説明

溶融物のサンプリング方法および装置

【課題】スラグ混入を防ぎ、失敗なく安定的な試料サンプリングを行なうことができる、溶融物のサンプリング方法および装置を提供することを課題とする。
【解決手段】容器中の溶融物表面の温度分布状態を撮影し、撮影した画像を取り込み、取込んだ溶融物表面の計測画像を画像処理して溶融物表面の温度分布を求め、さらに温度極大点を検索し、検索した画像上の温度極大点から、サンプリングホルダでサンプリングを行なうべき溶融物中の3次元位置を演算し、演算した先端位置に、前記サンプリングホルダの先端が移動するように、先端位置決め装置の駆動系に動作指令を送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端位置決め装置に搭載のサンプリングホルダを用いて容器中から溶融物の一部を試料として取り出す、溶融物のサンプリング方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融物のサンプリングは、鋼の品質管理上欠くことのできない作業の一つである。例えば、溶鋼をサンプリングした試料の分析値は、最終製品である鋼の代表分析値を示すものとしてJIS規格にも定められている。
【0003】
従来これらサンプリングは、サンプリングホルダを手動操作することによって行なわれていたが、作業性・労働負荷の問題を解消するために機械化・自動化することが検討されてきた。例えば、特許文献1に開示された技術がある。
【0004】
この技術は、溶鋼流の自動測温・サンプリングを目的に、サンプリングプローブと共動する異なる2点以上の位置から交叉させた視野で溶鋼流の熱あるいは光を検知しながらサンプリングプローブを移動させ、溶鋼流を2点以上で同時に検知するとサンプリングプローブを一定時間定置することを特徴とするものである。
【特許文献1】特公昭58−2380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、取鍋から鋳型への注入流の自動測温・サンプリングを対象にしたものであり、溶融物を受け入れた鍋、例えば溶銑或いは溶鋼鍋内に溶銑或いは溶鋼を静置した状態での自動サンプリングには適用が難しいという問題がある。さらに、溶銑或いは溶鋼鍋でのサンプリングには溶銑或いは溶鋼上のスラグが混入しやすく、所望とする正確な試料サンプリングに失敗しやすいという問題もある。
【0006】
本発明は、これら従来技術の問題点に鑑み、スラグ混入を防ぎ、失敗なく安定的な試料サンプリングを行なうことができる、溶融物のサンプリング方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、先端位置決め装置に搭載のサンプリングホルダを用いて容器中から溶融物の一部を試料として取り出す溶融物のサンプリング方法であって、容器中の溶融物表面の温度分布状態を撮影し、撮影した画像を取り込む、溶融物表面の計測画像取込ステップと、取込んだ溶融物表面の計測画像を画像処理して溶融物表面の温度分布を求め、さらに温度極大点を検索する、温度極大点検索ステップと、検索した画像上の温度極大点から、前記サンプリングホルダでサンプリングを行なうべき前記溶融物中の3次元位置を演算する、先端位置の演算ステップと、演算した3次元位置に、前記サンプリングホルダの先端が移動するように、前記先端位置決め装置の駆動系に動作指令を送る、装置動作指令ステップとを有することを特徴とする溶融物のサンプリング方法である。
【0008】
また本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の溶融物のサンプリング方法において、前記溶融物が、溶銑或いは溶鋼であることを特徴とする溶融物のサンプリング方法である。
【0009】
さらに本発明の請求項3に係る発明は、先端位置決め装置に搭載のサンプリングホルダを用いて容器中から溶融物の一部を試料として取り出す溶融物のサンプリング装置であって、容器中の溶融物表面の温度分布状態を撮影する撮像カメラと、撮影した画像を画像処理して溶融物表面の温度分布を求め、さらに温度極大点を検索する画像処理装置と、検索した温度極大点に基づき、前記サンプリングホルダでサンプリングを行なうべき前記溶融物中の3次元位置を演算し、前記先端位置決め装置の駆動系に動作指令を送る、制御装置とを備えることを特徴とする溶融物のサンプリング装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、溶融物表面の温度分布を求め、さらに温度極大点を検索し、検索した温度極大点に基づき、サンプリングホルダでサンプリングを行なうべき溶融物中の3次元位置を演算し、先端位置決め装置の駆動系に動作指令を送るようにしたので、スラグ混入を防ぎ、失敗なく安定的な試料サンプリングを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、オペレータが、溶銑や溶鋼上のスラグの割れ目等で、サンプリング時にスラグが混入し難そうな場所を選び、サンプリングホルダを投入することで、比較的高い確度でサンプリングを成功させていることにヒントを得て、想到したものである。
【0012】
