説明

溶融塩型燃料電池

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は例えば炭酸塩を用いる溶融塩型燃料電池の短絡防止に関するものである。
〔従来の技術〕
従来のこの種の燃料電池の構成を示すと、第7図のとおりである。
例えば、アルカリ金属炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩型燃料電池は、一般に電解質と電解質に保持する物質とからなる電解質層(1)と、この電解質層(1)を挟み込むように設けられている燃料極(2)及び空気極(3)が接触して配置されており、更に、集電作用及びこれらの電池部材を物理的に支持して反応ガスを流す目的を持つ燃料極(2)側の集電板(4)、燃料極側ガス流路板(5)、及びセパレーター(6a)の燃料極(2)に対向する面よりなる燃料極側ガス室(7)と、空気極(3)側の集電板(8)、空気極側ガス流路板(9)、及びセパレーター(6b)の空気極(2)に対向する面よりなる空気極側ガス室(10)より構成されている。
次に、動作について説明する。空気極(3)において空気極に供給されるガス中の二酸化炭素と酸素と電子が反応し炭酸イオンができる(反応1)。
2CO2+O2+4e-=2CO32-(反応1)
理想的には空気極(3)は電子を供給できる電子の伝導体で、電極自体は電解質に溶解したりせず安定であることが望ましい。しかし一般に溶融炭酸塩型燃料電池の空気極(3)の材料として用いられているリチウムイオンを含む酸化ニッケルは一般に用いられている電解質(62mol%の炭酸リチウムと32mol%の炭酸カリウムとの混合物)中へ電解質層(1)の厚みに関わりなく、空気極(3)側の供給ガス中の二酸化炭素の濃度が30%の場合、電池の有効面積1cm2あたり4〜5μgのニッケルイオンを溶出してゆく(Estela T.Ong,et al.1986 Fuel Cell Semin Abstracts,222頁、1986年10月)。電解質中に溶出したニッケルイオンは電解質層(1)中で還元されてニッケル金属として析出する。運転時間の増加に従って電解質層中に析出したニッケルも増加し、数千時間以内に電池の短絡現象が生じ、運転を続けるのが困難になる。第6図中に従来の電池の寿命曲線を破線で示す。この現象に対処するため電解質にカリウムイオンやストロンチウムイオンを混入したり(特開昭60−56375号公報)、空気極側(3)ガス中の炭酸ガス濃度を下げた運転法が提案されている(Estela T.Ong,et al.1986 Fuel Cell Seminar Abstracts,220頁、1986年10月)が、目標としてよくいわれる40000時間の電池寿命を達成するには至っていない。ニッケル析出による短絡の効果を弱めるために電解質層(1)の厚みを厚くしても良いが、電解質による電池の内部抵抗が増大し特性が悪くなるとともに、電解質層(1)の材料の使用量の増加による生産コストが増大するという欠点があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記のように構成された従来の装置は以上のように構成されているので、長時間の運転中にニッケルの電解質層(1)内での析出による電池の短絡が生じ、第6図の従来例に示すように特性が劣化し、それ以上の運転の継続ができなくなるという問題点があった。
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、電解質層の厚みを厚くすることなく、長期にわたり短絡を生じない溶融塩型燃料電池を得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明に係る溶融塩型燃料電池は、溶融塩型燃料電池において、空気極より溶出するニッケルイオンを吸着し得るニッケルイオン吸着物質を、上記空気極内に上記空気極を構成する材料に対して実質的に不活性な材料を介して担持するように構成したものである。
〔作用〕
本発明におけるニッケルイオン吸着物質は、空気極中において空気極を構成する材料粒子より溶出したニッケルイオンを吸着すなわち固溶あるいは化合して、ニッケルを含む固溶体あるいは化合物をつくり、ニッケルイオンが電解質層に移動するのを防止し、燃料極と空気極との短絡を防止する。また空気極を構成する材料粒子とニッケルイオン吸着物質との間に介装された空気極を構成する材料に対して実質的に不活性な材料は、空気極を構成する材料粒子とニッケルイオン吸着物質とが直接固体反応によって反応するのを防止している。
