説明

溶融紡糸TPU繊維およびプロセス

【課題】溶融紡糸TPU繊維およびプロセスを提供すること。
【解決手段】繊維の破断を経験する前の長い運転時間を達成しつつ、TPU繊維を溶融紡糸するための、より高分子量のポリエーテル末端ヒドロキシル化中間体から製造される熱可塑性(TPU)を使用し得ることが、本発明の目的である。このTPUポリマーは、以下の反応物を含む:(a)少なくとも1200ダルトン、好ましくは1500〜4000ダルトン、より好ましくは1800〜2500ダルトンの数平均分子量を有する、少なくとも1種の末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体;(b)少なくとも1種のポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネート;ならびに(c)少なくとも1種の末端ヒドロキシル化鎖延長剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2003年4月9日に出願された米国仮出願第60/461,473号からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、溶融紡糸弾性繊維(例えば、スパンデックス)を製造するための熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物に関する。本発明はまた、繊維の破断を経験するまでの運転時間が大きく増大した、溶融紡糸TPU繊維を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
大多数のTPU繊維は、TPUを溶媒に溶解させる工程を包含する、乾式紡糸プロセスにより製造される。TPU繊維を製造するための溶融紡糸プロセスは、いくつかの固有の利点を有し、その利点としては、揮発性溶媒を使用しないことの結果としての、より少ない費用、より少ない資本経費、およびより少ない環境問題が挙げられる。
【0004】
溶融紡糸繊維を製造するためのTPU組成物は、末端ヒドロキシル化中間体(代表的には、これは、ヒドロキシル基でエンドキャップされた(end capped)ポリエーテルまたはポリエステルである);ポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネート);および末端ヒドロキシル化鎖延長剤(chain extender)から製造されるTPUポリマーを含有する。この末端ヒドロキシル化中間体は、このTPUポリマーのソフトセグメントを形成する一方で、このポリイソシアネートおよび鎖延長剤は、このTPUポリマーのハードセグメントを形成する。ソフトセグメントおよびハードセグメントの組合せは、このTPUポリマーに弾性特性を賦与する。このTPUポリマーはまた、しばしば、ポリイソシアネートでエンドキャップされたプレポリマーを用いることによって、軽度に架橋されている。この架橋材料は、紡糸の間に、溶融TPUポリマーに添加される。
【0005】
ポリエステルベースのTPUおよびポリエーテルベースのTPUは、ともにTPU繊維を溶融紡糸する際に使用されている。ポリエーテルベースのTPU繊維は、ポリエステルベースのTPUから製造されるTPU繊維よりも高い耐熱性を有するように製造され得、そしてポリエステルベースのTPUから製造されるTPU繊維よりも良好な加水分解安定性を有するように製造され得る。
【0006】
ポリエーテルTPU繊維は、このTPUを製造するために使用されるポリエーテル末端ヒドロキシル化中間体が、分子量において高ければ、より良い特性を有する。残念ながら、高分子量の末端ヒドロキシル化中間体を用いるポリエーテルTPUは、紡糸口金での圧力の増大を経験し、従って繊維の破断を導く前に、より短い運転時間を有する傾向がある。紡糸操作において繊維が破断すると、生産ラインは、停止されねばならず、その紡糸口金は洗浄されねばならない。これは、損害の大きい中断時間であり、生産は失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低分子量のポリエーテル中間体を用いて製造されるTPUの長い運転時間を維持しつつ、より高い分子量を有するポリエーテル中間体から製造されるTPUポリマーを使用し得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
繊維の破断を経験する前の長い運転時間を達成しつつ、TPU繊維を溶融紡糸するための、より高分子量のポリエーテル末端ヒドロキシル化中間体から製造される熱可塑性(TPU)を使用し得ることが、本発明の目的である。
【0009】
このTPUポリマーは、以下の反応物を含む:(a)少なくとも1200ダルトン、好ましくは1500〜4000ダルトン、より好ましくは1800〜2500ダルトンの数平均分子量を有する、少なくとも1種の末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体;(b)少なくとも1種のポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネート;ならびに(c)少なくとも1種の末端ヒドロキシル化鎖延長剤。
【0010】
このポリマーは、少なくとも1種の架橋剤の添加によって軽度に架橋され、この架橋剤は、(a)ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートからなる群より選択される末端ヒドロキシル化ポリオール、ならびに(b)ポリイソシアネートから製造される。好ましくは、このポリオールはポリエステルポリオールであり、このポリイソシアネートは、ジイソシアネートである。この架橋剤は、1.0より大きいイソシアネート官能性、好ましくは約1.5〜2.5のイソシアネート官能性、そしてより好ましくは約1.8〜2.2のイソシアネート官能性を有する。
【0011】
溶融紡糸TPU繊維は、TPUポリマーを押出成形機中で溶融し、上記架橋剤をこの溶融TPUに添加することにより、製造される。架橋剤を伴なうこのTPUポリマー溶融体は、紡糸口金に供給される。この溶融体は、その紡糸口金を繊維の形態で出る。この繊維は、冷却され、そして糸巻きに巻き取られる。
【0012】
ポリエーテルTPUを非ポリエーテル架橋剤と一緒に使用するプロセスは、紡糸口金において、はるかに小さい圧力の増加を示し、従って、溶融紡糸繊維が、繊維の破断なしに、長期間、連続するプロセスで製造されることを可能にする。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
熱可塑性ポリウレタンポリマーであって、該熱可塑性ポリウレタンポリマーは、以下の反応生成物:
(a)少なくとも1200ダルトンの数平均分子量を有する、少なくとも1種の末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体;
(b)少なくとも1種のポリイソシアネート;ならびに
(c)少なくとも1種の末端ヒドロキシル化鎖延長剤、
