説明

溶融アグロメレーションを用いてアグロメレートを製造する方法

アグロメレート化物質を製造するための溶融アグロメレーションは、適当な温度において溶融することができるビヒクル、活性化合物および充填剤としての二酸化ケイ素を用いて実施される。溶融アグロメレーションにおける充填剤としての二酸化ケイ素の使用は、充填剤に対して高い比率の溶融物を使用することができるという利点を有する。上記工程により製造されるアグロメレートは、一般的な装置を用いて容易に錠剤に圧縮できるものであるということが示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤としての微粒子の二酸化ケイ素、溶解可能なビヒクル(vehicle)および薬学的に活性な化合物を含んでなるアグロメレート化調合物(agglomerated compositions)に関する。本発明のアグロメレート化調合物は、経口投与のために固体の薬剤を製造するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
医薬領域において、1つまたは2つ以上の活性化合物および種々の賦形剤からなる医薬調合物を製造することはよく行われることである。上記医薬調合物を製造する1つの理由は、医薬調合物の摂取後に活性化合物のアベイラビリティー(availability)を操作することにある。
【0003】
経口投与のための医薬調合物の製造において、活性化合物を錠剤に圧縮またはカプセルに充填した形態で提供するために、活性化合物はしばしばアグロメレート化調合物に組み込まれる。
【0004】
活性化合物を錠剤に圧縮した形態で提供することに加えて、アグロメレート(agglomerates)は、上記顆粒を含む医薬調合物の摂取後に、活性化合物の所望のアベイラビリティーを確保するために設計することもできる。
【0005】
造粒のために一般的に用いられる技術の1つは湿式造粒法であり、顆粒剤を製造するために、機械の影響下で活性化合物を含む粉末を液体、通常は水性の液体と混合させる。湿式造粒法で製造された顆粒剤は通常、使用する前に乾燥させる。
【0006】
溶融アグロメレーション(Melt agglomeration)は、
・ 活性化合物、充填剤、任意の賦形剤およびビヒクルを、ビヒクルの溶融範囲内またはそれ以上の温度において撹拌しながら混合状態にさせること
・ 上記混合状態の活性化合物を固体の粒子として上記ビヒクル内に溶解または分散させること
・ そしてそれによってアグロメレートが形成すること
・ 引き続き、アグロメレートを撹拌しながら冷却させ、またはアグロメレートをトレイまたはそれと同等のものの上に広げ、それにより上記ビヒクルが凝固すること、
を含んでなる、1つまたは2つ以上の活性化合物、充填剤および任意の賦形剤を、常温(ambient temperatures)以上の融点を有する薬学的に許容されるビヒクルとアグロメレート化させるための技術である。
【0007】
溶融アグロメレーションの1つの方法は、薬学的に許容されるビヒクルの溶融、1つまたは2つ以上の活性化合物および任意の賦形剤の溶融したビヒクルにおける溶解または分散、およびこのように製造した混合物の微粒子状物質、充填剤への堆積(deposition)によって実施され、それに続いて粒子がお互いに付着してアグロメレートを形成する。もう1つの方法として、全ての成分を常温で混合し、引き続いてビヒクルが溶融するビヒクルの融点以上の温度へ加熱することにより、アグロメレートが形成する。これらの方法の組み合わせおよびバリエーションは、当業者に公知である。従って、溶融アグロメレーションは、装置の操作をほとんど含まない、強力なおよびよく制御できる工程であるので、活性化合物の医薬製剤の製造における従来的な工程となっている。溶融アグロメレートは、上述のような溶融アグロメレーション工程の生成物である。
【0008】
特許文献1には、親水性セルロースエーテルポリマーまたはその混合物、脂質成分およびエチレンオキシドポリマーおよびそれらの混合物からなり30°C以上の溶融範囲を有する造粒用媒体(granulating medium)、および治療において活性な薬剤を含んでなる溶融造粒法が開示されている。
【0009】
特許文献2には、粉末状の低温溶融する油状物質および粉末状の薬剤の溶融造粒法による顆粒状調合剤、微細に粉末化された疎水性および吸油性の高分子化合物で被覆された上記粒子の製造方法が開示されている。微細に粉末化された疎水性および吸油性の高分子化合物の例としては、エチルセルロースのようなセルロース誘導体が挙げられている。得られた顆粒剤は、加熱および湿った条件下では固まらない。さらに薬剤の不快な味が覆い隠される。
【0010】
