説明

溶液製膜設備のテンター装置及びフィルム乾燥方法

【課題】 溶液製膜設備のテンター装置においてフラッパの揺動動作性能が低下することを防止する。
【解決手段】 クリップ10は、フレーム31、フラッパ32を備える。ベアリングをフラッパ32の取付孔に圧入して取り付ける。取付軸35を一方の取付軸挿通孔、2個のドライベアリング、他方の取付軸挿通孔に挿通すると、フラッパ32がフレーム31に回動自在に取り付けられる。フラッパ32が回動する際には、取付軸35とドライベアリングとが摺動する。ドライベアリングを、大同メタル工業(株)製のダイダインDDK01(商品名)から構成する。クリップ10を覆うような第1,第2遮風カバー51を設ける。第1,第2遮風カバー51に、新鮮風供給管55を接続する。第1,第2遮風カバー51,52に吹き出し口56を設ける。新鮮風供給管55を通った新鮮風は、吹き出し口56からフラッパ32に向けて吹き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液製膜設備のテンター装置及びフィルム乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テンター装置は、開閉自在なクリップにより両側縁部を把持されたフィルムを搬送して乾燥し、厚みムラや光学特性ムラのない高分子膜を製造している。クリップは、コ字状のクリップ本体の上部に取付軸を介してフラッパを揺動自在に取り付けて構成されている。フラッパは通常は自重によって閉じ位置とされており、この閉じ位置ではクリッパ本体の下部とフラッパ下端との間でフィルムを把持する。また、フィルム側縁部を把持するときには、フラッパの上端部をクリップオープナーに係合させることで、フラッパを斜め上方に回転させ、これによりフラッパが開放位置にされる。クリップは、テンター装置の入口でフィルムを把持し、出口で把持を開放しており、クリップによるフィルム把持がうまく行われない場合には、厚みムラや光学特性ムラが発生するとともに、フィルム破断が発生し、フィルムの品質不良となってしまう。そこで、このクリップの把持についてさまざまな工夫が考えられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平11−77719号公報(図4)
【特許文献2】特開平11−90943号公報(図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記テンター装置を有する溶液製膜設備でセルロースアシレートフィルムを製造していると、製造初期段階では高レターディションの光学的に優れた品種が安定的に製造できるものの、ある一定期間が過ぎると、光学的特性にばらつきが発生するという問題があり、解決が望まれていた。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、クリップの開閉動作性能が低下することを防止し、クリップの動作寿命を長くすることができる溶液製膜設備のテンター装置及びフィルム乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、テンター装置のクリップの開閉不良に起因して不良品が発生することが判明した。すなわち、フィルムを乾燥するときにフィルムから可塑剤として含まれているTPP(トリフェニルフォステート)が揮発するため、揮発したTPPがドライベアリングに付着して結露すると、ドライベアリングと取付軸との摺動により発生する削りカスと、結露したTPPとが結晶化した塊となってしまう。この塊によって、ドライベアリングの滑り性能が低下し、クリップが自重で閉じることができず、開いた状態になってしまうことがあった。クリップが開いた状態であると、フィルムの把持が部分的に不可能になり、この把持されなかった部分で、乾燥後に厚みムラや光学特性ムラが発生してしまい、フィルムの品質不良となることが判った。
【0006】
この把持不良を解消するために、クリップによるフィルム把持をバネの付勢を用いて行わせることが考えられるが、溶液製膜によりフィルムを製造する場合には、フィルムの剛性が小さいため、バネの付勢を用いてクリップによるフィルム把持を行うと、把持した部分のフィルムが破れてしまうという問題があった。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の溶液製膜設備のテンター装置は、フィルムの側縁部を把持する把持位置と、この把持位置から退避した退避位置との間で開閉自在なクリップによりフィルムの両側縁部を把持して搬送し、前記フィルムを乾燥させる溶液製膜設備のテンター装置において、前記把持位置にある前記クリップの走行域に設けられ、前記クリップを覆うクリップカバーを備えたことを特徴とする。
【0008】
なお、前記クリップカバー内に送風し、前記把持位置にある前記クリップにテンター内の乾燥風の侵入を阻止する送風手段を有することが好ましい。また、前記フィルムは、セルロースアシレートフィルムであることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の溶液製膜設備のフィルム乾燥方法は、フィルムの側縁部を把持する把持位置と、この把持位置から退避した退避位置との間で開閉自在なクリップによりフィルムの両側縁部を把持して搬送し、前記フィルムを乾燥させるフィルム乾燥方法において、前記把持位置にある前記クリップの走行域に設けられたクリップカバーにより前記クリップを覆い、送風手段により前記クリップカバー内に送風し、前記把持位置にある前記クリップにテンター内の乾燥風の侵入を阻止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の溶液製膜設備のテンター装置によれば、フィルムの側縁部を把持する把持位置と、この把持位置から退避した退避位置との間で開閉自在なクリップによりフィルムの両側縁部を把持して搬送し、フィルムを乾燥させ、把持位置にあるクリップの走行域に設けられ、クリップを覆うクリップカバーを備えたから、クリップの開閉動作性能が低下することがなくなる。
【0011】
また、クリップカバー内に送風し、前記把持位置にある前記クリップにテンター内の乾燥風の侵入を阻止する送風手段を有するから、乾燥風内の揮発成分とクリップの潤滑剤の削りカスとによる異物の発生が抑えられ、クリップの開閉動作性能が低下することがなくなる。
【0012】
さらに、本発明の溶液製膜設備のフィルム乾燥方法によれば、フィルムの側縁部を把持する把持位置と、この把持位置から退避した退避位置との間で開閉自在なクリップによりフィルムの両側縁部を把持して搬送し、フィルムを乾燥させ、把持位置にあるクリップの走行域に設けられたクリップカバーによりクリップを覆い、送風手段によりクリップカバー内に送風し、把持位置にあるクリップにテンター内の乾燥風の侵入を阻止するから、クリップの開閉動作性能が低下することがなくなるため、フィルム乾燥性能が低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明を実施したテンター装置2を示す概略の平面図である。テンター装置2は、流延バンド113(図9参照)から剥ぎ取ることにより形成された湿潤フィルム(フィルム)3をフィルム搬送方向Aに搬送してフィルム幅方向Bに延伸するとともに、湿潤フィルム3を乾燥させるものであり、第1レール5と、第2レール6と、これらレール5,6に案内される第1,第2チェーン(エンドレスチェーン)7,8とを備えている。このテンター装置2はテンター入口16側から順に、第1乾燥部2a、第2乾燥部2b、第3乾燥部2cの各エリアに分けられている。各乾燥部2a〜2cでは、湿潤フィルム3を乾燥させるための乾燥風が送風機(図示せず)により湿潤フィルム3に向けて吹き出される。これにより、各乾燥部2a〜2cを搬送される湿潤フィルム3は、乾燥される。
【0014】
第1,第2チェーン7,8には、クリップ10が所定ピッチで多数取り付けられている。このクリップ10は、湿潤フィルム3の側縁部を把持しながら、各レール5,6に沿って移動することで、湿潤フィルム3をフィルム幅方向Bに延伸する。なお、本実施形態では、延伸前の湿潤フィルム3の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸するが、これに限定されることなく、延伸倍率は適宜変更されるものである。
【0015】
第1,第2チェーン7,8は、原動スプロケット11,12及び従動スプロケット13,14の間に掛け渡されており、これらスプロケット11〜14の間では、第1チェーン7は第1レール5によって、第2チェーン8は第2レール6によって案内される。原動スプロケット11,12はテンター出口17側に設けられており、これらは図示しない駆動機構により回転駆動され、従動スプロケット13,14はテンター入口16側に設けられている。また、テンター入口16には、クリップ10を開放位置に変位させる入口部開放部材21が第1レール5に、入口部開放部材22が第2レール6にそれぞれ取り付けられている。テンター出口17には、クリップ10を開放位置に変位させる出口部開放部材23が第1レール5に、出口部開放部材24が第2レール6にそれぞれ取り付けられている。
【0016】
図2及び図3に示すように、クリップ10は、略コ字形状のフレーム31、フラッパ32、レール取付部33を備える。フレーム31には、フラッパ32を取り付けるためのフラッパ取付部34が2個形成されており、このフラッパ取付部34には、取付軸35を挿通するための取付軸挿通孔34aと、この取付軸挿通孔34aに挿通した取付軸35を脱不可状態に固定する固定ピン36を圧入するためのピン圧入孔34bとが形成されている。ピン圧入孔34bは、上下に2個形成されている。取付軸35には、固定ピン36を圧入するためのピン圧入孔35aが左右に2個形成されている。固定ピン36は、2個設けられている。
【0017】
フラッパ32は、入口部開放部材21,22及び出口部開放部材23,24に接触する接触頭部32a、フレーム31のフィルム把持面31aとの間で湿潤フィルム3を把持する把持部32b、回動軸部32cを備え、回動軸部32cには、ドライベアリング37を取り付けるための取付孔32dが形成されている。ドライベアリング37は、例えば、大同メタル工業(株)製のダイダインDDK01(商品名)が用いられ、取付孔32dに2個圧入されている。このため、ドライベアリング37は、圧入可能な素材(例えば、樹脂製)から構成することが好ましい。なお、ドライベアリング37は、上記した大同メタル工業(株)製のダイダインDDK01(商品名)に限定されることなく、自己潤滑性を有し、摩耗による発塵の少ない素材であればよく、鉛を含まない4フッ化エチレン樹脂と固体潤滑剤とから構成されていることがさらに好ましい。
