説明

溶液製膜法用の平滑剤

【課題】溶液製膜法によるフィルム生成時に、加熱温度を上げて脱溶媒時間の短縮を行っても、フィルムの品質が低下しない添加剤を提供する。
【解決手段】本発明は、下記一般式(1)
【化1】


(R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、mは1〜6の数を表し、nは3〜500の数を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。ただし、(AO)中のオキシエチレン基の割合は20〜90質量%である。)で表されるポリエーテル化合物であって、該化合物の重量平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする溶液製膜法用の平滑剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤に溶解させた樹脂を乾燥させて成膜する際、乾燥速度を早めても得られる膜の品質を低下させない平滑剤に関するものであり、特に液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、配向フィルム等の平滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムを製造する場合いくつかの方法があり、代表的な方法として、溶押出成型法、カレンダー法、溶融製膜法等の方法が知られている。これらの中でも、材料となる樹脂を溶媒に溶解させた溶液(ドープ)を、平滑なドラムやベルト上に流延して付着させ、その後加熱によって溶媒を除去してフィルムを製造する溶液製膜法は、溶剤を揮発させながらフィルムを製造することにより材料の樹脂分子がランダムな方向に向き、フィルムで複屈折が発生しないため、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム及び位相差フィルム等の製造法として用いられている。また、溶融押出成型法等に比べて樹脂にかける熱量が低く、熱安定剤等の添加量を低減でき、更に透明性の高いフィルムを成型できる等の利点も持っているため、非常に品質の良いフィルムが得られるという特徴を持っている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
しかし溶液製膜法は脱溶媒が必要なため、他のフィルム製造方法と比べてフィルムの成型までに時間がかかり生産性に劣ることが大きな欠点であった。生産性を上げるためには、脱溶媒の時間を短縮することが必要であるが、脱溶媒時の加熱温度を上げると、得られるフィルムの表面に凹凸が生じ、フィルムの品質が低下するため加熱温度を上げることができず、脱溶媒の時間を短縮することは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開平09−001568号公報
【特許文献2】特開2000−056129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、溶液製膜法によるフィルム生成時に、加熱温度を上げて脱溶媒時間の短縮を行っても、フィルムの品質が低下しない添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者等は鋭意検討し、溶液製膜法における脱溶媒時に、加熱温度を上げても得られるフィルムの品質が低下しない添加剤を見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、mは1〜6の数を表し、nは3〜500の数を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。ただし、(AO)中のオキシエチレン基の割合は20〜90質量%である。)で表されるポリエーテル化合物であって、該化合物の重量平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする溶液製膜法用の平滑剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は溶液製膜法によるフィルム生成時に、加熱温度を上げて脱溶媒時間の短縮を行っても、フィルムの品質が低下しない添加剤を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、下記一般式(1)
【0011】
【化2】

