説明

溶融物、及び液体の分析のための浸漬ランス

【課題】本発明の目的は、溶融物、及び/又は液体の扱いを単純にして、更に正確な分析を可能にするために、既存の装置を改良することである。
【解決手段】浸漬キャリアを有する、液体、又は溶融物の分析のための本発明による浸漬センサは、試料チャンバの中に配置された溶融物を測定するためのセンサを定め、浸漬キャリアは、中に配置された注入口開口部を有する試料チャンバを有する。液体、又は溶融物は、ガラス、又は金属溶融物を、特に、アルミニウム、又は鉄溶融物を含むことが好ましい。センサは、試料チャンバの中の予め決定された点に向けて配向される。分析は、この点で行われる。分析される液体、又は溶融物はこの点に供給されるので、自由表面がセンサの測定領域に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬キャリアの中に配置された注入口開口部を有する試料チャンバを含む浸漬キャリアを有する、液体、又は溶融物の分析のための浸漬センサに関する。
【背景技術】
【0002】
浸漬センサは、種々の形状で既に既知である。従って、WO03/081287A2号はキャリア管を記載し、キャリア管はアルミニウム溶融物に浸漬される。レンズ系が、キャリア管の内側に配置される。管の上端部に光ファイバがあり、光ファイバは片側の分光写真器、及び他の側のレーザーに光学系を介して接続される。溶融物によって放出される放射は、光ファイバを介して分光写真器の内部に誘導され、アルミニウム溶融物の組成についての分析結果をそこから導くために、そこで放射が分析される。
【0003】
同様に、DE10359447A1号は、浸漬キャリア、検出器、放射を送受信するための放射誘導装置、及び浸漬キャリアの上、又は中に配置された信号インターフェースを有する、溶融金属の分析のための浸漬センサを記載する。ここで、信号インターフェースは、検出器に接続される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、溶融物、及び/又は液体の扱いを単純にして、更に正確な分析を可能にするために、既存の装置を改良することである。
【0005】
この目的は、独立請求項の特徴だけによって解決される。
【0006】
利点の向上は、各従属請求項から行われる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
浸漬キャリアを有する、液体、又は溶融物の分析のための本発明による浸漬センサは、試料チャンバの中に配置された溶融物を測定するためのセンサを定め、浸漬キャリアは、中に配置された注入口開口部を有する試料チャンバを有する。
【0008】
液体、又は溶融物は、ガラス、又は金属溶融物を、特に、アルミニウム、又は鉄溶融物を含むことが好ましい。
【0009】
センサは、試料チャンバの中の予め決定された点に向けて配向される。分析は、この点で行われる。分析される液体、又は溶融物はこの点に供給されるので、自由表面がセンサの測定領域に位置する。
【0010】
分析のために、液体、又は溶融物の励起が起こり得る。ここで、例えば、ビームがビーム発生ユニットによって発生され、試料チャンバの中の予め決定された点に向けて配向される。ビームに対して、レーザー・ビームが使用できるが、代わりに他のビーム型が明らかに考慮される。ビームは粒子、及び/又は放射を定められた測定点で発生し、粒子、及び/又は放射が放出されて収集装置に誘導される。特に、検出器、放射変換器、分光計、X線分光計、又は質量分析計が、収集装置のために使用できる。測定は、例えば、温度測定として、又は化学組成を決定するために、例えば、LIBS(レーザー誘起破壊分光法)によって光学的に実行できる。
【発明の効果】
【0011】
測定点の領域では、それによって測定点の位置を変更することなく、分析に適する気体雰囲気が生成できるので、試料チャンバの中の分析が、特に正確な測定結果をもたらす。
【0012】
試料チャンバの内側の分析を用いて、測定結果を誤らせる溶融物の波、及び動きも防止される。流動液体、又は溶融物の分析は、測定自体による影響、例えば、励起による個々の成分の濃縮、又は減損を減少させ、同じ試料の量が常に使用されるとき、又は溶融物の組成が測定自体によって変化するときよりも正確な分析をもたらす。
【0013】
ここで、分析は、測定、即ち、スケール、特に化学的値、又は物理的値との測定パラメータの量的比較による値の決定であることが理解される。
【0014】
