説明

溶融樹脂塊の成形用部材

溶融樹脂塊を用いた圧縮成形による長時間の連続生産において、前記溶融樹脂塊を取り扱う圧縮成形用部材の表面に樹脂成分が付着して粘着性が増大することなく、長時間にわたって安定した連続生産、高能率生産が可能となる溶融樹脂塊の圧縮成形用部材を提供する。金属基材10表面を粗面とし、該金属基材表面にフッ素樹脂被覆層20を形成する共に該フッ素樹脂被覆層20を粗面とし、溶融樹脂塊と前記フッ素樹脂被覆層表面との静摩擦係数を1.7以下として溶融樹脂塊の圧縮成形用部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、溶融状態のポリエステル樹脂、オレフィン樹脂等の合成樹脂を取り扱うための部材に関し、より詳しくは、押出機から押し出され所定の大きさに切断したポリエステル樹脂、オレフィン樹脂等の溶融樹脂塊を、圧縮成形金型に供給して前成形体(プリフォーム)に成形する際の保持部材、金型への案内部材(スロート)、或いは前記溶融樹脂塊を用いたプリフォームの圧縮成形金型等の圧縮成形用部材に関するものである。
【背景技術】
従来より、飲料容器などに、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂から形成された合成樹脂製容器が広く用いられている。このような合成樹脂製容器の製造装置として、特開2000−280248号公報に示すように、まず、押出機の押出しノズルから押し出された溶融状態の合成樹脂を所定の大きさに切断した後、挟持部材30、32を備えた保持機構22により保持した後、逆円錐台形状で内面に凹凸量0.2乃至100μm、ピッチ0.2乃至800μmの梨子地としたスロート56内に落下せしめて雌型48内に供給し、雄型54を雌型48内に挿入することによって、溶融樹脂塊を、圧縮成形して有底筒状のプリフォームを形成し、次いで、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって合成樹脂製容器を製造することが提案されている。
このようなプリフォームを成形するために用いられる圧縮成形部材(例えば、挟持部材30、32を備えた保持機構22、スロート56、雌型48など)においては、溶融樹脂塊のスロート56への受け渡し時の保持機構22の滑り性、溶融樹脂塊の雌型48への供給時のスロート56の滑り性、圧縮成形後のプリフォームの雌型48からの離型性が要求される。
そして、前述した滑り性、離型性は、このプリフォームを用いた最終製品である二軸延伸ブロー成形後の合成樹脂製容器の表面傷、しわ、モヤ(くすみ)或いは表面光沢性と透明性に影響する。
また、このような圧縮成形において、特開2000−62008号公報に示すように、製造工程における種々の変動に起因するプリフォームの側壁部のしわ等の外観不良、二軸延伸ブロー加熱時の非対称変形等の発生による二軸延伸ブロー成形容器の外観、形状寸法不良を防止する手段として、プリフォームの表面の少なくとも一部を梨子地にし、そのプリフォームの二軸延伸ブロー成形部の梨子地の凹凸量hを0.2乃至50μmとしピッチを0.2乃至800μmとすることが提案されている。
さらに、ポリエステル樹脂を用いた二軸延伸ブロー成形の金型内面において、ポリエステル樹脂、オリゴマー或いは添加剤の付着を防止するために、特開2002−18858号公報に示すように、金型内面の成形面の金属基材1に金属或いはその化合物から成る硬質層2と、硬質層2上に汚染防止層3を設け、汚染防止層3の平均表面粗さ(Ra)をRa≦0.1μm(JIS B 0601−1994)とし、汚染防止層3の厚みを0.3乃至10μmのフッ素樹脂とすることが提案されている。
【発明の開示】
しかしながら、前記特開2000−280248号公報及び特開2000−62008号公報に開示された梨子地のみによる処理は、ある程度の時間では樹脂成分の付着防止には有効であるが、長時間にわたる連続生産時においては、樹脂成分が保持機構22、スロート56或いは雌型48等の圧縮成形部材の梨子地部分に付着堆積して粘着性が増大し、保持機構22、スロート56では溶融樹脂塊がスムーズに次工程へ供給できず、また、雌型48では圧縮成形されたプリフォームの雌型48からの離型性が低下してしまう。
そして、一旦、梨子地部分に堆積した樹脂成分は除去しづらいことから、頻繁に圧縮成形部材の清掃を行わなければならない。
