説明

溶融物の捕集装置

【課題】溶融物の捕集装置において、原子炉から落下する溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図る。
【解決手段】加圧水型原子炉12の下方のキャビティ86を設け、このキャビティ86における加圧水型原子炉12の下方に位置して加圧水型原子炉12から落下する溶融物を受け止める捕集板93を設け、この捕集板93に所定の間隔で複数の凹部94を形成し、複数の凹部94の間に冷却水流通路95を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントで苛酷事故が発生した場合に、炉心から落下する溶融物を早期に冷却する溶融物の捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの一つとして、加圧水型原子炉があり、この加圧水型原子炉では、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電している。
【0003】
このような加圧水型原子炉にて、原子炉格納容器は、岩盤等の堅固な地盤上に立設され、鉄筋コンクリートなどにより内部に複数のコンパートメントが区画されている。そして、このコンパートメントを画成する筒形状をなすコンクリート構造物により、中心部に原子炉容器が垂下して支持され、その下方にキャビティが画成されている。この原子炉にて、原子炉容器内には、複数の燃料棒の間に所定数の制御棒が挿入されて格子状に配列された燃料集合体が所定数格納されている。
【0004】
このように構成された原子力発電プラントにて、冷却材喪失事故(LOCA)または過渡事象(トランジェント)が発生した場合、緊急炉心冷却装置が作動し、原子炉容器の内部の炉心を冷却することで発生する熱を十分に除去するようにしている。ところが、この緊急炉心冷却装置が故障すると、炉心を冷却することができず、原子炉容器の内部の炉心が溶融し、溶融した燃料などの溶融物がこの原子炉容器を破損させ、下部を貫通してキャビティへ落下する。一般的には、このような事故に備えて、炉心の溶融物が原子炉容器より流出したときに、流出した溶融物をキャビティにて受け止め、冷却水により冷却して安全性を確保している。
【0005】
このような技術として、例えば、特許文献1、2に記載されたものがある。この特許文献1に記載された炉心溶融物用捕集貯蔵所では、炉心溶融物の入口に対して炉心溶融物の補集区域を形成する底凹部を有する貯蔵所を設け、分離ウェブを各底凹部の間に設けている。また、特許文献2に記載された原子炉格納容器では、加圧水型原子炉の下方に非常時に冷却水を供給可能なキャビティを設け、このキャビティに加圧水型原子炉からの溶融物を拡散する傾斜板を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3117952号公報
【特許文献2】特開2010−266286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の原子炉格納容器では、落下した溶融物をこのキャビティで一時冷却し、その後に取り出す必要がある。そして、溶融物を効率的に冷却するために、この溶融物を複数の小堆積物に分離し、所定の間隔をあけて保持して冷却することが望ましい。上述した従来の装置では、溶融物を早期に複数の小体積物に分離し、所定の間隔をあけて保持することで、この溶融物を効率的に冷却することが困難である。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、原子炉から落下する溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図る溶融物の捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の溶融物の捕集装置は、原子炉の下方のキャビティに設けられる溶融物の捕集装置であって、前記キャビティにおける前記原子炉の下方に位置して前記原子炉から落下する溶融物を受け止める捕集面と、前記捕集面に所定の間隔で形成される複数の凹部と、前記複数の凹部の間に設けられる冷却媒体流通路と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
従って、非常時に、原子炉が破損して溶融物がキャビティに落下すると、この溶融物は捕集面で受け止められて拡散され、この捕集面にある複数の凹部に捕集され、この複数の凹部に捕集された小体積物としての溶融物は、冷却媒体流通路を流れる冷却媒体により冷却されることとなり、原子炉から落下する溶融物を小体積物に分離し、この溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図ることができる。
【0011】
本発明の溶融物の捕集装置では、前記キャビティは、前記原子炉の下方に設けられる溶融物の受け止め領域と、該受け止め領域に隣接して溶融物を捕集して冷却する捕集領域を有し、前記受け止め領域における前記捕集面は、前記捕集領域側に向かって下方へ傾斜する傾斜面であり、前記捕集領域における前記捕集面に前記複数の凹部が形成されることを特徴としている。
【0012】
従って、原子炉からの溶融物は、捕集面で受け止められて傾斜面により受け止め領域から捕集領域に移動することで拡散され、捕集領域にある複数の凹部に捕集されることとなり、原子炉から離間した捕集領域で溶融物を小体積物に分離することで、この溶融物を早期に冷却することができる。
【0013】
本発明の溶融物の捕集装置では、保護コンクリートの上部に所定厚さの捕集板が固定され、前記捕集面は、前記捕集板の上面に形成されることを特徴としている。
【0014】