センサの位置の変化は容易に実行できるので、本発明による浸漬センサは、溶融物の中の異なる点での溶融物の分析、及び測定を可能にする。
【0015】
好都合なことに、センサは試料チャンバの内側の所定の測定点に向けて配向され、新たに注入された溶融物、又は液体は測定点で通過誘導される。これは、センサと溶融物表面の間の確定した距離を保証する。これは、特に正確で比較可能な結果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい実施例は、試料チャンバの内部への溶融物の注入口開口部に位置する所定の測定点を定める。新しい溶融物が常に供給され、溶融物の最小の冷却だけが発生するので、溶融物の組成の正確な測定がそれによって可能であることが示されてきた。新しい溶融物が常に供給されるので、正確さが改善され、同時に、分析による溶融物の組成の変化が防止される。
【0017】
好都合なことに、測定点は分析プレートに、又は分析プレート上に配置される。同様に、分析プレートは、センサと溶融物の間の確定した距離を可能にする。また、分析プレートは、溶融物の流速の減少、及び溶融物の表面の増加をもたらし、従って、更に正確な分析が行われ得る。
【0018】
好都合なことに、注入口開口部は注入口管である。分析の卓越周期の間、純粋な溶融物だけが測定点に供給されることを注入口管が保証できることが示されてきた。分析結果を誤らせるスラグ、及び他の析出物が防止される。また、注入口管も、溶融物の注入口流速が減少するように形成できる。従って、注入口流速は、例えば、注入口管を曲げること、又は狭くすることによって制御できる。
【0019】
溶融物は、測定点の下の試料チャンバの中に収集される。
【0020】
好都合なことに、浸漬センサは溶融物レベル検出器を有する。試料チャンバが溶融物で確定したレベルまで満たされるとき、この溶融物レベル検出器は、試料チャンバの中の溶融物のレベルを測定し、センサを溶融物から引き出すことを可能にする。センサ、及びセンサの中に含まれる光学部品に対する損傷が、それによって防止できる。その種の溶融物レベル検出器は、接触プローブ、超音波センサ、光学センサ、又は同様のものを含むことができる。ここで、全ての他の装置を考えることができ、それらはレベルの測定を可能にする。
【0021】
レベル検出器が1つの装置に接続され、確定したレベルでの溶融物からのセンサの自動除去をその装置が可能にすることを明確に考えられる。
【0022】
ここで、もし、溶融物のしぶき、又は蒸気に対して保護窓を用いて光学部品、又は他の敏感な部品が保護されるなら、それは更に好都合である。
【0023】
もし、浸漬キャリアが管として構成されるなら、それは好都合である。個々の部品がそれによって容易に浸漬センサの中に配置でき、輸送の間、保護される。
【0024】
好都合なことに、検出器は、放射を受信し、それを電気信号に変換するための装置を有する。特に、検出器は、可視光線、紫外線放射、赤外線放射、X線放射、及び/又はマイクロ波放射を受信して、電気信号に変換するために設計される。従って、全てのタイプの光学放射、又は他の放射が受信され、溶融物の分析のために使用できる。
【0025】
もし、光学分光計、X線分光計、及び/又は質量分析計が浸漬キャリアの上、又は中に配置されるなら、好都合である。
【0026】
本発明の好都合な構造は、浸漬センサがモジュール設計、2つの部品が好ましい、を有することを定める。この方法では、1つの部分、上部が好都合である、は再利用可能部分であり、分析のための装置を含む。下部は1回限りの使用のために設計され、試料チャンバを含む。分析プロセスの間は、上部の再利用可能部分は、溶融物の上方で完全に残ることができる。
【0027】
浸漬センサを熱から保護するために、もし浸漬センサが水冷式なら、それは好都合である。更に長い分析時間がそれによって可能になり、それが更に正確な分析結果をもたらす。
【0028】
もし浸漬センサが保護キャップを有し、保護キャップは注入口開口部に配置され、浸漬の後の特定期間の後に溶けて無くなるなら、それは好都合である。この方法では、スラグではない清浄な溶融物だけが測定点に達し、正確な測定と分析か可能になることが保証される。
【実施例1】
【0029】
本発明は、好ましい実施例を使用し、図面を参照して以下で更に詳細に説明される。
【0030】
