説明

溶融めっき浴中のロール支持装置

【課題】溶融めっき浴中で摩擦係数が小さく、軸の位置精度が高い状態で長期に安定してロールの使用ができる溶融めっき浴中のロール支持装置を得ること。
【解決手段】溶融めっき浴中に設けられるロール1と、ロール1のロール軸2を回転自在に軸支するころがり軸受3と、ころがり軸受3を支持するロール支持部材と、ロール軸2の外周を取り囲む壁部6aと、内周部をロール軸2に固定し外周側を摺接部として壁部6aに摺接させた中心部に開口が形成された円盤形状のシール部材4と、を有し、シール部材4の摺接部を溶融めっき浴中の静圧で摺接相手側に押し付けた溶融めっき浴中のロール支持装置であって、シール部材4は、耐熱性および柔軟性を有する布状金属繊維により構成し、また厚みが0.2mm以上5mm以下、外周と内周の差である幅が厚みの2倍以上、5倍以下であり、400℃以上700℃以下の温度範囲において伸びが2%以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼板の表面に連続的に溶融めっき処理を施す連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、鋼板を案内するために溶融めっき浴内に設けたロールを回転自在に支持する溶融めっき浴中のロール支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材のめっき設備、特に製鉄プロセスにおいて、鋼板表面にめっき皮膜を形成させる方法として、溶融金属中に鋼板を浸漬させる溶融めっき法が行われている。
【0003】
例えば、連続溶融亜鉛めっきラインでは、鋼板は熱処理炉で熱処理された後、溶融亜鉛浴中に浸漬され、浴から引き出した後にエアワイピング設備によりめっき付着量を調整する。
【0004】
このようにして得られた溶融めっき鋼板は表面が美麗で、しかも耐食性も優れているため、広く実用に供されている。
【0005】
鋼板は、熱処理炉内の搬送ロールから溶融亜鉛めっき浴に導かれ、めっき浴内に設けたシンクロールにより折り返して、表面に溶融亜鉛を付着させた鋼板をめっき浴外に取り出す。鋼板がめっき浴から抜け出る直前には、1対のサポートロールを設け、シンクロール部で生じた反りの矯正及び通板の安定性の確保をはかっている。
【0006】
上述のように、高温の溶融亜鉛めっき浴中に浸漬された状態で使用するシンクロール及びサポートロールの支持装置は、シンクロール及びサポートロールをロール支持部材であるハンガーに固定したすべり軸受を介して、回転自在に支持している。
【0007】
また、溶融めっき浴中の他のロール支持装置として、特許文献1では、軸受部にころがり軸受を採用し、上記転がり軸受設置部分への溶融金属の浸入を防止する耐熱材製のシール材を設け、該シール材をばねにより押し付けるように構成したロール支持装置を提案している。この特許文献1のロール支持装置は、中空ロールを支持軸の外周に外嵌し、該支持軸と中空ロールとの間にころがり軸受を配置した構成としている。また、支持軸の外周には、ころがり軸受よりも外端側に支持軸スリーブを外嵌し、前記中空ロールと一体に回転するシール部材保持ケースに前記支持軸スリーブに外嵌する円盤状のシール部材を2か所に配置している。一か所に配置のシール部材はばねによりころがり軸受方向に押し付け、前記中空ロールの回転に伴いシール部材の内周縁を支持軸スリーブの外周面に摺接させ、また他の個所に配置のシール部材はばねにより前記ころがり軸受とは反対側に押し付けられ、シール部材の外側面を支持軸スリーブのフランジ面に摺接させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−258521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の溶融めっき浴中のすべり軸受では、軸と軸受材質との間の摩擦係数が大きいためロールが円滑に回転しない、軸受と軸との隙間が大きいため軸の位置精度が低いという問題があった。
【0010】
また、特許文献1に示されているシール方法は、ばねによりシール材が圧縮変形されるため、シール部材の押し付け相手材である前記支持軸スリーブのフランジが微小に変形した場合に当該変形に伴うシール部材との間に隙間が形成され、前記ローラの回転に伴う前記隙間の変動速度に追従できない。このため、前記隙間部からめっき金属が浸入する問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、溶融めっき浴中で摩擦係数が小さく、軸の位置精度が高い状態で長期に安定してロールを使用することができる溶融めっき浴中のロール支持装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来の溶融めっき浴中でのロール支持装置の問題に対して、本発明者は種々検討した結果、従来のようにシール材を相手材に押し付けてシールする場合、シール材は圧縮変形となり、熱変形または製作精度の問題で軸の回転方向に隙間が微小に生じかつ回転により高速に変化すると、シール材の変形速度が回転速度に間に合わず、隙間から溶融金属が漏れてしまう。
