説明

溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

【課題】引張強度で1180MPa以上の高強度で、遅れ破壊特性が良好な溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】Bの多量添加により高強度を確保する。具体的には、鋼板は、質量%で、C:0.11〜0.20%、Si:0.001〜0.35%、Mn:2.0〜3.0%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol. Al:0.001〜1.5%、Ti:0.001〜0.30%、N:0.02%以下、B:0.0021〜0.0080%以下を含有し、場合により適量のNb、V、Cr、Mo、Cu、Ni、Ca,REMおよびBiの1種または2種以上をさらに含有し、かつ下記(1)式を満足する化学組成と、残留オーステナイトが7体積%以下の金属組織とを有する。
15×sol. Al+100×Ti≧1.5 ・・・ (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度で1180MPa以上を有する溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。なお、本発明において、溶融亜鉛めっき鋼板とは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含むものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車においては、地球環境保護の燃費向上や乗員の安全性確保が求められており、高強度鋼板の適用が増大している。それに伴い、耐食性が求められる部品では、引張強度で1180MPa以上という高強度を備えた溶融亜鉛めっき鋼板が要望され始めている。
【0003】
そのような溶融亜鉛めっき鋼板として、例えば、下記特許文献1および特許文献2に、1180MPa以上の引張強度を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−126770号公報
【特許文献2】特開2009−120878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されている、Siを強化元素として活用するために多量に添加する手法では、残留オーステナイトが残りやすく、遅れ破壊等の問題があった。一方、特許文献2では、強度を確保するために、Mn、Cr、Moを多量に添加する必要があり、コストの増大を招くとともに、やはり遅れ破壊特性が十分ではなかった。
【0006】
本発明は、これらの問題が解消された、引張強度で1180MPa以上を有する高強度の溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
溶融亜鉛めっき鋼板の製造においては、板の平坦の悪化や板のばたつきによりめっき付着量のムラが生じやすいため、焼鈍後にはガスジェット冷却などの比較的冷却速度が遅い冷却が行われる。そのため、高強度を得るには、SiやMn等の多量の添加が必要となり、遅れ破壊や靱性の問題を生じていた。
【0008】
本発明者らは、引張強度で1180MPa以上を有する溶融亜鉛めっき鋼板について鋭意実験を行い、Bの多量の添加により低コストで効果的に高強度が得られ、かつ他の元素の添加に比べて遅れ破壊特性の劣化が抑えられることを見いだした。
【0009】
上記知見を基に完成した本発明は、鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記鋼板は、質量%で、C:0.11%以上0.20%以下、Si:0.001%以上0.35%以下、Mn:2.0%以上3.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上1.5%以下、Ti:0.001%以上0.30%以下、N:0.02%以下、B:0.0021%以上0.0080%以下を含有し、さらに下記(1)式を満足する化学組成と、残留オーステナイトが7体積%以下である金属組織とを有し、前記溶融亜鉛めっき鋼板は、圧延直角方向の引張強度が1180MPa以上であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板である:
15×sol.Al+100×Ti≧1.5 ・・・ (1)
本発明において、前記化学組成は、質量%で、下記から選ばれた1種または2種以上の元素をさらに含有していてもよい:
(A)Nb:0.001%以上0.30%以下およびV:0.001%以上0.30%以下から選択される1種または2種;