【0018】
クリップ10の組み立て方法としては、2個のドライベアリング37をそれぞれフラッパ32の取付孔32dに圧入して取り付ける。そして、取付軸35を一方の取付軸挿通孔34a、2個のドライベアリング37、他方の取付軸挿通孔34aに挿通し、2個の固定ピン36を、それぞれピン圧入孔34b,35aに圧入する。これにより、取付軸35が位置決めされた状態でフラッパ取付部34に回動不能に取り付けられるとともに、フラッパ32がフレーム31に回動自在に取り付けられ、フラッパ32が回動する際には、取付軸35とドライベアリング37とが摺動する。
【0019】
図4及び図5に示すように、レール取付部33には、第1チェーン7または第2チェーン8が取り付けられる。図4は把持開始直前の状態を、図5は把持直後の状態をそれぞれ示している。フラッパ32は鉛直状態となるフィルム把持位置(把持位置)と、入口部開放部材21,22及び出口部開放部材23,24に接触頭部32aが接触して斜めに回転した状態となる開放位置(退避位置)との間で回動し、通常は自重によりフィルム把持位置となるように付勢されている。フィルム把持位置PAでは、フィルム把持面31aと把持部32bとにより湿潤フィルム3が把持される。
【0020】
レール取付部33は、取付フレーム41と、ガイドローラ42,43,44とから構成されている。取付フレーム41には、第1チェーン7または第2チェーン8が取り付けられる。ガイドローラ42〜44は、図4に示すように従動スプロケット13,14の各支持面に接触するか、図5に示すように第1レール5または第2レール6の支持面に接触するかして、回転する。これにより、各スプロケット13,14や各レール5,6からクリップ10が脱落することなく、各レール5,6に沿って案内される。
【0021】
入口部開放部材21,22は、フィルム把持位置PAの前で、クリップ10のフラッパ32の接触頭部32aに接触してフラッパ32を閉位置から開放位置に回動してクリップ10を開放状態にし、湿潤フィルム3の側縁部の受け入れを可能にする。そして、フィルム把持位置PAを通過するときに入口部開放部材21,22から接触頭部32aが離れ、フラッパ32が開放位置から閉位置に回動して、湿潤フィルム3の側縁部が把持される。同様にして、出口部開放部材23,24は、フィルム把持解除位置PBで、フラッパ32を閉位置から開放位置に回動してクリップ10を開放状態にし、湿潤フィルム3の側縁部の把持を開放する。フィルム把持解除位置PBでクリップ10による把持が開放された湿潤フィルム3は、テンター出口17から排出される。テンター出口17から排出された湿潤フィルム3は、フィルム141として耳切装置142に送り出される(図9参照)。なお、各開放部材21〜24は、フラッパ32の接触頭部32aとの接触抵抗を小さく抑えるために、樹脂製のものが好ましく用いられる。樹脂としては、ナイロン、デルリン等が用いられる。
【0022】
図6及び図7に示すように、第1,第2レール5,6それぞれの上方には、クリップ10を覆うような第1,第2クリップカバー(クリップカバー)51,52が設けられている。第1,第2クリップカバー51,52は、テンター装置2のフィルム把持位置PAとフィルム把持解除位置PBとの間の全域に亘って設けられている。第1クリップカバー51と第2クリップカバー52とは同じ構造の部材により構成されているため、第1クリップカバー51のみを例に説明し、第2クリップカバー52の説明は簡略化する。図6に示すように、第1クリップカバー51は、第1レール5に沿って移動するクリップ10のフレーム31及びフラッパ32を覆うように設けられており、湿潤フィルム3を乾燥させるための乾燥風がクリップ10に当たるのを防止するように新鮮風が充填されて、テンター装置2内よりも高い圧力にされている。第1クリップカバー51には、クリップ10、主にフラッパ32に向けて新鮮な風を送る新鮮風供給管55が接続されている。第1クリップカバー51には、吹き出し口56が設けられている。この吹き出し口56は、新鮮風供給管55から送られる新鮮風をフラッパ32に向けて吹き出す。吹き出し口56は、第1クリップカバー51のフィルム搬送方向Aの全域に亘って設けられている。
【0023】
第1,第2クリップカバー51,52には、排気カバー57が接続されている。この排気カバー57によって第1,第2クリップカバー51,52内の乾燥空気は、冷却器(図示せず)で冷却された後に、乾燥風循環ユニット60に送られて、ここで図示しない熱交換器によって所定の温度範囲にされて、各乾燥部2a〜2cに戻される。
【0024】
新鮮風供給管55は、風量調整バルブ62の絞り調整により風量が制御された新鮮風を第1クリップカバー51に送る。新鮮風供給管55は、第1クリップカバー51の各乾燥部2a〜2cに対応した位置及び、第2クリップカバー52の各乾燥部2a〜2cに対応した位置に接続されている。
【0025】
図7に示すように、新鮮風供給管55はTPP除去ユニット65に接続されている。TPP除去ユニット65は、各乾燥部2a〜2cそれぞれに接続されており、各乾燥部2a〜2c内の乾燥空気は、TPP除去ユニット65に送られる。各乾燥部2a〜2cでは、湿潤フィルム3から可塑剤として含まれているTPP(トリフェニルフォステート)が揮発するため、内部の乾燥空気にTPPが含まれている。TPP除去ユニット65は、送られてきた乾燥空気中のTPPを除去する。TPPが除去された乾燥空気は、新鮮風供給管55に送られる。その途中で、バルブ(図示せず)の開放によって外部から新鮮な空気が取り入れられ、新鮮な空気とTPP除去ユニット65から送られてきた空気とが合流して、各乾燥部2a〜2cそれぞれに設けられた新鮮風供給管55に送られる。そのとき、風量調整バルブ62により、新鮮風供給管55に送る空気の量が調整される。本実施形態では、第1,第2クリップカバー51,52内に送風する送風手段は、新鮮風供給管55、吹き出し口56から構成される。
【0026】
次に上記湿潤フィルム3の製造方法について説明する。ただし、以下に述べる製造方法ならびに製造装置は、本発明の一例であり、これに限定されるものではない。
【0027】
[原料]
本実施形態においては、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。このTACとしては、リンター綿とパルプ綿とのいずれから得られたものでもよいが、好ましくはリンター綿から得られたものである。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0028】
また、ドープを調製するための溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが例示される。なお、ここで、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液または分散液である。
【0029】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。そして、TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度、フィルムの光学特性等の特性の観点から、炭素原子数1〜5のアルコールを一種ないし数種類を、ジクロロメタンに混合して用いることが好ましい。このとき、アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2質量%〜25質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることがより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノール等が挙げられるが、中でも、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物がより好ましく用いられる。
【0030】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いることがある。これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−,−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。また、溶媒は、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を化学構造中に有するものであってもよい。
【0031】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特願2004−264464号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明に適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特願2004−264464号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【0032】
[ドープ製造方法]
上記の原料を用いて、まずドープを製造する。図8にドープ製造設備70を示す。ドープ製造設備70には、溶媒を貯留するための溶媒タンク71と、溶媒とTAC等とを混合するための溶解タンク73と、TACを供給するためのホッパ74と、添加剤を貯留するための添加剤タンク75とが備えられ、さらに、後述する膨潤液を加熱するための加熱装置86と、加熱された膨潤液の温度を調整するための温調機87と、濾過装置88,95と、ドープ濃度を調整するためのフラッシュ装置91とが配されている。そしてドープ製造設備70には、さらに、溶媒を回収するための回収装置92と、回収された溶媒を再生するための再生装置93とが備えられている。そして、このドープ製造設備70は、溶液製膜設備100のストックタンク90に接続されている。
【0033】
本実施形態においては、上記のドープ製造設備70を用いて以下の方法でドープが製造される。先ず始めに、バルブ72を開き、溶媒が溶媒タンク71から溶解タンク73に送られる。次に、ホッパ74に入れられているTACが、計量されながら溶解タンク73に送り込まれる。また、添加剤溶液は、バルブ76の開閉操作により必要量が添加剤タンク75から溶解タンク73に送り込まれる。
【0034】
