説明

溶融めっきのめっき粉末集塵装置

【課題】サポートロールによって剥離されためっき粉末の吸引率を向上し、かつ飛散するめっき粉末をも効果的に吸引することで、工程環境を改善し、もって、めっき鋼板の歩留り向上を図ることができるめっき粉末集塵装置を提供する。
【解決手段】めっき粉末捕集用の集塵フード2と、サポートロール11の開閉移動に伴い該フード2を同期移動させる連結アーム12とを供え、該集塵フード2の先端部は、めっき鋼板15に対し、外側に傾斜しており、また、該集塵フード2の先端部は、サポートロール11外周を覆ってサポートロール11から剥がれためっき粉末を吸引する第1の吸引口13aを有し、かつ該第1の吸引口13aで捕集しきれない飛散しためっき粉末を捕集する第2の吸引口13bを、該集塵フード2上面の先端部にそなえ、さらに、該第1の吸引口13aと該第2の吸引口13bとの間に仕切り板を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続溶融めっきラインにおいて、めっき浴上のサポートロールを通過時に飛散するめっき粉末を回収する溶融めっきのめっき粉末集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融Znめっき鋼板、溶融Al−Znめっき鋼板等は、その高い防錆性によって、主に建材、自動車、家電、電子機器等の分野に広く用いられている。
【0003】
かかる溶融めっき鋼板の製造に際しては、まず、冷延板等の鋼板を、スナウト、Zn等のめっき浴シンクロール、浴中サポートロールに通過させることにより、鋼板表面に溶融めっきを施す。ついで、めっき浴外に導き、ガスワイピングノズルにより、鋼板に付着している過剰の溶融めっきを取り除く。その後、浴上のサポートロールを通過させ、コイルに巻き取って製品となる。
上記のサポートロールは、後続工程のパスラインの保持および搬送中の鋼板の振動防止対策として配置されている。
【0004】
サポートロールを通過する際、ガスワイピングノズルにより、所定の目付け量に調整されたとはいえ、このめっきは未だ完全に固化していないため、このサポートロールとめっき鋼板との接触によりZn、Al等のめっき粉末が飛散する。そこで、特許文献1には、図1に示すような、サポートロール上に飛散防止としてのめっき粉末集塵フードが記載されている。なお、図中、1はサポートロール、2は集塵フード、3はめっき鋼板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−328213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した集塵フードは、サポートロールと独立して設置されているので、例えば、コイル繋ぎ点の幅上がり部の通過などによって、鋼板の厚みが変動した場合、それによってサポートロールの間隔が変動するため、これを考慮して近接して設置することができなかった。そのため、サポートロールによって剥離されためっき粉末の吸引率は、必ずしも良好とは言えなかった。また、前記した集塵フードで吸いきれなかっためっき粉末は、周囲に飛散し、鋼板近傍に落下した場合には、鋼板を傷つけ、歩留りの低下を招くという問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を有利に解決するもので、サポートロールによって剥離等されためっき粉末の吸引率を向上させ、かつ飛散しためっき粉末をも効果的に吸引して、溶融めっき鋼板の歩留りを向上させることができるめっき粉末集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)連続溶融めっきラインのめっき浴槽の上方に設置されたサポートロールから飛散するめっき粉末を捕集する集塵装置であって、該装置は、めっき粉末捕集用の集塵フードと、該サポートロールの開閉移動に伴い該フードを同期移動させる連結アームとを供え、該集塵フードの先端部は、めっき鋼板に対し、外側に傾斜しており、また、該集塵フードの先端部は、該サポートロール外周を覆って該サポートロールから剥がれためっき粉末を吸引する第1の吸引口を有し、かつ該第1の吸引口で捕集しきれない飛散しためっき粉末を捕集する第2の吸引口を、該集塵フード上面の先端部にそなえ、さらに、該第1の吸引口と該第2の吸引口との間に仕切り板を設けたことを特徴とするめっき粉末集塵装置。
【0009】
(2)前記集塵フードは、前記サポートロールから剥がれためっき粉末を吸引する第1の吸引口と飛散しためっき粉末を吸引する第2の吸引口に対し、それぞれ独立した2つの吸引系統を有していることを特徴とする前記(1)に記載のめっき粉末集塵設備。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サポートロールとめっき粉末集塵フードを同時に開閉するため、鋼板の厚みの変動に柔軟に対応することができる。また、サポートロールに対して吸引口を近接配置できるので、めっき粉末の吸引率が格段に向上する。さらに、上記の吸引口で吸引しきれなかっためっき粉末をも吸引することができる。そのため、歩留りの向上、安定した品質の鋼板が製造できるとともに、工程内環境も格段に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のサポートロールおよびめっき粉末集塵フードの側断面図である。
【図2】本発明に従うサポートロールおよびめっき粉末集塵フードの側断面図である。
【図3】本発明に従うめっき粉末集塵フードの正面図である。
【図4】鋼板の不良率を発明例と従来例とで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の解明経緯について説明する。
発明者らは、まず、集塵フードをサポートロールに近接する方法について検討した。この時、ただ近接しただけでは、鋼板の厚みが変わったときなどに、集塵フードとサポートロールとが接触し、サポートロールに傷が付いて、この傷が鋼板も傷つけるといった弊害が生じることが判明した。また、シーケンスによる同時駆動制御も機構が煩雑になり、設備の大きさ等からも、同期を取ることが困難であることが分かった。