を含み、(a)、(b)、および(c)を反応することにより形成される該ポリマーは、少なくとも1種の架橋剤で架橋され、該架橋剤は、(i)ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートおよびこれらの混合物からなる群より選択される末端ヒドロキシル化ポリオール;ならびに(ii)少なくとも1種のポリイソシアネートを反応させることにより製造される、熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目2)
(b)における前記ポリイソシアネートが、ジイソシアネートである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目3)
前記ジイソシアネートが、ジフェニルメタン−4,4’ジイソシアネートである、項目2に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目4)
前記末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体が、約1500〜約4000ダルトンの数平均分子量を有する、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目5)
前記末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体が、約1800〜約2500ダルトンの数平均分子量を有する、項目4に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目6)
前記末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体が、ポリテトラメチレンエーテルグリコールである、項目5に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目7)
前記架橋剤が、ポリエステル架橋剤である、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目8)
前記架橋剤が、末端ヒドロキシル化ポリエーテルとジイソシアネートとの反応生成物である、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目9)
前記末端ヒドロキシル化ポリエーテルが、ジカルボン酸と少なくとも1種のグリコールとの反応生成物である、項目8に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目10)
前記ジカルボン酸が、アジピン酸である、項目9に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目11)
前記グリコールが、1,4−ブタンジオールである、項目10に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目12)
前記グリコールが、少なくとも1種の分枝状グリコールおよび少なくとも1種の直鎖グリコールの混合物である、項目10に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目13)
前記分枝状グリコールが、ネオペンチルグリコールである、項目12に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目14)
前記直鎖グリコールが、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群より選択される、項目12に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目15)
前記グリコールが、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ブタンジオールの50/50モル%の混合物である、項目12に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目16)
前記ポリマーが、約150,000〜約800,000ダルトンの、前記架橋剤を添加する前の重量平均分子量を有する、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目17)
前記重量平均分子量が、約200,000〜約400,000ダルトンである、項目16に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目18)
前記重量平均分子量が、約250,000〜約350,000ダルトンである、項目17に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目19)
前記架橋剤が、約1,000〜約10,000ダルトンの数平均分子量を有する、項目8に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目20)
前記架橋剤が、約1,500〜約4,000ダルトンの数平均分子量を有する、項目19に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目21)
前記架橋剤が、約1,800〜約2,800ダルトンの数平均分子量を有する、項目20に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目22)
前記末端ヒドロキシル化鎖延長剤が、1,4−ブタンジオールである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目23)
前記架橋剤が、前記ポリマーと該架橋剤との全重量の約5.0〜約20.0重量%のレベルで使用される、項目21に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目24)
前記架橋剤のレベルが、約8.0〜約17.0重量%である、項目23に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目25)
前記架橋剤のレベルが、約10.0〜約17.0重量%である、項目24に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目26)
繊維の形態にある、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目27)
前記繊維が、約20〜約240デニールの太さを有する、項目26に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目28)
前記繊維が、約20〜約240デニールの太さを有する、繊維の形態にある項目8に記載の熱可塑性ポリウレタンポリマー。
(項目29)
溶融紡糸熱可塑性ポリウレタン繊維を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)ポリエーテル熱可塑性ポリウレタンポリマーを押出成形機中で溶融する工程であって、該熱可塑性ポリウレタンポリマーは、(i)少なくとも1200ダルトンの数平均分子量を有する、少なくとも1種の末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体、(ii)少なくとも1種のポリイソシアネート、および(iii)少なくとも1種の末端ヒドロキシル化鎖延長剤を反応させることにより製造される、工程;