特許文献3には、ステロールエステルからなる固体の経口用の剤形を製造する方法が開示されている。ステロールエステル吸着質は、界面活性剤をステロールエステルの溶融物に添加し、引き続き100〜350平方メートル/グラムの表面積を有する支持体を、流動可能な粉末を形成するのに十分な量で添加することにより形成される。支持体の例としては、アルミノケイ酸マグネシウム、リン酸三カルシウムおよび二酸化ケイ素を挙げることができる。さらに、支持体としてアルミノケイ酸マグネシウムまたは二酸化ケイ素を使用すると、自由流動性の粉末の形態で吸着質が得られるのとは対照的に、支持体としてリン酸三カルシウムを使用することにより、アグロメレートの形態で吸着質が得られることが開示されている。上記の開示された工程は、使用する界面活性剤が常温では液体なために溶融しないので、溶融アグロメレーションではない。
【0011】
特許文献4には、1つまたは2つ以上の親水性セルロースエーテルポリマー、親水性溶融結合剤(hydrophilic melt binder)および治療における有効成分からなる溶融造粒された調合物が開示されている。開示される造粒調合物は、固体の放出が改良された剤形の製造に有用である。
【0012】
特許文献5には、活性化合物を油状物に溶解させ、引き続きこの混合物を二酸化ケイ素と混合させて、上記混合物をスチールテーブルの上に広げ、冷却し、そして顆粒に粉砕する、顆粒剤の製造方法が開示されている。
【0013】
特許文献6では、活性化合物を脂肪酸モノグリセリドまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに溶解させ、そして場合により液体溶液を、多孔性無機物質、例えばケイ酸アルミン酸マグネシウムに吸着させる。開示される工程は、ビヒクルとして使用される油状物が常温で液体であるため溶融しないので、溶融アグロメレーションではない。
【0014】
特許文献7には、二酸化ケイ素が、流動剤(flowing agent)または流動促進剤として粒外(extragranularly)に使用されているのと同様に、ルースニング剤(loosening agent)または錠剤崩壊剤として粒内に使用されている溶融造粒体が開示されている。二酸化ケイ素の粒内量は、顆粒剤の3重量%未満である。
【0015】
特許文献8および特許文献9には、水中油乳剤を親水性および疎水性充填剤の混合物上で固体化させる乾燥乳剤の製造方法が開示されている。これは活性化合物を乳剤の水性部分に溶解させるので、本明細書において定義される溶融アグロメレーション工程ではない。
【0016】
特許文献1には、粒外の流動促進剤としての二酸化ケイ素の使用が開示されている。
【0017】
活性化合物、溶融性ビヒクルおよびケイ酸塩を使用する溶融造粒法がいくつかの文献、例えば非特許文献1および非特許文献2に開示されている。
【特許文献1】米国特許(US)第5,403,593号明細書。
【特許文献2】欧州特許(EP-A1)第0 841 062号明細書。
【特許文献3】欧州特許(EP-A1)第0 985 411号明細書。
【特許文献4】米国特許(US-A1)第2002/0160050号明細書。
【特許文献5】特許出願公開(WO-A2)第01/41733号明細書。
【特許文献6】欧州特許(EP-A2)第448 091号明細書。
【特許文献7】英国特許(GB)第1442951号明細書。
【特許文献8】フランス特許(FR)第2 594 693号明細書。
【特許文献9】フランス特許(FR)第2 648 708号明細書。
【非特許文献1】Gupta et al. in Pharm. Dev. Technol. 2001, 6, 563-572
【非特許文献2】Gupta et al. in Pharm. Dev. Technol. 2002, 7, 103-112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
水溶性の低い薬剤の経口での生物学的利用能を増大させることは、水溶性の高い薬剤を徐放形態で提供することと同様に、いくつかの薬剤開発における最も難しい側面を残しており、溶融アグロメレーション技術のさらなる発展は、これらの面に対して有益な手段を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、以下のa) 〜 c):
a) 1つまたは2つ以上の常温より高い溶融温度を有する薬学的に許容されるビヒクル;
b) 1つまたは2つ以上の薬学的活性化合物;
c) 微粒子状の二酸化ケイ素(particular silicon dioxide)からなる充填剤、
を含んでなる、新しいおよび有用なアグロメレート化調合物を提供する。
【0020】
驚くべきことに、本発明のアグロメレート化調合物が、高量のビヒクルおよび/またはその中に溶解または分散させて活性化合物を有する媒体を含むことができることが見出された。
【0021】