添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンク73に送り込むことが可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパ等を用いて溶解タンク73に送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク75の中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンクを用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンク73に送り込むこともできる。
【0035】
前述した説明においては、溶解タンク73に入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。例えば、TACを計量しながら溶解タンク73に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンク73に予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物(以下、これらの混合物もドープと称する場合がある)に混合させることもできる。
【0036】
溶解タンク73には、図8に示すようにその外面を包み込むジャケット77と、モータ78により回転する第1攪拌機79とが備えられている。さらに、この溶解タンク73には、モータ80により回転する第2攪拌機81が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌機79は、アンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機81は、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。そして、本実施形態で用いた溶解タンク73は、ジャケット77の内部に伝熱媒体を流すことにより温度調整されており、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機79,第2攪拌機81のタイプを適宜選択して使用することにより、TACが溶媒中で膨潤した膨潤液82を得る。
【0037】
次に、膨潤液82は、ポンプ85により加熱装置86に送られる。加熱装置86は、ジャケット付き配管であることが好ましく、さらに、膨潤液82を加圧することができる構成のものが好ましい。このような加熱装置86を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で膨潤液82中の固形分を溶解させる。なお、膨潤、溶解における温度は、50℃〜120℃であることが好ましい。また、加熱装置86を用いずに、膨潤液82を−100℃〜−30℃の温度に冷却する周知の冷却溶解法を行うこともできる。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に十分溶解させることが可能となる。ドープを、温調機87により略室温とした後に、濾過装置88により濾過してドープ中に含まれる不純物を取り除く。濾過装置88に使用される濾過フィルタは、その平均孔径が100μm以下のものであることが好ましい。また、濾過流量は、50リットル/hr.以上であることが好ましい。濾過後のドープは、バルブ89を介して、溶液製膜設備100中のストックタンク90に送られここに貯留される。
【0038】
ところで、上記のように、一旦膨潤液82を調製し、その後にこの膨潤液82を溶液とする方法は、TACの濃度を上昇させるほど要する時間が長くなり、製造コストの点で問題となる場合がある。その場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを調製し、その後に目的の濃度とするための濃縮工程を行うことが好ましい。このような方法を用いる際には、濾過装置88で濾過されたドープ96を、バルブ89を介してフラッシュ装置91に送り、このフラッシュ装置91内でドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示せず)により凝縮されて液体となり回収装置92により回収される。回収された溶媒は、再生装置93によりドープ調製用の溶媒として再生されて再利用される。この再利用はコストの点で効果がある。
【0039】
また、濃縮されたドープ96はポンプ94によりフラッシュ装置91から抜き出される。さらに、ドープ96に発生した気泡を抜くための泡抜き処理が行われることが好ましい。この泡抜き方法としては、公知の種々の方法が適用され、例えば超音波照射法が挙げられる。ドープ96は続いて濾過装置95に送られて、異物が除去される。なお、濾過の際のドープ96の温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。そして、ドープ96はストックタンク90に送られ、貯蔵される。そしてストックタンク90のドープは、溶液製膜設備100に送られる。
【0040】
原料ドープとこの原料ドープに添加される添加剤液(例えば、紫外線吸収剤液など)とを移送中に混合するインラインミキサ(例えば、スタティックミキサなど)を用いて混合させることが好ましい。また、混合方法の異なる複数のインラインミキサを直列に接続して混合を行うことがより好ましい。
【0041】
インラインミキサとして、スタティックミキサと、スルーザミキサとのうち、少なくとも1つを備えていることが好ましい。スタティックミキサを備えた場合、スタティックミキサのエレメント数が6以上9以下であることが好ましく、6以上60以下であることがより好ましい。
【0042】
スタティックミキサと、スルーザミキサとの両方を備えている場合には、スルーザミキサをスタティックミキサの上流側に配置することが好ましい。さらに、スルーザミキサと添加剤液を添加する添加口との距離が5mm以上150mm以下であることが好ましく、さらには、スルーザミキサと添加剤液を添加する添加口との距離が5mm以上15mm以下であることがより好ましい。また、スルーザミキサを構成するエレメントの上流側端部が、前記原料ドープの流される配管の内側壁近傍に位置することが好ましい。
【0043】
さらに、原料ドープを濾過する第1の濾過装置をインラインミキサの上流側に備え、第1の濾過装置による濾過後の原料ドープに添加剤を添加することが好ましく、さらには、インラインミキサの下流側に、ドープを濾過する第2の濾過装置を備え、インラインミキサにより混合されたドープを第2の濾過装置により濾過することがより好ましい。
【0044】
また、本実施形態では、以下を満たしていることが好ましい。
(1) 添加剤液の流速をV1、原料ドープの流速をV2としたときに、1≦V1/V2≦5である。
(2) 添加剤液の添加比率が、流量比で0.1%〜50%である。
(3) 添加剤液の粘度をN1、前記原料ドープの粘度をN2としたときに、1000≦N2/N1≦100000、を満たすとともに、20℃の状態において、5000cP≦N1≦500000cP、かつ、0.1cP≦N2≦100cP、を満たしている。
(4) 原料ドープのせん断速度が、0.1(1/s)〜30(1/s)である。
(5) ポリマーがセルロースアシレートである。
(6) 添加剤液が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液である。
(7) 添加剤液が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、原料ドープと異なる組成である。
(8) 添加剤液が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の紫外線吸収剤を含んでいる。
(9) 添加剤液が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の無機または有機の微粒子を分散してなる。
(10) 添加剤液が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の剥離促進剤を含んでいる。
(11) 添加剤液が、ポリマー溶液の主溶媒を含んだ溶液であり、かつ、少なくとも1種類の貧溶媒を含んでいる。
【0045】
以上の方法により、TAC濃度が5質量%〜40質量%であるドープを製造することができる。より好ましくはTAC濃度が15質量%以上30質量%以下であり、最も好ましくは17質量%以上25質量%以下の範囲とすることである。また、添加剤(主には可塑剤である)の濃度は、ドープ中の固形分全体を100質量%とした場合に1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。なお、TACフィルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特願2004−264464号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
【0046】
[溶液製膜方法]
次に、上記で得られたドープ96を用いてフィルムを製造する方法を説明する。図9は溶液製膜設備100を示す概略図である。ただし、本発明は、図9に示すような溶液製膜設備に限定されるものではない。溶液製膜設備100には、ストックタンク90と、濾過装置104と、流延ダイ110と、回転ローラ111,112に掛け渡された流延バンド113と、テンター装置2とが備えられており、さらに、耳切装置142と、乾燥室145と、冷却室147と、巻取室150とが配されている。
【0047】
ストックタンク90には、モータ101で回転する攪拌機102が取り付けられている。そして、このストックタンク90は、ポンプ103,濾過装置104を介して流延ダイ110と接続している。
【0048】
流延ダイ110の材質としては、2層ステンレス鋼、または、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものも、この流延ダイ110の材質として用いることができ、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものが用いられる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ110を作製することが好ましい。これにより流延ダイ110内をドープ96が一様に流れ、後述する流延膜にスジなどが生じることが防止される。流延ダイ110と後に説明するフィードブロックとの接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ110のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ110のリップ先端の接液部の角部分について、そのRは全巾にわたり50μm以下とされている。また、流延ダイ110の内部における剪断速度が1(1/sec)〜5000(1/sec)となるように調整されていることが好ましい。