(b)該溶融熱可塑性ポリウレタンポリマーに、少なくとも1種の架橋剤を添加する工程であって、該架橋剤は、(i)ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートおよびこれらの混合物からなる群より選択される末端ヒドロキシル化ポリオール;および(ii)少なくとも1種のポリイソシアネートを反応させることから製造される、工程;
(c)該架橋剤と混合された該溶融熱可塑性ポリウレタンポリマーを、少なくとも1つの紡糸口金に供給する、工程;
(d)該架橋剤を含む該溶融ポリマーを、該紡糸口金を通して通過させ、溶融紡糸繊維を製造する工程;
(e)該繊維を冷却する工程;ならびに
(f)該繊維を糸巻きに巻き取る工程、
を包含する、プロセス。
(項目30)
前記架橋剤が、前記押出成形機中で前記溶融ポリーエテル熱可塑性ポリウレタンポリマーに添加される、項目29に記載のプロセス。
(項目31)
前記架橋剤が、前記ポリマーが前記押出成形機を出た後に、前記溶融ポリーエテル熱可塑性ポリウレタンポリマーに添加される、項目29に記載のプロセス。
(項目32)
前記架橋剤および前記ポリマーが、ダイナミックミキサを用いて混合される、項目31に記載のプロセス。
(項目33)
前記架橋剤および前記ポリマーが、スタティックミキサを用いて混合される、項目31に記載のプロセス。
(項目34)
前記架橋剤が、ポリエステル末端ヒドロキシル化ポリオールとジイソシアネートとを反応させることから製造される、項目29に記載のプロセス。
(項目35)
前記架橋剤が、約1,800〜約2,800ダルトンの数平均分子量を有する、項目34に記載のプロセス。
(項目36)
前記ポリエステル末端ヒドロキシル化ポリオールが、ジカルボン酸と少なくとも1種のグリコールとの反応生成物である、項目34に記載のプロセス。
(項目37)
前記ジカルボン酸がアジピン酸である、項目36に記載のプロセス。
(項目38)
前記グリコールが1,4−ブタンジオールである、項目37に記載のプロセス。
(項目39)
前記グリコールが、少なくとも1種の分枝状グリコールおよび少なくとも1種の直鎖グリコールの混合物である、項目36に記載のプロセス。
(項目40)
前記分枝グリコールが、ネオペンチルグリコールである、項目39に記載のプロセス。
(項目41)
前記糸巻きが、1分あたり約100〜約3000mの速度で巻かれる、項目29に記載のプロセス。
(項目42)
前記糸巻きが、1分あたり約300〜約1200mの速度で巻かれる、項目41に記載のプロセス。
(項目43)
前記繊維が、240デニール以下の太さを有する、項目29に記載のプロセス。
(項目44)
前記繊維が、20〜240デニールの太さを有する、項目43に記載のプロセス。
(項目45)
前記架橋剤が、前記ポリエーテル熱可塑性ポリウレタンポリマーと該架橋剤との全重量の約5.0〜約20.0重量%のレベルで使用される、項目29に記載のプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、架橋剤が添加されたTPUポリマーから繊維を溶融紡糸する間の紡糸パック圧力対時間を示すグラフである。同じTPUポリマーが使用され、一方の運転は、ポリエーテル架橋剤で架橋され(比較例)、他方の運転は、ポリエステル架橋剤で架橋されている(本発明)。このグラフのy軸は、圧力の増加(cmあたりのKg)の増加を示し、その一方でこのグラフのx軸は、溶融紡糸運転時間(時間単位)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
溶融紡糸TPU繊維を製造するために、TPUポリマーに架橋剤を添加する先行技術の方法では、そのTPUポリマーがポリエーテルTPUである場合は、末端イソシアネート化ポリエーテルプレポリマーを使用することが慣用的である。同様に、ポリエステルTPUポリマーが使用される場合には、架橋剤のために末端イソシアネート化ポリエステルプレポリマーを使用することが慣用的である。
【0015】
出願人らは、ポリエーテルTPUを使用する場合、非ポリエーテル架橋剤が溶融紡糸繊維のためのより優れた加工特徴を与えることを思いがけなく見出した。非ポリエーテル架橋剤と組合せられた場合のセグメント化ポリエーテルTPUポリマーが、そのポリエーテルTPUが、長期間、紡糸口金の紡糸パック(spin pack)において過剰な圧力の増加なしに溶融紡糸されることを可能にすることが見出されている。過剰な圧力は、繊維の破断を生じ、従って、その溶融紡糸操作は、その紡糸パックが洗浄され得るまで、休止されることが要求される。
【0016】
本発明に従う溶融紡糸繊維を製造するために、ポリエーテルTPUおよび非ポリエーテル架橋剤を有することが要求される。
【0017】
使用されるポリエーテルTPUは、ポリエーテル末端ヒドロキシル化中間体を、ポリイソシアネートおよび鎖延長剤と反応させることにより、製造され得る。
【0018】
末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体は、合計2〜15個の炭素原子を有するジオールまたはポリオール、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド(代表的には、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたはこれらの混合物)を含むエーテルと反応したアルキルジオールまたはグリコールから誘導されるポリエーテルポリオールである。例えば、ヒドロキシル官能のポリエーテルは、第1にプロピレングリコールをプロピレンオキシドと反応させ、引き続いて連続してエチレンオキシドと反応させることにより製造され得る。エチレンオキシドから生じる第1級ヒドロキシル基は、第2級ヒドロキシル基よりも反応性であり、従って好ましい。有用な工業用ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコールと反応したエチレンオキシドを含むポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールと反応したプロピレンオキシドを含むポリ(プロピレングリコール)、テトラヒドロフランと反応した水を含むポリ(テトラメチルグリコール)(PTMG)が挙げられる。ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)は、好ましいポリエーテル中間体である。ポリエーテルポリオールは、アルキレンオキシドのポリアミド付加体をさらに含み、このポリアミド付加体としては、例えば、エチレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むエチレンジアミン付加体、ジエチレントリアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含むジエチレントリアミン付加体、および類似のポリアミド型ポリエーテルポリオールが挙げられ得る。コポリエーテルはまた、本発明で利用され得る。代表的なコポリエーテルとしては、THFとエチレンオキシドとの反応生成物またはTHFとプロピレンオキシドとの反応生成物が挙げられる。これらはBASFからPoly THF B(ブロックコポリマー)およびPoly THF R(ランダムコポリマー)として入手可能である。これら種々のポリエーテル中間体は、末端の官能基のアッセイにより決定される場合、一般に、1200ダルトンより大きい平均分子量、例えば約1200〜約10,000ダルトンの平均分子量、望ましくは約1500〜約5,000ダルトンの平均分子量、好ましくは約1800〜約2500ダルトンの平均分子量である数平均分子量(Mn)を有する。