〔実施例〕
先ず、参考例を用いて説明する。
参考例1 第1図において、(1)は電解質層であり、電解質保持層(11)(11)と、この電解質保持層(11)(11)の間に介装されたニッケルイオン吸着層(12)からなっている。前記ニッケルイオン吸着層(12)は第2図に示すように、空気極より溶出したニッケルイオンと化合して電解質中での溶解度が小さく、電気伝導度も小さいニッケル化合物をつくるニッケルイオン吸着物質としてのリチウムフェライト粉末(13)と、電解質保持材料としてのアルミン酸リチウム粉末(14)と、電解質(15)とが混在するように構成されている。なお、電解質(15)は、62mol%の炭酸リチウムと38mol%の炭酸カリウムとの混合物からなっている。その他の符号は従来装置と同様であるから説明を省略する。
この参考例において、ニッケルイオン吸着層(12)の厚さは約300μmである。また、アルミン酸リチウム粉末(14)と、リチウムフェライトの粉末からなるニッケルイオン吸着物質(13)と、電解質(15)の体積比は1:1:2である。電解質層(1)全体の厚みは約700μmであり、ニッケルイオン吸着層(12)をサンドイッチ状に挟む電解質保持層(11)は空気極側が150μm、燃料極側が250μmである。
上記ニッケルイオン吸着物質としてのリチウムフェライトの量は特に限定されるものではないが、アルミン酸リチウムに対する体積の割合で、5:95〜95:5の範囲内とすることは望ましい。前記割合が5:95以下でもニッケルイオンの吸着効果をもつが、短絡に至るまでの電池の寿命が期待するほど伸びなくなる。また、95:5以上とすると電解質層中で安定に電解質を保持し続けることが困難となる。
次に動作について説明する。空気極(3)は供給されるガス中の二酸化炭素と酸素に電子を供給するとともに反応の場を提供し炭酸イオンをつくる(反応1)。
リチウムイオンを含む酸化ニッケル空気極(3)は、一般に空気極側供給ガスの炭酸ガスを7%まで下げた条件下で62mol%の炭酸リチウムと38mol%の炭酸カリウムを加えたものを用いると、電池の有効面積1cm2当たり、1時間当たり約O.8μgのニッケルイオンを溶出する。
アルミン酸リチウム粉末とリチウムフェライトの粉末が電解質と混在するニッケルイオン吸着層(12)中の電解質中に溶出したニッケルイオンが拡散によって移動し、ニッケルイオン吸着層(12)中のリチウムフェライトと反応してリチウムを含むニッケルフェライトを生成する。
なお、本明細書においては吸着という用語をこのような化合の他、固溶あるいは吸収などを包含する広い意味で用いている。
ニッケルイオン吸収層(12)で生成したリチウムを含むニッケルフェライトは電解質中で安定な化合物であるためニッケルイオン吸収層(12)中の電解質中にそのまま存在することになる。またニッケルフェライトを保持するニッケルイオン吸着層(12)外でのニッケルの析出がなくなるため電池の短絡現象は現れない。第6図に参考例の電池出力の寿命曲線を実線で示す。
この参考例においてニッケルイオン吸着層(12)に担持させたリチウムフェライトの量は40000時間のうちに空気極(3)より溶出するニッケルイオンを反応吸収するのに十分な量であるが、電池の設計寿命の違いによってニッケルイオン吸着層(12)のリチウムフェライトの量、厚みを変化させてもニッケルイオンの電解質層(1)内での析出による電池の短絡防止に効果のあることは明らかである。
また上記参考例では、ニッケルイオン吸着層(12)を2つの電解質保持層(11)(11)の聞に介在させる場合を示したが、例えば第3図に示すようにニッケルイオン吸着層(12)を電解質層(1)と空気極層(3)の間に設けても電池の短絡防止の効果をもつことは明らかである。
また参考例1ではニッケルイオン吸着物質(13)としてリチウムフェライトを用いたが、これに限定されるものではなく、ニッケルと反応して電池の中で実質上リチウムを含むニッケルフェライトをつくる物質、例えばマグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどを用いても参考例1と同様な効果を期待できる。また、実質上鉄フェライトに準じたニッケル吸収能力をもつ金属イオンが鉄酸化物に固溶したスピネル型酸化物あるいは鉄フェライトなどをニッケルイオン吸着物質として用いても参考例1と同様な効果を奏する。