【0013】
本発明者は、この問題に対し、柔軟性に富む織布または不織布状シール材を溶融金属の静圧により相手材に押し付けてシールすることで、微細な隙間が高速に変化した際も、シール材が変形に追従可能で、隙間をシールすることができることを見出した。
【0014】
本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)溶融めっき浴中に設けられるロールのロール軸を回転自在に軸支するころがり軸受と、前記ころがり軸受を支持するロール支持部材と、前記ロール軸の外周を取り囲む壁部と、内周部を前記ロール軸に固定し外周側を摺接部として前記壁部に摺接させあるいは外周部を前記壁部に固定し内周側を摺接部として前記ロール軸に摺接させる中心部に開口が形成された円盤形状のシール部材と、を有し、前記シール部材の摺接部を溶融めっき浴中の静圧で摺接相手側に押し付けた溶融めっき浴中のロール支持装置であって、前記シール部材は、耐熱性および柔軟性を有する布状金属繊維により構成したことを特徴とする溶融めっき浴中のロール支持装置。
(2)前記シール部材は、厚みが0.2mm以上5mm以下、外周と内周の差である幅が厚みの2倍以上、5倍以下であり、400℃以上700℃以下の温度範囲において伸びが2%以上である織布または不織布状の金属繊維により構成したことを特徴とする(1)に記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
(3)前記金属繊維の直径が20μm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
(4)前記金属繊維がステンレスであることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
(5)前記金属繊維の表面にセラミックスをコーティングしたことを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
【0015】
また、上記した構成において、以下の具体的な構成を備えることができる。
(6)前記ころがり軸受は前記壁部を隔壁とした封止構造の軸受室内に配置されていることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
(7)前記シール部材は、内周部を前記ロール軸に固定した構成において、外周側の摺接部を直線状あるいは溶融めっき側に向けてロール軸に沿って折り曲げた構造としたことを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
(8)前記シール部材の摺接部が摺接する摺接相手側である前記壁部は、前記摺接部の摺接端から溶融めっき側を径方向外方に向かうに従って内径を大きくした傾斜面に形成したことを特徴とする(7)に記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
(9)前記シール部材は内周部を前記ロール軸に固定した構成において、外周側の摺接部を溶融めっき側に向けてロール軸に沿って折り曲げ、さらに折り曲げ端を中心側にカールさせ、前記シール部材の摺接部が摺接する摺接相手側である前記壁部は、前記摺接部が嵌合する凹溝部を有することを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
(10)前記シール部材は、外周部を前記壁部に固定した構成において、内周側の摺接部を前記ころがり軸受側に向けてロール軸に沿って折り曲げ、前記シール部材の摺接部が摺接する摺接相手側である前記ロール軸は、該ロール軸の外装される筒状で、ころがり軸受側が閉ざされた差し込み筒部を有し、該摺接部をこの差し込み筒部差し込んでその内周面に当接させたことを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の溶融金属めっき浴中のロール支持装置では、溶融めっき浴中で摩擦係数が小さく、軸の位置精度が高い状態で長期に安定してロールを使用することができる。
【0017】