(B)Cr:0.001%以上2.0%以下およびMo:0.001%以上2.0%以下から選択される1種または2種;
(C)Cu:0.001%以上2.0%以下およびNi:0.001%以上2.0%以下から選択される1種または2種;
(D)Ca:0.0001%以上0.01%以下およびREM:0.0001%以上0.1%以下から選択される1種または2種;ならびに
(E)Bi:0.0001%以上0.05%以下。
【0010】
別の側面から、本発明は、上記化学組成を有する熱間圧延鋼板または冷間圧延鋼板を720℃以上の温度域に加熱し、2℃/秒以上60℃/秒以下の平均冷却速度で480℃以上600℃以下の温度域まで冷却して溶融亜鉛めっきを施し、そのまま又は合金化処理後に室温まで冷却することを含む、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、低コストでありながら、1180MPa以上の高い引張強度を備えるとともに、遅れ破壊を発現しにくく、成形性に優れているので、ピラーなどの自動車の構造部品用途に最適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明において溶融亜鉛めっき鋼板における鋼板の化学組成および金属組織、ならびに溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法についてより詳しく説明する。なお、以下の説明において、鋼の化学組成に関する%は質量%である。
【0013】
(A)化学組成
[C:0.11%以上0.20%以下]
Cは高張力を得るのに有効な成分である。Cの含有量が0.11%以下では、必要な高張力が得られず、また0.20%を超えてCを含有させると、鋼板の靱性や溶接性が低下する。従って、C含有量を0.11%以上0.20%以下と定めた。C含有量の好ましい範囲は0.12%以上0.18%以下である。
【0014】
[Si:0.001%以上0.35%以下]
Siは鋼板を高強度化する元素で、フェライトを強化し、組織を均一化し、加工性を改善するのに有効な成分である。これらの効果を得るためには0.001%以上のSiの含有が必要である。しかし、0.35%を超えてSiを含有させると、溶融めっきでの不めっきの発生が問題になるとともに、靱性や溶接性、遅れ破壊性が低下する。そのためSiの含有量は0.001%以上0.35%以下と定めた。好ましい範囲は0.05%以上0.25%以下である。
【0015】
[Mn:2.0%以上3.0%以下]
Mnは鋼板を高強度化するのに必須の元素である。所望の効果を得るには、2.0%以上のMnの含有が必要である。一方、3.0%を超えてMnを含有させると、靱性や溶接性、遅れ破壊性が低下する。したがって、Mnの含有量は2.0%以上3.0%以下と定めた。2.1%以上2.8%以下が好ましいMn含有量の範囲である。
【0016】
[P:0.1%以下]
Pは、不純物として含有され、靱性を劣化させる好ましくない元素である。従って、P含有量を0.1%以下と定めた。0.02%以下が好ましい範囲である。
【0017】
[S:0.01%以下]
Sは、不純物として含有され、MnSとなって、穴広げ性を劣化させる。従って、Sの含有量を0.01%以下と定めた。0.005%以下が好ましく、0.0012%以下がさらに好ましい。
【0018】
[sol.Al:0.001%以上1.5%以下]
[Ti:0.001%以上0.30%以下]
Alは、脱酸のために添加される。またNを固定し、Bが窒化物となるのを抑制する働きがある。Tiは、Nと窒化物を形成し、やはりBが窒化物となるのを抑制する働きがある。これらの効果を得るためには、sol.Alは0.001%以上、Tiは0.001%以上であって、かつ15×sol.Al+100×Tiの値が1.5以上であることが必要である。
【0019】
ただし、1.5%を超えてsol.Alを含有させると介在物が増加して加工性が劣化し、0.30%を超えてTiを含有させると熱延板が硬くなりすぎて、冷間圧延性を阻害する。したがって上限については、sol.Al含有量が1.5%以下、Ti含有量が0.30%以下と定めた。
【0020】
好ましいsol.Al含有量は0.005%以上1.0%以下であり、好ましいTi含有量は0.015%以上0.08%以下である。なお、炭化物を形成する余剰なTiは遅れ破壊をさらに改善する効果を有するので、Ti含有量は0.020%以上であることがさらに好ましい。15×sol.Al+100×Tiの値は、好ましくは2.3以上であり、上限は特に規定されないものの10以下であることが好ましい。
【0021】
[N:0.02%以下]