従って、保護コンクリートの上部に捕集板を固定して捕集面を形成することで、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0015】
本発明の溶融物の捕集装置では、前記捕集板は、前記複数の凹部が形成された上板と、平面形状をなす下板とが接合されることで構成され、前記上板と前記下板との間に前記冷却媒体流通路が形成されることを特徴としている。
【0016】
従って、凹部が形成された上板と下板とを接合して捕集板を構成し、その間に冷却媒体流通路を形成することで、捕集板内に容易に冷却媒体流通路を確保することができ、捕集板の局所的な冷却を行うことができると共に、製作性を向上することができる。
【0017】
本発明の溶融物の捕集装置では、前記捕集板は、前記上板の上面に耐熱部材が固定されることを特徴としている。
【0018】
従って、捕集板の上面に耐熱部材を固定することで、溶融物による捕集面の損傷を抑制することができる。
【0019】
本発明の溶融物の捕集装置では、前記複数の凹部は、千鳥状に配置形成され、前記冷却媒体流通路は、前記複数の凹部を避けて屈曲して配置されることを特徴としている。
【0020】
従って、複数の凹部を千鳥状に配置して冷却媒体流通路を屈曲して配置することで、冷却媒体により捕集した溶融物の冷却を効率的に行うことができる。
【0021】
本発明の溶融物の捕集装置では、前記複数の凹部は、逆円錐台形状または逆角錐台形状をなすことを特徴としている。
【0022】
従って、逆円錐台形状または逆角錐台形状をなす凹部により表面積を拡大することで、溶融物の冷却効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の溶融物の捕集装置によれば、原子炉から落下する溶融物を受け止める捕集面を設け、この捕集面に複数の凹部を所定の間隔で形成し、複数の凹部の間に冷却媒体流通路を設けるので、原子炉から落下する溶融物を小体積物に分離し、この溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1の溶融物の捕集装置を表す概略平面図である。
【図3】図3は、実施例1の溶融物の捕集装置における捕集板の断面図である。
【図4】図4は、実施例1の原子炉格納容器が適用される原子力発電プラントを表す概略構成図である。
【図5】図5は、加圧水型原子炉の原子炉構造を表す断面図である。
【図6】図6は、実施例1の原子炉格納容器の概略構成図である。
【図7】図7は、本発明の実施例2に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置における捕集板の平面図である。
【図8】図8は、本発明の実施例3に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置における捕集板の平面図である。
【図9】図9は、本発明の実施例4に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置の概略構成図である。
【図10−1】図10−1は、実施例4の捕集板の第1部材を表す側面図である。
【図10−2】図10−2は、実施例4の捕集板の第1部材を表す平面図である。
【図11−1】図11−1は、実施例4の捕集板の第2部材を表す側面図である。
【図11−2】図11−2は、実施例4の捕集板の第2部材を表す平面図である。
【図12】図12は、実施例4の捕集板における第1部材の連結状態を表す平面図である。
【図13】図13は、実施例4の捕集板を表す平面図である。
【図14】図14は、実施例4の捕集板おける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る溶融物の捕集装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置の概略構成図、図2は、実施例1の溶融物の捕集装置を表す概略平面図、図3は、実施例1の溶融物の捕集装置における傾斜板の断面図、図4は、実施例1の原子炉格納容器が適用される原子力発電プラントを表す概略構成図、図5は、加圧水型原子炉の原子炉構造を表す断面図、図6は、実施例1の原子炉格納容器の概略構成図である。
【0027】
実施例1の原子力発電プラントに適用された原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0028】
即ち、この加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、図4に示すように、原子炉格納容器11内には、加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されており、冷却水配管14に加圧器16が設けられ、冷却水配管15に冷却水ポンプ17が設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0029】
蒸気発生器13は、原子炉格納容器11の外部に設けられたタービン18及び復水器19と冷却水配管20,21を介して連結されており、冷却水配管21に給水ポンプ22が設けられている。また、タービン18には発電機23が接続され、復水器19には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管24及び排水管25が連結されている。従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管20を通してタービン18に送られ、この蒸気によりタービン18を駆動して発電機23により発電を行う。タービン18を駆動した蒸気は、復水器19で冷却された後、冷却水配管21を通して蒸気発生器13に戻される。
【0030】
