説明

溶融した塊の冷却曲線を測定するための方法及び装置

本発明は光ファイバーを利用した、溶融物の冷却曲線及び(または)溶融サンプルの加熱曲線に関する。そこにおいて、少なくとも部分的に自由表面を有する光ファイバーの浸漬端は耐熱性のサンプル受容チャンバーによる空間で囲まれており、それによって、浸漬端が溶融物内に浸漬される状態で、光ファイバーが溶融物内に浸漬されたときに、サンプル受容チャンバー内にサンプルが溜まるように構成されており、その後にサンプルを含んだサンプル受容チャンバー及び光ファイバーが溶融金属から引き抜かれ、サンプルの冷却曲線及び(または)、サンプルの事前の凝固の後の、加熱中の温度特性が光ファイバーによって得られる信号への参照とともに測定され、測定装置に転送される。本発明はさらに、対応する装置及びそれの使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバーを利用した、溶融した塊(溶融物)の冷却曲線及び(または)溶融サンプルの加熱曲線に関する。そこにおいて、少なくとも部分的に自由表面(free surface)を有する光ファイバーの浸漬端は、浸漬端が溶融物内に浸漬される状態で、光ファイバーが溶融物内に浸漬され、それによりサンプル受容チャンバー内にサンプルが形成されるように(または、サンプルが溜まるように)、耐熱性のサンプル受容チャンバー(または、サンプル受容室)による空間(または、サンプル受容チャンバーよって形成される空間)で囲まれており、その後にサンプルを含んだサンプル受容チャンバー及び光ファイバーが溶融金属から引き抜かれ、サンプルの冷却曲線及び(または)、サンプルの事前の凝固の後の加熱中の温度特性(または、加熱曲線)が光ファイバーによって得られる信号への参照とともに測定され、測定装置に転送される。さらに、本発明は対応する装置及びそれの使用方法に関する。本発明において、溶融物は鉄、銅、または鋼鉄等の純金属、合金、及び氷晶石の溶融物、溶融塩、溶融ガラスを含む。
【背景技術】
【0002】
高温において光ファイバーを利用して液体の温度を測定する温度測定方法及び装置は欧州特許EP646778B1等に記載されている。また、他の装置としては米国特許US4,355,907が知られている。それらには、溶融金属のサンプルとともに取り出される浸漬センサーが記載されている。そこにおいて、サンプルは中空の空間内に付着する。中空空間と測定値を受信する光ファイバーとの間にはグラファイトのプレートが配置されている。
【0003】
独国特許DE3631645Alは溶融金属が注がれ、その後に溶融金属の温度が光ファイバーの手段によって測定されるサンプル容器を記載している。溶融金属の温度を測定するための他の装置は特開昭62-185129及び特開昭62-185130に記載されている。さらに、光学的放射を利用した、溶錬るつぼ内で融点温度を測定するための方法は米国特許US6,106,150、US6,004,031、または欧州特許EP802401Alに記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は既存の方法または装置を改善することである。すなわち、本発明の目的は既存の方法または装置の測定精度及び測定時間を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的は本発明の請求の範囲の独立請求項の特徴によって達成される。光ファイバーの浸漬端の端面及び側壁の一部は両方とも自由表面(free surface)を有するか、または溶融物と直接的に接触させられるので、測定精度及び測定時間が改善される。本発明の好まれる実施例は請求の範囲の従属請求項の特徴を有する。特に、溶融物と直接的に接触する光ファイバーの側壁の部分は、測定のために溶融物と直接的に接触させられる光ファイバーの端面の自由表面の径の少なくとも10倍、好まれるものとして30倍の長さを有する。
【0006】
好まれるものとして、光ファイバーの浸漬端が溶融物内に浸漬された後、サンプル受容チャンバー内が減圧され、溶融物はサンプル受容チャンバー内に引き込まれる。この構成はサンプリング自体を大幅に改善する。また、フェロスタティック圧(ferrostatic pressure)によってサンプルをサンプル受容チャンバー内に取り込むことも可能である。さらに、冷却曲線の測定後、光ファイバーを再度溶融物内に浸漬し、サンプル受容チャンバー内を加圧し、液体の溶融物がサンプル受容チャンバーから押し出されてもよい。当然、材料は加熱曲線の測定後に押し出されてもよい。また、冷却曲線及び(または)加熱曲線の測定後、損傷または消費された可能性がある材料を除去するために、光ファイバーの浸漬端及び溶融物で満たされたサンプル受容チャンバーの端部が切り取られてもよい。
【0007】
材料の特性に対する情報を与えることができる溶融金属の冷却曲線、または事前に凝固(または、固化)した溶融サンプルの加熱曲線の測定に加え、溶融物の浴または浴槽の温度が測定されてもよい。好まれるものとして、光ファイバーの浸漬端はサンプルの過冷却を防ぐために、少なくとも断続的に振動させられてもよい。本発明の方法は好まれるものとして、溶融物の液相線温度及び(または)相転移温度を測定するために使用することができる。好まれるものとして、光ファイバーの端面は信号の受信を向上させるために自由表面(free surface)である。特に、光ファイバーは高温領域における安定性を高めるためにサファイアまたは石英ガラスから形成されてもよい。
【0008】
好まれるものとして、サンプル受容チャンバーは石英ガラス、金属、またはセラミックによって管状に形成される。サンプル受容チャンバーの浸漬端には、分析される溶融物の上に存在する物質がサンプル受容チャンバーに入り込むことを防ぐためにスラグキャップが配置されてもよい。スラグキャップは通常、溶融物上または溶融物中の層の通過中に溶融または溶解する材料から作製される。
【0009】
