説明

溶融金属の分析のための装置及び浸漬センサ及び方法

【課題】発光分光分析法を用いる溶融材料分析のための改良方法にして、特には溶融鋳鉄あるいは溶融鋼鉄のような溶融金属を分析するための、しかしスラグ、ガラス、溶岩その他の高温の流動材料の分析に対しても適用可能な改良方法を提供することである。
【解決手段】発光分光分析法を使用する、溶融材料、例えば鋳鉄あるいは鋼、あるいはスラグ、ガラスあるいは溶岩を分析するための方法及び装置において、少なくとも一つの分光計(5)と、被分析材料を励起させるための少なくとも一つの励起装置(2)とを有する検出素子(11)を使用し、被分析材料を励起させることで被分析材料から放射物を部分的あるいは完全に発生させ、発生した放射物を検出素子内の分光計により分析する。検出素子は溶融した被分析材料との接触状態に持ち来され、分光計によって供給される分析成分を含む情報を伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光分光分析法を用いて高温の溶融金属を分析するための方法に関する。本
発明は溶融鉄あるいは溶融鋼のような溶融金属を分析するために特に好適なものであるが
、スラグ、ガラス、溶岩あるいはその他の任意の流体、高温材料を分析するためにも使用
し得るものである。本発明はまた、発光分光分析法を使用するための新規な装置に関し、
更には、溶融材料、特に金属、スラグあるいは溶融溶岩、あるいは溶融ガラスを分析する
ための、浸漬キャリヤ、放射物検出器、放射物を記録し且つこの放射物を更に伝送させる
ための放射物案内システム、浸漬キャリヤの上部あるいは内部に配置した信号インターフ
ェース、を含む浸漬センサに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の好ましい適用分野は、部分的あるいは完全に溶融した金属、溶岩、ガラス、あ
るいはスラグの各浴、及びその他の高耐火性の溶融材料の分析である。
高温溶融生成物、即ち、約300℃以上の温度の、例えば、溶融鋼、溶融アルミニュー
ム、溶融ガラス、あるいは溶融溶岩の組成分析はかなり広い分野において実施されている
。一般的に用いる方法では、サンプルを取り出し、このサンプルを先ず冷却し、次いで部
分的あるいは完全に冷却した後に様々な分析手順が実施される。
異なる分析法が使用され得、各分析法は配合物の、定性的な識別あるいは定量的な投与
をすべき配合物の成分に基づいて選択されるが、そうした選択は、被分析材料の物理形態
(精鋼用コンバーター内の鋼浴、溶解炉内の耐火材浴、オーブン内の溶融ガラス、あるい
は火山の溶岩)や、望ましい作業形式(材料への実際のアクセス、分析場所の環境、分析
処理の結果を出すまでの時間)のような作業条件と、それに組み合わせる実際の機器(m
odalities)とにより決定される。
本明細書では、説明目的上、金属溶融塊の分析の分野に絞られるが、本発明の方法をそ
の他の高温溶融材料に対しても適用し得るものである。
【0003】
溶融金属の分析に関し、発光分光分析法は、極めて迅速に実施し得ること、サンプル調
製に要する作業量が非常に少ないこと、多数の成分を同時に投入し得ることから最も一般
的に用いられる。発光分光分析法は、被分析材料を励起させるとその構成材料がイオン化
されるという事実に基づくものである。放出された放射線は分光器内で分析され、存在す
る材料に相当する異なる波長に分けられる。形式の異なる分光器の中で、当該分野では光
電子増倍管あるいはCCD(電荷結合素子)あるいはCMOS(相補型金属酸化膜半導体
)を備えるものが、その特性上最も一般的なものである。発光分光分析法を使用するため
の分析設備は、固体的(immobile)な材料を分析するための実験室設備かあるい
は携帯式設備である。
【0004】
発光分光分析法は、一連の金属製品全体を追跡、制御、監視可能なことから経済的であ
ることが知られており、工業界では一般的に用いられている。採算性への要求上、製造プ
ロセスの採算性に関わるコストを最小化するに適した最も簡単で且つ最速の方法が必然的