また、加圧水型原子炉12において、図5に示すように、原子炉容器41は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体42とその上部に装着される原子炉容器蓋(上鏡)43により構成されており、この原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43が複数のスタッドボルト44及びナット45により開閉可能に固定されている。
【0031】
この原子炉容器本体42は、原子炉容器蓋43を取り外すことで上部が開口可能であり、下部が球面状をなす下鏡46により閉塞された円筒形状をなしている。そして、原子炉容器本体42は、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズル(入口管台)47と、軽水を排出する出口ノズル(出口管台)48が形成されている。また、原子炉容器本体42は、この入口ノズル47及び出口ノズル48とは別に、図示しない注水ノズル(注水管台)が形成されている。
【0032】
原子炉容器本体42は、内部にて、入口ノズル47及び出口ノズル48より上方に上部炉心支持板49が固定される一方、下方の下鏡46の近傍に位置して下部炉心支持板50が固定されている。この上部炉心支持板49及び下部炉心支持板50は、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板49は、複数の炉心支持ロッド51を介して下方に図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板52が連結されている。
【0033】
原子炉容器本体42は、内部に円筒形状をなす炉心槽53が内壁面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽53は、上部が上部炉心板52に連結され、下部に円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板54が連結されている。そして、この下部炉心板54は、下部炉心支持板50に支持されている。即ち、炉心槽53は、原子炉容器本体42の下部炉心支持板50に吊り下げ支持されることとなる。
【0034】
炉心55は、上部炉心板52と炉心槽53と下部炉心板54により形成されており、この炉心55は、内部に多数の燃料集合体56が配置されている。この燃料集合体56は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。また、炉心55は、内部に多数の制御棒57が配置されている。この多数の制御棒57は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ58となり、燃料集合体56内に挿入可能となっている。上部炉心支持板49は、この上部炉心支持板49を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管59が固定されており、各制御棒クラスタ案内管59は、下端部が燃料集合体56内の制御棒クラスタ58まで延出されている。
【0035】
原子炉容器41を構成する原子炉容器蓋43は、上部に磁気式ジャッキの制御棒駆動装置60が設けられており、原子炉容器蓋43と一体をなすハウジング61内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管59は、上端部が制御棒駆動装置60まで延出され、この制御棒駆動装置60から延出されて制御棒クラスタ駆動軸62が、制御棒クラスタ案内管59内を通って燃料集合体56まで延出され、制御棒クラスタ58を把持可能となっている。
【0036】
この制御棒駆動装置60は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ58に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸62を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
【0037】
また、原子炉容器本体42は、下鏡46を貫通する多数の計装管台63が設けられ、この各計装管台63は、炉内側の上端部に炉内計装案内管64が固定される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ65が連結されている。各炉内計装案内管64は、上端部が下部炉心支持板50に連結されており、振動を抑制するための上下の連接板66,67が取り付けられている。シンブルチューブ68は、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が装着されており、コンジットチューブ65から計装管台63及び炉内計装案内管64を通り、下部炉心板54を貫通して燃料集合体56まで挿入可能となっている。
【0038】
従って、制御棒駆動装置60により制御棒クラスタ駆動軸62を移動して燃料集合体56に制御棒57を挿入することで、炉心55内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器41内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル48から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体56を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。また、制御棒57を燃料集合体56に挿入することで、炉心55内で生成される中性子数を調整し、また、原子炉を緊急に停止するときに炉心55に急速に挿入される。
【0039】
