溶融シリカを有する白化組成物
溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有効な口腔用組成物は、歯の着色汚れを除去し、かつ歯を研磨することによって、歯の外観の維持及び保護を可能にする。また同じく、有効な口腔用組成物は外面のくずも洗浄して除去し、このことは、歯の齲蝕の防止に役立ち、歯肉の健康を促進し得る。
【0003】
口腔用組成物中の研磨剤は、歯の着色汚れが固着する、密着性のペリクル膜の除去に役立つ。通常、ペリクル膜は、歯の洗浄後の数分以内でエナメル質に付着する、薄い無細胞糖タンパク質−ムコタンパク質の被膜を含む。この膜の内部に残留する様々な食品色素の存在は、歯の変色の殆どの場合で主な原因となる。研磨剤は、象牙質及びエナメル質などの口腔組織に対する磨耗損傷を最小限に抑えつつ、ペリクル膜を除去することができる。
【0004】
洗浄に加えて、研磨された表面は、望ましくない構成成分の異所性沈着に対してより抵抗性を示し得るため、研磨剤系が歯表面の研磨を提供することが望ましい場合がある。歯の外観は、磨かれた特徴を歯に付与することによって改善することができるが、これは、歯の視覚的外観に一体となって関連する、光の反射及び散乱に対して表面粗さ、すなわち表面の研磨が影響を与えるためである。表面粗さはまた、歯の感触にも影響を与える。例えば、磨かれた歯は、清浄で、平坦で、かつ平滑な感触を有する。
【0005】
多くの歯磨剤組成物は、研磨剤として沈殿シリカを使用する。沈殿シリカは、米国特許第4,340,583号(Wason、1982年7月20日)、欧州特許第535,943(A1)号(McKeownら、1993年4月7日)、PCT出願国際公開第92/02454号(McKeownら、1992年2月20日)、米国特許第5,603,920号(Rice、1997年2月18日)、及び同第5,716,601号(Rice、1998年2月10日)、並びに同第6,740,311号(Whiteら、2004年5月25日)に注記され、説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,340,583号
【特許文献2】欧州特許第535,943(A1)号
【特許文献3】PCT出願国際公開第92/02454号
【特許文献4】米国特許第5,603,920号
【特許文献5】米国特許第5,716,601号
【特許文献6】米国特許第6,740,311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歯の有効な洗浄を提供する一方で、口腔ケア組成物中の沈殿シリカは、過酸化物のような酸化剤などの、基本的な製剤活性物質との、適合性の問題を提示し得る。過酸化物は、歯の白化のような口腔美容上の目的、並びに歯肉炎、敏感性、口腔病変、侵食、空洞、結石、歯周炎、ヘルペス口内炎、歯垢の処置、及び口臭の緩和のために有効であることが証明されている。しかし、適合性の問題のために、過酸化物及び他の酸化剤は、ユーザに効果的に送達されないことが多い。これらの適合性の問題は、表面積、ヒドロキシル基の数、及び気孔率などの沈殿シリカの表面特性、並びにシリカの純度に直接関連することが認められている。
【0008】
酸化剤のような口腔ケア活性物質との、良好な適合性を有しながらも、歯組織の有効かつ安全な洗浄及び研磨を提供する、研磨剤系が必要とされる。本発明の組成物は、そのような利益を提供することができる。したがって、本発明は、溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔ケア組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、様々な溶融シリカ及び沈殿シリカの、材料特性の表である。
【図2】図2は、溶融シリカ及び沈殿シリカに関する、適合性データの表である。
【図3A】図3(a)は、フッ化ナトリウム系の、口腔ケア組成物の製剤の表である。
【図3B】図3(b)は、図3(a)の組成物に関する、PCR値及びRDA値の表である。
【図4A】図4(a)は、フッ化スズ系の、口腔ケア組成物の製剤の表である。
【図4B】図4(b)は、図4(a)の組成物に関する、PCR値及びRDA値の表である。
【図5】図5は、溶融シリカの、洗浄性及び磨耗性の表である。
【図6A】図6(a)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6B】図6(b)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6C】図6(c)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6D】図6(d)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6E】図6(e)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6F】図6(f)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6G】図6(g)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6H】図6(h)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6I】図6(i)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図7A】図7(a)は、組成物製剤の表である。
【図7B】図7(b)は、図7(a)の組成物に関する、スズ、亜鉛及びフッ化物の適合性の表である。
【図8】図8は、シリカ充填の関数としての、スズの適合性の表である。
【図9A】図9(a)は、過酸化物、並びに溶融シリカ及び沈殿シリカを含む、組成物製剤の表である。
【図9B】図9(b)は、図9(a)の組成物に関する、過酸化物の適合性の表である。
【図10A】図10(a)は、溶融シリカを含む組成物製剤の表である。
【図10B】図10(b)は、図10(a)の組成物に関する、洗浄及び白化の性能の表である。
【図11A】図11(a)は、溶融シリカ及び沈殿シリカを含有する、組成物製剤の表である。
【図11B】図11(b)は、図11(a)の組成物に関する、消費者感知データの表である。
【図12】図12は、追加的な製剤実施例の表である。
【図13A】図13(a)は、製剤実施例の表である。
【図13B】図13(b)は、図13(a)のフッ化ナトリウム系組成物に関する、PCR値及びRDA値の表である。
【図13C】図13(c)は、製剤実施例の表である。
【図13D】図13(d)は、図13(c)のフッ化第一スズ系組成物に関する、RDA値の表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書は、本発明を特に指摘し、明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は以下の説明からよりよく理解されると考えられる。
【0012】
定義
本明細書で使用するとき、用語「口腔使用が可能なキャリア」とは、本発明の組成物の形成、及び/若しくは安全かつ効果的な方法での本発明の組成物の口腔への適用、に使用できる、好適な賦形剤又は成分を意味する。このような賦形剤としては、フッ化物イオン源、抗菌剤、抗結石剤、緩衝剤、他の研磨剤材料、過酸化物源、アルカリ金属重炭酸塩、増粘剤、保湿剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味系、甘味剤、冷感剤、キシリトール、着色剤、他の好適な材料、及びこれらの混合物、などの材料を挙げることができる。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「含む」とは、特定的に言及したもの以外の工程、及び成分を付加できることを意味する。この用語は、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。本発明の組成物は、本明細書に記載の発明の必須要素及び制限、並びに本明細書に記載のいずれの追加的、若しくは任意選択の、成分、構成成分、工程、又は制限をも含み、これらからなり、及びこれらから本質的になることができる。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」とは、当業者の妥当な判断の範囲内にある、化合物又は組成物の明白な利益、つまり口腔の健康の利益、を誘導するのに十分な量であり、かつ/又は重篤な副作用を回避するのに十分低い量である量、すなわち合理的な利益対リスク比を提供する量を意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「口腔用組成物」とは、通常の使用過程において、口腔の活性を目的として、一部若しくは全ての、歯表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたって、口腔内に保持される製品を意味する。本発明の口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きゲル、歯磨き粉、タブレット、洗口剤、歯肉縁下用ゲル、フォーム、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、歯面研磨ペースト、ペトロラタムゲル、又は義歯製品が含まれる、様々な形態とすることができる。口腔用組成物はまた、口腔表面への直接的な適用若しくは取り付け用の、ストリップ上又はフィルム上に組み込んでも、あるいはフロス内に組み込んでもよい。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「歯磨剤」とは、特に指示のない限り、口腔の表面を洗浄するために使用する、ペースト、ゲル、粉末、タブレット、又は液体の製剤を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「歯」とは、天然歯、並びに人工歯、又は歯科補綴物を指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、1種類のモノマーの重合によって作られるか、又は2種類(すなわち、コポリマー)、若しくはそれ以上の種類のモノマーによって作られる材料を含むものとする。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「水溶性」とは、本発明の組成物において、材料が水に可溶性であることを意味する。一般的には、材料は、25℃で、水溶媒の0.1重量%の濃度で、好ましくは1重量%の濃度で、より好ましくは5重量%の濃度で、より好ましくは15重量%の濃度で可溶性であるべきである。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「相」は不均質な系の、機械的に分離した、均一な部分を意味する。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に非水和」とは、材料が少数の表面ヒドロキシル基を有するか、又は表面ヒドロキシル基を実質的に含まないことを意味する。これはまた、材料が約5%未満の総水分量(自由水又は/及び結合水)を含有することも意味し得る。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「大半」とは、大きな数又は大きな部分、全体の半分を超える数を意味する。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「中央」とは、分布の中央の値であり、その値の上及び下に、同数の値が存在することを意味する。
【0024】
百分率、部、及び比は全て、特に指示のない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。記載の成分に関する、このような全ての重量は、その活性物質の濃度に基づくものであり、そのため特に指示のない限り、市販材料に含まれ得る溶媒、又は副生成物を含まない。「重量パーセント」という用語は、本明細書では「重量%」として表示し得る。
【0025】
特に指示のない限り、本明細書で使用するとき、全ての分子量は、グラム/モルで表される重量平均分子量である。
【0026】
溶融シリカ
溶融シリカは、高純度の非晶質二酸化ケイ素である。溶融石英、ガラス状シリカ、シリカガラス、又は石英ガラスと称される場合もある。溶融シリカはガラスの一種であり、ガラスには典型的であるが、原子構造における長範囲規則性を欠いている。しかし、溶融シリカの光学特性、及び熱特性は、他のガラスと比べ固有のものであり、溶融シリカは、優れた強度、熱安定性、及び紫外線透過性を一般に有する。これらの理由から、溶融シリカが、半導体の製造、及び実験機器のような状況で使用されることは既知である。
【0027】
本発明は、口腔用組成物中で、具体的には歯磨剤組成物中で、溶融シリカを使用する。現行の歯磨剤組成物の多くは、増粘剤として並びに研磨剤としてシリカを使用するが、典型的に使用されるシリカは、沈殿シリカである。沈殿シリカは、水溶液からの沈殿、又は乾燥プロセスによって作製される。対照的に、溶融シリカは、典型的には、高純度のケイ砂を、約2000℃の、極めて高温で溶融させることによって製造される。
【0028】
図1は、様々な種類の溶融シリカの、材料特性の表である。比較のために、幾つかの沈殿シリカに関する、同様の物理的特性も示す。溶融シリカを沈殿シリカから区別する、BET比表面積、乾燥減量、強熱減量、シラノール密度、嵩密度、タップ密度、吸油率、及び粒径分布を含めた、基本的な材料特性の幾つかを示す。これらの各材料特性は、以下でより詳細に説明する。
【0029】
このような高温までシリカを加熱するプロセスは、シリカの多孔性、及び表面官能基を破壊する。このことにより、超硬質で、殆どの物質に対して不活性なシリカが製造される。溶融プロセスはまた、沈殿シリカよりも低いBET比表面積も生じさせる。溶融シリカのBET比表面積は、約1m2/g〜約50m2/g、約2m2/g〜約20m2/g、約2m2/g〜約9m2/g、及び約2m2/g〜約5m2/gの範囲である。比較して、沈殿シリカは、典型的には、30m2/g〜80m2/gの範囲のBET比表面積を有する。BET比表面積は、Brunaurら、J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938)の、BET窒素吸着法によって測定される。米国特許第7,255,852号(Gallis、2007年8月14日発行)を参照されたい。
【0030】
溶融シリカは、他の種類のシリカと比較して少量の自由水又は/及び結合水を一般に有する。溶融シリカ中の結合水及び自由水の量は、一般に約10%未満である。溶融シリカ中の、結合水及び自由水の量は、約5%未満、又は約3%未満であってもよい。約5%未満の結合水及び自由水を有するシリカは、実質的に非水和であると見なすことができる。結合水及び自由水の総量は、2つの測定値、すなわち乾燥減量(LOD)及び強熱減量(LOI)を合計することによって算出することができる。乾燥減量に関しては、最初に実施し、サンプルを105℃で2時間乾燥させ、その重量喪失を自由水とすることができる。強熱減量に関しては、次いで、乾燥させたサンプルを1000℃で1時間加熱し、その重量喪失を結合水とすることができる。LODとLOIの合計が、元のサンプル中の、結合水及び自由水の総量を表す。例えば、記載の試験方法に従えば、溶融シリカ(Teco−Sil 44CSS)は、0.1%の乾燥減量、及び2.2%の強熱減量を有し、総水分量は合計2.3%である。比較して、典型的な沈殿シリカであるZ−119は、6.1%の乾燥減量、及び5.1%の強熱減量を有し、総水分量は合計11.2%である。(他の試験方法に関しては、United States Pharmacopeia−National Formulary(USP−NF),General Chapter 731,Loss on Drying、及びUSP−NF,General Chapter 733,Loss on Ignitionを参照されたい。)
溶融シリカは、他の種類のシリカと比較して、少ない数の、表面ヒドロキシル基又は表面シラノール基を有する。表面ヒドロキシル基の計量は、核磁気共鳴(nmr)を使用して、特定のシリカのシラノール密度を測定することにより、明らかにすることができる。シラノールは、ヒドロキシル置換基が直接結合したケイ素原子を含有する化合物である。様々なシリカに対して固体nmr分析を実施すると、ケイ素のシグナルは、近傍のプロトンからのエネルギー移動によって増強される。シグナルの増強量は、表面に位置する、又は表面の近くに位置するヒドロキシル基中に見出されるプロトンに対する、ケイ素原子の近接度に応じて決定される。それゆえ、正規化したシラノールシグナル強度(強度/g)として表されるシラノール密度は、表面ヒドロキシル濃度の尺度である。溶融シリカに関するシラノール密度は、約3000強度/g未満、一部の実施形態では約2000強度/g未満、及び通常は約900強度/g未満とすることができる。溶融シリカは、約10〜約800の、典型的には約300〜約700の強度/gを含有することができる。例えば、溶融シリカ(Teco−Sil 44CSS)のサンプルは、574強度/gのシラノール密度を有する。典型的な沈殿シリカは、3000強度/gを超える測定値となり、一般に3500強度/gを超える。例えば、HuberのZ−119の測定値は、3716強度/gである。シラノール密度に関する試験方法は、交差分極マジック角スピンニング(5kHz)及びプロトン高出力デカップリングによる固体nmr、並びにDoty Scientific製の7mm超音波デュアルチャネルプローブを備えたVarian Unity Plus−200分光計を使用した。緩和遅延は4秒(s)、及び接触時間は3ミリ秒とした。スキャンの数は8,000〜14,000とし、試験時間枠は、1サンプル当たり10〜14時間とした。サンプルは、正規化手順のために0.1mgに秤量する。スペクトルを絶対強度モードでプロットし、積算を絶対強度モードで得た。スペクトルをプロットし、絶対強度モードで積算することによって、シラノール密度を測定する。
【0031】
シリカの表面反応性、すなわち表面ヒドロキシルの相対数の反映は、溶液からメチルレッドを吸収するシリカの能力によって測定することができる。これによってシラノールの相対数を測定する。この試験は、メチルレッドが、シリカ表面の反応性シラノール部位上で選択的に吸光するという事実に基づく。一部の実施形態では、溶融シリカに曝した後のメチルレッド溶液は、典型的な沈殿シリカに曝した溶液の吸光度よりも、高い吸光度を有し得る。これは、溶融シリカが、沈殿シリカほどにはメチルレッド溶液と反応しないためである。一般的には、沈殿シリカはより容易にメチルレッド溶液と反応するため、溶融シリカは、標準的な沈殿シリカよりも10%高いメチルレッド溶液の吸光度を有することになる。吸光度は、470nmで測定することができる。ベンゼン中0.001%のメチルレッド10グラムを、0.1グラムの2つのシリカサンプルのそれぞれに加え、電磁攪拌器上で5分間混合する。結果得られたスラリーを、12,000rpmで5分間遠心分離し、次いで470nmでの透過率を各サンプルに関して測定し、平均化する。「Improving the Cationic Compatibility of Silica Abrasives Through the Use of Topochemical Reactions」(Gary Kelm,Nov.1,1974,in Iler,Ralph K.,The Colloid Chemistry of Silica and Silicates,Cornell University Press,Ithaca,N.Y.,1955)を参照されたい。
【0032】
理論に束縛されるものではないが、低いBET比表面積、低い気孔率、及び少ない数の表面ヒドロキシル基を有する、溶融シリカは、沈殿シリカよりも反応性が低いと考えられる。その結果、溶融シリカは、香味剤、活性物質、又はカチオンなどの、他の構成成分をより少なく吸着し得るため、それらの他の構成成分に関する、より良好な利用能がもたらされる。例えば、溶融シリカを組み込んだ歯磨剤は、優れた安定性、並びにフッ化第一スズ、亜鉛、他のカチオン性抗菌剤、及び過酸化水素に関する、優れた生物学的利用能を有する。歯磨剤組成物中に製剤化された溶融シリカは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、若しくは90%の、カチオン又は他の構成成分との適合性をもたらし得る。一部の実施形態では、カチオンはスズであってもよい。
【0033】
図2では、様々な種類の溶融シリカ及び沈殿シリカの、スズ適合性、並びにフッ化物適合性を示す。スズ適合性、及びフッ化物適合性は、グルコン酸ナトリウム0.6%及びフッ化第一スズ0.454%を含有する、ソルビトール/水混合物中に、シリカを15%加え、十分に混合することによって測定した。次に、各シリカスラリーのサンプルを、40℃で14日間安置し、次いでスズ及びフッ化物について分析した。通常の歯磨き条件下での、可溶性スズ及び可溶性亜鉛の濃度の測定は次の通りとすることができる。3:1の、水と歯磨剤(シリカ)とのスラリーを調製し、遠心分離器で上澄みの透明層を分離する。上澄みを酸溶液(硝酸、又は塩酸)で希釈し、誘電結合プラズマ発光分光分析法によって分析する。初期値から分析値を差し引くことにより、パーセント適合性を算出する。通常の歯磨き条件下での、可溶性フッ化物の濃度の測定は次の通りとすることができる。3:1の、水と歯磨剤(シリカ)とのスラリーを調製し、遠心分離器で上澄みの透明層を分離する。フッ化物電極によって(TISAB緩衝剤と1:1で混合した後)、又は水酸化物溶液で希釈し、導電率検出を用いたイオンクロマトグラフィーによる分析によって、上澄みをフッ化物に関して分析する。初期値から分析値を差し引くことにより、パーセント適合性を算出する。一般的には、カチオン適合性は、米国特許第7,255,852号に開示の「% CPC適合性試験」によって測定することができる。
【0034】
溶融シリカと沈殿シリカとの間には、適合性、及び表面ヒドロキシル濃度の他にも、他の特性上の差異が数多く存在する。例えば、溶融シリカは、より高密度であり、気孔率が低い。溶融シリカの嵩密度は、一般的には0.45g/mLより高く、約0.45g/mL〜約0.80g/mLとすることができるが、一方で沈殿シリカの嵩密度は、最大約0.40g/mLである。溶融シリカのタップ密度は、一般的には0.6g/mLより高く、約0.8g/mL〜約1.30g/mLとすることができるが、一方で沈殿シリカのタップ密度は、最大約0.55g/mLである。嵩密度及びタップ密度は、次のUSP−NF,General Chapter 616,Bulk Density and Tapped Densityにおける方法によって測定することができる。嵩密度に関しては、方法1の、Measurement in a Graduated Cylinderを使用することができ、タップ密度に関しては、機械式タップ装置を使用する、方法2に従うことができる。嵩密度、及びタップ密度は、粒子(所定の空間内に拘束される複数の粒子)の質量対体積の比を表し、所定の空間内での、閉じ込めれた空気、気孔率、及び粒子同士の密着の程度を反映する。溶融シリカに関する、粒子の真密度、すなわち固有密度(単一粒子の質量対体積の比)は、約2.1g/cm3〜2.2g/cm3であり、一方で沈殿シリカの真密度、すなわち固有密度は、最大約2.0g/cm3である。同じく、溶融シリカの比重は、約2.1〜2.2とすることができ、一方で沈殿シリカの比重は、最大約2.0とすることができる。密度におけるこの差異は、歯磨製品の製造中に顕著な影響を及ぼし得、例えば、その場合に、溶融シリカの高い密度によって、脱気の処理工程が削減又は削除され、バッチサイクル時間の短縮がもたらされ得る。
【0035】
溶融シリカは、BET比表面積と良好に相関する測定値である、比較的低い、吸水率及び吸油率を有する。溶融シリカに関する吸水率、すなわち、粉末の稠度を維持しつつ吸収可能な水の量は、約80g/100g未満、場合によっては約70g/100g未満、約60g/100g未満、又は約50g/100g未満である。溶融シリカに関する吸水率は、約40g/100g未満、場合によっては約30g/100g未満の範囲で更に低下することもあり、約2g/100g〜約30g/100gであってもよい。沈殿シリカに関しては、吸水率は、典型的には約90g/100gである。吸水率は、J.M Huber Corp.の標準的評価方法、S.E.M No.5,140(2004年8月10日)を使用して測定される。溶融シリカに関する吸油率は、フタル酸ジブチル約75mL未満/溶融シリカ100gであり、フタル酸ジブチル約60mL未満/溶融シリカ100gであってもよい。吸油率は、フタル酸ジブチル約10mL/溶融シリカ100g〜フタル酸ジブチル約50mL/溶融シリカ100gの範囲とすることができ、フタル酸ジブチル約15mL/溶融シリカ100g〜フタル酸ジブチル約45mL/溶融シリカ100gであることが望ましい場合がある。沈殿シリカに関しては、吸油率は、典型的にはフタル酸ジブチル約100mL/沈殿シリカ100gである。(吸油率は、米国特許出願第2007/0001037(A1)号(2007年1月4日公開)に記載の方法に従って測定される。)
溶融シリカは、その比較的低い吸水率のために、加工処理中にスラリー化することが可能であり、最終的に、より迅速な加工処理、及びより高速なバッチ時間を可能にする。一般に、沈殿シリカのスラリーを作り出すためには、典型的には少なくとも約50%の水が必要となる。それゆえ、口腔用組成物の製造において沈殿シリカのスラリーを使用することは実際的ではない。しかし、溶融シリカの不活性又は多孔性の欠如が、溶融シリカの比較的低い吸水率に反映されるために、溶融シリカスラリーは、一部の実施形態では約30%未満、若しくは一部の実施形態では約40%未満の水を含むように作製することができる。一部の実施形態は、溶融シリカスラリーの添加を含む、口腔ケア組成物の作製方法とすることができる。一部の実施形態では、溶融シリカスラリーは、結合剤を含む。このことは、特に多量の水が存在する場合に、溶融シリカがスラリー中に懸濁されている状態を維持する助けとなり得る。これはまた、結合剤をより長い時間水和させ得る。一部の実施形態では、結合剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースエーテルの水溶性塩、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、天然ゴム、例えばカラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。溶融シリカスラリーを予備混合してもよい。一部の実施形態では、溶融シリカスラリーは流動可能又は圧送可能であり得る。一部の実施形態では、溶融シリカスラリーは防腐剤を更に含んでもよく、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸又はパラベンを、約1%未満で使用することができる。
【0036】
溶融シリカは、一般に沈殿シリカよりも遙かに小さい導電率を有する。導電率は、溶解した電解質の間接的な測定であり、沈殿シリカは、可溶性の電解質の生成がなければ、作製することができない。そのため、沈殿シリカは、約900〜1600マイクロジーメンス/cm(脱イオン水中の5%分散に基づいて)の範囲であるが、一方で溶融シリカの測定値は、約10マイクロジーメンス/cm未満である(Thermo Electron Corporationより入手可能なOrion 3 Star Benchtop Conductivity Meterを使用して得た測定値)。
【0037】
溶融シリカのpHは、約5〜約8の範囲とすることができるが、一方で沈殿シリカのpHは、典型的には約7〜約8である。pHは、米国特許出願第2007/0001037(A1)号(2007年1月4日公開)に従って測定される。
【0038】
屈折率、すなわち光透過率の測定値は、一般に、沈殿シリカに関するものよりも、溶融シリカに関するものの方が高い。ソルビトール/水混合物中に投入した場合、溶融シリカの屈折率の測定値は少なくとも約1.45であるが、一方で沈殿シリカの測定値は、1.44〜1.448である。より高い屈折率は、透明なゲルの、より容易な作製を可能にし得る。屈折率は、米国特許出願第2006/0110307(A1)号(2006年5月25日公開)に開示の方法を使用して測定される。
【0039】
溶融シリカは、約6を超える、約6.5を超える、及び約7を超えるモース硬度を一般に有する。沈殿シリカはそれほど硬質ではなく、一般に5.5〜6のモース硬度を有する。
【0040】
溶融シリカと沈殿シリカとの間の別の相違点は純度であり、溶融シリカは、沈殿シリカよりも高い純度を有する。溶融シリカ中のシリカの重量パーセントは、約97重量%、約97.5重量%、約98重量%、約98.5重量%を超えることができ、一部の実施形態では約99重量%を超え、及び一部の実施形態では約99.5重量%を超えることができる。沈殿シリカに関しては、シリカの重量パーセントは、一般に約90重量%に過ぎない。これらの純度測定値は、水を不純物として含み、前述のLOD方法、及びLOI方法を使用して算出することができる。
【0041】
供給元によって異なるが、水以外の不純物としては、他の材料中の、金属イオン及び金属塩を挙げることができる。一般に、沈殿シリカに関しては、水以外の不純物は、殆どが硫酸ナトリウムである。沈殿シリカは、典型的には約0.5%〜2.0%の硫酸ナトリウムを有する。溶融シリカは、典型的には硫酸ナトリウムを含有しないか、又は0.4%未満で有する。水を含めない純度の値は、USP−NF Dental Silica Silicon Monographを参照することにより、以下のように測定することができる。純度は、分析物(二酸化ケイ素)試験及び硫酸ナトリウム試験の統合結果である。分析に関して―シリカゲル約1gを計量済白金皿に移し、1000℃で1時間強熱して、デシケータ内で冷却し、重量を計る。水で慎重に湿潤させ、ヒドロフルオロ酸約10mLを少しづつ増量しながら添加する。スチームバス上で蒸発乾固して、冷却する。ヒドロフルオロ酸約10mL及び硫酸約0.5mLを添加して、蒸発乾固する。全ての酸が揮発するまで徐々に温度を上昇させ、1000℃で強熱する。デシケータ内で冷却し、重量を計る。最終重量と、最初に強熱した部分の重量との差異が、SiO2の重量を表す。硫酸ナトリウム−正確に秤量された、歯科用シリカ約1gを白金皿に移し、水数滴で湿潤させて、過塩素酸15mLを添加し、ホットプレート上の皿に定置する。ヒドロフルオロ酸10mLを添加する。大量の煙が発生するまで加熱する。ヒドロフルオロ酸5mLを添加し、再び加熱して大量の煙を発生させる。ホウ酸水(25分の1)約5mLを添加し、加熱して煙を発生させる。冷却し、残留物を、塩化水素酸10mLを補助として400mLビーカーに移す。水を使用して容量を約300mLに調節し、ホットプレート上で沸騰させる。高温の塩化バリウムTS 20mLを添加する。ビーカーをホットプレート上に2時間保ち、容量が200mLを超えるように維持する。冷却した後、沈殿及び溶液を、乾燥した計量済0.8μm多孔性濾過坩堝に移す。フィルター及び沈殿を温水で8回洗浄し、坩堝を105℃で1時間乾燥させて重量を計る。この重量に0.6085を乗じたものが、採取した試料量に関しての硫酸ナトリウム含有量である。4.0%以下で検出される。純度はまた、原子吸光分光法又は元素分析の使用などの、標準的な分析技術を使用して測定することもできる。
【0042】
溶融シリカの固有の表面形態は、より好適なPCR/RDA比をもたらし得る。本発明の溶融シリカのペリクル洗浄率(PCR)、すなわち歯磨剤の洗浄特性の測定値は、約70〜約200、好ましくは約80〜約200の範囲である。本発明の溶融シリカの放射性象牙質磨耗(RDA)、すなわち歯磨剤中に組み込んだ場合の溶融シリカの磨耗性の測定値は約250未満であり、約100〜約230の範囲とすることができる。
【0043】
図3(a)は、様々な溶融シリカ及び沈殿シリカを含む、フッ化ナトリウム系製剤組成物を示す。図3(b)は、対応するPCR値及びRDA値を示す。図4(a)は、様々な溶融シリカ及び沈殿シリカを含む、フッ化第一スズ系製剤組成物を示す。図4(b)は、対応するPCR値及びRDA値を示す。PCR値は、G.K.Stookeyら、J.Dental Res.,61,1236〜9,1982の「In Vitro Removal of Stain with Dentifrice」に記載の方法によって測定される。RDA値は、Hefferrenの、Journal of Dental Research,July−August 1976,pp.563〜573による前述の方法、並びに米国特許第4,340,583号、同第4,420,312号、及び同第4,421,527号(Wason)に記載の方法に従って測定される。RDA値はまた、歯磨剤磨耗性の測定のためのADA推奨手順によって、測定することもできる。溶融シリカのPCR/RDA比は、歯磨剤中に組み込んだ場合、1を超えることが可能であり、これは、その歯磨剤が過度の磨耗性を有することなく、有効なペリクル洗浄を提供していることを示すものである。PCR/RDA比はまた、少なくとも約0.5とすることもできる。PCR/RDA比は、粒径、形状、質感、硬度、及び濃度の関数である。
【0044】
図5は、溶融シリカ及び沈殿シリカの双方の様々な量に関する、PCR並びにRDAのデータの表である。溶融シリカ(TS10及びTS44CSS)は、沈殿シリカ(Z119及びZ109)と比較して、優れた洗浄能力(PCR)を有し得ることが認められる。このデータは、5%の溶融シリカを有する口腔用組成物の方が、10%の沈殿シリカを有する口腔用組成物よりも良好に洗浄し得ることを示す。更に、このデータは、溶融シリカが、こうした洗浄性を提供し得る一方で、依然として許容可能な磨耗性レベル(RDA)の範囲内にあることを示している。
【0045】
溶融シリカの粒子の形状は、角状若しくは球状のいずれか、又は形状の組み合わせとして分類することができ、製造プロセスの種類に応じて決まる。更には、溶融シリカはまた、ミル粉砕して粒径を低減することもできる。球状粒子には、粒子全体の形状が、ほぼ丸いか又は楕円形である、いずれの粒子も含まれる。角状粒子には、多面体形状を含め、球状ではない、いずれの粒子も含まれる。角状粒子は、一部の丸い縁部、一部若しくは全ての鋭利な縁部、一部若しくは全てのぎざぎざな縁部、又は組み合わせを有し得る。溶融シリカの粒子形状は、その磨耗性に影響を与え得る。例えば、同じ粒径では、球状溶融シリカは、角状溶融シリカよりも低い放射性象牙質磨耗性(RDA)を有し得る。その結果、洗浄能力を最適化しつつも磨耗性を増大させないことが可能となり得る。あるいは別の実施例としては、歯面研磨ペースト又は週単位で使用されるペーストは、大きい粒径を有する角状溶融シリカを含むことが可能である。
【0046】
球状溶融シリカを含む組成物は、すなわち、少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状の場合には、特定の利点を有する。丸い縁部に由来して、球状溶融シリカは磨耗性が小さくなり得る。このことは、RDAに対するPCRの比が改善される一方で、依然として良好な洗浄が提供可能であることを意味する。また、磨耗性を過度なものにすることなく、球状溶融シリカを高濃度で使用することもできる。球状溶融シリカはまた、角状溶融シリカ、又は粒子の少なくとも約25%が角状であるシリカと組み合わせて使用することもできる。このことは、コストの引き下げに役立つ一方で、依然として、許容可能な磨耗性を有する良好な洗浄をもたらし得る。角状溶融シリカ及び球状溶融シリカの双方を有する実施形態では、角状溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%とすることができる。少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状である一部の実施形態では、RDAを150未満にすることができ、他の実施形態では120未満にすることができる。少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状である一部の実施形態では、RDAに対するPCRの比は、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、少なくとも約0.9、又は少なくとも約1.0にすることができる。それらの実施形態の一部では、溶融シリカの中央粒径は、約3.0ミクロン〜約15.0ミクロンである。
【0047】
球状溶融シリカの例としては、Spheron P1500及びSpheron N−2000R(Japanese Glass Company製)、並びにSun−Sil 130NPが挙げられる。
【0048】
重要な点は、溶融シリカ粒子は一般に、沈殿シリカほど多くの凝集クラスターを形成せず、また一般に、沈殿シリカほど容易に凝集クラスターを形成しないことである。一部の実施形態では、溶融シリカ粒子の大半は、凝集クラスターを形成しない。対照的に、沈殿シリカは一般に、不規則形状のサブミクロン一次粒子の凝集クラスターを形成する。沈殿シリカを処理、若しくは被覆して、凝集体の量を増加又は減少させることができる。溶融シリカ及び沈殿シリカの双方の粒子形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定することができる。
【0049】
図6(a)〜図6(i)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、3000倍の倍率でのSEM顕微鏡写真である。サンプルを、EMS575Xペルチェ冷却スパッタ被覆装置を使用して、金でスパッタ被覆した。JEOL JSM−6100を使用して、サンプル表面のSEM画像を得た。SEMを、20kV、14mm WD、並びに1500倍及び3000倍の倍率で動作させた。
【0050】
沈殿シリカZ−109の顕微鏡写真(a)、及び沈殿シリカZ−119の顕微鏡写真(b)は、不規則形状の凝集クラスターを示している。粒子は、緩く押し固まり合ったより小さな粒子が凝集して作られているように見える。溶融シリカSpheron P1500の顕微鏡写真(c)、及び溶融シリカSpheron N−2000Rの顕微鏡写真(d)は、規則的形状の回転楕円体粒子を示している。つまり、各粒子は、その殆どの部分に関して、球体状に形成されている。また、顕微鏡写真(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)は、溶融シリカ325F、溶融シリカRG5、溶融シリカRST 2500 DSO、溶融シリカTeco−Sil 44C、及び溶融シリカTeco−Sil 44CSSの顕微鏡写真であり、不規則形状の高密度粒子を示している。一部の粒子は凝集し、緊密に押し固められている場合があるが、一方で他の粒子は、単一の塊からなるように見える。一般的には、最後の一連の溶融シリカは、明確な縁部、及び/又は鋭利な縁部を有する不規則形状の粒子を有し、角状と見なすことができる。
【0051】
一般的には、溶融シリカを含む口腔用組成物、例えば歯磨き剤は、沈殿シリカのみを含む口腔用組成物からは、双方の組成物を約500℃で灰になるまで加熱し、サンプルを比較することによって、識別することができる。約500℃までの加熱は、研磨剤のみを残すが、これはヒドロキシル基を除去するには十分な高熱ではない。溶融シリカと沈殿シリカとは、上述のようにBET比表面積、若しくはSEM分析によって、又はXRD(X線散乱法)分析によって識別することができる。
【0052】
本発明の溶融シリカの中央粒径は、Malvernレーザー光散乱粒径測定によって測定され、約1ミクロン〜約20ミクロン、約1ミクロン〜約15ミクロン、約2ミクロン〜約12ミクロン、約3ミクロン〜約10ミクロンの範囲とすることができる。角形状の粒子は、約5〜約10ミクロンの粒径(中央D50)を有し得る。D90(粒子の90%の平均寸法)が、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン未満、又は約25ミクロン未満であることが好ましい。粒径の小さい溶融シリカは、その粒子が細管の開口部を遮断し得るため、敏感性利益をもたらすことができる。粒径は、米国特許出願第2007/0001037(A1)号(2007年1月4日公開)に記載の方法を使用して測定される。
【0053】
溶融シリカ粒子の寸法は、材料の加工処理によって調節可能である。沈殿シリカは、沈殿方法に基づく寸法を有することになる。一部の沈殿シリカの粒径は、溶融シリカの粒径と部分的に一致するが、典型的には、沈殿シリカはより大きい粒径を有することになる。例えば、沈殿シリカZ−109、及び沈殿シリカZ−119は、それぞれ約6ミクロン〜約12ミクロン、及び約6ミクロン〜約14ミクロンの範囲である。しかし、例えば溶融シリカと沈殿シリカが同じ粒径を有する場合、溶融シリカ粒子の多孔性の欠如のために、溶融シリカのBET比表面積は、一般に沈殿シリカのBET比表面積よりも依然として遙かに小さくなることに留意することが重要である。そのため、沈殿シリカと同様の粒径を有する溶融シリカは、沈殿シリカから識別可能であり、沈殿シリカに勝る、改善された洗浄性、及び/又は改善された適合性をもたらすことになる。
【0054】
一部の実施形態では、溶融シリカの粒径は、洗浄用に最適化することができる。一部の実施形態では、溶融シリカの中央粒径は、約3ミクロン〜約15ミクロンとすることができ、90%の粒子は、約50ミクロン以下の粒径を有する。他の実施形態では、中央粒径は、約5ミクロン〜約10ミクロンとすることができ、90%の粒子は、約30ミクロン以下の粒径を有する。他の実施形態では、中央粒径は、約5ミクロン〜約10ミクロンとすることができ、90%の粒子は、約15ミクロン以下の粒径を有する。
【0055】
溶融シリカが沈殿シリカよりも硬質であるという事実は、そのより良好な洗浄能力に寄与する。このことは、沈殿シリカと同じ粒径で、同じ量の溶融シリカは、相対的に洗浄性がより良好であることを意味する。例えば、中央粒径及びシリカ濃度が同じ場合には、溶融シリカ組成物に関するPCRは、沈殿シリカ組成物に関するPCRよりも、少なくとも約10%大きくなり得る。
【0056】