【0019】
本発明のTPUポリマーを製造するための第2の必要な成分は、ポリイソシアネートである。
【0020】
本発明のポリイソシアネートは、一般に、式R(NCO)を有し、ここでnは、一般に2〜4であり、組成物が熱可塑性であるので2が非常に好ましい。従って、3または4の官能性を有するポリイソシアネートは、非常に少量、例えば、すべてのポリイソシアネートの全重量に基づいて5重量%未満で、そして望ましくは2重量%未満で利用される。なぜなら、それらは架橋を引き起こすからである。Rは、一般に合計2〜20個の炭素原子を有する芳香族、一般に合計2〜約20個の炭素原子を有する脂環式、および一般に合計2〜約20個の炭素原子を有する脂肪族またはこれらの混合物であり得る。適切な芳香族ジイソシアネートの例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、H12 MDI、m−キシレンジイソシアネート(XDI)、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、およびジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート(TODI)が挙げられる。適切な脂肪族ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,6−ジイソシアネート2,2,4,4−テトラメチルヘキサン(TMDI)、1,10−デカンジイソシアネート、およびトランス−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)が挙げられる。非常に好ましいジイソシアネートは、約3重量%未満のオルト−パラ(2,4)異性体を含有するMDIである。
【0021】
本発明のTPUポリマーを製造するための第3の必要な成分は、鎖延長剤である。適切な鎖延長剤は、約2〜約10個の炭素原子を有する低級脂肪族グリコールまたは短鎖グリコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,5−ペンタンジオールが挙げられる。芳香族グリコールはまた、この鎖延長剤として使用され得る。ベンゼングリコールおよびキシレングリコールは、本発明のTPUを製造する際の使用のための適切な鎖延長剤である。キシレングリコールは、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンと1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンとの混合物である。ベンゼングリコールは、好ましい芳香族鎖延長剤であり、具体的には、ヒドロキノン、すなわち、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても公知のヒドロキノンビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;レゾルシノール、すなわち1,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても公知のレゾルシノールビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;カテコール、すなわち、1,2−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても公知のカテコールビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;およびこれらの組合せが挙げられる。2つ以上のグリコール鎖延長剤のブレンドが、使用され得る。最も好ましい鎖延長剤は、1,4−ブタンジールである。
【0022】
上記3つの必要な成分(ポリエーテル中間体、ポリイソシアネート、および鎖延長剤)は、好ましくは、触媒の存在下で反応する。
【0023】
一般に、任意の従来どおりの触媒が用いられ、上記ジイソシアネートをポリエーテル中間体または鎖延長剤と反応させ得、そしてこのことは、当該分野および文献で周知である。適切な触媒の例としては、ビスマスもしくはスズのアルキルエーテルまたはビスマスもしくはスズのアルキルチオールエーテルが挙げられ、ここでこのアルキル部分は1〜約20個の炭素原子を有し、特定の例としては、ビスマスオクタノエート、ビスマスラウレートなどが挙げられる。好ましい触媒としては、種々のスズ触媒(例えば、スズオクタノエート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズジラウレートなどが挙げられる。このような触媒の量は、一般に少量(例えば、ポリウレタンを形成するモノマーの全重量に基づいて約20〜約200ppm)である。
【0024】
本発明のポリエーテルTPUポリマーは、当該分野および文献で周知の従来どおりの重合方法のいずれによっても製造され得る。
【0025】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、「ワンショット」プロセスによって製造され、ここではすべての成分が一緒に同時にかまたは実質的に同時に、加熱された押出成形機に添加され、反応してポリウレタンを形成する。末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体および上記ジオール鎖延長剤の全当量に対するジイソシアネートの当量比は、一般に、約0.95〜約1.10であり、望ましくは約0.98〜約1.05であり、そして好ましくは約0.99〜約1.03である。上記末端ヒドロキシル化鎖延長剤に対する上記末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体の当量比は、一般に、約0.5〜約1.5であり、そして好ましくは約0.7〜約1である。ウレタン触媒を利用する反応温度は、一般に約175℃〜約245℃であり、そして好ましくは約180℃〜約220℃である。上記熱可塑性ポリウレタンの分子量(Mw)は、GPCによってポリスチレン標準に対して測定される場合、一般に、約150,000〜約800,000であり、望ましくは、約200,000〜約400,000であり、そして好ましくは、約250,000〜約350,000である。
【0026】
