説明

溶融加工可能な熱可塑性フルオロポリマーを含む組成物およびその作製方法

【課題】機械的特性の低減、費用の増加などその他の不利点および/またはその他の工程の不利点を生じることなく、高速な臨界せん断速度および/または高い延伸比を有するフルオロサーモプラストを提供する。
【解決手段】溶融加工可能で、熱可塑性があり、100℃から320℃の融点を有する、第1のフルオロポリマーおよび第2のフルオロポリマーを含む組成物であり、第1のフルオロポリマーは、0.93から1.0の緩和指数と0から0.1の長鎖分枝指数を有し、第2のフルオロポリマーは、0.3から0.92の緩和指数と少なくともとも0.2の長鎖分枝指数を有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フルオロポリマーは、熱抵抗性、耐化学性、耐候性、およびUV−安定性など、いくつかの望ましい特性のため、種々の用途に使用される。フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの1つ以上のガス状または液体状のコモノマー、またはペルフルオロビニルエーテル(PVE)またはエチレン(E)およびプロピレン(P)など、非フッ素化オレフィンを有する、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)および/またはフッ化ビニリデン(VDF)などのガス状のフッ素化オレフィンのホモおよびコポリマーを含む。
【0002】
フルオロポリマーは、溶融加工可能なポリマーおよび溶融加工不可能なポリマーを含む。例えば、ポリテトラフルオロエチレンおよび少量(例えば、0.5重量%以下)のコモノマーを有するテトラフルオロエチレンのコポリマーは、一般に分子量および融解粘度が高いため、従来の装置で溶融加工することができない。従って、これらの溶融加工不可能なフルオロポリマーに対して、特別なプロセス技法がこれらのフルオロポリマーを望ましい物品および形状に形成するために開発されている。
【0003】
溶融加工可能な熱可塑性のあるフルオロポリマーはまた、既知であり、これらは、フッ素化および/または非フッ素化モノマーの様々な組み合わせから取得することができる。溶融加工可能である場合、従来の装置で処理することができる。溶融加工可能な熱可塑性のあるフルオロポリマーは、一般に、十分な結晶化度を有する非晶質フルオロポリマーおよびフルオロポリマーを含む。一般に、非晶質であるフルオロポリマーは、フルオロポリマーを硬化または加硫することにより、フルオロエラストマを作製するために典型的に使用される。ゴム状弾性は、一般に硬化後に取得されるが、フルオロエラストマを作製するために使用されるフルオロポリマーはまた、多くの場合、フルオロエラストマと称される。十分な結晶化度を有し、従って、明確に検出可能かつ顕著な融点を有する溶融加工可能な熱可塑性のあるフルオロポリマーは、フルオロサーモプラストまたは熱可塑性フルオロポリマーとして、当該技術分野において既知である。
【0004】
フルオロサーモプラストの押出成形速度は、ポリマー溶解がメルトフラクチャーを受ける速度に限定される。これは、ワイヤおよびケーブル押出成形、フィルム押出成形、ブローンフィルム押出成形および射出成形などの熱成形プロセスにおいて重要な場合がある。押出成形速度が、メルトフラクチャーが生じる速度(臨界せん断速度として知られる)を超える場合、押出物品の望ましくない粗面を取得する。例えば、THVおよびFEPなど二相性フルオロサーモプラストは、押出ポリマーの分子量分布(MWD)を実質的に拡大し、それによって臨界せん断速度を増加することにより、押出成形速度を増加する試みに使用されている。しかしながら、臨界せん断速度の増加は、耐用期間を縮小するなどの全体的な機械的特性を弱めることにより、典型的に達成する。
【0005】
ワイヤおよびケーブル押出成形のフルオロサーモプラストのプロセス速度はまた、比較的大きな開口部がある押出成形型を使用し、望ましい最終直径に押出成形溶解を延伸することにより、増加することもできる。溶解延伸物は、一般に、型開口部の断面積比に対する完成した押出品の断面積比として算出された延伸比により特徴付けられる。ワイヤおよびケーブル押出成形の典型的なドローダウン比は、約100前後である。しかしながら、本溶解延伸物の速度を特徴付ける高い伸長速度は、通常、1から1000 1/s前後であることを含む。ポリマー溶解は、十分に高い伸張粘度を示す必要がある。さもなければ、押出成形においてポリマー溶解のコーンの安定性は、不十分であり、頻繁なコーンの破損に加えて、押出成形物品の望ましくない直径の変動を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コーンの安定性の増加のさらなる試みは、例えば、FEPを有するペルフルオロビニルエーテル(PVE)の使用を含む。フルオロサーモプラストの工程速度が増加する一方、機械的特性を保持するための試みにおいて、PVEを(フルオロサーモプラストのコモノマーとして)追加する。しかし、フルオロサーモプラストへのPVEの追加の取り込みは、製造費を増大させ、望ましくない場合がある。さらに、金型デポジット(「メヤニ(diedrool)」)の構成は、特に、フルオロサーモプラストの広いMWDとともに生じてもよい。ワイヤおよびケーブルの絶縁など、高速押出成形手順において、金型デポジットの大きな集積は、型から離し、融解コーンの切断(「コーンの破損」)、および製品の中断を生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フルオロサーモプラストのために、より速いせん断速度で融解工程ができ、高い伸張粘度を有する必要性がある。さらなる必要性として、機械的特性の低減、費用の増加などその他の不利点および/またはその他の工程の不利点を生じることなく、高速な臨界せん断速度および/または高い延伸比を有するフルオロサーモプラストを見つけること、が存在している。望ましくは、フルオロサーモプラストの熱的安定性に影響を及ぼさず、または改善され、フルオロサーモプラストは、好ましくは、水溶性エマルション重合を通して環境に優しい方法で用意に製造することができる。
【0008】
一態様では、本発明は、0.93から1.0の緩和指数(relaxation exponent)を有する第1のフルオロポリマーと、0.3から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーとを備え、100℃から320℃の融点を有する溶融加工可能で、熱可塑性があるフルオロポリマーから成る組成物に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、0から0.1の長鎖分枝指数を有する第1のフルオロポリマーと、少なくとも0.2の長鎖分枝指数を有する第2のフルオロポリマーとを備え、100℃から320℃の融点を有する溶融加工可能で、熱可塑性があるフルオロポリマーから成る組成物に関する。
【0010】
一部の実施形態において、かかる組成物は、第1のフルオロポリマー単独の臨界せん断速度と比較して、臨界せん断速度を増加することが認められた。また、一部の実施形態において、組成物は、伸長変形(延伸)下で、一般に溶解伸張を増加させる、著しいひずみ硬化を示した。本事象は、直鎖ポリマー連鎖構造を有する従来の現況技術ポリマーでは観測されない。ひずみ硬化は、コーンの異質を治癒するために溶解力を誘発する(いわゆる自己治癒効果)。結果として、このような実施形態において、押出成形のケーブルの絶縁厚は、改善された均一性を示してもよい。本粘弾性的特性は、高い延伸比を用いる利用に適する組成物の実施形態を作製する。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、溶融加工可能で、熱可塑性があり、100℃から320℃の融点を有する、組成物の作製方法に関する。該方法は、0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマーを形成するために重合するステップと、0.3から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーを形成するために重合するステップと、を備える。一実施形態において、第1および第2のフルオロポリマーの重合するステップの1つは、シード重合など、その他の存在で行われる。
【0012】
別の態様では、本発明は、溶融加工可能で、熱可塑性があり、100℃から320℃の融点を有する、組成物の作製方法に関する。該方法は、0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマーと、0.3から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーをブレンドするステップを備える。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、第1のポリマー部分として同一の化学構造を有するポリマーが、0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマー部分と、第2のフルオロポリマー部分として同一の化学構造を有するポリマーが、0.3から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマー部分と、を有するコアシェルポリマーを備える、組成物および組成物の作製方法に関する。
【0014】
さらにさらなる態様では、本発明は、特に、ワイヤおよびケーブル、管、およびフィルムの押出成形における、物品の押出成形における、上記に記載の組成物の使用に関する。
【0015】
本発明に関連して、ポリマーを押出するために使用される従来の押出成形装置においてポリマーを処理することができるように、ポリマーの融解粘度が十分低い場合、フルオロポリマーは、融解処理可能であると考えられる。これには、例えば250から400℃の処理温度で、融解粘度が106Pa*s、好ましくは102から105Pa*s超過しないことが典型的に必要となる。
【0016】
本発明に関連して、用語「コポリマー」とは、明示的に記載されないその他のモノマーから誘発される、その他のさらなる反復単位の選択を除外しないで、記載されないモノマーから誘発される反復単位を含むポリマーを意味することを一般に理解するべきである。従って、例えば用語「モノマーAおよびB’のコモノマー」とは、ターポリマーおよびクアドポリマーなど、AおよびBより他のさらなるモノマーを有するポリマーに加えて、AおよびBのバイナリーポリマーを含む。