に探求される中で、サンプル採取を省略しつつ流動金属を投入する幾つかの方法が検討さ
れ、それらの方法が現在、実験室で開発され、あるいはそれよりは多少とも高度な開発状
況下にパイロットラインにてテストされている。
現行法には、製品を遠隔励起、例えば、レーザービームを使用して遠隔励起させること
が含まれる。励起された製品には放射物が誘起され次いで放出され、この放射物が発光分
光分析装置により分析される。被分析製品は多少とも放射物が除去された後、実用途上の
、例えば加工条件的な可能性に従い製鋼所内に実際に配置される。製品から放出され分析
される放射物は、異なる方法、例えばガラスファイバー、テレスコープ等を通して発光分
析装置に案内される。
【0005】
現在、CCD技法をベースとする検出装置を使用し、製造状況において高収益下に使用
可能な程に十分低コストで且つ小型及び構造の簡単な分光器の開発が進められていること
が知られている。先に言及した別の技法、即ち、工業生産的に既に使用される技法及び現
在開発中の技法は何れも、被分析物の外側に位置付けた素子を用い、分光分析法により分
析する放射物を発生させる励起を創出させている。現在、励起を創出させるためには、被
分析物の近く、例えばコンバーター内に位置付けた金属浴中に配置したレーザーシステム
を使用する必要があるのに加え、そうしたレーザーシステムではレーザービームを配向さ
せる標的設備も必要となる。
溶融金属の製造、例えば製鋼現場や、それに匹敵する、火山周辺での溶岩分析に際して
の環境条件が、使用する監視装置に対して極めて攻撃的であり、先の関連で言えば光学装
置が特に損傷を受けやすいことは明らかである。従って、そうした場所で上述の如きレー
ザーシステムを使用するのは技術的なトラブルの元であり、レーザーによる放射物放出に
関与する設備的な励起を用いる分光分析法を工業的に広汎且つ集約的に適用させることに
関する開発は非常に困難であり、事故もしばしばある。
WO03/081287A2において、溶融材料を分析するための浸漬センサを用いる
分光分析法が記載され、この技法ではキャリヤ管が溶融アルミニュームに浸漬される。キ
ャリヤ管の内部にはレンズ系が配置され、キャリヤ管の上端位置には、光学系を介してそ
の一端を分光器に、他端をレーザーに各連結した光ファイバが配置される。溶融物から放
出される放射物は光ファイバを通して分光器に案内され、分光器内で溶融アルミニューム
の組成に関する分析結果を入手するべく分析される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO03/081287A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、発光分光分析法を用いる溶融材料分析のための改良方法にし
て、特には溶融鋳鉄あるいは溶融鋼鉄のような溶融金属を分析するための、しかしスラグ
、ガラス、溶岩その他の高温の流動材料の分析に対しても適用可能な改良方法を提供する
ことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、発光分光分析法を用いて溶融材料を分析するための分析方法が提供さ
れる。本方法は、溶融鋳鉄あるいは溶融鋼鉄のような溶融金属を分析するために特に意図
されたものであるが、300℃、好ましくは500℃を上回る温度のスラグ、ガラス、溶
岩その他の流動材料を分析するためにも適用可能であり、少なくとも、発光分光器を含む
、所謂、“検出素子(sensitive element)”が使用される。
本発明の分析方法は、少なくとも一つの励起装置を備えた検出素子を用いて被分析材料
を励起させ、検出素子内の分光器による分析を可能ならしめる放射物のビームの一部ある
いは全部の発生を可能ならしめること、検出素子を被分析材料との接触状況に持ち来たす
こと、分析信号を示す情報を記録し、記録した情報を、検出素子が被分析溶融材料と接触
する時点と、前記被分析溶融材料中に溶解して破壊される時点との間に前記検出素子によ
って伝送させること、伝送される情報が、検出素子内の分光器の創出する分析信号を含む