上記熱可塑性ポリウレタンはまた、プレポリマープロセスを利用して調製され得る。そのプレポリマー経路では、末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体は、およそ1当量過剰の1種以上のポリイソシアネートと反応し、その中に遊離のポリイソシアネートまたは未反応のポリイソシアネートを有するプレポリマー溶液を形成する。反応は、適切なウレタン触媒の存在下で、一般に、約80℃〜約220℃の温度で、そして好ましくは約150℃〜約200℃の温度で実施される。その後、上に示された選択的な型の鎖延長剤が、上記イソシアネート末端基におよそ等しい等量で、そして任意の遊離のジイソシアネート化合物または未反応のジイソシアネート化合物におよそ等しい等量で、添加される。上記末端ヒドロキシル化ポリエーテルおよび上記鎖延長剤の全当量に対する全ジイソシアネートの全体の当量比は、従って、約0.95〜約1.10であり、望ましくは約0.98〜約1.05であり、そして好ましくは約0.99〜約1.03である。上記鎖延長剤に対する上記末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体の当量比は、一般に、約0.5〜約1.5であり、そして好ましくは約0.7〜約1である。鎖延長反応温度は、一般に、約180℃〜約250℃であり、約200℃〜約240℃が好ましい。代表的には、このプレポリマー経路は、任意の従来型のデバイスで実施され得、押出成形機が好ましい。従って、ポリエーテル中間体は、その押出成形機の第1の部分で1当量過剰のジイソシアネートと反応してプレポリマー溶液を形成し、その後鎖延長剤が下流部分で添加され、このプレポリマー溶液と反応する。任意の従来通りの押出成形機が利用され得、少なくとも20、好ましくは少なくとも25の長さ/直径比を有するバリヤースクリュを備えた押出成形機が好ましい。
【0027】
有用な添加剤は、適切な量で利用され得、有用な添加剤としては、不透明顔料、着色剤、鉱物充填剤、安定剤、滑剤、UV吸収剤、加工助剤、および所望される他の添加剤が挙げられる。有用な不透明顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびチタンエローが挙げられ、一方で有用な着色顔料としては、カーボンブラック、黄色酸化鉄、水酸化第二鉄(brown oxide)、生シェンナおよび焼シェンナまたは生アンバーおよび焼アンバー、酸化クロムグリーン(chromium oxide green)、カドミウム顔料、クロミウム顔料、ならびに他の混合金属酸化物顔料および混合有機顔料が挙げられる。有用な充填剤としては、珪藻土(スーパーフロス(superfloss))粘土、シリカ、タルク、マイカ、ワロストナイト(wallostonite)、硫酸バリウム、および炭酸カルシウムが挙げられる。所望の場合には、有用な安定剤(例えば、酸化防止剤)が使用され得、この酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤が挙げられ、その一方で有用な光安定剤としては、有機リン酸塩、および有機スズチオラート(メルカプチド)が挙げられる。有用な滑剤としては、ステアリン酸金属塩、パラフィン油およびアミドワックス(amide wax)が挙げられる。有用なUV吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールおよび2−ヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0028】
可塑剤添加剤はまた、特性に影響を及ぼすことなく硬度を低下させるために有利に利用され得る。
【0029】
溶融紡糸プロセスの間に、上記のTPUポリマーは、架橋剤を用いて軽度に架橋される。この架橋剤は、末端ヒドロキシル化中間体のプレポリマーであり、ポリイソシアネートと反応したポリエステル、ポリイソシアネートと反応したポリカーボネート、ポリイソシアネートと反応したポリカプロラクトンまたはこれらの混合物である。ポリエステルは、この架橋剤を製造するための好ましい末端ヒドロキシル化中間体である。ポリエーテル末端ヒドロキシル化中間体は、溶融紡糸プロセスを妨害するので、避けられるべきである。これらの架橋剤であるプレポリマーは、約1.0よりも大きいイソシアネート官能性、好ましくは約1.0〜約3.0のイソシアネート官能性、そしてより好ましくは約1.8〜約2.2のイソシアネート官能性を有する。末端ヒドロキシル化中間体の両末端がイソシアネートでキャップされ、従って2.0のイソシアネート官能性を有する場合が、特に好ましい。
【0030】
上記架橋剤を製造するために使用されるポリイソシアネートは、上記TPUポリマーを製造することにおいて上記されたのと同じポリイソシアネートである。MDIのようなジイソシアネートは、好ましいジイソシアネートである。
【0031】
末端ヒドロキシル化ポリエステル中間体は、一般に直鎖ポリエステルまたは分枝状ポリエステルであって、約500〜約10,000の数平均分子量(Mn)、望ましくは約700〜約5,000の数平均分子量(Mn)、好ましくは約700〜約4,000の数平均分子量(Mn)、そしてより好ましくは約2,000〜約3,000の数平均分子量(Mn)を有し、一般に1.3未満の酸価、そして好ましくは0.8未満の酸価を有する。分子量は、末端官能基のアッセイによって決定され、数平均分子量に関連する。上記ポリマーは、(1)1種以上のグリコールの、1種以上のジカルボン酸もしくは酸無水物とのエステル化反応、または(2)エステル交換反応、すなわち、1種以上のグリコールの、ジカルボン酸のエステルとの反応により製造される。末端ヒドロキシル基の優位性を有する直鎖が得るために、酸に対しておよそ1モル以上過剰なグリコールのモル比が好ましい。適切なポリエステル中間体はまた、種々のラクトン(例えば、代表的にはε−カプロラクトンおよび二官能性開始剤(例えば、ジエチレングリコール)から製造されるポリカプロラクトン)を含む。所望のポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはこれらの組合せであり得る。単独でかまたは混合物で使用され得る適切なジカルボン酸は、一般に、合計4〜15個の炭素原子を有し、適切なジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。上記ジカルボン酸の酸無水物(例えば、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物など)もまた、使用され得る。アジピン酸は、好ましい酸である。反応して望ましいポリエステル中間体を形成するグリコールは、直鎖脂肪族もしくは分枝状脂肪族、芳香族またはこれらの組合せであり得、合計2〜12個の炭素原子を有し、そしてこれらのグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4 ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコールおよびこれらの混合物が挙げられる。1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールおよびこれらの混合物が、好ましいグリコールである。特に望ましいポリエステル架橋剤は、分枝状グリコール(例えば、ネオペンチルグリコール)と直鎖状グリコール(例えば、1,4−ブタンジオール)との混合物を用いて製造されるポリエステル架橋剤であり、このグリコール混合物は、アジピン酸と反応され、MDIでエンドキャップされて、架橋剤として使用されるプレポリマーを形成する。