Nは、不純物として含有され、連続鋳造中に窒化物を形成してスラブのひび割れの原因となるので、その含有量は低い方が好ましい。従って、N含有量は0.02%以下と定めた。好ましくは0.01%以下である。
【0022】
[B:0.0021%以上0.0080%以下]
Bは本発明において重要な元素であり、粒界からの核生成を抑え、焼き入れ性を高めて高強度化に寄与する。Bは微量の添加で1180MPa以上の引張強度を得ることができ、遅れ破壊特性の劣化が少ない点で有利である。この効果を得るには0.0021%以上のBの含有が必要である。しかし、0.0080%を超えてBを含有させても、その効果は飽和する。したがってその含有量を0.0021%以上0.0080%以下と定めた。B含有量は、好ましくは0.0025%以上0.0060%以下、さらに好ましくは0.0030%以上0.0060%以下である。
【0023】
以下に説明する元素は、本発明では必要に応じて含有させてもよい任意元素である。
[Nb:0.001%以上0.30%以下、V:0.001%以上0.30%以下]
NbとVは、いずれも析出物となって結晶粒を微細化させる効果を有しているので、含有させてもよい。しかし、各々0.001%未満の含有ではその効果は十分ではなく、また各々0.30%を超えて含有させても効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。そのため、Nb含有量は0.001%以上0.30%以下、V含有量は0.001%以上0.30%以下と定めた。
【0024】
[Cr:0.001%以上2.0%以下、Mo:0.001%以上2.0%以下]
CrおよびMoは、Mnと同様にオ−ステナイトを安定化することで変態強化を促進する働きがあり、鋼板の高強度化に有効であるので含有させてもよい。しかし、各々0.001%未満の含有ではその効果は十分ではなく、また2.0%を超えて含有させると化成処理性が低下する。したがって、Cr含有量およびMo含有量は、各々0.001%以上2.0%以下と定めた。なお、Mn+2×Cr≧2.2を満足することが好ましい。
【0025】
[Cu:0.001%以上2.0%以下、Ni:0.001%以上2.0%以下]
Cu及びNiは腐食抑制効果があり、表面に濃化して水素の侵入を抑え、遅れ破壊を抑制する働きがあるので、含有させてもよい。しかし、各々0.001%未満の含有ではその効果は十分ではなく、また各々2.0%を超えて含有させても効果は飽和し、コスト的に不利となる。したがって、Cu含有量およびNi含有量は各々0.001%以上2.0%以下と定めた。
【0026】
[Ca:0.0001%以上0.01%以下、REM:0.0001%以上0.1%以下]
CaおよびREMは、硫化物を球状化させることにより局部延性を向上させる効果があるので、含有させてもよい。しかし、Caについては、0.0001%未満の含有ではその効果は十分ではなく、0.01%を超えて含有させると効果は飽和し、コスト的に不利となる。したがって、Ca含有量は0.0001%以上0.01%以下と定めた。一方、REMについては、0.0001%未満の含有ではその効果は十分ではなく、0.1%を超えて含有させると効果は飽和し、コスト的に不利となる。したがって、REM含有量は0.0001%以上0.1%以下と定めた。
【0027】
ここで、REMとは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素を指し、ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。なお、本発明では、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
【0028】
[Bi:0.0001%以上0.05%以下]
Mnなどがミクロ偏析すると、硬さの不均一なバンド組織が発達して加工性を低下させる。Biは凝固界面に濃化してデンドライト間隔を狭くし、凝固偏析を小さくする働きがあるので、含有させてもよい。しかし、0.0001%未満のBiの含有では、その効果が不十分で、また0.05%を超えてBiを含有させると表面品質の劣化を生じるので、その含有量を0.0001%以上0.05%以下と定めた。Bi含有量の好ましい範囲は0.0003%以上0.01%以下で、さらに好ましい範囲は0.0003%以上0.0050%以下である。
【0029】
(B)金属組織
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板における鋼板は、残留オーステナイト量(体積%)が7%以下であるという金属組織を有する。残留オーステナイトは、加工時にマルテンサイトに変態して水素を放出し、遅れ破壊特性を悪化させるためである。残留オーステナイト量は好ましくは5%以下であり、より好ましくは3.5%以下である。残留オーステナイト量は0%であってもよい。