溶融シリカのより良好な洗浄能力は、様々な製剤の可能性を導き、一部は洗浄性を最大化し、一部は洗浄性を改善する一方で磨耗性を増大させず、一部は洗浄性を改善する一方で磨耗性を減少させ、又は一部の製剤は、許容可能な洗浄性の供給に必要な研磨剤がより少なくてすむため、単純にコスト的効果が高い。一部の実施形態では、溶融シリカ研磨剤を含む口腔ケア組成物は、少なくとも約80のPCR、少なくとも約100のPCR、又は少なくとも約120のPCRを有し得る。一部の実施形態では、RDAに対するPCRの比は、少なくとも約0.6、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、又は少なくとも約0.9とすることができる。一部の実施形態では、組成物は、組成物の約20重量%未満の溶融シリカを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物の約15重量%未満の溶融シリカを含み、少なくとも約100のPCRを有し得るか、又は組成物の約10重量%未満の溶融シリカを含み、少なくとも約100のPCRを有し得る。
【0057】
洗浄性の改善のために最適化された一部の実施形態では、少なくとも約80%の溶融シリカ粒子は、角状であってもよい。他の実施形態では、組成物は、沈殿シリカを更に含み得る。更に他の実施形態では、組成物は、ゲルネットワーク組織を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、以下のうちの1つ以上を含み得る。抗齲蝕剤、抗侵食剤、抗菌剤、抗結石剤、抗過敏症剤、抗炎症剤、抗歯垢剤、抗歯肉炎剤、抗悪臭剤、及び/又は抗着色汚れ剤。一部の実施形態では、組成物は追加の研磨剤材料を含んでもよく、それらとしては、沈殿シリカ、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、パーライト、軽石、ピロリン酸カルシウム、ナノダイヤモンド、表面処理された脱水沈殿シリカ、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに制限されない。一部の実施形態は、口腔使用が可能なキャリア中に溶融シリカ研磨剤を含む口腔ケア組成物を使用することによって、対象者の歯及び口腔を洗浄する方法であり、溶融シリカ研磨剤は約3ミクロン〜約15ミクロンの中央粒径を有し、粒子の90%は50ミクロン以下の粒径を有する。
【0058】
一部の実施形態では、研磨及び抗敏感性の利益を重視するために、溶融シリカの粒径を低減してもよい。一部の実施形態では、溶融シリカは、約0.25ミクロン〜約5.0ミクロン、約2.0ミクロン〜約4.0ミクロン、又は約1.0ミクロン〜約2.5ミクロンの中央粒径を有し得る。一部の実施形態では、溶融シリカ粒子の10%が、約2.0ミクロン以下の粒径を有し得る。一部の実施形態では、溶融シリカ粒子の90%が、約4.0ミクロン以下の粒径を有し得る。一部の実施形態では、粒子は哺乳類の象牙細管の平均直径以下の中央粒径を有し得るため、1つ以上の粒子が細管の内部に留まることが可能になり、それによって歯の知覚敏感性を低減、又は排除する効果がもたらされる。象牙細管は、象牙質の厚み全体に広がり、象牙質形成のメカニズムの結果として生じる構造体である。象牙質の外側表面から歯髄に最近接する領域まで、これらの細管は、S字形状の経路をたどる。細管の直径、及び密度は、歯髄付近で最大である。内側表面から、最も外側の表面まで漸減しつつ、それら細管は、歯髄付近で2.5ミクロン、象牙質の中間部で1.2ミクロン、及び象牙質とエナメル質との接合部で0.9ミクロンの直径を有する。それら細管の密度は、歯髄付近で59,000〜76,000毎平方ミリメートルであり、エナメル質付近では、密度はその半分に過ぎない。
【0059】
小粒径の抗敏感性利益を増大させるために、組成物は、例えば、細管遮断剤、及び/又は敏感性抑制剤のような、追加的な抗敏感性剤を更に含み得る。細管遮断剤は、スズイオン源、ストロンチウムイオン源、カルシウムイオン源、リンイオン源、アルミニウムイオン源、マグネシウムイオン源、アミノ酸、バイオガラス、ナノ微粒子、ポリカルボキシレート、Gantrez、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。アミノ酸は、塩基性アミノ酸とすることができ、塩基性アミノ酸は、アルギニンであってもよい。ナノ微粒子は、ナノヒドロキシアパタイト、二酸化ナノチタン、ナノ金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。敏感性抑制剤は、フッ化カリウム、クエン酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるカリウム塩とすることができる。一部の実施形態は、0.25ミクロン〜約5.0ミクロンの中央粒径を有する溶融シリカを含む口腔ケア組成物を、適切な対象者に投与することにより、歯の過敏症を低減する方法とすることができる。一部の実施形態は、0.25ミクロン〜約5.0ミクロンの中央粒径を有する溶融シリカを含む口腔ケア組成物を、対象者に投与することにより、歯を研磨する方法とすることができる。
【0060】
他の実施形態では、歯面研磨ペースト又は他の非日常使用のペーストの一部であるように、粒径は比較的大きいものとすることができる。一部の実施形態では、溶融シリカは、少なくとも約7ミクロンの中央粒径を有し得、組成物は、少なくとも約100のPCRを有する。他の実施形態では、中央粒径は、約7ミクロン〜約20ミクロンとすることができる。少なくとも約7ミクロンの中央粒径を有する一部の実施形態では、軽石、パーライト、沈殿シリカ、炭酸カルシウム、もみ殻シリカ、シリカゲル、アルミナ、オルトホスフェート、ポリメタホスフェート、ピロホスフェートを含むリン酸塩、他の無機微粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択される、追加的な研磨剤を使用してもよい。より大きい粒径を有する実施形態では、溶融シリカは、組成物の約1重量%〜約10重量%とすることができる。一部の実施形態は、界面活性剤、フッ化物、又はいずれの口腔ケア活性物質も、本質的に含まずともよい。一部の実施形態は、香味剤を有し得る。一部の実施形態は、中央粒径が少なくとも約7ミクロンであり、少なくとも約100のPCRを有する口腔ケア組成物を含むことによる、歯エナメル質の洗浄及び研磨の方法である。
【0061】
溶融シリカは、シリカ(石英、又はケイ砂)を2000℃で溶融させることにより作製することができる。インゴット又はペレットの形に冷却した後、この材料をミル粉砕する。ミル粉砕技術は多岐にわたるが、一部の実施例としては、ジェットミル粉砕、ハンマーミル粉砕、又はボールミル粉砕が挙げられる。ボールミル粉砕は、より丸い縁部を粒子に生じさせることができ、一方ジェットミル粉砕は、より鋭利な縁部又はより角状の縁部を生じさせ得る。溶融シリカは、米国特許第5,004,488号(Mehrotra及びBarker、1991年)に記載のプロセスによって作製することができる。溶融シリカはまた、ケイ素の化学的ガス化、このガスの二酸化ケイ素への酸化、及び生じた微粉の熱融合を伴う、連続火炎中加水分解プロセスを通常は使用して、ケイ素に富む化学的前駆体から作製することもできる。このプロセスは球状溶融シリカを製造することができるが、より高価となり得る。沈殿シリカの作製は化学的プロセスであるが、一方で、溶融シリカの作製は、天然プロセスである。溶融シリカの製造は、より少ない廃棄物を生じ、より良好な持続可能性の利益をもたらす。
【0062】
本発明の一部の実施形態では、複数種の溶融シリカが存在し得る。例えば、溶融シリカは、4000℃のような更に高い温度でシリカを溶融することによって、作製することができる。そのような溶融シリカは、異なる粒径、又は異なる表面形態を有し得るが、比較的低い表面ヒドロキシル濃度、及び/又は低いBET比表面積に起因する低反応性を含める、上述の利点を依然として維持する。
【0063】
沈殿シリカ、すなわち水和シリカは、水酸化ナトリウムを使用してシリカ(ケイ砂)を溶解し、硫酸を添加して沈殿させることによって作製することができる。洗浄及び乾燥の後、次いで材料をミル粉砕する。そのような沈殿シリカは、米国特許第6,740,311号(White、2004年)に記載のプロセスによって作製することができる。沈殿シリカ及び他のシリカは、Ferdi Schuth、Kenneth S.W.Sing、及びJens Weitkampによる編集の、「Handbook of Porous Solids」の、Formation of Silica Sols,Gels,and Powdersと呼ばれるchapter 4.7.1.1.1において、並びにCosmetic Properties and Structure of Fine−Particle Synthetic Precipitated Silicas,S.K.Wason,Journal of Soc.Cosmetic Chem.,vol.29,(1978),pp 497〜521において、より詳細に記載されている。
【0064】
本発明で使用される溶融シリカの量は、約1%、2%、5%、7%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%〜約5%、7%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、若しくは70%、又はこれらのいずれの組み合わせとすることができる。本発明の溶融シリカは、単独で使用しても、又は他の研磨剤と共に使用してもよい。組成物は、2種類以上の溶融シリカを含み得る。溶融シリカと共に使用できる研磨剤の1種は、沈殿シリカである。本明細書に記載される組成物中の研磨剤の全体は、一般に、組成物の約5重量%〜約70重量%の濃度で存在する。好ましくは、歯磨剤組成物は、組成物の約5重量%〜約50重量%の研磨剤全体を含有する。溶融シリカと沈殿シリカの組み合わせに関しては、溶融シリカは、研磨剤全体の約1重量%〜約99重量%とすることができる。沈殿シリカは、研磨剤全体の約1重量%〜約99重量%とすることができる。一部の実施形態では、約1%〜約10%、又は約2%〜約5%の、少量の溶融シリカを使用することができる。
【0065】
溶融シリカは、エトキシル化並びに非エトキシル化脂肪族の、アルコール、酸、及びエステルのような、非イオン性界面活性剤によって処理された、無機微粒子と組み合わせて使用することができる。そのような非イオン性界面活性剤の一例は、PEG 40硬化ヒマシ油である。一般的には、本発明の口腔ケア組成物は、沈殿シリカ、炭酸カルシウム、もみ殻シリカ、シリカゲル、アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、オルトホスフェート、ポリメタホスフェート、ピロホスフェートを含むリン酸塩、他の無機微粒子、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、パーライト、軽石、ピロリン酸カルシウム、ナノダイヤモンド、表面処理された脱水沈殿シリカ、及びこれらの混合物からなる群から1つ以上選択されるような、追加の研磨剤材料と共に使用することができる。
【0066】
一部の実施形態では、他の研磨剤の溶融シリカに対する比は、約2:1を超え、一部の実施形態では、約10:1を超える。一部の実施形態では、この比は約1:1である。一部の実施形態では、溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%である。一部の実施形態では、溶融シリカの量は、研磨剤の組み合わせの約2重量%〜約25重量%である。一実施形態では、他の研磨剤は炭酸カルシウムである。一部の実施形態では、炭酸カルシウムの量は、組成物の約20重量%〜約60重量%である。一部の実施形態では、炭酸カルシウムの量は、組成物の約20重量%〜約60重量%である。別の実施形態では、追加的な研磨剤は、少なくとも1種類の沈殿シリカを含み得る。この沈殿シリカ研磨剤は、組成物の約5重量%〜約40重量%を構成し得る。研磨剤の組み合わせの中の溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%を構成し得る。一部の実施形態では、研磨剤の組み合わせを含む組成物は、少なくとも約80のPCR、少なくとも約100のPCR、若しくは少なくとも約120のPCR、又は約150未満のRDA、若しくは約200未満のRDAを有し得る。
【0067】
組成物中でのカチオンの利用能を更に高めるために、本発明の溶融シリカは、表面改質沈殿シリカ、脱水沈殿シリカ、又は低減された気孔率、低減された表面ヒドロキシル基、若しくは小さい表面積を有し、通常の沈殿シリカに比べて良好なカチオン適合性を有する沈殿シリカなどの、処理された沈殿シリカと組み合わせて使用することができる。しかし、強調する点は、これらの特定の沈殿シリカは、表面ヒドロキシル基を低減させる目的のために、及び低い気孔率、若しくはカチオン適合性のような特性を改善する目的のために表面処理されるが、それらは依然として沈殿シリカと見なされることである。(例えば、米国特許第7,255,852号、同第7,438,895号、国際公開第9323007号、及び同第9406868号を参照されたい。)つまり、それらは、湿式プロセスによって製造されるシリカである。水は、製造プロセス中に加えられ、次いで後に除去される。それは、ヒドロキシル基を除去する目的で、極めて高温まで加熱され得る沈殿シリカの場合であっても、やはり当てはまる。対照的に、溶融シリカは、可能ではあるものの、表面処理する必要がないか又は全く処理されない。溶融シリカは、水を全く使用せず、加熱のみによって製造される。この加熱プロセスは、殆どの沈殿プロセスよりも、表面ヒドロキシル基を効果的に減じることができる。
【0068】
他の砥粒研磨材料としては、シリカゲル、もみ殻シリカ、アルミナ、オルトホスフェート、ポリメタホスフェート、及びピロホスフェートを含むリン酸塩、並びにこれらの混合物を挙げることができる。具体的な例としては、ジカルシウムオルトリン酸二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、βピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、並びに尿素及びホルムアルデヒドの粒子状縮合生成物などの樹脂性研磨剤材料、並びに米国特許第3,070,510号(Cooleyら、1962年12月25日発行)に開示のような他のものが挙げられる。
【0069】
研磨剤は、沈殿シリカ、又はシリカキセロゲルのようなシリカゲルとすることができ、米国特許第3,538,230号(Paderら、1970年3月2日発行)、及び同第3,862,307号(DiGiulio、1975年1月21日発行)に記載されている。例は、W.R.Grace & Company,Davison Chemical Divisionにより商標名「Syloid」で市販されているシリカキセロゲルである。また、J.M.Huber Corporationにより商標名「Zeodent」で市販されているもののような沈殿シリカ材料、具体的には、「Zeodent 109」(Z−109)及び「Zeodent 119」(Z−119)の表記を持つシリカも存在する。Z−109及びZ−119と同等の他の市販の沈殿シリカとしては、例えば、Tixosil 63、Tixosil 73、及びTixosil 103(全てRhodia製)、HuberシリカZ−103、Z−113、及びZ−124、OSC DA(TaiwanのOSC製)、並びにABSIL−200及びABSIL−HC(Madhu Silica製)が挙げられる。これらの市販の沈殿シリカのうち、Tixosil 73が、最もZ−119に類似している。本発明の沈殿シリカ研磨剤は、溶融シリカ及び他の研磨剤と組み合わせて使用することができる。
【0070】
本発明の溶融シリカと混合し得る沈殿シリカ歯科用研磨剤の種類は、米国特許第4,340,583号(Wason、1982年7月29日発行)に、より詳細に記載されている。沈殿シリカ研磨剤はまた、Riceの、米国特許第5,589,160号、同第5,603,920号、同第5,651,958号、同第5,658,553号、及び同第5,716,601号にも記載されている。
【0071】
溶融シリカの好適な1種は、C−E Minerals Productsより入手可能な、Teco−Sil 44CSSである。また、Teco−Sil 44C、Teco−Sil T10、及びTecoSpere Aと表記される溶融シリカも、C−E Minerals Productsより入手可能である。他の好適な溶融シリカとしては、R61000(Jiangsu Kaida Silicaより入手可能)、並びにSpheron N−2000R及びSpheron P1500(JGC,Japanese Glass Companyより入手可能)が挙げられる。他には、RST 2500、RG 1500、及びRG 5(Lianyungang Ristar Electronic Materialsより入手可能)、SO−C5及びSO−C4(Adamatechより入手可能)、Fuserex AS−1(Tatsumoriより入手可能)、FS 30及びFS−2DC(Denki Kagaku Kogyouより入手可能)、Min−Sil 325F(Mincoより入手可能)、並びにSunsil−130NP(Sunjinより入手可能)、並びにShin−Etsuより入手可能な溶融シリカが挙げられる。
【0072】
一部の種類の溶融シリカに関するCAS番号は、60676−86−0である。水和シリカに関するCAS番号は、7631−86−9である。溶融シリカに関するINCI名は「溶融シリカ」であるが、一方で沈殿シリカに関するINCI名は「水和シリカ」である。本発明のシリカはケイ酸塩を含まず、本発明の溶融シリカは溶融ケイ酸塩を含まない。
【0073】
口腔使用が可能なキャリア
本発明の組成物の構成成分のためのキャリアは、口腔内での使用に適したいずれの口腔使用が可能な賦形剤とすることができる。キャリアは、好適な化粧品活性物質、及び/又は治療用活性物質を含み得る。そのような活性物質としては、口腔内での使用に安全であると一般に見なされ、口腔の全体的な外観及び/又は健康に変化を提供するいずれの材料もが挙げられ、それらとしては、抗結石剤、フッ化物イオン源、スズイオン源、白化剤、抗微生物、抗悪臭剤、抗敏感性剤、抗侵食剤、抗齲蝕剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、栄養素、酸化防止剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤及び麻酔剤、H−2拮抗剤、並びにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。存在する場合、口腔ケア組成物中の、化粧品活性物質及び/又は治療用活性物質の濃度は、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約90重量%、別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約50重量%、及び別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約30重量%である。
【0074】
活性物質
溶融シリカの利点の1つは、他の材料との適合性、具体的には、活性物質などの、反応性で、効能を失い得る材料との適合性である。溶融シリカは、沈殿シリカ及び他の従来の研磨剤と比較して、活性物質との反応の度合いが大きくないため、より少ない活性物質を使用しても同様の効能を有することができる。活性物質が、不快な、若しくは強い風味、渋味、着色性、又は他の審美的欠点などの、いずれの潜在的な審美的欠点を有する場合、より少量の活性物質が好まれ得る。更には、同じ効能、又は類似の効能のためにより少量の活性物質を使用することは、コストの削減となる。あるいは、従来の使用量と同量の活性物質を使用する場合、より多くの活性物質が、効果をもたらすために利用可能であるため、その活性物質は、より高い効能を有することになる。溶融シリカは、沈殿シリカのような従来の研磨剤よりも若干硬質であるため、溶融シリカはまた、より多くの着色汚れを除去し、及び/又はより良好に洗浄することもできる。
【0075】
活性物質としては、抗菌活性物質、抗歯垢剤、抗齲蝕剤、抗敏感性剤、抗侵食剤、酸化剤、抗炎症剤、抗結石剤、栄養素、酸化防止剤、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗剤、抗ウイルス活性物質、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。材料、すなわち成分は、2種類以上の材料として分類される場合がある。例えば、酸化防止剤は、抗歯垢及び抗菌の活性物質とすることもできる。好適な活性物質の例としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、精油、モノアルキルホスフェート、過酸化水素、CPC、クロルヘキシジン、トリクロサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。以下は、本発明で使用することができる活性物質の非限定的な列挙である。
【0076】
フッ化物イオン
本発明は、安全かつ有効な量のフッ化物化合物を含み得る。フッ化物イオンは、抗齲蝕の有効性を提供するために、25℃で組成物中にフッ化物イオン濃度を付与するのに十分な量で存在してもよく、及び/又は、一実施形態では約0.0025重量%〜約5.0重量%の濃度で使用してもよく、別の実施形態では、約0.005重量%〜約2.0重量%の濃度で使用することができる。多種多様なフッ化物イオン生成材料を、本発明の組成物中の可溶性フッ化物の供給源として使用することができる。好適なフッ化物イオン生成材料の例は、米国特許第3,535,421号、及び同第3,678,154号に開示されている。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び多くの他のものが挙げられる。一実施形態では、歯磨剤組成物は、フッ化第一スズ、又はフッ化ナトリウム、並びにこれらの混合物を含む。
【0077】
口腔用組成物のpHは、約3〜約10とすることができる。pHは、一般に、当該産業において既知の方法により、スラリーpHとして測定される。口腔用組成物中で使用される活性物質に応じて、異なるpHが望まれる場合がある。フッ化物を含有する製剤に関しては、一般的な歯磨剤よりも若干低いpHを有することが望まれる場合がある。沈殿シリカ及びフッ化物を有する、典型的な口腔用組成物は、製剤中のフッ化物がフルオロケイ酸塩を形成して、次いで沈殿シリカ上のヒドロキシル基と反応することのないように、十分高いpHを有する。溶融シリカ上のヒドロキシル基の数は、沈殿シリカ上のヒドロキシル基の数よりも少ないため、このことは問題とならず、溶融シリカを有する口腔用組成物のpHは、より低くすることができる。
【0078】
溶融シリカ及びフッ化物を含有する組成物は、約6.0未満のpH、又は約5.5未満のpHを有し得る。pHは、約5.2未満、又は約5.0未満であってもよい。約3.5〜約5のpH、又は約2.4〜約4.8のpHを有することが望まれる場合がある。より多くのフッ化物を利用可能とするため、より高いフッ化物の取り込みを可能にするように、pHを5.5よりも低くすることができる。低いpHは、より多くのフッ化物を受容するように歯表面を調整する助けとなり得る。過酸化物及び溶融シリカを含有する製剤に関しては、pHは5.5未満、又は4.5未満とすることができる。過酸化物及び溶融シリカを有する製剤は、約3.5〜約4.0とすることができる。溶融シリカ、スズ、及びフッ化物を含有する製剤に関しては、5.0未満のpHを有することが望まれる場合がある。5.0未満のpHは、より多くのSnF3スズ種の生成を可能にし得る。
【0079】
抗結石剤
本発明の歯磨剤組成物はまた、抗結石剤を含み得、これは、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.05重量%〜約50重量%で存在してもよく、別の実施形態では約0.05重量%〜約25重量%であり、別の実施形態では、約0.1重量%〜約15重量%である。抗結石剤は、ポリホスフェート(ピロホスフェートを含む)及びその塩、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)及びその塩、ポリオレフィンスルホネート及びその塩、ポリビニルホスフェート及びその塩、ポリオレフィンホスフェート及びその塩、ジホスホネート及びその塩、ホスホノアルカンカルボン酸及びその塩、ポリホスホネート及びその塩、ポリビニルホスホネート及びその塩、ポリオレフィンホスホネート及びその塩、ポリペプチド、並びにこれらの混合物、ポリカルボキシレート及びその塩、カルボキシ置換ポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。一実施形態では、本明細書で使用する高分子ポリカルボキシレートとしては、米国特許第5032386号に開示されるものが挙げられる。これらの市販のポリマーの例は、International Speciality Products(ISP)による、Gantrezである。一実施形態では、塩は、アルカリ金属塩、又はアンモニウム塩である。ポリホスフェートは、一般に、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、及びこれらの混合物のような、全体的に又は部分的に中和された水溶性アルカリ金属塩として使用される。無機ポリリン酸塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、二酸ジアルキル金属(例えば、二ナトリウム)、一酸トリアルキル金属(例えば、三ナトリウム)、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、及びアルカリ金属(例えば、ナトリウム)ヘキサメタホスフェート、並びにこれらの混合物が挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェートは、通常は非晶質のガラス状材料として生じる。一実施形態では、ポリホスフェートは、FMC Corporationによる製造の、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21、ヘキサメタリン酸ナトリウム)として商業的に既知のもの、及びこれらの混合物である。本発明に有用なピロリン酸塩としては、アルカリ金属ピロホスフェート、ジ−、トリ−及びモノ−ピロリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウム、ジアルカリ金属ピロリン酸塩、テトラアルカリ金属ピロリン酸塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ピロリン酸塩は、ピロリン酸三ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na2H2P2O7)、ピロリン酸二カリウム、ピロリン酸四ナトリウム(Na4P2O7)、ピロリン酸四カリウム(K4P2O7)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。ポリオレフィンスルホネートとしては、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するもの、及びその塩が挙げられる。ポリオレフィンホスホネートとしては、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するものが挙げられる。ポリビニルホスホネートとしては、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。ジホスホネート及びその塩としては、アゾシクロアルカン−2、2−ジホスホン酸及びその塩、アゾシクロアルカン−2、2−ジホスホン酸及びその塩のイオン、アザシクロヘキサン−2、2−ジホスホン酸、アザシクロペンタン−2、2−ジホスホン酸、N−メチル−アザシクロペンタン−2、3−ジホスホン酸、EHDP(エタン−1−ヒドロキシ−1、1、−ジホスホン酸)、AHP(アザシクロヘプタン−2、2−ジホスホン酸)、エタン−1−アミノ−1、1−ジホスホネート、ジクロロメタンジホスホネートなどが挙げられる。ホスホノアルカンカルボン酸、又はそのアルカリ金属塩としては、それぞれが酸、又はアルカリ金属塩である、PPTA(ホスホノプロパントリカルボン酸)、PBTA(ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸)が挙げられる。ポリオレフィンホスフェートとしては、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するものが挙げられる。ポリペプチドとしては、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸が挙げられる。
【0080】
スズイオン
本発明の口腔用組成物は、スズイオン源を含み得る。上述のように、溶融シリカの利点の1つは、他の材料との適合性、具体的には反応性であり効能を失い得る材料との適合性である。スズイオンは、反応性と見なされるため、溶融シリカと共にスズイオンを使用することは、幾つかの重要な利益を有し得る。溶融シリカは、沈殿シリカ及び他の従来の研磨剤と比較して、スズとの反応の度合いが大きくないため、より少ないスズを使用して、同じ効能を有することができる。スズが、不快な、若しくは強い風味、渋味、着色性、又はスズを含有する口腔用組成物を消費者にとって望ましくないものにする他の審美的欠点などの、潜在的な審美的欠点を有することが、報告されている。それゆえ、より少量のスズの使用が好まれる場合がある。更には、同じ効能、又は類似の効能のためにより少量のスズを使用することは、コストの削減となる。あるいは、従来の使用量と同量のスズを使用する場合、より多くのスズが、効果をもたらすために利用可能であるため、スズは、より高い効能を有することになる。溶融シリカは、沈殿シリカのような従来の研磨剤よりも若干硬質であるため、溶融シリカはまた、より多くの着色汚れを除去し、及び/又はより良好に洗浄することもできる。スズを含有する製剤は歯の強度を向上させ得ることが、明らかになっている。それゆえ、スズを含有する製剤は、スズを含有しない同等の製剤よりも、低いRDAのスコアを有し得る。溶融シリカは良好な洗浄研磨剤であり、かつスズがより強い歯をもたらすので、より低いRDAスコアは、より良好なPCRとRDAの比をもたらし得る。溶融シリカとスズとの組み合わせがもたらす相乗効果は、より高度な効能、高度な洗浄製剤を、消費者に提供する。
【0081】
スズイオンは、フッ化第一スズ及び/又は他のスズ塩から提供することができる。フッ化第一スズは、歯肉炎、歯垢、侵食、敏感性の低減に、及び息の改善の利益に役立つことが見出されている。歯磨剤組成物中に提供されるスズイオンは、歯磨剤組成物を使用する対象者に効能を提供する。効能としては、歯肉炎の低減以外の利益を挙げることができるが、効能は、その場の歯垢代謝における顕著な量の低減として定義される。そのような効能をもたらす製剤は、典型的には、フッ化第一スズ及び/又は他のスズ塩により提供され、約50ppm〜約15,000ppmの、組成物全体中のスズイオンの範囲である、スズ濃度を含む。スズイオンは、約1,000ppm〜約10,000ppmの量で、一実施形態では、約3,000ppm〜約7,500ppmの量で存在する。他のスズ塩としては、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、マロン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、第一スズエチレングリコシド、ギ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズなどのような、有機スズカルボキシレートが挙げられる。他のスズイオン供給源としては、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、及び塩化第一スズ二水素化物などの、ハロゲン化第一スズが挙げられる。一実施形態では、スズイオン源はフッ化第一スズであり、別の実施形態では、塩化第一スズ二水和物、若しくは塩化第一スズ三水和物、又はグルコン酸第一スズである。スズ塩を組み合わせて、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約11重量%の量で存在させることができる。スズ塩は、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約7重量%の量で、他の実施形態では約0.1重量%〜約5重量%の量で、及び他の実施形態では約1.5重量%〜約3重量%の量で存在してもよい。
【0082】
白化剤(Whitening Agent)
白化剤は、本発明の歯磨剤組成物の活性物質として含まれ得る。白化に適した活性物質は、アルカリ金属過酸化物及びアルカリ土類金属過酸化物、亜塩素酸金属塩、単水和物及び四水和物を含む過ホウ酸塩、ペルホスフェート、過炭酸塩、過酸化物、並びに過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸リチウムなどの過硫酸塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。好適な過酸化物化合物としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、過酸化ストロンチウム、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、過酸化物化合物は過酸化カルバミドである。好適な亜塩素酸金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、及び亜塩素酸カリウムが挙げられる。追加的な白化活性物質は、次亜塩素酸塩及び二酸化塩素であってもよい。一実施形態では、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムである。別の実施形態では、過炭酸塩は過炭酸ナトリウムである。一実施形態では、過硫酸塩はオキソンである。これらの物質の濃度は、着色汚れを漂白するために分子が提供できる、利用可能な酸素又は塩素のそれぞれに応じて決定される。一実施形態では、白化剤は、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約40重量%の濃度で、別の実施形態では約0.1重量%〜約20重量%の濃度で、別の実施形態では約0.5重量%〜約10重量%の濃度で、及び別の実施形態では約4重量%〜約7重量%の濃度で存在することができる。
【0083】
酸化剤
本発明の組成物は、過酸化物源のような酸化剤を含有し得る。溶融シリカは、高い純度、低いBET比表面積、低い気孔率、及び少ない数の表面ヒドロキシル基を有し、沈殿シリカよりも反応性が低く、したがって、過酸化物などの酸化剤とのより良好な適合性を有する。
【0084】
過酸化物源は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、又はこれらの混合物を含み得る。一部の実施形態では、過酸化物源は過酸化水素である。他の過酸化物活性物質としては、過炭酸塩、例えば過炭酸ナトリウムのような、水と混合すると過酸化水素を生成するものを挙げることができる。特定の実施形態では、過酸化物源はスズイオン源と同じ相で存在し得る。一部の実施形態では、この組成物は、口腔用組成物の約0.01重量%〜約20重量%の過酸化物源を含み、他の実施形態では、口腔用組成物の約0.1重量%〜約5重量%、特定の実施形態では、口腔用組成物の約0.2重量%〜約3重量%、及び別の実施形態では、口腔用組成物の約0.3重量%〜約2.0重量%の過酸化物源を含む。過酸化物源は、遊離イオン、塩、錯体、又はカプセル状として提供することができる。組成物中の過酸化物は、安定であることが望ましい。過酸化物は、サイクル着色汚れ試験、又は他の関連方法によって測定される、着色汚れの低減をもたらし得る。
【0085】
以下で詳しく述べる任意成分に加えて、特定の増粘剤、及び香味剤が、過酸化物などの酸化剤とのより良好な適合性をもたらす。例えば、一部の実施形態では、好ましい増粘剤は、架橋ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、高分子アルキル化ポリエーテル、カルボマー、アルキル化カルボマー、ゲルネットワーク、非イオン性高分子増粘剤、Sepinov EMT 10(Seppic−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー)、Pure Thix 1450、1442、HH(PEG 180ラウレス−50/TMMP、又はポリエーテル1−Rockwood Specialties)、Structure 2001(Akzo−アクリレート/Steareth−20イタコネートコポリマー)、Structure 3001(Akzo−アクリレート/Ceteth−20イタコネートコポリマー)、Aculyn 28(Dow Chemical/Rohm and Haas−アクリレート/Beheneth−25メタクリレートコポリマー)、Genopur 3500D(Clariant)、Aculyn 33(Dow Chemical/Rohm and Haas−アクリレートコポリマー)、Aculyn 22(Dow Chemical/Rohm and Haas−アクリレート/Steareth−20メタクリレートコポリマー)、Aculyn 46(Dow Chemical/Rohm and Haas−PEG−150/ステアリルアルコール/SMDIコポリマー)、A500(架橋カルボキシメチルセルロース−Hercules)、Structure XL(ヒドロキシプロピルデンプンリン酸−National Starch)、及びこれらの混合物とすることができる。
【0086】
他の好適な増粘剤としては、Aristoflex AVC、AVS、BLV、及びHMB(Clariantの、アクリロイルジメチルタウリンポリマー、コポリマー、及び架橋ポリマー)のような高分子スルホン酸、Diaformer(Clariantの、アミンオキシドメタクリレートコポリマー)、Genapol(Clariantの、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル及びアルキル化ポリグリコールエトキシル化脂肪族アルコール)、脂肪族アルコール、エトキシル化脂肪族アルコール、BRIJ 721(Croda)のような高分子量非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0087】
過酸化物と特に適合する好適な香味系としては、米国特許出願第2007/0231278号に記載のものが挙げられる。一実施形態では、香味系は、過酸化物の存在下で比較的安定であることが見出されている、選択された従来の香味構成成分と共に、少なくとも1種類の二次冷感剤と組み合わせた、メントールを含む。本明細書で「安定」とは、香味の特徴又はプロファイルが著しく変化しない、又は製品の耐用期間中不変であることを意味する。
【0088】
本発明の組成物は、少なくとも約0.015重量%のメントールを含めた、約0.04重量%〜1.5重量%の全冷感剤(メントール+二次冷感剤)を含み得る。典型的には、最終組成物中のメントールの濃度は、約0.015%〜約1.0%の範囲であり、二次冷感剤の濃度は、約0.01%〜約0.5%の範囲である。好ましくは、全冷感剤の濃度は、約0.03%〜約0.6%の範囲である。
【0089】
メントールと共に使用するのに好適な二次冷感剤としては、カルボキサミド、ケタール、ジオール、メンチルエステル、及びこれらの混合物などの多種多様な材料が挙げられる。本発明の組成物中の二次冷感剤の例は、「WS−3」として商業的に既知である、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、「WS−23」として既知の、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、並びにこのシリーズの、WS−5、WS−11、WS−14、及びWS−30のような他のもの、などのパラメンタンカルボキサミド剤である。更なる好適な冷感剤としては、Takasagoによる製造の、TK−10として既知の3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、MGAとして既知のメントングリセロールアセタール、メンチルエステル、例えば、酢酸メンチル、アセト酢酸メンチル、Haarmann and Reimerにより供給されるFrescolat(登録商標)として既知の乳酸メンチル、及びV.Maneによる商標Physcoolのコハク酸モノメンチル、が挙げられる。本明細書で使用するとき、メントール及びメンチルという用語は、これらの化合物の右旋性及び左旋性の異性体、並びにこれらのラセミ混合物を包含する。TK−10は、米国特許第4,459,425号(Amanoら、1984年7月10日発行)に記載されている。WS−3、及び他の薬剤は、米国特許第4,136,163号(Watsonら、1979年1月23日発行)に記載されている。
【0090】
過酸化物の存在下で比較的安定であることが見出されている従来の香味成分としては、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸ブチル、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、オイゲノール、ユーカリプトール、チモール、桂皮アルコール、桂皮アルデヒド、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、α−テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、バニリン、エチルバニリン、プロペニルグアエトール、マルトール、エチルマルトール、ヘリオトロピン、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、オキサノン(oxanone)、メントン、β−ダマセノン、イオノン、γデカラクトン、γノナラクトン、γウンデカラクトン、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、及びこれらの混合物が挙げられる。一般に好適な香味剤は、過酸化物によって酸化される傾向が少ない構造的特徴及び官能基を含むものである。これらとしては、飽和した、又は安定な芳香環若しくはエステル基を含有する、香味化学物質の誘導体が挙げられる。多少の酸化又は分解を受ける場合があっても、香味の特徴又はプロファイルに著しい変化を生じない香味化学物質もまた好適である。香味剤は、一般に組成物中で、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で使用される。
【0091】