この驚くべき実現は、本発明のアグロメレート化調合物を用いて製造された錠剤またはカプセル剤のような高量のビヒクルおよび/または活性化合物を有する経口摂取のための医薬調合物を製造することができるという利点を提供する。あるいは、以下のように消費者による認容を改善させ、そして製造者における賦形剤、錠剤添加剤、コーティング等の消費を減少させながら、より小さい錠剤を製造することができる。さらに活性化合物の生物学的利用能を改善するために、高量のビヒクルを医薬調合物に組み入れることができる。
【0022】
さらに本発明のアグロメレート化調合物は、容易に錠剤に圧縮することができる。驚くべきことに、充填剤として二酸化ケイ素を用いる溶融アグロメレーションは、欧州特許(EP)第 985 411号明細書が、ステロールエステルを溶融させ、引き続き二酸化ケイ素の支持体に上記溶融物をコーティングすることにより、自由流動性粉末が形成し、アグロメレートは形成しないことを開示した時からアグロメレートを提供する。
【0023】
もう1つの態様において本発明は、アグロメレート化調合物の製造方法に関する。
【0024】
本明細書において、「溶融アグロメレーション」という語句は、場合により活性化合物を含むビヒクルの溶融物を微粒子状の充填剤物質に堆積させて、アグロメレートを形成させることができるという物質の製造工程に対して使用される。上記工程は、他の語句、例えば「溶融造粒」のもとに、公知の文献中においても存在する。
【0025】
「ビヒクル」という語句は、溶融状態において本発明活性化合物のための溶剤または分散媒体として機能する化合物またはそれらの化合物の混合物を意味する。溶融アグロメレーションにおいて、ビヒクルはまた、アグロメレートの形成を可能にするための、異なる粒子間の結合剤としても役立つ。
【0026】
「充填剤」という語句は、場合によりその中に溶解または分散する活性化合物を含む溶融ビヒクルが堆積する、微粒子状の不活性物質を意味する。
【0027】
「不活性」という語句は、当該物質が、その製造および保管の間に適用される条件下において、混合物の他の成分とのいずれの化学反応にも参加しないということを意味する。
【0028】
「アグロメレート」という語句は、通常の意味、すなわちアグロメレート化された主要な粒子からなる物質の意味で使用される。通常、活性化合物を含んでなるアグロメレートは、これらが医薬調合物に加工される前に製造されるのが好ましい。アグロメレートは、散剤と比較して、その取り扱い中でのダスティング(dusting)の少なさ、優れた流動性および種々の成分が分離しないような混合状態を固定できることのようないくつかの利点を提供する。
【0029】
本明細書において使用される場合には、「粒度分布」はシンパテック社製へロス(Sympatec Helos)装置における分散圧力0.2バールでのレーザー回折により測定されるような等価な球径の量の分布を意味する。同様に、「メジアン粒度」は上記粒度分布のメジアンを意味する。
【0030】
二酸化ケイ素は、いくつかの公知の使用方法を有する、薬学的に使用するための良く知られた化合物である。二酸化ケイ素の薬学的な使用方法についてはよく認知されている「Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rded. 2000, Published by the American Pharmaceutical Association, 2215 Constitution Avenue, NW Washington, DC 20037-2985 USA and the Pharmaceutical Press, 1 Lamberth High Street, London, UK」に、吸着剤、固化防止剤;乳剤安定剤;流動促進剤;懸濁剤;錠剤崩壊剤;熱安定化剤;増粘剤として記載されている。二酸化ケイ素は医薬領域内で広く使用されているにもかかわらず、溶融アグロメレーション工程における充填剤としての使用は新規である。
【0031】
驚くべきことに、二酸化ケイ素を充填剤として有する溶融アグロメレートは、医薬調合物を製造するために使用することができ、なぜなら二酸化ケイ素は胃腸管において分解されず、粘性ゲルを形成することができるため、アグロメレートに含まれる活性化合物が十分に速い速度で放出されないと期待されるからである。
【0032】
溶融アグロメレーションにおいては、たとえいくつかのビヒクルおよび活性化合物が充填剤に吸着し、物質の内部に局在化したとしても、溶融したビヒクルおよび活性化合物を含んでなる液体混合物の相当の部分が充填剤の表面に堆積し、それは常温までの冷却の間に行われる固体化によって恒久的に局在化すると考えられる。
【0033】
これは、液体が物質上に堆積し、物質において主として完全に核等に吸着される吸着工程とは対照的である。
【0034】
本発明において使用される二酸化ケイ素は、原則的には、いずれの微粒子状で薬学的に許容される二酸化ケイ素であってもよい。
【0035】