ようにすること、伝送される前記情報を直接読み取るあるいはプロセス処理後に読み取る
ことにより、被分析材料の化学的成分の少なくとも一部が導出され得るようにすること、
が含まれる。
【0009】
分析を実施するための前記方法において用いる検出素子は、発光分光器のみならず、被
分析材料を励起させ、また、分光器により分析するべき放射物の一部或は全部を発生させ
るための励起装置も含むことから、この検出素子を使用することで、被分析材料に接近し
て配置したレーザーのような外部励起装置の使用に関連する問題が解決される。かくして
、本発明には、被分析材料を、例えば、ローカルな分光計、即ち、溶融状態の被分析材料
との接触状況に持ち来たされる素子内の分光計によって分析することのできる放射スペク
トルを放出するように自己励起させるためのシステムを使用することが含まれる。こうし
たビルトイン式の自己励起装置は、使い切り式あるいは使い捨て式のセンサである検出素
子内に一体化される。
【0010】
本発明の有益な方法実施例では、実際の作業条件、例えば、測定及び制御技術で用いら
れる、所謂基準放射線の測定の様な条件を考慮に入れるための変調(modulatio
n)技法が使用される。被分析材料から放出されるスペクトルの測定を、この材料を励起
させることなく少なくとも一回実施することが好ましい。こうして得た基準放射線のスペ
クトルは、被分析材料を励起させた後に検出素子により記録されたスペクトルから控除さ
れる。この操作により、基準放射線とは無関係の分析信号が検出素子により伝送される。
【0011】
本発明の更に他の方法実施例によれば、検出素子の伝送する信号を補正するために、被
分析材料を励起させる以前に、この被分析材料の温度が少なくとも一回測定される。励起
後の被分析材料の放出ライン特性上の偏差(波長、振幅、帯域幅)が、この温度とは無関
係に考慮されるべきである。
【0012】
本発明の更に他の方法実施例によれば、測定上の選択適合性を評価するための、被分析
位置の空間位置の測定が少なくとも一回以上実施される。前記評価の目的は被分析位置が
、例えば、浴の縁部あるいは酸化表面付近のような低関心領域にはないことを保障するこ
とにある。そうした場所にある材料の分析値は、浴内に位置付けられた材料の分析値を表
さない恐れがある。
【0013】
本発明の他の方法実施例によれば、電気的な励起を生じさせるための励起装置が少なく
とも一台設けられる。この励起装置は、遮断装置を備えた少なくとも一台の充電済みキャ
パシタを含むことが好ましい。このキャパシタは、バッテリーから給電され且つ放電回数
が1〜2000回であり、各放電が、少なくとも10ナノ秒継続し且つ少なくとも0.0
1アンペアの強さを有することが好ましい。
【0014】
本発明の更に他の方法実施例では、化学的な励起を生じさせるための、好ましくは10
00ml未満の流体を有する励起装置が少なくとも一台設けられる。前記流体は、高エネ
ルギー化学反応を生じるように被分析材料と接触状態に持ち来され、それにより被分析材
料を励起させると共に、検出素子内の分光計によって分析される放射物を発生する。前記
高エネルギー化学反応は爆発性の化学反応であることが好ましい。本発明の更に他の方法
実施例によれば、励起装置が、化学反応による励起発生のための流体用の容器を含む。こ
の容器は、被分析材料と、使用される励起装置あるいは励起材料との間の接触時間を調節
(modulation)することを目的とし、この調節は随意的には、分析位置にあっ
て放出ビームの分析用に使用される分光計の一つ以上の構成部品の消耗及びそれに次いで
の破壊を管理することによっても行われる。励起装置としての容器を用いる前述のケース
では、容器は爆発弁(explosion−valve)と称する装置を有している。爆
発弁は、その溶融温度が被分析材料の溶融温度より少なくとも10℃高い合金から成り、
そうした合金は、例えばULC鋼の場合では、例えばタングステン添加鋼が使用され得る

本発明の更に他の好ましい方法実施例によれば、被分析材料が溶融金属であり、励起装