一部の実施形態では、組成物のpHは、約3.5〜約5.5とすることができ、このことにより酸化剤に更なる安定性がもたらされ得る。一部の実施形態では、組成物はスズイオン源を更に含み得る。一部の実施形態では、本発明は、溶融シリカ及び過酸化物を含む組成物を対象者の口腔に投与することにより、歯垢、歯肉炎、敏感性、口腔の悪臭、侵食、空洞、結石、及び着色汚れを低減する方法を提供することができる。一部の実施形態では、本発明は、最初に過酸化物を含まない組成物を、次いで溶融シリカ及び過酸化物を含む組成物を、対象者の口腔に投与することにより、歯垢、歯肉炎、敏感性、口腔の悪臭、侵食、空洞、結石、及び着色汚れを低減する方法を提供することができる。一部の実施形態では、組成物は、単一の相で存在することができる。一部の実施形態では、組成物は、酸化剤、並びにフッ化物イオン源、亜鉛イオン源、カルシウムイオン源、リン酸イオン源、カリウムイオン源、ストロンチウムイオン源、アルミニウムイオン源、マグネシウムイオン源、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、酸化剤、並びにポリホスフェート、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、高分子ポリエーテル、高分子アルキルホスフェート、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、ポリホスホネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるキレート剤を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、酸化剤と、抗菌剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、抗齲蝕剤、抗結石剤、抗侵食剤、抗悪臭剤、抗敏感性剤、栄養素、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗剤、抗ウイルス活性物質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される口腔ケア活性物質とを含み得る。一部の実施形態では、抗菌剤は、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、ヘキシチジン(hexitidine)、トリクロサン、金属イオン、精油、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0092】
抗菌剤
抗微生物剤を、本発明の歯磨剤組成物中に含むことができる。そのような薬剤としては、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、塩化ベンザルコニウム、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド(TDEPC)、オクテニジン、ビスビグアニド、亜鉛イオン若しくはスズイオン剤、グレープフルーツ抽出物、及びこれらの混合物のようなカチオン性抗菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗菌剤及び抗微生物剤としては、一般にトリクロサンと呼ばれる、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール;8−ヒドロキシキノリン及びその塩;塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、フッ化銅(II)、及び水酸化銅(II)が挙げられるが、これらに限定されない銅II化合物;フタル酸一カリウムマグネシウムを含む米国特許第4,994,262号で開示されているものが挙げられるが、これらに限定されないフタル酸及びその塩;サンギナリン;サリチルアニリド;ヨウ素;スルホンアミド;フェノール樹脂;デルモピノール、オクタピノール、及び他のピペリジノ誘導体;ナイアシン調剤;ナイスタチン;リンゴ抽出物;タイム油;チモール;オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、ネオマイシン、カナマイシン、塩化セチルピリジニウム、及びクリンダマイシンなどの抗生物質;上記の類似体及び塩;サリチル酸メチル;過酸化水素;亜塩素酸塩の金属塩;ピロリドンココイルアルギニンエチル;ラウロイルアルギニンモノクロルヒドロキシエチル;並びに上記の全ての混合物を挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、組成物は、フェノール樹脂抗微生物剤化合物、及びそれらの混合物を含む。抗微生物剤構成成分は、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約20重量%で存在させることができる。別の実施形態では、抗微生物剤は、一般に、本発明の口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約5重量%を構成する。
【0093】
他の抗微生物剤は、限定するものではないが、精油であってもよい。精油は、揮発性の芳香油であり、合成されてもよく、又は蒸留、圧搾、若しくは抽出による植物由来であってもよく、通常、それらが得られた植物の匂い又は香味を伝える。有用な精油は、防腐活性を提供し得る。これらの精油の一部は、香味剤としても作用する。有用な精油としては、シトラ(citra)、チモール、メントール、サリチル酸メチル(冬緑油)、ユーカリプトール、カルバクロール、カンファー、アネトール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、リモネン、オシメン(osimen)、n−デシルアルコール、シトロネル(citronel)、a−サルピネオール(salpineol)、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、メチルオイゲノール、シネロ−ル、リナロール、エチルリナラオール(linalaol)、サフロラバニリン、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、月桂樹油、ニオイヒバ油、ゲリアノール、ベルベノーン、アニス油、ベイ油、ベンズアルデヒド、ベルガモット油、苦扁桃、クロロチモール、桂皮アルデヒド、シトロネラ油、クローブ油、コールタール、ユーカリ油、グアヤコール、ヒノキチオールのようなトロポロン誘導体、ラベンダー油、カラシ油、フェノール、サリチル酸フェニル、パイン油、マツ葉油、サッサフラス油、スパイクラベンダー油、ストラックス、タイム油、トルーバルサム、テレビン油、クローブ油、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、精油は、チモール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、メントール、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0094】
本発明の一実施形態では、天然起源の香味成分のブレンド、又はそのような香味成分を含有する精油(EO)を含む口腔ケア組成物が提供され、このブレンドは、優れた抗微生物活性を呈し、少なくとも2つの構成成分、すなわち、シトラール、ネラール、ゲラニアール、ゲラニオール、及びネロールのような非環式又は非環状構造から選択される第1の構成成分、並びにユーカリプトール、オイゲノール、及びカルバクロールのような環を含むか又は環式構造から選択される第2の構成成分を含む。精油を使用して、レモングラス、カンキツ類(オレンジ、レモン、ライム)、シトロネラ、ゼラニウム、ローズ、ユーカリノキ、オレガノ、ベイ、及びクローブの油を含めた、上記の香味成分を提供することができる。しかしながら、香味成分は、天然の油又は抽出物の添加によって組成物中に供給するよりも、個別の化学物質、又は精製した化学物質として提供するほうが好ましい場合があるが、これは、それらの供給源が、組成物の他の構成成分に対して不安定となり得る他の構成成分を含有する場合があるか、又は所望の香味プロファイルとは不適合な香味の調子を引き出して、感覚刺激の観点からは許容可能性に劣る製品を生じさせる恐れがあるためである。本明細書での使用に非常に好ましいのは、所望の構成成分を主として含有するように精製、若しくは濃縮されている、天然の油、又は天然の抽出物である。
【0095】
好ましくは、このブレンドは、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の種類の、上記の構成成分を含む。このブレンドが少なくとも1種類の非環状構造、及び1種類の環状構造を含むのであれば、より多くの異なる構成成分が共にブレンドされるにつれて、抗微生物の効能の点で、より大きな相乗効果を得ることができる。好ましいブレンドは、少なくとも2種類の環状構造、又は少なくとも2種類の非環状構造を含む。例えば、2種類の非環状構造(シトラールからの、ネラール及びゲラニアール)及び環状構造としてオイゲノールを含むブレンドは、口腔の細菌に対するその効能のために非常に好ましい。別の好ましいブレンドは、3種類の非環状構造(ゲラニオール、ネラール、及びゲラニアール)、及び2種類の環状構造(オイゲノール及びユーカリプトール)を含む。そのようなブレンドの例は、米国特許出願公開第2008/0253976(A1)号に更に詳細に記載されている。
【0096】
他の抗菌剤は、塩基性アミノ酸、及び塩とすることができる。他の実施形態は、アルギニンを含み得る。
【0097】
抗歯垢剤
本発明の歯磨剤組成物は、スズ塩、銅塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、Gantrezのようなカルボキシル化ポリマーのコポリマー、又はジメチコンコポリオールのような、抗歯垢剤を含み得る。ジメチコンコポリオールは、C12〜C20アルキルジメチコンコポリオール、及びこれらの混合物から選択される。一実施形態では、ジメチコンコポリオールは、商標名Abil EM90で市販のセチルジメチコンコポリオールである。ジメチコンコポリオールは、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約25重量%の濃度で、別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約5重量%の濃度で、及び別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約1.5重量%の濃度で存在することができる。
【0098】
抗炎症剤
抗炎症剤もまた、本発明の歯磨剤組成物中に存在することができる。そのような薬剤としては、オキシカム系非ステロイド性抗炎症(NSAID)剤、サリチル酸塩、プロピオン酸、酢酸、及びフェナム酸が挙げられるが、これらに限定されない。このようなNSAIDとしては、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ピロキシカム、ナブメトン、アスピリン、ジフルニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、及びアセトアミノフェンが挙げられるが、これらに限定されない。ケトロラクなどのNSAIDの使用は、米国特許第5,626,838号で特許請求されている。有効量のNSAIDを、口腔又は中咽頭へ局所投与することによって、口腔若しくは口腔咽頭の、原発性及び再発性の扁平上皮細胞癌を予防、並びに/又は処置する方法が、そこで開示されている。好適なステロイド性抗炎症剤としては、フルオシノロン(fluccinolone)及びヒドロコルチゾンのような、副腎皮質ホルモンが挙げられる。
【0099】
栄養素
栄養素は、口腔の状態を改善することができ、かつ本発明の歯磨剤組成物中に含めることができる。栄養素としては、ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、経腸栄養補給剤、及びこれらの混合物が挙げられる。有用なミネラルとしては、カルシウム、リン、亜鉛、マンガン、カリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。ビタミンは、ミネラルと共に含まれてもよく、又は別個に使用されてもよい。好適なビタミンとしては、ビタミンC及びビタミンD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラ−アミノ安息香酸、バイオフラボノイド、並びにこれらの混合物が挙げられる。経口栄養補給剤としては、アミノ酸、脂肪親和物、魚油、及びこれらの混合物が挙げられる。アミノ酸としては、L−トリプトファン、L−リジン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチン又はL−カルニチン、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。脂肪親和物としては、コリン、イノシトール、ベタイン、リノール酸、リノレン酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。魚油は、大量のω−3(N−3)多不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸を含有する。経腸栄養補給剤としては、タンパク質製品、グルコースポリマー、コーン油、ベニバナ油、中鎖トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、及び経腸栄養補給剤は、「Drug Facts and Comparisons」(ルーズリーフ式薬剤情報サービス)、Wolters Kluer Company,St.Louis,Mo.,(著作権)1997,pp.3〜17及び54〜57で、より詳細に記載されている。
【0100】
酸化防止剤
酸化防止剤は、歯磨剤組成物中で有用であると一般に認識されている。酸化防止剤は、Cadenas及びPackerの「The Handbook of Antioxidants」((著作権)1996年、Marcel Dekker,Incより)などの文献に開示されている。本発明で有用な酸化防止剤としては、ビタミンE、アスコルビン酸、尿酸、カロチノイド、ビタミンA、フラボノイド及びポリフェノール、薬草酸化防止剤、メラトニン、アミノインドール、リポ酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0101】
鎮痛剤及び麻酔剤
抗疼痛剤又は減感剤もまた、本発明の歯磨剤組成物中に存在し得る。鎮痛剤は、意識を撹乱させることなく、又は他の感覚様相を変えることなく、疼痛の閾値を上げるように中枢に作用することによって疼痛を緩和する薬剤である。そのような薬剤としては、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、フッ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、アセトアニリド、フェナセチン、アセルトファン(acertophan)、チオルファン、スピラドリン(spiradoline)、アスピリン、コデイン、テバイン、レボルフェノール(levorphenol)、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、フェナゾシン、フェンタニール、ブプレノルフィン、ブタファノール(butaphanol)、ナルブフィン、ペンタゾシン、没食子のような自然の薬草、アサルム、クベビン、ガランガ、スクテラリア、両面針、及び白しを挙げることができるが、これらに限定されない。アセトアミノフェン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸トロラミン、リドカイン、及びベンゾカインのような、麻酔剤又は局所鎮痛剤もまた存在してもよい。これらの鎮痛剤活性物質は、Kirk−Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」、第4版、第2巻、Wiley−Interscience Publishers(1992)、pp.729〜737で詳細に記載されている。
【0102】
H−1及びH−2拮抗剤、並びに抗ウイルス活性物質
本発明はまた、米国特許第5,294,433号に開示の化合物を含めた、選択的H−1及びH−2拮抗剤を所望により含み得る。本発明の組成物で有用な抗ウイルス活性物質としては、ウィルス感染を処置するために通常使用される、いずれかの既知の活性物質が挙げられる。このような抗ウイルス活性物質は、Wolters Kluer Companyの「Drug Facts and Comparisons」(著作権)1997,pp.402(a)〜407(z)に開示されている。具体例としては、米国特許第5,747,070号(1998年5月5日発行)に開示される、抗ウイルス活性物質が挙げられる。この特許は、ウイルスの制御のためにスズ塩を使用することを開示している。スズ塩、及び他の抗ウイルス活性物質は、Kirk & Othmer、「Encyclopedia of Chemical Technology」第3版、第23巻、Wiley−lnterscience Publishers、(1982),pp.42〜71に詳述されている。本発明で使用することができるスズ塩としては、有機カルボン酸第一スズ、及び無機ハロゲン化第一スズが挙げられる。フッ化第一スズを使用してもよいが、それは典型的には、別のハロゲン化第一スズ若しくは1種類以上のカルボン酸第一スズ、又は他の治療薬との組み合わせでのみ使用される。
【0103】
キレート化剤
本発明の組成物は、キレート剤(chelants)又は金属イオン封鎖剤とも呼ばれる、キレート化剤を所望により含有することができ、その多くはまた、抗結石活性、又は歯直接活性も有する。口腔ケア製品中でのキレート化剤の使用は、細菌の細胞壁中に見出されるようなカルシウムを錯化する能力のために有利である。キレート化剤はまた、このバイオマスを無傷のまま保持する助けとなるカルシウムの架橋から、カルシウムを除去することによって、歯垢を崩壊させることもできる。キレート化剤はまた、金属イオンと錯体を形成し、それによって製品の安定性又は外観に対する有害反応の防止を助ける能力も有する。鉄又は銅などのイオンのキレート化は、最終製品の酸化による変質を遅延させるのに役立つ。
【0104】
更に、キレート剤は、歯の表面に結合することにより色素体、又は色素原(chromagen)を置換することで、原理上、着色汚れを除去することができる。これらのキレート剤の定着はまた、歯表面上の色素体の結合部位を破壊するため、着色汚れの発生を防止することもできる。
【0105】
それゆえ、キレート剤は、着色汚れの緩和、及び洗浄性の改善に役立つ助けとなり得る。溶融シリカ及び研磨剤が機械的メカニズムで洗浄する一方で、キレート剤は化学的洗浄の提供に役立ち得るため、キレート剤は、洗浄性の改善に役立ち得る。溶融シリカは、良好な機械的洗浄剤であるため、より多くの着色汚れを除去することができ、キレート剤は、歯表面に再度着色汚れが付着できないように、着色汚れを保持し、懸濁し、又は錯体を形成することが望まれ得る。更にキレート剤は、歯表面を被覆して、新たな着色汚れの防止に役立つことができる。
【0106】
キレート剤は、カチオン性抗菌剤を含有する製剤への添加が望まれ得る。キレート剤を、スズ含有製剤に添加することが望まれ得る。キレート剤はスズの安定化に役立ち、より多量のスズを生物学的利用が可能なように維持することができる。キレート剤は、約4.0を超えるpHを有するスズ製剤中で使用することができる。一部の製剤では、スズは、沈殿シリカと比較して、溶融シリカに対してより安定であるため、スズはキレート剤を必要とせずに安定であることができる。
【0107】
好適なキレート化剤としては、可溶性リン酸化合物、例えば、フィチン酸塩、並びに、とりわけ、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、及びヘキサメタホスフェートを含めた2つ以上のホスフェート基を有する、直鎖ポリホスフェートが挙げられる。好ましいポリホスフェートは、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21)として商業的に既知のものなどの、平均約6〜約21のホスフェート基の数nを有する。他のポリリン酸化化合物を、ポリホスフェート、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物に加えて、又はその代わりに使用してもよい。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸、又はイノシトール六リン酸、及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィチン酸塩」は、フィチン酸及びその塩、並びに他のポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。組成物中のキレート化剤の量は、使用するキレート化剤に応じて決定され、典型的には、少なくとも約0.1%〜約20%、好ましくは約0.5%〜約10%、及びより好ましくは約1.0%〜約7%となる。
【0108】
結合、可溶化、及びカルシウム輸送の能力に関して、本明細書で有用な更なる他のリン酸化合物は、有機リン酸モノ−、ジ−、又はトリエステルを含めた、歯直接剤(tooth substantive agents)として有用な上述の界面活性有機リン酸化合物である。
【0109】
歯垢、結石、及び着色汚れの制御に有用な、キレート化特性を有する他の好適な薬剤としては、米国特許第3,678,154号(Widderら)、同第5,338,537号(White,Jrら)、及び同第5,451,号(Zerbyら)に記載のポリホスホネート、米国特許第3,737,533号(Francis)のカルボニルジホスホネート、米国特許第4,847,070号(1989年7月11日、Pyrzら)、及び同第4,661,341号(1987年4月28日、Benedictら)のアクリル酸ポリマー若しくはコポリマー、米国特許第4,775,525号(1988年10月4日発行、Pera)のアルギン酸ナトリウム、英国特許第741,315号、国際公開第99/12517号、及び米国特許第5,538,714号(Pinkら)のポリビニルピロリドン、並びに米国特許第5,670,138号(Venemaら)、及び日本公開特許第2000−0633250号(Lion Corporation)のビニルピロリドンとカルボキシレートとのコポリマーが挙げられる。
【0110】
本発明での使用に好適な、更なる他のキレート化剤は、アニオン性高分子ポリカルボキシレートである。このような材料は当該技術分野において周知であり、その遊離酸の形態で、あるいは部分的に若しくは好ましくは完全に中和された、水溶性アルカリ金属塩(例えばカリウム、好ましくはナトリウム)又はアンモニウム塩の形態で使用される。例としては、無水マレイン酸又はマレイン酸と、他の重合可能なエチレン性不飽和モノマー、好ましくは約30,000〜約1,000,000の分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)との1:4〜4:1のコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GAF Chemicals CorporationのGantrez(登録商標)AN 139(M.W.500,000)、AN 119(M.W.250,000)、及びS−97 Pharmaceutical Grade(M.W.70,000)として入手可能である。
【0111】
他の有効な高分子ポリカルボキシレートとしては、無水マレイン酸と、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、又はエチレンとの1:1コポリマーであって、後者は、例えばMonsanto EMA No.1103、分子量10,000、及びEMA等級61として入手可能であるもの、並びにアクリル酸と、メチル若しくはヒドロキシエチルメタクリレート、メチル若しくはエチルアクリレート、イソブチルビニルエーテル、又はN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマーが挙げられる。
【0112】
更なる有効な高分子ポリカルボキシレートとしては、米国特許第4,138,477号(1979年2月6日、Gaffar)、及び同第4,183,914号(1980年1月15日、Gaffarら)に開示されており、無水マレイン酸と、スチレン、イソブチレン、又はエチルビニルエーテルとのコポリマー、ポリアクリル酸、ポリイタコン酸、及びポリマレイン酸、並びにUniroyal ND−2として入手可能な、分子量が1,000程度に低いスルホアクリルオリゴマー(sulfoacrylic oligomer)が挙げられる。
【0113】
他の好適なキレート剤としては、米国特許第5,015,467号(Smitherman)、同第5,849,271号、及び同第5,622,689号(双方ともLukacovic)に記載の、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、コハク酸、二コハク酸、並びにグルコン酸ナトリウム若しくはグルコン酸カリウム、及びクエン酸ナトリウム若しくはクエン酸カリウムのようなそれらの塩、クエン酸/アルカリ金属クエン酸塩の組み合わせ、酒石酸二ナトリウム、酒石酸二カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸モノスクシネートナトリウムの酸若しくは塩形態、酒石酸ジスクシネートカリウム、及びこれらの混合物のような、ポリカルボン酸並びにその塩が挙げられる。一部の実施形態では、キレート化剤の混合物又は組み合わせが存在してもよい。
【0114】
歯直接剤
本発明は、歯直接剤を含み得る。本出願の目的のために、歯直接剤もまた、キレート剤として同様に含まれる。好適な薬剤は、高分子電解質、より具体的にはアニオン性ポリマーを含めた、高分子界面活性剤(PMSA)とすることができる。PMSAは、アニオン基、例えば、ホスフェート基、ホスホネート基、カルボキシ基、又はこれらの混合を含み、したがって、カチオン性又は正帯電の実体と相互作用する能力を有する。「無機質」という記述語は、ポリマーの界面活性、又は直接性が、歯のリン酸カルシウム鉱物のような無機質表面に対するものであることを伝えるものとする。
【0115】
PMSAは、着色汚れ防止などの、その多くの利益のために、本発明の組成物中で有用である。PMSAは、その反応性又は直接性によって、無機質、すなわち歯表面に着色汚れ防止の利益を提供し、結果として、望ましくない吸着をしたペリクルタンパク質の一部を、具体的には、歯を着色する色素体の結合、結石の発達、及び望ましくない微生物種の誘引と関連する部分を脱着させると考えられる。これらのPMSAの歯上への定着はまた、歯表面上の色素体の結合部位を破壊することによって、着色汚れの発生を防止することもできる。
【0116】
PMSAの、スズイオン及びカチオン性抗微生物剤のような口腔ケア製品の着色汚れ促進成分に結合する能力もまた、有用であると考えられる。PMSAはまた、表面熱力学特性及び表面被膜特性に望ましい効果を与える歯表面調節効果も提供し、これは、すすぎ又はブラッシング間、及び最も重要なことに、すすぎ又はブラッシング後の両方に、改善された清浄さを感じさせる審美性を付与する。これらの薬剤の多くはまた、口腔組成物中に含まれた場合に、結石制御の効果を提供し、そのため、歯の外観、及び触感の双方における改善を消費者に提供することも期待される。
【0117】
PMSAとしては、歯表面に対して強い親和性を有し、ポリマー層又は被膜を歯表面に沈着させ、所望の表面改質効果を生み出すいずれの薬剤も挙げられる。そのようなポリマーの好適な例は、縮合リン酸化ポリマー;ポリホスホネート;ホスフェート若しくはホスホネート含有モノマー若しくはポリマーと、エチレン性不飽和モノマー及びアミノ酸のような他のモノマーとのコポリマー、又はタンパク質、ポリペプチド、多糖、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)及びポリ(ビニルベンジルクロライド)のような他のポリマーとのコポリマー;ポリカルボキシレート及びカルボキシ置換ポリマー;並びにこれらの混合物のような高分子電解質である。好適な高分子無機質界面活性剤としては、米国特許第5,292,501号、同第5,213,789号、同第5,093,170号、同第5,009,882号、及び同第4,939,284号(全てDegenhardtら)に記載のカルボキシ置換アルコールポリマー、並びに米国特許第5,011,913号(Benedictら)のジホスホネート誘導体化ポリマー、例えば米国特許第4,627,977号(Gaffarら)に記載のような、ポリアクリレート、及び無水マレイン酸若しくはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えばGantrez(登録商標))、が含まれる合成アニオン性ポリマーが挙げられる。好ましいポリマーは、ジホスホネート改質されたポリアクリル酸である。活性を有するポリマーは、ペリクルタンパク質を脱着し、かつエナメル質表面への付着を維持するのに十分な、表面結合特性を有さなければならない。歯表面に関しては、末端鎖又は側鎖に、ホスフェート官能基又はホスホネート官能基を有するポリマーが好ましいが、無機質結合活性を有する他のポリマーも、吸着親和性に応じて、実効を示す場合がある。
【0118】
ホスホネート含有高分子無機質界面活性剤の更なる好適な例としては、米国特許第4,877,603号(Degenhardtら)に抗結石剤として開示のジェム状ジホスホネートポリマー、米国特許第4,749,758号(Durschら)、及び英国特許第1,290,724号(双方ともHoechstに譲渡)に開示の、洗剤及び洗浄組成物中での使用に好適な、ホスホネート基含有コポリマー、並びにスケール抑制、腐食抑制、被覆、セメント、及びイオン交換樹脂を含めた適用に有用として、米国特許第5,980,776号(Zakikhaniら)、及び同第6,071,434号(Davisら)に開示される、コポリマー及びコテロマーが挙げられる。更なるポリマーとしては、英国特許第1,290,724号に開示の、ビニルホスホン酸とアクリル酸との水溶性コポリマー、及びその塩が挙げられ、このコポリマーは、約10重量%〜約90重量%のビニルホスホン酸、及び約90重量%〜約10重量%のアクリル酸を含有し、より具体的には、このコポリマーは、ビニルホスホン酸70%:アクリル酸30%、ビニルホスホン酸50%:アクリル酸50%、ビニルホスホン酸30%:アクリル酸70%の、ビニルホスホン酸とアクリル酸との重量比を有する。他の好適なポリマーとしては、Zakikhani及びDavisによって開示され、1つ以上の不飽和C=C結合(例えば、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、及び2−(ヒドロキシホスフィニル)エチリデン−1,1−ジホスホン酸)を有する、ジホスホネート又はポリホスホネートモノマーを、不飽和C=C結合を有する少なくとも1つの更なる化合物(例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマー)と共重合することにより調製される、水溶性ポリマーが挙げられる。好適なポリマーとしては、Rhodiaより、表記ITC 1087(平均分子量3000〜60,000)及びポリマー1154(平均分子量6000〜55,000)として供給されているジホスホネート/アクリレートポリマーが挙げられる。
【0119】
好ましいPMSAは、イオン性フッ化物及び金属イオンのような、口腔ケア組成物の他の構成成分に対して安定である。高含水製剤中で制限された加水分解を有し、そのため単純な単一相の歯磨剤又は洗口製剤を可能にするポリマーもまた好ましい。PMSAがこれらの安定特性を有さない場合、1つの選択肢は、フッ化物又は他の不適合成分から分離された高分子無機質界面活性剤を含む、二相製剤である。別の選択肢は、非水性、実質的に非水性、又は水分が制限された組成物を配合し、PMSAと他の構成成分との間の反応を最低限に抑えることである。
【0120】
好ましいPMSAの1つは、ポリホスフェートである。ポリホスフェートは一般に、主に直鎖構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、幾つかの環状誘導体が存在する場合もある。ピロホスフェート(n=2)は理論的にはポリホスフェートであるが、所望のポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、およそ3以上のホスフェート基を有するものである。所望の無機ポリリン酸塩としては、特に、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、及びヘキサメタホスフェートが挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェートは、通常は非晶質のガラス状材料として生じる。本発明の組成物で好ましいのは、以下の式を有する直鎖ポリホスフェートである。
【0121】
XO(XPO3)nX
式中、Xはナトリウム、カリウム、又はアンモニウムであり、nの平均は約3〜約125である。好ましいポリホスフェートは、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21)として商業的に既知のもの、並びにFMC Corporation及びAstarisによる製造のもののように、平均約6〜約21のnを有する。これらのポリホスフェートは、単独で、又は組み合わせて使用することができる。ポリホスフェートは、酸性pH、具体的にはpH 5未満で、高含水製剤中での加水分解の影響を受けやすい。したがって、より長鎖のポリホスフェート、具体的には、平均鎖長約21のGlass Hを使用することが好ましい。そのような、より長鎖のポリホスフェートは、加水分解する際に、より短鎖のポリホスフェートを生成し、それらは歯上に沈着して、着色汚れ防止効果を提供するのに依然として有効であると考えられている。
【0122】
非高分子リン酸化合物、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物もまた、歯直接剤として有用である。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸、又はイノシトール六リン酸、及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィチン酸塩」は、フィチン酸及びその塩、並びに他のポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。
【0123】
歯直接剤として有用な、他の界面活性リン酸化合物としては、米国特許第20080247973(A1)号として共に譲渡された特許出願公開に記載されるような、リン酸モノ−、ジ−又はトリエステルなどの有機リン酸が挙げられる。例としては、ドデシルホスフェート、ラウリルホスフェート、ラウレス−1ホスフェート、ラウレス−3ホスフェート、ラウレス−9ホスフェート、ジラウレス−10ホスフェート、トリラウレス−4ホスフェート、C12〜18 PEG−9ホスフェートなどの、モノ−、ジ−及びトリ−アルキルホスフェート並びにアルキル(ポリ)アルコキシホスフェート、並びにその塩が挙げられる。多くは、Croda、Rhodia、Nikkol Chemical、Sunjin、Alzo、Huntsman Chemical、Clariant、及びCognisを含めた供給元より市販されている。幾つかの好ましい薬剤は、例えば、高分子部分としての反復アルコキシ基、具体的には、3つ以上のエトキシ基、プロポキシイソプロポキシ基、又はブトキシ基を含有する高分子のものである。
【0124】
更なる好適な高分子有機リン酸剤としては、デキストランホスフェート、ポリグルコシドホスフェート、アルキルポリグルコシドホスフェート、ポリグリセリルホスフェート、アルキルポリグリセリルホスフェート、ポリエーテルホスフェート、及びアルコキシル化ポリオールホスフェートが挙げられる。幾つかの具体例は、PEGホスフェート、PPGホスフェート、アルキルPPGホスフェート、PEG/PPGホスフェート、アルキルPEG/PPGホスフェート、PEG/PPG/PEGホスフェート、ジプロピレングリコールホスフェート、PEGグリセリルホスフェート、PBG(ポリブチレングリコール)ホスフェート、PEGシクロデキストリンホスフェート、PEGソルビタンホスフェート、PEGアルキルソルビタンホスフェート、及びPEGメチルグルコシドホスフェートである。
【0125】
更なる好適な非高分子リン酸としては、アルキルモノグリセリドホスフェート、アルキルソルビタンホスフェート、アルキルメチルグルコシドホスフェート、アルキルスクロースホスフェートが挙げられる。
【0126】
他の有用な歯直接材としては、米国特許第7,025,950号、及び同第7,166,235号(双方ともProcter & Gamble Coに譲渡)に記載されるような、カルボン酸基で官能化されたシロキサンポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、疎水性のシロキサン主鎖、及びペンダントのアニオン性部分含有カルボキシ基を含み、水性基剤の製剤から、又は本質的に非水性基剤の製剤から表面に沈着して、実質的に疎水性の被膜を処理表面上に形成する能力を有する。カルボキシ官能化シロキサンポリマーは、極性表面に結合し、静電相互作用によってその上に被膜を形成する、すなわちペンダントカルボキシ基と、歯に存在するカルシウムイオンとの間で錯体生成すると考えられる。それゆえ、カルボキシ基は、シロキサンポリマー主鎖を表面上に定着させることにより、表面を疎水性に改質し、次いで、洗浄の容易性、着色汚れの除去及び防止、白化などのような、様々な最終用途の利益を表面に付与することに役立つ。カルボキシ官能化シロキサンポリマーは更に、活性の薬剤の、表面上への沈着を強化し、これらの活性物質の、処理表面上での保持及び効能を改善するように作用する。
【0127】
ビニルピロリドン(VP)モノマーの1つ又は混合物と、アルケニルカルボキシレート(AC)モノマーの1つ又は混合物、具体的には、共に譲渡された米国特許第6,682,722号に記載の、飽和直鎖又は分枝鎖C1〜C19アルキルカルボン酸のC2〜C12アルケニルエステルとを、共重合することによって調製される、水溶性又は水分散性のポリマー剤もまた、歯直接剤として有用である。例としては、ビニルピロリドンと、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、若しくはビニルブチラートのうちの1つ又は混合物とのコポリマーが挙げられる。好ましいポリマーは、約1,000〜約1,000,000、好ましくは約10,000〜約200,000、更により好ましくは約30,000〜約100,000の範囲の平均分子量を有する。
【0128】
歯直接剤の量は、典型的には、口腔用組成物全体の約0.1重量%〜約35重量%である。歯磨剤製剤では、この量は、好ましくは約2%〜約30%、より好ましくは約5%〜約25%、最も好ましくは約6%〜約20%である。洗口剤組成物では、歯直接剤の量は、好ましくは約0.1%〜5%、より好ましくは約0.5%〜約3%である。
【0129】
追加的な活性物質
本発明での使用に適した追加的な活性物質としては、インスリン、ステロイド、薬草剤、及び他の植物由来の治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。更には、当該技術分野において既知の抗歯肉炎剤又は歯肉ケア剤もまた挙げることができる。歯に清浄感を付与する構成成分が任意に含まれてもよい。これらの構成成分としては、例えば、重曹、又はGlass−Hを挙げることができる。また、治療の特定の形態では、これら上記指名の薬剤の組み合わせが、最適の効果を得るために有用である可能性がある。したがって、例えば、抗微生物剤及び抗炎症剤を、単一の歯磨剤組成物中で併用し、複合的な有効性を提供することができる。
【0130】
使用される任意薬剤としては、例えば米国特許第4,627,977号に記載のような、ポリアクリレート、及び無水マレイン酸若しくはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、Gantrez)を含む、合成アニオン性ポリマーとして既知の材料、並びに例えばポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリホスフェート(例えば、トリポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート)、ジホスホネート(例えば、EHDP、AHP)、ポリペプチド(例えば、ポリアスパラギン酸、及びポリグルタミン酸)、並びにこれらの混合物が挙げられる。更には、歯磨剤組成物としては、米国特許第6,682,722号、及び同第6,589,512号、並びに米国特許出願第10/424,640号、及び同第10/430,617号に記載のような、ポリマーキャリアを挙げることができる。
【0131】
他の任意成分
緩衝剤
歯磨剤組成物は、緩衝剤を含有し得る。緩衝剤は、本明細書で使用するとき、歯磨剤組成物のpHを約pH 3.0〜約pH 10に調整するために使用できる薬剤を指す。緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、グルコン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は、歯磨剤組成物の約0.1重量%〜約30重量%の濃度で、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%の濃度で、及びより好ましくは約0.3重量%〜約3重量%の濃度で使用される。
【0132】
着色剤
着色剤もまた、本発明の組成物に添加することができる。着色剤は水溶液の形態であってもよく、好ましくは1%の着色剤水溶液であってもよい。顔料、パール剤、粉末充填剤、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、及び歯磨剤組成物に視覚的変化を生みだすことができる他の材料も使用できる。着色剤溶液及び他の薬剤は、一般に、組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する。二酸化チタンもまた、本発明の組成物に添加することができる。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、組成物の約0.25重量%〜約5重量%を構成する。
【0133】
香味剤