また、前記特開2002−18858号公報はポリエステル樹脂から成るプリフォームを用いた二軸延伸ブロー成形用金型において、前記金型を金属基材1、硬質層2及びフッ素樹脂から成る平均表面粗さRa≦0.1μm、0.3乃至10μmの厚みの汚染防止層3を形成したものであり、前記二軸延伸ブロー成形時のプリフォーム温度はガラス転移点(Tg)乃至120℃で行われ、本発明のように前記特開2002−18858号公報よりも高温の条件下、例えば270乃至290℃の溶融樹脂塊を用いる圧縮成形用部材とは全く相違し、特開2002−18858号公報の構成では不十分である。
即ち、特開2002−18858号公報の構成では、所定の大きさに切断された高温の溶融樹脂塊を保持した後、スロートによる雌型(圧縮成形金型)への落下、供給、圧縮成形後の有底筒状のプリフォームの雌型からの離型性を確実に改善することはできない。
本発明の課題は前記問題点を解決するものであり、樹脂成分の付着を長時間防止し、溶融樹脂塊から成る樹脂素材を用いた圧縮成形による樹脂成形を、長時間にわたって安定的に行うことを目的とする。
本発明によれば、金属基材表面を粗面とし、該金属基材表面にフッ素樹脂被覆層を形成する共に該フッ素樹脂被覆層を粗面とし、溶融樹脂塊と前記フッ素樹脂被覆層表面との静摩擦係数を1.7以下としたことを特徴とする溶融樹脂塊の圧縮成形用部材が提供される。
本発明においては、
(1)前記金属基材表面の粗面が、平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)が0.1乃至3μm、10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)が0.5乃至16μmであること、
(2)前記フッ素樹脂被覆層の厚みを、平均膜厚0.01乃至0.3μm未満とすること、
(3)前記金属基材が、アルミニウム、ステンレス鋼又は鋼からなること、
(4)前記金属基材と前記フッ素樹脂被覆層との間に、金属酸化物層、金属水酸化物層又はシランカップリング層からなる中間層を形成すること、
が好ましい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材の一実施形態を示す断面図であり、第2図は、圧縮成形によるプリフォーム製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材、即ち、押出機から押し出され所定の大きさに切断した溶融樹脂塊を、圧縮成形金型に供給して前成形体(プリフォーム)に成形する際の保持部材、金型への案内部材(スロート)或いは前記溶融樹脂塊を用いたプリフォームの圧縮成形金型等の圧縮成形用部材の断面構造を図1に示す。
本発明の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材1は、金属基材10を前記した圧縮成形用部材に切削加工した後に表面を粗面化し、この粗面化した金属基材10の表面にフッ素樹脂被覆層20を形成すると共に前記フッ素樹脂被覆層20の表面を粗面化して成る。
そして、フッ素樹脂被覆層20の表面は、溶融樹脂との間で静摩擦係数を1.7以下とし、切断後の溶融樹脂塊の保持部材による保持後の開放時、或いは案内部材による圧縮成形金型への供給時の滑り性、圧縮成形金型によるプリフォーム成形後の金型からの離型性を向上させている。
この静摩擦係数は、前記した溶融樹脂塊の樹脂材料、温度、フッ素樹脂層の有無とその表面粗さに依存し、前記樹脂材料を考慮してフッ素樹脂被覆層を形成後、適宜公知の粗面化処理によって静摩擦係数を1.7以下にすれば良く、前記静摩擦係数が1.7を超えると滑り性、離型性が低下し、前記した溶融樹脂塊の圧縮成形用部材として使用することはできない。
尚、前記静摩擦係数は、金属基材表面にフッ素樹脂被覆層を設け、この上に溶融樹脂塊を落とし、当該フッ素樹脂被覆層を設けた平板を傾け、溶融樹脂塊が滑り始めた角度(θ)から、μ=tanθで定義される。
ここで、μは静摩擦係数、θは滑り始めた角度である。
また、金属基材10のフッ素樹脂被覆層20を形成する表面性状は、平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)が0.1乃至3μm、10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)が0.5乃至16μmであることが好ましい。