置が化学的なものであり、好ましくは水である流体が使用され、流体の最小流量は好まし
くは0.01mlとされる。
【0015】
本発明によれば、上記方法発明を実施するための装置発明も提供される。本装置は、被
分析材料との接触状況に持ち来たされる検出素子がジャケットを含み、このジャケットが
好ましくは可溶性(作動条件下に)を有する、好ましくはバーミキュライトから成り且つ
前記検出素子を少なくとも部分的に包囲することを特徴とする。本装置の一実施例におい
て、ジャケットは溶融による検出素子の破壊が遅延され、また好ましくは、溶融金属であ
るところの被分析材料と分光計の検出素子との接触状態が好ましく改善されるように幾何
学的に配置される。本装置の好ましい更に他の実施例において、被分析材料である溶融金
属との接触状況に持ち来たされるところの検出素子が、その内部の雰囲気が制御されると
ころの包囲体に収容され、前記包囲体の内部の雰囲気の制御は、ガスあるいはガス混合物
を含むこと、好ましくは窒素及びあるいはアルゴンを含むこと、あるいは真空内に配置さ
れることであり、真空の場合は圧力は少なくとも10-1mmHg+/−10%とされる。
【0016】
本発明は被分析材料を励起させるための外部システム(レーザーシステムあるいはその
他システム)が不要である。本発明の方法を用いることにより、分光分析法のための装置
が簡素化され、関連する経済的コストが削減され得る。
また、本発明によれば、特には溶融金属を分析するための浸漬センサが提供される。浸
漬センサは、浸漬自在のキャリヤと、放射物検出器と、放射物を記録し且つ放射物を更に
伝送するための放射物ガイドシステムとを含み、浸漬自在のキャリヤの上あるいは内部に
は信号インターフェースが位置付けられ、放射物検出器と、放射物ガイドシステムの少な
くとも一部分とが、浸漬自在のキャリヤ上あるいは内部に位置付けられ、信号インターフ
ェースが放射物検出器と連結される。この構成上、溶融金属からの光学的な放射が、浸漬
自在のキャリヤ位置あるいはその内部で、多くの異なる方法において再伝送され得る電気
信号に予め変換され得ることからそれ以降の信号伝達が著しく簡素化される。放射物検出
器はもはや長期使用のための配列構成を有する必要がなく、検出後はその機能は失われる
ことから、極めて簡単に製造することができ、コスト効率的でもある。
【0017】
放射物検出器は、放射物を記録し、この記録を電気信号に変換するための装置を有する
。詳しくは、実際上は放射物検出器は可視光線、紫外線、赤外線、X線及びあるいはマイ
クロ波を記録し且つ電気的な信号に変換する設計とされる。これにより、全ての形式の光
学的その他の放射物が記録されるようになり、溶融物分析に用い得るようになる。浸漬自
在のキャリヤは、個別の各パーツをその内部に配列するチューブとして構成するのが、そ
うすることにより搬送中に各パーツがより良好に保護され得るようになることから特に好
都合である。浸漬自在のキャリヤは、溶融金属中に消費され得る材料、特には有機性材料
から作製することも好都合である。
【0018】
信号インターフェースを電気的あるいは光学的カップリングとして、あるいはトランス
ミッター(信号を有線あるいは無線伝送するための)として構成するのが有益である。同
様に、外部から入射する光学的信号を放射物ガイドシステムにカップリングし、放射物検
出器から送られる信号(電気的あるいは光学的信号)を有線あるいはケーブル接続、ある
いは空気伝達を介してさえも再伝送することもできる。詳しくは、そうすることで、浸漬
自在のキャリヤを使用後に外部システムから容易に取り外して廃棄し、新しい浸漬自在の
キャリヤをカップリング部材を介して外部システム(コンピューター、放射物調製用のレ
ーザー、無線セグメント)に接続したラインに接続することが可能となる。浸漬自在のキ
ャリヤは、好ましくはキャリヤランスを取り付けるための機械的カップリングと連結する
のが好ましい。そうしたキャリヤランスは測定装置を保持するためのものとして冶金学的