好適な香味構成成分としては、冬緑油、クローブバッドオイル、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリオイル、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4−シス−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−パラ−tert−ブチルフェニルアセテート、クランベリー、チョコレート、緑茶、及びこれらの混合物が挙げられる。精油もまた、香味剤として含まれてもよく、抗菌剤の考察において上記で説明されている。冷感剤もまた、香味組成物の部分とすることができる。本発明の組成物に好適な冷感剤としては、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(WS−3、WS−23、WS−5として商業的に既知である)、MGA、TK−10、Physcool、及びこれらの混合物のような、パラメンタンカルボキシアミド剤が挙げられる。唾液分泌促進剤、加温剤、局部麻酔剤、及び他の任意材料は、口腔用組成物が使用されている間に、シグナルを放出するために使用することができる。沈殿シリカの相互作用性に由来して、香味構成成分は捕捉又は乳化されて効果が消失することから、ユーザに知覚されない場合がある。対照的に、溶融シリカの相互作用性の欠如は、顕著な効果を達成するために添加しなければならない、香味構成成分の量に影響を与え得る。一部の実施形態では、存在する香味剤の量は、同等の沈殿シリカ製剤よりも、組成物の約10重量%、約20重量%、又は約50重量%少ないが、その一方で同じ香味効果を達成することができる。
【0134】
香味組成物は、口腔ケア組成物中で、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で通常使用される。香味組成物は、好ましくは約0.01重量%〜約4重量%の量で、より好ましくは約0.1重量%〜約3重量%の量で、及びより好ましくは約0.5重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0135】
同様に、冷感剤は、本発明の組成物中にそれほど多量に吸収され得ず、このことは、冷感剤がより長く持続し得るか、又はより少量での使用が可能であることを意味する。精油もまた、より少なく吸収され得るため、より少量の使用で、同じ有効性を達成することができる。溶融シリカは、沈殿シリカのように味覚受容体に結合することがなく、このことは、味覚受容体が、香味剤によりアクセス可能であり得ることを意味する。
【0136】
例えば、清浄な口の経験、及び甘味若しくは冷感の感知の増大のような、他の審美的利益が、ユーザには明白であり得る。改善された、滑らかで清浄な口内感覚は、口内乾燥のより少ない感知の一因となり得、並びに溶融シリカの改善された洗浄は、ムチン(muscin)の層の除去に役立ち、保湿の感知を増大させることができる。消費者の別の審美的利益は、口腔用組成物の口からのすすぎ出しの改善であり得るが、これは、ユーザがブラッシングする間、不活性の溶融シリカ粒子は凝集せずに依然として分散しているためである。更に別の潜在的利益は、泡立ちの改善である。この点でも、溶融シリカは、沈殿シリカよりも反応性が小さいため、界面活性剤がより利用可能であり、改善された泡立ちが生じ得る。
【0137】
一部の実施形態は、小直径の感覚ニューロン上に優先的に発現し、有害物質並びに他の物質を検出する、リガンド開口型、非選択性カチオンチャネルである、TRPV1活性剤、すなわち一過性受容器電位バニロイド受容体1活性剤を含み得る。異味の構成成分を含む口腔ケア組成物にTRPV1活性剤を添加することにより、この組成物のユーザは、TRPV1活性剤を有さない口腔ケア組成物に勝る改善された味を経験することができる。このように、TRPV1活性剤は、口腔ケア組成物中で使用される多くの構成成分に関連した嫌な味を相殺する働きをする。これらの活性剤は、嫌な味を相殺し得るばかりではなく、乾燥状態を感知する口の能力を制限することによって、乾燥状態の感知を低減することもできる。一実施形態では、TRPV1活性剤は、バニリルブチルエーテル、ジンゲロン、カプサイシン、カプシエイト、ショウガオール(shoagol)、ギンゲロール、ピペリン、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、TRPV1活性剤を、口腔ケア組成物の約0.0001重量%〜約0.25重量%の量で添加する。
【0138】
甘味剤
甘味剤を組成物に添加することができる。これらとしては、サッカリン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物のような、甘味剤が挙げられる。様々な着色剤もまた、本発明中に組み込んでもよい。甘味剤は、一般に口腔用組成物中で、組成物の約0.005重量%〜約5重量%の濃度で使用される。
【0139】
増粘剤
高分子増粘剤などの、追加的な増粘剤を利用することができる。好適な増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのような、セルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴムのような、天然ゴムも使用することができる。更に質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム、又は超微粒子状シリカが、増粘剤の一部として使用できる。他の増粘剤としては、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、又はゲルネットワークを挙げることができる。増粘剤としては、高分子ポリエーテル化合物、例えば、炭素原子1個〜約18個を含有するアルキル基又はアシル基で末端保護されたポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシド(分子量300〜1,000,000)を挙げることができる。
【0140】
増粘剤又はゲル化剤の好適な部類としては、ペンタエリスリトールのアルキルエーテルで若しくはスクロースのアルキルエーテルで架橋された、アクリル酸のホモポリマー、又はカルボマーの部類が挙げられる。カルボマーは、B.F.Goodrichより、Carbopol(登録商標)シリーズとして市販されている。具体的には、カーボポールとしては、Carbopol 934、940、941、956、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0141】
約1,000〜約120,000(数平均)の範囲の分子量を有する、ラクチドモノマーとグリコリドモノマーとのコポリマーは、「歯肉縁下用ゲルキャリア」として、歯周ポケットの中又は歯周ポケットの周りに活性物質を送達するのに有用である。これらのポリマーは、米国特許第5,198,220号、同第5,242,910号、及び同第4,443,430号に記載されている。
【0142】
沈殿シリカの、他の製剤構成成分との相互作用のために、沈殿シリカは、組成物のレオロジーに、経時的な影響を及ぼし得る。しかしながら溶融シリカは、他の製剤構成成分との相互作用の欠如のために、レオロジーに及ぼす影響は少ない。このことは、溶融シリカを有して製剤化される口腔ケア組成物は、より経時的に安定であるため、とりわけ、より良好な洗浄、及びより良好な予測可能性を可能にし得ることを意味する。それゆえ、一部の実施形態では、増粘剤の組み合わせ及び量は、従来の歯磨剤とは非常に異なる場合がある。本発明では、増粘剤は、口腔用組成物全体の約0重量%〜約15重量%の量、若しくは約0.01重量%〜約10重量%の量で、又は他の実施形態では、口腔用組成物全体の約0.1重量%〜約5重量%の量で使用することができる。
【0143】
本発明の一部の実施形態では、組成物は、天然源及び合成源から選択される増粘剤を含み得る。一部の実施形態では、増粘剤は、粘土、ラポナイト、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、組成物は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースエーテルの水溶性塩、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、天然ゴム、例えばカラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される増粘剤を更に含むことができる。
【0144】
他の可能な増粘剤としては、カルボマー、疎水変性カルボマー、カルボキシメチルセルロース、セチル/ステアリルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、アシル化ジェランガム、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸ナトリウム、微結晶セルロース、微細繊維状セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、セチルヒドロキシエチルセルロース、架橋アクリロイルメチルプロパンスルホン酸ナトリウム及びコポリマー、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0145】
組成物の作製時の粘度を、そのまま組成物の粘度とすることができ、又は言い換えれば、組成物は、安定した粘度を有することができる。粘度が安定であると見なされる場合には、典型的には、粘度は30日後で約5%を超えて変化しない。一部の実施形態では、組成物の粘度は、約30日後で約5%を超えて、約30日後で約10%を超えて、約30日後で約20%を超えて、又は約90日後で約50%を超えて、変化しない。経時的に不安定な粘度の問題は、水分量が少ない製剤ではより顕著であるため、一部の実施形態では、本発明の組成物は、約20%未満の総水分量、又は約10%未満の総水分量を含有し得る。
【0146】
ゲルネットワーク
ゲルネットワークを、口腔用組成物中で使用することができる。口腔用組成物を構造化するため、又は活性物質、香味剤、若しくは他の反応性材料の送達を助けるために、ゲルネットワークを使用することができる。溶融シリカ口腔用組成物の増粘化、すなわち所望のレオロジーを溶融シリカ口腔用組成物に提供することを意味する構造化のために、ゲルネットワークを単独で、又は他の増粘剤、若しくは構造剤と組み合わせて、使用することができる。溶融シリカは、口腔用組成物中の、一部の他の研磨剤又は材料よりも高密度であるため、ゲルネットワーク組成物は、溶融シリカにとって有利であり得るレオロジーを有する。溶融シリカは、より重質、すなわちより高密度であるため、他の低密度の材料よりも、組成物又は溶液から、容易に抽出され、又は脱落し得る。このことは、組成物が水で希釈される場合に起こり得る。例えば、歯磨剤をブラッシングに使用する場合、歯磨剤は、口中にあるときに水によって希釈される。歯磨剤の構造化を補助するゲルネットワークを含有する、歯磨剤に関する希釈レオロジーは、高分子材料又はより一般的な増粘材料によって構造化された歯磨剤よりも高い可能性がある。より高い希釈レオロジーは、溶融シリカの懸濁を保ち、溶融シリカが、より完全に洗浄プロセスに関与することを可能にするという点で有益である。研磨剤のような材料が、一旦希釈された後、組成物中に懸濁又は維持されない場合は、ペリクル洗浄率などの洗浄の効能が減少する可能性がある。更には、研磨剤、すなわち溶融シリカがより多く懸濁するにつれて、より多くの研磨剤が洗浄に関与することが可能となるため、口腔用組成物は、全体としてより少量の研磨剤を含み得る。図13は、ゲルネットワークによって構造化されずに一般的な高分子結合剤によって増粘された組成物と比較した、ゲルネットワークによって構造化された組成物に関する、PCR及びRDAのデータを示す。図に示すように、15%の溶融シリカを含有する製剤中でゲルネットワークを使用した場合、PCRのスコアは、92.5から127.56へ、及び95.44から121.04へと増大している。この約10%、約15%、約20%、又は約25%を超えるPCRの増大は、洗浄の間、より多くの溶融シリカを懸濁させるゲルネットワークの能力によるものである可能性がある。洗浄のスコアは上昇するが、その一方で、磨耗は許容可能な範囲に留まる。
【0147】
本発明の口腔用組成物は、分散ゲルネットワークを含み得る。本明細書で使用するとき、用語「ゲルネットワーク」とは、少なくとも1種類の脂肪族両親媒性物質、少なくとも1種類の界面活性剤、及び溶媒を含む、層状の、又は小胞性の固体結晶相を指す。層状相、又は小胞性相は、脂肪族両親媒性物質及び第2界面活性剤を含む第1層と、交互の、溶媒を含む第2層とから構成される二重層を含む。層状結晶相を形成するためには、脂肪族両親媒性物質及び第2界面活性剤は、溶媒内で分散しなければならない。本明細書で使用するとき、用語「固体結晶」とは、1種類以上の脂肪族両親媒性物質を含むゲルネットワーク中の層の鎖融解温度未満の温度において形成される、層状相又は小胞性相の構造を指す。本発明での使用に好適なゲルネットワークは、ゲルネットワークの材料、作製方法、及び使用を説明する米国特許第2008/0081023(A1)号で、より詳細に記載されている。更には、米国特許第2009/0246151(A1)号もまた、ゲルネットワーク、及びゲルネットワークを含有する組成物の作製方法を記載している。
【0148】
口腔用組成物中のゲルネットワークを使用して、口腔用組成物を構造化することができる。ゲルネットワークによって提供される構造化は、口腔用組成物を増粘化させることによって所望のレオロジー又は粘度を提供する。構造化は、高分子増粘剤を必要とすることなく行うことができるが、口腔用組成物の構造化のために、高分子増粘剤、又は他の薬剤を、ゲルネットワークに加えて使用することができる。溶融シリカは増粘化をもたらさないか、又は一般的な沈殿シリカほど増粘化をもたらさないため、口腔用組成物の増粘化は、口腔用組成物の構造化のために使用されるゲルネットワークから、より大きな利益を得ることができる。溶融シリカが口腔用組成物の粘度若しくは増粘化に与える影響が、小さいものであるか又は全く影響しないことは、ゲルネットワーク又は他の増粘系を、口腔用組成物に配合することを可能にし、次いで、沈殿シリカの量を調節する場合には不可欠となる、増粘化のレベル再調節を必要とすることなく、所望の量の溶融シリカを添加することができる、という利益も提供し得る。
【0149】
本発明のゲルネットワーク構成成分は、少なくとも1種類の脂肪族両親媒性物質を含む。本明細書で使用するとき、「脂肪族両親媒性物質」とは、疎水性末端基、及び化合物を水溶性にしない(不混和性)親水性先端基を有する化合物を指し、この化合物はまた、口腔用組成物のpHにおいて、正味の中性電荷も有する。脂肪族両親媒性物質は、脂肪族アルコール、アルコキシル化脂肪族アルコール、脂肪族フェノール、アルコキシル化脂肪族フェノール、脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸アミド、脂肪族アミン、脂肪族アルキルアミドアルキルアミン、脂肪族アルコキシル化アミン、脂肪族カルバメート、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸、アルコキシル化脂肪酸、脂肪族ジエステル、脂肪族ソルビタンエステル、脂肪族糖エステル、メチルグルコシドエステル、脂肪族グリコールエステル、モノ、ジ−、及びトリ−グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、コレステロール、セラミド、脂肪族シリコーンワックス、脂肪族グルコースアミド、並びにリン脂質からなる群から選択することができる。好適な脂肪族両親媒性物質としては、セチルアルコールとステアリルアルコールとの組み合わせが挙げられる。
【0150】
ゲルネットワークはまた、界面活性剤を含む。1種類以上の界面活性剤を脂肪族両親媒性物質及び口腔キャリアと組み合わせ、本発明のゲルネットワークを形成する。界面活性剤は一般に水溶性であるか、又は溶媒と混和性、若しくは口腔キャリアと混和性である。好適な界面活性剤としては、アニオン性、双極性、両性、カチオン性、及び非イオン性の界面活性剤が挙げられる。一実施形態では、ラウリル硫酸ナトリウムのような、アニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、アニオン性及び非イオン性界面活性剤のような、2種類以上の界面活性剤の組み合わせであってもよい。ゲルネットワークはまた、水、又は他の好適な溶媒などの、溶媒も含む傾向にある。溶媒及び界面活性剤は、協働して脂肪族両親媒性物質の膨潤に寄与する。このことは同様に、ゲルネットワークの形成、及び安定性を導く。ゲルネットワークの形成に加えて、溶媒は、空気に曝された際に歯磨剤組成物が硬化することを防ぎ、口内に湿潤感を提供することに役立ち得る。本明細書で使用するとき、溶媒とは、本発明のゲルネットワークの形成において、水の代わりに、又は水と組み合わせて使用することができる好適な溶媒を指す。本発明に好適な溶媒としては、水、食用多価アルコール、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、エリスリトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びこれらの組み合わせが、好ましい溶媒である。
【0151】
ゲルネットワークを形成するために、口腔用組成物は、口腔用組成物の約0.05重量%〜約30重量%の量で、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%の量で、及びより好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の量で、脂肪族両親媒性物質を含み得る。脂肪族両親媒性物質の量は、ゲルネットワークの形成、及び口腔用製剤の組成に基づいて選択される。例えば、少量の水を含有する口腔用組成物は、約1%の脂肪族両親媒性物質を必要とし得るが、多量の水を含む口腔用組成物は、6%以上の脂肪族両親媒性物質を必要とし得る。ゲルネットワークを形成するために必要な、界面活性剤及び溶媒の量もまた、選択される材料、ゲルネットワークの機能、及び脂肪族両親媒性物質の量に基づいて変化する。ゲルネットワーク相の部分としての界面活性剤は、典型的には、口腔用組成物の約0.01重量%〜約15重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、及びより好ましくは約0.3重量%〜約5重量%の量である。一部の実施形態では、界面活性剤の希釈水溶液を利用する。一実施形態では、界面活性剤の量は、口腔用組成物中で所望される泡立ちのレベルに基づいて、及び界面活性剤によって生じる刺激に基づいて選択される。溶媒は、本発明に従った、脂肪族両親媒性物質及び界面活性剤と組み合わせた場合に、ゲルネットワークを達成するのに好適な量で、存在することができる。口腔用組成物は、口腔用組成物の少なくとも約0.05重量%の溶媒を含み得る。溶媒は、口腔用組成物中に、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してもよい。
【0152】
保湿剤
保湿剤は、空気に曝された際に歯磨剤組成物が硬化することを防ぎ、口内に湿潤感を提供することに役立ち得る。保湿剤、すなわち追加的な溶媒を、口腔キャリア相に添加することができる。本発明に好適な保湿剤としては、水、食用多価アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びこれらの組み合わせが、好ましい保湿剤である。保湿剤は、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してもよい。
【0153】
界面活性剤
界面活性剤を、歯磨剤組成物に添加してもよい。界面活性剤はまた、一般的に起泡剤とも称され、歯磨剤組成物の洗浄、又は泡立ちを補助し得る。好適な界面活性剤は、広いpH範囲にわたって、適度に安定で泡立つものである。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双極性イオン性、カチオン性、又はこれらの混合であってもよい。
【0154】
本明細書で有用なアニオン性界面活性剤の例としては、アルキル基に8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤の例は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムのようなサルコシネート、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。アニオン性界面活性剤の混合物も使用できる。多数の好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458号(Agricolaら、1976年5月25日発行)に開示されている。一部の実施形態では、口腔ケア組成物は、約0.025%〜約9%の濃度で、一部の実施形態では約0.05%〜約5%の濃度で、及び他の実施形態では約0.1%〜約1%の濃度で、アニオン性界面活性剤を含み得る。
【0155】
別の好適な界面活性剤は、サルコシネート界面活性剤、イセチオネート界面活性剤、及びタウレート界面活性剤からなる群から選択されるものである。これらの界面活性剤のアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩、例えば以下のナトリウム塩、及びカリウム塩が、本明細書での使用に好ましい。サルコシン酸ラウロイル、サルコシン酸ミリストイル、サルコシン酸パルミトイル、サルコシン酸ステアロイル、及びサルコシン酸オレオイル。サルコシネート界面活性剤は、本発明の組成物中に、組成物全体の約0.1重量%〜約2.5重量%、又は約0.5重量%〜約2重量%で存在してもよい。
【0156】
本発明で有用なカチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジ−イソブチルフェノキシエチル−ジメチルベンジルアンモニウム、亜硝酸ココナツアルキルトリメチルアンモニウム、フッ化セチルピリジニウムなどのような、約8個〜18個の炭素原子を含有する1つの長アルキル鎖を有する、脂肪族四級アンモニウムの化合物の誘導体が挙げられる。好ましい化合物は、米国特許第3,535,421号(1970年10月20日、Brinerら)に記載のフッ化四級アンモニウムであり、このフッ化四級アンモニウムは、洗剤特性を有する。特定のカチオン性界面活性剤はまた、本明細書に開示された組成物中で殺菌剤としても作用することができる。
【0157】
本発明の組成物中で使用できる非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド基(性質上は親水性)と、性質上は脂肪族又はアルキル芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、Pluronic、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコール、脂肪族酸、及び脂肪族エステルの、エチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、並びにこのような材料の混合物が挙げられる。
【0158】
本発明で有用な双極性イオン性合成界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、その脂肪族基は直鎖又は分枝鎖であってもよく、脂肪族置換基の1つは約8個〜約18個の炭素原子を含有し、1つは例えばカルボキシ基、スルホネート基、サルフェート基、ホスフェート基、又はホスホネート基のようなアニオン性水溶性基を含有する。
【0159】
好適なベタイン界面活性剤は、米国特許第5,180,577号(Polefkaら、1993年1月19日発行)に開示されている。典型的なアルキルジメチルベタインとしては、デシルベタイン、すなわち2−(N−デシル−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン、すなわち2−(N−coc−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタインなどが挙げられる。アミドベタインは、ココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタインなどによって例示される。選択されるベタインは、好ましくはココアミドプロピルベタイン、より好ましくはラウラミドプロピルベタインである。
【0160】
沈殿シリカは、口腔用組成物の泡立ちを減少させる傾向がある。対照的に、低い反応性を備える溶融シリカは、泡立ちを抑制せず、すなわち沈殿シリカ程には泡立ちを抑制しない。界面活性剤への干渉性の欠如は、使用する界面活性剤の量に影響を与えることができ、このことは同様に、他の変数に影響を及ぼし得る。例えば、消費者の許容可能な泡立ちを達成するために必要な界面活性剤がより少量であれば、刺激性(消費者がSLSを嫌う点として知られる)を低減することができ、又は組成物のpHを低下させて、より良好なフッ化物の取り込みを可能にし得る。
【0161】
一部の実施形態では、これらの化合物の審美的欠点を緩和するために、高分子無機質界面活性剤が添加される。高分子無機質界面活性剤は、有機リン酸ポリマーとすることができ、一部の実施形態では、アルキルリン酸エステル若しくはその塩、エトキシル化アルキルリン酸エステル及びその塩、又はアルキルリン酸エステル若しくはその塩の混合物である。一部の実施形態では、高分子無機質界面活性剤は、ポリカルボキシレート若しくはポリホスフェート、又はGantrezのような高分子カルボキシレートのコポリマーであってもよい。
【0162】
一部の実施形態では、組成物は溶融シリカを含み、かつSLSは本質的に含まずともよい。本質的に含まず、とは、組成物の約0.01重量%未満で存在することを意味する。一部の実施形態では、組成物は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、SLS以外の界面活性剤を更に含み得る。一部の実施形態では、組成物は、キレート剤を更に含み得る。一部の実施形態では、界面活性剤は、例えばベタインのような、両性界面活性剤とすることができる。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約80のPCRを有し得る。一部の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも約50%で利用可能とすることができる。一部の実施形態では、組成物は、組成物の3重量%未満の界面活性剤を有する。一部の実施形態では、組成物は、過酸化物源、及び/又は酵素を更に含み得る。一部の実施形態は、溶融シリカを含み、ラウリル硫酸ナトリウムを本質的に含まない口腔用組成物を、対象者の口腔に投与することにより、口内乾燥状態を処置する方法とすることができる。
【0163】
使用方法
本発明はまた、歯の洗浄及び研磨のための方法にも関する。本明細書の使用方法は、対象者の歯のエナメル質表面及び口腔粘膜に、本発明による口腔用組成物を接触させることを含む。処置方法は、歯磨剤を使用するブラッシング、又は歯磨剤スラリー若しくは洗口剤を使用するすすぎによるものとすることができる。他の方法としては、局所口腔用ゲル、口中スプレー、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きゲル、歯磨き粉、タブレット、歯肉縁下用ゲル、フォーム、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、ペトロラタムゲル、若しくは義歯製品、又は他の形態物を、対象者の歯及び口腔粘膜に接触させることが挙げられる。実施形態に応じて、口腔用組成物は、練り歯磨きと同じく頻繁に使用されてもよく、又はより少ない頻度、例えば週単位で使用されてもよく、又は歯面研磨ペースト、若しくは他の集中治療の形態で、専門家により使用されてもよい。
【0164】
追加的データ
図7〜図13は、溶融シリカの材料特性、並びに他の口腔ケア組成物構成成分との適合性、及びその洗浄能力についてのより詳細なデータを示す。
【0165】
図7(a)及び図7(b)は、製剤組成物、並びに対応するスズ、亜鉛、及びフッ化物の適合性のデータである。図7(a)は、口腔ケア組成物、すなわち、沈殿シリカを含む製剤A、及び溶融シリカを含む製剤Bを示す。図7(b)は、25℃及び40℃にて、2週間後、1ヶ月後、及び2ヶ月後の、%適合性で与えられる、製剤A並びに製剤Bに関する適合性データを示す。図7のデータは、溶融シリカ組成物が、スズ、亜鉛、及びフッ化物に対する、優れた安定性、並びに優れた適合性を提供することを示す。
【0166】
亜鉛塩を含む口腔用組成物を有することが望ましい場合があり、その組成物は、25℃で2週間の保管後に、約82%、85%、87%、又は90%を超える亜鉛の利用能を有する。82%、85%、87%、又は90%の利用能が、消費者による使用の前まで残存することが望まれ得る。したがって、利用能を、使用前に測定してもよい。使用前とは、製品が作製され、梱包され、店舗又は消費者に配給されているが、消費者が製品を使用する前であることを意味し得る。この時間の間の、保管条件及び保管温度は、変動するであろう。
【0167】
フッ化物イオンを含む口腔用組成物を有することが望ましい場合があり、その組成物は、25℃で2週間の保管後に、約88%、90%、91%、92%、93%、又は94%を超えるフッ化物の利用能を有する。フッ化物の利用能が、使用前に、約88%、90%、91%、92%、93%、又は94%を超えて残存することも、また望まれ得る。一部の製剤に関しては、フッ化物の利用能は、使用前に95%を超えて残存し得る。
【0168】
スズ塩を含む口腔用組成物を有することが望ましい場合があり、その組成物は、25℃で2週間の保管後に、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%を超えるスズの適合性、すなわち利用能を有する。この場合も、スズの適合性、すなわち利用能は、使用前に、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%を超えて残存することが望まれ得る。一部の組成物では、スズの利用能、すなわち適合性は、少なくとも約92%とすることができる。スズを有する溶融シリカ製剤に関しては、スズの適合性は、同等の量の沈殿シリカ及びスズを有する製剤よりも、典型的には、約20%〜約50%、約25%〜約45%、又は約30%〜約40%高いことになる。
【0169】
図8は、充填の関数としての、スズ適合性を示す。沈殿シリカの量が増えるにつれて、遊離したスズ、又は生物学的利用が可能なスズの量が低下する。表は、沈殿シリカ(Z−119)へのスズの損失が、0.0081g/gのZ−119(又は、80ppm/1%のZ−119充填)であることを示す。対照的に、溶融シリカに対するスズの損失は、0.001g/gのTecosil 44CSS(又は、10ppm/1%のTecosil 44CSS充填)である。一部の実施形態では、表面積に応じて、溶融シリカに対するスズの損失は、約5〜約50ppm/溶融シリカ1%充填、約7〜約30ppm/溶融シリカ1%充填、約8〜約20ppm/溶融シリカ1%充填、又は約10〜約15ppm/溶融シリカ1%充填である。
【0170】
図9(a)及び図9(b)は、過酸化物含有組成物、及び適合性のデータである。図9(a)は、様々な沈殿シリカ及び溶融シリカを有する、過酸化物含有組成物を示す。図9(b)は、40℃にて、初期、6日後、及び13日後の、組成物の過酸化物適合性を示す。データは、沈殿シリカを上回る、溶融シリカとの優れた過酸化物適合性を示す。一部の実施形態では、過酸化物適合性は、40℃で約13日後に、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%である。言い換えれば、一部の実施形態では、40℃で約13日後に、少なくとも約50%、60%、70%、若しくは85%の過酸化物、又は酸化剤が残存し得る。
【0171】
サンプルの調製方法は、次の通りである。過酸化物ゲル基剤18gをプラスチック容器内に移し、シリカ2gをスパチュラで十分に混合し、混合物のpHを測定し、混合物を二等分して一方の部分を25℃、他方を40℃に定置し、サンプルを安定性試験室内に25℃及び40℃で定置する。サンプル分析は、次の通りである。過酸化物分析のための初期サンプルを採取し、5日目及び12日目にサンプルを安定性試験室から取り出して1日間にわたり平衡化させ、各混合物からサンプル0.2gを取り除いて残余のサンプルを安定性試験室内に戻し、過酸化物分析を次の通りに実施する。過酸化物ゲル0.2000g(+/−0.0200g)を250mLプラスチックビーカー内に秤量し、攪拌棒及び0.04NのH2SO4、100mLを添加し、パラフィルムで覆い、少なくとも10分間攪拌し、10% KI溶液25mL及びモリブデン酸アンモニウム3滴を添加して更に3〜20分間攪拌し、0.1Nのチオ硫酸ナトリウムを使用した自動滴定によって分析する。適合性は、40℃で13日後の過酸化物のパーセントを、初期の過酸化物のパーセントで除算し、次いで100を乗じたものとして定義される。40℃で定置される製品が、延長された貯蔵期間を表すことは、当業者には既知である。すなわち、例えば40℃で1ヶ月とは、室温でおよそ8ヶ月に近似することになる。
【0172】
図10(a)は、溶融シリカ及び過酸化物を含む口腔ケア組成物である、製剤A〜製剤Eを示す。図10(b)は、溶融シリカを含むが過酸化物を含まない製剤(製剤F)及び溶融シリカも過酸化物も含まない製剤(Crest Cavity Protection練り歯磨き)と比較した、溶融シリカ及び過酸化物を有する図10(a)の組成物のうちの2つに関する、所定回数のブラシストローク後の、ウシエナメル質試料の白色度の変化(ΔL)を示す。データは、溶融シリカと過酸化物との組み合わせが、優れた洗浄性、及び優れた白化を提供することを示す。一部の実施形態では、ΔLは、50ストロークで約4.5を超え、100ストロークで約6.0を超え、200ストロークで約9.0を超え、又は400ストロークで約15.0を超えることができる。一部の実施形態では、ΔLは、Crest Cavity Protection練り歯磨きよりも、約50%〜約100%大きい場合がある。この方法は次の通りである。ウシエナメル質の基材を、G.K.Stookeyらの、J.Dental Res.,61,1236〜9,1982によって説明される、従来のPCRプロトコールにより、固定し着色する。6個の小片からなる群を、各処置過程に割り当てる(各群は、ほぼ同じ基準L値を有する)。処置ペーストの1:3スラリーを作製し、着色したウシエナメル質基材に、150グラムの較正された力をブラッシングの間かけて、50ストローク、100ストローク、200ストローク、及び400ストロークのブラッシングをする。各回数のストロークでブラッシングした後、基材を撮像し、L値に関して分析する。L値の変化は、以下の通りに算出する。ΔL=Lブラッシング後−Lブラッシング前。次いでLSDを使用して統計的に比較する。
【0173】
図11(a)は、沈殿シリカ又は溶融シリカを含む、歯磨材組成物製剤を示し、図11(b)は、対応する消費者の感知データを示す。消費者感知試験を9人の対象者の間で実施し、対象者は、各製品でブラッシングを2回行い、香味の発揮及び口内感触に関する質問に対し、質問表に書き込むことによって回答を提供した。対象者には、製品の使用中、製品の使用直後、及び製品の使用15分後の経験について回答を提供するように求めた。図11(b)に示すように、一般に、溶融シリカを含む組成物は、製剤Aで使用の沈殿シリカと比較した場合、優れた香味強度、爽快感、滑らかな歯の感触、及び清浄な口内をもたらす。
【0174】
図12は、溶融シリカを含む口腔ケア組成物の、追加的な実施例の製剤を示す。これらの製剤としては、ゲルネットワークを含む組成物、溶融シリカと沈殿シリカ及び炭酸カルシウムとの組み合わせ、SLSを含まない組成物、並びに歯面研磨ペーストとして使用、又は非日常基準で使用し得る組成物が挙げられる。
【0175】
図13(a)は、フッ化ナトリウム系組成物を示し、製剤A及び製剤Bは、従来の増粘剤と共に沈殿シリカを含み、製剤C及び製剤Dは、従来の増粘剤と共に溶融シリカを含み、並びに製剤E及び製剤Fは、ゲルネットワークと共に溶融シリカを含む。図13(b)は、図13(a)のフッ化ナトリウム系組成物に関する、RDA値及びPCR値の表であり、溶融シリカの使用が組成物の洗浄能力を改善すること、及びゲルネットワークの使用が組成物の洗浄能力を更に改善するが、その一方で、依然として許容可能な磨耗性を有することを示している。図13(c)は、図13(a)に類似の実施形態での、フッ化第一スズ系組成物を示す。図13(d)は、図13(c)の組成物に関する、対応するRDA値を示し、スズの使用が、磨耗を減少させ得ることを示唆し、スズ製剤による歯の潜在的強化を示している。
【0176】
非限定的な実施例
次の実施例に示される歯磨剤組成物は、本発明の歯磨剤組成物の具体的な実施形態を説明するものであるが、これらに限定することを意図するものではない。その他の変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実行される。
【実施例】
【0177】
実施例I.A〜Dは、溶融シリカを含む典型的な口腔用組成物である。製剤Bは、溶融シリカと沈殿シリカとの組み合せを示し、製剤Dは、溶融シリカと炭酸カルシウムとの組み合わせを示す。
【表1】
【0178】
実施例II.A〜Fは、カチオン性抗微生物剤と共に溶融シリカを含む、典型的な口腔用組成物である。
【表2】
【0179】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指示のない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の双方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0180】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれの意味又は定義と矛盾する範囲については、本文書における用語に与えられた意味又は定義が適用される。
【0181】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行い得ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有効な口腔用組成物は、歯の着色汚れを除去し、かつ歯を研磨することによって、歯の外観の維持及び保護を可能にする。また同じく、有効な口腔用組成物は外面のくずも洗浄して除去し、このことは、歯の齲蝕の防止に役立ち、歯肉の健康を促進し得る。
【0003】
口腔用組成物中の研磨剤は、歯の着色汚れが固着する、密着性のペリクル膜の除去に役立つ。通常、ペリクル膜は、歯の洗浄後の数分以内でエナメル質に付着する、薄い無細胞糖タンパク質−ムコタンパク質の被膜を含む。この膜の内部に残留する様々な食品色素の存在は、歯の変色の殆どの場合で主な原因となる。研磨剤は、象牙質及びエナメル質などの口腔組織に対する磨耗損傷を最小限に抑えつつ、ペリクル膜を除去することができる。
【0004】
洗浄に加えて、研磨された表面は、望ましくない構成成分の異所性沈着に対してより抵抗性を示し得るため、研磨剤系が歯表面の研磨を提供することが望ましい場合がある。歯の外観は、磨かれた特徴を歯に付与することによって改善することができるが、これは、歯の視覚的外観に一体となって関連する、光の反射及び散乱に対して表面粗さ、すなわち表面の研磨が影響を与えるためである。表面粗さはまた、歯の感触にも影響を与える。例えば、磨かれた歯は、清浄で、平坦で、かつ平滑な感触を有する。
【0005】
多くの歯磨剤組成物は、研磨剤として沈殿シリカを使用する。沈殿シリカは、米国特許第4,340,583号(Wason、1982年7月20日)、欧州特許第535,943(A1)号(McKeownら、1993年4月7日)、PCT出願国際公開第92/02454号(McKeownら、1992年2月20日)、米国特許第5,603,920号(Rice、1997年2月18日)、及び同第5,716,601号(Rice、1998年2月10日)、並びに同第6,740,311号(Whiteら、2004年5月25日)に注記され、説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,340,583号
【特許文献2】欧州特許第535,943(A1)号
【特許文献3】PCT出願国際公開第92/02454号
【特許文献4】米国特許第5,603,920号
【特許文献5】米国特許第5,716,601号
【特許文献6】米国特許第6,740,311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歯の有効な洗浄を提供する一方で、口腔ケア組成物中の沈殿シリカは、過酸化物のような酸化剤などの、基本的な製剤活性物質との、適合性の問題を提示し得る。過酸化物は、歯の白化のような口腔美容上の目的、並びに歯肉炎、敏感性、口腔病変、侵食、空洞、結石、歯周炎、ヘルペス口内炎、歯垢の処置、及び口臭の緩和のために有効であることが証明されている。しかし、適合性の問題のために、過酸化物及び他の酸化剤は、ユーザに効果的に送達されないことが多い。これらの適合性の問題は、表面積、ヒドロキシル基の数、及び気孔率などの沈殿シリカの表面特性、並びにシリカの純度に直接関連することが認められている。
【0008】
酸化剤のような口腔ケア活性物質との、良好な適合性を有しながらも、歯組織の有効かつ安全な洗浄及び研磨を提供する、研磨剤系が必要とされる。本発明の組成物は、そのような利益を提供することができる。したがって、本発明は、溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔ケア組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、様々な溶融シリカ及び沈殿シリカの、材料特性の表である。
【図2】図2は、溶融シリカ及び沈殿シリカに関する、適合性データの表である。
【図3A】図3(a)は、フッ化ナトリウム系の、口腔ケア組成物の製剤の表である。
【図3B】図3(b)は、図3(a)の組成物に関する、PCR値及びRDA値の表である。
【図4A】図4(a)は、フッ化スズ系の、口腔ケア組成物の製剤の表である。
【図4B】図4(b)は、図4(a)の組成物に関する、PCR値及びRDA値の表である。
【図5】図5は、溶融シリカの、洗浄性及び磨耗性の表である。