【0049】
流延ダイ110の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1.0倍〜2.0倍程度であることが好ましい。また、製膜中の温度が所定温度に保持されるように、この流延ダイ110に温調機を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ110にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を流延ダイ110の幅方向において所定の間隔で設け、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が流延ダイ110に備えられていることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)103の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、溶液製膜設備100中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行ってもよい。流延エッジ部を除いて製品フィルムの幅方向の任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、2μm以下に調整することがより好ましい。また、リップ間隔精度は±50μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
【0050】
流延ダイ110のリップ先端には硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ110と密着性が良く、ドープ96との密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al2 3 ,TiN,Cr2 3 などが挙げられるが、中でも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
【0051】
流延ダイ110のスリット端に流出するドープ96が、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置(図示しない)をスリット端に取り付けることが好ましい。この場合には、ドープ96を可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部、ダイスリット端部及び外気が形成する三相接触線の周辺部付近に供給することが好ましい。なお、この液を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
【0052】
流延ダイ110の下方には、回転ローラ111,112に掛け渡された流延バンド113が設けられている。回転ローラ111,112は、図示しない駆動装置により回転し、この回転に伴い流延バンド113は無端で走行する。流延バンド113は、その移動速度、すなわち流延速度が10m/分〜200m/分で移動できるものであることが好ましい。また、流延バンド113の表面温度を所定の値にするために、回転ローラ111,112には伝熱媒体循環装置114が取り付けられていることが好ましく、流延バンド113は、その表面温度が−20℃〜40℃に調整可能なものであることが好ましい。本実施形態において用いた回転ローラ111,112には、伝熱媒体流路(図示せず)が形成されており、その流路中を、所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ111,112の温度が所定の値に保持されるものとなっている。
【0053】
なお、回転ローラ111,112を直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転の速度ムラが0.2%以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。この場合には、回転ローラ111,112の表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。回転ローラ111,112の表面にはハードクロムメッキ処理などを行うことが好ましく、これにより、さらに、十分な硬度と耐久性を持たせることもできる。なお、支持体(流延バンド113や回転ローラ111,112)の表面欠陥は最小限に抑制することが好ましい。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2 以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2 以下であることが好ましい。
【0054】
流延ダイ110、流延バンド113等の流延機器は流延室115に収められている。流延室115には、その内部温度を所定の値に保つための温調設備116と、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための第1の凝縮器(コンデンサ)117とが設けられている。そして、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置118が流延室115の外部に設けられている。また、流延ダイ110から流延バンド113にかけて形成される流延ビードの背面部を圧力制御するための減圧チャンバ120が配されていることが好ましく、本実施形態においてもこれを使用している。
【0055】
さらに、流延膜119中の溶媒を蒸発させるため送風機121,122,123を設けている。送風機の取り付け位置は、流延バンド113の上部上流側に送風機121を、下流側に送風機122を、流延バンド113下部に送風機123を設けた形態を図示しているがこれに限定されるものではない。また、形成直後の流延膜119に乾燥風が吹き付けられることによる膜面の面状変動を抑制するために遮風装置124が設けられていることが好ましい。
【0056】
渡り部130には、送風機131が備えられ、また、テンター装置2の下流の耳切装置142には、切り取られたフィルム141の側端部屑を細かく切断処理するためのクラッシャー143が備えられている。
【0057】
また、乾燥室145には、多数のローラ144が備えられており、また、蒸発して発生した溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置146が取り付けられている。そして、図2においては、乾燥室145の下流に冷却室147が設けられているが、乾燥室145と冷却室147との間に調湿室(図示しない)を設けてもよい。冷却室147の下流には、フィルム141の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように調整するための強制除電装置(除電バー)148を設けられている。図9においては、強制除電装置148は、冷却室147の下流側とされている例を図示しているが、この設置位置に限定されるものではない。さらに、本実施形態においては、フィルム141の両縁にエンボス加工でナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ149が強制除電装置148の下流に適宜設けられる。また、巻取室150の内部には、フィルム141を巻き取るための巻取ローラ151と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ152とが備えられている。
【0058】
次に、以上のような溶液製膜設備100を使用してフィルムを製造する方法の一例を以下に説明する。ドープ96は、攪拌機102の回転により常に均一化されている。ドープ96には、この攪拌の際にも可塑剤、紫外線吸収剤などの添加剤を混合させることもできる。
【0059】
そして、ドープ96は、ポンプ103により濾過装置104に送られてここで濾過された後に、流延ダイ110から流延バンド113に流延される。回転ローラ111,112の駆動は、流延バンド113に生じるテンションが104 N/m〜105 N/mとなるように調整されることが好ましい。また、流延バンド113と回転ローラ111,112との相対速度差は、0.01m/min以下となるように調整する。流延バンド113の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド113が一回転する際に生じる幅方向の蛇行が1.5mm以下とされることが好ましい。この蛇行を抑制するために、流延バンド113の両端の位置を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づき回転ローラの速度をフィードバック制御により制御することがより好ましい。さらに、流延ダイ110直下における流延バンド113について、回転ローラ111の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以下となるように調整することが好ましい。また、流延室115の温度は、温調設備116により−10℃〜57℃とされることが好ましい。なお、流延室115の内部で蒸発した溶媒は回収装置118により回収された後、再生させてドープ調製用溶媒として再利用される。
【0060】
流延ダイ110から流延バンド113にかけては流延ビードが形成され、流延バンド113上には流延膜119が形成される。流延時のドープ96の温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。また、流延ビードを安定させるために、このビードの背面が減圧チャンバ120により所定の圧力値に制御されることが好ましい。ビード背面は前面よりも−10Pa〜−1500Pa減圧することが好ましい。さらに、減圧チャンバ120にはジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つために流延ダイ110のエッジ部に吸引装置(図示せず)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1L/min.〜100L/min.の範囲であることが好ましい。
【0061】