に一般的なものである。信号インターフェースがトランスミッターとして構成される場合
、放射物検出器を出る信号は無線を介してコンピューターに伝送される。信号を、放射物
検出器を備える構成部品内で評価し、その結果のみを再伝送することも基本的には可能で
ある。浸漬自在のキャリヤ位置あるいはその内部に到達する電気的信号を光学的信号に変
換することも可能である。その場合、浸漬自在のキャリヤに到達する電気的信号は無線を
介してワイヤレス及びケーブルレス状況下に伝送され得、この無線信号が光学的信号に変
換される。これにより無接触測定が可能となり、センサと評価装置あるいは信号調整装置
との間の固定的な連結は無用となるので、十分なコスト効率化と、小型化と、高性能化と
が可能となる。
【0019】
浸漬自在のキャリヤ上あるいはその内部で信号を評価するための、信号増幅器及びある
いは信号プロセッサを配置するのが好都合であり、放射物ガイドシステムが光学的及びあ
るいは磁気的レンズ、光ファイバ、鏡、放電ギャップ及びあるいはシャッターを有するの
が更に好都合である。放電発生用のシステムあるいは別の、放射物放出システムを浸漬自
在のキャリヤ上あるいはその内部に位置付けるのも実用的である。光学的分光計、X線分
析装置及びあるいは質量分析装置を浸漬自在のキャリヤ上あるいはその内部に位置付ける
ことができる。
浸漬自在のキャリヤ上あるいはその内部にガス伝導装置を設け、このガスにより溶融し
た被分析材料の表面を吹掃させ、かくして、測定するべき表面に放射物が集中するように
、あるいはこの表面上でスパークが発生するようにしても良い。
【0020】
浸漬自在のキャリヤをチューブとして構成する場合、このチューブ内にガス伝導装置を
設け、浸漬センサが浸漬する際に溶融材料がチューブ内に入り込まないようにするのが良
い。詳しくは、高温下に溶融する材料、例えば氷晶石、鉄あるいは鋼の各溶融物あるいは
、ガラス、溶岩、あるいは銅の各溶融物さえもが、上述の様式下において良好に分析され
得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の装置及び方法の基本構成を示す概略図である。
【図2】本発明の別態様における構成を示す概略図である。
【図3】本発明の別態様における構成を示す概略図である。
【図4】溶融金属中に浸漬させた浸漬センサの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、開発段階あるいは工業的な試験段階における本発明の方法が例示される。分
析するべき金属あるいは任意の固体あるいは流体の各被分析材料1が容器7に配置され、
レーザーシステム2からのビーム3がこの被分析材料1に当てられて材料が加熱され、加
熱された材料から放射物4が放出され、この放射物4が少なくとも部分的に分光計5に向
けて送られる。分光計5は、放射物4に含まれる情報/分析信号の読み取りを可能とする
別の分析及びあるいは信号プロセス処理システム6に接続され、かくして被分析材料1の
分析値が導出される。
【0023】
図2には溶融金属浴の分析のために使用し得る別態様の実施例が示され、被分析材料が
CCD分光計と共に容器7内の金属浴中に収納されている。CCD分光計8は被分析材料
である金属浴1と接触状態に持ち来されると数分間で金属浴1中に溶解し、破壊される。
分光計8は放射物検出器を備え、放射物は先ず、格子あるいは結晶により、異なる成分に
分割され得る。放射物検出器はCCD検出器その他であり得、この放射物検出器の得たデ
ータを好適な分析及びあるいは信号プロセス処理システム6において更に分析及びあるい
は操作上プロセス処理するために記録装置/、アンテナ10に伝送するトランスミッター
システムを備える。
【0024】
図2に例示する装置では、一般には、被分析材料の金属浴1に照射されるビーム3を放
出するレーザーである励起装置2を使用して被分析材料の金属浴1に励起を誘起させる。
金属浴1は分光計8の近くに配置され、この分光計8が、レーザーシステム2、即ち励起
装置からのビーム3によって誘起され金属浴1を出る放射物を記録及び分析する。分光計