【0030】
残留オーステナイト量は、当業者には周知のように、鋼の化学組成が同じであれば、溶融亜鉛めっき前に行う焼鈍条件により変動させることができる。金属組織における残留オーステナイト以外の相は特に特定する必要はないが、通常は主相がベイナイトまたはマルテンサイトであり、ごくわずかにフェライトが存在する場合がある。
【0031】
(C)製造条件
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、熱間圧延鋼板または冷間圧延鋼板に溶融亜鉛めっきと場合により合金化処理を施すことにより製造される。
【0032】
溶融亜鉛めっきに用いる熱間圧延鋼板または冷間圧延鋼板は、化学組成が本発明で特定する条件を満たせば、その製造方法については特に制限されない。
溶融亜鉛めっきを施す前に、使用する鋼板を720℃以上の温度域に加熱し、2℃/秒以上60℃/秒以下の平均冷却速度で480℃以上600℃以下の温度域まで冷却した後、溶融亜鉛めっきを施す。その後、そのまま、または合金化処理を行ってから、室温まで冷却する。
【0033】
めっき前の加熱温度を720℃以上とするのは、この加熱によりオーステナイトを生成させ、その後の変態強化で高強度を得るためである。また、鋼板が冷間圧延鋼板である場合には、加熱温度が720℃未満では、未再結晶粒が残存し、伸びが低下するとともに、遅れ破壊性も悪化する。加熱温度はオーステナイト単相域以上(Ac3点以上)とすることが好ましい。加熱温度の上限は特に規定しないが粒径の粗大化を抑制する観点からは900℃以下とすることが好ましい。この加熱の保持時間は10秒間以上150秒間以下とすることが好ましい。
【0034】
加熱後の冷却(以下、一次冷却ともいう)は、2℃/秒以上60℃/秒以下の平均冷却速度で480℃以上600℃以下の温度域までの冷却とする。この平均冷却速度が2℃/秒未満では、炭化物が過剰に析出してしまい、高強度が得られない。一方、平均冷却速度が60℃/秒を超えると、鋼板の平坦が悪化して、めっき付着量にムラが発生したり、板がばたついて通板性が悪化したりして問題となる。この一次冷却を480℃以上600℃以下の温度域まで行うのは、炭化物の析出を抑え、高強度を確保するためである。
【0035】
その後、溶融めっき浴に通板して溶融亜鉛めっきを施す前に、所望により温度保持と必要に応じてめっき浴近傍の温度への冷却とを行ってもよい。曲げ性を確保する目的で480℃以上600℃以下の温度域で1秒間以上120秒間以下の保持を行ったり、2℃/秒以下の平均冷却速度で1秒間以上120秒間以下の冷却を行ったりするのは、ベイナイトを生成させて、特性を安定化することができる点で好ましい。
【0036】
溶融亜鉛めっき自体は、常法に従って実施すればよい。めっき浴組成も特に制限されない。めっき付着量は通常の範囲内でよい。例えば、片面あたりで20g/m2以上120g/m2以下の範囲内である。
【0037】
溶融亜鉛めっき後は、必要に応じて周知の合金化処理を施して、めっき層を亜鉛−鉄合金にしてもよい。この合金化処理条件およびめっき層中のFe濃度には特に制限はない。その後、めっき鋼板を室温まで冷却する。
【0038】
得られた溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対して、平坦矯正のためスキンパスやレベラーを施しても何ら問題がなく、さらに塗油や潤滑作用のある皮膜を形成する処理を施しても構わない。
【実施例】
【0039】
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼を実験炉で溶製し、厚みが40mmのスラブを作製した。このスラブを熱間圧延後、約30℃/秒の水スプレー冷却を施して熱間圧延鋼板を製造した。熱間圧延鋼板の巻取りは、巻取温度まで水スプレー冷却後に炉に装入し、巻取温度で60分保持した後、20℃/時の冷却速度で300℃以下まで炉冷することにより、シミュレートした。熱間圧延条件は表2にまとめて示す。
【0040】
得られた熱間圧延鋼板を酸洗してスケールを除去した後、板厚1.2mmまで冷間圧延を施した。こうして得られた冷間圧延鋼板から熱処理用試験材を採取し、表3に示す条件で加熱と一次冷却を行い、その後、一部の材料においては等温保持を行ってから、引き続き5℃/sで溶融めっき浴温である460℃まで冷却し、溶融亜鉛めっきを施した。めっき付着量は片面あたり50g/m2であった。その後一部の材料については合金化処理を行って、10℃/秒で室温まで冷却した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