前記平均表面粗さ(Ra)が0.1μm未満、10点平均粗さ(Rz)が0.5μm未満であると、圧縮成形用部材1と溶融樹脂塊との滑り性、或いは離型性が劣り、溶融樹脂塊をスムーズに次工程に供給、或いは圧縮成形金型から離型できなくなる。
一方、前記平均表面粗さ(Ra)が3μmを超え、且つ、10点平均粗さ(Rz)が16μmを超えると、溶融樹脂塊が圧縮成形用部材1のフッ素樹脂被覆層20の表面の凹部に食い込み、離型性と滑り性が劣るようになり、また圧縮成形によりプリフォームを成形後、二軸延伸ブロー成形により製造した合成樹脂製容器の外面が曇るという問題を生じる傾向があり、前記範囲が好ましい。
また、前記金属基材10の表面性状は、即ち表面粗さはその表面に形成されるフッ素樹脂被覆層20の表面粗さに反映され、その結果前記したフッ素樹脂被覆層20の静摩擦係数に影響する。
フッ素樹脂被覆層20は、金属基材10表面に、平均厚み0.01乃至0.3μm未満の厚みで形成される。
前記フッ素樹脂被覆層20は、ポリエステル樹脂等の溶融樹脂塊の樹脂成分の付着を抑制して滑り性を改善するために形成されるが、その層の厚さは前記範囲とすることが好ましく、0.01μm未満では金属基材への被覆の均一性も損なわれて被覆欠陥を生じやすい。
一方、0.3μmを超えると金属基材10に形成した粗面状態の凹凸を埋めてしまい、フッ素樹脂被覆層20の表面に前記粗面状態が反映されないと共に熱伝導率が悪くなり、通常、高温の溶融樹脂塊を取り扱う圧縮成形における圧縮成形用部材は基材側から冷却が行われるが、その冷却効果も低減するため、長時間にわたる連続生産においては、樹脂成分が前記圧縮成形用部材に付着して粘着性が増大し、長時間にわたる安定した連続生産の阻害要因となる。
また、このようにフッ素樹脂被覆層20を薄膜とすることにより、金属基材10の表面性状がフッ素樹脂被覆層20の表面に反映される。
フッ素樹脂被覆部材1の金属基材10としては、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の使用が好ましい。
また、金属基材10とフッ素樹脂被覆層20の間の密着性を向上させるため、金属基材10とフッ素樹脂被覆層20の間に、金属酸化物層や金属水酸化物、あるいはシランカップリング剤からなる中間層を形成することが好ましい。
金属酸化物層の形成方法としては、クロメート処理、リン酸塩処理、シュウ酸塩処理、酸化鉄処理、ジルコニウム塩処理等が挙げられる。
リン酸塩処理は、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸マンガン等の被膜が挙げられる。
金属基材10をアルミニウム合金とする場合は、炭酸ソーダやクロム酸ソーダを主体とする酸化物被膜形成処理、クロム酸やリン酸を主体とする処理法など多数の処理法が挙げられ、金属基材10をステンレス鋼とする場合は、シュウ酸塩被膜化成法が挙げられる。
また、金属水酸化物層としては、水酸化クロム処理等が挙げられ、シランカップリング層としては、各種のシランカップリング剤を用いる方法等が挙げられる。
そして、これらの中間層の厚みは、0.005μm乃至0.1μmの範囲にあることが好ましく、前記厚みが0.005μm未満であるとフッ素樹脂被覆層の密着性向上に寄与せず、一方、0.1μmを超えると前記中間層自体が強い被膜ではないため脆くなり、同様にフッ素樹脂被覆層が剥離するおそれがあるため、前記範囲にすることが好ましい。
これらの中間層の形成方法は、金属基材10表面へのスプレーコート、ディップ、電解処理等が挙げられる。
フッ素樹脂被覆層20に用いられるフッ素樹脂としては、それ自体公知の任意のフッ素系樹脂が使用されるが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、とこれらのエポキシ樹脂変性体、アクリル樹脂変性体、ブロックアクリル樹脂変性体、或いは非晶質で溶剤タイプのテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)共重合体などの単独あるいは複数の組み合わせで用いることができる。
これらのフッ素系樹脂は、非晶質の溶剤タイプ、或いはテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の微粒子分散タイプであり、これらの中でも前記した非晶質の溶剤タイプのテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)共重合体が、溶融樹脂塊の樹脂成分の圧縮成形用部材への付着防止、及び被覆層の均一性を得易い点で好ましく、浸漬法或いはスプレー法等によって塗布する。