【発明を実施するための形態】
【0017】
一態様では、本発明は、0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマーと、0.3から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーとを備え、100℃から320℃の融点を有する溶融加工可能で、熱可塑性があるフルオロポリマーから成る組成物に関する。
【0018】
一実施形態において、第2のフルオロポリマーは、(a)1つ以上のガス状のフッ素化モノマー、(b)1つ以上の変性剤、および(c)非ガス状のフッ素化モノマーおよび非フッ素化モノマーから任意に選択される1つ以上のコモノマーから誘発される。一実施形態において、1つ以上の変性剤は、臭素またはヨウ素原子の二重結合の少なくとも1つの炭素を有するオレフィンである。Brおよび/またはI原子を含むものとは別として、オレフィンは、フッ素原子を含まない非フッ素化であってよく、一部であるがすべてではない水素原子をフッ素原子で置換される、部分的にフッ素化されるものであってよく、またはオレフィンは、すべての水素原子をIまたはBrで置換されたものを除いたフッ素原子で置換される完全フッ素化(perfluorinated)化合物であってよい。
【0019】
特定の実施形態において、オレフィンは、一般式に対応してもよく、
2C=CXZ (II)
式中、各Xは、同一または異なるものであってよく、少なくとも1つのXは、BrまたはIを示し、Zは、水素、F、Cl、Br、I、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、またはペルフルオロポリエーテル基を示す条件を有する、水素、F、Cl、BrおよびIから成る群から選択される。ペルフルオロアルキル基の例は、例えば1つから5つの炭素原子、1つから8つの炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖ペルフルオロアルキル基を含む。ペルフルオロアルコキシ基の例は、アルキル基において、それによって、アルキル基は、直鎖または分枝鎖であってもよい、例えば1つから5つの炭素原子、1つから8つの炭素原子を有するものを含む。例は、以下の式に対応するものなどのペルフルオロポリエーテル基を含み、
−O(R1f0)n(R2f0)m3f
式中R1fおよびR2fは、1つから6つの炭素原子、特に2つから6つの炭素原子から成る各直鎖または分枝鎖ペルフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して、m+nが少なくとも1である、0から10であり、R3fは、1つから6つの炭素原子から成るペルフルオロアルキル基である。
【0020】
特定の実施形態において、式中Xは、少なくとも1つのXは、Brを示し、Zは、水素、F、Br、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロアルコキシ基を示す条件を有する、水素、FおよびBrから選択される、式(II)のオレフィンを使用することができる。オレフィンの特定例は、1−ブロモ−1,2,2,−トリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン(BTFEと称する)、臭化ビニル、1,1−ジブロモエチレン、1,2−ジブロモエチレン、1−ブロモ−2,3,3,3−テトラフルオロ−プロペン、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン(BDFE)を含む。また、オレフィンを含む臭素またはヨウ素の混合物を使用することを意図する。
【0021】
その他の実施形態において、第2のフルオロポリマーは、少量のヨード(ペルフルオロアルキル)エチレンで重合されたテトラフルオロエチレンの熱硬化性のないコポリマーである。具体的には、ヨード(ペルフルオロアルキル)エチレンは、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB)であってよい。当業者は、得られるポリマーが例えば0.3から0.92の範囲、0.92未満の緩和指数を有する限り、変性剤は特に限定されないことを認識するであろう。
【0022】
本発明のさらなる実施形態において、変性剤は、以下の式に対応してもよく、
a2C=CXa−Rf−Br (I)
式中、Xaは独立して、水素、フッ素、臭素、塩素またはヨウ素を示し、Rfは、典型的には1つから8つの炭素原子を有する、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロオキシアルキレン基または二価のペルフルオロポリエーテル基である。臭素をRf基の端子位置(つまり、第1の炭素原子上にある)に含んでもよいが、選択的に、Rf基の鎖(つまり、第2または第3の炭素原子上にある)に沿って含んでもよい。式(I)によるオレフィンの例には、
CH2=CH−(CF2x−CF2Brであり、式中、xは、0から5であり、
CF2=CF−(CF2x−CFBr−CF3であり、式中、xは、0から5であり、
CF2=CF−(CF2x−CF2Brであり、式中、xは、0から5であり、
CH2=CH−O−(CF2x−CF2Brであり、式中、xは、0から5であり、
CF2=CF−O−(CF2x−CF2Brであり、式中、xは、0から5であり、
CF2=CF−(O−CF2−CF2−O)x−(CF2y−CF2Brであり、式中、xは、0から3であり、yは、0から5であり、
CF2=CF−O−(CF2−CF−(CF3)−O−)x−(CF2y−CF2Brであり、式中、xは、0から3であり、yは、0から5であり、
CF2=CH−O−(CF2x−CF2Brであり、式中、xは、0から5であり、
CH2=CF−O−(CF2x−CF2Brであり、式中、xは、0から5である。
【0023】
本発明のさらにさらなる実施形態において、二重結合で臭素またはヨウ素原子を有する1つ以上のオレフィンと式(I)に従ってオレフィンの混合物を使用する。
【0024】
別の実施形態において、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって変性剤を示してもよく、式中、Rfは、1つ以上のO原子を任意に含む、二価のペルフルオロ脂肪族基、ペルフルオロアリーレン基、ペルフルオロアルカリーレン(perfluoroalkarylene)基から選択される。二価のペルフルオロ脂肪族基は、例えばペルフルオロアルキレン基およびペルフルオロオキシアルキレン基を含む。本実施形態において、例えば1,8−ジビニルペルフルオロ(オクタン)、1,6−ジビニルペルフルオロ(ヘキサン)、および1,4−ジビニルペルフルオロ(ブタン)を含む。
【0025】
さらに別の実施形態において、変性剤は、ビスオレフィンから誘発されるモノマー単位であってもよい。一般式
12C=C(R3)−Z−C(R4)=CR56
を有するものとして記載されてもよく、
式中、各R1、R2、R3、R4、R5、およびR6は独立して、H、F、1つから5つの炭素原子を有するアルキル基、または1つから5つの炭素原子を有するフッ素化アルキル基から選択され、Zは、1つから18の炭素原子を有するアルキレンまたはシクロアルキレン基であり、直鎖または分枝鎖であってよく、任意に酸素原子を含み、また、部分的にフッ素化またはペルフルオロ化されてもよい。例えば、Zは、4から12の炭素原子、例えば4つ以上の炭素原子、6つ以上、または8つ以上でさえ、6つまでの炭素原子、8つまでの炭素原子、またはさらに12までの炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基であってもよい。
【0026】
Zがペルフルオロポリオキシアルキレン基である場合、式
−(Q)p−CF2O−(CF2CF2O)m(CF2O)n−CF2−(Q)p−であってもよく、
式中各Qは独立して、1つから10の炭素原子を有するアルキレンまたはオキシアルキレン基であり、各pは独立して、0または1であり、mおよびnは、m/n比が0.2から5であり、ペルフルオロポリオキシアルキレン基の分子量は、500から10,000、特に、1,000から4,000であるような整数である。一部の実施形態において、Qは、
−CH2OCH2−、および−CH2O(CH2CH2O)sCH2−から選択され、sは、1から3である。
【0027】
本説明による第2のフルオロポリマーは、いわゆる長鎖分枝を有する。つまり、主鎖からの1つ以上の分枝が存在するため、ポリマーは直鎖ではない。理論に成約される意図なく、フルオロポリマーの主鎖に重合されると、これらの分枝は、変性剤からの臭素またはヨウ素原子の抽出から生じる。主鎖上に生成されたラジカルは、その後、主鎖上に分枝としてポリマー鎖を形成する結果とともにさらに重合をもたらす場合がある。該分枝は、長鎖分枝またはLCBとして当該技術分野において既知である。
【0028】
融解処理可能な組成物に使用される第2のフルオロポリマーは、分枝ポリマーである非直鎖ポリマーである。フルオロポリマーが有機溶媒に可溶性がある場合、分枝または非直鎖のレベルは、長鎖分枝指数(LCBI)を通して特徴付けることができる。以下の等式に従い、R.N.シュロフ(Shroff)、H.マブリジス(Mavridis);マクロモル(Macromol.)、32、8464−8464(1999)&34、7362−7367(2001)に記載されるように、LCBIを決定することができる:
【数1】