8による分析結果は伝送路(例えば、無線あるいはケーブルを介した波長形態の)を通し
て記録装置/アンテナ10に送られる。記録装置/アンテナ10は、情報/分析信号を保存
するために、あるいは誘起された放射物の化学成分を決定する解析を可能とする信号プロ
セス処理システム6に再伝送するために好適なものであり得る。分析及び伝送の手順全体
が、分光計8が溶融によって破壊される以前に実施されることは言うまでもない。
【0025】
図3に示す装置では、コンバーター、製鋼炉、あるいは溶融及びあるいは圧延オーブン
であることが好ましい容器7に収容された金属浴1が分析される。この容器7に、少なく
とも一つの分光計と、分析するべき金属浴1を成す金属を自己励起させるためのシステム
とを収納する検出素子11が配置される。検出素子11が金属浴1と接すると励起が手動
的、自動的あるいはその他の方法により誘起され、検出素子11から発生された信号9が
記録装置/アンテナ10を介して記録され、この信号が、分析及びあるいは信号プロセス
処理システム6によりプロセス処理され、検出素子11内に位置付けた分光計により実施
された計測結果が解析される。この装置は、検出素子の外側の、溶融金属と接触状態に持
ち来たされる励起システムが省かれることから構成が簡素であり、検出素子を金属浴中に
導入するための装置と、検出素子から発生されるデータを、例えばケーブル接続を介して
回収するための装置のみが用いられる。
【0026】
図4に示す装置では、浸漬センサが被分析材料である溶融鉄1を収納する容器/るつぼ
7に部分的に浸漬されている。浸漬自在のキャリヤ12が厚紙性のチューブで構成され、
このチューブ内に、ワンウェイミラー13とレンズ14とを備える放射物ガイドシステム
が配置される。チューブ内には溶融鉄1から出る放射物を記録し、この記録を電気信号に
変換する分光計8も配置される。電気信号は信号ライン15を介してカップリング16に
送られる。カップリング16は浸漬センサを外部給電システムに連結するために使用され
る。この目的上、レーザー源が光ファイバ17を介してコネクタ/カップリング16に接
続され、信号ケーブル18が浸漬センサをコンピューターに繋ぎ、ガスライン19が、供
給源からチューブ(浸漬自在のキャリヤ12)内へのガス送給を可能とし、チューブ自身
が、カップリング16と溶融鉄1との間のガスラインを構成する。光ファイバ17は光孔
20に連結される。レーザー光はこの光孔20を通り、ミラー13及びレンズ14により
溶融鉄1上に集中される。溶融鉄1から反射される光はミラー13によって分光計8の新
郷入口に送られる。この目的上、ミラー13はワンウェイミラーとして構成される。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ること
を理解されたい。チューブの、浸漬端部とは離間した側の端部にキャリヤランスを挿通し
、浸漬手順の間、このキャリヤランスにチューブを保持させ得る。
本発明の放射分光測定法は非常に数多くの工業分野において使用可能であり、単に製鋼
作業に限らず、亜鉛メッキにおける如く、金属分離のための浴として恐らくは作用するそ
の他の冶金的な浴の成分分析による監視のためにも用い得る。
【符号の説明】
【0027】
1 材料
2 レーザーシステム
3 ビーム
4 放射物
5 分光計
6 信号プロセス処理システム
7 容器
8 分光計
9 信号
10 記録装置/アンテナ
11 検出素子
12 浸漬自在のキャリヤ
13 ワンウェイミラー
14 レンズ
15 信号ライン
16 カップリング
17 光ファイバ
18 信号ケーブル
19 ガスライン
20 光孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融温度が300℃以上の溶融材料を、少なくとも一つの放射分光計を含む所謂“検出素子”を用いる発光分光分析法により分析するための方法であって、
電気的励起を生じさせるための少なくとも一つの励起装置を備えた検出素子を用いて被分析材料を励起させ、検出素子内の分光計による分析を可能ならしめる放射物のビームの一部あるいは全部の発生を可能ならしめること、