前記塗料の焼き付けは、塗料形態、樹脂の種類、溶剤の種類などで異なるが、一般には乾燥に100℃乃至150℃、10分間乃至60分間の加熱を行い、次の焼き付けに、フッ素系樹脂の融点(Tm)あるいはガラス転移点(Tg)+10℃乃至分解開始温度(Tc)−10℃の範囲で、10乃至60分間の加熱を行うことが好ましく、加熱方法は電気炉加熱、フレーム加熱、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等を用いることができる。
前記した圧縮成形用部材の好適な適用例としては、前述した図2に示す圧縮成形によるプリフォーム製造装置が挙げられ、押出機の押出しノズルから押し出された溶融状態の合成樹脂を所定の大きさに切断した溶融樹脂塊を保持する挟持部材30、32を備えた保持機構22、案内開口64を有するスロート56或いは雌型48の内面の少なくとも一つに適用される。
尚、本発明の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材は、前述したポリエステル樹脂製の溶融樹脂塊の圧縮成形及びその圧縮部材に有効であるがそれには限定されず、ポリオレフィン、ナイロン等の溶融樹脂塊を取り扱う他の成形分野においても適用可能であり、その用途、適用範囲は限定されない。
【実施例】
[フッ素樹脂被覆金型(雌型)の評価]
ポリエステル樹脂製溶融樹脂塊を、ボトル用プリフォームに圧縮成形する金型(雌型)において、前記金型内への挿入状態(滑り性)、圧縮成形後の金型内面への樹脂成分の付着状態、プリフォームの表面性状、二軸延伸ブロー成形後のボトル外観の光沢性を評価した。
[1]金型内への挿入(滑り性)
圧縮成形開始後12時間経過した時の挿入状態を評価した。
評価方法は、
○:金型(雌型)内へスムーズに挿入する。
×:時々金型(雌型)内への入りが遅れ、完全に入りきらないうちに雄型により咬み込みを生じる。
××:金型(雌型)内への入りが遅く、咬み込みが多い。
[2]プリフォームの圧縮成形後の樹脂成分の付着
圧縮成形開始後12時間経過した時点で金型を成形機から外し、金型内面に付着した樹脂の量を測定した。測定法は、1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2−プロパノールとクロロホルムの1対1混合溶剤中に金型を浸せきして付着した樹脂成分を溶かし出し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC法)で測定した。
測定にあたっては予め成形に供した樹脂を一定重量秤りとり、1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2−プロパノールとクロロホルムの1対1混合溶剤中に溶解させ、これを1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2−プロパノールとクロロホルムの1対1混合溶剤で希釈して一定濃度系列の標準溶液を作成し、これらの標準溶液から求めた検量線により金型内面に付着した樹脂の量を求めた。
[3]プリフォームの表面性状
圧縮成形後2時間から12時間まで2時間毎に200本ずつプリフォームを抜き取り、目視で以下の3段階の評価を行った。
○:圧縮成形後2時間から12時間までの間、しわ、モヤ(くすみ)が認識されない、または多少認識されるが二軸延伸ブロー成形後のボトルの表面性状に影響しない。
×:圧縮成形後2時間から12時間までの間、しわ、モヤ(くすみ)が時々発生し、二軸延伸ブロー成形後のボトルの表面性状に影響する。
××:しわ、モヤ(くすみ)が連続的に発生し、二軸延伸ブロー成形後のボトルの表面性状に影響する。
とした。
[4]ポリエステルボトルの外観光沢性
圧縮成形2時間後に20本ずつプリフォームを抜き取り、二軸延伸ブロー成形し、スガ試験機(株)ヘーズメーターHGM−2Kでボトル胴部のヘイズ値(曇り度)を測定し、以下の3段階の評価を行った。
○:ヘイズ値(平均値)10%未満(光沢性良好)。
△:ヘイズ値(平均値)10から25%未満(光沢性やや劣るが製品として可能)。
×:ヘイズ値(平均値)25%以上(光沢性劣る)。
【実施例1】