【0029】
上記の式では、η0,Brは、温度Tで測定された分枝フルオロポリマーのゼロせん断粘度(単位Pa*s)であり、[η]Brは、分枝フルオロポリマーを溶解でき、aおよびkは、定数である温度T'で、分枝フルオロポリマーの固有粘度(単位mL/g)である。これらの変数は、以下の等式から決定される。
【数2】

式中η0,linおよび[η]linは、それぞれ同一温度TおよびT’で、同一の溶媒中で測定された対応する直鎖フルオロポリマーのゼロせん断粘度および固有粘度をそれぞれ示す。従って、LCBIは、測定温度の選択および供給される溶媒には依存しないが、当然のことながら、同一の溶媒および温度を等式1および2で使用することを条件とする。
【0030】
値aおよびkは、融解処理可能なポリマー組成物に使用されてもよいいくつかのフルオロポリマーのための試験条件に合わせて、記載される。
【表A】

【0031】
上記では、ポリマーのモノマー単位の指数は、モル%中の各単位の量を示し、試験条件は、以下のようである。
A:265℃でのせん断粘度および35℃でメチルエチルケトン中の固有粘度
B:230℃でのせん断粘度および23℃でジメチルホルムアミド中の固有粘度
C:230℃でのせん断粘度および110℃でジメチルホルムアミド中の固有粘度
定数「a」は、試験したフルオロポリマーに独立していると思われ、k値は、フルオロポリマーの組成物および使用した試験条件で異なることが上記から観測することができる。
【0032】
例えば、第2のフルオロポリマーのLCBIは、少なくとも0.2の値を有する。第2のフルオロポリマーのLCBIは、少なくとも0.3、少なくとも0.4、またはさらに少なくとも0.5であってよい。LCBIの上限は、本発明では特に限定されないが、10まで、5まで、またはさらに2までであってよい。一般に、融解の欠陥を削減するために第2のフルオロポリマーの有効性は、類似のゼロせん断速度粘度(η0)を有するポリマーに対するLCBI値の増加とともに増加する。しかしながら、分枝(およびLCBI値)のレベルが大きすぎる場合、フルオロポリマーは、有機溶媒に溶解できないゲル分率を有する場合がある。本観察は、フルオロポリマー処理器の操作範囲に実用限界を与える場合があるが、本明細書に記載の発明の上限を示すとは限らない。分枝のこのような高レベルで、融解処理可能な融解処理可能なポリマー組成物の処理におけるフルオロポリマーの効果は、フルオロポリマーの融解粘度が高すぎる場合、低減する場合がある。定期実験を通して、当業者は、LCBIの適切な値を容易に決定することができる。一般に、LCBIは、0.2から5、例えば、0.4から2.0であってよい。
【0033】
フルオロポリマーがいずれの有機溶媒にも不溶性である場合、分枝または非直鎖のレベルは、代替的に、緩和指数nを通して特徴付けることができる。WO2004/094491に記載されるように、分枝フルオロポリマー緩和指数nは、典型的に0.90まで、例えば、0.2以上、0.3以上、さらに0.35以上、さらに0.85までさらに0.92までである。一般に、nが1に近いほど、分枝が少ないことを示す。
【0034】
長鎖分枝のレベルおよびフルオロサーモプラストの緩和指数は、使用した変性剤の量の変化により、容易かつ再生可能な方法で制御することができる。従って、一般に、変性剤が少量であるほど、緩和指数が高く、変性剤が多量であるほど、緩和指数が減少する。重合条件などのその他の要因が長鎖分枝のレベルおよび緩和指数にもある程度影響する場合があるが、必要とされる変性剤の量は、典型的には、重合に与えるモノマーの総重量に基づいて、0.4重量%までである。変性剤の有効量は、0.01重量%、またはさらに0.05重量%から0.25重量%まで、さらに0.4重量%、またはそれより高くてもよい。変性剤は、重合の開始時に添加でき、および/または連続的な方法で、および/または少量ずつ、重合中、添加してもよい。
【0035】
本発明の記述の第2のフルオロポリマーは、100から320℃の融点を有する、結晶性であってよい。これらの第2のフルオロポリマーは、硬化できない、または過酸化物硬化システムを使用してのみかろうじて硬化でき、使用する場合、いくつかの変性剤は、臭素および/またはヨウ素原子を含む場合があるという事実にもかかわらず、臭素および/またはヨウ素原子をポリマー鎖に導入することができる。変性剤を使用する場合、変性剤の量は少なすぎて、重合反応後、いずれの臭素またはヨウ素原子が残っても、フルオロエラストマの作製において、観測され、必要とされる実質的な硬化を可能にするには、十分ではない。
【0036】
第1および第2のフルオロポリマーを含むポリマー組成物は、著しいひずみ硬化を示すという事実により決定付けられる。ひずみ硬化は、無次元ひずみ硬化係数Sにより定量化することができる。定期実験を通して、当業者は容易に様々な方法を通して適切なS値を決定することができる。Sを決定する一方法は、特別な伸長装置に装備されたレオメーターを制御した変形において、伸長実験を行う方法である。この市販されている機器の設定において、本発明の組成物の第2のフルオロポリマーは、伸長速度ε0・0.3から10 1/sの範囲で、少なくとも1.2のひずみ硬化変数Sを示す。伸長速度ε0・=11/sで1.2よりも小さいSを有するポリマーは、直鎖ポリマー連鎖構造を有すると分類される。
【0037】
Sを決定する代替的方法は、スピン力を測定可能な融解スピン装置により得られる。既知の装置は、例えば、レオテン(Rheotens)を含む。定義された条件下(定義されたダイ形状および定義された押出成形率)で記録された押出成形圧力pで除算された最大のスピン力Fmax.は、ひずみ硬化に関連する。本明細書に記載の第2のフルオロポリマーは、cN/barの単位で与えられた、少なくとも0.064の技術的係数Fmax/pを示す。0.064よりも小さいFmax/pを有するポリマーは、直鎖ポリマーとして分類してもよい。技術係数(technological coefficient)Fmax/pは、以下の方法において、ひずみ硬化係数Sに関連づける。
【数3】