流延膜119は、自己支持性を有するものとなった後に、湿潤フィルム3として剥取ローラ125で支持されながら流延バンド113から剥ぎ取られる。剥ぎ取り時の残留溶媒量は、固形分基準で20質量%〜250質量%であることが好ましい。その後に多数のローラが設けられている渡り部130を搬送させた後にテンター装置2に湿潤フィルム3を送り込む。渡り部130では、送風機131から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フィルム3の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。
【0062】
テンター装置2に送られた湿潤フィルム3は、その両端部がクリップ10で把持されて搬送されながら乾燥される。なお、テンター装置2では、湿潤フィルム3がフィルム幅方向B(図1参照)に延伸される。渡り部130とテンター装置2との少なくともいずれかひとつにおいては、湿潤フィルム3の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を100.5%〜300%延伸することが好ましい。
【0063】
湿潤フィルム3は、テンター装置2で所定の残留溶媒量まで乾燥された後、フィルム141としてその下流側に送り出される。フィルム141の両側端部は、耳切装置142によりその両縁が切断され、切断された側端部は図示しないカッターブロワーによりクラッシャー143に送られる。クラッシャー143により、側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。なお、この両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から前記フィルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
【0064】
一方、本実施形態においては、両側端部を切断除去されたフィルム141は、乾燥室145に送られ、さらに乾燥される。乾燥室145内の温度は、特に限定されるものではない。乾燥室145においては、フィルム141は、ローラ144に巻き掛けられながら搬送されており、ここで蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置146により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室145の内部に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室145は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置142と乾燥室145との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフィルム141を予備乾燥すると、乾燥室145においてフィルム温度が急激に上昇することが防止されるので、これにより、フィルム141の形状変化を、より抑制することができる。
【0065】
フィルム141は、冷却室147では略室温にまで冷却される。なお、乾燥室145と冷却室147との間に調湿室(図示しない)を設けてもよく、この調湿室ではフィルム141に対して、所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付けられることが好ましい。これにより、フィルム141のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制することができる。
【0066】
溶液製膜方法では、支持体から剥ぎ取られたフィルム(ポリマーフィルム)を巻き取るまでの間に、乾燥工程や側端部の切除除去工程などの様々な工程が行われている。これらの各工程内、あるいは各工程間では、フィルムは主にローラにより支持または搬送されている。これらのローラには、駆動ローラと非駆動ローラとがあり、非駆動ローラは、主に、フィルムの搬送路を決定するとともに搬送安定性を向上させるために使用される。
【0067】
一方、駆動ローラは、フィルムに駆動を伝達し、これを下流へと搬送するために使用されており、通常はサクションローラが使用されている。製膜におけるフィルム搬送では、流延工程や剥ぎ取り工程、乾燥工程、巻き取り工程などの各工程内あるいは各工程間で、搬送張力の分離が必要となる場合があり、その際には、サクションローラにより駆動力をフィルムに与えることで搬送張力の分離を図っている。このサクションローラは、それ自体にフィルムを吸着させて搬送するため、ローラ周面に多数の空気吸引孔を有している。
【0068】
サクションローラを使用した場合、非駆動のローラに比べて、フィルムには方向性が特定できない複雑な力が作用するため、フィルムは変形しやすい。また、フィルムに掛かる搬送前後の張力差によってもフィルムは変形する。さらに、サクションローラの周面上には多数の空気吸引孔が形成されており、この吸引孔の孔縁にフィルムが接触した状態でフィルムがスリップしたり、収縮や変形が発生すると、フィルムには微細なキズが発生する。
【0069】
搬送工程で使用する駆動ローラは、あらかじめその周面を窒化処理や硬化クロムめっき、あるいは焼入れ処理などで硬化処理したものを使用し、また、その周面の表面硬度は、ビッカース硬度で500以上2000以下であることが好ましく、より好ましくは800以上1200以下である。
【0070】
使用する駆動ローラはサクションローラであり、このサクションローラは周面に多数の空気吸引孔を有する。この時、サクションローラの周面の表面粗Ryが、0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上0.8μm以下である。この周面の表面粗さRyは、そのローラにおいて孔のない平滑部の表面粗さが前記周面粗さであるものとする。また、その孔径は1mm以上6mm以下であることが好ましいが、より好ましくは2mm以上4mm以下であり、その孔の面取り量は、孔径の2%以上20%以下であることが好ましい。
【0071】
前記のサクションローラを使用する際には、その周面温度を制御することが好ましく、そのため、1基のサクションローラに対して少なくとも1つの温度調節設備を有していることが好ましく、また、サクションローラの周面温度を、サクションローラに接触する直前のフィルム温度よりも高くしながら製膜することが好ましい。
【0072】
また、強制除電装置(除電バー)148により、フィルム141が搬送されている間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。図9では、冷却室147の下流側に設けられている例を図示しているがその位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ149を設けて、フィルム141の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm〜200μmであることが好ましい。
【0073】
最後に、フィルム141を巻取室150内の巻取ローラ151で巻き取る。この際には、プレスローラ152で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフィルム141は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フィルムの幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果がある。フィルムの厚みが15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。
【0074】
本発明では、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させる方法を用いてもよい。同時積層共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとのいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合には、ダイスリットから支持体にかけて形成されるビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
【0075】
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特願2004−264464号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
【0076】
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能及びそれらの測定法は、特願2004−264464号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらは本発明にも適用できる。
【0077】
[表面処理]
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
【0078】
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
【0079】
さらに前記セルロースアシレートフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
【0080】
セルロースアシレートフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、特願2004−264464号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
【0081】
(用途)
前記セルロースアシレートフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。セルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特願2004−264464号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特願2004−264464号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
【0082】
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を得ることができる。前記TACフィルムは、偏光板保護フィルムや写真感光材料のベースフィルムとして用いることができる。さらにテレビ用途などの液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フィルムとしても使用可能である。特に偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどにも用いられる。また、前記偏光板保護膜用フィルムを用いて偏光板を構成しても良い。