[1]ポリエステル樹脂プリフォームを圧縮成形するフッ素樹脂被覆用金型(雌型)の作成
前記金型の金属基材としてステンレス鋼(SUS−HPM38)を切削加工し、全高さ(L):65mm、ブロー成形部の高さ(M):53mm、ブロー成形部の肉厚(T):3.5mm、のプリフォームを成形するためのフッ素樹脂被覆用金型を作成した。
この金型内面の溶融樹脂塊と接触する面に微細ショットを吹きつけて、表1に示す平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)、及び10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)の表面性状のものを得た。
[2]フッ素樹脂被覆層の形成
前記金属基材から成る金型(雌型)の内面をアルカリ脱脂及び酸洗浄後、150℃−10分の乾燥を行い、電解クロメート処理を行って金属酸化物層(中間層)を形成した。
次いで、非晶質フッ素樹脂[AF2400・三井デュポン(株)製]を0.05重量%になるようにフッ素系溶剤[FC77・3M(株)製]に溶解させて調合した溶液中に前記金型を浸漬してフッ素樹脂被覆を行った。
その後、150℃−30分の乾燥を行い、溶剤を揮発させた後、320℃−30分の焼き付けを行って、金型内面に平均膜厚0.01μmのフッ素樹脂被覆を形成した。
「3]プリフォーム成形
押出機から押し出されたポリエステル製溶融樹脂塊を、20℃に冷却された前記フッ素樹脂被覆金型を用いて圧縮成形し、プリフォームを得た。
その後、このプリフォームの口部を結晶化させた後、ガラス転移点温度(Tg)以上の110℃に加熱してブロー金型内で二軸延伸ブロー成形を行い耐熱性ポリエステルボトルを得た。
この時のブロー成形条件は金型温度150℃、プレブロー圧:1乃至1.7MPa、ブロー圧:3.5MPa、ボトルの延伸倍率は縦方向が平均2.7、周方向が平均3.5で行った。
【実施例2】
金型内面の溶融樹脂塊と接触する面の平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)、10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)を表1に示す表面性状とし、非晶質フッ素樹脂の濃度を変えた溶液中に前記金型を浸漬してフッ素樹脂被覆を行い、金型内面に平均膜厚0.2μmのフッ素樹脂被覆を形成した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【実施例3】
金型内面の溶融樹脂塊と接触する面の平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)、及び10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)を表1に示す表面性状とし、非晶質フッ素樹脂の濃度を変えた溶液中に前記金型を浸漬してフッ素樹脂被覆を行い、金型内面に平均膜厚0.2μmのフッ素樹脂被覆を形成した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【実施例4】
金型内面の溶融樹脂塊と接触する面の平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)、及び10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)を表1に示す表面性状とし、非晶質フッ素樹脂の濃度を変えた溶液中に前記金型を浸漬してフッ素樹脂被覆を行い、金属酸化物層(中間層)を形成せずに金型内面に平均膜厚0.25μmのフッ素樹脂被覆を形成した以外は、実施例1と同様の評価を行った。
[比較例1]
金型内面に金属酸化物層及びフッ素樹脂被覆層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の評価を行った。
[比較例2]
非晶質フッ素樹脂の濃度を変えた溶液中に前記金型を浸漬してフッ素樹脂被覆を行い、金型内面に平均膜厚0.3μmのフッ素樹脂被覆を形成した以外は、実施例3と同様に評価を行った。
[比較例3]
非晶質フッ素樹脂の濃度を変えた溶液中に前記金型を浸漬してフッ素樹脂被覆を行い、金型内面に平均膜厚0.4μmのフッ素樹脂被覆を形成した以外は、実施例4と同様に評価を行った。