【0038】
本明細書に記載の第1および第2のフルオロポリマーは、溶液重合、懸濁液重合、超臨界CO2の重合を含む、いずれの既知の重合技術を使用して取得することができる。第1および第2のフルオロポリマーはまた、水溶性エマルション重合処理を通して、作製してもよい。水溶性エマルション重合処理に使用するための反応器は、典型的に、重合反応中、内部圧力に耐えることができる加圧可能な容器である。典型的に、反応器は、機械的な撹拌器(mechanical agitator)を含み、反応装置の内容物と熱交換システムを通して生成する。フルオロモノマーのいずれの量を反応器に入れてもよい。回分式、連続的な方法、または半連続的な方法において、モノマーを入れてもよい。モノマーをケトルに添加する独立した比率は、時間を伴う特定のモノマーの消費率により異なる。好ましくは、モノマーの添加率は、ポリマーへのモノマーの変換である、モノマーの消費率に等しい。
【0039】
反応ケトルは、それほど重要でない量の水で充満し、水相を提供する。一般に、水相にフッ素化界面活性剤、典型的に、非テロゲン性(non-telogenic)フッ素化界面活性剤も添加する。当然のことながら、フッ素化界面活性剤を添加しない重合方法を使用する方法も適切である。使用する場合、フッ素化界面活性剤は、典型的に、0.01重量%から1重量%の量で使用される。好適なフッ素化界面活性剤は、水溶性エマルション重合で通常使用されるいずれのフッ素化界面活性剤を含む。特定の好ましいフッ素化界面活性剤は、一般式
Y−Rf−Z−Mに対応し、
式中Yが、水素、ClまたはFを示し、Rfが、4つから10の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖完全フッ素化アルキレンを示し、ZがCOO-またはSO3-を示し、Mが、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンを示す。本発明に使用される特定のフッ素化界面活性剤は、ペルフルオロオクタン酸およびペルフルオロオクタンスルホン酸のアンモニウム塩である。また、フッ素化界面活性剤の混合物も使用することができる。また、EP第1,189,953号に記載されるようなフッ素化ポリエーテル界面活性剤は、本明細書に記載のポリマーの調製の使用のために検討される。
【0040】
重合の開始前に、反応ケトルに連鎖移動剤を入れてもよい。有用な連鎖移動剤は、脂肪族カルボン酸およびマロン酸エステル、ケトン、およびハロカーボンを含む、エタン、アルコール、エーテル、エステルなどのC2〜C6の炭化水素を含む。特に有用な連鎖移動剤は、ジメチルエーテルおよびメチル第3ブチルエーテルなどのジアルキルエーテルである。また、重合中、連続的または半連続的な方法で、連鎖移動剤のさらなる添加を実行してもよい。例えば、二分子の分子量分布を有するフルオロポリマーは、連鎖移動剤の初期量の存在下で、第1の重合フッ素化モノマーにより適宜調製され、その後、追加のモノマーとともにさらに連鎖移動剤を重合した時点で添加される。
【0041】
反応開始剤または反応開始剤システムに水相を添加することにより、モノマーの初期変更後、通常、重合を開始する。例えば、過酸化物はラジカル開始剤として用いることが可能である。過酸化物反応開始剤の具体例としては、過酸化水素、例えばジアセチルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド、ジプロピオニルペルオキシド、ジブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルアセチルペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド、およびジラウリルペルオキシド、ならびに更なる水溶性過酸および、例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウムまたは塩などのそれらの水溶性塩が挙げられる。過酸の例としては過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に使用することができ、そしてそれらの例としては、第3ブチルペルオキシアセテート、および第3ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。使用することができる開始剤の更なるクラスは水溶性アゾ化合物である。開始剤として用いるために適するレドックス系には、例えば、ペルオキソジスルフェートと亜硫酸水素または二亜硫酸水素の組み合わせ、チオスルフェートとペルオキソジスルフェートの組み合わせ、ペルオキソジスルフェートとヒドラジンの組み合わせが挙げられる。使用することができる更なる開始剤は、過硫酸塩、過マンガン酸またはマンガン酸あるいは2種以上のマンガン酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。用いられる開始剤の量は、重合混合物の全重量を基準にして典型的には0.03〜2重量%の間、好ましくは0.05〜1重量%の間である。開始剤の全量は重合の開始時に添加してもよいか、または開始剤は、70〜80%の転化率まで重合中に連続方式で重合に添加することが可能である。開始剤の一部を開始時に添加することもでき、残りを重合中に一度にまたは別々の追加部分で添加することができる。また、例えば鉄、銅および銀の水溶性塩などの促進剤を添加してもよい。
【0042】
重合反応の開始中、密閉した反応ケトルおよびその内容物を反応温度まで適宜予熱する。重合温度は、20℃から、30℃から、またはさらに40℃からであってもよく、さらに100℃まで、110℃まで、またはさらに150℃までであってもよい。重合圧力は、例えば、400から3,000kPa(4から30バール)、特に800から2,000kPa(8から20バール)の範囲であってよい。水溶性エマルション重合システムはさらに、緩衝剤および錯体フォーマーなどの助剤を含んでもよい。
【0043】
重合の終了で取得することができるポリマー固体の量は、典型的には少なくとも10重量%、またはさらに少なくとも20重量%、最高40重量%、またはさらに最大45重量%であり、得られるフルオロポリマーの平均粒子サイズは、典型的には50ナノメートルから500ナノメートルまでである。
【0044】
(水溶性エマルション)重合工程は、完全フッ素化されるまたはされない場合がある、1つ以上のガス状のフッ素化モノマーの重合を含む。ガス状のフッ素化モノマーの例は、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンなどのペルフルオロアルキルビニルモノマー、ペルフルオロ化される場合があるフッ素化アリルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテルなど、ペルフルオロ化される場合もあるフッ素化ビニルエーテルを含む。ガス状のフッ素化モノマーを使用して共重合のために使用することができるコモノマーは、つまり、重合の条件下で、液相にあり、エチレンおよびプロピレンなど、非フッ素化モノマーである、非ガス状のフッ素化モノマーを含む。
【0045】
本発明のプロセスに使用することができるペルフルオロビニルエーテルの例は、式:
CF2=CF−O−Rfに対応するものを含む。
(式中、Rfは1つ以上の酸素原子を含有してよい完全フッ素化脂肪族基を表す)で表されるものが挙げられる。特に、式:
CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcfに対応するペルフルオロビニルエーテルが好ましく、
式中、RafおよびRbfは、1つから6つの炭素原子、特に2つから6つの炭素原子から成る異なる直鎖または分枝鎖ペルフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して、0から10であり、Rcfは、1つから6つの炭素原子から成るペルフルオロアルキル基である。完全フッ素化ビニルエーテルの特定の例には、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE−1)、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテルおよびCF3−(CF22−O−CF(CF3)−CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2が挙げられる。一部の前述のペルフルオロビニルエーテルは、重合の条件下で液体であり、従って、非ガス状のフッ素化モノマーである。適するペルフルオロアルキルビニルモノマーは、一般式:
CF2=CF−Rdf または CH2=CH−Rdfに対応し、
式中、Rdfは、1つから10の、好ましくは、1つから5つの炭素原子から成るペルフルオロアルキル基を示す。ペルフルオロアルキルビニルモノマーの典型的な例はヘキサフルオロプロピレンである。
【0046】
本発明により処理で生成される可能性のあるフルオロポリマーの例には、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のコポリマー、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンのコポリマー、クロロトリフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンのコポリマー、テトラフルオロエチレンおよびエチレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンおよびプロピレンのコポリマー、フッ化ビニリデンおよびペルフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のコポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびペルフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のターポリマー、テトラフルオロエチレン、エチレンまたはプロピレンおよびペルフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のターポリマー、テトラフルオロエチレン、エチレンまたはプロピレンおよびヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のターポリマー、およびテトラフルオロエチレン、エチレンまたはプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびペルフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のコポリマーのコポリマーなどを含む。