【実施例1】
【0083】
クリップ10に組み込まれるドライベアリング37を、本実施形態の大同メタル工業(株)製のダイダインDDK01(商品名)、試料A、試料B、試料C、試料Dから構成し、これら5種類のドライベアリング37が組み込まれたクリップ10を150℃のオーブンに入れ、シリンダーを使用して加重を掛けながら、連続でフラッパ32を開閉させる実験を行った後に、ドライベアリング37の内周面を黒紙で擦り、内周面から削り取られて黒紙に付着した付着物の量を調べた。実験は、クリップ10への新鮮風の吹き出しが有る場合と、無い場合とで行った。なお、試料Aは、現行のクリップに使用している大同メタル工業(株)製のダイダインDDU01(商品名)、試料Bは、大同メタル工業(株)製のDTK52(商品名)、試料Cは、三井化学(株)製のオーラム(登録商標)JCF3030(商品名)、試料Dは、日本ポリペンコ(株)製のポリペンコ(登録商標)PEEK(登録商標)PK−450(商品名)である。
【0084】
この実験の結果を表1に示す。表1において、発塵量の評価として、黒紙に付着した付着物の量が0〜2個のものを◎とし、3〜9個のものを○とし、10個以上のものを×とする。また、フラッパ32の動作性の評価として、フラッパ32の開閉動作が不能となる回数が445000回以上のものを◎とし、3001回以上445000回未満のものを○とし、3000回以下のものを×とする。
【0085】
【表1】

【0086】
本実験の結果、ドライベアリング37を、大同メタル工業(株)製のダイダインDDK01(商品名)、試料B、試料Dから構成した場合には、クリップ10への新鮮風の噴射の有無に係わらず、ドライベアリング37の発塵量は少なく(3〜9個)、フラッパ32の動作可能回数が445000回以上となりフラッパ32の動作性も良好であった。また、ドライベアリング37を、試料Cから構成した場合には、ドライベアリング37の発塵量は少なく(3〜9個)、クリップ10への新鮮風の吹き出しが無い場合には、フラッパ32の動作可能回数が3001回以上445000回未満であったが、クリップ10への新鮮風の吹き出しが有る場合には、フラッパ32の動作可能回数が445000回以上となりフラッパ32の動作性も良好であった。さらに、試料Aを用いた場合には、クリップ10への新鮮風の吹き出しが無い場合には、フラッパ32の動作可能回数が3000回以下であったが、クリップ10への新鮮風の噴射が有る場合には、フラッパ32の動作可能回数が445000回以上となりフラッパ32の動作性も良好であった。なお、445000回とは、テンター装置2を1年間使用したときのフラッパ32の動作回数である。
【0087】
このように、ドライベアリング37を湿潤フィルム3から揮発した揮発成分により劣化しない素材である大同メタル工業(株)製のダイダインDDK01(商品名)、大同メタル工業(株)製のDTK52(商品名)、三井化学(株)製のオーラム(登録商標)JCF3030(商品名)、日本ポリペンコ(株)製のポリペンコ(登録商標)PEEK(登録商標)PK−450(商品名)から構成することにより、フラッパ32の動作可能回数を向上し、フラッパ32の動作性を向上することができるため、ドライベアリング37が劣化してフラッパ32が回動不能となって起こる湿潤フィルム3の把持不良を防止することができる。さらに、新鮮風を、第1,第2クリップカバー51,52の先端部に設けられた吹き出し口56からクリップ10、主にフラッパ32に向けて吹き出すことにより、フラッパ32、取付軸35、ドライベアリング37等へのTPPの付着がなく、これにより、ドライベアリング37の削りカスとTPPとが結合して塊となることがなく、フラッパ32が回動不能となって起こる湿潤フィルム3の把持不良を防止することができる。また、クリップ10のフレーム31及びフラッパ32を覆うように第1,第2クリップカバー51,52を設け、湿潤フィルム3を乾燥させるための乾燥風がフレーム31及びフラッパ32に当たるのを防止するから、ドライベアリング37の削りカスとTPPとが結合して塊となることがなく、フラッパ32が回動不能となって起こる湿潤フィルム3の把持不良をより一層確実に防止することができる。
【実施例2】
【0088】
次に、本発明のフィルム製造に関する実施例を、ドープ製造設備70及び溶液製膜設備100の動作の流れに基づき説明する。先ず、フィルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、クエン酸モノエチルエステル、クエン酸ジエチルエステル、クエン酸トリエチルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部
【0089】
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有量が58ppm、Mg含有量が42ppm、Fe含有量が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンが15ppm含むものであった。また6位アセチル基の置換度は0.91であり全アセチル中の32.5%であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移点;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
【0090】
(1−1)ドープ仕込み
図8に示すドープ製造設備70を用いてドープ96を調製した。攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製の溶解タンク73で、前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパ74から徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンク73に投入されて、アンカー翼である第1攪拌機79と、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機である第2攪拌機81とにより、所定の攪拌条件で30分間分散された。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンク75からバルブ76で送液量を調整して溶解タンク73に送液し、全体が2000kgとなるようにした。添加剤溶液の分散を終了した後、第1攪拌機79の周速を所定の値に設定してさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液82を得た。膨潤終了までは窒素ガスによりタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンク73の内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液中の水分量は0.3質量%であった。
【0091】
(1−2)溶解・濾過
膨潤液82を溶解タンク73からポンプ85を用いてジャケット付配管である加熱装置86に送液した。加熱装置86で膨潤液82を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に、溶解された液を、温調機87で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を備えた濾過装置88を通過させてドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置88における1次側圧力を1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング、及び配管としては、ハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
【0092】
(1−3)濃縮・濾過・脱泡・添加剤
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置91内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で凝縮して回収した。このようにして、ドープ濃度を調整した。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置92で回収された後に再生装置93で再生した後に溶媒タンク71に送液した。回収装置92,再生装置93では、蒸留や脱水などが行われる。フラッシュ装置91のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機を設け、この攪拌機により、フラッシュされたドープを攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内におけるドープの平均滞留時間は50分であった。このドープを採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10-1(sec-1)で450Pa・sであった。
【0093】
つぎに、このドープに弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後、ポンプ94を用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置95を通過させた。濾過装置95では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク90内にドープ96を送液してここに貯蔵した。ストックタンク90は中心軸にアンカー翼を備えた攪拌機を有しており、この攪拌機により内部が常時攪拌される。なお、濃縮前ドープからドープ96を調製するまでの間のドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
【0094】
また、ジクロロメタンが86.5質量部、アセトンが13質量部、1−ブタノール0.5質量部の混合溶媒Aを作製した。
【0095】
(1−4)吐出・直前添加・流延・ビード減圧
図9に示す溶液製膜設備100を用いてフィルム141を製造した。ストックタンク90内のドープ96をポンプ103で濾過装置104へ送った。このポンプ103は、ポンプ103の1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモーターによりポンプ103の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ポンプ103は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能である。また、その吐出圧力は1.5MPaであった。そして、濾過装置104を通ったドープ96を流延ダイ110に送液した。