実施例及び比較例におけるポリエステル樹脂性溶融樹脂塊の金型内への挿入状態(滑り性)、プリフォームの圧縮成形後の樹脂成分の付着状態、プリフォームの表面性状及びポリエステルボトルの外観光沢性の評価結果を表1に示す。

表1に示すように、本発明の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材によれば、溶融樹脂塊を用いた圧縮成形による連続生産を長時間行っても、圧縮成形部材の表面に樹脂成分が付着して粘着性が増大することなく、長時間にわたる安定した連続生産、高能率生産が可能であった。
即ち、実施例は、圧縮成形金型への挿入状態において良好(○)、プリフォームの表面性状において良好(○)、ボトルの表面性状において良好(○)又はやや良好(△)であり優れた評価が得られたが、比較例は、いずれかの項目において不良(××)若しくはやや不良(×)であった。
尚、前記実施例及び比較例とは別に、フッ素樹脂被覆層を形成する金属基材の表面性状である平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)及び10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)の影響を後述する参考例に従って確認したので、その結果も表1に示す。
[参考例1]
金型内面の溶融樹脂塊と接触する面の平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)、10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)を表1に示す表面性状とした以外は、実施例1と同様に評価を行った。
[参考例2]
金型内面の溶融樹脂塊と接触する面の平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)、10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)を表1に示す表面性状とした以外は、実施例4と同様に評価を行った。
【産業上の利用可能性】
本発明の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材によれば、溶融樹脂塊を用いた圧縮成形等の長時間にわたる連続生産において、前記溶融樹脂塊を取り扱う圧縮成形部材表面に樹脂成分が付着して粘着性が増大することなく、長時間にわたって安定した連続生産、高能率生産が可能となる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材表面を粗面とし、該金属基材表面にフッ素樹脂被覆層を形成する共に該フッ素樹脂被覆層を粗面とし、溶融樹脂塊と前記フッ素樹脂被覆層表面との静摩擦係数を1.7以下としたことを特徴とする溶融樹脂塊の圧縮成形用部材。
【請求項2】
前記金属基材表面の粗面が、平均表面粗さ(Ra JIS B 0601−1994)が0.1乃至3μm、10点平均粗さ(Rz JIS B 0601−1994)が0.5乃至16μmである請求項1に記載の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材。
【請求項3】
前記フッ素樹脂被覆層の厚みを、平均膜厚0.01乃至0.3μm未満とした請求項1又は2に記載の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材。
【請求項4】
前記金属基材が、アルミニウム、ステンレス鋼又は鋼からなる請求項1乃至3の何れかに記載の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材。
【請求項5】
前記金属基材と前記フッ素樹脂被覆層との間に、金属酸化物層、金属水酸化物層又はシランカップリング層からなる中間層を形成した請求項1乃至4の何れかに記載の溶融樹脂塊の圧縮成形用部材。

【国際公開番号】WO2004/087397
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504161(P2005−504161)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003660
【国際出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】