【0047】
上記のように、第2のフルオロポリマーの合成において、使用する場合、変性剤は、部分的に、または連続的な方法において、重合容器に添加してもよい。変性剤を別々の注入口または保存シリンダーから重合に与えてもよい。代替的には、変性剤とフッ素化モノマーの混合物は、変性剤を重合に与えるために使用してもよい。後方の方法は、長鎖分枝のさらに均一な分布をもたらす第2のフルオロポリマーに、改善された均質な変性剤を提供することができる。重合に与えるために変性剤を混ぜることができるモノマーとともに好適なフッ素化モノマーは、CTFE、HFPなどのフッ素化オレフィン、およびペルフルオロメチルビニルエーテルなどのペルフルオロビニルエーテルを含む。
【0048】
さらなる別の態様では、本発明は、第1のポリマー部分として同一の化学構造を有するポリマーが、0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマー部分と、第2のフルオロ部分として同一の化学構造を有するポリマーが、0.3から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマー部分と、を有するコアシェルポリマーを備える、組成物および組成物の作製方法に関する。
【0049】
一部の実施形態において、第2のフルオロポリマー部分は、第1のフルオロポリマー部分の40%以内、さらに30%以内、20%以内、または10%以内である、フッ素内容物を有する。その他の実施形態において、2つの部分のフッ素内容物は、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、またはさらに少なくとも20%異なる。さらにその他の実施形態において、2つの部分のフッ素内容物は、同一である。
【0050】
それぞれの第1および第2のフルオロポリマー部分として、同一化学構造を有するポリマーに加えて、コアシェルポリマーは、融解処理可能で熱可塑性があり、それぞれは、100℃から320℃の融点を有する。
【0051】
該方法は、重合、好ましくは、(a)1つ以上の第1のガス状フッ素化モノマーを、(b)1つ以上の変性剤および(c)非ガス状フッ素化モノマーおよび非フッ素化モノマーから選択される、任意の1つ以上の第1のコモノマーとの水溶性エマルション重合を含む。さらに該方法は、連鎖移動剤を重合に添加するステップを含む。1つ以上のガス状フッ素化モノマーおよび任意のコモノマーを伴う1つ以上の変性剤と重合後、連鎖移動剤を添加する場合、取得したポリマー分子の平均鎖長を制御するために十分な量において、連鎖移動剤を添加してもよい。この順序で、第2のフルオロポリマー部分を形成する。続いて、または代替的に、第2のフルオロポリマー部分の重合前に、該方法は、1つ以上の変性剤、1つ以上の第2のガス状フッ素化モノマーおよび任意に1つ以上の第2のコモノマーの不在下で、重合するステップを含む。第2のガス状フッ素化モノマーおよび任意の第2のコモノマーは、第1のガス状フッ素化モノマーおよび任意の第1のコモノマーと同一であってもよい。本工程は、第1のフルオロポリマー部分を生成する。第1のフルオロポリマー部分は、コアまたはシェルのどちらかを作製してもよく、第2のフルオロポリマー部分は、その他を作製してもよい。
【0052】
コアシェルポリマーにおいて、コアポリマーおよびシェルポリマーの化学構造からの急激な改造でない場合がある。つまり、コアシェルポリマーは、ブロックコポリマーである必要はない。第1のフルオロポリマー部分および第2のフルオロポリマー部分は、一部分で分離し、コアの化学組成物は、シェルの化学組成物に遷移する場合がある。本遷移部分は、コアポリマーの一部の特性およびシェルポリマーの一部の特性を有する一般化学構造を有する場合がある。遷移領域におけるこれらの化学特性の相対量は、コアポリマーに近くとても類似しているコアから、シェルポリマーに近くとても類似しているシェルに変化する。上記に記載されるように、第1または第2のフルオロポリマーのいずれは、シェルを含むその他とともに、コアを含んでもよい。
【0053】
化学組成物における急変を本明細書で検討されたコアシェルポリマーに示す場合がある。例えば、いわゆるシードラテックスを使用して、コアシェルポリマーの調製によってこのような構造を取得してもよい。
【0054】
一部の実施形態において、1つ以上の変性剤は、典型的に、重合に与えられるモノマーの総重量に基づいて0.4重量%まで、特に0.01から0.4重量%(またはより高く)までの量で使用される。第2のフルオロポリマーの形成に対して、本明細書に記載されるように、いずれの量において、変性剤を添加してもよい。
【0055】
PFAおよびFEP、またはコアシェルポリマーなど、分離した第1および第2のフルオロポリマーは、後フッ素化、ポリマー検査後であってよい。後フッ素化中、フルオロポリマー中のいずれの残存する水素、臭素、および/またはヨウ素原子は、フッ素原子で置換することができる。さらに、カルボン酸基、COF基、アミド基、および−CF2CH2OH基など、いずれの不安定な末端基は、フルオロポリマーの融解処理中、HFを分解し、形成する場合があり、安定したCF3基に変換することができる。フッ素化後、百万の炭素原子あたり30未満、20未満、またはさらに10未満の不安定な末端基がフルオロポリマーに存在するような十分な条件下で、実施される場合がある。従って、それによって、不活性が高いフルオロポリマーを取得する場合がある。後フッ素化を、第1または第2のフルオロポリマー上において、またはどちらでもなく、または双方の上において、実行してもよい。
【0056】
さらに別の態様では、本説明は、0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマーと0.30から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーを含む組成物を作製するための方法を提供する。本方法に関しては、本明細書に記載の組成物およびその他の方法に加えて、2つのフルオロポリマーのモノマー組成物は、同一である、または異なることがあってよい。該方法は、第1のフルオロポリマーおよび第2のフルオロポリマーを混合するステップを含む。混合するステップは、第1および第2のそれぞれのフルオロポリマーから成る、例えば、水溶性分散など、分散の混合を含んでもよい。該方法は、さらに分散混合物を凝固するステップを含んでもよい。混合するステップはまた、静的ミキサーにおいて、第1および第2のフルオロポリマーの疑集体のブレンドを含む、いずれの多くの他の技術により実行される場合がある。ブレンド物の均一性は、例えば、単軸または2軸押し出し機押出成形機、または内部ミキサー(例えば、ブラバリー(Brabury)ミキサー)など、追加の融解ブレンド工程によりさらに改善することができる。
組成物は、いずれの相対量において、本明細書に記載されるように、第1および第2のフルオロポリマーを含んでもよい。例えば、第2のポリマーの存在は、組成物の総重量に基づいて少なくとも90重量%、少なくとも50重量%、少なくとも20重量%、少なくとも10重量%、少なくとも5重量%、またはさらに少なくとも0.1重量%であってよい。第1のフルオロポリマーは、組成物の総重量に基づいて少なくとも10重量%まで、少なくとも50重量%まで、少なくとも80重量%まで、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、またはさらに少なくとも99.9重量%であってよい。
【0057】
本明細書に記載の組成物は、様々な物品の製造に好適であり、特に、物品を製造するために高い伸長速度を含む、押出成形処理工程に好適である。例えば、組成物は、迅速に処理でき、ワイヤおよびケーブルの押出成形に使用することができる高い延伸比を用いて処理することができるように、ひずみ硬化挙動と組み合わせる高速な臨界せん断速度を有する利点を示すワイヤおよびケーブルを作製するために使用することができる。ひずみ硬化挙動は、少なくとも1.2のひずみ硬化指数S、または代替的に、少なくとも0.064の技術係数Fmax/pにより特徴付けられる。一般に、これらの特性は、機械的特性を犠牲にすることなく、所得される。さらに、本発明による組成物を処理する場合があるひずみ硬化特性のため、ケーブルまたはワイヤの押出成形において、高い延伸比を用いて高速処理速度で生じる場合がある、いずれの直径変動は、一般に、ケーブルまたはワイヤに適用する高い延伸力を用いてケーブル押出成形中、消失する。これは、例えば、本明細書に記載の第2のフルオロポリマーを含まない直鎖フルオロサーモプラストを含むポリマーブレンドに対照させることであり、延伸処理において生じる直径変動の結果として、ケーブル直径が低い場合、高い延伸力下で、ケーブル絶縁のコーン破損は生じる。
【0058】
組成物は、例えば、屋外用布地をコーティングするためのコーティングの用途、例えば、燃料ホース、フィルムの押出成形、および射出成形品などの管の作製のためにさらに使用してもよい。
【0059】