【0096】
流延ダイ110は、幅が1.8mであり乾燥された後のフィルム141の膜厚が80μmとなるように、流延ダイ110の吐出口のドープ96の流量を調整して流延を行った。また、流延ダイ110の吐出口からのドープ96の流延幅を1700mmとした。ドープ96の温度を36℃に調整するために、流延ダイ110にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
【0097】
流延ダイ110と配管とはすべて、稼働中には36℃に保温した。流延ダイ110は、コートハンガータイプのダイである。そして、この流延ダイ110としては、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは予め設定したプログラムによりポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、溶液製膜設備100に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。流延側端部20mmを除いたフィルム141においては、50mm離れた任意の2点の厚みの差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
【0098】
また、流延ダイ110の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ120を設置した。この減圧チャンバ120の減圧度は、流延ダイ110から流出されて流延開始位置PSに達するまでの流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、ビードの長さが所定の値となるようにビード両面側の圧力差を設定した。また、減圧チャンバ120は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものであった。流延ダイ110の吐出口におけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設け、また、吐出口の両端には開口部を設けた。さらに、流延ダイ110には、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)が取り付けられている。
【0099】
(1−5)流延ダイ
流延ダイ110の材質は、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の2層ステンレス鋼である。そしてこれは、電解質水溶液での強制腐食試験においてSUS316製と略同等の耐腐食性を有する素材であり、また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有する。流延ダイ110の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ110のリップ先端の接液部の角部分については、Rがスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されている。流延ダイ110内部での剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)の範囲であった。また、流延ダイ110のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイド)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
【0100】
さらに、流延ダイ110の吐出口には、流出するドープ96が局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープ96を可溶化するための前記混合溶媒Aを流延ビードの両側端部と吐出口との界面部に対し、それぞれ0.5ml/min.ずつで供給した。この混合溶媒Aを供給するポンプの脈動率は5%以下であった。また、減圧チャンバ120によりビード背面側の圧力を前面部よりも150Pa低くした。また、減圧チャンバ120の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。前記エッジ吸引装置は、1L/min.〜100L/min.の範囲となるようにエッジ吸引風量を調整することができるものであり、本実施例ではこれを30L/min.〜40L/min.の範囲となるように適宜調整した。
【0101】
(1−6)金属支持体
支持体として、幅2.1mで長さ70mのステンレス製のエンドレスバンドとしての流延バンド113を用いた。流延バンド113は、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。流延バンド113の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド113は、2個の回転ローラ111,112により搬送させた。その際の流延バンド113の搬送方向における張力は1.5×105 N/m2 となるように、流延バンド113と回転ローラ111,112との相対速度差が0.01m/min以下になるように調整した。また、流延バンド113の速度変動は0.5%以下であった。また1回転の幅方向の蛇行が1.5mm以下に制限されるように流延バンド113の両端位置を検出して制御した。また、流延ダイ110の直下における流延ダイ110のリップ先端と流延バンド113との上下方向における位置変動は200μm以下にした。なお、流延バンド113は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室115内に設置されている。この流延バンド113上に流延ダイ110からドープ96を流延した。
【0102】
回転ローラ111,112としては、流延バンド113の温度調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ110側の回転ローラ111には5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ112には乾燥のために40℃の伝熱媒体を流した。流延直前の流延バンド113の中央部の表面温度は15℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド113としては、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールが皆無であり、10μm〜30μmのピンホールが1個/m2 以下、10μm未満のピンホールが2個/m2 以下であるものを用いた。
【0103】
(1−7)流延乾燥
流延室115の温度は、温調設備116により35℃に保った。流延バンド113上に流延されたドープ96から形成された流延膜119には、送風機121,122により、最初に流延膜119に対して平行に流れる乾燥風を送り、これを乾燥した。この乾燥風からの流延膜119への総括伝熱係数は24kcal/m2 ・hr・℃であった。乾燥風の温度は、流延バンド113上部の上流側を135℃とし、下流側を140℃とした。また、流延バンド113下部は、65℃となるように送風機123から送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度はいずれも−8℃付近であった。流延バンド113上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、流延室115内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)117を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
【0104】
なお、流延開始点PSから5秒間の流延時間では空気の流れが直接ドープ96及び流延膜119に当たらないようにするために遮風装置124を設け、流延ダイ110直近の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜119中の溶媒比率が乾量基準で50質量%になった時点で流延バンド113から剥取ローラ125で支持しながら湿潤フィルム3として剥ぎ取った。なお、この乾量基準による溶媒含有率は、サンプリング時におけるフィルム重量をx、そのサンプリングフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で求める値である。このときの剥取テンションは1×102 N/m2 であり、剥取不良を抑制するために流延バンド113の速度に対する剥取速度(剥取ローラドロー)を100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。剥ぎ取ったフィルムの表面温度は15℃であった。流延バンド113上での乾燥速度は、平均60質量%乾量基準溶媒/min.であった。乾燥により発生した溶媒ガスは−10℃の凝縮器で凝縮液化して回収装置(図示せず)で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。溶媒が除去された乾燥風は再度加熱され乾燥風として再利用される。湿潤フィルム3を、渡り部130を介して搬送し、テンター装置2に送った。この搬送時には、湿潤フィルム3に対して送風機131から40℃の乾燥風を送った。なお、渡り部130のローラで搬送している際に、湿潤フィルム3には所定値のテンションが付与されている。
【0105】
(1−8)テンター搬送・乾燥・耳切