【0013】
そこで、集塵フードとサポートロールとを連結することに想い到った。
図2、3に、本発明に従う溶融めっきのめっき粉末集塵装置の好適例を示す。図中、11はサポートロール、12は連結アーム、13は集塵フード、13aは第1の吸引口、13bは第2の吸引口、14は傾斜面、15はめっき後の鋼板、16、17は集塵口、18、19は集塵ホースである。同図に示すようにサポートロール11の軸に連結アーム12の一方を接続し、他方を集塵フード13に接続している。
【0014】
この連結によって、サポートロール11と集塵フード13とのギャップを大幅に縮めることが可能となり、第1の吸引口13aから吸引されるめっき粉末の量を格段に増加させることが可能となった。また、同時にコイル繋ぎ点の幅上がり時に発生するエッジ部とフード先端引掛けによる鋼板破断トラブルも解消した。
【0015】
ついで、集塵フードの鋼板側の上面に、次第にめっき粉が堆積し、その後落下して鋼板表面を傷つける等の問題が生じていることも分かった。
そこで、集塵フード13に傾斜面14を設けると共に第2の吸引口13bを設けた。すると、第1の吸引口13aによって捕集しきれなかっためっき粉末も吸引できるようになった。
【0016】
本発明において、サポートロール11は、従来公知のもので良いが、その軸部に連結アーム12を取り付ける。この連結アーム12は、サポートロール11と集塵フード13とを所望の距離の接続を維持し、サポートロール11と集塵フード13とが連動して動く動きを担保できるものであれば、形状材質等は特に制限はない。なお、サポートロール11と集塵フード13との距離についても、特に制限はないが、5mm程度とするのが望ましい。
【0017】
集塵フード13は、その先端部をめっき鋼板に対し、外側に傾斜させ、上面に第2の吸引口13bを設け、サポートロール11から剥離しためっき粉末をこの第2の吸引口13bで吸引する。
【0018】
上記の第2の吸引口13bから捕集しためっき粉末が、集塵フード13のサポートロール11側口に回り込んで、サポートロール11を傷つけるおそれを防止するために、第2の吸引口13bの下に仕切り板を取り付けることが必要である。
また、めっき粉末の吸引に際しては、1つの吸引系統で吸引することもできるが、図2に示したように、各吸引口に対してそれぞれ独立した2系統の吸引機構(16,17,18,19)とすることもできる。
このような構造とすることにより、従来と同じ吸引力でも、めっき粉末の収集能力が格段に向上した。なお、吸引力は装置の大きさ等に従って適宜調整すればよい。
【実施例】
【0019】
連続焼鈍後の冷延鋼板を、460℃の溶融Znめっき浴に浸漬し、上方に引き上げる際、ガスワイピングにより、目付け量を50g/m2に調整した後、図1および図2に示したサポートロールを通過させ、その後巻き取って製品とした。
その時のめっき(Zn)粉末吸引量を測定した。その結果、従来の集塵フードは、0.25kg/hrであったのに対し、本発明では、0.46kg/hrであった。
なお、めっき粉末吸引量の測定方法は、次のとおりである。
めっき粉末集塵装置のめっき粉末回収バックに溜まっためっき粉末量を一定期間(4日間)収集し、1時間当たりの収集量(kg)に換算して比較した。
【0020】
さらにその時の鋼板の不良率を、浴上サポートロールの場所で発生する不良に限って調査した。なお、不良率の測定方法は、次のとおりである。
一定期間の生産量に対するスプラッシュ欠陥による格落ち量の比率で不良率を調査した。その結果を図4に示す。
同図に示したように格段に、不良率が低下しているのが分かる。
なお、上述した実施例では、溶融Znめっき鋼板によるZn粉末集塵について記載したが、Zn粉末に限るものではなく、Al−Znめっき、Snめっき等各種金属または合金の溶融めっき時に発生するめっき粉末および溶融めっき後に発生する粉塵等、いずれも好適に集塵することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、溶融めっき鋼板の歩留りを格段に向上することができるため、高品質低価格な溶融めっき鋼板を提供できる。
【符号の説明】
【0022】
1 サポートロール
2 集塵フード
3 めっき鋼板
11 サポートロール
12 連結アーム
13 集塵フード
13a 第1の吸引口
13b 第2の吸引口
14 傾斜面
15 めっき後の鋼板
16,17 集塵口
18,19 集塵ホース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続溶融めっきラインのめっき浴槽の上方に設置されたサポートロールから飛散するめっき粉末を捕集する集塵装置であって、該装置は、めっき粉末捕集用の集塵フードと、該サポートロールの開閉移動に伴い該フードを同期移動させる連結アームとを供え、該集塵フードの先端部は、めっき鋼板に対し、外側に傾斜しており、また、該集塵フードの先端部は、該サポートロール外周を覆って該サポートロールから剥がれためっき粉末を吸引する第1の吸引口を有し、かつ該第1の吸引口で捕集しきれない飛散しためっき粉末を捕集する第2の吸引口を、該集塵フード上面の先端部にそなえ、さらに、該第1の吸引口と該第2の吸引口との間に仕切り板を設けたことを特徴とするめっき粉末集塵装置。
【請求項2】
前記集塵フードは、前記サポートロールから剥がれためっき粉末を吸引する第1の吸引口と飛散しためっき粉末を吸引する第2の吸引口に対し、それぞれ独立した2つの吸引系統を有していることを特徴とする請求項1に記載のめっき粉末集塵装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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