以下の実施例を用いて本発明をさらに例示するが、本発明をそれら実施例に制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0060】
方法
g/10分において報告される、メルトフローインデックス(MFI)は、ASTMD−1238により、5.0kgの支持重量で測定された。特に記載のない限り、265℃の温度を適用し、2.1mmの直径および8.0mmの長さの標準化された押出成形型を使用した。
【0061】
窒素流量および10℃/分の加熱率下で、パーキンエルマー(Perkin-Elmer)DSC7.0(マサチューセッツ州ウェルズリーのパーキンエルマー(PerkinElmer, Wellesley, MA))を用いて、ASTM 4591によりフッ素樹脂の融解ピークを決定した。示された融点は、融解ピーク最大値に関する。
【0062】
ラテックス粒径の決定は、イソ(ISO)/DIS 13321に従って、マルバーンゼタザイザー(Malvern Zetazizer)1000 HSA(マサチューセッツ州サウスボロのマルバーンインストルメント(Malvern Instruments Inc., Southborough, MA))を使用して伴う、動的光散乱を使用して、実施された。報告された平均粒径は、Z平均である。測定前に、重合から産出されるようにポリマーラテックスを0.001mol/LKCl溶液で希釈し、測定温度は、すべての場合において20℃であった。
【0063】
希釈したポリマー溶液の溶液粘度は、DIN 53726に従って、35℃でメチルエチルケトン(MEK)中で0.16%のポリマー溶液上において、通常決定された。イソ/DIS 3105およびASTMD 2515を満たすキャンノンフェンスケ型粘度計(Connon-Fenske-Routine-Viskosimeter)(Fa.ショット(Schott)、ドイツ、マインツ(Mainz/Germany))を測定のために使用した。ハーゲンバッハ(Hagenbach)修正を通常どおり適用した。取得した低減した粘度ηred.をハギンス式(Huggins equation)(ηred.=[η]+kH×[η]2×c)およびkH=0.34のハギンス係数を使用して、固有粘度[η]に変換した。
【0064】
振動ずれ流動測定を、ひずみ制御されたARESレオメーター(3ARES−13;米国デラウェア州ニューキャッスル、ティーエーインストルメント(TA Instruments New Castle, DE, USA))のファームウェアバージョン(Firmware version)4.04.00)を使用して、フルオロポリマー融解において実施し、それには、FRT200変換器を備え、200gまでの抵抗力を有する。265℃、窒素雰囲気下で、25mmの平行平板の形状を使用し、掃引周波数の実験において、動的機械的データを記録した。オーブンの熱的制御を、サンプル/ツールの熱素子を使用して行った。1から20%まで典型的に上昇するひずみを適用した。ゼロせん断粘度η0を、Pa*sで報告し、オーケストレータ(orchestrator)ソフトウェア(バージョン7.08.13)により提供された、4つのパラメータカロー(Carreau)フィット機能を使用して粘度機能η*(ω)から推定した。取得したゼロせん断粘度η0および固有粘度[η](上記参照)を使用して、長鎖分枝指数LCBIを等式1およびa=5.26およびk=2.47×10-7の係数により評価した。緩和指数n(n=δc/90°)を評価するために必要とされる、ゲル点δcの位相角は、第1の誘導体のδ(ω)が、最大値を通過する、または第2の誘導体がゼロを通過する周波数から選択される。ひずみ硬化の量を評価するために必要とされる、せん断η0+(t)における過渡伸長粘度機能(下記参照)は、周波数掃引から算出された。本明細書では、伸長粘度は、粘度η*を3倍(トルートン則(Trouton rule)に従う)することにより得られ、時間tは、逆周波数(t=1/ω)から得られた。
【0065】
265℃で、ティーエーインスツルメント(TA Instruments)のARES−EVF(伸長粘度固定)ツールを使用して、同一のARESレオメーターにおいて、過渡の単軸延伸部測定を記録した(2つのローラーは、12.7mmの距離を有する)。オーブンの熱的制御を、オーブン中で熱素子を使用して、「モード3(Mode 3)」において行った。分析したポリマーサンプルは、プレス焼結したプレートから取られ、通常、長さ18mm、高さ9〜11mm、厚さ0.7〜1.0mmの寸法の長方形状の形状を有した。100秒の予熱時間と0.01 1/sの初期伸長を適用した。室温で、1.8g/cm3のポリマー密度および265℃で1.5g/cm3のポリマー密度を使用して、熱膨張を補償した。時間の機能として伸長粘度ηE+(t)を、ひずみ制御され、連続および過渡モードにおけるモータ設定を有する、ひずみ率ε0・の0.3、1.0、3.0および10s-1で記録した。最大値4.9(L/L0=134)のヘンキー(Hencky)(真)歪がARES−EVF装置で達成されるが、2.5(L/L0=2.2)のヘンキー歪が実際には達成することができる。特に記載のない限り、これらの条件下で、測定中、コーン破損は生じなかった。
【0066】
無次元ひずみ硬化係数Sを、S=ηE+(t,ε0・)/[3×η0+(t)]により決定した。本明細書では、ηE+(t,ε0・)は、2.2(L/L0=9.0)または1.5(L/L0=4.5)のヘンキー歪で得られた伸長粘度であり、代替的には、η0+(t)は、周波数掃引の実験から算出されたせん断における過渡伸長粘度機能である。
【0067】
回転装置でひずみ硬化を記録するために、以下の実験の設定を選択した。融解ストランドをレオグラフ(Rheograph)2000キャピラリーレオメーター(ゲットフェルト(Goettfert)、ブッヘン(Buchen)、ドイツ(Germany))を使用して押出成形した。直径2.3mm、長さ36mmの標準キャピラリーおよび50,000kPa(500バール)の標準圧力トランスデューサを選択した。特に記載のない限り、溶解温度は、265℃であった。0.5mm/sのピストン速度mm/sを適用し、47.3 1/sの見かけのせん断速度に対応した。回転の長さは、80mmであったので、押出融解ストランドをドイツブッヘン(Buchen, Germany)のゲットフェルト(Goettfert)からレオテンス(Rheotens)101.1の回転により得た。回転の実験のために選択された速度ランプは、12mm/s2であった。レオテンス(Rheotens)の力曲線の連続プラトー値を達成した場合、cNの単位で報告された、最大圧延力Fmax.を得た。Fmax./pを評価するために必要とされる圧力をキャピラリーレオメーターのトランスデューサから得た。
【0068】
(実施例1)
鎖トポグラフィーを有する39モル%のTFE、11モル%のHFPおよび50モル%のVDFのターポリマーは、以下の手順に従う羽根車攪拌器システムを搭載した総容量48.5Lの重合ケトルにおいて調製された。ケトルは、2gのシュウ酸、12gのシュウ酸アンモニウム、および252gの30重量%のペルフルオロオクタン酸アンモニウム塩(APFO)水溶液から成る、29.0Lの脱イオン水で充満した。無酸素ケトルは、その後、40℃まで加熱され、攪拌システムを240rpmに設定した。ケトルは、120kPa(1.2バール)の絶対反応圧のエタン、953gの750kPa(7.5バール)の絶対反応圧のヘキサフルオロプロピレン(HFP)、283gの1,170kPa(11.7バール)の絶対反応圧のビニリデンフルオライド(VDF)、および429gの1,550kPa(15.5バール)の絶対反応圧のテトラフルオロエチレン(TFE)で充満した。10mLの1.0%の水溶性過マンガン酸カリウム(KMn04)溶液の添加により重合を開始し、およびKMn04溶液の連続フィードを120mL/時間の供給速度で維持した。反応開始後、40℃の反応温度および1,550kPa(15、5バール)の絶対反応圧は、0.423のHFP(kg)/TFE(kg)の供給比および0.820のVDF(kg)/TFE(kg)の供給比を有する気相にTFE、VDFおよびHFPを供給することにより維持された。20分間、450gのTFEの供給後、モノマーの供給システムは、2.15kg/時間のTFE流量に限定された。その他のモノマーの供給比を維持した。モノマー流量の制限のため、反応圧力は、980kPa(9.8バール)絶対反応圧に低下した。6590gのTFEの総供給が190分以内に達成され、反応圧が1,010kPa(10.1バール)まで増加した場合、モノマーの供給は、モノマーのバルブを閉じることにより妨げられた。10分以内に、モノマー気相が920kPa(9.2バール)のケトル圧力まで下がって反応した。その後、反応装置を通気し、3サイクルにおいて、N2で洗い流した。
【0069】
従って、35.4%の固形分および97ナノメートルの平均ラテックス粒径(動的光散乱により決定される)を有する得られた44.2kgのポリマー分散を反応装置の底で除去し、DOWEX 650Cの陽イオン交換樹脂(ミシガン州ミッドランド、ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Co, Midland, MI))を含むガラスコラムを通過し、8.8Lの分散を20Lのアグロメレーション容器に移動させた。5Lの脱イオン水0.12Lの濃縮した塩酸および1.8Lのペルフルオロn−ヘプタンPF5070のアグロメレーション補助(ミネソタ州セントポール、スリーエムカンパニー(3M Company, St.Paul, MN))をポリマー分散に添加した。固体が水相から十分に分離するまでアグロメレーションケトルを活発に攪拌した。脱イオン水で疑集体を3回洗浄し、アグロメレーション補助を蒸留し、ポリマーを80℃で12時間、オーブンで乾燥させた。従って、得られた2.9kgのポリマーは、メチルエチルケトン(MEK)およびテトラヒドロフラン(THF)にすぐに溶解し、下記に記載の物理的特性を示した。
【表B】