また、原子炉容器41は、炉心55に対して、その上方に出口ノズル48に連通する上部プレナム69が形成されると共に、下方に下部プレナム70が形成されている。そして、原子炉容器41と炉心槽53との間に入口ノズル47及び下部プレナム70に連通するダウンカマー部71が形成されている。従って、軽水は、入口ノズル47から原子炉容器本体42内に流入し、ダウンカマー部71を下向きに流れ落ちて下部プレナム70に至り、この下部プレナム70の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心支持板50及び下部炉心板54を通過した後、炉心55に流入する。この炉心55に流入した軽水は、炉心55を構成する燃料集合体56から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体56を冷却する一方、高温となって上部炉心板52を通過して上部プレナム69まで上昇し、出口ノズル48を通って排出される。
【0040】
上述した原子力発電プラントの原子炉格納容器11は、図6に示すように、岩盤等の堅固な地盤81上に外部と圧力境界を形成する鋼板ライナ82を介して立設され、鉄筋コンクリートなどにより内部に複数のコンパートメント、例えば、上部コンパートメント83及び蒸気発生器ループ室84が区画されている。原子炉格納容器11内の中央部に、蒸気発生器ループ室84を画成する筒形状をなすコンクリート構造物85が形成されており、このコンクリート構造物85により加圧水型原子炉12(原子炉容器41)が垂下して支持されている。そして、蒸気発生器ループ室84には蒸気発生器13が配置され、冷却水配管14,15により連結されている。
【0041】
また、原子炉格納容器11内には、コンクリート構造物85により原子炉容器41の下方に位置してキャビティ86が画成されており、このキャビティ86は、ドレンライン87を介して蒸気発生器ループ室84に連通している。そして、原子炉格納容器11には、燃料取替用水ピット88が設けられ、非常時にこの燃料取替用水ピット88の冷却水を加圧水型原子炉12に供給して冷却する原子炉冷却経路(冷却水供給装置)89と、冷却水を原子炉格納容器11に散布して冷却する原子炉格納容器冷却経路(冷却水供給装置)90が設けられている。そして、原子炉格納容器11に散布された冷却水は、蒸気発生器ループ室84からドレンライン87を介してキャビティ86に貯留される。
【0042】
なお、図示しないが、原子炉格納容器11には、キャビティ86に冷却水を供給する消火水などの外部注入経路が設けられ、この外部注入経路は、基端部が原子炉格納容器11の外部に設置される消火水などの外部供給設備に連結される一方、先端部がキャビティ86に連通している。
【0043】
このように構成された原子炉格納容器11にて、本実施例では、加圧水型原子炉12の下方に冷却水を供給可能なキャビティ86が設けられ、このキャビティ86に、非常時に、加圧水型原子炉12から落下した溶融物を受け止めて冷却する捕集装置91が設けられている。
【0044】
原子力発電プラントにて、冷却材喪失事故(LOCA)などが発生した場合、緊急炉心冷却装置が作動し、加圧水型原子炉12を含む原子炉冷却設備内に冷却水が供給されて炉心を冷却、発生する熱を十分に除去する。ところが、この緊急炉心冷却装置が故障すると、炉心を冷却することができず、原子炉容器の内部の炉心が溶融し、溶融した燃料などの溶融物がこの原子炉容器を破損させ、下部を貫通してキャビティ86へ落下する。このとき、キャビティ86には冷却水が供給可能となっており、このキャビティ86に落下した溶融物は、冷却水により冷却される。しかし、キャビティ86に落下した溶融物は、冷却水との相互作用によって細粒化または塊状に固化するものの、固体となったデブリが山状に堆積した場合、特に、内部を十分に冷却することが困難となる。
【0045】
本実施例の捕集装置91は、加圧水型原子炉12から落下した溶融物を受け止めると共に、小体積物に分離拡散することで、溶融物の表面積を広げて冷却効率を向上するものである。
【0046】
この捕集装置91において、図1から図3に示すように、キャビティ86は、コンクリート構造物85により加圧水型原子炉12の下方に形成されている。このキャビティ86は、加圧水型原子炉12の下方から水平方向の一方側に延出した横穴形状をなし、基端部が加圧水型原子炉12の下方に位置し、先端部側が加圧水型原子炉12の下方から離間している。この場合、キャビティ86は、先端部側の上部がドレンライン87を介して蒸気発生器ループ室84(図6参照)に連通している。
【0047】
このキャビティ86にて、鋼製ライナ82の上部には、これを保護するための保護コンクリート85aが設けられており、この保護コンクリート85aの上面に捕集装置91が配置されている。即ち、キャビティ86は、加圧水型原子炉12の下方に設けられる溶融物の受け止め領域86aと、受け止め領域86aに隣接して溶融物を拡散して冷却する捕集領域86bを有しており、受け止め領域86aと捕集領域86bとは、連通路92を通して連通されている。この連通路92は、受け止め領域86a及び捕集領域86bの通路面積より狭い通路面積となっている。
【0048】
保護コンクリート85aは、連通路92を含む受け止め領域86aでは、上面が傾斜面85bとなっており、捕集領域86bでは、上面が水平面85cとなっている。捕集装置91を構成する捕集板93は、この保護コンクリート85aの上面部に固定されており、上面が加圧水型原子炉12から落下する溶融物を受け止める捕集面を構成している。この捕集板93は、受け止め領域86aから連通路92に至る領域に傾斜面93aが形成され、捕集領域86bの領域が水平面93bとなっている。この傾斜面93aは、捕集領域86b側に向かって下方へ傾斜している。