検出素子を被分析材料との接触状況に持ち来たすこと、
分析信号を示す情報を記録し、記録した情報を、検出素子が被分析溶融材料と接触する時点と、前記被分析溶融材料中に溶解して破壊される時点との間に前記検出素子によって伝送させること、
伝送される情報が、検出素子内の分光計の創出する分析信号を含むようにすること、
伝送される前記情報を直接読み取るあるいはプロセス処理後に読み取ることにより、被分析材料の化学的成分の少なくとも一部が決定され得るようにすること、
を含む前記方法。
【請求項2】
変調技法が使用される請求項1の方法。
【請求項3】
被分析材料から放出されるスペクトルの測定が、該被分析材料を励起させることなく少なくとも一回実施され、こうして入手した基準放射線のスペクトルが、被分析材料の励起後に検出素子により得られたスペクトルから控除される請求項1あるいは2の何れかの方法。
【請求項4】
検出素子によって伝送される信号を補正するために、被分析材料の温度測定が少なくとも一回実施される請求項1〜3の何れかの方法。
【請求項5】
被分析材料を励起させる以前に、検出素子の伝送する信号を補正するために、該被分析材料の温度測定が少なくとも一回実施される請求項1〜4の何れかの方法。
【請求項6】
測定上の選択適合性を評価するための、被分析位置の空間位置の測定が少なくとも一回以上実施される請求項1〜5の何れかの方法。
【請求項7】
励起を生じさせるための励起装置の放電発生回数が1〜2000回であり、各放電が、少なくとも10ナノ秒継続し且つ少なくとも0.01アンペアの強さを有する請求項1の方法。
【請求項8】
被分析材料が、好ましくは鋳鉄あるいは鋼である溶融金属である請求項1〜7の何れかの方法。
【請求項9】
被分析材料がスラグ、ガラスあるいは溶岩である請求項1〜7の何れかの方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の方法の一つ以上に従う発光分光分析法を実施するための装置であって、
溶融温度が300℃以上の被分析金属材料の金属浴(1)を収容する容器(7)内に配置した検出素子(11)にして、前記金属浴(1)と接触すると電気的励起が誘起される少なくとも1つの励起装置(2)と、金属浴(1)からの放射物を記録及び分析する少なくとも1つの分光計(8)とを含む検出素子と、
記録装置/アンテナ(10)にして、前記検出素子(11)が被分析溶融材料と接触する時点と、前記検出素子(11)が前記被分析溶融材料中に溶解して破壊される時点との間に該検出素子から伝送される情報を記録及び分析し、前記情報が、検出素子内の分光計の創出する分析信号を含む記録装置/アンテナと、
前記放射物の化学成分を決定する解析を可能とする信号プロセス処理システムと、
を含み、
前記検出素子がジャケットを含み、該ジャケットが、前記検出素子を少なくとも部分的に包囲し且つ可溶性の材料を含む装置。
【請求項11】
可溶性の材料がバーミキュライトを含む請求項10の装置。
【請求項12】
ジャケットが、溶融による検出素子の破壊が遅延されるように幾何学的に配置される請求項10あるいは11の装置。
【請求項13】
ジャケットが、該ジャケットの幾何学が、分析するべき溶融材料と分光計の検出素子との接触状態が促進されるように構成される請求項10〜12の何れかの装置。
【請求項14】
被分析材料である溶融金属との接触状況に持ち来たされるところの検出素子が包囲体に収容される請求項10〜13の何れかの装置。
【請求項15】
包囲体が、少なくとも一つのガスから成る雰囲気、好ましくは窒素あるいはアルゴンを収納する雰囲気を有する請求項14の装置。
【請求項16】
包囲体が真空下に配置される請求項14の装置。
【請求項17】
包囲体が少なくとも10-1mmHg+/−10%である真空圧力下に配置される請求項14の装置。
【請求項18】
電気的構成の励起装置を有し、該励起装置が、遮断装置を備えた少なくとも一台の充電済みキャパシタを含む請求項10〜17の何れかの装置。