サンプル受容チャンバーは好まれるものとして、加圧または減圧によって必要な圧力を設定するために、または、選択的に、圧力を正確に調節するために装置に空気力学的に接続される。また、光ファイバーは振動器に接続されてもよい。振動器は例として、光ファイバーの支持体上に配置されてもよい。光ファイバー及びサンプル受容チャンバーに振動を伝えることにより、振動器は分析される溶融物の過冷却を防止する効果を有する。この理由により、振動器のサンプル受容チャンバーへの接続が効果的であることが判るだろう。
【0010】
本発明に従った装置は溶融の浴または浴槽の温度の測定、並びに、溶融物の液相線温度及び(または)相転移温度の両方に対して使用することができる。
【0011】
以下に、付随する図面とともに本発明の実施例を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示されている実施例は、その中を通して光ファイバー2を誘導するための交換可能な支持管1を有する。支持管1は溶融金属3中で使用された後に交換することができる。この理由により、支持管1は筐体5の接続管4から取り外され、封止用接続6とともに新規の支持管1が接続管4に配置されるように構成される。筐体5において、移送用ローラー7のシステムが配置され、それの補助とともに光ファイバー2がリール8から巻き戻され、溶融金属3内に供給される。光ファイバー2の浸漬端は端面及び端面に接続する側壁の一部において自由表面(free surface)を有する。光ファイバーの残りの部分は、例えば燃焼等によって取り除くことが可能な、例えばプラスチック等から作製されたコーティングを有してもよい。光ファイバーの反対側の端は信号の受信及び評価のために使用される測定装置9に接続される。
【0013】
筐体5はさらに、加圧/減圧ユニット11が接続される気体接続ポート10を含む。
【0014】
図2に示されている実施例は中心的部材としてケーブル箱12を有する。ケーブル箱12には、ローラー13に巻かれた光ファイバー2が配置される。光ファイバー2は、光ファイバー2とともに巻き戻され、移送用ローラー7によって光ファイバー2とともに溶融金属3に供給される外装管14によって取り囲まれている。光ファイバー2の溶融金属3に対して反対側の端は測定装置9に接続される。図1に示された実施例の筐体5と同様に、ケーブル箱12は気密状に封止され、気体接続ポート10を有する。この気体接続ポート10には加圧/減圧ユニット11が接続されている。
【0015】
光ファイバー2は溶融金属3に面する側の端部で、端面と側壁の両方に自由表面を有し、光ファイバー2の自由表面の長さは端面から縦軸方向に計ったときに、溶融金属3に浸漬される光ファイバー2の端面の径の30倍以上である。光ファイバー2は、測定のために、それの浸漬端が溶融物3中に入るように浸漬される。そしてその状態で、支持管1または外装管14内が減圧され、溶融物の一部15が管内に引き込まれる。支持管1または外装管14の底部のこの部分はサンプル受容チャンバーを形成する。サンプリング装置はサンプル受容チャンバー及びその中に含まれるサンプル(サンプル受容チャンバー内に引き込まれた溶融金属3の一部15)とともに溶融金属3から引き抜かれる。溶融金属3の外部において、温度は溶融金属3に比べ大幅に低いので、サンプルは冷やされ、光ファイバー2によって得られる放射信号への参照とともに冷却曲線が記録され、測定装置9に転送(または、送信)される。ここで、測定において黒体放射の効果が利用される。 冷却曲線に加え、または、冷却曲線の代わりに、サンプルは、例えばサンプリング装置のサンプル受容チャンバーの溶融物への浸漬によって、凝固/冷却の後に加熱/溶融されてもよい。この様式により、冷却曲線と同様に加熱曲線が温度−時間グラフとして記録及び評価されてもよい。
【0016】
液相線温度及び(または)固相線温度において温度−時間グラフは短い時間のプラトー(または、平らな部分)を示すので、冷却曲線/加熱曲線は液相線温度及び(または)固相線温度に関する情報を与える。同様に、温度−時間グラフの温度プラトー(または、温度が一定の部分)によって、冷却している溶融金属の相転移を特定することができる。また、光ファイバー2の浸漬端が溶融金属3内に配置されている間、それの浴または浴槽の温度を測定することができる。
【0017】
冷却曲線を測定した後、光ファイバー2は溶融金属3に再度浸漬されてもよい。それによってサンプルは溶融し、溶融後、加熱曲線を測定することができる。その後、測定装置の気体接続ポート10を介して、特に、支持管1または外装管14内で圧力が増大され、液体の溶融サンプルはサンプル受容チャンバーから押し出される。その後、装置は新規のサンプリングのために使用することができる。必要であれば、図1の実施例において、支持管1が取り替えられ、光ファイバー2が新規の支持管1内に誘導されてもよい。図2の実施例において、外装管14の浸漬端は、浸漬端が使用不可能になったときに、光ファイバー2及び外装管14内に含まれる溶融物の残留物とともに切り取られてもよい。その場合、光ファイバー2は外装管14とともにリール13から巻き戻される。
【0018】
さらに、図には示されていないが、光ファイバーは振動器に接続されてもよい。振動器は、例えば、光ファイバー2のために支持管1上に配置されてもよく、光ファイバー2及びサンプル受容チャンバーへの振動の伝達により、振動器は分析される溶融物の過冷却を防止する効果を有する。この理由により、サンプル受容チャンバー上の振動器の固定は有効かつ効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】支持管を備えた本発明の測定装置の実施例である。
【図2】本発明の測定装置のもう1つの実施例である。
【符号の説明】
【0020】
1 支持管
2 光ファイバー
3 溶融金属
4 接続管
5 筐体
6 封止用接続
7 移送用ローラー
8 リール
9 測定装置
10 気体接続ポート
11 加圧/減圧ユニット
12 ケーブル箱
13 ローラー
14 外装管