【0012】
(R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、mは1〜6の数を表し、nは3〜500の数を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。ただし、(AO)中のオキシエチレン基の割合は20〜90質量%である。)で表されるポリエーテル化合物であって、該化合物の重量平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする溶液製膜法用の平滑剤である。
【0013】
は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表すが、炭素数1〜10の炭化水素基とは、R−(OH)で表されるアルコール化合物から水酸基を取り除いた基である。こうしたアルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2級ブタノール、ターシャリブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2級ペンタノール、ネオペンタノール、ターシャリペンタノール、ヘキサノール、2級ヘキサノール、ヘプタノール、2級ヘプタノール、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2級オクタノール、ノナノール、2級ノナノール、デカノール、2級デカノール、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ターシャリブチルフェノール等の1価のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、オクタンジオール(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−デカンジオール等の2価のアルコール;グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4−ヘキサントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、ペンタメチルグリセリン等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン等の4価のアルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグレセリン等の5価のアルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、タロース、アロース等の6価のアルコールが挙げられる。
【0014】
これらのアルコール化合物の価数はmの値に対応しているが、価数が大きいと粘度が大きくなり取り扱いが困難になる場合があるので、1〜3価のアルコール(mの値が1〜3)が好ましく、1又は2価のアルコール(mの値が1又は2)がより好ましく、1価のアルコール(mの値が1)が更に好ましい。また、Rの炭素数が大きすぎると平滑剤としての効果が得られない場合があるので、Rは水素原子又は炭素数1〜6が好ましく、水素原子又は炭素数1〜4がより好ましい。なお、Rが水素原子の場合のmの値は1である。
【0015】
は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。こうした炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基が挙げられる。これらの中でも、Rの炭素数が大きすぎると平滑剤としての効果が得られない場合があるので、Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。なお、Rはm個存在するが、m個のRは同一でも異なっていてもよい。
及びRは上記のように、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であるが、平滑剤としての性能が良好なことから、R及びRの両方又はいずれか一方が水素原子であることが好ましい。
【0016】
一般式(1)中のAは、炭素数2〜4のアルキレン基を表す。こうしたアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。また、nはAOで表されるオキシアルキレン基の重合度であり3〜500の数を表すが、好ましくは5〜300であり、より好ましくは10〜200である。重合度が3未満の場合は平滑剤としての効果が現れず、500を超えると製造が困難になる場合や製品粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる場合がある。
【0017】
ここで、Aで表されるアルキレン基は分子中にn個存在するが、(AO)中のオキシエチレン基の割合は20〜90質量%でなければならない。つまり残りの10〜80質量%の基は炭素数3又は4のオキシアルキレン基となる。平滑剤としての性能が良好なことから、オキシエチレン基の割合は25〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。オキシエチレン基の割合が20質量%未満又は90質量%を超えると平滑剤として良好な性能を発揮できない。
【0018】
一般式(1)中の(AO)で表される基には、上記のようにオキシエチレン基とそれ以外の1種又は2種以上の基が混在している。これらのオキシアルキレン基は、例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドをアルコール化合物等に公知の方法で付加重合することによって製造することができる。これらはランダム共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体とブロック共重合体の混合物等であってよい。
【0019】
更に、一般式(1)で表される化合物の重量平均分子量は1,000〜100,000でなければならず、2,000〜50,000が好ましく、2,000〜10,000がより好ましい。重量平均分子量が1,000未満になると、平滑剤として良好な性能を発揮できず、重量平均分子量が100,000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難になる場合や平滑剤として良好な性能を発揮できない場合がある。
本発明の溶液製膜法用の平滑剤は、樹脂等を溶剤に溶解してフィルムを製造するときに使用するものであり、その使用量は、樹脂及び溶剤の合計量に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%になるように添加すればよい。添加量が少なすぎると平滑剤としての効果が発揮されない場合があり、添加量が多すぎると樹脂の物性を悪化させる場合がある。
【0020】
本発明のドープとは、本発明の溶液製膜法用の平滑剤と、樹脂等のフィルム基材及び溶剤を含有した溶液である。
フィルム基材としては樹脂(ポリマー)が好ましく、有機高分子で溶剤に溶解又は分散するものであれば任意の樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えば、二酢酸セルロースや三酢酸セルロース等のセルロースエステルポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレート、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリノルボルネン、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はこれらの樹脂の混合物等が挙げられる。これらの中でも、平滑剤の効果が大きいことから、セルロースエステルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン系樹脂が好ましい。また、樹脂のように高分子ではなくても、有機溶剤に溶解させてから流延、乾燥させてフィルム状の薄膜を形成できるものであればフィルム基材として使用できる。こうしたものとしては、例えば、蛍光剤、有機色素等が挙げられる。
【0021】
ドープに用いることのできる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の炭化水素類;メチレンクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、ジエチレングリコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノエチルアセテート、2−エトキシ−エチルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4ージオキサン、1,3−ジオキソラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類が挙げられる。樹脂の溶解性や溶剤の除去性等のバランスがよいことから、これらの中でも、アルコール類、ケトン類、エステル類が好ましく、エステル類がより好ましい。
【0022】