通常、小さい粒子は質量に対する表面積の高い比率を有し、従って、小さい粒子は、通常質量単位あたりの高いビヒクル量を維持することができるため、比較的小さい粒度を有する充填材を使用するのが好ましい。しかし、粒度がとても小さい場合には、溶融アグロメレーション工程は制御するのが難しい。
【0036】
本発明において、微粒子状の二酸化ケイ素の粒度は、広い範囲内で選択することができる。本発明においては、2-400 μmの範囲内、好ましくは5-250 μmの範囲内、さらに好ましくは10-200の範囲内、さらに好ましくは10-100 μmの範囲内および最も好ましくは20-30 μmの範囲内のメジアン粒度を有する二酸化ケイ素素材を使用することができる。
【0037】
本発明において充填剤として使用することができる、市販されている二酸化ケイ素製品の例としては、J.M. Huber社 (Hamina, Finland) から入手できるZeofree 5161A、Zeofree 5162、Zeofree 5175AおよびZeopharm 80;Deguss社 (Frankfurt am Main, Germany)から入手できるAeroperl 300、Sipernat 22、Sipernat 160PQ、Sipernat 700およびSipernat 2200;およびPPG Industries社 (Pittsburgh, PA, USA) から入手できるFlo-Gard FFDが挙げられる。
【0038】
本発明に使用されるビヒクルは、原則的には室温(25°)で半固体または固体であり、常温以上の温度で溶融することができる、いずれの不活性な薬学的に許容される化合物であってもよい。
【0039】
ビヒクルの適当な溶融温度は、37〜200°Cの範囲内、好ましくは40〜150°Cの範囲内、さらに好ましくは50〜120°Cの範囲内、そして最も好ましくは50〜100°Cの範囲内である。
【0040】
本発明のビヒクルの例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのエステル、ワックス(waxes)、グリセリド、脂肪酸アルコール、脂肪酸、糖アルコール、ビタミンEおよびビタミンEの誘導体が挙げられる。
【0041】
上記ビヒクルはさらに、2つ以上のビヒクルの混合物であってもよい。
【0042】
水性媒体中の上記ビヒクルおよび/またはビヒクルおよび1つまたは複数の活性化合物の混合物の溶解は、特定の化合物および特定の水性媒体の特性に依存して速いまたは遅い。「速いまたは遅い」の語句が、上記ビヒクルおよび/またはビヒクルおよび1つまたは複数の活性化合物の混合物の目的とする使用方法に関連することは理解されるだろう。特定のビヒクルおよび/またはビヒクルおよび1つまたは複数の活性化合物の混合物が、与えられた水性媒体に速くまたは遅く溶解するかを、一般的な知識を用いて、およびありきたりの実験を実施することにより測定することは、当業者における技術の範囲内である。
【0043】
活性化合物の放出は、特定の選択したビヒクルにより強く影響される。従って、高速で溶解するビヒクルが選択されると、おそらくビヒクルは速く溶解し、それによって活性化合物を放出するので、アグロメレートが水性の環境に分散される時に、活性化合物はアグロメレートから速く放出される。低速で溶解するビヒクルが選択されると、おそらくアグロメレートは実質的に完全な状態でとどまり、活性化合物は主に、顆粒の表面から拡散および溶解により放出されるので、活性化合物はアグロメレートからよりゆっくりと放出される。水における中程度の溶解特性を有するビヒクルを選択することにより、活性化合物の中程度の放出速度を有するアグロメレートが得られる。
【0044】
与えられたビヒクルおよび活性化合物の配合物の放出速度は、上記のような公知であるありきたりの実験を用いて容易に測定することができる。
【0045】
原則として、上記活性化合物は、医薬領域内で有利である生物学的な活性を有し、化合物がその活性を発揮できる、または胃腸管から吸収されることができる、いずれの化合物であってもよい。従って、本発明において活性化合物は、身体または精神の状態の治療、予防または緩和に使用することができる活性化合物でよく、またはさらにビタミンのようなその受容者の栄養状態に対して有益な効果を有する化合物であってもよい。さらに本発明において、上記活性化合物は2つ以上の活性化合物の混合物であってもよい。
【0046】
活性化合物の例としては、以下:パラセタモール、メトプロロール、テオフィリン、アシクロビル、アテノロール、シメチジン、ラニチジン、アトバクオン、カルバマゼピン、ダナゾール、グリベンクラミド、グリセオフルビン、ケトコナゾール、トログリタゾン、クロロチアジド、フロセミド、サイクロスポリンAおよびイトラコナゾールのような有機分子および塩が挙げられる。活性化合物のその他の例は、以下:塩化カリウムのようなカリウム塩;炭酸リチウム、クエン酸リチウムおよび硫酸リチウムのようなリチウム塩;および硫酸鉄、コハク酸鉄、グルコン酸鉄、フマル酸鉄および酒石酸鉄のような鉄の塩のような無機分子および塩である。