【図6A】図6(a)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6B】図6(b)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6C】図6(c)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6D】図6(d)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6E】図6(e)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6F】図6(f)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6G】図6(g)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6H】図6(h)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図6I】図6(i)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、SEM顕微鏡写真である。
【図7A】図7(a)は、組成物製剤の表である。
【図7B】図7(b)は、図7(a)の組成物に関する、スズ、亜鉛及びフッ化物の適合性の表である。
【図8】図8は、シリカ充填の関数としての、スズの適合性の表である。
【図9A】図9(a)は、過酸化物、並びに溶融シリカ及び沈殿シリカを含む、組成物製剤の表である。
【図9B】図9(b)は、図9(a)の組成物に関する、過酸化物の適合性の表である。
【図10A】図10(a)は、溶融シリカを含む組成物製剤の表である。
【図10B】図10(b)は、図10(a)の組成物に関する、洗浄及び白化の性能の表である。
【図11A】図11(a)は、溶融シリカ及び沈殿シリカを含有する、組成物製剤の表である。
【図11B】図11(b)は、図11(a)の組成物に関する、消費者感知データの表である。
【図12】図12は、追加的な製剤実施例の表である。
【図13A】図13(a)は、製剤実施例の表である。
【図13B】図13(b)は、図13(a)のフッ化ナトリウム系組成物に関する、PCR値及びRDA値の表である。
【図13C】図13(c)は、製剤実施例の表である。
【図13D】図13(d)は、図13(c)のフッ化第一スズ系組成物に関する、RDA値の表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書は、本発明を特に指摘し、明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は以下の説明からよりよく理解されると考えられる。
【0012】
定義
本明細書で使用するとき、用語「口腔使用が可能なキャリア」とは、本発明の組成物の形成、及び/若しくは安全かつ効果的な方法での本発明の組成物の口腔への適用、に使用できる、好適な賦形剤又は成分を意味する。このような賦形剤としては、フッ化物イオン源、抗菌剤、抗結石剤、緩衝剤、他の研磨剤材料、過酸化物源、アルカリ金属重炭酸塩、増粘剤、保湿剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味系、甘味剤、冷感剤、キシリトール、着色剤、他の好適な材料、及びこれらの混合物、などの材料を挙げることができる。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「含む」とは、特定的に言及したもの以外の工程、及び成分を付加できることを意味する。この用語は、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。本発明の組成物は、本明細書に記載の発明の必須要素及び制限、並びに本明細書に記載のいずれの追加的、若しくは任意選択の、成分、構成成分、工程、又は制限をも含み、これらからなり、及びこれらから本質的になることができる。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」とは、当業者の妥当な判断の範囲内にある、化合物又は組成物の明白な利益、つまり口腔の健康の利益、を誘導するのに十分な量であり、かつ/又は重篤な副作用を回避するのに十分低い量である量、すなわち合理的な利益対リスク比を提供する量を意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「口腔用組成物」とは、通常の使用過程において、口腔の活性を目的として、一部若しくは全ての、歯表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間にわたって、口腔内に保持される製品を意味する。本発明の口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きゲル、歯磨き粉、タブレット、洗口剤、歯肉縁下用ゲル、フォーム、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、歯面研磨ペースト、ペトロラタムゲル、又は義歯製品が含まれる、様々な形態とすることができる。口腔用組成物はまた、口腔表面への直接的な適用若しくは取り付け用の、ストリップ上又はフィルム上に組み込んでも、あるいはフロス内に組み込んでもよい。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「歯磨剤」とは、特に指示のない限り、口腔の表面を洗浄するために使用する、ペースト、ゲル、粉末、タブレット、又は液体の製剤を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「歯」とは、天然歯、並びに人工歯、又は歯科補綴物を指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、1種類のモノマーの重合によって作られるか、又は2種類(すなわち、コポリマー)、若しくはそれ以上の種類のモノマーによって作られる材料を含むものとする。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「水溶性」とは、本発明の組成物において、材料が水に可溶性であることを意味する。一般的には、材料は、25℃で、水溶媒の0.1重量%の濃度で、好ましくは1重量%の濃度で、より好ましくは5重量%の濃度で、より好ましくは15重量%の濃度で可溶性であるべきである。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「相」は不均質な系の、機械的に分離した、均一な部分を意味する。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に非水和」とは、材料が少数の表面ヒドロキシル基を有するか、又は表面ヒドロキシル基を実質的に含まないことを意味する。これはまた、材料が約5%未満の総水分量(自由水又は/及び結合水)を含有することも意味し得る。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「大半」とは、大きな数又は大きな部分、全体の半分を超える数を意味する。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「中央」とは、分布の中央の値であり、その値の上及び下に、同数の値が存在することを意味する。
【0024】
百分率、部、及び比は全て、特に指示のない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。記載の成分に関する、このような全ての重量は、その活性物質の濃度に基づくものであり、そのため特に指示のない限り、市販材料に含まれ得る溶媒、又は副生成物を含まない。「重量パーセント」という用語は、本明細書では「重量%」として表示し得る。
【0025】
特に指示のない限り、本明細書で使用するとき、全ての分子量は、グラム/モルで表される重量平均分子量である。
【0026】
溶融シリカ
溶融シリカは、高純度の非晶質二酸化ケイ素である。溶融石英、ガラス状シリカ、シリカガラス、又は石英ガラスと称される場合もある。溶融シリカはガラスの一種であり、ガラスには典型的であるが、原子構造における長範囲規則性を欠いている。しかし、溶融シリカの光学特性、及び熱特性は、他のガラスと比べ固有のものであり、溶融シリカは、優れた強度、熱安定性、及び紫外線透過性を一般に有する。これらの理由から、溶融シリカが、半導体の製造、及び実験機器のような状況で使用されることは既知である。
【0027】
本発明は、口腔用組成物中で、具体的には歯磨剤組成物中で、溶融シリカを使用する。現行の歯磨剤組成物の多くは、増粘剤として並びに研磨剤としてシリカを使用するが、典型的に使用されるシリカは、沈殿シリカである。沈殿シリカは、水溶液からの沈殿、又は乾燥プロセスによって作製される。対照的に、溶融シリカは、典型的には、高純度のケイ砂を、約2000℃の、極めて高温で溶融させることによって製造される。
【0028】
図1は、様々な種類の溶融シリカの、材料特性の表である。比較のために、幾つかの沈殿シリカに関する、同様の物理的特性も示す。溶融シリカを沈殿シリカから区別する、BET比表面積、乾燥減量、強熱減量、シラノール密度、嵩密度、タップ密度、吸油率、及び粒径分布を含めた、基本的な材料特性の幾つかを示す。これらの各材料特性は、以下でより詳細に説明する。
【0029】
このような高温までシリカを加熱するプロセスは、シリカの多孔性、及び表面官能基を破壊する。このことにより、超硬質で、殆どの物質に対して不活性なシリカが製造される。溶融プロセスはまた、沈殿シリカよりも低いBET比表面積も生じさせる。溶融シリカのBET比表面積は、約1m2/g〜約50m2/g、約2m2/g〜約20m2/g、約2m2/g〜約9m2/g、及び約2m2/g〜約5m2/gの範囲である。比較して、沈殿シリカは、典型的には、30m2/g〜80m2/gの範囲のBET比表面積を有する。BET比表面積は、Brunaurら、J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938)の、BET窒素吸着法によって測定される。米国特許第7,255,852号(Gallis、2007年8月14日発行)を参照されたい。
【0030】
溶融シリカは、他の種類のシリカと比較して少量の自由水又は/及び結合水を一般に有する。溶融シリカ中の結合水及び自由水の量は、一般に約10%未満である。溶融シリカ中の、結合水及び自由水の量は、約5%未満、又は約3%未満であってもよい。約5%未満の結合水及び自由水を有するシリカは、実質的に非水和であると見なすことができる。結合水及び自由水の総量は、2つの測定値、すなわち乾燥減量(LOD)及び強熱減量(LOI)を合計することによって算出することができる。乾燥減量に関しては、最初に実施し、サンプルを105℃で2時間乾燥させ、その重量喪失を自由水とすることができる。強熱減量に関しては、次いで、乾燥させたサンプルを1000℃で1時間加熱し、その重量喪失を結合水とすることができる。LODとLOIの合計が、元のサンプル中の、結合水及び自由水の総量を表す。例えば、記載の試験方法に従えば、溶融シリカ(Teco−Sil 44CSS)は、0.1%の乾燥減量、及び2.2%の強熱減量を有し、総水分量は合計2.3%である。比較して、典型的な沈殿シリカであるZ−119は、6.1%の乾燥減量、及び5.1%の強熱減量を有し、総水分量は合計11.2%である。(他の試験方法に関しては、United States Pharmacopeia−National Formulary(USP−NF),General Chapter 731,Loss on Drying、及びUSP−NF,General Chapter 733,Loss on Ignitionを参照されたい。)
溶融シリカは、他の種類のシリカと比較して、少ない数の、表面ヒドロキシル基又は表面シラノール基を有する。表面ヒドロキシル基の計量は、核磁気共鳴(nmr)を使用して、特定のシリカのシラノール密度を測定することにより、明らかにすることができる。シラノールは、ヒドロキシル置換基が直接結合したケイ素原子を含有する化合物である。様々なシリカに対して固体nmr分析を実施すると、ケイ素のシグナルは、近傍のプロトンからのエネルギー移動によって増強される。シグナルの増強量は、表面に位置する、又は表面の近くに位置するヒドロキシル基中に見出されるプロトンに対する、ケイ素原子の近接度に応じて決定される。それゆえ、正規化したシラノールシグナル強度(強度/g)として表されるシラノール密度は、表面ヒドロキシル濃度の尺度である。溶融シリカに関するシラノール密度は、約3000強度/g未満、一部の実施形態では約2000強度/g未満、及び通常は約900強度/g未満とすることができる。溶融シリカは、約10〜約800の、典型的には約300〜約700の強度/gを含有することができる。例えば、溶融シリカ(Teco−Sil 44CSS)のサンプルは、574強度/gのシラノール密度を有する。典型的な沈殿シリカは、3000強度/gを超える測定値となり、一般に3500強度/gを超える。例えば、HuberのZ−119の測定値は、3716強度/gである。シラノール密度に関する試験方法は、交差分極マジック角スピンニング(5kHz)及びプロトン高出力デカップリングによる固体nmr、並びにDoty Scientific製の7mm超音波デュアルチャネルプローブを備えたVarian Unity Plus−200分光計を使用した。緩和遅延は4秒(s)、及び接触時間は3ミリ秒とした。スキャンの数は8,000〜14,000とし、試験時間枠は、1サンプル当たり10〜14時間とした。サンプルは、正規化手順のために0.1mgに秤量する。スペクトルを絶対強度モードでプロットし、積算を絶対強度モードで得た。スペクトルをプロットし、絶対強度モードで積算することによって、シラノール密度を測定する。
【0031】
シリカの表面反応性、すなわち表面ヒドロキシルの相対数の反映は、溶液からメチルレッドを吸収するシリカの能力によって測定することができる。これによってシラノールの相対数を測定する。この試験は、メチルレッドが、シリカ表面の反応性シラノール部位上で選択的に吸光するという事実に基づく。一部の実施形態では、溶融シリカに曝した後のメチルレッド溶液は、典型的な沈殿シリカに曝した溶液の吸光度よりも、高い吸光度を有し得る。これは、溶融シリカが、沈殿シリカほどにはメチルレッド溶液と反応しないためである。一般的には、沈殿シリカはより容易にメチルレッド溶液と反応するため、溶融シリカは、標準的な沈殿シリカよりも10%高いメチルレッド溶液の吸光度を有することになる。吸光度は、470nmで測定することができる。ベンゼン中0.001%のメチルレッド10グラムを、0.1グラムの2つのシリカサンプルのそれぞれに加え、電磁攪拌器上で5分間混合する。結果得られたスラリーを、12,000rpmで5分間遠心分離し、次いで470nmでの透過率を各サンプルに関して測定し、平均化する。「Improving the Cationic Compatibility of Silica Abrasives Through the Use of Topochemical Reactions」(Gary Kelm,Nov.1,1974,in Iler,Ralph K.,The Colloid Chemistry of Silica and Silicates,Cornell University Press,Ithaca,N.Y.,1955)を参照されたい。
【0032】
理論に束縛されるものではないが、低いBET比表面積、低い気孔率、及び少ない数の表面ヒドロキシル基を有する、溶融シリカは、沈殿シリカよりも反応性が低いと考えられる。その結果、溶融シリカは、香味剤、活性物質、又はカチオンなどの、他の構成成分をより少なく吸着し得るため、それらの他の構成成分に関する、より良好な利用能がもたらされる。例えば、溶融シリカを組み込んだ歯磨剤は、優れた安定性、並びにフッ化第一スズ、亜鉛、他のカチオン性抗菌剤、及び過酸化水素に関する、優れた生物学的利用能を有する。歯磨剤組成物中に製剤化された溶融シリカは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、若しくは90%の、カチオン又は他の構成成分との適合性をもたらし得る。一部の実施形態では、カチオンはスズであってもよい。
【0033】
図2では、様々な種類の溶融シリカ及び沈殿シリカの、スズ適合性、並びにフッ化物適合性を示す。スズ適合性、及びフッ化物適合性は、グルコン酸ナトリウム0.6%及びフッ化第一スズ0.454%を含有する、ソルビトール/水混合物中に、シリカを15%加え、十分に混合することによって測定した。次に、各シリカスラリーのサンプルを、40℃で14日間安置し、次いでスズ及びフッ化物について分析した。通常の歯磨き条件下での、可溶性スズ及び可溶性亜鉛の濃度の測定は次の通りとすることができる。3:1の、水と歯磨剤(シリカ)とのスラリーを調製し、遠心分離器で上澄みの透明層を分離する。上澄みを酸溶液(硝酸、又は塩酸)で希釈し、誘電結合プラズマ発光分光分析法によって分析する。初期値から分析値を差し引くことにより、パーセント適合性を算出する。通常の歯磨き条件下での、可溶性フッ化物の濃度の測定は次の通りとすることができる。3:1の、水と歯磨剤(シリカ)とのスラリーを調製し、遠心分離器で上澄みの透明層を分離する。フッ化物電極によって(TISAB緩衝剤と1:1で混合した後)、又は水酸化物溶液で希釈し、導電率検出を用いたイオンクロマトグラフィーによる分析によって、上澄みをフッ化物に関して分析する。初期値から分析値を差し引くことにより、パーセント適合性を算出する。一般的には、カチオン適合性は、米国特許第7,255,852号に開示の「% CPC適合性試験」によって測定することができる。
【0034】
溶融シリカと沈殿シリカとの間には、適合性、及び表面ヒドロキシル濃度の他にも、他の特性上の差異が数多く存在する。例えば、溶融シリカは、より高密度であり、気孔率が低い。溶融シリカの嵩密度は、一般的には0.45g/mLより高く、約0.45g/mL〜約0.80g/mLとすることができるが、一方で沈殿シリカの嵩密度は、最大約0.40g/mLである。溶融シリカのタップ密度は、一般的には0.6g/mLより高く、約0.8g/mL〜約1.30g/mLとすることができるが、一方で沈殿シリカのタップ密度は、最大約0.55g/mLである。嵩密度及びタップ密度は、次のUSP−NF,General Chapter 616,Bulk Density and Tapped Densityにおける方法によって測定することができる。嵩密度に関しては、方法1の、Measurement in a Graduated Cylinderを使用することができ、タップ密度に関しては、機械式タップ装置を使用する、方法2に従うことができる。嵩密度、及びタップ密度は、粒子(所定の空間内に拘束される複数の粒子)の質量対体積の比を表し、所定の空間内での、閉じ込めれた空気、気孔率、及び粒子同士の密着の程度を反映する。溶融シリカに関する、粒子の真密度、すなわち固有密度(単一粒子の質量対体積の比)は、約2.1g/cm3〜2.2g/cm3であり、一方で沈殿シリカの真密度、すなわち固有密度は、最大約2.0g/cm3である。同じく、溶融シリカの比重は、約2.1〜2.2とすることができ、一方で沈殿シリカの比重は、最大約2.0とすることができる。密度におけるこの差異は、歯磨製品の製造中に顕著な影響を及ぼし得、例えば、その場合に、溶融シリカの高い密度によって、脱気の処理工程が削減又は削除され、バッチサイクル時間の短縮がもたらされ得る。
【0035】
溶融シリカは、BET比表面積と良好に相関する測定値である、比較的低い、吸水率及び吸油率を有する。溶融シリカに関する吸水率、すなわち、粉末の稠度を維持しつつ吸収可能な水の量は、約80g/100g未満、場合によっては約70g/100g未満、約60g/100g未満、又は約50g/100g未満である。溶融シリカに関する吸水率は、約40g/100g未満、場合によっては約30g/100g未満の範囲で更に低下することもあり、約2g/100g〜約30g/100gであってもよい。沈殿シリカに関しては、吸水率は、典型的には約90g/100gである。吸水率は、J.M Huber Corp.の標準的評価方法、S.E.M No.5,140(2004年8月10日)を使用して測定される。溶融シリカに関する吸油率は、フタル酸ジブチル約75mL未満/溶融シリカ100gであり、フタル酸ジブチル約60mL未満/溶融シリカ100gであってもよい。吸油率は、フタル酸ジブチル約10mL/溶融シリカ100g〜フタル酸ジブチル約50mL/溶融シリカ100gの範囲とすることができ、フタル酸ジブチル約15mL/溶融シリカ100g〜フタル酸ジブチル約45mL/溶融シリカ100gであることが望ましい場合がある。沈殿シリカに関しては、吸油率は、典型的にはフタル酸ジブチル約100mL/沈殿シリカ100gである。(吸油率は、米国特許出願第2007/0001037(A1)号(2007年1月4日公開)に記載の方法に従って測定される。)
溶融シリカは、その比較的低い吸水率のために、加工処理中にスラリー化することが可能であり、最終的に、より迅速な加工処理、及びより高速なバッチ時間を可能にする。一般に、沈殿シリカのスラリーを作り出すためには、典型的には少なくとも約50%の水が必要となる。それゆえ、口腔用組成物の製造において沈殿シリカのスラリーを使用することは実際的ではない。しかし、溶融シリカの不活性又は多孔性の欠如が、溶融シリカの比較的低い吸水率に反映されるために、溶融シリカスラリーは、一部の実施形態では約30%未満、若しくは一部の実施形態では約40%未満の水を含むように作製することができる。一部の実施形態は、溶融シリカスラリーの添加を含む、口腔ケア組成物の作製方法とすることができる。一部の実施形態では、溶融シリカスラリーは、結合剤を含む。このことは、特に多量の水が存在する場合に、溶融シリカがスラリー中に懸濁されている状態を維持する助けとなり得る。これはまた、結合剤をより長い時間水和させ得る。一部の実施形態では、結合剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースエーテルの水溶性塩、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、天然ゴム、例えばカラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。溶融シリカスラリーを予備混合してもよい。一部の実施形態では、溶融シリカスラリーは流動可能又は圧送可能であり得る。一部の実施形態では、溶融シリカスラリーは防腐剤を更に含んでもよく、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸又はパラベンを、約1%未満で使用することができる。
【0036】
溶融シリカは、一般に沈殿シリカよりも遙かに小さい導電率を有する。導電率は、溶解した電解質の間接的な測定であり、沈殿シリカは、可溶性の電解質の生成がなければ、作製することができない。そのため、沈殿シリカは、約900〜1600マイクロジーメンス/cm(脱イオン水中の5%分散に基づいて)の範囲であるが、一方で溶融シリカの測定値は、約10マイクロジーメンス/cm未満である(Thermo Electron Corporationより入手可能なOrion 3 Star Benchtop Conductivity Meterを使用して得た測定値)。
【0037】
溶融シリカのpHは、約5〜約8の範囲とすることができるが、一方で沈殿シリカのpHは、典型的には約7〜約8である。pHは、米国特許出願第2007/0001037(A1)号(2007年1月4日公開)に従って測定される。
【0038】
屈折率、すなわち光透過率の測定値は、一般に、沈殿シリカに関するものよりも、溶融シリカに関するものの方が高い。ソルビトール/水混合物中に投入した場合、溶融シリカの屈折率の測定値は少なくとも約1.45であるが、一方で沈殿シリカの測定値は、1.44〜1.448である。より高い屈折率は、透明なゲルの、より容易な作製を可能にし得る。屈折率は、米国特許出願第2006/0110307(A1)号(2006年5月25日公開)に開示の方法を使用して測定される。
【0039】
溶融シリカは、約6を超える、約6.5を超える、及び約7を超えるモース硬度を一般に有する。沈殿シリカはそれほど硬質ではなく、一般に5.5〜6のモース硬度を有する。
【0040】
溶融シリカと沈殿シリカとの間の別の相違点は純度であり、溶融シリカは、沈殿シリカよりも高い純度を有する。溶融シリカ中のシリカの重量パーセントは、約97重量%、約97.5重量%、約98重量%、約98.5重量%を超えることができ、一部の実施形態では約99重量%を超え、及び一部の実施形態では約99.5重量%を超えることができる。沈殿シリカに関しては、シリカの重量パーセントは、一般に約90重量%に過ぎない。これらの純度測定値は、水を不純物として含み、前述のLOD方法、及びLOI方法を使用して算出することができる。
【0041】
供給元によって異なるが、水以外の不純物としては、他の材料中の、金属イオン及び金属塩を挙げることができる。一般に、沈殿シリカに関しては、水以外の不純物は、殆どが硫酸ナトリウムである。沈殿シリカは、典型的には約0.5%〜2.0%の硫酸ナトリウムを有する。溶融シリカは、典型的には硫酸ナトリウムを含有しないか、又は0.4%未満で有する。水を含めない純度の値は、USP−NF Dental Silica Silicon Monographを参照することにより、以下のように測定することができる。純度は、分析物(二酸化ケイ素)試験及び硫酸ナトリウム試験の統合結果である。分析に関して―シリカゲル約1gを計量済白金皿に移し、1000℃で1時間強熱して、デシケータ内で冷却し、重量を計る。水で慎重に湿潤させ、ヒドロフルオロ酸約10mLを少しづつ増量しながら添加する。スチームバス上で蒸発乾固して、冷却する。ヒドロフルオロ酸約10mL及び硫酸約0.5mLを添加して、蒸発乾固する。全ての酸が揮発するまで徐々に温度を上昇させ、1000℃で強熱する。デシケータ内で冷却し、重量を計る。最終重量と、最初に強熱した部分の重量との差異が、SiO2の重量を表す。硫酸ナトリウム−正確に秤量された、歯科用シリカ約1gを白金皿に移し、水数滴で湿潤させて、過塩素酸15mLを添加し、ホットプレート上の皿に定置する。ヒドロフルオロ酸10mLを添加する。大量の煙が発生するまで加熱する。ヒドロフルオロ酸5mLを添加し、再び加熱して大量の煙を発生させる。ホウ酸水(25分の1)約5mLを添加し、加熱して煙を発生させる。冷却し、残留物を、塩化水素酸10mLを補助として400mLビーカーに移す。水を使用して容量を約300mLに調節し、ホットプレート上で沸騰させる。高温の塩化バリウムTS 20mLを添加する。ビーカーをホットプレート上に2時間保ち、容量が200mLを超えるように維持する。冷却した後、沈殿及び溶液を、乾燥した計量済0.8μm多孔性濾過坩堝に移す。フィルター及び沈殿を温水で8回洗浄し、坩堝を105℃で1時間乾燥させて重量を計る。この重量に0.6085を乗じたものが、採取した試料量に関しての硫酸ナトリウム含有量である。4.0%以下で検出される。純度はまた、原子吸光分光法又は元素分析の使用などの、標準的な分析技術を使用して測定することもできる。
【0042】
溶融シリカの固有の表面形態は、より好適なPCR/RDA比をもたらし得る。本発明の溶融シリカのペリクル洗浄率(PCR)、すなわち歯磨剤の洗浄特性の測定値は、約70〜約200、好ましくは約80〜約200の範囲である。本発明の溶融シリカの放射性象牙質磨耗(RDA)、すなわち歯磨剤中に組み込んだ場合の溶融シリカの磨耗性の測定値は約250未満であり、約100〜約230の範囲とすることができる。
【0043】
図3(a)は、様々な溶融シリカ及び沈殿シリカを含む、フッ化ナトリウム系製剤組成物を示す。図3(b)は、対応するPCR値及びRDA値を示す。図4(a)は、様々な溶融シリカ及び沈殿シリカを含む、フッ化第一スズ系製剤組成物を示す。図4(b)は、対応するPCR値及びRDA値を示す。PCR値は、G.K.Stookeyら、J.Dental Res.,61,1236〜9,1982の「In Vitro Removal of Stain with Dentifrice」に記載の方法によって測定される。RDA値は、Hefferrenの、Journal of Dental Research,July−August 1976,pp.563〜573による前述の方法、並びに米国特許第4,340,583号、同第4,420,312号、及び同第4,421,527号(Wason)に記載の方法に従って測定される。RDA値はまた、歯磨剤磨耗性の測定のためのADA推奨手順によって、測定することもできる。溶融シリカのPCR/RDA比は、歯磨剤中に組み込んだ場合、1を超えることが可能であり、これは、その歯磨剤が過度の磨耗性を有することなく、有効なペリクル洗浄を提供していることを示すものである。PCR/RDA比はまた、少なくとも約0.5とすることもできる。PCR/RDA比は、粒径、形状、質感、硬度、及び濃度の関数である。
【0044】
図5は、溶融シリカ及び沈殿シリカの双方の様々な量に関する、PCR並びにRDAのデータの表である。溶融シリカ(TS10及びTS44CSS)は、沈殿シリカ(Z119及びZ109)と比較して、優れた洗浄能力(PCR)を有し得ることが認められる。このデータは、5%の溶融シリカを有する口腔用組成物の方が、10%の沈殿シリカを有する口腔用組成物よりも良好に洗浄し得ることを示す。更に、このデータは、溶融シリカが、こうした洗浄性を提供し得る一方で、依然として許容可能な磨耗性レベル(RDA)の範囲内にあることを示している。
【0045】
溶融シリカの粒子の形状は、角状若しくは球状のいずれか、又は形状の組み合わせとして分類することができ、製造プロセスの種類に応じて決まる。更には、溶融シリカはまた、ミル粉砕して粒径を低減することもできる。球状粒子には、粒子全体の形状が、ほぼ丸いか又は楕円形である、いずれの粒子も含まれる。角状粒子には、多面体形状を含め、球状ではない、いずれの粒子も含まれる。角状粒子は、一部の丸い縁部、一部若しくは全ての鋭利な縁部、一部若しくは全てのぎざぎざな縁部、又は組み合わせを有し得る。溶融シリカの粒子形状は、その磨耗性に影響を与え得る。例えば、同じ粒径では、球状溶融シリカは、角状溶融シリカよりも低い放射性象牙質磨耗性(RDA)を有し得る。その結果、洗浄能力を最適化しつつも磨耗性を増大させないことが可能となり得る。あるいは別の実施例としては、歯面研磨ペースト又は週単位で使用されるペーストは、大きい粒径を有する角状溶融シリカを含むことが可能である。
【0046】
球状溶融シリカを含む組成物は、すなわち、少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状の場合には、特定の利点を有する。丸い縁部に由来して、球状溶融シリカは磨耗性が小さくなり得る。このことは、RDAに対するPCRの比が改善される一方で、依然として良好な洗浄が提供可能であることを意味する。また、磨耗性を過度なものにすることなく、球状溶融シリカを高濃度で使用することもできる。球状溶融シリカはまた、角状溶融シリカ、又は粒子の少なくとも約25%が角状であるシリカと組み合わせて使用することもできる。このことは、コストの引き下げに役立つ一方で、依然として、許容可能な磨耗性を有する良好な洗浄をもたらし得る。角状溶融シリカ及び球状溶融シリカの双方を有する実施形態では、角状溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%とすることができる。少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状である一部の実施形態では、RDAを150未満にすることができ、他の実施形態では120未満にすることができる。少なくとも25%の溶融シリカ粒子が球状である一部の実施形態では、RDAに対するPCRの比は、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、少なくとも約0.9、又は少なくとも約1.0にすることができる。それらの実施形態の一部では、溶融シリカの中央粒径は、約3.0ミクロン〜約15.0ミクロンである。
【0047】
球状溶融シリカの例としては、Spheron P1500及びSpheron N−2000R(Japanese Glass Company製)、並びにSun−Sil 130NPが挙げられる。
【0048】
重要な点は、溶融シリカ粒子は一般に、沈殿シリカほど多くの凝集クラスターを形成せず、また一般に、沈殿シリカほど容易に凝集クラスターを形成しないことである。一部の実施形態では、溶融シリカ粒子の大半は、凝集クラスターを形成しない。対照的に、沈殿シリカは一般に、不規則形状のサブミクロン一次粒子の凝集クラスターを形成する。沈殿シリカを処理、若しくは被覆して、凝集体の量を増加又は減少させることができる。溶融シリカ及び沈殿シリカの双方の粒子形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定することができる。
【0049】
図6(a)〜図6(i)は、沈殿シリカ及び溶融シリカの、3000倍の倍率でのSEM顕微鏡写真である。サンプルを、EMS575Xペルチェ冷却スパッタ被覆装置を使用して、金でスパッタ被覆した。JEOL JSM−6100を使用して、サンプル表面のSEM画像を得た。SEMを、20kV、14mm WD、並びに1500倍及び3000倍の倍率で動作させた。
【0050】
沈殿シリカZ−109の顕微鏡写真(a)、及び沈殿シリカZ−119の顕微鏡写真(b)は、不規則形状の凝集クラスターを示している。粒子は、緩く押し固まり合ったより小さな粒子が凝集して作られているように見える。溶融シリカSpheron P1500の顕微鏡写真(c)、及び溶融シリカSpheron N−2000Rの顕微鏡写真(d)は、規則的形状の回転楕円体粒子を示している。つまり、各粒子は、その殆どの部分に関して、球体状に形成されている。また、顕微鏡写真(e)、(f)、(g)、(h)及び(i)は、溶融シリカ325F、溶融シリカRG5、溶融シリカRST 2500 DSO、溶融シリカTeco−Sil 44C、及び溶融シリカTeco−Sil 44CSSの顕微鏡写真であり、不規則形状の高密度粒子を示している。一部の粒子は凝集し、緊密に押し固められている場合があるが、一方で他の粒子は、単一の塊からなるように見える。一般的には、最後の一連の溶融シリカは、明確な縁部、及び/又は鋭利な縁部を有する不規則形状の粒子を有し、角状と見なすことができる。
【0051】
一般的には、溶融シリカを含む口腔用組成物、例えば歯磨き剤は、沈殿シリカのみを含む口腔用組成物からは、双方の組成物を約500℃で灰になるまで加熱し、サンプルを比較することによって、識別することができる。約500℃までの加熱は、研磨剤のみを残すが、これはヒドロキシル基を除去するには十分な高熱ではない。溶融シリカと沈殿シリカとは、上述のようにBET比表面積、若しくはSEM分析によって、又はXRD(X線散乱法)分析によって識別することができる。
【0052】
本発明の溶融シリカの中央粒径は、Malvernレーザー光散乱粒径測定によって測定され、約1ミクロン〜約20ミクロン、約1ミクロン〜約15ミクロン、約2ミクロン〜約12ミクロン、約3ミクロン〜約10ミクロンの範囲とすることができる。角形状の粒子は、約5〜約10ミクロンの粒径(中央D50)を有し得る。D90(粒子の90%の平均寸法)が、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン未満、又は約25ミクロン未満であることが好ましい。粒径の小さい溶融シリカは、その粒子が細管の開口部を遮断し得るため、敏感性利益をもたらすことができる。粒径は、米国特許出願第2007/0001037(A1)号(2007年1月4日公開)に記載の方法を使用して測定される。
【0053】
溶融シリカ粒子の寸法は、材料の加工処理によって調節可能である。沈殿シリカは、沈殿方法に基づく寸法を有することになる。一部の沈殿シリカの粒径は、溶融シリカの粒径と部分的に一致するが、典型的には、沈殿シリカはより大きい粒径を有することになる。例えば、沈殿シリカZ−109、及び沈殿シリカZ−119は、それぞれ約6ミクロン〜約12ミクロン、及び約6ミクロン〜約14ミクロンの範囲である。しかし、例えば溶融シリカと沈殿シリカが同じ粒径を有する場合、溶融シリカ粒子の多孔性の欠如のために、溶融シリカのBET比表面積は、一般に沈殿シリカのBET比表面積よりも依然として遙かに小さくなることに留意することが重要である。そのため、沈殿シリカと同様の粒径を有する溶融シリカは、沈殿シリカから識別可能であり、沈殿シリカに勝る、改善された洗浄性、及び/又は改善された適合性をもたらすことになる。
【0054】
一部の実施形態では、溶融シリカの粒径は、洗浄用に最適化することができる。一部の実施形態では、溶融シリカの中央粒径は、約3ミクロン〜約15ミクロンとすることができ、90%の粒子は、約50ミクロン以下の粒径を有する。他の実施形態では、中央粒径は、約5ミクロン〜約10ミクロンとすることができ、90%の粒子は、約30ミクロン以下の粒径を有する。他の実施形態では、中央粒径は、約5ミクロン〜約10ミクロンとすることができ、90%の粒子は、約15ミクロン以下の粒径を有する。
【0055】
溶融シリカが沈殿シリカよりも硬質であるという事実は、そのより良好な洗浄能力に寄与する。このことは、沈殿シリカと同じ粒径で、同じ量の溶融シリカは、相対的に洗浄性がより良好であることを意味する。例えば、中央粒径及びシリカ濃度が同じ場合には、溶融シリカ組成物に関するPCRは、沈殿シリカ組成物に関するPCRよりも、少なくとも約10%大きくなり得る。
【0056】
溶融シリカのより良好な洗浄能力は、様々な製剤の可能性を導き、一部は洗浄性を最大化し、一部は洗浄性を改善する一方で磨耗性を増大させず、一部は洗浄性を改善する一方で磨耗性を減少させ、又は一部の製剤は、許容可能な洗浄性の供給に必要な研磨剤がより少なくてすむため、単純にコスト的効果が高い。一部の実施形態では、溶融シリカ研磨剤を含む口腔ケア組成物は、少なくとも約80のPCR、少なくとも約100のPCR、又は少なくとも約120のPCRを有し得る。一部の実施形態では、RDAに対するPCRの比は、少なくとも約0.6、少なくとも約0.7、少なくとも約0.8、又は少なくとも約0.9とすることができる。一部の実施形態では、組成物は、組成物の約20重量%未満の溶融シリカを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物の約15重量%未満の溶融シリカを含み、少なくとも約100のPCRを有し得るか、又は組成物の約10重量%未満の溶融シリカを含み、少なくとも約100のPCRを有し得る。
【0057】
洗浄性の改善のために最適化された一部の実施形態では、少なくとも約80%の溶融シリカ粒子は、角状であってもよい。他の実施形態では、組成物は、沈殿シリカを更に含み得る。更に他の実施形態では、組成物は、ゲルネットワーク組織を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、以下のうちの1つ以上を含み得る。抗齲蝕剤、抗侵食剤、抗菌剤、抗結石剤、抗過敏症剤、抗炎症剤、抗歯垢剤、抗歯肉炎剤、抗悪臭剤、及び/又は抗着色汚れ剤。一部の実施形態では、組成物は追加の研磨剤材料を含んでもよく、それらとしては、沈殿シリカ、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、パーライト、軽石、ピロリン酸カルシウム、ナノダイヤモンド、表面処理された脱水沈殿シリカ、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに制限されない。一部の実施形態は、口腔使用が可能なキャリア中に溶融シリカ研磨剤を含む口腔ケア組成物を使用することによって、対象者の歯及び口腔を洗浄する方法であり、溶融シリカ研磨剤は約3ミクロン〜約15ミクロンの中央粒径を有し、粒子の90%は50ミクロン以下の粒径を有する。
【0058】
一部の実施形態では、研磨及び抗敏感性の利益を重視するために、溶融シリカの粒径を低減してもよい。一部の実施形態では、溶融シリカは、約0.25ミクロン〜約5.0ミクロン、約2.0ミクロン〜約4.0ミクロン、又は約1.0ミクロン〜約2.5ミクロンの中央粒径を有し得る。一部の実施形態では、溶融シリカ粒子の10%が、約2.0ミクロン以下の粒径を有し得る。一部の実施形態では、溶融シリカ粒子の90%が、約4.0ミクロン以下の粒径を有し得る。一部の実施形態では、粒子は哺乳類の象牙細管の平均直径以下の中央粒径を有し得るため、1つ以上の粒子が細管の内部に留まることが可能になり、それによって歯の知覚敏感性を低減、又は排除する効果がもたらされる。象牙細管は、象牙質の厚み全体に広がり、象牙質形成のメカニズムの結果として生じる構造体である。象牙質の外側表面から歯髄に最近接する領域まで、これらの細管は、S字形状の経路をたどる。細管の直径、及び密度は、歯髄付近で最大である。内側表面から、最も外側の表面まで漸減しつつ、それら細管は、歯髄付近で2.5ミクロン、象牙質の中間部で1.2ミクロン、及び象牙質とエナメル質との接合部で0.9ミクロンの直径を有する。それら細管の密度は、歯髄付近で59,000〜76,000毎平方ミリメートルであり、エナメル質付近では、密度はその半分に過ぎない。
【0059】
小粒径の抗敏感性利益を増大させるために、組成物は、例えば、細管遮断剤、及び/又は敏感性抑制剤のような、追加的な抗敏感性剤を更に含み得る。細管遮断剤は、スズイオン源、ストロンチウムイオン源、カルシウムイオン源、リンイオン源、アルミニウムイオン源、マグネシウムイオン源、アミノ酸、バイオガラス、ナノ微粒子、ポリカルボキシレート、Gantrez、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。アミノ酸は、塩基性アミノ酸とすることができ、塩基性アミノ酸は、アルギニンであってもよい。ナノ微粒子は、ナノヒドロキシアパタイト、二酸化ナノチタン、ナノ金属酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。敏感性抑制剤は、フッ化カリウム、クエン酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択されるカリウム塩とすることができる。一部の実施形態は、0.25ミクロン〜約5.0ミクロンの中央粒径を有する溶融シリカを含む口腔ケア組成物を、適切な対象者に投与することにより、歯の過敏症を低減する方法とすることができる。一部の実施形態は、0.25ミクロン〜約5.0ミクロンの中央粒径を有する溶融シリカを含む口腔ケア組成物を、対象者に投与することにより、歯を研磨する方法とすることができる。