【0049】
また、捕集板93は、捕集領域86bに対応する水平面93bに所定の間隔で千鳥状に配列される複数の凹部94が形成されている。この各凹部94は、隣接するもの同士が等間隔で配置されており、キャビティ86に壁面に接触して形成されている。また、捕集板93は、内部に複数の凹部94の間に位置して冷却水流通路(冷却媒体流通路)95が設けられている。この冷却水流通路95は、捕集板93の内部を前後左右に配置され、全てが連通されている。そして、冷却水流通路95は、図示しない冷却水循環経路が連結され、非常時に、冷却材喪失事故などが発生したとき、ポンプを駆動し、キャビティ86に貯留された冷却水を冷却水循環経路から冷却水流通路95に循環可能とすると共に、熱交換器により循環する冷却水を冷却可能としている。
【0050】
即ち、捕集板93は、複数の凹部94が形成された上板96と、平面形状をなす下板97とが接合されることで構成され、上板96と下板97との間に冷却水流通路95が形成されている。そして、捕集板93は、上板96の上面に耐熱部材98が固定されている。この場合、上板96は、例えば、プレス加工により複数の凹部94が形成され、溶接やボルトなどを用いて下板97に固定される。また、耐熱部材98は、例えば、セラミック成形体であり、接着材等により上板96に固定される。
【0051】
また、捕集板93に形成された複数の凹部94は、逆円錐台形状をなしている。この場合、凹部94は、その表面積を大きくすることを目的として逆円錐台形状または逆角錐台(例えば、四角錐台)形状としており、例えば、球面形状などであってもよい。
【0052】
従って、事故発生時には、図6に示すように、図示しないポンプを駆動し、燃料取替用水ピット88に貯留されている冷却水を原子炉格納容器冷却経路90を通して送り、多数の噴射ノズルから原子炉格納容器11内に向けて冷却水を散布する。すると、この冷却水は、原子炉格納容器11内で発生した大量の蒸気に対して散布されることとなり、ここで、大量のエネルギを奪い取り、原子炉格納容器11の内部を冷却してから高温となって落下し、蒸気発生器ループ室84からドレンライン87を通ってキャビティ86に貯留される。原子炉格納容器11内に放出されたエネルギを散布された冷却水により奪い取り、原子炉格納容器11の健全性を維持することができる。
【0053】
また、事故発生時には、図示しないポンプを駆動し、燃料取替用水ピット88に貯留されている冷却水を原子炉冷却経路89から加圧水型原子炉12に送る。すると、この冷却水は、加圧水型原子炉12内の炉心で発生した炉心の崩壊熱を奪い取り、一部は蒸気となって原子炉格納容器11の雰囲気へ放出され、残りは高温の水となって外部に流出し、蒸気発生器ループ室84からドレンライン87を通ってキャビティ86に貯留される。
【0054】
ところで、上述した緊急炉心冷却装置が故障すると、加圧水型原子炉12に冷却水を送って冷却することができず、原子炉容器の内部の炉心が溶融し、溶融物がこの原子炉容器41を破損させてキャビティ86へ落下する。緊急炉心冷却装置が故障した場合であっても、少なくとも一方の経路89,90を通して原子炉格納容器11または加圧水型原子炉12に冷却水を供給することは可能であり、この冷却水をキャビティ86に供給することができる。また、原子炉格納容器11には、キャビティ86に直接冷却水を供給する消火水などの外部注入経路が設けられており、この外部注入経路を用いて冷却水をキャビティ86に供給することができる。従って、緊急炉心冷却装置が故障しても、キャビティ86を冷却水で冠水することができる。
【0055】
そして、捕集装置91にて、図1から図3に示すように、加圧水型原子炉12から落下した溶融物は、キャビティ86の受け止め領域86aにおける捕集板93の上面部に落下する。この落下中、キャビティ86に貯留されている冷却水との相互作用により細粒化したデブリが傾斜板93上に落下し、デブリベッドを形成する。このデブリベッドは、捕集板93の傾斜によりキャビティ86内を移動しながら拡散される。
【0056】
即ち、受け止め領域86aにおける捕集板93上に落下した溶融物は、傾斜面93aにより連通路92を通って捕集領域86bに移動する。ここで、捕集領域86bにおける捕集板93は、表面に多数の凹部94が形成されていることから、捕集板93上の溶融物は、捕集領域86bに等間隔に配置された複数の凹部94に捕集され、小体積物に分離される。そして、捕集板93は、内部に設けられた冷却水流通路95に冷却水が循環していることから、複数の凹部94に捕集された小体積物となった溶融物は、この冷却水により冷却される。また、各凹部94に捕集された小体積物の溶融物は、周囲の冷却水によっても除熱されて冷却される。
【0057】
このように実施例1の溶融物の捕集装置にあっては、加圧水型原子炉12の下方のキャビティ86を設け、このキャビティ86における加圧水型原子炉12の下方に位置して加圧水型原子炉12から落下する溶融物を受け止める捕集板93を設け、この捕集板93に所定の間隔で複数の凹部94を形成し、複数の凹部94の間に冷却水流通路95を設けている。
【0058】
従って、原子力発電プラントの非常時に、加圧水型原子炉12が破損して溶融物がキャビティ86に落下すると、この溶融物は捕集板93で受け止められて拡散され、この捕集板93にある複数の凹部94に捕集される。そのため、この複数の凹部94に捕集された小体積物としての溶融物は、冷却水流通路95を流れる冷却水により冷却されることとなり、加圧水型原子炉12から落下する溶融物を小体積物に分離し、この小体積物としての溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図ることができる。
【0059】