【0070】
(実施例2)
直鎖トポグラフィーを有する高分子量のフルオロポリマーを20kPa(0.2バール)のエタンを加圧し、0.5%の水溶性過マンガン酸カリウム(KMn04)溶液を使用することだけ異なる実施例1に同様の方法で調製した。その他の重合条件およびポリマーの調製は同一であった。従って得られたポリマーは、下記に記載の物理的特性を示した。
【表C】

【0071】
(実施例3〜6)
様々なブレンドを実施例1および実施例2のポリマー分散から調製した。高分子量の部分(実施例2)は、固体ポリマーに対して2重量%から20重量%までさまざまである。これらの分散ブレンドは、実施例1に同様に調製した。従って、連鎖直鎖構造の得られたポリマーブレンドは、(実施例2のポリマーに影響を受ける)高分子量で、明確なテーリングを有する分子量分布があった。これらのポリマーを振動および伸長流量形を使用して分析した。結果を表1に要約する。適用した伸長速度の範囲では、識別することができるひずみ硬化を示す例はなかった。
【表D】

1 5のヘンキー歪で決定された
【0072】
(実施例7)
以下の実施例では、実施例1に類似の化学組成物を有するが、長鎖分枝した連鎖構造を有するコポリマーを、生成した。実施例1のように同一のケトルで重合を行い、類似の手順を以下の変更を除いて適用した。ケトルは、60℃で、220kPa(2.2バール)の絶対圧のエタン、および906gの890kPa(8.9バール)の絶対圧のヘキサフルオロプロピレン(HFP)で充満した。HFP(総容量5.3l)のために供給ラインとして使用したステンレススチールシリンダーを十分に真空にした。完全に真空した後、シリンダーは、160kPa(1600ミリバール)のブロモジフルオロエチレン(BDFE、50g)で充満した。その後、シリンダーは、乱流条件下で、HFPにBDFEの十分な分散を確保するために、2850gのHFPで急速に充満した。重合の残りを、実施例1に記載の同一の方法において、60℃の重合温度で、実施した。1.0%の水溶性過マンガン酸カリウム(KMn04)溶液を使用し、75mL/時間の供給率を適用した。34.0重量%の固形分を有するポリマー粒子および(動的光散乱により決定される)98ナノメートルの平均直径を有するラテックス粒子を得るために、230分間、重合を行った。(実施例1に記載の同一方法において、調製された)ポリマーの物理的特性を以下に記載する。
【表E】

【0073】
(実施例8)
長鎖分枝したフルオロポリマーと直鎖ポリマーのブレンドおよびその特性を本実施例に記載する。実施例7からの50重量%および実施例1からの50重量%から成るポリマーブレンドを、実施例3にあるように、調製した。双方のブレンド成分のMFIは、非常に類似している。本ポリマーの物理的特性を下記に記載する。
【表F】

実施例7からのポリマーのひずみ硬化挙動は、直鎖ポリマーを有する1:1の比で希釈されるが、ほぼ完全に維持されることを伸長粘度データは示す。
【0074】
(実施例9)
実施例2に同様の化学組成物を有するが、長鎖分枝した連鎖構造を有する高分子量のコポリマーを生成した。実施例2のように同一のケトルで重合を行い、105kPa(1.05バール)のエタンを加圧し、12.5gのBDFE(41kPa(410ミリバール)のBDFE)をHFPシリンダーに充満する変更を除いて、類似の手順を適用した。その他の重合条件(モノマーフィードを190分後完了した)およびポリマー調製は同一であった。
【表G】

実施例7と同様に、物理的パラメータLCBIおよび緩和指数nは、本ポリマーの例の長鎖分枝した構造を明確に示す。
【0075】
(実施例10)
長鎖分枝した構造を有する高分子量のフルオロポリマーと直鎖ポリマーとのブレンドを以下の実施例に記載する。実施例9からの10重量%および実施例1からの90重量%から成るポリマーブレンドを、実施例3にあるように、調製した。双方のブレンド成分のMFIは、17倍で互いに異なる。本ポリマーブレンドの物理的特性を下記に記載する。
【表H】