【0060】
他の実施形態では、歯面研磨ペースト又は他の非日常使用のペーストの一部であるように、粒径は比較的大きいものとすることができる。一部の実施形態では、溶融シリカは、少なくとも約7ミクロンの中央粒径を有し得、組成物は、少なくとも約100のPCRを有する。他の実施形態では、中央粒径は、約7ミクロン〜約20ミクロンとすることができる。少なくとも約7ミクロンの中央粒径を有する一部の実施形態では、軽石、パーライト、沈殿シリカ、炭酸カルシウム、もみ殻シリカ、シリカゲル、アルミナ、オルトホスフェート、ポリメタホスフェート、ピロホスフェートを含むリン酸塩、他の無機微粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択される、追加的な研磨剤を使用してもよい。より大きい粒径を有する実施形態では、溶融シリカは、組成物の約1重量%〜約10重量%とすることができる。一部の実施形態は、界面活性剤、フッ化物、又はいずれの口腔ケア活性物質も、本質的に含まずともよい。一部の実施形態は、香味剤を有し得る。一部の実施形態は、中央粒径が少なくとも約7ミクロンであり、少なくとも約100のPCRを有する口腔ケア組成物を含むことによる、歯エナメル質の洗浄及び研磨の方法である。
【0061】
溶融シリカは、シリカ(石英、又はケイ砂)を2000℃で溶融させることにより作製することができる。インゴット又はペレットの形に冷却した後、この材料をミル粉砕する。ミル粉砕技術は多岐にわたるが、一部の実施例としては、ジェットミル粉砕、ハンマーミル粉砕、又はボールミル粉砕が挙げられる。ボールミル粉砕は、より丸い縁部を粒子に生じさせることができ、一方ジェットミル粉砕は、より鋭利な縁部又はより角状の縁部を生じさせ得る。溶融シリカは、米国特許第5,004,488号(Mehrotra及びBarker、1991年)に記載のプロセスによって作製することができる。溶融シリカはまた、ケイ素の化学的ガス化、このガスの二酸化ケイ素への酸化、及び生じた微粉の熱融合を伴う、連続火炎中加水分解プロセスを通常は使用して、ケイ素に富む化学的前駆体から作製することもできる。このプロセスは球状溶融シリカを製造することができるが、より高価となり得る。沈殿シリカの作製は化学的プロセスであるが、一方で、溶融シリカの作製は、天然プロセスである。溶融シリカの製造は、より少ない廃棄物を生じ、より良好な持続可能性の利益をもたらす。
【0062】
本発明の一部の実施形態では、複数種の溶融シリカが存在し得る。例えば、溶融シリカは、4000℃のような更に高い温度でシリカを溶融することによって、作製することができる。そのような溶融シリカは、異なる粒径、又は異なる表面形態を有し得るが、比較的低い表面ヒドロキシル濃度、及び/又は低いBET比表面積に起因する低反応性を含める、上述の利点を依然として維持する。
【0063】
沈殿シリカ、すなわち水和シリカは、水酸化ナトリウムを使用してシリカ(ケイ砂)を溶解し、硫酸を添加して沈殿させることによって作製することができる。洗浄及び乾燥の後、次いで材料をミル粉砕する。そのような沈殿シリカは、米国特許第6,740,311号(White、2004年)に記載のプロセスによって作製することができる。沈殿シリカ及び他のシリカは、Ferdi Schuth、Kenneth S.W.Sing、及びJens Weitkampによる編集の、「Handbook of Porous Solids」の、Formation of Silica Sols,Gels,and Powdersと呼ばれるchapter 4.7.1.1.1において、並びにCosmetic Properties and Structure of Fine−Particle Synthetic Precipitated Silicas,S.K.Wason,Journal of Soc.Cosmetic Chem.,vol.29,(1978),pp 497〜521において、より詳細に記載されている。
【0064】
本発明で使用される溶融シリカの量は、約1%、2%、5%、7%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%〜約5%、7%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、若しくは70%、又はこれらのいずれの組み合わせとすることができる。本発明の溶融シリカは、単独で使用しても、又は他の研磨剤と共に使用してもよい。組成物は、2種類以上の溶融シリカを含み得る。溶融シリカと共に使用できる研磨剤の1種は、沈殿シリカである。本明細書に記載される組成物中の研磨剤の全体は、一般に、組成物の約5重量%〜約70重量%の濃度で存在する。好ましくは、歯磨剤組成物は、組成物の約5重量%〜約50重量%の研磨剤全体を含有する。溶融シリカと沈殿シリカの組み合わせに関しては、溶融シリカは、研磨剤全体の約1重量%〜約99重量%とすることができる。沈殿シリカは、研磨剤全体の約1重量%〜約99重量%とすることができる。一部の実施形態では、約1%〜約10%、又は約2%〜約5%の、少量の溶融シリカを使用することができる。
【0065】
溶融シリカは、エトキシル化並びに非エトキシル化脂肪族の、アルコール、酸、及びエステルのような、非イオン性界面活性剤によって処理された、無機微粒子と組み合わせて使用することができる。そのような非イオン性界面活性剤の一例は、PEG 40硬化ヒマシ油である。一般的には、本発明の口腔ケア組成物は、沈殿シリカ、炭酸カルシウム、もみ殻シリカ、シリカゲル、アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、オルトホスフェート、ポリメタホスフェート、ピロホスフェートを含むリン酸塩、他の無機微粒子、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、パーライト、軽石、ピロリン酸カルシウム、ナノダイヤモンド、表面処理された脱水沈殿シリカ、及びこれらの混合物からなる群から1つ以上選択されるような、追加の研磨剤材料と共に使用することができる。
【0066】
一部の実施形態では、他の研磨剤の溶融シリカに対する比は、約2:1を超え、一部の実施形態では、約10:1を超える。一部の実施形態では、この比は約1:1である。一部の実施形態では、溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%である。一部の実施形態では、溶融シリカの量は、研磨剤の組み合わせの約2重量%〜約25重量%である。一実施形態では、他の研磨剤は炭酸カルシウムである。一部の実施形態では、炭酸カルシウムの量は、組成物の約20重量%〜約60重量%である。一部の実施形態では、炭酸カルシウムの量は、組成物の約20重量%〜約60重量%である。別の実施形態では、追加的な研磨剤は、少なくとも1種類の沈殿シリカを含み得る。この沈殿シリカ研磨剤は、組成物の約5重量%〜約40重量%を構成し得る。研磨剤の組み合わせの中の溶融シリカの量は、組成物の約1重量%〜約10重量%を構成し得る。一部の実施形態では、研磨剤の組み合わせを含む組成物は、少なくとも約80のPCR、少なくとも約100のPCR、若しくは少なくとも約120のPCR、又は約150未満のRDA、若しくは約200未満のRDAを有し得る。
【0067】
組成物中でのカチオンの利用能を更に高めるために、本発明の溶融シリカは、表面改質沈殿シリカ、脱水沈殿シリカ、又は低減された気孔率、低減された表面ヒドロキシル基、若しくは小さい表面積を有し、通常の沈殿シリカに比べて良好なカチオン適合性を有する沈殿シリカなどの、処理された沈殿シリカと組み合わせて使用することができる。しかし、強調する点は、これらの特定の沈殿シリカは、表面ヒドロキシル基を低減させる目的のために、及び低い気孔率、若しくはカチオン適合性のような特性を改善する目的のために表面処理されるが、それらは依然として沈殿シリカと見なされることである。(例えば、米国特許第7,255,852号、同第7,438,895号、国際公開第9323007号、及び同第9406868号を参照されたい。)つまり、それらは、湿式プロセスによって製造されるシリカである。水は、製造プロセス中に加えられ、次いで後に除去される。それは、ヒドロキシル基を除去する目的で、極めて高温まで加熱され得る沈殿シリカの場合であっても、やはり当てはまる。対照的に、溶融シリカは、可能ではあるものの、表面処理する必要がないか又は全く処理されない。溶融シリカは、水を全く使用せず、加熱のみによって製造される。この加熱プロセスは、殆どの沈殿プロセスよりも、表面ヒドロキシル基を効果的に減じることができる。
【0068】
他の砥粒研磨材料としては、シリカゲル、もみ殻シリカ、アルミナ、オルトホスフェート、ポリメタホスフェート、及びピロホスフェートを含むリン酸塩、並びにこれらの混合物を挙げることができる。具体的な例としては、ジカルシウムオルトリン酸二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、βピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、並びに尿素及びホルムアルデヒドの粒子状縮合生成物などの樹脂性研磨剤材料、並びに米国特許第3,070,510号(Cooleyら、1962年12月25日発行)に開示のような他のものが挙げられる。
【0069】
研磨剤は、沈殿シリカ、又はシリカキセロゲルのようなシリカゲルとすることができ、米国特許第3,538,230号(Paderら、1970年3月2日発行)、及び同第3,862,307号(DiGiulio、1975年1月21日発行)に記載されている。例は、W.R.Grace & Company,Davison Chemical Divisionにより商標名「Syloid」で市販されているシリカキセロゲルである。また、J.M.Huber Corporationにより商標名「Zeodent」で市販されているもののような沈殿シリカ材料、具体的には、「Zeodent 109」(Z−109)及び「Zeodent 119」(Z−119)の表記を持つシリカも存在する。Z−109及びZ−119と同等の他の市販の沈殿シリカとしては、例えば、Tixosil 63、Tixosil 73、及びTixosil 103(全てRhodia製)、HuberシリカZ−103、Z−113、及びZ−124、OSC DA(TaiwanのOSC製)、並びにABSIL−200及びABSIL−HC(Madhu Silica製)が挙げられる。これらの市販の沈殿シリカのうち、Tixosil 73が、最もZ−119に類似している。本発明の沈殿シリカ研磨剤は、溶融シリカ及び他の研磨剤と組み合わせて使用することができる。
【0070】
本発明の溶融シリカと混合し得る沈殿シリカ歯科用研磨剤の種類は、米国特許第4,340,583号(Wason、1982年7月29日発行)に、より詳細に記載されている。沈殿シリカ研磨剤はまた、Riceの、米国特許第5,589,160号、同第5,603,920号、同第5,651,958号、同第5,658,553号、及び同第5,716,601号にも記載されている。
【0071】
溶融シリカの好適な1種は、C−E Minerals Productsより入手可能な、Teco−Sil 44CSSである。また、Teco−Sil 44C、Teco−Sil T10、及びTecoSpere Aと表記される溶融シリカも、C−E Minerals Productsより入手可能である。他の好適な溶融シリカとしては、R61000(Jiangsu Kaida Silicaより入手可能)、並びにSpheron N−2000R及びSpheron P1500(JGC,Japanese Glass Companyより入手可能)が挙げられる。他には、RST 2500、RG 1500、及びRG 5(Lianyungang Ristar Electronic Materialsより入手可能)、SO−C5及びSO−C4(Adamatechより入手可能)、Fuserex AS−1(Tatsumoriより入手可能)、FS 30及びFS−2DC(Denki Kagaku Kogyouより入手可能)、Min−Sil 325F(Mincoより入手可能)、並びにSunsil−130NP(Sunjinより入手可能)、並びにShin−Etsuより入手可能な溶融シリカが挙げられる。
【0072】
一部の種類の溶融シリカに関するCAS番号は、60676−86−0である。水和シリカに関するCAS番号は、7631−86−9である。溶融シリカに関するINCI名は「溶融シリカ」であるが、一方で沈殿シリカに関するINCI名は「水和シリカ」である。本発明のシリカはケイ酸塩を含まず、本発明の溶融シリカは溶融ケイ酸塩を含まない。
【0073】
口腔使用が可能なキャリア
本発明の組成物の構成成分のためのキャリアは、口腔内での使用に適したいずれの口腔使用が可能な賦形剤とすることができる。キャリアは、好適な化粧品活性物質、及び/又は治療用活性物質を含み得る。そのような活性物質としては、口腔内での使用に安全であると一般に見なされ、口腔の全体的な外観及び/又は健康に変化を提供するいずれの材料もが挙げられ、それらとしては、抗結石剤、フッ化物イオン源、スズイオン源、白化剤、抗微生物、抗悪臭剤、抗敏感性剤、抗侵食剤、抗齲蝕剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、栄養素、酸化防止剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤及び麻酔剤、H−2拮抗剤、並びにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。存在する場合、口腔ケア組成物中の、化粧品活性物質及び/又は治療用活性物質の濃度は、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約90重量%、別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約50重量%、及び別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約30重量%である。
【0074】
活性物質
溶融シリカの利点の1つは、他の材料との適合性、具体的には、活性物質などの、反応性で、効能を失い得る材料との適合性である。溶融シリカは、沈殿シリカ及び他の従来の研磨剤と比較して、活性物質との反応の度合いが大きくないため、より少ない活性物質を使用しても同様の効能を有することができる。活性物質が、不快な、若しくは強い風味、渋味、着色性、又は他の審美的欠点などの、いずれの潜在的な審美的欠点を有する場合、より少量の活性物質が好まれ得る。更には、同じ効能、又は類似の効能のためにより少量の活性物質を使用することは、コストの削減となる。あるいは、従来の使用量と同量の活性物質を使用する場合、より多くの活性物質が、効果をもたらすために利用可能であるため、その活性物質は、より高い効能を有することになる。溶融シリカは、沈殿シリカのような従来の研磨剤よりも若干硬質であるため、溶融シリカはまた、より多くの着色汚れを除去し、及び/又はより良好に洗浄することもできる。
【0075】
活性物質としては、抗菌活性物質、抗歯垢剤、抗齲蝕剤、抗敏感性剤、抗侵食剤、酸化剤、抗炎症剤、抗結石剤、栄養素、酸化防止剤、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗剤、抗ウイルス活性物質、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。材料、すなわち成分は、2種類以上の材料として分類される場合がある。例えば、酸化防止剤は、抗歯垢及び抗菌の活性物質とすることもできる。好適な活性物質の例としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、精油、モノアルキルホスフェート、過酸化水素、CPC、クロルヘキシジン、トリクロサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。以下は、本発明で使用することができる活性物質の非限定的な列挙である。
【0076】
フッ化物イオン
本発明は、安全かつ有効な量のフッ化物化合物を含み得る。フッ化物イオンは、抗齲蝕の有効性を提供するために、25℃で組成物中にフッ化物イオン濃度を付与するのに十分な量で存在してもよく、及び/又は、一実施形態では約0.0025重量%〜約5.0重量%の濃度で使用してもよく、別の実施形態では、約0.005重量%〜約2.0重量%の濃度で使用することができる。多種多様なフッ化物イオン生成材料を、本発明の組成物中の可溶性フッ化物の供給源として使用することができる。好適なフッ化物イオン生成材料の例は、米国特許第3,535,421号、及び同第3,678,154号に開示されている。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び多くの他のものが挙げられる。一実施形態では、歯磨剤組成物は、フッ化第一スズ、又はフッ化ナトリウム、並びにこれらの混合物を含む。
【0077】
口腔用組成物のpHは、約3〜約10とすることができる。pHは、一般に、当該産業において既知の方法により、スラリーpHとして測定される。口腔用組成物中で使用される活性物質に応じて、異なるpHが望まれる場合がある。フッ化物を含有する製剤に関しては、一般的な歯磨剤よりも若干低いpHを有することが望まれる場合がある。沈殿シリカ及びフッ化物を有する、典型的な口腔用組成物は、製剤中のフッ化物がフルオロケイ酸塩を形成して、次いで沈殿シリカ上のヒドロキシル基と反応することのないように、十分高いpHを有する。溶融シリカ上のヒドロキシル基の数は、沈殿シリカ上のヒドロキシル基の数よりも少ないため、このことは問題とならず、溶融シリカを有する口腔用組成物のpHは、より低くすることができる。
【0078】
溶融シリカ及びフッ化物を含有する組成物は、約6.0未満のpH、又は約5.5未満のpHを有し得る。pHは、約5.2未満、又は約5.0未満であってもよい。約3.5〜約5のpH、又は約2.4〜約4.8のpHを有することが望まれる場合がある。より多くのフッ化物を利用可能とするため、より高いフッ化物の取り込みを可能にするように、pHを5.5よりも低くすることができる。低いpHは、より多くのフッ化物を受容するように歯表面を調整する助けとなり得る。過酸化物及び溶融シリカを含有する製剤に関しては、pHは5.5未満、又は4.5未満とすることができる。過酸化物及び溶融シリカを有する製剤は、約3.5〜約4.0とすることができる。溶融シリカ、スズ、及びフッ化物を含有する製剤に関しては、5.0未満のpHを有することが望まれる場合がある。5.0未満のpHは、より多くのSnF3スズ種の生成を可能にし得る。
【0079】
抗結石剤
本発明の歯磨剤組成物はまた、抗結石剤を含み得、これは、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.05重量%〜約50重量%で存在してもよく、別の実施形態では約0.05重量%〜約25重量%であり、別の実施形態では、約0.1重量%〜約15重量%である。抗結石剤は、ポリホスフェート(ピロホスフェートを含む)及びその塩、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)及びその塩、ポリオレフィンスルホネート及びその塩、ポリビニルホスフェート及びその塩、ポリオレフィンホスフェート及びその塩、ジホスホネート及びその塩、ホスホノアルカンカルボン酸及びその塩、ポリホスホネート及びその塩、ポリビニルホスホネート及びその塩、ポリオレフィンホスホネート及びその塩、ポリペプチド、並びにこれらの混合物、ポリカルボキシレート及びその塩、カルボキシ置換ポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。一実施形態では、本明細書で使用する高分子ポリカルボキシレートとしては、米国特許第5032386号に開示されるものが挙げられる。これらの市販のポリマーの例は、International Speciality Products(ISP)による、Gantrezである。一実施形態では、塩は、アルカリ金属塩、又はアンモニウム塩である。ポリホスフェートは、一般に、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、及びこれらの混合物のような、全体的に又は部分的に中和された水溶性アルカリ金属塩として使用される。無機ポリリン酸塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、二酸ジアルキル金属(例えば、二ナトリウム)、一酸トリアルキル金属(例えば、三ナトリウム)、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、及びアルカリ金属(例えば、ナトリウム)ヘキサメタホスフェート、並びにこれらの混合物が挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェートは、通常は非晶質のガラス状材料として生じる。一実施形態では、ポリホスフェートは、FMC Corporationによる製造の、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21、ヘキサメタリン酸ナトリウム)として商業的に既知のもの、及びこれらの混合物である。本発明に有用なピロリン酸塩としては、アルカリ金属ピロホスフェート、ジ−、トリ−及びモノ−ピロリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウム、ジアルカリ金属ピロリン酸塩、テトラアルカリ金属ピロリン酸塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ピロリン酸塩は、ピロリン酸三ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na2H2P2O7)、ピロリン酸二カリウム、ピロリン酸四ナトリウム(Na4P2O7)、ピロリン酸四カリウム(K4P2O7)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。ポリオレフィンスルホネートとしては、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するもの、及びその塩が挙げられる。ポリオレフィンホスホネートとしては、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するものが挙げられる。ポリビニルホスホネートとしては、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。ジホスホネート及びその塩としては、アゾシクロアルカン−2、2−ジホスホン酸及びその塩、アゾシクロアルカン−2、2−ジホスホン酸及びその塩のイオン、アザシクロヘキサン−2、2−ジホスホン酸、アザシクロペンタン−2、2−ジホスホン酸、N−メチル−アザシクロペンタン−2、3−ジホスホン酸、EHDP(エタン−1−ヒドロキシ−1、1、−ジホスホン酸)、AHP(アザシクロヘプタン−2、2−ジホスホン酸)、エタン−1−アミノ−1、1−ジホスホネート、ジクロロメタンジホスホネートなどが挙げられる。ホスホノアルカンカルボン酸、又はそのアルカリ金属塩としては、それぞれが酸、又はアルカリ金属塩である、PPTA(ホスホノプロパントリカルボン酸)、PBTA(ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸)が挙げられる。ポリオレフィンホスフェートとしては、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するものが挙げられる。ポリペプチドとしては、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸が挙げられる。
【0080】
スズイオン
本発明の口腔用組成物は、スズイオン源を含み得る。上述のように、溶融シリカの利点の1つは、他の材料との適合性、具体的には反応性であり効能を失い得る材料との適合性である。スズイオンは、反応性と見なされるため、溶融シリカと共にスズイオンを使用することは、幾つかの重要な利益を有し得る。溶融シリカは、沈殿シリカ及び他の従来の研磨剤と比較して、スズとの反応の度合いが大きくないため、より少ないスズを使用して、同じ効能を有することができる。スズが、不快な、若しくは強い風味、渋味、着色性、又はスズを含有する口腔用組成物を消費者にとって望ましくないものにする他の審美的欠点などの、潜在的な審美的欠点を有することが、報告されている。それゆえ、より少量のスズの使用が好まれる場合がある。更には、同じ効能、又は類似の効能のためにより少量のスズを使用することは、コストの削減となる。あるいは、従来の使用量と同量のスズを使用する場合、より多くのスズが、効果をもたらすために利用可能であるため、スズは、より高い効能を有することになる。溶融シリカは、沈殿シリカのような従来の研磨剤よりも若干硬質であるため、溶融シリカはまた、より多くの着色汚れを除去し、及び/又はより良好に洗浄することもできる。スズを含有する製剤は歯の強度を向上させ得ることが、明らかになっている。それゆえ、スズを含有する製剤は、スズを含有しない同等の製剤よりも、低いRDAのスコアを有し得る。溶融シリカは良好な洗浄研磨剤であり、かつスズがより強い歯をもたらすので、より低いRDAスコアは、より良好なPCRとRDAの比をもたらし得る。溶融シリカとスズとの組み合わせがもたらす相乗効果は、より高度な効能、高度な洗浄製剤を、消費者に提供する。
【0081】
スズイオンは、フッ化第一スズ及び/又は他のスズ塩から提供することができる。フッ化第一スズは、歯肉炎、歯垢、侵食、敏感性の低減に、及び息の改善の利益に役立つことが見出されている。歯磨剤組成物中に提供されるスズイオンは、歯磨剤組成物を使用する対象者に効能を提供する。効能としては、歯肉炎の低減以外の利益を挙げることができるが、効能は、その場の歯垢代謝における顕著な量の低減として定義される。そのような効能をもたらす製剤は、典型的には、フッ化第一スズ及び/又は他のスズ塩により提供され、約50ppm〜約15,000ppmの、組成物全体中のスズイオンの範囲である、スズ濃度を含む。スズイオンは、約1,000ppm〜約10,000ppmの量で、一実施形態では、約3,000ppm〜約7,500ppmの量で存在する。他のスズ塩としては、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、マロン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、第一スズエチレングリコシド、ギ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズなどのような、有機スズカルボキシレートが挙げられる。他のスズイオン供給源としては、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、及び塩化第一スズ二水素化物などの、ハロゲン化第一スズが挙げられる。一実施形態では、スズイオン源はフッ化第一スズであり、別の実施形態では、塩化第一スズ二水和物、若しくは塩化第一スズ三水和物、又はグルコン酸第一スズである。スズ塩を組み合わせて、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約11重量%の量で存在させることができる。スズ塩は、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約7重量%の量で、他の実施形態では約0.1重量%〜約5重量%の量で、及び他の実施形態では約1.5重量%〜約3重量%の量で存在してもよい。
【0082】
白化剤(Whitening Agent)
白化剤は、本発明の歯磨剤組成物の活性物質として含まれ得る。白化に適した活性物質は、アルカリ金属過酸化物及びアルカリ土類金属過酸化物、亜塩素酸金属塩、単水和物及び四水和物を含む過ホウ酸塩、ペルホスフェート、過炭酸塩、過酸化物、並びに過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸リチウムなどの過硫酸塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。好適な過酸化物化合物としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、過酸化ストロンチウム、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、過酸化物化合物は過酸化カルバミドである。好適な亜塩素酸金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、及び亜塩素酸カリウムが挙げられる。追加的な白化活性物質は、次亜塩素酸塩及び二酸化塩素であってもよい。一実施形態では、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムである。別の実施形態では、過炭酸塩は過炭酸ナトリウムである。一実施形態では、過硫酸塩はオキソンである。これらの物質の濃度は、着色汚れを漂白するために分子が提供できる、利用可能な酸素又は塩素のそれぞれに応じて決定される。一実施形態では、白化剤は、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約40重量%の濃度で、別の実施形態では約0.1重量%〜約20重量%の濃度で、別の実施形態では約0.5重量%〜約10重量%の濃度で、及び別の実施形態では約4重量%〜約7重量%の濃度で存在することができる。
【0083】
酸化剤
本発明の組成物は、過酸化物源のような酸化剤を含有し得る。溶融シリカは、高い純度、低いBET比表面積、低い気孔率、及び少ない数の表面ヒドロキシル基を有し、沈殿シリカよりも反応性が低く、したがって、過酸化物などの酸化剤とのより良好な適合性を有する。
【0084】
過酸化物源は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、又はこれらの混合物を含み得る。一部の実施形態では、過酸化物源は過酸化水素である。他の過酸化物活性物質としては、過炭酸塩、例えば過炭酸ナトリウムのような、水と混合すると過酸化水素を生成するものを挙げることができる。特定の実施形態では、過酸化物源はスズイオン源と同じ相で存在し得る。一部の実施形態では、この組成物は、口腔用組成物の約0.01重量%〜約20重量%の過酸化物源を含み、他の実施形態では、口腔用組成物の約0.1重量%〜約5重量%、特定の実施形態では、口腔用組成物の約0.2重量%〜約3重量%、及び別の実施形態では、口腔用組成物の約0.3重量%〜約2.0重量%の過酸化物源を含む。過酸化物源は、遊離イオン、塩、錯体、又はカプセル状として提供することができる。組成物中の過酸化物は、安定であることが望ましい。過酸化物は、サイクル着色汚れ試験、又は他の関連方法によって測定される、着色汚れの低減をもたらし得る。
【0085】
以下で詳しく述べる任意成分に加えて、特定の増粘剤、及び香味剤が、過酸化物などの酸化剤とのより良好な適合性をもたらす。例えば、一部の実施形態では、好ましい増粘剤は、架橋ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、高分子アルキル化ポリエーテル、カルボマー、アルキル化カルボマー、ゲルネットワーク、非イオン性高分子増粘剤、Sepinov EMT 10(Seppic−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー)、Pure Thix 1450、1442、HH(PEG 180ラウレス−50/TMMP、又はポリエーテル1−Rockwood Specialties)、Structure 2001(Akzo−アクリレート/Steareth−20イタコネートコポリマー)、Structure 3001(Akzo−アクリレート/Ceteth−20イタコネートコポリマー)、Aculyn 28(Dow Chemical/Rohm and Haas−アクリレート/Beheneth−25メタクリレートコポリマー)、Genopur 3500D(Clariant)、Aculyn 33(Dow Chemical/Rohm and Haas−アクリレートコポリマー)、Aculyn 22(Dow Chemical/Rohm and Haas−アクリレート/Steareth−20メタクリレートコポリマー)、Aculyn 46(Dow Chemical/Rohm and Haas−PEG−150/ステアリルアルコール/SMDIコポリマー)、A500(架橋カルボキシメチルセルロース−Hercules)、Structure XL(ヒドロキシプロピルデンプンリン酸−National Starch)、及びこれらの混合物とすることができる。
【0086】
他の好適な増粘剤としては、Aristoflex AVC、AVS、BLV、及びHMB(Clariantの、アクリロイルジメチルタウリンポリマー、コポリマー、及び架橋ポリマー)のような高分子スルホン酸、Diaformer(Clariantの、アミンオキシドメタクリレートコポリマー)、Genapol(Clariantの、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル及びアルキル化ポリグリコールエトキシル化脂肪族アルコール)、脂肪族アルコール、エトキシル化脂肪族アルコール、BRIJ 721(Croda)のような高分子量非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0087】
過酸化物と特に適合する好適な香味系としては、米国特許出願第2007/0231278号に記載のものが挙げられる。一実施形態では、香味系は、過酸化物の存在下で比較的安定であることが見出されている、選択された従来の香味構成成分と共に、少なくとも1種類の二次冷感剤と組み合わせた、メントールを含む。本明細書で「安定」とは、香味の特徴又はプロファイルが著しく変化しない、又は製品の耐用期間中不変であることを意味する。
【0088】
本発明の組成物は、少なくとも約0.015重量%のメントールを含めた、約0.04重量%〜1.5重量%の全冷感剤(メントール+二次冷感剤)を含み得る。典型的には、最終組成物中のメントールの濃度は、約0.015%〜約1.0%の範囲であり、二次冷感剤の濃度は、約0.01%〜約0.5%の範囲である。好ましくは、全冷感剤の濃度は、約0.03%〜約0.6%の範囲である。
【0089】
メントールと共に使用するのに好適な二次冷感剤としては、カルボキサミド、ケタール、ジオール、メンチルエステル、及びこれらの混合物などの多種多様な材料が挙げられる。本発明の組成物中の二次冷感剤の例は、「WS−3」として商業的に既知である、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、「WS−23」として既知の、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、並びにこのシリーズの、WS−5、WS−11、WS−14、及びWS−30のような他のもの、などのパラメンタンカルボキサミド剤である。更なる好適な冷感剤としては、Takasagoによる製造の、TK−10として既知の3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、MGAとして既知のメントングリセロールアセタール、メンチルエステル、例えば、酢酸メンチル、アセト酢酸メンチル、Haarmann and Reimerにより供給されるFrescolat(登録商標)として既知の乳酸メンチル、及びV.Maneによる商標Physcoolのコハク酸モノメンチル、が挙げられる。本明細書で使用するとき、メントール及びメンチルという用語は、これらの化合物の右旋性及び左旋性の異性体、並びにこれらのラセミ混合物を包含する。TK−10は、米国特許第4,459,425号(Amanoら、1984年7月10日発行)に記載されている。WS−3、及び他の薬剤は、米国特許第4,136,163号(Watsonら、1979年1月23日発行)に記載されている。
【0090】
過酸化物の存在下で比較的安定であることが見出されている従来の香味成分としては、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸ブチル、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、オイゲノール、ユーカリプトール、チモール、桂皮アルコール、桂皮アルデヒド、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、α−テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、バニリン、エチルバニリン、プロペニルグアエトール、マルトール、エチルマルトール、ヘリオトロピン、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、オキサノン(oxanone)、メントン、β−ダマセノン、イオノン、γデカラクトン、γノナラクトン、γウンデカラクトン、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノン、及びこれらの混合物が挙げられる。一般に好適な香味剤は、過酸化物によって酸化される傾向が少ない構造的特徴及び官能基を含むものである。これらとしては、飽和した、又は安定な芳香環若しくはエステル基を含有する、香味化学物質の誘導体が挙げられる。多少の酸化又は分解を受ける場合があっても、香味の特徴又はプロファイルに著しい変化を生じない香味化学物質もまた好適である。香味剤は、一般に組成物中で、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で使用される。
【0091】
一部の実施形態では、組成物のpHは、約3.5〜約5.5とすることができ、このことにより酸化剤に更なる安定性がもたらされ得る。一部の実施形態では、組成物はスズイオン源を更に含み得る。一部の実施形態では、本発明は、溶融シリカ及び過酸化物を含む組成物を対象者の口腔に投与することにより、歯垢、歯肉炎、敏感性、口腔の悪臭、侵食、空洞、結石、及び着色汚れを低減する方法を提供することができる。一部の実施形態では、本発明は、最初に過酸化物を含まない組成物を、次いで溶融シリカ及び過酸化物を含む組成物を、対象者の口腔に投与することにより、歯垢、歯肉炎、敏感性、口腔の悪臭、侵食、空洞、結石、及び着色汚れを低減する方法を提供することができる。一部の実施形態では、組成物は、単一の相で存在することができる。一部の実施形態では、組成物は、酸化剤、並びにフッ化物イオン源、亜鉛イオン源、カルシウムイオン源、リン酸イオン源、カリウムイオン源、ストロンチウムイオン源、アルミニウムイオン源、マグネシウムイオン源、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、酸化剤、並びにポリホスフェート、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、高分子ポリエーテル、高分子アルキルホスフェート、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、ポリホスホネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるキレート剤を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、酸化剤と、抗菌剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、抗齲蝕剤、抗結石剤、抗侵食剤、抗悪臭剤、抗敏感性剤、栄養素、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗剤、抗ウイルス活性物質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される口腔ケア活性物質とを含み得る。一部の実施形態では、抗菌剤は、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、ヘキシチジン(hexitidine)、トリクロサン、金属イオン、精油、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0092】
抗菌剤
抗微生物剤を、本発明の歯磨剤組成物中に含むことができる。そのような薬剤としては、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、塩化ベンザルコニウム、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド(TDEPC)、オクテニジン、ビスビグアニド、亜鉛イオン若しくはスズイオン剤、グレープフルーツ抽出物、及びこれらの混合物のようなカチオン性抗菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗菌剤及び抗微生物剤としては、一般にトリクロサンと呼ばれる、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール;8−ヒドロキシキノリン及びその塩;塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、フッ化銅(II)、及び水酸化銅(II)が挙げられるが、これらに限定されない銅II化合物;フタル酸一カリウムマグネシウムを含む米国特許第4,994,262号で開示されているものが挙げられるが、これらに限定されないフタル酸及びその塩;サンギナリン;サリチルアニリド;ヨウ素;スルホンアミド;フェノール樹脂;デルモピノール、オクタピノール、及び他のピペリジノ誘導体;ナイアシン調剤;ナイスタチン;リンゴ抽出物;タイム油;チモール;オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、ネオマイシン、カナマイシン、塩化セチルピリジニウム、及びクリンダマイシンなどの抗生物質;上記の類似体及び塩;サリチル酸メチル;過酸化水素;亜塩素酸塩の金属塩;ピロリドンココイルアルギニンエチル;ラウロイルアルギニンモノクロルヒドロキシエチル;並びに上記の全ての混合物を挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、組成物は、フェノール樹脂抗微生物剤化合物、及びそれらの混合物を含む。抗微生物剤構成成分は、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約20重量%で存在させることができる。別の実施形態では、抗微生物剤は、一般に、本発明の口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約5重量%を構成する。