【0047】
上記活性化合物は、溶融されたビヒクルにおいて溶解または分散することができ、従って、混合物の冷却および固体化に応じて、ビヒクルと固溶体または固体分散体を形成することができる。
【0048】
従って、与えられた活性化合物のために、特定の活性化合物に関して所望の溶解または分散特性を有するビヒクルが選択されるべきである。与えられた媒体が、与えられた活性化合物に関して所望の特性を有するかどうかを測定することは、当業者における技術の範囲内である。
【0049】
当業者には、特定の意図する活性化合物には、特定のアグロメレーション工程に使用することができるビヒクルの選択に関して一定の制限が課せられ得ることは理解されるだろう。特に、与えられた化合物に適したビヒクルは、活性化合物が許容されない範囲にまで劣化しない温度で溶融およびアグロメレート化するビヒクルを選択するために、ビヒクルの融点を考慮して選択される。
【0050】
特定のアグロメレートの意図する使用方法により、溶解または分散した活性化合物を含むビヒクルの充填剤に対する比率は、広い範囲内で変化してもよい。従って、溶解または分散した活性化合物を含むビヒクルの量は、好ましくはアグロメレートの75重量%までを構成することができる。溶解または分散した活性化合物を含むビヒクルの相対的な量は、上記アグロメレートを含む医薬調合物が大きくなるのを避けるために、あまり低すぎないのが好ましい。溶解または分散した活性化合物を含む媒体の好ましい量は、アグロメレートの20〜75重量%の範囲内、好ましくはアグロメレートの40〜70重量%の範囲内、さらに好ましくはアグロメレートの50〜70重量%の範囲内である。特定の実施態様において、二酸化ケイ素充填剤の粒子内量は少なくともアグロメレートの5重量%、好ましくはアグロメレートの10重量%、さらに好ましくはアグロメレートの15重量%、最も好ましくは20重量%である。
【0051】
ビヒクルに対する1つまたは複数の活性化合物の比率は、与えられるビヒクルおよび1つまたは複数の活性化合物の性質または特性により決定付けられる。1つの実施態様においては、アグロメレートの質量単位あたりに高量の活性化合物を有するアグロメレートを製造することができるように、上記比率は高くなっている。もう1つの実施態様においては、活性化合物の放出を改善するために上記比率は低くなっており、従って上記活性化合物の生物学的利用能を増加させる。もう1つの実施態様においては、長時間にかけて活性化合物を徐放させるために上記比率は低く、そしてビヒクルは水に対して不溶性または低い溶解度を有し、従って上記活性化合物の放出制御製剤を提供する。
【0052】
薬学的に許容される添加剤または賦形剤、例えば界面活性剤、溶解促進剤、安定化剤、保存剤、二酸化ケイ素以外の充填剤等もまた、アグロメレートの特性に影響を及ぼすためにまたは製造を促進するために、領域内で認知されるハンドブックおよびテキストブックから理解されるように、ビヒクルおよび1つまたは複数の活性化合物の混合物に添加することができる。
【0053】
二酸化ケイ素に加えて、ビヒクルおよび活性化合物の混合物に添加される任意の充填剤の好ましい例はラクトースである。
【0054】
原則的に、本発明のアグロメレートは、溶融アグロメレーションに関する領域内で公知の方法を用いて製造することができる。使用することができる装置の典型例は、低せん断ミキサー(low shear mixers)、高せん断ミキサー(high shear mixers)、流動層、流動層造粒機、回転式流動層および転動造粒機である。
【0055】
1つの実施態様において、上記アグロメレートは、ビヒクルを溶融させ、活性化合物を溶融物に溶解または分散させ、そして微粒子状の二酸化ケイ素上に上記溶融物を噴霧または注入(pouring)することにより製造される。もう1つの方法としては、上記充填剤および活性化合物を混合し、その後に溶融したビヒクルを上記混合物に噴霧または注入する。上記噴霧または注入は、公知の方法のとおりに実施することができる。
【0056】
もう1つの実施態様においては、アグロメレートの全ての成分が、場合により加熱ジャケット(heating jacket)を備える高せん断ミキサーに添加される。高せん断ミキサーの作動により、摩擦熱および加熱ジャケットにより供給される熱がビヒクルを溶融し、引き続き、二酸化ケイ素において活性化合物および堆積物を溶解または分散させる。この方法は、速くて容易に実施することができるので、溶融アグロメレーションに関してとても魅力的な方法である。
【0057】