【0032】
本発明のポリカーボネートベースの架橋剤(プレポリマー)は、ジイソシアネートを末端ヒドロキシル化ポリカーボネートと鎖延長剤とのブレンドと反応させることにより調製される。この末端ヒドロキシル化ポリカーボネートは、グリコールをカーボネートと反応させることにより調製され得る。
【0033】
米国特許第4,131,731号は、末端ヒドロキシル化ポリカーボネートおよびそれらの調製に関する開示のために、本明細書により参考として援用される。このようなポリカーボネートは直鎖状であり、他の末端基の本質的な排除を伴う末端ヒドロキシル基を有する。必須の反応体は、グリコールおよびカーボネートである。適切なグリコールは、4〜40個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子を含有する脂環式ジオールおよび脂肪族ジオールから、ならびに1分子あたり2〜20個のアルコキシ基を含有し、各アルコキシ基が2〜4個の炭素原子を含有する、ポリオキシアルキレングリコールから選択される。本発明における使用に適したジオールとしては、4〜12個の炭素原子を含有する脂肪族ジオール(例えば、ブタンジオール−1,4、ペンタンジオール−1,4、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール−1,6、2,2,4−トリメチルヘキサンジオール−1,6、デカンジオール−1,10、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール);および脂環式ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール−1,3、ジメチルシクロヘキサン−1,4、シクロヘキサンジオール−1,4、ジメチルシクロヘキサン−1,3、1,4−エンドメチレン−2−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、ならびにポリアルキレングリコールが挙げられる。上記反応において用いられるジオールは、最終製品において所望される特性に依存して、単一のジオールまたはジオールの混合物であり得る。
【0034】
末端ヒドロキシル化されているポリカーボネート中間体は、一般に当該分野および文献で公知のポリカーボネート中間体である。適切なカーボネートは、以下の一般式:
【0035】
【化1】

【0036】
を有する5〜7員環からなるアルキレンカーボネートから選択され、ここでRは、2〜6個の直鎖状の炭素原子を含有する飽和の2価ラジカルである。本明細書中での使用のために適切なカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−エチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、および2,4−ペンチレンカーボネートが挙げられる。
【0037】
また、本明細書中で適切であるのは、ジアルキルカーボネート、脂環式カーボネート、およびジアリールカーボネートである。ジアルキルカーボネートは、各アルキル基に2〜5個の炭素原子を含み得、その特定の例としては、ジエチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートが挙げられる。脂環式カーボネート、特にジ脂環式カーボネートは、各環状構造に4〜7個の炭素原子を含み得、1つまたは2つのそのような構造が存在し得る。1つの基が脂環式である場合、その他は、アルキルまたはアリールのいずれかであり得る。他方で、1つの基がアリールである場合、その他は、アルキルまたは脂環式であり得る。各アリール基に6〜20個の炭素原子を含み得るジアリールカーボネートの好ましい例は、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、およびジナフチルカーボネートである。
【0038】
この反応は、グリコールをカーボネート(好ましくは、アルキレンカーボネート)と、10:1〜1:10のモル範囲で(しかし好ましくは3:1〜1:3のモル範囲で)、100℃〜300℃の温度で、0.1〜300水銀柱mmの範囲の圧力で、エステル交換触媒の存在下または非存在下で、低沸点のグリコールを蒸留により取り除きつつ反応させることにより、実施される。
【0039】
より具体的には、この末端ヒドロキシル化ポリカーボネートは、2段階で調製される。第1段階では、グリコールは、アルキレンカーボネートと反応し、低分子量の末端ヒドロキシル化ポリカーボネートを形成する。低沸点のグリコールは、100℃〜300℃で、好ましくは150℃〜250℃で、10〜30mmHg、好ましくは50〜200mmHgの減圧下での蒸留により除去される。分留塔が使用されて、副生成物のグリコールを反応混合物から分離する。副生成物のグリコールは、その塔の頂上から取り除かれ、未反応のアルキレンカーボネート反応体と未反応のグリコール反応体は還流として反応容器に戻される。不活性気体の流れまたは不活性溶媒の流れが、副生成物であるグリコールが生成されるにつれて、それを除去することを容易にするために使用され得る。得られる副生成物のグリコールの量が、この末端ヒドロキシル化ポリカーボネートの重合度が2〜10の範囲にあることを示したときに、圧力が徐々に0.1〜10mmHgまで下げられ、未反応のグリコールおよび未反応のアルキレンカーボネートが除去される。これは、反応の第2段階の始まりを示し、その間に上記低分子量の末端ヒドロキシル化ポリカーボネートは、その末端ヒドロキシル化ポリカーボネートの所望の分子量が達成されるまで、100℃〜300℃(好ましくは150℃〜250℃)で、0.1〜10mmHgの圧力で、グリコールが生成されるにつれて、それを留去することにより縮合する。末端ヒドロキシル化ポリカーボネートの分子量(Mn)は、約500〜約10,000まで変動し得るが、好ましい実施形態では、それは500〜2500の範囲にある。
【0040】
上記架橋剤は、約1,000〜約10,000の数平均分子量(Mn)、好ましくは約1,500〜約4,000の数平均分子量(Mn)、より好ましくは1,800〜約2,800の数平均分子量(Mn)を有する。
【0041】
上記TPUポリマーとともに使用される架橋剤の重量%は、約5.0%〜約20%、好ましくは約8.0%〜約17%、より好ましくは約10%〜約17%である。使用される架橋剤の百分率は、TPUポリマーと架橋剤との全重量に基づいた重量%である。
【0042】