【0093】
他の抗微生物剤は、限定するものではないが、精油であってもよい。精油は、揮発性の芳香油であり、合成されてもよく、又は蒸留、圧搾、若しくは抽出による植物由来であってもよく、通常、それらが得られた植物の匂い又は香味を伝える。有用な精油は、防腐活性を提供し得る。これらの精油の一部は、香味剤としても作用する。有用な精油としては、シトラ(citra)、チモール、メントール、サリチル酸メチル(冬緑油)、ユーカリプトール、カルバクロール、カンファー、アネトール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、リモネン、オシメン(osimen)、n−デシルアルコール、シトロネル(citronel)、a−サルピネオール(salpineol)、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、メチルオイゲノール、シネロ−ル、リナロール、エチルリナラオール(linalaol)、サフロラバニリン、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、月桂樹油、ニオイヒバ油、ゲリアノール、ベルベノーン、アニス油、ベイ油、ベンズアルデヒド、ベルガモット油、苦扁桃、クロロチモール、桂皮アルデヒド、シトロネラ油、クローブ油、コールタール、ユーカリ油、グアヤコール、ヒノキチオールのようなトロポロン誘導体、ラベンダー油、カラシ油、フェノール、サリチル酸フェニル、パイン油、マツ葉油、サッサフラス油、スパイクラベンダー油、ストラックス、タイム油、トルーバルサム、テレビン油、クローブ油、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、精油は、チモール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、メントール、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0094】
本発明の一実施形態では、天然起源の香味成分のブレンド、又はそのような香味成分を含有する精油(EO)を含む口腔ケア組成物が提供され、このブレンドは、優れた抗微生物活性を呈し、少なくとも2つの構成成分、すなわち、シトラール、ネラール、ゲラニアール、ゲラニオール、及びネロールのような非環式又は非環状構造から選択される第1の構成成分、並びにユーカリプトール、オイゲノール、及びカルバクロールのような環を含むか又は環式構造から選択される第2の構成成分を含む。精油を使用して、レモングラス、カンキツ類(オレンジ、レモン、ライム)、シトロネラ、ゼラニウム、ローズ、ユーカリノキ、オレガノ、ベイ、及びクローブの油を含めた、上記の香味成分を提供することができる。しかしながら、香味成分は、天然の油又は抽出物の添加によって組成物中に供給するよりも、個別の化学物質、又は精製した化学物質として提供するほうが好ましい場合があるが、これは、それらの供給源が、組成物の他の構成成分に対して不安定となり得る他の構成成分を含有する場合があるか、又は所望の香味プロファイルとは不適合な香味の調子を引き出して、感覚刺激の観点からは許容可能性に劣る製品を生じさせる恐れがあるためである。本明細書での使用に非常に好ましいのは、所望の構成成分を主として含有するように精製、若しくは濃縮されている、天然の油、又は天然の抽出物である。
【0095】
好ましくは、このブレンドは、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の種類の、上記の構成成分を含む。このブレンドが少なくとも1種類の非環状構造、及び1種類の環状構造を含むのであれば、より多くの異なる構成成分が共にブレンドされるにつれて、抗微生物の効能の点で、より大きな相乗効果を得ることができる。好ましいブレンドは、少なくとも2種類の環状構造、又は少なくとも2種類の非環状構造を含む。例えば、2種類の非環状構造(シトラールからの、ネラール及びゲラニアール)及び環状構造としてオイゲノールを含むブレンドは、口腔の細菌に対するその効能のために非常に好ましい。別の好ましいブレンドは、3種類の非環状構造(ゲラニオール、ネラール、及びゲラニアール)、及び2種類の環状構造(オイゲノール及びユーカリプトール)を含む。そのようなブレンドの例は、米国特許出願公開第2008/0253976(A1)号に更に詳細に記載されている。
【0096】
他の抗菌剤は、塩基性アミノ酸、及び塩とすることができる。他の実施形態は、アルギニンを含み得る。
【0097】
抗歯垢剤
本発明の歯磨剤組成物は、スズ塩、銅塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、Gantrezのようなカルボキシル化ポリマーのコポリマー、又はジメチコンコポリオールのような、抗歯垢剤を含み得る。ジメチコンコポリオールは、C12〜C20アルキルジメチコンコポリオール、及びこれらの混合物から選択される。一実施形態では、ジメチコンコポリオールは、商標名Abil EM90で市販のセチルジメチコンコポリオールである。ジメチコンコポリオールは、一実施形態では、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約25重量%の濃度で、別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.01重量%〜約5重量%の濃度で、及び別の実施形態では、口腔ケア組成物の約0.1重量%〜約1.5重量%の濃度で存在することができる。
【0098】
抗炎症剤
抗炎症剤もまた、本発明の歯磨剤組成物中に存在することができる。そのような薬剤としては、オキシカム系非ステロイド性抗炎症(NSAID)剤、サリチル酸塩、プロピオン酸、酢酸、及びフェナム酸が挙げられるが、これらに限定されない。このようなNSAIDとしては、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ピロキシカム、ナブメトン、アスピリン、ジフルニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、及びアセトアミノフェンが挙げられるが、これらに限定されない。ケトロラクなどのNSAIDの使用は、米国特許第5,626,838号で特許請求されている。有効量のNSAIDを、口腔又は中咽頭へ局所投与することによって、口腔若しくは口腔咽頭の、原発性及び再発性の扁平上皮細胞癌を予防、並びに/又は処置する方法が、そこで開示されている。好適なステロイド性抗炎症剤としては、フルオシノロン(fluccinolone)及びヒドロコルチゾンのような、副腎皮質ホルモンが挙げられる。
【0099】
栄養素
栄養素は、口腔の状態を改善することができ、かつ本発明の歯磨剤組成物中に含めることができる。栄養素としては、ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、経腸栄養補給剤、及びこれらの混合物が挙げられる。有用なミネラルとしては、カルシウム、リン、亜鉛、マンガン、カリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。ビタミンは、ミネラルと共に含まれてもよく、又は別個に使用されてもよい。好適なビタミンとしては、ビタミンC及びビタミンD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラ−アミノ安息香酸、バイオフラボノイド、並びにこれらの混合物が挙げられる。経口栄養補給剤としては、アミノ酸、脂肪親和物、魚油、及びこれらの混合物が挙げられる。アミノ酸としては、L−トリプトファン、L−リジン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチン又はL−カルニチン、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。脂肪親和物としては、コリン、イノシトール、ベタイン、リノール酸、リノレン酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。魚油は、大量のω−3(N−3)多不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸を含有する。経腸栄養補給剤としては、タンパク質製品、グルコースポリマー、コーン油、ベニバナ油、中鎖トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、及び経腸栄養補給剤は、「Drug Facts and Comparisons」(ルーズリーフ式薬剤情報サービス)、Wolters Kluer Company,St.Louis,Mo.,(著作権)1997,pp.3〜17及び54〜57で、より詳細に記載されている。
【0100】
酸化防止剤
酸化防止剤は、歯磨剤組成物中で有用であると一般に認識されている。酸化防止剤は、Cadenas及びPackerの「The Handbook of Antioxidants」((著作権)1996年、Marcel Dekker,Incより)などの文献に開示されている。本発明で有用な酸化防止剤としては、ビタミンE、アスコルビン酸、尿酸、カロチノイド、ビタミンA、フラボノイド及びポリフェノール、薬草酸化防止剤、メラトニン、アミノインドール、リポ酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0101】
鎮痛剤及び麻酔剤
抗疼痛剤又は減感剤もまた、本発明の歯磨剤組成物中に存在し得る。鎮痛剤は、意識を撹乱させることなく、又は他の感覚様相を変えることなく、疼痛の閾値を上げるように中枢に作用することによって疼痛を緩和する薬剤である。そのような薬剤としては、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、フッ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、アセトアニリド、フェナセチン、アセルトファン(acertophan)、チオルファン、スピラドリン(spiradoline)、アスピリン、コデイン、テバイン、レボルフェノール(levorphenol)、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、フェナゾシン、フェンタニール、ブプレノルフィン、ブタファノール(butaphanol)、ナルブフィン、ペンタゾシン、没食子のような自然の薬草、アサルム、クベビン、ガランガ、スクテラリア、両面針、及び白しを挙げることができるが、これらに限定されない。アセトアミノフェン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸トロラミン、リドカイン、及びベンゾカインのような、麻酔剤又は局所鎮痛剤もまた存在してもよい。これらの鎮痛剤活性物質は、Kirk−Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」、第4版、第2巻、Wiley−Interscience Publishers(1992)、pp.729〜737で詳細に記載されている。
【0102】
H−1及びH−2拮抗剤、並びに抗ウイルス活性物質
本発明はまた、米国特許第5,294,433号に開示の化合物を含めた、選択的H−1及びH−2拮抗剤を所望により含み得る。本発明の組成物で有用な抗ウイルス活性物質としては、ウィルス感染を処置するために通常使用される、いずれかの既知の活性物質が挙げられる。このような抗ウイルス活性物質は、Wolters Kluer Companyの「Drug Facts and Comparisons」(著作権)1997,pp.402(a)〜407(z)に開示されている。具体例としては、米国特許第5,747,070号(1998年5月5日発行)に開示される、抗ウイルス活性物質が挙げられる。この特許は、ウイルスの制御のためにスズ塩を使用することを開示している。スズ塩、及び他の抗ウイルス活性物質は、Kirk & Othmer、「Encyclopedia of Chemical Technology」第3版、第23巻、Wiley−lnterscience Publishers、(1982),pp.42〜71に詳述されている。本発明で使用することができるスズ塩としては、有機カルボン酸第一スズ、及び無機ハロゲン化第一スズが挙げられる。フッ化第一スズを使用してもよいが、それは典型的には、別のハロゲン化第一スズ若しくは1種類以上のカルボン酸第一スズ、又は他の治療薬との組み合わせでのみ使用される。
【0103】
キレート化剤
本発明の組成物は、キレート剤(chelants)又は金属イオン封鎖剤とも呼ばれる、キレート化剤を所望により含有することができ、その多くはまた、抗結石活性、又は歯直接活性も有する。口腔ケア製品中でのキレート化剤の使用は、細菌の細胞壁中に見出されるようなカルシウムを錯化する能力のために有利である。キレート化剤はまた、このバイオマスを無傷のまま保持する助けとなるカルシウムの架橋から、カルシウムを除去することによって、歯垢を崩壊させることもできる。キレート化剤はまた、金属イオンと錯体を形成し、それによって製品の安定性又は外観に対する有害反応の防止を助ける能力も有する。鉄又は銅などのイオンのキレート化は、最終製品の酸化による変質を遅延させるのに役立つ。
【0104】
更に、キレート剤は、歯の表面に結合することにより色素体、又は色素原(chromagen)を置換することで、原理上、着色汚れを除去することができる。これらのキレート剤の定着はまた、歯表面上の色素体の結合部位を破壊するため、着色汚れの発生を防止することもできる。
【0105】
それゆえ、キレート剤は、着色汚れの緩和、及び洗浄性の改善に役立つ助けとなり得る。溶融シリカ及び研磨剤が機械的メカニズムで洗浄する一方で、キレート剤は化学的洗浄の提供に役立ち得るため、キレート剤は、洗浄性の改善に役立ち得る。溶融シリカは、良好な機械的洗浄剤であるため、より多くの着色汚れを除去することができ、キレート剤は、歯表面に再度着色汚れが付着できないように、着色汚れを保持し、懸濁し、又は錯体を形成することが望まれ得る。更にキレート剤は、歯表面を被覆して、新たな着色汚れの防止に役立つことができる。
【0106】
キレート剤は、カチオン性抗菌剤を含有する製剤への添加が望まれ得る。キレート剤を、スズ含有製剤に添加することが望まれ得る。キレート剤はスズの安定化に役立ち、より多量のスズを生物学的利用が可能なように維持することができる。キレート剤は、約4.0を超えるpHを有するスズ製剤中で使用することができる。一部の製剤では、スズは、沈殿シリカと比較して、溶融シリカに対してより安定であるため、スズはキレート剤を必要とせずに安定であることができる。
【0107】
好適なキレート化剤としては、可溶性リン酸化合物、例えば、フィチン酸塩、並びに、とりわけ、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、及びヘキサメタホスフェートを含めた2つ以上のホスフェート基を有する、直鎖ポリホスフェートが挙げられる。好ましいポリホスフェートは、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21)として商業的に既知のものなどの、平均約6〜約21のホスフェート基の数nを有する。他のポリリン酸化化合物を、ポリホスフェート、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物に加えて、又はその代わりに使用してもよい。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸、又はイノシトール六リン酸、及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィチン酸塩」は、フィチン酸及びその塩、並びに他のポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。組成物中のキレート化剤の量は、使用するキレート化剤に応じて決定され、典型的には、少なくとも約0.1%〜約20%、好ましくは約0.5%〜約10%、及びより好ましくは約1.0%〜約7%となる。
【0108】
結合、可溶化、及びカルシウム輸送の能力に関して、本明細書で有用な更なる他のリン酸化合物は、有機リン酸モノ−、ジ−、又はトリエステルを含めた、歯直接剤(tooth substantive agents)として有用な上述の界面活性有機リン酸化合物である。
【0109】
歯垢、結石、及び着色汚れの制御に有用な、キレート化特性を有する他の好適な薬剤としては、米国特許第3,678,154号(Widderら)、同第5,338,537号(White,Jrら)、及び同第5,451,号(Zerbyら)に記載のポリホスホネート、米国特許第3,737,533号(Francis)のカルボニルジホスホネート、米国特許第4,847,070号(1989年7月11日、Pyrzら)、及び同第4,661,341号(1987年4月28日、Benedictら)のアクリル酸ポリマー若しくはコポリマー、米国特許第4,775,525号(1988年10月4日発行、Pera)のアルギン酸ナトリウム、英国特許第741,315号、国際公開第99/12517号、及び米国特許第5,538,714号(Pinkら)のポリビニルピロリドン、並びに米国特許第5,670,138号(Venemaら)、及び日本公開特許第2000−0633250号(Lion Corporation)のビニルピロリドンとカルボキシレートとのコポリマーが挙げられる。
【0110】
本発明での使用に好適な、更なる他のキレート化剤は、アニオン性高分子ポリカルボキシレートである。このような材料は当該技術分野において周知であり、その遊離酸の形態で、あるいは部分的に若しくは好ましくは完全に中和された、水溶性アルカリ金属塩(例えばカリウム、好ましくはナトリウム)又はアンモニウム塩の形態で使用される。例としては、無水マレイン酸又はマレイン酸と、他の重合可能なエチレン性不飽和モノマー、好ましくは約30,000〜約1,000,000の分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル(メトキシエチレン)との1:4〜4:1のコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GAF Chemicals CorporationのGantrez(登録商標)AN 139(M.W.500,000)、AN 119(M.W.250,000)、及びS−97 Pharmaceutical Grade(M.W.70,000)として入手可能である。
【0111】
他の有効な高分子ポリカルボキシレートとしては、無水マレイン酸と、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、又はエチレンとの1:1コポリマーであって、後者は、例えばMonsanto EMA No.1103、分子量10,000、及びEMA等級61として入手可能であるもの、並びにアクリル酸と、メチル若しくはヒドロキシエチルメタクリレート、メチル若しくはエチルアクリレート、イソブチルビニルエーテル、又はN−ビニル−2−ピロリドンとの1:1コポリマーが挙げられる。
【0112】
更なる有効な高分子ポリカルボキシレートとしては、米国特許第4,138,477号(1979年2月6日、Gaffar)、及び同第4,183,914号(1980年1月15日、Gaffarら)に開示されており、無水マレイン酸と、スチレン、イソブチレン、又はエチルビニルエーテルとのコポリマー、ポリアクリル酸、ポリイタコン酸、及びポリマレイン酸、並びにUniroyal ND−2として入手可能な、分子量が1,000程度に低いスルホアクリルオリゴマー(sulfoacrylic oligomer)が挙げられる。
【0113】
他の好適なキレート剤としては、米国特許第5,015,467号(Smitherman)、同第5,849,271号、及び同第5,622,689号(双方ともLukacovic)に記載の、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、コハク酸、二コハク酸、並びにグルコン酸ナトリウム若しくはグルコン酸カリウム、及びクエン酸ナトリウム若しくはクエン酸カリウムのようなそれらの塩、クエン酸/アルカリ金属クエン酸塩の組み合わせ、酒石酸二ナトリウム、酒石酸二カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸モノスクシネートナトリウムの酸若しくは塩形態、酒石酸ジスクシネートカリウム、及びこれらの混合物のような、ポリカルボン酸並びにその塩が挙げられる。一部の実施形態では、キレート化剤の混合物又は組み合わせが存在してもよい。
【0114】
歯直接剤
本発明は、歯直接剤を含み得る。本出願の目的のために、歯直接剤もまた、キレート剤として同様に含まれる。好適な薬剤は、高分子電解質、より具体的にはアニオン性ポリマーを含めた、高分子界面活性剤(PMSA)とすることができる。PMSAは、アニオン基、例えば、ホスフェート基、ホスホネート基、カルボキシ基、又はこれらの混合を含み、したがって、カチオン性又は正帯電の実体と相互作用する能力を有する。「無機質」という記述語は、ポリマーの界面活性、又は直接性が、歯のリン酸カルシウム鉱物のような無機質表面に対するものであることを伝えるものとする。
【0115】
PMSAは、着色汚れ防止などの、その多くの利益のために、本発明の組成物中で有用である。PMSAは、その反応性又は直接性によって、無機質、すなわち歯表面に着色汚れ防止の利益を提供し、結果として、望ましくない吸着をしたペリクルタンパク質の一部を、具体的には、歯を着色する色素体の結合、結石の発達、及び望ましくない微生物種の誘引と関連する部分を脱着させると考えられる。これらのPMSAの歯上への定着はまた、歯表面上の色素体の結合部位を破壊することによって、着色汚れの発生を防止することもできる。
【0116】
PMSAの、スズイオン及びカチオン性抗微生物剤のような口腔ケア製品の着色汚れ促進成分に結合する能力もまた、有用であると考えられる。PMSAはまた、表面熱力学特性及び表面被膜特性に望ましい効果を与える歯表面調節効果も提供し、これは、すすぎ又はブラッシング間、及び最も重要なことに、すすぎ又はブラッシング後の両方に、改善された清浄さを感じさせる審美性を付与する。これらの薬剤の多くはまた、口腔組成物中に含まれた場合に、結石制御の効果を提供し、そのため、歯の外観、及び触感の双方における改善を消費者に提供することも期待される。
【0117】
PMSAとしては、歯表面に対して強い親和性を有し、ポリマー層又は被膜を歯表面に沈着させ、所望の表面改質効果を生み出すいずれの薬剤も挙げられる。そのようなポリマーの好適な例は、縮合リン酸化ポリマー;ポリホスホネート;ホスフェート若しくはホスホネート含有モノマー若しくはポリマーと、エチレン性不飽和モノマー及びアミノ酸のような他のモノマーとのコポリマー、又はタンパク質、ポリペプチド、多糖、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)及びポリ(ビニルベンジルクロライド)のような他のポリマーとのコポリマー;ポリカルボキシレート及びカルボキシ置換ポリマー;並びにこれらの混合物のような高分子電解質である。好適な高分子無機質界面活性剤としては、米国特許第5,292,501号、同第5,213,789号、同第5,093,170号、同第5,009,882号、及び同第4,939,284号(全てDegenhardtら)に記載のカルボキシ置換アルコールポリマー、並びに米国特許第5,011,913号(Benedictら)のジホスホネート誘導体化ポリマー、例えば米国特許第4,627,977号(Gaffarら)に記載のような、ポリアクリレート、及び無水マレイン酸若しくはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えばGantrez(登録商標))、が含まれる合成アニオン性ポリマーが挙げられる。好ましいポリマーは、ジホスホネート改質されたポリアクリル酸である。活性を有するポリマーは、ペリクルタンパク質を脱着し、かつエナメル質表面への付着を維持するのに十分な、表面結合特性を有さなければならない。歯表面に関しては、末端鎖又は側鎖に、ホスフェート官能基又はホスホネート官能基を有するポリマーが好ましいが、無機質結合活性を有する他のポリマーも、吸着親和性に応じて、実効を示す場合がある。
【0118】
ホスホネート含有高分子無機質界面活性剤の更なる好適な例としては、米国特許第4,877,603号(Degenhardtら)に抗結石剤として開示のジェム状ジホスホネートポリマー、米国特許第4,749,758号(Durschら)、及び英国特許第1,290,724号(双方ともHoechstに譲渡)に開示の、洗剤及び洗浄組成物中での使用に好適な、ホスホネート基含有コポリマー、並びにスケール抑制、腐食抑制、被覆、セメント、及びイオン交換樹脂を含めた適用に有用として、米国特許第5,980,776号(Zakikhaniら)、及び同第6,071,434号(Davisら)に開示される、コポリマー及びコテロマーが挙げられる。更なるポリマーとしては、英国特許第1,290,724号に開示の、ビニルホスホン酸とアクリル酸との水溶性コポリマー、及びその塩が挙げられ、このコポリマーは、約10重量%〜約90重量%のビニルホスホン酸、及び約90重量%〜約10重量%のアクリル酸を含有し、より具体的には、このコポリマーは、ビニルホスホン酸70%:アクリル酸30%、ビニルホスホン酸50%:アクリル酸50%、ビニルホスホン酸30%:アクリル酸70%の、ビニルホスホン酸とアクリル酸との重量比を有する。他の好適なポリマーとしては、Zakikhani及びDavisによって開示され、1つ以上の不飽和C=C結合(例えば、ビニリデン−1,1−ジホスホン酸、及び2−(ヒドロキシホスフィニル)エチリデン−1,1−ジホスホン酸)を有する、ジホスホネート又はポリホスホネートモノマーを、不飽和C=C結合を有する少なくとも1つの更なる化合物(例えば、アクリレート及びメタクリレートモノマー)と共重合することにより調製される、水溶性ポリマーが挙げられる。好適なポリマーとしては、Rhodiaより、表記ITC 1087(平均分子量3000〜60,000)及びポリマー1154(平均分子量6000〜55,000)として供給されているジホスホネート/アクリレートポリマーが挙げられる。
【0119】
好ましいPMSAは、イオン性フッ化物及び金属イオンのような、口腔ケア組成物の他の構成成分に対して安定である。高含水製剤中で制限された加水分解を有し、そのため単純な単一相の歯磨剤又は洗口製剤を可能にするポリマーもまた好ましい。PMSAがこれらの安定特性を有さない場合、1つの選択肢は、フッ化物又は他の不適合成分から分離された高分子無機質界面活性剤を含む、二相製剤である。別の選択肢は、非水性、実質的に非水性、又は水分が制限された組成物を配合し、PMSAと他の構成成分との間の反応を最低限に抑えることである。
【0120】
好ましいPMSAの1つは、ポリホスフェートである。ポリホスフェートは一般に、主に直鎖構造に配置された2つ以上のホスフェート分子からなると理解されているが、幾つかの環状誘導体が存在する場合もある。ピロホスフェート(n=2)は理論的にはポリホスフェートであるが、所望のポリホスフェートは、有効濃度での表面吸着により十分な非結合のホスフェート官能基を生成し、これがアニオン性表面電荷並びに表面の親水性特徴を強化するように、およそ3以上のホスフェート基を有するものである。所望の無機ポリリン酸塩としては、特に、トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、及びヘキサメタホスフェートが挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェートは、通常は非晶質のガラス状材料として生じる。本発明の組成物で好ましいのは、以下の式を有する直鎖ポリホスフェートである。
【0121】
XO(XPO3)nX
式中、Xはナトリウム、カリウム、又はアンモニウムであり、nの平均は約3〜約125である。好ましいポリホスフェートは、Sodaphos(n≒6)、Hexaphos(n≒13)、及びGlass H(n≒21)として商業的に既知のもの、並びにFMC Corporation及びAstarisによる製造のもののように、平均約6〜約21のnを有する。これらのポリホスフェートは、単独で、又は組み合わせて使用することができる。ポリホスフェートは、酸性pH、具体的にはpH 5未満で、高含水製剤中での加水分解の影響を受けやすい。したがって、より長鎖のポリホスフェート、具体的には、平均鎖長約21のGlass Hを使用することが好ましい。そのような、より長鎖のポリホスフェートは、加水分解する際に、より短鎖のポリホスフェートを生成し、それらは歯上に沈着して、着色汚れ防止効果を提供するのに依然として有効であると考えられている。
【0122】
非高分子リン酸化合物、具体的には、フィチン酸、ミオ−イノシトールペンタキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールテトラキス(二水素リン酸)、ミオ−イノシトールトリキス(二水素リン酸)、及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩のような、ポリリン酸化イノシトール化合物もまた、歯直接剤として有用である。本明細書では、ミオ−イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサキス(二水素リン酸)としても既知であるフィチン酸、又はイノシトール六リン酸、及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、若しくはアンモニウム塩が好ましい。本明細書では、用語「フィチン酸塩」は、フィチン酸及びその塩、並びに他のポリリン酸化イノシトール化合物を包含する。
【0123】
歯直接剤として有用な、他の界面活性リン酸化合物としては、米国特許第20080247973(A1)号として共に譲渡された特許出願公開に記載されるような、リン酸モノ−、ジ−又はトリエステルなどの有機リン酸が挙げられる。例としては、ドデシルホスフェート、ラウリルホスフェート、ラウレス−1ホスフェート、ラウレス−3ホスフェート、ラウレス−9ホスフェート、ジラウレス−10ホスフェート、トリラウレス−4ホスフェート、C12〜18 PEG−9ホスフェートなどの、モノ−、ジ−及びトリ−アルキルホスフェート並びにアルキル(ポリ)アルコキシホスフェート、並びにその塩が挙げられる。多くは、Croda、Rhodia、Nikkol Chemical、Sunjin、Alzo、Huntsman Chemical、Clariant、及びCognisを含めた供給元より市販されている。幾つかの好ましい薬剤は、例えば、高分子部分としての反復アルコキシ基、具体的には、3つ以上のエトキシ基、プロポキシイソプロポキシ基、又はブトキシ基を含有する高分子のものである。
【0124】
更なる好適な高分子有機リン酸剤としては、デキストランホスフェート、ポリグルコシドホスフェート、アルキルポリグルコシドホスフェート、ポリグリセリルホスフェート、アルキルポリグリセリルホスフェート、ポリエーテルホスフェート、及びアルコキシル化ポリオールホスフェートが挙げられる。幾つかの具体例は、PEGホスフェート、PPGホスフェート、アルキルPPGホスフェート、PEG/PPGホスフェート、アルキルPEG/PPGホスフェート、PEG/PPG/PEGホスフェート、ジプロピレングリコールホスフェート、PEGグリセリルホスフェート、PBG(ポリブチレングリコール)ホスフェート、PEGシクロデキストリンホスフェート、PEGソルビタンホスフェート、PEGアルキルソルビタンホスフェート、及びPEGメチルグルコシドホスフェートである。
【0125】
更なる好適な非高分子リン酸としては、アルキルモノグリセリドホスフェート、アルキルソルビタンホスフェート、アルキルメチルグルコシドホスフェート、アルキルスクロースホスフェートが挙げられる。
【0126】
他の有用な歯直接材としては、米国特許第7,025,950号、及び同第7,166,235号(双方ともProcter & Gamble Coに譲渡)に記載されるような、カルボン酸基で官能化されたシロキサンポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、疎水性のシロキサン主鎖、及びペンダントのアニオン性部分含有カルボキシ基を含み、水性基剤の製剤から、又は本質的に非水性基剤の製剤から表面に沈着して、実質的に疎水性の被膜を処理表面上に形成する能力を有する。カルボキシ官能化シロキサンポリマーは、極性表面に結合し、静電相互作用によってその上に被膜を形成する、すなわちペンダントカルボキシ基と、歯に存在するカルシウムイオンとの間で錯体生成すると考えられる。それゆえ、カルボキシ基は、シロキサンポリマー主鎖を表面上に定着させることにより、表面を疎水性に改質し、次いで、洗浄の容易性、着色汚れの除去及び防止、白化などのような、様々な最終用途の利益を表面に付与することに役立つ。カルボキシ官能化シロキサンポリマーは更に、活性の薬剤の、表面上への沈着を強化し、これらの活性物質の、処理表面上での保持及び効能を改善するように作用する。
【0127】
ビニルピロリドン(VP)モノマーの1つ又は混合物と、アルケニルカルボキシレート(AC)モノマーの1つ又は混合物、具体的には、共に譲渡された米国特許第6,682,722号に記載の、飽和直鎖又は分枝鎖C1〜C19アルキルカルボン酸のC2〜C12アルケニルエステルとを、共重合することによって調製される、水溶性又は水分散性のポリマー剤もまた、歯直接剤として有用である。例としては、ビニルピロリドンと、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、若しくはビニルブチラートのうちの1つ又は混合物とのコポリマーが挙げられる。好ましいポリマーは、約1,000〜約1,000,000、好ましくは約10,000〜約200,000、更により好ましくは約30,000〜約100,000の範囲の平均分子量を有する。
【0128】
歯直接剤の量は、典型的には、口腔用組成物全体の約0.1重量%〜約35重量%である。歯磨剤製剤では、この量は、好ましくは約2%〜約30%、より好ましくは約5%〜約25%、最も好ましくは約6%〜約20%である。洗口剤組成物では、歯直接剤の量は、好ましくは約0.1%〜5%、より好ましくは約0.5%〜約3%である。
【0129】
追加的な活性物質
本発明での使用に適した追加的な活性物質としては、インスリン、ステロイド、薬草剤、及び他の植物由来の治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。更には、当該技術分野において既知の抗歯肉炎剤又は歯肉ケア剤もまた挙げることができる。歯に清浄感を付与する構成成分が任意に含まれてもよい。これらの構成成分としては、例えば、重曹、又はGlass−Hを挙げることができる。また、治療の特定の形態では、これら上記指名の薬剤の組み合わせが、最適の効果を得るために有用である可能性がある。したがって、例えば、抗微生物剤及び抗炎症剤を、単一の歯磨剤組成物中で併用し、複合的な有効性を提供することができる。
【0130】
使用される任意薬剤としては、例えば米国特許第4,627,977号に記載のような、ポリアクリレート、及び無水マレイン酸若しくはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、Gantrez)を含む、合成アニオン性ポリマーとして既知の材料、並びに例えばポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリホスフェート(例えば、トリポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート)、ジホスホネート(例えば、EHDP、AHP)、ポリペプチド(例えば、ポリアスパラギン酸、及びポリグルタミン酸)、並びにこれらの混合物が挙げられる。更には、歯磨剤組成物としては、米国特許第6,682,722号、及び同第6,589,512号、並びに米国特許出願第10/424,640号、及び同第10/430,617号に記載のような、ポリマーキャリアを挙げることができる。
【0131】
他の任意成分
緩衝剤
歯磨剤組成物は、緩衝剤を含有し得る。緩衝剤は、本明細書で使用するとき、歯磨剤組成物のpHを約pH 3.0〜約pH 10に調整するために使用できる薬剤を指す。緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、グルコン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は、歯磨剤組成物の約0.1重量%〜約30重量%の濃度で、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%の濃度で、及びより好ましくは約0.3重量%〜約3重量%の濃度で使用される。
【0132】
着色剤
着色剤もまた、本発明の組成物に添加することができる。着色剤は水溶液の形態であってもよく、好ましくは1%の着色剤水溶液であってもよい。顔料、パール剤、粉末充填剤、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、及び歯磨剤組成物に視覚的変化を生みだすことができる他の材料も使用できる。着色剤溶液及び他の薬剤は、一般に、組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する。二酸化チタンもまた、本発明の組成物に添加することができる。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、組成物の約0.25重量%〜約5重量%を構成する。
【0133】
香味剤
好適な香味構成成分としては、冬緑油、クローブバッドオイル、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリオイル、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4−シス−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−パラ−tert−ブチルフェニルアセテート、クランベリー、チョコレート、緑茶、及びこれらの混合物が挙げられる。精油もまた、香味剤として含まれてもよく、抗菌剤の考察において上記で説明されている。冷感剤もまた、香味組成物の部分とすることができる。本発明の組成物に好適な冷感剤としては、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(WS−3、WS−23、WS−5として商業的に既知である)、MGA、TK−10、Physcool、及びこれらの混合物のような、パラメンタンカルボキシアミド剤が挙げられる。唾液分泌促進剤、加温剤、局部麻酔剤、及び他の任意材料は、口腔用組成物が使用されている間に、シグナルを放出するために使用することができる。沈殿シリカの相互作用性に由来して、香味構成成分は捕捉又は乳化されて効果が消失することから、ユーザに知覚されない場合がある。対照的に、溶融シリカの相互作用性の欠如は、顕著な効果を達成するために添加しなければならない、香味構成成分の量に影響を与え得る。一部の実施形態では、存在する香味剤の量は、同等の沈殿シリカ製剤よりも、組成物の約10重量%、約20重量%、又は約50重量%少ないが、その一方で同じ香味効果を達成することができる。
【0134】
香味組成物は、口腔ケア組成物中で、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で通常使用される。香味組成物は、好ましくは約0.01重量%〜約4重量%の量で、より好ましくは約0.1重量%〜約3重量%の量で、及びより好ましくは約0.5重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0135】
同様に、冷感剤は、本発明の組成物中にそれほど多量に吸収され得ず、このことは、冷感剤がより長く持続し得るか、又はより少量での使用が可能であることを意味する。精油もまた、より少なく吸収され得るため、より少量の使用で、同じ有効性を達成することができる。溶融シリカは、沈殿シリカのように味覚受容体に結合することがなく、このことは、味覚受容体が、香味剤によりアクセス可能であり得ることを意味する。
【0136】
例えば、清浄な口の経験、及び甘味若しくは冷感の感知の増大のような、他の審美的利益が、ユーザには明白であり得る。改善された、滑らかで清浄な口内感覚は、口内乾燥のより少ない感知の一因となり得、並びに溶融シリカの改善された洗浄は、ムチン(muscin)の層の除去に役立ち、保湿の感知を増大させることができる。消費者の別の審美的利益は、口腔用組成物の口からのすすぎ出しの改善であり得るが、これは、ユーザがブラッシングする間、不活性の溶融シリカ粒子は凝集せずに依然として分散しているためである。更に別の潜在的利益は、泡立ちの改善である。この点でも、溶融シリカは、沈殿シリカよりも反応性が小さいため、界面活性剤がより利用可能であり、改善された泡立ちが生じ得る。
【0137】
一部の実施形態は、小直径の感覚ニューロン上に優先的に発現し、有害物質並びに他の物質を検出する、リガンド開口型、非選択性カチオンチャネルである、TRPV1活性剤、すなわち一過性受容器電位バニロイド受容体1活性剤を含み得る。異味の構成成分を含む口腔ケア組成物にTRPV1活性剤を添加することにより、この組成物のユーザは、TRPV1活性剤を有さない口腔ケア組成物に勝る改善された味を経験することができる。このように、TRPV1活性剤は、口腔ケア組成物中で使用される多くの構成成分に関連した嫌な味を相殺する働きをする。これらの活性剤は、嫌な味を相殺し得るばかりではなく、乾燥状態を感知する口の能力を制限することによって、乾燥状態の感知を低減することもできる。一実施形態では、TRPV1活性剤は、バニリルブチルエーテル、ジンゲロン、カプサイシン、カプシエイト、ショウガオール(shoagol)、ギンゲロール、ピペリン、又はこれらの組み合わせを含む。一実施形態では、TRPV1活性剤を、口腔ケア組成物の約0.0001重量%〜約0.25重量%の量で添加する。
【0138】
甘味剤
