。この溶剤洗浄工程を省略し、超臨界炭酸ガスのみで金属フィルタを洗浄すると、超臨界炭酸ガス洗浄部54の濾過器65(図2参照)の負荷が高く、交換頻度の増大につながる。
【0027】
飽和ガス置換部55は、溶剤洗浄処理前に、洗浄対象濾過器に対し、飽和ガスを送り、濾過器内の原料ドープを、飽和ガスと置換する(ガス置換工程)。ここで、飽和ガスとは、原料ドープの溶媒と同種の溶媒で飽和された気体のことをいう。また、飽和ガス置換部55により、後に説明する超臨界炭酸ガスを用いた洗浄処理(第2洗浄工程)が行われた後に、超臨界炭酸ガスを洗浄対象濾過器から抜き出した後に、飽和ガスが洗浄対象濾過器に充填される(飽和ガス充填工程)。これにより、待機状態の濾過器内の濾材が乾燥することを防ぐことができる。また、濾過器の切り替え時に、原料ドープが濾過器内に入れられたときに、ポリマー溶液が乾燥し、析出したポリマーによる濾材の閉塞の発生が抑えられる。なお、飽和ガスに代えて、不活性ガスを用いて、原料ドープを濾過器から排出させてもよい。
【0028】
超臨界炭酸ガス洗浄部54は、圧縮機61、バッファタンク62、超臨界炭酸ガス循環系63、及び超臨界炭酸ガス分離系64を備えている。圧縮機61は、炭酸ガスを所定の温度範囲内で圧縮し、超臨界炭酸ガスを生成する。生成された超臨界炭酸ガスはバッファタンク62に貯留される。
【0029】
バッファタンク62の超臨界炭酸ガスは、超臨界炭酸ガス循環系63を介して、洗浄対象である、例えば、第2濾過器52に送られる(第2洗浄工程)。超臨界炭酸ガス循環系63は、ポンプ66と、超臨界炭酸ガスを濾過するための第1及び第2超臨界炭酸ガス濾過器67,65と、これらを接続する配管とから構成されている。ポンプ66で送り出された超臨界炭酸ガスは、先ず、第1超臨界炭酸ガス濾過器67で超臨界炭酸ガス内の異物が除去されて、洗浄対象の第2濾過器52に送られる。超臨界炭酸ガスも、溶剤洗浄部53と同様に、濾過器出口側から入口側に送られる。洗浄対象の第2濾過器52の金属フィルタ内部を通過した超臨界炭酸ガスは、溶剤洗浄では洗浄が不可能な微細通路内に入り込んだ濾過異物を溶解し、又は、溶解により異物のサイズを小さくし、微細通路から排出する。排出された異物は、第2超臨界炭酸ガス濾過器65で異物が除去された後に、バッファタンク62に戻される。
【0030】
超臨界炭酸ガスにより使用済みの金属フィルタが洗浄されると、超臨界炭酸ガスに原料ドープそのままが溶け込んでしまい、超臨界炭酸ガスによる洗浄効果が低下する。これを回避するために、第2超臨界炭酸ガス濾過器65とバッファタンク62との間に、分岐部70を設けて、分岐弁71の開放により、超臨界炭酸ガスの一部を減圧部72に送る。なお、減圧部72へ超臨界炭酸ガスの一部を送るタイミングは、例えば、超臨界炭酸ガスによる洗浄時間を計測し、ある一定時間に達したときとする。これにより、超臨界炭酸ガスが一定量を間欠的に減圧部に送られる。また、間欠的な送り方法に代えて、流量を絞り、常時分岐部へ超臨界炭酸ガスを送ってもよいし、超臨界炭酸ガスによるフィルタ洗浄毎に、新たな超臨界炭酸ガスを入れ換えて使用してもよい。
【0031】
減圧部72で超臨界炭酸ガスが減圧されると、溶媒に溶けた状態のポリマーがドープとして分離され、これがドレインとなって減圧器72から分離される。また、ポリマーが析出して粉末となるとともに、炭酸ガスに分離される。これら炭酸ガス及び析出物はサイクロン型分離器73に送られて、ここで、析出物が回収される。また、分離器73を通過した炭酸ガスは、炭酸ガス回収装置74で回収される。回収された炭酸ガスは別な設備で再利用される他に、必要に応じて圧縮機61に送り、超臨界炭酸ガスとして再利用しても良い。
【0032】
なお、第2濾過ユニット42に対して超臨界炭酸ガス洗浄を行っているが、第1濾過ユニット41に対しても、同様に超臨界炭酸ガス洗浄が行われる。また、各濾過ユニット41,42は、2台の濾過器を用いているが、用いる濾過器は2台以上であればよく、設置台数はこれに限られない。
【0033】
なお、上記実施形態では、超臨界炭酸ガスを用いたが、超臨界流体であればよく、他の水、メタン、エタン、プロパン、エチレンなどからなる超臨界流体を用いてもよい。
【0034】
図1に示すように、製膜ユニット12は、流延室100と、渡り部101と、テンタ102と、乾燥室103と、巻取機104とを備え、流延ドープを用いてフィルム106が製造される。流延室100には、流延ドープの吐出口が形成された流延ダイ107と、支持体として作用する流延ドラム108と、剥取ローラ109とが配置されている。
【0035】
不純物が取り除かれた流延ドープは、流延ダイ107を介してエンドレスに回転している流延ドラム108の上に流延され、流延膜111が形成される。流延ドラム108の表面温度は−10℃以上10℃以下の範囲内で略一定とすることが好ましい。このような流延ドラム108にドープを流延すれば、ドープは速やかに冷却されるため短時間の内にゲル状の流延膜111が形成される。流延ドラム108の回転と共に流延膜111のゲル化が進められ、自己支持性を有する流延膜111は剥取ローラ109で支持されながら流延ドラム108から湿潤フィルム113として剥ぎ取られる。
【0036】
渡り部101では、多数のローラで湿潤フィルム113を支持しながら、次のテンタ102に送る。テンタ102では、湿潤フィルム113の両側端部がピン等の保持手段で保持され、乾燥される。テンタ102を出たフィルムは乾燥室103に送られて、さらに乾燥が進められて、フィルム106とされる。この後、フィルム106は、巻取機104において、巻き芯105にロール状に巻き取られる。
【0037】
なお、上記溶液製膜設備において、流延ダイ及びその付属物、支持体等の構造、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、溶媒回収方法、フィルム回収方法等は、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
【0038】
本発明に係るポリマー20は特に限定されず、溶液製膜方法に適用可能であれば良い。この中で、セルロースアシレートを使用すれば、透明度が高く、光学特性に優れたフィルムを得ることができるので、偏光板用の保護フィルムや光学補償フィルム等の光学用途として好適である。中でも、セルロースアセテートを使用し、特にアセチル化度の平均値が57.5%〜62.5%のセルローストリアセテートを使用すれば、光学特性に優れたフィルムを得ることができる。上記のアセチル化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味し、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従って求めることができる。本実施形態では、粒状のセルローストリアセテートを使用する。なお、粒状のポリマーを使用する場合には、溶媒との相溶性の観点から、その90重量%以上が0.1〜4mmの粒径であることが好ましく、より好ましくは粒径が1〜4mmである。