図1は、本発明による浸漬センサ1を断面図で示す。浸漬センサ1は、保護管28によって囲まれる。浸漬センサ1の下端部に、試料チャンバ17が配置される。試料チャンバ17の内側には、溶融物レベル検出器22、試料プレート16、及び注入口開口部14が存在し、この場合、注入口開口部14は注入口管36によって形成される。溶融物10に面する注入口管36の端部は保護キャップ12を備え、保護キャップ12は、浸漬センサ1が溶融物10に浸漬された後に溶けて無くなり、従って、清浄な溶融物10だけが測定点18に達することを保証する。溶融物10の内部に浸漬センサ1を浸漬すると直ぐ、保護キャップ12は溶解し、溶融物10は試料チャンバ17に注入口開口部14を通って入る。溶融物10が試料チャンバ17に入るとき、溶融物10は、確定した測定点18で分析される。図1では、測定点18は試料プレート16上に配置される。ここで、試料プレート16は、試料チャンバ17の内側の任意の所望する位置に配置できる。注入口開口部14を通って試料チャンバ17の内部に入る溶融物10は、試料チャンバ17の床面に収集される。もし必要なら、浸漬センサ1が除去されて、追加の分析のために使用されるときに、これも除去できる。一定の圧力を試料チャンバ17の内部で可能にするために、浸漬センサ1の上部の中に、光学部品34、及びガスを供給するためのガス管37が配置される。
【0031】
図2は、測定点18を有する試料チャンバ17の図を示す。ここで、測定点18は試料プレート16上には配置されず、代わりに、溶融物10の測定は注入口開口部14から試料チャンバ17の内部への入口で行われる。溶融物10は、注入口管36を通して入る。
【0032】
図3は、注入口管36の種々の構造を示す。図3(a)では、溶融物10が弧30を通らなければならないように、注入口管36が形成される。ここで、注入口管36は、試料チャンバ17の中に配置された端部に、研磨された領域を上面に有する。この領域では、溶融物10が特に良好に分析できる。何故ならば、この領域が、一種の試料プレート16を形成するからである。
【0033】
図3(b)は、注入口管36の他の構造を示す。ここで、注入口管36は弧30を有し、弧30は溶融物10が試料チャンバ17の内部に余りに早く流れ込むことを防止する。注入口管36の上部領域は、試料プレート16として形成される。溶融物10は、試料プレート16の端部の上方を流れ、従って、試料チャンバ17に達する。溶融物10の測定は、試料プレート16上、又は試料プレート16の端部を通過する溶融物10のあふれ上の何れかで行うことができる。
【0034】
図3(c)では、溶融物10が如何にして分析できるかに対して、他の可能性が示される。溶融物10は、試料チャンバ17に注入口管36を介して達し、試料プレート16の方に流れる。試料プレート16は越流水路32を有し、越流水路32において、溶融物10の制御された放出が行われる。
【0035】
もし必要なら、試料プレート16は、平坦に、外側を冠状に高く、又は真ん中を冠状に高くできるか、又は複雑な形状、及び例えば、越流水路32の様な特別な特徴を有することができる。ここで、注入口管36、及び試料プレート16は、別々の構成要素にできるか、又は試料チャンバ17へ一体的に組み込むことができる。分析前の溶融物10の汚染を最小化するために、純粋な石英ガラスを注入口管36として使用できる。代わりに、セメント、セラミック、又は類似の材料も、注入口管36、及び試料プレート16として考えることができる。
【0036】
図4は、測定点18を有する試料チャンバ17の他の図を示す。ここで、溶融物10は、試料チャンバ17の内部に注入口管36を介して導入され、注入口管36は浸漬センサ1の側面に配置される。ここで、測定は、溶融物10が注入口管36から出るときに行われる。ここで、溶融物10が試料プレートの方に流れることも考えられる。
【0037】
図5は、溶融物の測定、及び分析のための装置を示す。ここに示される浸漬センサ1は、上部、再利用可能部分20、及び下部を有する。レーザー24、及び分光計26が、浸漬センサ1の内側に配置される。浸漬センサ1はハウジング28を有し、ハウジング28は水で冷却できる。浸漬センサ1の下部の中には、注入口管36を有する注入口開口部14が配置され、浸漬センサ1が溶融物10の中に浸漬されるとき、注入口開口部14を通して、溶融物10が試料チャンバ17に入ってくる。ここで、石英ガラス円板38は、溶融物10の蒸気、又は熱放射からハウジング28を保護するための保護窓39として使用される。
【0038】
図6では、本発明による浸漬センサ1の他の構造が示される。ここで、浸漬センサ1は、試料チャンバ17の中にプレート38を有し、プレート38は、特に、試料プレート16の機能を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による浸漬センサの断面図である。