TPU繊維を製造するための溶融紡糸プロセスは、予備形成されたTPUポリマーを供給する工程を包含し、通常はこのTPUポリマーは、押出成形機中で溶融され、そして架橋剤は、このTPU溶融体が押出成形機を出る点の近くの下流でか、またはこのTPUポリマー溶融体が押出成形機を出た後に、連続的に添加される。この架橋剤は、この溶融体がその押出成形機を出る前かまたはこの溶融体がその押出成形機を出た後に、押出成形機に添加され得る。この溶融体がその押出成形機を出た後に添加される場合には、TPUポリマー溶融体中へのこの架橋剤の適切な混合を確実なものにするために、この架橋剤は、スタティックミキサまたはダイナミックミキサ(dynamic mixer)を用いて、TPU溶融体と混合される必要がある。その押出成形機を出た後、架橋剤を伴なったこの溶融TPUポリマーは、マニホールドへ流れる。このマニホールドは、この溶融体流れを異なる流れに分割し、そこでは各流れが、複数の紡糸口金に供給される。通常は、このマニホールドから流れる各異なる流れに対して溶融体ポンプ(melt pump)が存在し、各溶融体ポンプは、いつくかの紡糸口金を供給する。この紡糸口金は、小さい噴口を有し、この噴口を通って上記溶融体は押され、繊維の形状で紡糸口金を出る。紡糸口金における噴口の太さは、繊維の所望の太さ(デニール)に依存する。この繊維は、その紡糸口金を離れるにつれて引かれるかまたは延伸され、冷却された後で糸巻きに巻かれる。その繊維は、紡糸口金を出る繊維の速度よりも高い速度でその糸巻きを巻くことにより、延伸される。溶融紡糸TPU繊維に対しては、糸巻きは、通常、紡糸口金を出る繊維の速度の4〜6倍の速度で巻かれるが、特定の設備に依存して遅く巻かれてもよく、速く巻かれてもよい。代表的な糸巻きの巻き速度は、1分あたり100〜3000mに変動し得るが、より代表的な速度は、TPU溶融紡糸繊維に対しては、1分あたり300〜1200mである。仕上げ油(例えば、シリコーンオイル)は、通常、冷却後で糸巻きに巻かれる直前に、その繊維の表面に添加される。
【0043】
溶融紡糸TPU繊維の製造の重要な局面は、停止することなく連続的にそのプロセスが運転され得る時間である。そのプロセスを止める必要性は、通常、繊維の破断の結果である。紡糸口金での圧力が受容不可能なレベルまで上昇すると、繊維の破断が発生する。その圧力が1平方センチあたり約140〜200Kg重に到達すると、繊維の破断は、通常、発生する。圧力の増加は、繊維のための紡糸口金中の小さい出口噴口の部分的閉塞を引き起こす、上記架橋剤の自己反応に起因する生成物の生成を導く不適切な混合のような、いくつかの理由によって発生し得る。本発明は、繊維の破断を生じる有害な圧力を超える前に、はるかに長い運転時間を可能にする。
【0044】
溶融紡糸TPU繊維は、種々のデニールで製造され得る。デニールは、繊維の太さを示す、当該分野の用語である。デニールは、9000メートルの繊維長さの重量(g単位)である。代表的な溶融紡糸TPU繊維は、240以下のデニール太さで、より代表的には20〜240デニールの太さで製造され、20デニールが一般的な太さである。
【0045】
弾性TPU繊維が使用され、衣類の種々の物品を作製するための他の繊維(例えば、天然繊維および合成繊維)と編むかまたは織ることにより組み合わされる。TPU繊維は、種々の色で染色され得る。
【0046】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解される。
【実施例】
【0047】
(実施例)
実施例1は、末端ヒドロキシル化ポリエーテルポリオールとしてのPTMEG、ポリイソシアネートとしてのMDI、および鎖延長剤としての1,4−ブタンジオールを用いる、ポリエーテルTPUポリマーの製造を示す。上に記載した1回で完結するプロセスを使用して、実施例1のTPUを製造した。実施例1からのTPUを、溶融紡糸試験のために、実施例2〜6で使用した。実施例2は、ポリエーテル架橋剤を用いた比較例であるが、実施例3〜6は、本発明に従うポリエステル架橋剤を使用する。
【0048】
(実施例1)
分子量2000ダルトンのポリエーテルポリオールPTMEGを、加熱(90℃)しかつ攪拌した槽に充填し、最終ポリマー重量の100重量部基準で、0.3重量部の酸化防止剤および0.3重量部のUV安定剤とブレンドする。第2の予備加熱した槽に、鎖延長剤である1,4−ブタンジオールを充填し、50℃に保った。第3の予備加熱し、攪拌した槽に、4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネート(MDI)を入れた。この3つの槽の成分を、正確に計量しながら、Werner & Pfleiderer Corp.,Ramsay,NJ製の40mmの同時回転2軸スクリュー押出成形反応器(co−rotating twin−screw extruder reactor)の炉口に供給した。この押出成形機は、11個のバレルセクションを有し、それらを190℃〜205℃の間に加熱した。その押出成形機の端部を、スクリーンパックを装填した6つ孔のダイのあとで水中ペレタイザーに接続した。以下の処方物を、25.07重量部のMDI、5.82重量部の1,4−ブタンジオールおよび68.5重量部のポリオール(PTMEG)を計量しながら供給することによって連続的に運転した。押出成形機の押出量を、1時間あたり150 lbs/hrに調整し、その一方で別の小さい槽から、50ppm(ポリマー基準)のスズオクタノエート(octoate)触媒を、このポリオール流れに注入した。このポリエーテルTPU生成物を、水中ペレット化し、105℃に加熱したサイロに収集し、その生成物を3時間乾燥した。このようにして製造したポリエーテルTPU生成物を、実施例2〜6で使用し、溶融紡糸TPU繊維を製造した。このTPUポリマーは、300,000ダルトンのMwを有した。
【0049】
(実施例2(比較例))
実施例1のTPUポリマーを、真空バッチ乾燥機(vacuum batch dryer)中で、80℃で12時間、予備乾燥した。乾燥後、このTPUポリマーを、24のL/D比を有する1.25インチ単軸スクリュー押出成形機中で溶融させた。押出成形機の出口での背圧をループ制御を用いて一定に保った。この押出成形機は4つの加熱ゾーンを有し、それらを180℃〜219℃に維持した。この押出成形機を出る際に、このTPUポリマー溶融体を、13.1重量%の、1500の数平均分子量を有するポリエーテルプレポリマー架橋剤(Hyperlast 5196)と混合した。この架橋剤を、保持槽(holding tank)から一定流量で注入した。この架橋剤を、ダイナミックミキサ中で、TPUポリマー溶融体と混合し、次いでマニホールドを通して32個の紡糸口金へ注入した。各紡糸口金は、0.5mmのオリフィスサイズを有した。この紡糸口金を出るポリマー流れを空冷し、生成した繊維を1分あたり480mの巻き上げ速度で糸巻きに巻いた。この糸巻き上の繊維を、試験前に、80℃で24時間加熱養生した。
【0050】
製造した繊維は、太さが20デニールであった。紡糸口金での圧力を、運転の間測定した。図1は、その運転の間の圧力の増加のグラフを示す。このデータは、この運転の開始時では、紡糸パック圧力による力は、約30Kg/cmであったことを示す。21時間の連続運転後、その圧力は、約45Kg/cmに上昇しており、そしてその後進行し、31時間後、急に上昇して100Kg/cmに達した。50時間後、紡糸パック圧力による力は、180Kg/cmに達し、いくつかの繊維が破断し始めた。破断のため、この運転を50時間後に停止した。
【0051】
(実施例3)
本実施例を、上記ポリエステル架橋剤が、実施例2で使用されたポリエーテル架橋剤よりもはるかに小さい紡糸パック圧力の増加を与えることを示すために提示する。
【0052】