また、実施例1の溶融物の捕集装置では、キャビティ86に、加圧水型原子炉12の下方に位置する溶融物の受け止め領域86aと、受け止め領域96aに隣接して溶融物を捕集して冷却する捕集領域96bを設け、受け止め領域86aにおける捕集板93に捕集領域側86b側へ傾斜する傾斜面93aを形成し、捕集領域86bにおける捕集板93に複数の凹部94を形成している。従って、加圧水型原子炉12からの溶融物は、傾斜面93aで受け止められて受け止め領域86aから捕集領域86bに移動することで拡散され、捕集領域86bにある複数の凹部94に捕集されることとなる。そのため、加圧水型原子炉12から離間した捕集領域86bで溶融物を小体積物に分離することで、この溶融物を早期に冷却することができる。
【0060】
また、実施例1の溶融物の捕集装置では、保護コンクリート85aの上部に所定厚さの捕集板93を固定し、捕集板93の上面に捕集面を形成して複数の凹部94を形成している。従って、保護コンクリート85aの上部に捕集板93を固定して複数の凹部94を形成することで、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0061】
また、実施例1の溶融物の捕集装置では、複数の凹部94が形成された上板96と、平面形状をなす下板97とを接合して捕集板93を構成し、上板96と下板97との間に冷却水流通路95を形成している。従って、捕集板93内に容易に冷却水流通路95を確保することができ、製作性を向上することができる。
【0062】
また、実施例1の溶融物の捕集装置では、捕集板93の上面に耐熱部材98を固定している。従って、溶融物による捕集板93の損傷を抑制することができる。
【0063】
また、実施例1の溶融物の捕集装置では、複数の凹部94を逆円錐台形状または逆角錐台形状としている。従って、逆円錐台形状をなす凹部94により表面積を拡大することで、溶融物の冷却効率を向上することができる。
【実施例2】
【0064】
図7は、本発明の実施例2に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置における捕集板の平面図である。なお、本実施例の溶融物の捕集装置の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様の構成であり、図1を用いて説明すると共に、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0065】
実施例2において、図1及び図7に示すように、加圧水型原子炉12の下方に冷却水を供給可能なキャビティ86が設けられ、このキャビティ86に、非常時に、加圧水型原子炉12から落下した溶融物を受け止めて冷却する捕集装置101が設けられている。この捕集装置101は、加圧水型原子炉12から落下した溶融物を受け止めると共に、小体積物に分離拡散することで、溶融物の表面積を広げて冷却効率を向上するものである。
【0066】
この捕集装置101において、キャビティ86は、コンクリート構造物85により加圧水型原子炉12の下方に形成されている。このキャビティ86は、加圧水型原子炉12の下方に設けられる溶融物の受け止め領域86aと、受け止め領域86aに隣接して溶融物を拡散して冷却する捕集領域86bを有しており、受け止め領域86aと捕集領域86bとは、連通路92を通して連通されている。
【0067】
保護コンクリート85aは、上面部に捕集装置101を構成する捕集板102が固定されており、受け止め領域86aから連通路92に至る領域が傾斜面であり、捕集領域86bの領域が水平面である。そして、捕集板102は、捕集領域86bに対応する位置に所定の間隔で千鳥状に配列される複数の凹部103が形成されている。また、捕集板102は、内部に複数の凹部103の間に位置して冷却水流通路(冷却媒体流通路)104が設けられている。
【0068】
この冷却水流通路104は、千鳥状に配列される複数の凹部103を避けて屈曲して配置されている。この場合、冷却水流通路104を、実施例1のように、上板96と下板97との空間部ではなく、この空間部に設けた配管とすることが望ましい。そして、この冷却水流通路104は、図示しない冷却水循環経路が連結され、非常時に、冷却材喪失事故などが発生したとき、ポンプを駆動し、キャビティ86に貯留された冷却水を冷却水循環経路から冷却水流通路95に循環可能とすると共に、熱交換器により循環する冷却水を冷却可能としている。
【0069】
従って、緊急炉心冷却装置が故障すると、加圧水型原子炉12に冷却水を送って冷却することができず、原子炉容器41の内部の炉心が溶融し、溶融物がこの原子炉容器41を破損させてキャビティ86へ落下する。緊急炉心冷却装置が故障した場合であっても、少なくとも一方の経路89,90を通して原子炉格納容器11または加圧水型原子炉12に冷却水を供給することは可能であり、この冷却水をキャビティ86に供給することができる。
【0070】
そして、捕集装置101にて、加圧水型原子炉12から落下した溶融物は、キャビティ86の受け止め領域86aにおける捕集板102の上面部に落下する。この受け止め領域86aにおける捕集板102上に落下した溶融物は、傾斜面により連通路92を通って捕集領域86bに移動する。ここで、捕集板102上の溶融物は、等間隔に配置された複数の凹部103に捕集され、小体積物に分離される。そして、複数の凹部103に捕集された小体積物となった溶融物は、捕集板103内の冷却水流通路104を流れる冷却水により冷却される。また、各凹部103に捕集された小体積物の溶融物は、周囲の冷却水によっても除熱されて冷却される。
【0071】