フィルム基材と溶剤は任意の割合で混合すればよいが、好ましくはフィルム基材100質量部に対して溶剤を50〜800質量部、より好ましくは100〜500質量部の割合で混合すればよい。溶剤の量が少ないと薄膜を形成することが困難になる場合があり、溶剤量が多すぎると膜が薄くなりすぎる場合や、蒸発させる溶剤量が多すぎて乾燥時に余分なエネルギーや時間がかかる場合がある。
【0023】
各成分を混合してドープを製造する方法は特に限定されないが、例えば、溶剤に樹脂及び平滑剤を添加して混合する方法や、平滑剤を溶剤に溶解した後樹脂を添加して混合する方法等が挙げられる。混合時には加温してもしなくてもよく、各成分が均一に溶解するまで混合すればよい。
本発明のドープには、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、公知の添加剤を必要に応じて添加することができる。こうした添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、微粒子粉体、離型剤、光学特性調整剤等が挙げられる。
【0024】
可塑剤としては、例えば、リン酸エステルやカルボン酸エステルが用いられるが、リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)、クレジルジフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート、ジフェニルビフェニルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート等が挙げられる。カルボン酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリメチルトリメリテート、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。これらの可塑剤の中でも、トリフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチルトリメリテートが好ましい。また、可塑剤の添加量は、フィルム基材に対して0.1〜20質量%が好ましく、5〜16質量%がより好ましい。
【0025】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の中でも、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが好ましい。また、紫外線吸収剤の添加量は、フィルム基材に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0026】
劣化防止剤としては、例えば、t−ブチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、グアニジン化合物、上記のベンゾフェノン系紫外線吸収剤やベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。劣化防止剤の添加量は、フィルム基材に対して0.001〜5%が好ましく、0.01〜1%がより好ましい。
【0027】
微粒子分体としては、例えば、シリカ、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等が挙げられる。微粒子分体の粒子径は、数平均粒径として0.01〜100μmが好ましく、0.1〜10μmが特に好ましい。またその添加量は、フィルム基材に対して、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましい。
【0028】
離型剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、その添加量は、フィルム基材に対して0.002〜2質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。ただし、界面活性剤を添加する場合は、本発明の平滑剤を阻害しないように注意することが必要である。
【0029】
光学特性調整剤としては、例えば、芳香族化合物であればよく、二つ以上の芳香環を有するものが好ましい。芳香環としては、5員環、6員環、7員環等の芳香族炭化水素環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環等の芳香族ヘテロ環が挙げられる。これらの芳香族化合物の分子量は300〜800であることが好ましく、沸点は260℃以上であることが好ましい。また、光学特性調整剤の配合量は、フィルム基材に対して10〜1,000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。
【0030】
本発明のフィルムは、本発明のドープから成型されるフィルムである。成型方法は公知の方法を用いればよく、例えば、ドープを広い板の上に薄く広げて、加温や減圧により溶剤を揮発させてフィルムを得ればよい。ドープを薄く広げる方法としては、流延ダイを使用する方法の他、スピンコート、スプレーコート等を使用してもよい。
フィルムを作成する時間は溶剤の揮発時間によって決まるが、本発明のドープは、本発明の平滑剤が入っていない通常のドープと比較して、高温で溶剤を揮発させても得られるフィルムの品質が低下しない。具体的な温度は使用する樹脂及び溶剤によって決まるが、本発明の平滑剤が入っていない通常のドープで使用する乾燥温度より10℃以上乾燥温度を上げることができる。
【0031】
本発明の溶液製膜法用の平滑剤は、樹脂を溶剤に溶解してフィルムを製造する用途であればいずれの用途に使用してもよいが、高度な品質が要求される半導体や液晶パネル等に使われるフィルムの製造に使用するのが好ましい。具体的な用途としては、例えば、半導体用のレジスト、液晶パネルの拡散板や偏光板、カラーフィルター、冷陰極蛍光管等が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%は特に記載が無い限り質量基準である。
スチレン−無水マレイン酸のコポリマー(スチレン/無水マレイン酸=2/1(質量比)、ランダム重合、重量平均分子量3,050)を10質量%になるように、プロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)に加えて混合した。この溶液に下記の表1にある平滑剤を1質量%になるように溶解し、均一になるまで混合して試験用のドープを得た。得られたドープは、ガラスプレート上に0.05mmの厚さになるようにバーコーターで塗布した後、定温に暖めたブロックヒーター上に載せて乾燥させ、フィルムを作成した。乾燥までの時間は目視で判断した。
また、ガラスプレート上に生成したフィルム(5×10cm)の表面を目視で観察してその状態を下記の基準で評価した。評価基準において、5又は4であれば工業的に使用が可能であるが、評価が3以下のものは工業的な使用が困難になる。
【0033】
<評価基準>
5:平滑な塗膜面であり凹凸がみられない
4:微小な凸部が3箇所以下であり、注意して見ないとわからない
3:微小な凸部が4箇所以上あり、目視でも見てもはっきりわかる
2:大きな凸部がみられる
1:大きな凹凸がみられる
【0034】
【表1】

【0035】
EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドを表す。
表中、オキシエチレン基の割合は、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基の割合を表す。
プルロニック型の構造は、HO(CO)(CO)(CO)H (x、yは1以上の整数)。
比較例6〜10は平滑剤無添加。
【0036】
以上のようにブロックヒーターの温度によって乾燥までの時間が変化する。また、平滑剤無添加のものは40℃程度でないときれいに成膜することができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、mは1〜6の数を表し、nは3〜500の数を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。ただし、(AO)中のオキシエチレン基の割合は20〜90質量%である。)
で表されるポリエーテル化合物であって、該化合物の重量平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする溶液製膜法用の平滑剤。
【請求項2】
及びRの両方又はいずれか一方が水素原子であることを特徴とする請求項1に記載の溶液製膜法用の平滑剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶液製膜法用の平滑剤を含有することを特徴とするドープ。
【請求項4】
請求項3に記載のドープを乾燥して得られるフィルム。

【公開番号】特開2010−53299(P2010−53299A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222096(P2008−222096)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】