甘味剤を組成物に添加することができる。これらとしては、サッカリン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物のような、甘味剤が挙げられる。様々な着色剤もまた、本発明中に組み込んでもよい。甘味剤は、一般に口腔用組成物中で、組成物の約0.005重量%〜約5重量%の濃度で使用される。
【0139】
増粘剤
高分子増粘剤などの、追加的な増粘剤を利用することができる。好適な増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのような、セルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴムのような、天然ゴムも使用することができる。更に質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム、又は超微粒子状シリカが、増粘剤の一部として使用できる。他の増粘剤としては、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、又はゲルネットワークを挙げることができる。増粘剤としては、高分子ポリエーテル化合物、例えば、炭素原子1個〜約18個を含有するアルキル基又はアシル基で末端保護されたポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシド(分子量300〜1,000,000)を挙げることができる。
【0140】
増粘剤又はゲル化剤の好適な部類としては、ペンタエリスリトールのアルキルエーテルで若しくはスクロースのアルキルエーテルで架橋された、アクリル酸のホモポリマー、又はカルボマーの部類が挙げられる。カルボマーは、B.F.Goodrichより、Carbopol(登録商標)シリーズとして市販されている。具体的には、カーボポールとしては、Carbopol 934、940、941、956、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0141】
約1,000〜約120,000(数平均)の範囲の分子量を有する、ラクチドモノマーとグリコリドモノマーとのコポリマーは、「歯肉縁下用ゲルキャリア」として、歯周ポケットの中又は歯周ポケットの周りに活性物質を送達するのに有用である。これらのポリマーは、米国特許第5,198,220号、同第5,242,910号、及び同第4,443,430号に記載されている。
【0142】
沈殿シリカの、他の製剤構成成分との相互作用のために、沈殿シリカは、組成物のレオロジーに、経時的な影響を及ぼし得る。しかしながら溶融シリカは、他の製剤構成成分との相互作用の欠如のために、レオロジーに及ぼす影響は少ない。このことは、溶融シリカを有して製剤化される口腔ケア組成物は、より経時的に安定であるため、とりわけ、より良好な洗浄、及びより良好な予測可能性を可能にし得ることを意味する。それゆえ、一部の実施形態では、増粘剤の組み合わせ及び量は、従来の歯磨剤とは非常に異なる場合がある。本発明では、増粘剤は、口腔用組成物全体の約0重量%〜約15重量%の量、若しくは約0.01重量%〜約10重量%の量で、又は他の実施形態では、口腔用組成物全体の約0.1重量%〜約5重量%の量で使用することができる。
【0143】
本発明の一部の実施形態では、組成物は、天然源及び合成源から選択される増粘剤を含み得る。一部の実施形態では、増粘剤は、粘土、ラポナイト、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。一部の実施形態では、組成物は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースエーテルの水溶性塩、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、天然ゴム、例えばカラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、並びにこれらの混合物からなる群から選択される増粘剤を更に含むことができる。
【0144】
他の可能な増粘剤としては、カルボマー、疎水変性カルボマー、カルボキシメチルセルロース、セチル/ステアリルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、アシル化ジェランガム、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸ナトリウム、微結晶セルロース、微細繊維状セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、セチルヒドロキシエチルセルロース、架橋アクリロイルメチルプロパンスルホン酸ナトリウム及びコポリマー、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0145】
組成物の作製時の粘度を、そのまま組成物の粘度とすることができ、又は言い換えれば、組成物は、安定した粘度を有することができる。粘度が安定であると見なされる場合には、典型的には、粘度は30日後で約5%を超えて変化しない。一部の実施形態では、組成物の粘度は、約30日後で約5%を超えて、約30日後で約10%を超えて、約30日後で約20%を超えて、又は約90日後で約50%を超えて、変化しない。経時的に不安定な粘度の問題は、水分量が少ない製剤ではより顕著であるため、一部の実施形態では、本発明の組成物は、約20%未満の総水分量、又は約10%未満の総水分量を含有し得る。
【0146】
ゲルネットワーク
ゲルネットワークを、口腔用組成物中で使用することができる。口腔用組成物を構造化するため、又は活性物質、香味剤、若しくは他の反応性材料の送達を助けるために、ゲルネットワークを使用することができる。溶融シリカ口腔用組成物の増粘化、すなわち所望のレオロジーを溶融シリカ口腔用組成物に提供することを意味する構造化のために、ゲルネットワークを単独で、又は他の増粘剤、若しくは構造剤と組み合わせて、使用することができる。溶融シリカは、口腔用組成物中の、一部の他の研磨剤又は材料よりも高密度であるため、ゲルネットワーク組成物は、溶融シリカにとって有利であり得るレオロジーを有する。溶融シリカは、より重質、すなわちより高密度であるため、他の低密度の材料よりも、組成物又は溶液から、容易に抽出され、又は脱落し得る。このことは、組成物が水で希釈される場合に起こり得る。例えば、歯磨剤をブラッシングに使用する場合、歯磨剤は、口中にあるときに水によって希釈される。歯磨剤の構造化を補助するゲルネットワークを含有する、歯磨剤に関する希釈レオロジーは、高分子材料又はより一般的な増粘材料によって構造化された歯磨剤よりも高い可能性がある。より高い希釈レオロジーは、溶融シリカの懸濁を保ち、溶融シリカが、より完全に洗浄プロセスに関与することを可能にするという点で有益である。研磨剤のような材料が、一旦希釈された後、組成物中に懸濁又は維持されない場合は、ペリクル洗浄率などの洗浄の効能が減少する可能性がある。更には、研磨剤、すなわち溶融シリカがより多く懸濁するにつれて、より多くの研磨剤が洗浄に関与することが可能となるため、口腔用組成物は、全体としてより少量の研磨剤を含み得る。図13は、ゲルネットワークによって構造化されずに一般的な高分子結合剤によって増粘された組成物と比較した、ゲルネットワークによって構造化された組成物に関する、PCR及びRDAのデータを示す。図に示すように、15%の溶融シリカを含有する製剤中でゲルネットワークを使用した場合、PCRのスコアは、92.5から127.56へ、及び95.44から121.04へと増大している。この約10%、約15%、約20%、又は約25%を超えるPCRの増大は、洗浄の間、より多くの溶融シリカを懸濁させるゲルネットワークの能力によるものである可能性がある。洗浄のスコアは上昇するが、その一方で、磨耗は許容可能な範囲に留まる。
【0147】
本発明の口腔用組成物は、分散ゲルネットワークを含み得る。本明細書で使用するとき、用語「ゲルネットワーク」とは、少なくとも1種類の脂肪族両親媒性物質、少なくとも1種類の界面活性剤、及び溶媒を含む、層状の、又は小胞性の固体結晶相を指す。層状相、又は小胞性相は、脂肪族両親媒性物質及び第2界面活性剤を含む第1層と、交互の、溶媒を含む第2層とから構成される二重層を含む。層状結晶相を形成するためには、脂肪族両親媒性物質及び第2界面活性剤は、溶媒内で分散しなければならない。本明細書で使用するとき、用語「固体結晶」とは、1種類以上の脂肪族両親媒性物質を含むゲルネットワーク中の層の鎖融解温度未満の温度において形成される、層状相又は小胞性相の構造を指す。本発明での使用に好適なゲルネットワークは、ゲルネットワークの材料、作製方法、及び使用を説明する米国特許第2008/0081023(A1)号で、より詳細に記載されている。更には、米国特許第2009/0246151(A1)号もまた、ゲルネットワーク、及びゲルネットワークを含有する組成物の作製方法を記載している。
【0148】
口腔用組成物中のゲルネットワークを使用して、口腔用組成物を構造化することができる。ゲルネットワークによって提供される構造化は、口腔用組成物を増粘化させることによって所望のレオロジー又は粘度を提供する。構造化は、高分子増粘剤を必要とすることなく行うことができるが、口腔用組成物の構造化のために、高分子増粘剤、又は他の薬剤を、ゲルネットワークに加えて使用することができる。溶融シリカは増粘化をもたらさないか、又は一般的な沈殿シリカほど増粘化をもたらさないため、口腔用組成物の増粘化は、口腔用組成物の構造化のために使用されるゲルネットワークから、より大きな利益を得ることができる。溶融シリカが口腔用組成物の粘度若しくは増粘化に与える影響が、小さいものであるか又は全く影響しないことは、ゲルネットワーク又は他の増粘系を、口腔用組成物に配合することを可能にし、次いで、沈殿シリカの量を調節する場合には不可欠となる、増粘化のレベル再調節を必要とすることなく、所望の量の溶融シリカを添加することができる、という利益も提供し得る。
【0149】
本発明のゲルネットワーク構成成分は、少なくとも1種類の脂肪族両親媒性物質を含む。本明細書で使用するとき、「脂肪族両親媒性物質」とは、疎水性末端基、及び化合物を水溶性にしない(不混和性)親水性先端基を有する化合物を指し、この化合物はまた、口腔用組成物のpHにおいて、正味の中性電荷も有する。脂肪族両親媒性物質は、脂肪族アルコール、アルコキシル化脂肪族アルコール、脂肪族フェノール、アルコキシル化脂肪族フェノール、脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸アミド、脂肪族アミン、脂肪族アルキルアミドアルキルアミン、脂肪族アルコキシル化アミン、脂肪族カルバメート、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸、アルコキシル化脂肪酸、脂肪族ジエステル、脂肪族ソルビタンエステル、脂肪族糖エステル、メチルグルコシドエステル、脂肪族グリコールエステル、モノ、ジ−、及びトリ−グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、コレステロール、セラミド、脂肪族シリコーンワックス、脂肪族グルコースアミド、並びにリン脂質からなる群から選択することができる。好適な脂肪族両親媒性物質としては、セチルアルコールとステアリルアルコールとの組み合わせが挙げられる。
【0150】
ゲルネットワークはまた、界面活性剤を含む。1種類以上の界面活性剤を脂肪族両親媒性物質及び口腔キャリアと組み合わせ、本発明のゲルネットワークを形成する。界面活性剤は一般に水溶性であるか、又は溶媒と混和性、若しくは口腔キャリアと混和性である。好適な界面活性剤としては、アニオン性、双極性、両性、カチオン性、及び非イオン性の界面活性剤が挙げられる。一実施形態では、ラウリル硫酸ナトリウムのような、アニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、アニオン性及び非イオン性界面活性剤のような、2種類以上の界面活性剤の組み合わせであってもよい。ゲルネットワークはまた、水、又は他の好適な溶媒などの、溶媒も含む傾向にある。溶媒及び界面活性剤は、協働して脂肪族両親媒性物質の膨潤に寄与する。このことは同様に、ゲルネットワークの形成、及び安定性を導く。ゲルネットワークの形成に加えて、溶媒は、空気に曝された際に歯磨剤組成物が硬化することを防ぎ、口内に湿潤感を提供することに役立ち得る。本明細書で使用するとき、溶媒とは、本発明のゲルネットワークの形成において、水の代わりに、又は水と組み合わせて使用することができる好適な溶媒を指す。本発明に好適な溶媒としては、水、食用多価アルコール、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、エリスリトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びこれらの組み合わせが、好ましい溶媒である。
【0151】
ゲルネットワークを形成するために、口腔用組成物は、口腔用組成物の約0.05重量%〜約30重量%の量で、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%の量で、及びより好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の量で、脂肪族両親媒性物質を含み得る。脂肪族両親媒性物質の量は、ゲルネットワークの形成、及び口腔用製剤の組成に基づいて選択される。例えば、少量の水を含有する口腔用組成物は、約1%の脂肪族両親媒性物質を必要とし得るが、多量の水を含む口腔用組成物は、6%以上の脂肪族両親媒性物質を必要とし得る。ゲルネットワークを形成するために必要な、界面活性剤及び溶媒の量もまた、選択される材料、ゲルネットワークの機能、及び脂肪族両親媒性物質の量に基づいて変化する。ゲルネットワーク相の部分としての界面活性剤は、典型的には、口腔用組成物の約0.01重量%〜約15重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、及びより好ましくは約0.3重量%〜約5重量%の量である。一部の実施形態では、界面活性剤の希釈水溶液を利用する。一実施形態では、界面活性剤の量は、口腔用組成物中で所望される泡立ちのレベルに基づいて、及び界面活性剤によって生じる刺激に基づいて選択される。溶媒は、本発明に従った、脂肪族両親媒性物質及び界面活性剤と組み合わせた場合に、ゲルネットワークを達成するのに好適な量で、存在することができる。口腔用組成物は、口腔用組成物の少なくとも約0.05重量%の溶媒を含み得る。溶媒は、口腔用組成物中に、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してもよい。
【0152】
保湿剤
保湿剤は、空気に曝された際に歯磨剤組成物が硬化することを防ぎ、口内に湿潤感を提供することに役立ち得る。保湿剤、すなわち追加的な溶媒を、口腔キャリア相に添加することができる。本発明に好適な保湿剤としては、水、食用多価アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びこれらの組み合わせが、好ましい保湿剤である。保湿剤は、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してもよい。
【0153】
界面活性剤
界面活性剤を、歯磨剤組成物に添加してもよい。界面活性剤はまた、一般的に起泡剤とも称され、歯磨剤組成物の洗浄、又は泡立ちを補助し得る。好適な界面活性剤は、広いpH範囲にわたって、適度に安定で泡立つものである。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双極性イオン性、カチオン性、又はこれらの混合であってもよい。
【0154】
本明細書で有用なアニオン性界面活性剤の例としては、アルキル基に8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、この種類のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤の例は、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムのようなサルコシネート、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。アニオン性界面活性剤の混合物も使用できる。多数の好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458号(Agricolaら、1976年5月25日発行)に開示されている。一部の実施形態では、口腔ケア組成物は、約0.025%〜約9%の濃度で、一部の実施形態では約0.05%〜約5%の濃度で、及び他の実施形態では約0.1%〜約1%の濃度で、アニオン性界面活性剤を含み得る。
【0155】
別の好適な界面活性剤は、サルコシネート界面活性剤、イセチオネート界面活性剤、及びタウレート界面活性剤からなる群から選択されるものである。これらの界面活性剤のアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩、例えば以下のナトリウム塩、及びカリウム塩が、本明細書での使用に好ましい。サルコシン酸ラウロイル、サルコシン酸ミリストイル、サルコシン酸パルミトイル、サルコシン酸ステアロイル、及びサルコシン酸オレオイル。サルコシネート界面活性剤は、本発明の組成物中に、組成物全体の約0.1重量%〜約2.5重量%、又は約0.5重量%〜約2重量%で存在してもよい。
【0156】
本発明で有用なカチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジ−イソブチルフェノキシエチル−ジメチルベンジルアンモニウム、亜硝酸ココナツアルキルトリメチルアンモニウム、フッ化セチルピリジニウムなどのような、約8個〜18個の炭素原子を含有する1つの長アルキル鎖を有する、脂肪族四級アンモニウムの化合物の誘導体が挙げられる。好ましい化合物は、米国特許第3,535,421号(1970年10月20日、Brinerら)に記載のフッ化四級アンモニウムであり、このフッ化四級アンモニウムは、洗剤特性を有する。特定のカチオン性界面活性剤はまた、本明細書に開示された組成物中で殺菌剤としても作用することができる。
【0157】
本発明の組成物中で使用できる非イオン性界面活性剤としては、アルキレンオキシド基(性質上は親水性)と、性質上は脂肪族又はアルキル芳香族であってもよい有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤の例としては、Pluronic、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコール、脂肪族酸、及び脂肪族エステルの、エチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、並びにこのような材料の混合物が挙げられる。
【0158】
本発明で有用な双極性イオン性合成界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、その脂肪族基は直鎖又は分枝鎖であってもよく、脂肪族置換基の1つは約8個〜約18個の炭素原子を含有し、1つは例えばカルボキシ基、スルホネート基、サルフェート基、ホスフェート基、又はホスホネート基のようなアニオン性水溶性基を含有する。
【0159】
好適なベタイン界面活性剤は、米国特許第5,180,577号(Polefkaら、1993年1月19日発行)に開示されている。典型的なアルキルジメチルベタインとしては、デシルベタイン、すなわち2−(N−デシル−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ココベタイン、すなわち2−(N−coc−N,N−ジメチルアンモニオ)アセテート、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタインなどが挙げられる。アミドベタインは、ココアミドエチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタインなどによって例示される。選択されるベタインは、好ましくはココアミドプロピルベタイン、より好ましくはラウラミドプロピルベタインである。
【0160】
沈殿シリカは、口腔用組成物の泡立ちを減少させる傾向がある。対照的に、低い反応性を備える溶融シリカは、泡立ちを抑制せず、すなわち沈殿シリカ程には泡立ちを抑制しない。界面活性剤への干渉性の欠如は、使用する界面活性剤の量に影響を与えることができ、このことは同様に、他の変数に影響を及ぼし得る。例えば、消費者の許容可能な泡立ちを達成するために必要な界面活性剤がより少量であれば、刺激性(消費者がSLSを嫌う点として知られる)を低減することができ、又は組成物のpHを低下させて、より良好なフッ化物の取り込みを可能にし得る。
【0161】
一部の実施形態では、これらの化合物の審美的欠点を緩和するために、高分子無機質界面活性剤が添加される。高分子無機質界面活性剤は、有機リン酸ポリマーとすることができ、一部の実施形態では、アルキルリン酸エステル若しくはその塩、エトキシル化アルキルリン酸エステル及びその塩、又はアルキルリン酸エステル若しくはその塩の混合物である。一部の実施形態では、高分子無機質界面活性剤は、ポリカルボキシレート若しくはポリホスフェート、又はGantrezのような高分子カルボキシレートのコポリマーであってもよい。
【0162】
一部の実施形態では、組成物は溶融シリカを含み、かつSLSは本質的に含まずともよい。本質的に含まず、とは、組成物の約0.01重量%未満で存在することを意味する。一部の実施形態では、組成物は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、SLS以外の界面活性剤を更に含み得る。一部の実施形態では、組成物は、キレート剤を更に含み得る。一部の実施形態では、界面活性剤は、例えばベタインのような、両性界面活性剤とすることができる。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約80のPCRを有し得る。一部の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも約50%で利用可能とすることができる。一部の実施形態では、組成物は、組成物の3重量%未満の界面活性剤を有する。一部の実施形態では、組成物は、過酸化物源、及び/又は酵素を更に含み得る。一部の実施形態は、溶融シリカを含み、ラウリル硫酸ナトリウムを本質的に含まない口腔用組成物を、対象者の口腔に投与することにより、口内乾燥状態を処置する方法とすることができる。
【0163】
使用方法
本発明はまた、歯の洗浄及び研磨のための方法にも関する。本明細書の使用方法は、対象者の歯のエナメル質表面及び口腔粘膜に、本発明による口腔用組成物を接触させることを含む。処置方法は、歯磨剤を使用するブラッシング、又は歯磨剤スラリー若しくは洗口剤を使用するすすぎによるものとすることができる。他の方法としては、局所口腔用ゲル、口中スプレー、練り歯磨き、歯磨剤、歯磨きゲル、歯磨き粉、タブレット、歯肉縁下用ゲル、フォーム、ムース、チューインガム、リップスティック、スポンジ、フロス、ペトロラタムゲル、若しくは義歯製品、又は他の形態物を、対象者の歯及び口腔粘膜に接触させることが挙げられる。実施形態に応じて、口腔用組成物は、練り歯磨きと同じく頻繁に使用されてもよく、又はより少ない頻度、例えば週単位で使用されてもよく、又は歯面研磨ペースト、若しくは他の集中治療の形態で、専門家により使用されてもよい。
【0164】
追加的データ
図7〜図13は、溶融シリカの材料特性、並びに他の口腔ケア組成物構成成分との適合性、及びその洗浄能力についてのより詳細なデータを示す。
【0165】
図7(a)及び図7(b)は、製剤組成物、並びに対応するスズ、亜鉛、及びフッ化物の適合性のデータである。図7(a)は、口腔ケア組成物、すなわち、沈殿シリカを含む製剤A、及び溶融シリカを含む製剤Bを示す。図7(b)は、25℃及び40℃にて、2週間後、1ヶ月後、及び2ヶ月後の、%適合性で与えられる、製剤A並びに製剤Bに関する適合性データを示す。図7のデータは、溶融シリカ組成物が、スズ、亜鉛、及びフッ化物に対する、優れた安定性、並びに優れた適合性を提供することを示す。
【0166】
亜鉛塩を含む口腔用組成物を有することが望ましい場合があり、その組成物は、25℃で2週間の保管後に、約82%、85%、87%、又は90%を超える亜鉛の利用能を有する。82%、85%、87%、又は90%の利用能が、消費者による使用の前まで残存することが望まれ得る。したがって、利用能を、使用前に測定してもよい。使用前とは、製品が作製され、梱包され、店舗又は消費者に配給されているが、消費者が製品を使用する前であることを意味し得る。この時間の間の、保管条件及び保管温度は、変動するであろう。
【0167】
フッ化物イオンを含む口腔用組成物を有することが望ましい場合があり、その組成物は、25℃で2週間の保管後に、約88%、90%、91%、92%、93%、又は94%を超えるフッ化物の利用能を有する。フッ化物の利用能が、使用前に、約88%、90%、91%、92%、93%、又は94%を超えて残存することも、また望まれ得る。一部の製剤に関しては、フッ化物の利用能は、使用前に95%を超えて残存し得る。
【0168】
スズ塩を含む口腔用組成物を有することが望ましい場合があり、その組成物は、25℃で2週間の保管後に、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%を超えるスズの適合性、すなわち利用能を有する。この場合も、スズの適合性、すなわち利用能は、使用前に、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%を超えて残存することが望まれ得る。一部の組成物では、スズの利用能、すなわち適合性は、少なくとも約92%とすることができる。スズを有する溶融シリカ製剤に関しては、スズの適合性は、同等の量の沈殿シリカ及びスズを有する製剤よりも、典型的には、約20%〜約50%、約25%〜約45%、又は約30%〜約40%高いことになる。
【0169】
図8は、充填の関数としての、スズ適合性を示す。沈殿シリカの量が増えるにつれて、遊離したスズ、又は生物学的利用が可能なスズの量が低下する。表は、沈殿シリカ(Z−119)へのスズの損失が、0.0081g/gのZ−119(又は、80ppm/1%のZ−119充填)であることを示す。対照的に、溶融シリカに対するスズの損失は、0.001g/gのTecosil 44CSS(又は、10ppm/1%のTecosil 44CSS充填)である。一部の実施形態では、表面積に応じて、溶融シリカに対するスズの損失は、約5〜約50ppm/溶融シリカ1%充填、約7〜約30ppm/溶融シリカ1%充填、約8〜約20ppm/溶融シリカ1%充填、又は約10〜約15ppm/溶融シリカ1%充填である。
【0170】
図9(a)及び図9(b)は、過酸化物含有組成物、及び適合性のデータである。図9(a)は、様々な沈殿シリカ及び溶融シリカを有する、過酸化物含有組成物を示す。図9(b)は、40℃にて、初期、6日後、及び13日後の、組成物の過酸化物適合性を示す。データは、沈殿シリカを上回る、溶融シリカとの優れた過酸化物適合性を示す。一部の実施形態では、過酸化物適合性は、40℃で約13日後に、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%である。言い換えれば、一部の実施形態では、40℃で約13日後に、少なくとも約50%、60%、70%、若しくは85%の過酸化物、又は酸化剤が残存し得る。
【0171】
サンプルの調製方法は、次の通りである。過酸化物ゲル基剤18gをプラスチック容器内に移し、シリカ2gをスパチュラで十分に混合し、混合物のpHを測定し、混合物を二等分して一方の部分を25℃、他方を40℃に定置し、サンプルを安定性試験室内に25℃及び40℃で定置する。サンプル分析は、次の通りである。過酸化物分析のための初期サンプルを採取し、5日目及び12日目にサンプルを安定性試験室から取り出して1日間にわたり平衡化させ、各混合物からサンプル0.2gを取り除いて残余のサンプルを安定性試験室内に戻し、過酸化物分析を次の通りに実施する。過酸化物ゲル0.2000g(+/−0.0200g)を250mLプラスチックビーカー内に秤量し、攪拌棒及び0.04NのH2SO4、100mLを添加し、パラフィルムで覆い、少なくとも10分間攪拌し、10% KI溶液25mL及びモリブデン酸アンモニウム3滴を添加して更に3〜20分間攪拌し、0.1Nのチオ硫酸ナトリウムを使用した自動滴定によって分析する。適合性は、40℃で13日後の過酸化物のパーセントを、初期の過酸化物のパーセントで除算し、次いで100を乗じたものとして定義される。40℃で定置される製品が、延長された貯蔵期間を表すことは、当業者には既知である。すなわち、例えば40℃で1ヶ月とは、室温でおよそ8ヶ月に近似することになる。
【0172】
図10(a)は、溶融シリカ及び過酸化物を含む口腔ケア組成物である、製剤A〜製剤Eを示す。図10(b)は、溶融シリカを含むが過酸化物を含まない製剤(製剤F)及び溶融シリカも過酸化物も含まない製剤(Crest Cavity Protection練り歯磨き)と比較した、溶融シリカ及び過酸化物を有する図10(a)の組成物のうちの2つに関する、所定回数のブラシストローク後の、ウシエナメル質試料の白色度の変化(ΔL)を示す。データは、溶融シリカと過酸化物との組み合わせが、優れた洗浄性、及び優れた白化を提供することを示す。一部の実施形態では、ΔLは、50ストロークで約4.5を超え、100ストロークで約6.0を超え、200ストロークで約9.0を超え、又は400ストロークで約15.0を超えることができる。一部の実施形態では、ΔLは、Crest Cavity Protection練り歯磨きよりも、約50%〜約100%大きい場合がある。この方法は次の通りである。ウシエナメル質の基材を、G.K.Stookeyらの、J.Dental Res.,61,1236〜9,1982によって説明される、従来のPCRプロトコールにより、固定し着色する。6個の小片からなる群を、各処置過程に割り当てる(各群は、ほぼ同じ基準L値を有する)。処置ペーストの1:3スラリーを作製し、着色したウシエナメル質基材に、150グラムの較正された力をブラッシングの間かけて、50ストローク、100ストローク、200ストローク、及び400ストロークのブラッシングをする。各回数のストロークでブラッシングした後、基材を撮像し、L値に関して分析する。L値の変化は、以下の通りに算出する。ΔL=Lブラッシング後−Lブラッシング前。次いでLSDを使用して統計的に比較する。
【0173】
図11(a)は、沈殿シリカ又は溶融シリカを含む、歯磨材組成物製剤を示し、図11(b)は、対応する消費者の感知データを示す。消費者感知試験を9人の対象者の間で実施し、対象者は、各製品でブラッシングを2回行い、香味の発揮及び口内感触に関する質問に対し、質問表に書き込むことによって回答を提供した。対象者には、製品の使用中、製品の使用直後、及び製品の使用15分後の経験について回答を提供するように求めた。図11(b)に示すように、一般に、溶融シリカを含む組成物は、製剤Aで使用の沈殿シリカと比較した場合、優れた香味強度、爽快感、滑らかな歯の感触、及び清浄な口内をもたらす。
【0174】
図12は、溶融シリカを含む口腔ケア組成物の、追加的な実施例の製剤を示す。これらの製剤としては、ゲルネットワークを含む組成物、溶融シリカと沈殿シリカ及び炭酸カルシウムとの組み合わせ、SLSを含まない組成物、並びに歯面研磨ペーストとして使用、又は非日常基準で使用し得る組成物が挙げられる。
【0175】
図13(a)は、フッ化ナトリウム系組成物を示し、製剤A及び製剤Bは、従来の増粘剤と共に沈殿シリカを含み、製剤C及び製剤Dは、従来の増粘剤と共に溶融シリカを含み、並びに製剤E及び製剤Fは、ゲルネットワークと共に溶融シリカを含む。図13(b)は、図13(a)のフッ化ナトリウム系組成物に関する、RDA値及びPCR値の表であり、溶融シリカの使用が組成物の洗浄能力を改善すること、及びゲルネットワークの使用が組成物の洗浄能力を更に改善するが、その一方で、依然として許容可能な磨耗性を有することを示している。図13(c)は、図13(a)に類似の実施形態での、フッ化第一スズ系組成物を示す。図13(d)は、図13(c)の組成物に関する、対応するRDA値を示し、スズの使用が、磨耗を減少させ得ることを示唆し、スズ製剤による歯の潜在的強化を示している。
【0176】
非限定的な実施例
次の実施例に示される歯磨剤組成物は、本発明の歯磨剤組成物の具体的な実施形態を説明するものであるが、これらに限定することを意図するものではない。その他の変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実行される。
【実施例】
【0177】
実施例I.A〜Dは、溶融シリカを含む典型的な口腔用組成物である。製剤Bは、溶融シリカと沈殿シリカとの組み合せを示し、製剤Dは、溶融シリカと炭酸カルシウムとの組み合わせを示す。
【表1】
【0178】
実施例II.A〜Fは、カチオン性抗微生物剤と共に溶融シリカを含む、典型的な口腔用組成物である。
【表2】
【0179】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指示のない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の双方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0180】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれの意味又は定義と矛盾する範囲については、本文書における用語に与えられた意味又は定義が適用される。
【0181】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行い得ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記酸化剤が、40℃にて13日後に、少なくとも50%の適合性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸化剤が、少なくとも85%の適合性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化剤が、過酸化物源である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記過酸化物源が、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、過炭酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
架橋ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、高分子アルキル化ポリエーテル、カルボマー、アルキル化カルボマー、ゲルネットワーク、非イオン性高分子増粘剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される増粘材料を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物のpHが、3.5〜5.5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
スズイオン源を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
フッ化物イオン源、亜鉛イオン源、カルシウムイオン源、リン酸イオン源、カリウムイオン源、ストロンチウムイオン源、アルミニウムイオン源、及びマグネシウムイオン源からなる群からの1つ以上を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリホスフェート、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、高分子ポリエーテル、高分子アルキルホスフェート、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、ポリホスホネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるキレート剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
抗菌剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、抗齲蝕剤、抗結石剤、抗侵食剤、抗悪臭剤、抗敏感性剤、栄養素、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗剤、抗ウイルス活性物質、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される口腔ケア活性物質を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗菌剤が、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、ヘキシチジン、トリクロサン、金属イオン、精油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ΔLが、400ストロークにて15.0を超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
溶融シリカ及び過酸化物を含む組成物を、対象者の口腔に投与することによって、歯垢、歯肉炎、敏感性、口腔の悪臭、侵食、空洞、結石、及び着色汚れを低減する、方法。
【請求項15】
溶融シリカ及び白化剤を含む、口腔ケア組成物。
【請求項1】
溶融シリカ及び酸化剤を含む、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記酸化剤が、40℃にて13日後に、少なくとも50%の適合性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸化剤が、少なくとも85%の適合性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化剤が、過酸化物源である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記過酸化物源が、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、過炭酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
架橋ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、アルキル化ポリアクリレート、アルキル化架橋ポリアクリレート、高分子アルキル化ポリエーテル、カルボマー、アルキル化カルボマー、ゲルネットワーク、非イオン性高分子増粘剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される増粘材料を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物のpHが、3.5〜5.5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
スズイオン源を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
フッ化物イオン源、亜鉛イオン源、カルシウムイオン源、リン酸イオン源、カリウムイオン源、ストロンチウムイオン源、アルミニウムイオン源、及びマグネシウムイオン源からなる群からの1つ以上を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリホスフェート、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、高分子ポリエーテル、高分子アルキルホスフェート、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、ポリホスホネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるキレート剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
抗菌剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、抗齲蝕剤、抗結石剤、抗侵食剤、抗悪臭剤、抗敏感性剤、栄養素、鎮痛剤、麻酔剤、H−1及びH−2拮抗剤、抗ウイルス活性物質、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される口腔ケア活性物質を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗菌剤が、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、ヘキシチジン、トリクロサン、金属イオン、精油、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ΔLが、400ストロークにて15.0を超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
溶融シリカ及び過酸化物を含む組成物を、対象者の口腔に投与することによって、歯垢、歯肉炎、敏感性、口腔の悪臭、侵食、空洞、結石、及び着色汚れを低減する、方法。
【請求項15】
溶融シリカ及び白化剤を含む、口腔ケア組成物。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【公表番号】特表2012−509898(P2012−509898A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537712(P2011−537712)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065729
【国際公開番号】WO2010/068444
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065729
【国際公開番号】WO2010/068444
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】
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