【0039】
溶媒21は、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類等が好適であるが特に限定されず、使用するポリマーとの溶解性等を考慮して適宜選択すれば良い。溶媒21は1種類の化合物であっても良いし、複数の化合物を混合した混合溶媒でも良い。具体的には、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテート等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)等が挙げられる。
【0040】
添加剤22は、所望とするフィルムの特性に応じて適宜選択すれば良い。例えば、可塑剤や、紫外線吸収剤、剥離促進剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。この中で、可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等)等が挙げられる。この中で、セルロースアシレートをフィルムとするために特に好ましいものとしてはTPPが挙げられる。なお、可塑剤は、上記以外にも公知であるものを用いることができ、特に限定されない。また、紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が好ましく、中でも、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物が特に好ましい。
【0041】
本発明により得られるフィルムは、透明度やレタデーション値が高く、湿度依存性が低い。そのため、特に、偏光板の位相差フィルムとして好適に用いることができるが、偏光板の表面を保護するための保護フィルムとしても利用することができる。本発明のセルロースエステルフィルムの具体的用途に関しては、特開2005−104148号公報において、例えば、[1088]段落から[1265]段落には、液晶表示装置として、TN型、STN型、VA型、OCB型、反射型、その他の例が詳しく記載されており、この記載も本発明に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を実施した溶液製膜設備の一例を示す概略図である。
【図2】濾過ユニット、飽和ガス置換部、溶剤洗浄部、及び超臨界炭酸ガス洗浄部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
40 原料ドープ
42 第2濾過ユニット
51,52 第1,2濾過器
54 超臨界炭酸ガス洗浄部
55 飽和ガス置換部
67,65 第1,2濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の濾過器を用いて、ポリマーと溶剤とが含まれるドープを濾過し、この濾過済みドープを、エンドレスで走行する支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有した後に前記支持体から剥ぎ取り、乾燥させてフィルムとする溶液製膜方法において、
前記濾過器の内、濾過能力が低下した濾過器への前記ドープ供給を停止して、前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤を送って循環させ前記濾過器を洗浄する第1洗浄工程と、
前記第1洗浄工程を終了した前記濾過器に超臨界流体を送って循環させ前記濾過機を洗浄する第2洗浄工程と、
前記第2洗浄工程後の前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤の飽和ガスを充填する飽和ガス充填工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項2】
前記第1洗浄工程前に、洗浄対象の前記濾過器に対し、不活性ガス又は前記溶剤と同種の溶剤の飽和ガスを用いて、前記ドープをガスに置換するガス置換工程を有することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
【請求項3】
前記超臨界流体は超臨界炭酸ガスであり、前記ポリマーはセルロースアセテートであることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
【請求項4】
複数の濾過器を用いて、ポリマーと溶剤とが含まれるドープを濾過し、この濾過済みドープを、エンドレスで走行する支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜が自己支持性を有した後に前記支持体から剥ぎ取り、乾燥させてフィルムとする溶液製膜設備において、
前記濾過器の内、濾過能力が低下した濾過器への前記ドープ供給を停止して、前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤を送って循環させ前記濾過器を洗浄する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部による洗浄を終了した後に、前記濾過器に超臨界流体を送って循環させ前記濾過機を洗浄する第2洗浄部と、
前記第2洗浄工程後の前記濾過器に、前記溶剤と同種の溶剤の飽和ガスを充填する飽和ガス充填部とを有することを特徴とする溶液製膜設備。
【請求項5】
前記第1洗浄部による洗浄前に、洗浄対象の前記濾過器に対し、不活性ガス又は前記溶剤と同種の溶剤の飽和ガスを用いて、前記ドープをガスに置換するガス置換部を有することを特徴とする請求項4記載の溶液製膜設備。
【請求項6】
前記超臨界流体は超臨界炭酸ガスであり、前記ポリマーはセルロースアセテートであることを特徴とする請求項4または5記載の溶液製膜設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−241488(P2009−241488A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92707(P2008−92707)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】