溶融アグロメレーション工程において、上記の製造されたアグロメレートは、いくつかの工程における変数、例えばビヒクル、充填剤および加熱ジャケットの温度;インペラー速度、処理時間等により影響される。当業者は、特定の適当な装置の使用を伴う簡単なありきたりの実験により、与えられた活性化合物を用いる意図するような溶融アグロメレーション工程に適したパラメーターを決定することができる。
【0058】
本発明の特定の実施態様において、形成されるアグロメレートは少なくとも50 μmのメジアン粒度、好ましくは50-1000 μmの範囲内、さらに好ましくは70-700 μmの範囲内、その上さらに好ましくは80-500 μmの範囲内および最も好ましくは90-300 μmの範囲内のメジアン粒度を有する。
【0059】
本発明のアグロメレートは、公知の方法により経口投与のための医薬調合物を製造するために使用することができる。アグロメレートを通常の薬学的に許容される賦形剤と混合し、引き続いて上記混合物を用いて調合物を製造することにより、医薬調合物を製造することができる。
【0060】
本発明による経口投与のために好ましい医薬調合物は、錠剤およびカプセル剤である。
【0061】
錠剤は、例えば本発明のアグロメレートを錠剤のために通常用いられる公知の賦形剤と混合させる、およびその結果得られた混合物を錠剤に圧縮するといった公知の方法を用いて製造することができる。
【0062】
カプセル剤は、例えば本発明のアグロメレートを適当な賦形剤と混合させ、そして上記混合物をゼラチンカプセルのような適当なカプセルに充填するといった公知の方法を用いて製造することができる。
【0063】
1つの好ましい実施態様において、医薬調合物は、活性化合物および水溶性のビヒクルを含む本発明のアグロメレートを用いて製造される。上記医薬調合物は、医薬調合物の摂取後の、活性化合物の速くて高い生物学的利用能のための活性化合物を提供する。
【0064】
もう1つの好ましい実施態様において、医薬調合物は、活性化合物および水に不溶性であるかまたは低い溶解度を有するビヒクルを含む本発明のアグロメレートを用いて製造される。上記医薬調合物は、長時間にわたって活性化合物を徐放する。
【0065】
さらに、2つ以上の異なるアグロメレートを含む医薬調合物を製造することも可能である。これらの2つ以上のアグロメレートは異なるビヒクル以外に同じ活性化合物を含むことができ、従って、活性化合物の特定の所望である放出プロファイルを有する医薬調合物を提供するために、2つ以上のアグロメレートからの活性化合物の異なる放出速度を提供することができる。もう1つの方法として、2つ以上のアグロメレートは異なる活性化合物を含むことができる。当業者には、その他の組み合わせを特定の所望の効果を得るために使用できることが理解される。
【0066】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
以下の実施例においてアグロメレートおよび医薬製剤を、プラセボ製剤、すなわち活性化合物を含まない製剤と同様に、活性化合物からなる製剤として製造した。しかしながら、開示される本発明の溶融アグロメレートの製造方法を示すプラセボの実施例は、同様に、活性化合物を含まないビヒクルのかわりに、ビヒクルおよび1つ以上の活性化合物の混合物を用いて実施されてもよいのは明らかである。
【0068】
(実施例1)67%のビヒクルおよび33 %の二酸化ケイ素からなるプラセボアグロメレート
マクロゴール1500からなる半固形の溶解促進作用を有するビヒクルを溶融させ、溶融物の温度を60°Cに調節し、高せん断ミキサーでの撹拌中に、VP Aeroperl(R)300 Pharma(二酸化ケイ素)に添加した。
【0069】
生成物を室温まで冷却すると、均質なアグロメレートが得られた。
【0070】
(実施例2)61%のビヒクルおよび39 %の二酸化ケイ素からなるプラセボアグロメレート
マクロゴール1500からなる半固形の溶解促進作用を有するビヒクルを溶融させ、溶融物の温度を60°Cに調節し、高せん断ミキサーでの撹拌中に、Sipernat(R)700(二酸化ケイ素)に添加した。
【0071】
生成物を室温まで冷却すると、均質なアグロメレートが得られた。
【0072】
(実施例3)65%のビヒクルおよび35%の二酸化ケイ素からなるプラセボアグロメレート
マクロゴール1500からなる半固形の溶解促進作用を有するビヒクルを溶融させ、溶融物の温度を60°Cに調節し、高せん断ミキサーでの撹拌中に、Flo-gard FF-D(R)(二酸化ケイ素)に添加した。
【0073】
生成物を室温まで冷却すると、均質なアグロメレートが得られた。
【0074】
(実施例4)プラセボ錠剤
66%のビヒクルおよび34%の二酸化ケイ素からなるアグロメレートを以下のように製造した。
【0075】
70重量%のマクロゴール1500および30 %のポロキサマー188からなる半固形の溶解促進作用を有するビヒクルを溶融させ、溶融物の温度を60°Cに調節し、高せん断ミキサーでの撹拌中に、Sipernat 160PQ(R)(二酸化ケイ素)に添加した。