実施例9の10%のポリマーの直鎖ポリマーのマトリックスへの含有は、ポリマーブレンドの著しいひずみ硬化をもたらすために十分である。当業者から直鎖ポリマー(ひずみ硬化なし、実施例3〜6)と実施例9のポリマー(ひずみ硬化なし)の組み合わせが、この顕著な効果を示すことは期待されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマーと、0.30から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーとを含む組成物であって、前記第1および第2のフルオロポリマーは、溶融加工可能で、熱可塑性があり、100℃から320℃の融点を有する、組成物。
【請求項2】
前記第2のフルオロポリマーの前記緩和指数が、0.3から0.85である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、伸長速度1 1/sで測定された、少なくとも1.2のひずみ硬化指数Sを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも0.064の技術係数Fmax/pを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2のフルオロポリマーが、
(a)1つ以上のガス状のフッ素化モノマーと、
(b)(i)オレフィンの二重結合の炭素に結合した臭素またはヨウ素原子を有するオレフィン、(ii)下記式(I):
a2C=CXa−Rf−Br (I)
(式中、各Xaはそれぞれ独立して、水素、フッ素、臭素、塩素、またはヨウ素を示し、Rfは、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロオキシアルキレン基、またはペルフルオロポリエーテル基である。)に対応するオレフィン;(iii)式CH2=CH−Rf−CH=CH2(式中Rfは、任意に1つ以上のO原子を含む二価のペルフルオロ脂肪族基、ペルフルオロアリーレン基、およびペルフルオロアルカリーレン基から選択される。)に対応するオレフィン;(iv)式R12C=C(R3)−Z−C(R4)=CR56(式中、各R1、R2、R3、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立して、H、F、1〜5つの炭素原子を有するアルキル基、1〜5つの炭素原子を有するフッ素化アルキル基から選択され、Zは、1から18の炭素原子を有するアルキレンまたはシクロアルキレン基であり、直鎖または分枝鎖であってもよく、任意に酸素原子を含む。)に対応するビスオレフィン;および(v)それらの混合物、から選択される1つ以上の変性剤と、
(c)非ガス状のフッ素化モノマーおよび非フッ素化モノマーから選択される任意に1つ以上のコモノマーと、から誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ガス状のフッ素化モノマーが、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロビニルエーテル、およびその混合物から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記オレフィンの前記二重結合の炭素に結合する臭素またはヨウ素原子を有する前記オレフィンが、一般式
2C=CXZ (I)
に対応し、式中、各Xは、同一または異なるものであってよく、少なくとも1つのXが、BrまたはIを示し、Zが、水素、F、Cl、Br、I、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、またはペルフルオロポリエーテル基を示す条件で、水素、F、Cl、Br、およびIから成る群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
式中、少なくとも1つのXがBrを示し、Zが水素、F、Br、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロアルコキシ基を示すという条件で、Xが水素、F、Brから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記変性剤が、ビスオレフィンであり、式中、さらにZは4から12の炭素原子を有する、部分的にフッ素化されたまたは完全フッ素化された基である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のフルオロポリマーが、完全フッ素化ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2のフルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン、完全フッ素化ビニルエーテルから選択される第2のモノマーから誘導される単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1および第2のフルオロポリマーの総重量に基づき、0.1から90重量%の前記第2のフルオロポリマー、10から99.9重量%の前記第1のフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1および第2のフルオロポリマーの総重量に基づき、5から50重量%の前記第2のフルオロポリマー、50から95重量%の前記第1のフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1および第2のフルオロポリマーの総重量に基づき、10重量%までの前記第2のフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1および第2のフルオロポリマーが、均一な混合物の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記第2のフルオロポリマーおよび前記第1のフルオロポリマーが、同一のモノマー単位から誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1のフルオロポリマーの各モノマー単位の相対量が、前記第2のフルオロポリマーの前記同一のモノマー単位の相対量の40重量%以内である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1のフルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデンのコポリマー、ならびにテトラフルオロプロピレン、およびペルフルオロ(ビニル)エーテルのコポリマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
0から0.1のLCBIを有する第1のフルオロポリマーと、少なくとも0.2のLCBIを有する第2のフルオロポリマーとを含み、前記第1および第2のフルオロポリマーは、溶融加工可能で、有機溶媒に可溶性であって熱可塑性であり、100℃から320℃の融点を有する、組成物。
【請求項20】
第1のフルオロポリマーと第2のフルオロポリマーとを有するコアシェルポリマーを含む組成物であって、
前記第1のポリマー部分として同一の化学構造を有するフルオロポリマーが、0.93から1.0の緩和指数を有し、
前記第2のフルオロポリマー部分として同一の化学構造を有するポリマーが、0.3から0.92の緩和指数を有する、組成物。
【請求項21】
溶融加工可能で、熱可塑性があり、100℃から320℃の融点を有する組成物を作製する方法であって、
0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマーを重合して形成するステップと、
0.3から0.90の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーを重合して形成するステップと、を備え、
前記第1または第2のフルオロポリマーを重合するステップの一方が他方の存在下で実施される、方法。
【請求項22】
下記のステップを備える方法であり、
(a)1つ以上のガス状フッ素化モノマーと、
(b)(i)オレフィンの二重結合の炭素に結合した臭素またはヨウ素原子を有する前記オレフィン、(ii)下記式(I):
a2C=CXa−Rf−Br (I)
(式中、各Xaはそれぞれ独立して、水素、フッ素、臭素、塩素、またはヨウ素を示し、Rfは、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロオキシアルキレン基、またはペルフルオロポリエーテル基である。)に対応するオレフィン、および(iii)それらの混合物、から選択される1つ以上の変性剤と、
(c)任意に非ガス状のフッ素化モノマーおよび非フッ素化モノマーから選択される1つ以上のコモノマーと、を重合するステップであって、前記1つ以上の変性剤が、前記第2のフルオロポリマーを得るために前記重合に与えたモノマーの総重量に基づいて0.4重量%までの量で使用されるステップと、
連鎖移動剤を添加するステップと、
前記1つ以上の変性剤の不在下で任意の1つ以上のコモノマーと前記1つ以上のガス状フッ素化モノマーとをさらに重合して前記第1のフルオロポリマーを得るステップと、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のフルオロポリマーおよび前記第1のフルオロポリマーが、完全フッ素化され、重合後、さらに重合され、得られた第1および第2のフルオロポリマーがフッ素化される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
0.93から1.0の緩和指数を有する第1のフルオロポリマーと0.3から0.92の緩和指数を有する第2のフルオロポリマーとをブレンドするステップを備える、溶融加工可能で、熱可塑性があり、100℃から320℃の融点を有する組成物を作製する方法。
【請求項25】
前記第2のフルオロポリマーが、
(a)1つ以上のガス状のフッ素化モノマーと、
(b)(i)オレフィンの二重結合の炭素に結合した臭素またはヨウ素原子を有する前記オレフィン、(ii)下記式(I):
a2C=CXa−Rf−Br (I)
(式中、各Xaはそれぞれ独立して、水素、フッ素、臭素、塩素、またはヨウ素を示し、Rfは、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロオキシアルキレン基、またはペルフルオロポリエーテル基である。)に対応するオレフィン、および(iii)それらの混合物、から選択される1つ以上の変性剤と、
(c)非ガス状のフッ素化モノマーおよび非フッ素化モノマーから選択される任意の1つ以上のコモノマーと、から誘導される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が均一なブレンドである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載の組成物を含む物品を処理するステップを含む、方法。
【請求項28】
前記処理するステップが、チューブ押出成形およびブロー成形から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記物品が、ワイヤまたはケーブル状である、請求項27に記載の方法。

【公開番号】特開2012−197452(P2012−197452A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131964(P2012−131964)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2008−557267(P2008−557267)の分割
【原出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】