こうして作製された溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)の特性を次のようにして評価した。結果は表4にまとめて示す。
引張試験では、圧延方向に対して直角方向が引張方向となるように採取したJIS5号引張試験片を用いて、降伏強さ(YS)、引張強度(TS)および全伸び(EL)を測定した。
【0045】
残留オーステナイト量は、板厚1/4位置においてX線測定により求めた。
穴広げ試験は、JIS Z2256に従って実施し、穴の周囲に板厚を貫通する割れが生じるまでの穴直径の増加量と初期穴径との比である穴広げ率(%)を求めた。
【0046】
遅れ破壊性は、伸び率3%で圧延後に曲げを施して表面歪みが1.4%の状態で固定した試験片をpH1の30℃の塩酸中に72時間浸漬して割れの有無を判定することにより評価した。
【0047】
【表4】

【0048】
本発明例である試験No.1〜11および17〜28の溶融亜鉛めっき鋼板は、引張強度1180MPa以上の高強度と良好な遅れ破壊特性を示し、穴広げ率も良好であった。
これに対し、B含有量が低い試験No.12とB無添加の試験No.16、ならびにBは十分に添加しているもののTiとAlの含有量が式(1)を満たさない(低すぎた)試験No.13は、強度が低かった。一方、強度を上げるために多量のMnまたはSiを添加した試験No.14および15は、いずれも遅れ破壊特性に劣った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記鋼板は、質量%で、C:0.11%以上0.20%以下、Si:0.001%以上0.35%以下、Mn:2.0%以上3.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上1.5%以下、Ti:0.001%以上0.30%以下、N:0.02%以下、B:0.0021%以上0.0080%以下を含有し、さらに下記(1)式を満足する化学組成と、残留オーステナイトが7体積%以下である金属組織とを有し、
前記溶融亜鉛めっき鋼板は、圧延直角方向の引張強度が1180MPa以上である、
ことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板
15×sol.Al+100×Ti≧1.5 ・・・ (1)
【請求項2】
前記化学組成が、質量%で、Nb:0.001%以上0.30%以下およびV:0.001%以上0.30%以下からなる群から選択される1種または2種をさらに含有する請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
前記化学組成が、質量%で、Cr:0.001%以上2.0%以下およびMo:0.001%以上2.0%以下からなる群から選択される1種または2種をさらに含有する請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
前記化学組成が、質量%以下で、Cu:0.001%以上2.0%以下およびNi:0.001%以上2.0%以下からなる群から選択される1種または2種をさらに含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
前記化学組成が、質量%で、Ca:0.0001%以上0.01%以下およびREM:0.0001%以上0.1%以下からなる群から選択される1種または2種をさらに含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
前記化学組成が、質量%で、Bi:0.0001%以上0.05%以下をさらに含有する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の化学組成を有する熱間圧延鋼板または冷間圧延鋼板を720℃以上の温度域に加熱し、2℃/秒以上60℃/秒以下の平均冷却速度で480℃以上600℃以下の温度域まで冷却して溶融亜鉛めっきを施し、そのまま又は合金化処理後に室温まで冷却することを含む、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2013−108154(P2013−108154A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256156(P2011−256156)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】