また上記異参考例1ではニッケルイオン吸着物質(リチウムフェライト)を層状にして電解質層中に設ける場合を示したが、ニッケルイオン吸着物質であるリチウムフェライト及び、ニッケルとリチウムフェライトが反応して生成するリチウムを含むニッケルフェライトは金属ニッケルよりも電子抵抗が105倍以上も大きいため(G.H.Kucera、et al,1986 Fuel Cell Seinar Abstracts,161頁、1985年5月)、電解質層中の体積比で40%以下、望むらくは10%以下のニッケルイオン吸着物質を電解質層全体に混入してもよい。電解質層中のニッケルイオン吸着物質の体積が電解質層の体積の40%を越えると長時間の運転中に電解質層のポア構造が変化し電解質が流出する問題が生じるので好ましくない。
もちろん参考例1に示すように空気極層とニッケルイオン吸着層の間に通常の電解質保持層(11)の構成の隔離層を設けた場合には、ニッケルイオン吸着層内の電子伝導性が電池の短絡の原因とならなくなるため、ニッケルイオン中のニッケル吸着物質(リチウムフェライト)の量は少量でもニッケルイオンの吸着効果をもつが、電解質層中で安定に電解質を保持し続けるためにはリチウムフェライトのアルミン酸リチウムに対する体積の割合を95:5まで上昇させることができる。
実施例1. 上記参考例1ではニッケルイオン吸着物質を電解質層中に設ける場合を示したが、空気極の内部に担持させることもできる。
第4図はこの発明に係る一実施例の空気極内を拡大して示す断面図である。第4図において、(13)はリチウムフェライト(LiFeO2)粒子からなるニッケルイオン吸着物質、(16)は空気極を構成する酸化ニッケル粒子、(14)はこの酸化ニッケル粒子(16)の表面を覆うように設けられたアルミン酸リチウム粒子からなる空気極を構成する材料に対して実質的に不活性な材料(以下、単に不活性材料という)である。
上記不活性材料(14)は酸化ニッケル粒子(16)の全表面を1μmの層で覆うに必要な量以上用いることが望ましい。この量よりも少ないと酸化ニッケル粒子(16)とニッケルイオン吸着物質(13)とが直接接触してしまう部分が大きくなり、好ましくない。ニッケルイオン吸着物質(13)は空気極のポロシティが40%以上になるように酸化ニッケル粒子(16)から離して担持することが望ましい。なお、ポロシティが40%以下ではセル特性が悪くなるので好ましくない。
次に、上記空気極の製造例を示す。カルボニルニッケル粉末(インコネル社Ni255)と適量の有機物と水とからなるスラリーを、プラスチックフィルム上にテープキャスティングし乾燥後、水素中900℃において、10分間焼成後、多孔体のニッケル焼結体を得る。この焼結体をアルミン酸カリウム水溶液に30分間浸漬し空気中100℃において乾燥する。つぎに水酸化リチウム水溶液に30分間浸漬した後空気中100℃で乾燥する。アルミン酸カリウム水溶液と水酸化リチウムの水溶液に交互に浸漬乾燥する工程を含浸終了時の電極板の重量が含浸作業前のニッケル多孔体の重量の102%以上105%以下の重量になるまで繰り返す。
この工程ではリチウムダイアルミネート(Li2Al4O7)が生成するが電池内で電解質に含まれるリチウムイオンを吸収してアルミン酸リチウムに変化する。このアルミン酸リチウムの体積が電池内において酸化により生じたニッケル多孔体の体積の1%以下ではニッケル吸収物質と空気極との隔離が十分でなく、電池運転の初期にニッケル吸着物質に電極からニッケルが拡散してしまい十分なニッケルイオン捕捉効果が得られない。またアルミン酸リチウムの体積が電池の運転中におけるニッケルを含む空気極多孔体を構成するニッケルを含む空気極材料の体積の30%以上を占めると空気極の表面での反応ガスの拡散が悪くなり良好な電池特性を維持できなくなる。
その後過剰な水分を飛散させるため300℃空気中において1時間乾燥する。次に適当な濃度の酸化鉄懸濁液への浸漬とそれに続く空気中での乾燥を繰り返し電極板の重量が含浸作業前のニッケル多孔体の重量の110%以上120%以下の重量になるまで繰り返す。その後過剰な水分を飛散させるため300℃空気中において1時間乾燥する。この電極を従来の空気電極と同様にして電池に組み込む。