テンター装置2に送られた湿潤フィルム3は、クリップ10でその両端を固定されながらテンター装置2内を搬送され、乾燥風により乾燥される。この際、各乾燥部2a〜2cの内部の乾燥空気が、TPP除去ユニット65に送られ、TPP除去ユニット65によって乾燥空気中のTPPが除去され、TPPを除去した空気と、バルブの開放によって外部から取り入れられた新鮮な空気とが合流して、風量調整バルブ62の絞り調整により風量が制御され、各乾燥部2a〜2cそれぞれに設けられた新鮮風供給管55に送られる。そして、新鮮風供給管55を通った新鮮風は、第1,第2クリップカバー51,52の先端部に設けられた吹き出し口56からクリップ10、主にフラッパ32に向けて吹き出される。そのとき、風量調整バルブにより、新鮮風供給管55に送る空気の量が調整される。また、原動スプロケット11,12の速度変動は0.5%以下であった。乾燥風のガス組成は−10℃における飽和ガス濃度とした。テンター装置2内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶媒)/minであった。テンター装置2のテンター出口17におけるフィルム141の残留溶媒量が7質量%となるように、乾燥ゾーンの条件を調整した。テンター装置2内では湿潤フィルム3を搬送しつつフィルム幅方向B(図1参照)における延伸も行った。なお、この延伸前の湿潤フィルム3の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸した。剥取ローラ125からテンター装置2の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。また、テンター装置2のテンタ入口から出口までの長さに対する、クリップ狭持開始位置から狭持解除位置までの長さの割合は90%とした。
【0106】
そして、テンター装置2のテンター出口17から30秒以内にフィルム141の耳切りを耳切装置142により実施した。
【0107】
(1−9)後乾燥・除電
フィルム141を乾燥室145で高温乾燥した。乾燥室145を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フィルム141のローラ144による搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまでの約10分間乾燥した。前記ローラ144におけるラップ角(フィルムの巻きかけ中心角)は、90°および180°とした。ローラ144の材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ144の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ144の回転によるフィルム位置の振れは全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
【0108】
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置146を用いて吸着回収除去した。ここに使用した吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は水分量0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので、これを冷却除去する冷却器およびプレアドソーバーでこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)が10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒の内、凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りのものの大部分は吸着回収により回収した。
【0109】
乾燥されたフィルム141を第1調湿室(図示しない)に搬送した。ローラ乾燥装置と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルム141のカールの発生を抑制するための第2調湿室(図示しない)にフィルム141を搬送した。第2調湿室では、フィルム141に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
【0110】
(1−10)ナーリング、巻取条件
調湿後のフィルム141は、冷却室147で30℃以下に冷却した後に、第2耳切装置により耳切りを行った。搬送中のフィルム141の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)148を設置した。さらにフィルム141の両端にナーリング付与ローラ149でナーリングの付与を実施した。ナーリングはフィルム141の片面側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフィルム141の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ149による押し圧を設定した。
【0111】
そして、フィルム141を巻取室150に搬送した。巻取室150は、装置内温度28℃,湿度70%に保持されている。さらに、巻取室150の内部にはフィルム141の帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVになるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフィルム141の製品幅は、1475mmである。巻取室150の巻取ローラ151の径は169mmである。巻き始めテンションは300N/mであり、巻き終わりが200N/mになるようなテンションパターンとした。巻き取ったフィルム141の全長は3940mであった。巻き取りの際の巻きズレの変動幅(オシレート幅と称することもある。)を±5mmとし、その巻き軸に対する巻きズレ周期を400mとした。また、巻取軸に対するプレスローラ152の押し圧は、50N/mに設定した。巻き取り時のフィルム141の温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶媒量は0.3質量%であった。全工程を通しても平均乾燥速度は20質量%(乾量基準溶媒)/minであった。また巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。また、フィルムロールの外観も良好であった。
【0112】
フィルムロールを25℃、相対湿度55%(以降、55%RHと記す)の貯蔵ラックに1ヶ月保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも変化は認められなかった。さらにフィルムロール内においてもフィルムの接着は認められなかった。また、フィルム141を製膜した後に、流延バンド113上にはドープ96から形成された流延膜の剥げ残りは全く見られなかった。さらに、クリップ10のフラッパ32やドライベアリング37へのTPPの付着は認められず、ドライベアリング37の削りカスとTPPとが結合して塊となることがなく、フラッパ32の回動もスムーズであり、クリップ10による湿潤フィルム3の把持の把持不良も認められなかった。
【0113】
なお、上記実施形態では、フラッパ32にドライベアリング37を取り付け、取付軸35を、フラッパ取付部34の取付軸挿通孔34aと、ドライベアリング37とに挿通させた後に固定ピン36により取付軸35をフラッパ取付部34に固定したが、これに限定されることなく、ドライベアリング37によりフラッパ32を回動自在にすることができればよく、例えば、フラッパ32に取付軸35を固定し、フラッパ取付部34にドライベアリング37を取り付けるようにしてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、新鮮風供給管55を、第1クリップカバー51の各乾燥部2a〜2cそれぞれと、第2クリップカバー52の各乾燥部2a〜2cそれぞれとに1個ずつ計6個設けたが、テンター装置2内に新鮮風を供給することができればよく、その個数は限定されることなく、適宜変更されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明を実施したテンター装置を示す平面図である。
【図2】クリップを示す斜視図である。
【図3】クリップを示す分解斜視図である。
【図4】クリップの把持開始直前の状態を示す側面図である。
【図5】クリップの把持開始直後の状態を示す側面図である。
【図6】クリップと、第1クリップカバーと、新鮮風供給管とを示す側面図である。
【図7】テンター装置と、第1,第2クリップカバーと、TPP除去ユニットとを示す概略側面図である。
【図8】ドープ製造設備を示す平面図である。
【図9】溶液製膜設備を示す平面図である。
【符号の説明】
【0116】
2 テンター装置
3 湿潤フィルム(フィルム)
10 クリップ
31 フレーム
31a フィルム把持面
32 フラッパ
32a 接触頭部
32b 把持部
32c 回動軸部
32d 取付孔
33 レール取付部
34 フラッパ取付部
35 取付軸
36 固定ピン
37 ドライベアリング
51 第1クリップカバー(クリップカバー)
52 第2クリップカバー(クリップカバー)
55 新鮮風供給管
56 吹き出し口
57 排気カバー
65 TPP除去ユニット
70 ドープ製造設備
100 溶液製膜設備


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの側縁部を把持する把持位置と、この把持位置から退避した退避位置との間で開閉自在なクリップによりフィルムの両側縁部を把持して搬送し、前記フィルムを乾燥させる溶液製膜設備のテンター装置において、
前記把持位置にある前記クリップの走行域に設けられ、前記クリップを覆うクリップカバーを備えたことを特徴とする溶液製膜設備のテンター装置。
【請求項2】
前記クリップカバー内に送風し、前記把持位置にある前記クリップにテンター内の乾燥風の侵入を阻止する送風手段を有することを特徴とする請求項1記載の溶液製膜設備のテンター装置。
【請求項3】
前記フィルムは、セルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜設備のテンター装置。
【請求項4】
フィルムの側縁部を把持する把持位置と、この把持位置から退避した退避位置との間で開閉自在なクリップによりフィルムの両側縁部を把持して搬送し、前記フィルムを乾燥させる溶液製膜設備のフィルム乾燥方法において、
前記把持位置にある前記クリップの走行域に設けられたクリップカバーにより前記クリップを覆い、送風手段により前記クリップカバー内に送風し、前記把持位置にある前記クリップにテンター内の乾燥風の侵入を阻止することを特徴とする溶液製膜設備のフィルム乾燥方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−116938(P2006−116938A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82622(P2005−82622)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】