すなわち、本発明に係る鋼板の溶融めっき方法によれば、ロールと鋼板のスリップによる鋼板疵を防止して鋼板品質の向上を図ることができ、その産業上利用性は極めて甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による溶融めっき浴中のロール支持装置の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態を示す要部断面図である。
【図3】第2の実施の形態を示す要部断面図である。
【図4】第3の実施の形態を示す要部断面図である。
【図5】第4の実施の形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を図面に示す実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明による溶融めっき浴中のロール支持装置の実施の形態を示す概略構成図で、ころがり軸受を設けた軸受室の手前にシール部材を設けたものである。
【0021】
図1において、ロール1は、ロール胴部1aの軸方向両端部にロール外径よりも小径のロール軸2(片側のみ図示)を設けた構成である。3はころがり軸受で、内輪がロール軸2に嵌合固定され、外輪が後記する軸受室6の内周に嵌合固定される。4は中心部に円形の開口が形成された円筒形状(円盤状)のシール部材、5はロール支持部材をなす例えばアーム状のハンガーで、ロール1の軸方向両端部に設けられている。6はハンガー5の先端部に設けられた軸受室で、ロール胴部1a側に面して隔壁部6aが形成され、隔壁部6aにより軸受室6内への溶融めっき浴中の溶融金属の浸入を防ぐ封止構造に形成されている。本実施の形態ではロール胴部1a側に面した隔壁部6aにロール軸2が差し込まれる開口6bが形成されている。7はロール軸2の軸方向途中に設けられた円筒状のシール固定ディスクで、ロール軸2の外径よりも大径でロール胴部1aの外径よりも小径の外径に形成され、隔壁部6aの開口6bに対応して配置される。なお、シール固定ディスク7はロール軸2と例えば一体に形成され、その間から溶融金属が浸透することはない。なお、ロール胴部1a、ロール軸2、開口6b、軸受室6、シール固定ディスク7の中心軸はそれぞれ同軸としている。
【0022】
本発明に用いられるシール部材は、溶融金属に対し耐食性に優れ、柔軟性を有する金属繊維を織った織物または不織布にて構成し、シール部材が溶融金属中で静圧を受け弾性変形し隙間をなくすため溶融金属の浸入を防止できるようにしている。金属繊維の直径としては20μm以下とすることが好ましい。これは直径が20μmよりも大きいと金属繊維の隙間から溶融金属が浸入するためである。
【0023】
また、本発明に使用されるシール部材4をなす金属繊維の表面には、セラミックスのコーティングを行うこと、金属繊維としてはステンレスを用いることが好ましい。セラミックスおよびステンレスは溶融金属に対する耐食性が優れるためシール部材として耐久性が高くなるためである。
【0024】
セラミックスとしては、ZrO,SiO,Al,CrN,TiC,TiN,ZrC,ZrN,TiCN,TiAlN,SiC,Si34またはSiAlNが、ステンレスとしてはSUS316Lが好ましい。
【0025】
上記セラミックスおよびSUS316Lは溶融金属に対する耐食性が優れるためシール部材として耐久性が高くなるためである。
【0026】
本発明による溶融めっき浴中のロール支持装置は、種々の金属および合金めっきに適用できる。
【0027】
例えば、Znめっき、Alめっき、Zn−Al合金めっき、Zn−Fe合金めっきをはじめ、Al−Mg−Zn合金めっき等を行うことができる。
【0028】
第1の実施の形態
図2は、本発明による溶融めっき浴中のロール支持装置の第1の実施の形態を示し、シール部分を拡大した断面図である。
【0029】
本実施の形態は、中心部に円形の開口が形成された円盤状のシール部材4を全体に平板形状とした(直線構造)もので、シール部材4の内周端部4aをシール固定ディスク7に固定して、ロール軸2と一体に回転する。なお、固定ディスク7の外周と開口6bの内周との間には隙間が形成される。
【0030】
軸受室6の隔壁部6aは、開口6bの周囲を転がり軸受3側に窪んだフランジ部6cに形成し、このフランジ部6cの表面に直線構造のシール部材4の外側面4bを当接させている。これはシール部材4が溶融金属中で静圧を受け変形する際に、シール部材4の側面4bがフランジ部6cに押し付けられることで、その間の隙間をなくすようにするためである。
【0031】