この工程では電極の表面に水和した酸化鉄(Fe2O3)が生成するが、電池運転時には電解質中の炭酸リチウムと反応してリチウムフェライト(LiFeO2)が生成する。このリチウムフェライト重量が少量であっても重量に応じたニッケルイオン吸着の効果を期待できるが、このリチウムフェライトの体積とアルミン酸リチウムの体積の合計が、電池の運転中における空気極多孔体を構成する材料の体積の30%以上を占めると空気極の表面での反応ガスの拡散が悪くなり良好な電池特性を維持できなくなる。
なお、特開平2−18873号公報に電解質補給材料として空気極内にリチウムフェライトを担持させる発明が開示されているが、同公報に記載されているものでは空気極材料に不活性な物質を介していないので、リチウムフェライトにニッケルを含む空気極から直接固体反応によって移動するニッケルイオンが多く、本発明の効果は期待できない。
参考例2. ニッケルイオン吸着物質として酸化マグネシウム粉末または炭酸マグネシウム粉末を用いた他は上記参考例1と同様にして電解質層の中にニッケルイオン吸着層を設けた溶融炭酸塩型燃料電池をつくった。
電解質中でニッケルが酸化マグネシウム中に固溶しかつ抵抗もリチウムフェライトよりも大きいため、上記参考例1の場合と同様に電池の短絡を阻止することが確認された。
なおこの場合、酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウムは電池中で一部短酸塩中に溶解するため、溶解分に対応する電解質の5mol%程度の炭酸マグネシウムを予め電解質または電極中に担持させておいてもよい。この場合、実質上電解質層中で炭酸カルシウム、または酸化マグネシウムを生成できるようなマグネシウム化合物(例えばMgCO3・3H2O、3MgCO3・Mg(OH)・3H2O、Mg(OH))などを炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの代わりに用いてもよい。また以上のマグネシウムを含む材料を電解質層に予め担持しておき空気中で400℃以上で酸化処理することによって電解質層内に酸化マグネシウムを担持させることができる。
実施例2. 上記参考例2ではニッケルイオン吸着物質としての酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムを電解質層(1)中に設ける場合を示したが、実施例1の場合と同様に電極中に空気極材料粒子と電解質、ニッケルを含む空気極材料に対して不活性な材料(本実施例ではアルミン酸リチウム)を介し実質上リチウムを含む酸化ニッケル空気極から隔置して担持してもニッケル溶出による電池の短絡を防ぐことが確認された。
電極内における空気極材料とアルミン酸リチウムとニッケルイオン吸着物質の量は実施例1の場合と同様に、ニッケルイオン吸着物質の重量が少量であっても重量に応じたニッケルイオン吸着の効果を期待できるが、酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムの体積とアルミン酸リチウムの体積の合計が、電池の運転中における空気極多孔体を構成する材料の体積の30%以上を占めると空気極の表面での反応ガスの拡散が悪くなり良好な電池特性を維持できなくなるため、これ以下が望ましい。
A.P igeaud,et al、「1988 Fuel Cell Seminar Abstracts」193頁(1988年10月)に電解質補給材料として空気極内に酸化マグネシウム(MgO)を担持させた例が示されているが、この発明における電解質及び空気極材料に不活性な物質を介して担持されてはいないので、酸化マグネシウムにニッケルを含む空気極から直接固相反応によってニッケルイオンが移動するためニッケルイオン吸着物質としての効果は期待できない。
なお上述した例3,4ではニッケルイオン吸着物質として酸化マグネシウムまたは炭酸マグネシウムを用いたが、酸化マグネシウムと鉄の固溶体を用いても同様な効果を奏する。
参考例3 第5図にニッケルイオン吸着層(12)を通常の電解質保持層(11)と交互に積み重ねた構造を持つ溶融炭酸塩型燃料電池の断面構成図を示す。このような構成をとればニッケルイオン吸着物質を多く担持する際に生じる恐れのあるニッケル吸着物質による電子的な伝導を複数の電解質保持層(11)が阻止する効果がある。電子伝導をより強く防ぐためには、空気極(3)に接する部分は電解質保持層(11)で構成することが好ましく、その厚さは電解質層(1)と空気極(3)の界面で生じることのあるニッケルを含む酸化物層の厚み約50μmより厚ければより効果的である。