【0076】
生成物を室温まで冷却し、引き続いて充填剤(Avicel PH 102)、崩壊剤(Ac-Di-Sol)および付着防止剤(antisticking agent)(ステアリン酸マグネシウム)を添加した。上記混合物を約300 mgの重量を有する錠剤に圧縮した。
【0077】
(実施例5)製剤化実施例、プラセボ錠剤
セチラナム(Cetylanum)乳化ワックスからなる半固形の溶解促進作用を有するビヒクルを溶融させ、引き続き、高せん断ミキサーでの撹拌中に、Sipernat 160PQ(R)(二酸化ケイ素)に添加した。上記製剤は、64%のビヒクルおよび36%のSipernat 160PQ(R)(二酸化ケイ素)からなる。アグロメレートを常温(ambient temperature)まで冷却し、引き続き充填剤(Avicel PH200およびラクト−ス 350メッシュ)、崩壊剤(Ac-Di-Sol)および付着防止剤(ステアリン酸マグネシウム)を添加した。上記混合物を約377 mgの重量を有する錠剤に圧縮した。
【0078】
(実施例6)即時放出型製剤(Instant release formulation)
PEG 1500からなる半固形の溶解促進作用を有するビヒクルを70°Cで溶融させ、トリアムテレン(可溶性の低い薬剤)を液体ビヒクル中で分散させた。上記分散物をVP Aeroperl 300(二酸化ケイ素)に、160 rpmで回転する高せん断ミキサー中において添加した。上記混合物を適当な粒度(径の分布のメジアンが56 μm)が得られるまで、800 rpmで粒状化させた。PEG 1500およびAeroperlを含むプラセボ造粒物を同一の工程により製造した。最終的トリアムテレンおよびPEG 1500を含む標準的な固体分散物を、溶融したビヒクルへのトリアムテレンの分散および薄層における分散物の冷却により製造した。上記物質を引き続き適当な粒度に加工した。
【0079】
3つ全ての製剤を小さいカプセルに充填し、5匹のラット群に経口で投与した。上記製剤の正確な組成を表1に示す。ラットを別々に30 mlの飲料水を備え付けた代謝ケージで飼育し、そして16時間の尿排出量を測定した(トリアムテレンは利尿剤である)。尿排出量を表2に示す。データは、二酸化ケイ素を製剤中に含むことにより、固体の分散物からの薬剤の吸収が損なわれないことを示す。
【0080】
表1. ラットにおける試験に用いる製剤の組成
【0081】
【表1】

表2. ラットを用いた試験における排出尿量
【0082】
【表2】

(実施例7)放出制御医薬製剤
ステアリン酸からなる半固形の放出速度制御ビヒクルを60°Cで溶融し、塩化カリウム(モデル薬剤)を液体ビヒクル中に分散させた。上記分散物をVP Aeroperl 300(二酸化ケイ素)に、160 rpmで回転する高せん断ミキサー中において添加した。上記混合物を800 rpmで粒状化し、293 μmの粒度を得た。上記製剤は、10%の塩化カリウム、55%のステアリン酸および35%の二酸化ケイ素を含む。
【0083】
持続放出の実証のために、生体外溶出試験を行った。50 mgの塩化カリウムを含む500 mg量の製剤を、硬ゼラチンカプセルに充填した。製剤は、37°C で水900 ml中のパドル溶出装置を用い、パドルの回転速度は50 rpmで試験を行った。検出は電気伝導度測定用プローブを用いて行った。カレオリド(Kaleorid)錠剤(750 mg KCl)および2つの半量カレオリドもまた比較のために解析した。典型的な放出プロファイルを図1に示す。
【0084】
図より、二酸化ケイ素/ステアリン酸を基礎とする製剤は、より速い放出を示すカレオリド製剤と比較して、異なる種類のプロファイルを生じることがわかる。カレオリドでは、塩化カリウムが不溶性のマトリックスに分布し、上記製剤は崩壊しないまま飲み込まれることとなる。薬剤の放出は、核となる物質における拡散により制御される。二酸化ケイ素製剤は良好な放出制御特性を有すると結論付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ステアリン酸/二酸化ケイ素を基礎とする製剤の溶出プロファイルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa) 〜 c):
a) 常温より高い溶融温度を有する薬学的に許容される1つまたは2つ以上のビヒクル(vehicles);
b) 薬学的に許容されるビヒクルに溶解または分散した1つまたは2つ以上の活性化合物;および
c) 微粒子状の二酸化ケイ素からなる充填剤(filler)、
を含んでなる、溶融アグロメレート化(melt agglomerated)調合物。
【請求項2】
二酸化ケイ素の粒子内量が顆粒剤の少なくとも5重量%である、請求項1記載の調合物。
【請求項3】
上記ビヒクルが37〜200°Cの範囲に、好ましくは50〜100°Cの範囲に溶融温度を有する、請求項1または2のいずれか1つに記載の調合物。