このように実施例2の溶融物の捕集装置にあっては、加圧水型原子炉12の下方のキャビティ86を設け、このキャビティ86における加圧水型原子炉12の下方に位置して加圧水型原子炉12から落下する溶融物を受け止める捕集板102を設け、この捕集板102に所定の間隔で千鳥状に複数の凹部103を配置し、複数の凹部103の間に複数の凹部103を避けて屈曲して冷却水流通路104を設けている。
【0072】
従って、原子力発電プラントの非常時に、加圧水型原子炉12が破損して溶融物がキャビティ86に落下すると、この溶融物は捕集板102で受け止められて拡散され、この捕集板102にある複数の凹部103に捕集される。そのため、この複数の凹部103に捕集された小体積物としての溶融物は、冷却水流通路104を流れる冷却水により冷却されることとなり、加圧水型原子炉12から落下する溶融物を小体積物に分離し、この小体積物としての溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図ることができる。また、複数の凹部103の間にこれを避けて屈曲して冷却水流通路104を設けることで、冷却水により複数の凹部103で捕集した溶融物の冷却を効率的に行うことができる。
【実施例3】
【0073】
図8は、本発明の実施例3に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置における捕集板の平面図である。なお、本実施例の溶融物の捕集装置の基本的な構成は、上述した実施例1、2とほぼ同様の構成であり、同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
実施例3において、図8に示すように、捕集装置111において、捕集板112は、所定の間隔で千鳥状に配列される複数の凹部113が形成されると共に、内部に複数の凹部113の間に位置して冷却水流通路(冷却媒体流通路)114が設けられている。この冷却水流通路114は、千鳥状に配列される複数の凹部103を避けてその間に直線状をなして配置されている。この場合、冷却水流通路114は、実施例1のように、上板96と下板97との空間部ではなく、この空間部に設けた配管となっている。
【0075】
このように実施例3の溶融物の捕集装置にあっては、加圧水型原子炉12の下方のキャビティ86を設け、このキャビティ86における加圧水型原子炉12の下方に位置して加圧水型原子炉12から落下する溶融物を受け止める捕集板112を設け、この捕集板112に所定の間隔で千鳥状に複数の凹部113を配置し、複数の凹部113の間に直線状をなして冷却水流通路114を設けている。
【0076】
従って、原子力発電プラントの非常時に、加圧水型原子炉12が破損して溶融物がキャビティ86に落下すると、この溶融物は捕集板112で受け止められて拡散され、この捕集板112にある複数の凹部113に捕集される。そのため、この複数の凹部113に捕集された小体積物としての溶融物は、冷却水流通路114を流れる冷却水により冷却されることとなり、加圧水型原子炉12から落下する溶融物を小体積物に分離し、この小体積物としての溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図ることができる。また、複数の凹部103の間に冷却水流通路104を直線状に設けることで、冷却水流通路104を屈曲する必要がなく、構造の簡素化及び低コスト化を可能とすることができる。
【実施例4】
【0077】
図9は、本発明の実施例4に係る原子炉格納容器に適用された溶融物の捕集装置の概略構成図、図10−1は、実施例4の捕集板の第1部材を表す側面図、図10−2は、実施例4の捕集板の第1部材を表す平面図、図11−1は、実施例4の捕集板の第2部材を表す側面図、図11−2は、実施例4の捕集板の第2部材を表す平面図、図12は、実施例4の捕集板における第1部材の連結状態を表す平面図、図13は、実施例4の捕集板を表す平面図、図14は、実施例4の捕集板おける断面図である。
【0078】
実施例4にて、図9に示すように、加圧水型原子炉12の下方にキャビティ86が設けられ、このキャビティ86に、非常時に、加圧水型原子炉12から落下した溶融物を受け止めて冷却する捕集装置121が設けられている。この捕集装置121を構成する捕集板122は、この保護コンクリートの上面部に水平に固定されており、上面が加圧水型原子炉12から落下する溶融物を受け止める捕集面を構成している。この捕集板122は、水平面に複数の凹部123が形成されている。
【0079】
この捕集板122は、図14に示すように、第1部材131と第2部材132と第3部材134とから構成されている。図10−1及び図10−2に示すように、第1部材131は、所定の大きさを有する板材が折り曲げ加工されることで、側方に開口する凹部131aが形成されている。また、図11−1及び図11−2に示すように、第2部材132は、所定の大きさを有する板材が折り曲げ加工されることで、側方に開口する凹部132aが形成されている。この場合、第2部材132は凹部132aの幅が広い馬蹄形をなしている。
【0080】
そして、まず、図12に示すように、第1部材131を水平方向に沿って四方に敷き詰めるように溶接により連結することで所定の大きさとし、千鳥状をなす位置に貫通孔133を形成する。この場合、貫通孔133は、第1部材131の対向する傾斜面に形成する。次に、図13に示すように、複数連結された第1部材131の上に、各貫通孔133が形成されて位置に対応して第2部材132を載せて固定する。この場合、第2部材132が貫通孔133を塞ぐこととなる。続いて、複数連結された第1部材131の下に平らな板状をなす第3部材134を固定する。これにより第1部材131同士の連結部並びに第2部材132に対応する位置が凹部123となり、この凹部123の間に位置して冷却水流通路(冷却媒体流通路)135が形成されることとなる。
【0081】