以上の例にのべたニッケルイオン吸着物質の他に、例えば酸化亜鉛、亜鉛と鉄の固溶体、リチウムと亜鉛と鉄の複合酸化物、カルシウムとシリコンとリチウムの複合酸化物、カルシウムとシリコンの複合酸化物、酸化チタン、リチウムとチタンの複合酸化物、亜鉛とチタンとリチウムの複合酸化物、並びにこれらの材料が電池内で生じるような物質の組み合わせ(複合酸化物に含まれる、金属イオンを含む酸化物、炭酸塩、炭化物、窒化物、水酸化物、塩化物、硝酸化合物等の組み合わせ)の材料をニッケル吸着物質として用いても上記例と同様な効果を奏する。
Ni2+と等電荷でかつ、イオン半径の近い金属イオンを含むものが良いと考えられる。
以上の例では、ニッケルイオン吸着物質をニッケルを含む空気極材料粒子と電解質及び空気極材料に対して事実上不活性な材料を介し実質上ニッケルを含む空気極から離して空気極内または電解質層内または空気極と電解質層の間に担持した場合を説明した。電解質層内、空気極内、空気極と電解質層の間のいずれかを少なくとも1つの部材内にニッケルイオン吸着物質を担持させればよく、複数の部材内にニッケルイオン吸着物質を担持させればより十分なニッケルイオン吸着物質を担持することができ、上記例以上のニッケルイオン吸着効果が得られることは明らかである。
また何れの例の場合も、薄い電解質層の電池を運転できるため電池の内部抵抗が小さく高性能が得られ、かつ電解質層の原料が節減でき、安価にできるという利点もある。
なお、上記例はこの発明の理解を容易にするために示した一例に過ぎず、上記の他この発明の範囲内で種々の変形や変更が可能であることは勿論である。
〔発明の効果〕
以上のようにこの発明によれば、ニッケルイオン吸着物質が空気極から溶出するニッケルイオンを化合、固溶、吸収等により吸着し、電解質層での短絡を防止するので、長時間にわたり安定した発電を行うことができる溶融塩型燃料電池が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一参考例(参考例1)による溶融炭酸塩型燃料電池の要部を示す断面側面図、第2図は第1図における電解質保持層の詳細を示す拡大断面図、第3図は参考例1の変形例になる参考例の要部を示す断面図、第4図はこの発明の一実施例(実施例1)による燃料電池の要部を示す拡大断面図、第5図はさらに他の参考例(参考例3)の断面拡大図である。第6図は従来例と参考例1,実施例1の発電寿命曲線を比較して示す特性図、第7図は従来装置の要部を示す断面側面図である。
図において、(1)は電解質層、(2)は燃料極、(3)は空気極、(11)は電解質保持層、(12)はニッケルイオン吸着層、(13)はニッケルイオン吸着物質、(14)は空気極材料に不活性な材料、(15)は電解質である。
なお、図中、同一符号は同一、または相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ニッケルを含む材料を用いた空気極と、燃料極と、これら両極の間に配置された電解質層とを備えた溶融塩型燃料電池において、上記空気極より溶出するニッケルイオンを吸着し得るニッケルイオン吸着物質を、上記空気極内に上記空気極を構成する材料に対して実質的に不活性な材料を介して担持したことを特徴とする溶融塩型燃料電池。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【特許番号】第2813431号
【登録日】平成10年(1998)8月7日
【発行日】平成10年(1998)10月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−165679
【出願日】平成2年(1990)6月26日
【公開番号】特開平4−58461
【公開日】平成4年(1992)2月25日
【審査請求日】平成7年(1995)7月20日
【出願人】(999999999)三菱電機株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭62−2458(JP,A)
【文献】特開 平1−209667(JP,A)