【請求項4】
ビヒクルおよび活性化合物の量が調合物の20〜75重量%を占める、請求項1〜3のいずれか1つに記載の調合物。
【請求項5】
ビヒクルおよび活性化合物の量が調合物の40〜70重量%を占める、請求項4記載の調合物。
【請求項6】
ビヒクルおよび活性化合物の量が調合物の50〜70重量%を占める、請求項5記載の調合物。
【請求項7】
微粒子状の二酸化ケイ素が2〜400 μmの範囲内にメジアン粒度を有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の調合物。
【請求項8】
微粒子状の二酸化ケイ素が10〜100 μmの範囲内にメジアン粒度を有する、請求項7記載の調合物。
【請求項9】
微粒子状の二酸化ケイ素が20〜30 μmの範囲内にメジアン粒度を有する、請求項8記載の調合物。
【請求項10】
上記ビヒクルが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのエステル、ワックス(waxes)、グリセリド、脂肪酸アルコール、脂肪酸、糖アルコール、ビタミンE、ビタミンEの誘導体、およびそれらの混合物から選択される、請求項1〜9のいずれか1つに記載の調合物。
【請求項11】
生成したアグロメレート(agglomerates)が少なくとも50 μmのメジアン粒度を有する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の調合物。
【請求項12】
有効成分が塩化カリウムである、請求項1〜11のいずれか1つに記載の調合物。
【請求項13】
経口投与のための医薬用薬剤を製造するために、請求項1〜12のいずれか1つに記載の調合物を使用する方法。
【請求項14】
医薬用薬剤が錠剤またはカプセル剤である、請求項13記載の使用方法。
【請求項15】
活性化合物を制御放出させる医薬調合物を製造するための、請求項13または14に記載の使用方法。
【請求項16】
活性化合物を即時に放出(instant release)させる医薬調合物を製造するための、請求項13または14に記載の使用方法。
【請求項17】
以下の段階:
i) 以下のa)およびb):
a) 室温で固体であって37°C以上の溶融温度を有する、1つ以上の薬学的に許容されるビヒクル; および
b) 溶融したビヒクル中で可溶性である1つ以上の活性化合物、
を含む調合物を加熱すること;
ii) 混合物を混合している間に上記調合物を微粒子状の二酸化ケイ素からなる充填剤へ添加して、実質的に均質な調合物としてアグロメレートを用意すること;および
iii) 上記調合物を室温まで冷却すること、
を含んでなる請求項1〜12のいずれか1つに記載のアグロメレート化物質調合物の製造方法。
【請求項18】
以下の段階:
i) 以下のa) 〜 c):
a) 室温で固体であって37°C以上の溶融温度を有する、1つまたは2つ以上の薬学的に許容されるビヒクル;
b) 溶融したビヒクル中で可溶性である1つまたは2つ以上の活性化合物; および
c) 微粒子状の二酸化ケイ素からなる充填剤、
を含む混合物を用意すること;
ii) 実質的に均質な調合物が形成するまで上記混合物を混合および加熱すること;および
iii) 上記調合物を室温まで冷却すること、
を含んでなる請求項1〜12のいずれか1つに記載のアグロメレート化物質調合物の製造方法。
【請求項19】
アグロメレーションが低せん断ミキサー(low shear mixers)、高せん断ミキサー(high shear mixers)、流動層、流動層造粒機、回転式流動層および転動造粒機を含む群から選択される装置で行われる、請求項17または18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか1つに記載のアグロメレートを含んでなる医薬調合物。
【請求項21】
医薬調合物が錠剤またはカプセル剤の形態にある、請求項20記載の医薬調合物。
【請求項22】
医薬調合物が活性化合物を制御放出させる、請求項20または21のいずれか1つに記載の医薬調合物。
【請求項23】
医薬調合物が活性化合物を即時に放出させる、請求項20または21のいずれか1つに記載の医薬調合物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−517929(P2006−517929A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501527(P2006−501527)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000111
【国際公開番号】WO2004/073687
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】