このように実施例4の溶融物の捕集装置にあっては、加圧水型原子炉12の下方のキャビティ86を設け、このキャビティ86における加圧水型原子炉12の下方に位置して加圧水型原子炉12から落下する溶融物を受け止める捕集板122を設け、この捕集板122に所定の間隔で千鳥状に複数の凹部123を配置し、複数の凹部133の間に冷却水流通路135を設けている。
【0082】
従って、原子力発電プラントの非常時に、加圧水型原子炉12が破損して溶融物がキャビティ86に落下すると、この溶融物は捕集板122で受け止められて拡散され、この捕集板122にある複数の凹部123に捕集される。そのため、この複数の凹部123に捕集された小体積物としての溶融物は、冷却水流通路135を流れる冷却水により冷却されることとなり、加圧水型原子炉12から落下する溶融物を小体積物に分離し、この小体積物としての溶融物を早期に冷却することで安全性の向上を図ることができる。また、捕集板122を第1部材131と第2部材132と第3部材134とから構成することで、この捕集板122を容易に製造することができ、低コスト化を可能とすることができる。
【0083】
なお、上述した各実施例では、キャビティ86の形状を、加圧水型原子炉12の下方から水平方向における一方に延出した横穴形状としたが、この形状に限定されるものではなく、例えば、加圧水型原子炉12の下方から水平方向における一方と他方に延出した形状や加圧水型原子炉12の外径より大きい円盤形状などとしてもよい。また、キャビティ86にて、受け止め領域86aと捕集領域86bを連通路92により連通したが、受け止め領域86aと捕集領域86bを一体となる空間部としてもよい。
【0084】
また、上述した各実施例では、コンクリート構造物85の上方に捕集板93,102,112,122を設けたが、コンクリート構造物85の上面部に直接傾斜部を設けてもよく、また、コンクリート構造物85の上面を捕集面としてもよい。更に、凹部94,103,113,123を捕集板93,102,112122の一部または全部に設けたが、その設ける位置は実施例に限定されるものではない。また、捕集板93,102,112,122を傾斜面と水平面とから構成したが、全て傾斜面としてもよい。
【0085】
また、上述した各実施例では、キャビティ86に冷却水が貯留されているものとして説明したが、原子力発電プラントの正常時には冷却水がなく、原子力発電プラントの非常時に供給するようにしてもよい。
【0086】
また、上述した各実施例では、本発明の溶融物の捕集装置を加圧水型原子炉に適用して説明したが、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用することもでき、軽水炉であれば、いずれの原子炉に適用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
11 原子炉格納容器
12 加圧水型原子炉
13 蒸気発生器
85 コンクリート構造物
85a 保護コンクリート
85b 傾斜面
85c 水平面
86 キャビティ
86a 受け止め領域
86b 捕集領域
91,101,111 捕集装置
92 連通路
93,102,112,122 捕集板(捕集面)
94,103,113,123 凹部
95,104,114,135 冷却水流通路(冷却媒体流通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の下方のキャビティに設けられる溶融物の捕集装置であって、
前記キャビティにおける前記原子炉の下方に位置して前記原子炉から落下する溶融物を受け止める捕集面と、
前記捕集面に所定の間隔で形成される複数の凹部と、
前記複数の凹部の間に設けられる冷却媒体流通路と、
を備えることを特徴とする溶融物の捕集装置。
【請求項2】
前記キャビティは、前記原子炉の下方に設けられる溶融物の受け止め領域と、該受け止め領域に隣接して溶融物を捕集して冷却する捕集領域を有し、前記受け止め領域における前記捕集面は、前記捕集領域側に向かって下方へ傾斜する傾斜面であり、前記捕集領域における前記捕集面に前記複数の凹部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の溶融物の捕集装置。
【請求項3】
保護コンクリートの上部に所定厚さの捕集板が固定され、前記捕集面は、前記捕集板の上面に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融物の捕集装置。
【請求項4】
前記捕集板は、前記複数の凹部が形成された上板と、平面形状をなす下板とが接合されることで構成され、前記上板と前記下板との間に前記冷却媒体流通路が形成されることを特徴とする請求項3に記載の溶融物の捕集装置。
【請求項5】
前記捕集板は、前記上板の上面に耐熱部材が固定されることを特徴とする請求項4に記載の溶融物の捕集装置。
【請求項6】
前記複数の凹部は、千鳥状に配置形成され、前記冷却媒体流通路は、前記複数の凹部を避けて屈曲して配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の溶融物の捕集装置。
【請求項7】
前記複数の凹部は、逆円錐台形状または逆角錐台形状をなすことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の溶融物の捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−108772(P2013−108772A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251992(P2011−251992)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】