図1は、本発明に係る溶融物のサンプリング装置の構成例を示す図である。また、図2は、本発明に係る溶融物のサンプリング方法の処理手順例を示す図である。図中、1は溶融物、2は鍋、3はスラグ、4は台車、5は撮像カメラ、6は画像処理装置、7は制御装置、8は先端位置決め装置、および9はサンプリングホルダをそれぞれ表す。
【0013】
先ず、装置構成の概要を説明し、次に処理手順例を説明していく。図1は、溶融物1として溶鋼の例を示したものである。台車4上にある鍋2(台車4と鍋2が一体となったトピードカーの場合もあり)内に保持された、スラグ3が載った状態の溶鋼の表面を撮像カメラ5で撮影する。
【0014】
撮影した画像を、画像処理装置6に送り画像処理する。そして、画像処理装置6で行なった画像処理結果に基づき、制御装置7において、先端に試料をサンプリングするサンプリングホルダ9を備えた先端位置決め装置8の先端位置制御を行なう。
【0015】
図2および図1を参照して、サンプリングの処理手順例を詳説する。先ずStep11にて、測定対象物が本発明に係る溶融物のサンプリング装置が設置された所定のサンプリング位置に到着したことを確認する。しかる後Step12にて、撮像カメラ5で溶融物表面の計測画像を取込む。ここで用いる撮像カメラは、撮影範囲内の輝度の分布あるいは直接温度の分布を計測できるものであれば、その方式を問うものではない。例えば、赤外線カメラなどを用いるようにすれば良い。
【0016】
そしてStep13にて、Step12で取込んだ溶融物表面の計測画像を画像処理して溶融物表面の温度分布を求め、さらに温度極大点を検索する。ここで検索する温度極大点は、前述したように溶融物表面を覆っているスラグの割れ目部分であると考えられる。相対的に低温であるスラグの割れ目から覗いている、高温の溶融物を直接測定できているからである。
【0017】
続いてStep14の先端位置の演算、およびStep15の装置動作指令を行なう。制御装置7では、画像上の温度極大点から、サンプリングホルダ6の先端位置(実際にサンプリングを行なうべき、溶鋼中の3次元位置)を演算して、先端位置決め装置8の駆動系に動作指令を送り、サンプリングホルダ6の先端位置が演算した先端位置(溶鋼中の3次元位置)に移動するように制御を行なう。なお、先端位置決め装置8は、2軸の直線移動および回転移動が可能であり、サンプリングホルダ6の先端位置を所望の3次元位置に制御できるものである。
【0018】
そして最終的にStep16にて、サンプリングホルダ6にて試料のサンプリング実施を行い、一連のサンプリング処理を終了する。
【0019】
以上のような試料サンプリング手順をとるようにしたので、スラグ混入を防ぎ、失敗なく安定的な試料サンプリングを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る溶融物のサンプリング装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る溶融物のサンプリング方法の処理手順例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 溶融物
2 鍋
3 スラグ
4 台車
5 撮像カメラ
6 画像処理装置
7 制御装置
8 先端位置決め装置
9 サンプリングホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端位置決め装置に搭載のサンプリングホルダを用いて容器中から溶融物の一部を試料として取り出す溶融物のサンプリング方法であって、
容器中の溶融物表面の温度分布状態を撮影し、撮影した画像を取り込む、溶融物表面の計測画像取込ステップと、
取込んだ溶融物表面の計測画像を画像処理して溶融物表面の温度分布を求め、さらに温度極大点を検索する、温度極大点検索ステップと、
検索した画像上の温度極大点から、前記サンプリングホルダでサンプリングを行なうべき前記溶融物中の3次元位置を演算する、先端位置の演算ステップと、
演算した3次元位置に、前記サンプリングホルダの先端が移動するように、前記先端位置決め装置の駆動系に動作指令を送る、装置動作指令ステップとを有することを特徴とする溶融物のサンプリング方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶融物のサンプリング方法において、
前記溶融物が、
溶銑或いは溶鋼であることを特徴とする溶融物のサンプリング方法。
【請求項3】
先端位置決め装置に搭載のサンプリングホルダを用いて容器中から溶融物の一部を試料として取り出す溶融物のサンプリング装置であって、
容器中の溶融物表面の温度分布状態を撮影する撮像カメラと、
撮影した画像を画像処理して溶融物表面の温度分布を求め、さらに温度極大点を検索する画像処理装置と、
検索した温度極大点に基づき、前記サンプリングホルダでサンプリングを行なうべき前記溶融物中の3次元位置を演算し、前記先端位置決め装置の駆動系に動作指令を送る、制御装置とを備えることを特徴とする溶融物のサンプリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−121937(P2010−121937A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292884(P2008−292884)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】