また、ロール軸2の周辺で遠心力を受けた溶融金属が滞留して溶融金属の流動による動圧がシール部材2に加わるのを防ぐため、軸受室6の隔壁部6aには、フランジ部6cの外周端からロール胴部1a側に向けて開口した傾斜内周部6dが形成され、この傾斜内周部6dはロール胴部1aの径方向外方に向かうに従って内径が大きくなる傾斜形状としている。
【0032】
本実施の形態において、シール部材の厚みは0.2mm以上、5mm以下とすることが好ましい。シール部材の厚みが0.2mmよりも薄いと溶融金属がシール部材を構成する金属繊維間に浸透し漏れてしまう場合があり、5mmよりも厚いと静圧により変形し難いためシールできない。
【0033】
また、シール部材の幅(外径−内径)は厚みの2倍以上5倍以下であることが好ましい。シール部材の幅が、厚みの2倍よりも小さいと静圧により変形し難いためシールできない。5倍よりも大きいと軸の回転により座屈し隙間が生じ易くなりシールできなくなる。
【0034】
シール部材は、400℃以上700℃以下の温度範囲において伸びが2%以上であることが好ましい。伸びが2%よりも小さいとシール部材の変形量が少ないためシールできない。
【0035】
第2の実施の形態
図3は本発明の第2の実施の形態を示す。
【0036】
本実施の形態におけるシール部材4は、外周部側をロール胴部1a側に折り曲げて全体に凹部形状とし、半径方向の断面において逆L字形状の構造としている。
【0037】
逆L字形状のシール部材4の内周縁部4aはシール固定ディスク7に固定され、シール部材4がロール軸2と一体に回転する。
【0038】
図2に示す第1の実施形態では、隔壁部6aの開口6bの周囲にフランジ部6cを形成し、このフランジ部6cの外周端から傾斜内周部6dを形成しているが、本実施形態では、フランジ部6cの外周端から水平方向に内周壁部6eを形成し、内周壁部6eの先端から傾斜内周部6dを形成している。そして、この内周壁部6eにシール部材4の外周部側の折り曲げ端部である接触部4cを接触させている。
【0039】
このように構成することで、シール部材4が溶融金属中で静圧を受け変形する際に、シール部材4の接触部4cが内周壁部6eに径方向外方に向けて押し付けられ、その間の隙間をなくすことができる。また、傾斜内周部6dの効果は第1の実施の形態で説明したのと同様である。また、シール部材4の側面4bもフランジ部6cに接触するため、シール部材4は内外周の2点で隔壁部6aに接触してシールすることになる。
【0040】
第3の実施の形態
図4は本発明の第3の実施の形態を示す。
【0041】
本実施の形態におけるシール部材4は、外周端部を全体的にロール胴部1a側に折り曲げ、さらに折り曲げ先端部を中心側にカールさせ、半径方向断面において逆J字形状の構造としている。逆J字形状のシール部材4の内周縁部4aをシール固定ディスク7に固定し、シール部材4をロール軸2と一体に回転させる。逆J字形状の接触部4dに対応して、隔壁部6aの内周縁部には、凹溝部6fが形成され、この凹溝部6fにシール部材4の接触部4dを嵌合させ、凹溝部6fの内周面6gにシール部材4の接触部4dの外周側側面を接触させている。
【0042】
シール部材4の接触部4dは内周側にカールしたJ字形状としているため、シール部材4が溶融金属中で静圧を受け変形する際に、該静圧を接触部4dの内周側面側が受け、J字形状の接触部4dを拡げる方向に静圧が作用し、シール部材4の接触部4dの外周側側面を凹溝部6fの内周面に押し付けてシールする。その際、凹溝部6fの底面に接触部4dの外周端部が面接触状態で押し付けられるだけでなく、凹溝部6fの開口内縁部にも接触部4dの先端部4eと内周端部4f側が接触し、径方向においてさらに2か所でのシールが行われる。
【0043】
第4の実施の形態
図5は本発明の第4の実施の形態を示す。
【0044】
本実施の形態のシール部材4は、外周端部4gを隔壁部6aの開口6bの内周部に固定し、内周部4a側をころがり軸受3側に向けて折り曲げ、半径方向断面においてL字形状の構造としている。
【0045】
ロール軸2の外周部には、ロール胴部1a側に開口し、ロール軸2の外周面と間に径方向においてシール部材4の折り曲げ内周端部が差し込まれる隙間を有するように差し込み筒部8が固定されており、この差し込み筒部8の転がり軸受3側は閉じられていて、溶融金属が軸受室6内に入り込むことがないようにしている。
【0046】
本実施の形態において、シール部材4が溶融金属中で静圧を受け変形する際に、シール部材4の先端折曲げ部4hは、外周面側が差し込み筒部8の内周壁面8aに押し付けられてその間の隙間を小さくし、シールが行われる。
【0047】