【図2】測定点を有する試料チャンバの図である。
【図3】測定プレートを示す。
【図4】測定点を有する試料チャンバの他の図である。
【図5】溶融物の測定、及び分析のための装置である。
【図6】測定点を有する試料チャンバの他の図である。
【符号の説明】
【0040】
1 浸漬センサ
10 溶融物
12 保護キャップ
14 注入口開口部
16 試料プレート
17 試料チャンバ
18 測定点
20 保護管
22 溶融物レベル検出器
24 レーザー
26 分光計
28 ハウジング
30 弧
32 越流水路
34 光学部品
35 注入口管
37 ガス管
38 プレート
39 保護窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、又は溶融物の分析のための浸漬センサであって、前記浸漬キャリアの中に配置された注入口開口部を有する試料チャンバを有する浸漬キャリアを含み、前記液体、又は溶融物の測定のための前記センサが、前記試料チャンバの中に配置されることを特徴とする浸漬センサ。
【請求項2】
前記センサが、前記試料チャンバの内側の所定の測定点の方向に向けて配向される、請求項1に記載の浸漬センサ。
【請求項3】
所定の測定点が、前記試料チャンバの内部への溶融物の注入口開口部に位置する、請求項1〜2の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項4】
前記分析が、入って来る溶融物に行われる、請求項1〜3の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項5】
前記測定点が分析プレート上に配置される、請求項1〜4の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項6】
前記注入口開口部が注入口管である、請求項1〜5の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項7】
前記センサが溶融物レベル検出器を有する、請求項1〜6の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項8】
前記浸漬キャリアが管として形成される、請求項1〜7の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項9】
前記センサは、物理的パラメータ、及び/又は化学的パラメータの測定のために形成される、請求項1〜8の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項10】
分光計、X線分光計、及び/又は質量分析計が、前記浸漬キャリア上に、又は中に配置される、請求項1〜9の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項11】
前記センサが、前記液体、又は溶融物の放射を用いた励起のための構成要素を有する、請求項1〜10の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項12】
前記センサがモジュール構造を有する、請求項1〜11の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項13】
前記センサが水で冷却される、請求項1〜12の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項14】
前記注入口開口部が保護キャップを有する、請求項1〜13の何れか1つに記載の浸漬センサ。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1つに記載の浸漬センサによる、溶融物の分析のための方法。
【請求項16】
請求項1〜14の何れか1つに記載の、溶融物、特に溶融金属の分析のための浸漬センサの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−96433(P2008−96433A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258584(P2007−258584)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】