【請求項19】
励起発生用の正規装置が少なくとも一つのバッテリーを含む請求項10〜18の何れかの装置。
【請求項20】
溶融温度が300℃以上の溶融材料、金属、スラグ、あるいは溶岩あるいはガラスの各溶融材料を分析するための浸漬センサであって、浸漬自在のキャリヤと、放射物検出器と、放射物を記録し且つ放射物を更に伝送するための放射物ガイドシステムとを含み、浸漬自在のキャリヤの上あるいは内部には信号インターフェースが位置付けられ、放射物検出器と、放射物ガイドシステムの少なくとも一部分とが、浸漬自在のキャリヤ上あるいは内部に位置付けられ、信号インターフェースが放射物検出器と連結され、浸漬自在のキャリヤが、溶融金属中に消費され得る材料から作製され、前記放射物ガイドシステムが電気的励起を生じさせるための励起装置を更に含む浸漬センサ。
【請求項21】
溶融温度が300℃以上の溶融材料、金属、スラグ、あるいは溶岩あるいはガラスの各溶融材料を分析するための浸漬センサであって、浸漬自在のキャリヤと、放射物検出器と、放射物を記録し且つ放射物を更に伝送するための放射物ガイドシステムとを含み、浸漬自在のキャリヤの上あるいは内部には信号インターフェースが位置付けられ、放射物検出器と、放射物ガイドシステムの少なくとも一部分とが、浸漬自在のキャリヤ上あるいは内部に位置付けられ、信号インターフェースが放射物検出器と連結され、浸漬自在のキャリヤが機械的カップリングと連結され、前記放射物ガイドシステムが電気的励起を生じさせるための励起装置を更に含む浸漬センサ。
【請求項22】
放射物検出器が、放射物を記録し、該記録を電気信号に変換するための装置を有する請求項20あるいは21の浸漬センサ。
【請求項23】
放射物検出器が、可視光線、紫外線、赤外線、X線及びあるいはマイクロ波を記録し且つ電気的な信号に変換するために組み込まれる請求項20〜22の何れかの浸漬センサ。
【請求項24】
浸漬自在のキャリヤがチューブとして構成される請求項20〜23の何れかの浸漬センサ。
【請求項25】
浸漬自在のキャリヤが溶融金属中に消費され得る有機性材料から作製される請求項20〜24の何れかの浸漬センサ。
【請求項26】
信号インターフェースが電気的あるいは光学的カップリングとして、あるいはトランスミッターとして構成される請求項20〜25の何れかの浸漬センサ。
【請求項27】
浸漬自在のキャリヤが、好ましくはキャリヤランスを取り付けるための機械的カップリングと連結される請求項20〜26の何れかの浸漬センサ。
【請求項28】
浸漬自在のキャリヤ上あるいはその内部に、信号を評価するための信号増幅器及びあるいは信号プロセッサが配置される請求項20〜27の何れかの浸漬センサ。
【請求項29】
放射物ガイドシステムが光学的及びあるいは磁気的レンズ、光ファイバ、鏡、放電ギャップ及びあるいはシャッターを有する請求項20〜28の何れかの浸漬センサ。
【請求項30】
光学的分光計、X線分析装置及びあるいは質量分析装置が浸漬自在のキャリヤ上あるいはその内部に位置付けられる請求項20〜29の何れかの浸漬センサ。
【請求項31】
浸漬自在のキャリヤ上あるいはその内部に放射物放出装置を配置した請求項20〜30の何れかの浸漬センサ。
【請求項32】
浸漬自在のキャリヤ上あるいは内部にガス伝導装置を配置した請求項20〜30の何れかの浸漬センサ。
【請求項33】
ガス伝導装置がガスライン及びラインカップリングを含む請求項32の浸漬センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−141293(P2011−141293A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90138(P2011−90138)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【分割の表示】特願2006−544321(P2006−544321)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】