なお、上記した各実施の形態は、いずれも一側面のみに開口を有する軸受室にころがり軸受を配置した構成を例にしているが本発明はこの構成に限定されるものではなく、軸受室の軸方向両側に開口を有し、両開口にロール軸を通す構成であってもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0049】
シール部材における接触部分の構造は図2から図5に示す構造を採用し、金属繊維を実施例1は直径50μm、それ以外は直径10μmのSUS304、SUS316Lとし、各種セラミックコーティングを施した。織物または不織布状のシール部材の伸びはいずれも400℃以上700℃以下の温度範囲において3%であった。
【0050】
本実施例(1−16)および比較例(1,2)を実機ラインのサポートロール支持装置(ロール直径300mm、軸部直径100m、浴組成 Zn、浴温度460℃、通板速度100mpm)にて使用した結果を表1に示した。
【0051】
【表1】




【0052】
実験の結果、10日以内で使用できなくなったものは×、10日〜30日使用できたものは○、31日以上使用できたものは◎とした。
【0053】
実施例1は金属繊維の直径が大きいこと、コーティングをしていないことから使用日数は15日と短めであった。実施例13、16は、コーティングをしていないことから使用日数は20日と短めであった。
【0054】
比較例1は、シール部材にセラミック繊維を使用したものを用意した。しかし、比較例1はセラミック繊維のシール部材では伸び量が小さいため、溶融Znをシールすることができず、浸漬開始後3時間でZnがころがり軸受部に浸入し使用不可能となった。
【0055】
比較例2は、特許文献1記載のばね機構により耐熱材を押し付ける構造としたものを用意した。しかし、ばね機構により耐熱材を圧縮変形させているため、回転に伴う変形に追従できず、浸漬後2時間でZnがころがり軸受部に浸入し使用不可能となった。
【0056】
本実施例(1−16)はいずれも10日以上使用することができ耐久性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0057】
1 ロール
1a ロール胴部
2 ロール軸
3 ころがり軸受
4 シール部材
4a 内周縁部
4b 側面
4c 接触部
4d 接触部
4e 先端部
4f 内周端部
4g 外周端部
4h 先端折曲げ部
5 ハンガー
6 軸受室
6a 隔壁部
6b 開口
6c フランジ部
6d 傾斜内周部
6e 内周壁部
6f 凹溝部
6g 内周面
7 シール固定ディスク
8 差し込み筒部
8a 内周壁面





【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融めっき浴中に設けられるロールのロール軸を回転自在に軸支するころがり軸受と、前記ころがり軸受を支持するロール支持部材と、前記ロール軸の外周を取り囲む壁部と、内周部を前記ロール軸に固定し外周側を摺接部として前記壁部に摺接させあるいは外周部を前記壁部に固定し内周側を摺接部として前記ロール軸に摺接させる中心部に開口が形成された円盤形状のシール部材と、を有し、前記シール部材の摺接部を溶融めっき浴中の静圧で摺接相手側に押し付けた溶融めっき浴中のロール支持装置であって、
前記シール部材は、耐熱性および柔軟性を有する布状金属繊維により構成したことを特徴とする溶融めっき浴中のロール支持装置。
【請求項2】
前記シール部材は、厚みが0.2mm以上5mm以下、外周と内周の差である幅が厚みの2倍以上、5倍以下であり、400℃以上700℃以下の温度範囲において伸びが2%以上である織布または不織布状の金属繊維により構成したことを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
【請求項3】
前記金属繊維の直径が20μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
【請求項4】
前記金属繊維がステンレスであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。
【請求項5】
前記金属繊維の表面にセラミックスをコーティングしたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の溶融めっき浴中のロール支持装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−196095(P2010−196095A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40424(P2009−40424)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】