15 溶融物の一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーを利用した溶融サンプルの冷却曲線及び/または加熱曲線を測定するための方法であって、少なくとも部分的に自由表面を有する光ファイバー(2)の浸漬端が、前記光ファイバー(2)が前記浸漬端とともに溶融金属(3)内に浸漬され、それによりサンプル受容チャンバー内にサンプルが形成されるように、耐熱性のサンプル受容チャンバーによる空間で囲まれており、その後にサンプルを含んだ前記サンプル受容チャンバー及び前記光ファイバー(2)が前記溶融金属(3)から引き抜かれ、サンプルの冷却曲線及び/またはサンプルの事前の凝固の後の加熱中の温度特性が前記光ファイバー(2)によって得られる信号への参照とともに測定され、かつ、測定装置(9)に転送され、そして、前記光ファイバー(2)の前記浸漬端の端面及び側壁の一部が溶融物(3)と直接的に接触させられる方法。
【請求項2】
前記溶融物(3)と直接的に接触した状態で配置される前記光ファイバー(2)の前記側壁の前記一部の長さが前記溶融物(3)と直接的に接触した状態で配置される前記光ファイバー(2)の前記端面の径の少なくとも10倍、好まれるものとして30倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光ファイバー(2)の前記浸漬端の前記溶融物(3)への浸漬の後、前記サンプル受容チャンバーが減圧され、溶融物が前記サンプル受容チャンバー内に引き込まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
冷却曲線の測定の後、光ファイバー(2)が再度溶融物(3)に浸漬され、前記サンプル受容チャンバー内の圧力が増大され、溶融物が前記サンプル受容チャンバーから押し出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
冷却曲線及び/または加熱曲線の測定の後、光ファイバー(2)の前記浸漬端及び溶融物で満たされた前記サンプル受容チャンバーの端が切り取られる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
溶融物(3)の浴の温度も測定される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
光ファイバー(2)の前記浸漬端が少なくとも断続的に振動させられる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
溶融物の液相線温度及び/または固相線温度及び/または相転移温度が決定される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
光ファイバー(2)及び前記光ファイバー(2)の支持体(1)とともに溶融物サンプルの冷却曲線及び/または加熱曲線を測定するための装置であって、前記光ファイバー(2)の一方の端が前記光ファイバー(2)によって得られる信号を検出及び処理するために測定装置(9)に接続されており、前記光ファイバー(2)が浸漬端を有しており、
前記光ファイバー(2)の前記浸漬端が少なくとも部分的に自由表面を有し、耐熱性のサンプル受容チャンバーによる空間によって囲まれており、そして、前記光ファイバー(2)の前記浸漬端の前記端面及び側壁の一部の両方が自由表面を有している装置。
【請求項10】
前記光ファイバー(2)の前記側壁の前記自由表面の長さが前記光ファイバー(2)の前記端面の前記自由表面の径の少なくとも10倍、好まれるものとして30倍である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
光ファイバー(2)の前記端面が自由表面を有している、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
光ファイバー(2)が石英ガラスまたはサファイアから形成される、請求項9〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
前記サンプル受容チャンバーが管状に形成される、請求項9〜12のいずれか1つに記載の装置。
【請求項14】
前記サンプル受容チャンバーが石英ガラスから形成される、請求項9〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記サンプル受容チャンバーが金属またはセラミックから形成される、請求項9〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記サンプル受容チャンバーの前記浸漬端にスラグキャップが配置される、請求項9〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項17】
前記サンプル受容チャンバーが加圧または減圧を生成するために装置(11)に空気力学的に接続されている、請求項9〜16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項18】
光ファイバー(2)が振動器に接続されている、請求項9〜17のいずれか1つに記載の装置。
【請求項19】
溶融物の液相線温度及び/または固相線温度及び/または相転移温度を決定するための、請求項9〜18のいずれか1つに記載の装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513934(P2009−513934A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518031(P2006−518031)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006830
【国際公開番号】WO2005/005945
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】