TPUポリマー、溶融紡糸設備および溶融紡糸条件は、実施例2に上記されたとおりであった。唯一の差異は、使用した架橋剤であった。本実施例では、14.0重量%のポリエステル架橋剤を使用した。使用したポリエステル架橋剤は、Hyperlast Company製のDiprane(登録商標)5128であり、これは2500の数平均分子量を有する。
【0053】
製造された繊維は、20デニールであり、実施例1におけるのと同じ速度(1分あたり480m)であった。
【0054】
紡糸パック圧力による力を、この運転の間、測定した。図1は、この運転の間の圧力の増加のグラフを示す。このデータは、この運転の開始時では、紡糸パック圧力による力は、約15Kg/cmであったことを示す。8時間後、その紡糸パック圧力による力は、20Kg/cmに上昇した。この運転を、合計で110時間継続し、その紡糸パック圧力による力は、20Kg/cmを維持した。繊維の破断はなく、出発物質がすべて消費されたので、この運転を110時間後に停止した。
【0055】
実施例2および実施例3を比較すると、同一のベースTPUポリマーに対して、ポリエーテル架橋剤に対してポリエステル架橋剤を使用した場合に、溶融紡糸可能性における相異は、まったく驚くべきものであることを理解し得る。このポリエーテル架橋剤(実施例2)は、繊維破断を得るまでに、約50時間、連続的に運転し得るにすぎないが、一方でポリエステル架橋剤は、繊維破断なしに、わずか20Kg/cmの圧力の増加とともに、110時間、運転した。ポリエステル架橋剤(実施例3)は、最後の100時間、圧力の上昇をまったく増加させなかったので、運転を継続するに十分な利用可能な材料があった場合には、おそらくもっとより長い時間運転していただろうと考えられる。
【0056】
実施例3で製造された20デニールのTPU溶融紡糸繊維を、それらの弾性特性について試験した。繊維の引っ張り特性を、引張荷重/圧縮荷重セル(最大静荷重容量(maximum static load capacity) 10N)ならびに繊維の寄りおよび「掴み時」の破断を防止するための空気式糸掴み具を装備したTable Top Model 5564 Instronを用いて測定した。
【0057】
用いた試験手順は、延伸からの良好な回復または良好な保持力のいずれかを必要とする衣料において使用される弾性糸に対して、DuPontにより開発された試験手順であった。この試験は、繊維を一連の5サイクルに供する。各サイクルでは、一定の伸長速度(元のゲージ長と300%伸び率との間で)を用いて、繊維を、交互に、300%伸び率まで延伸し、そして緩和する。残留歪(%)を、5回目のサイクルの完了後に測定する。次いで、繊維試験片を6回目のサイクルを通して採取し、破断まで延伸する。上記機器は、各伸び率での荷重、破断前の最大荷重、破断時の荷重ならびに破断伸び率および最大荷重時の伸び率を、グラム重/デニールの単位で記録する。
【0058】
試験条件は、23℃±2℃で;湿度50%±5%であった。試験片の繊維長は50.0mmであり、線密度は20.60デニールであった。4つの試験片を試験した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
上のデータのすべては、試験した4つの試験片に対する平均値である。
【0061】
上のデータから、この溶融紡糸繊維が優れた弾性特性を有することが理解され得る。
【0062】
(実施例4)
本実施例を、分枝状グリコール成分(ネオペンチルグリコール)を有するネオペンチルグリコールアジペートのポリエステル架橋剤が、繊維の破断なしに、長い溶融紡糸運転時間を与えることを示すために提示する。
【0063】
実施例1のTPUポリマーを使用して、溶融紡糸繊維(20デニール)を、実施例2および3において使用された溶融紡糸繊維パイロットラインよりも小さい溶融紡糸繊維パイロットラインで製造した。使用したポリエステル架橋剤は、Diprane 5253(Hyperlast Company)であり、これは、MDIと反応して2500の数平均分子量(Mn)を有するプレポリマーを形成したネオペンチルグリコールアジペートで中間体ある。溶融紡糸の間、14.0重量%のこのポリエステル架橋剤を、上記TPUポリマーに添加した。
【0064】
溶融紡糸を、100時間、繊維の破断なく実施した。この運転を、さらなる材料の欠如に起因して、停止した。
【0065】
(実施例5)
本実施例を、アジピン酸と反応させた、分枝状グリコール(ネオペンチルグリコール)の、直鎖グリコール(1,4−ブタジエンジオール)との50/50モル%の組合せを用いる、ポリエステル架橋剤が、繊維の破断なしに、長い溶融紡糸運転時間を与えることを示すために提示する。
【0066】
実施例1のTPUポリマーを使用して、溶融紡糸繊維(20デニール)を、実施例4におけるのと同じ溶融紡糸繊維パイロットラインで製造した。使用したポリエステル架橋剤は、50/50モル%のネオペンチルグリコールおよび1,4−ブタンジオールと反応したアジピン酸であり、そしてMDIと反応して2500の数平均分子量(Mn)を有するプレポリマーを形成した。溶融紡糸の間、14.0重量%のポリエステル架橋剤を、上記TPUポリマーに添加した。
【0067】
溶融紡糸を、100時間、繊維の破断なく実施した。この運転を、さらなる材料の欠如に起因して、停止した。
【0068】
(実施例6)
本実施例を、アジピン酸と反応させた、分枝状グリコール(ネオペンチルグリコール)の、直鎖グリコール(1,6−ヘキサンジオール)の50/50モル%の組合せを用いる、ポリエステル架橋剤が、さらなる破断なしに、長い溶融紡糸運転時間を与えることを示すために提示する。
【0069】
実施例1のTPUポリマーを使用して、溶融紡糸繊維(20デニール)を、実施例4および実施例5におけるのと同じ溶融紡糸繊維パイロットラインで製造した。使用したポリエステル架橋剤は、50/50モル%のネオペンチルグリコールおよび1,6−ヘキサンジオールと反応したアジピン酸であり、そしてMDIと反応して2500の数平均分子量(Mn)を有するプレポリマーを形成した。溶融紡糸の間、14.0重量%のポリエステル架橋剤を、上記TPUポリマーに添加した。
【0070】
溶融紡糸を、100時間、繊維破断なく実施した。この運転を、さらなる材料の欠如に起因して、停止した。
【0071】
特許法に従って、最良の形態および好ましい実施形態が示されたが、本発明の範囲は、これらに限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲により限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2011−214012(P2011−214012A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−163719(P2011−163719)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【分割の表示】特願2006−509726(P2006−509726)の分割
【原出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】