説明

溶融金属又は溶融金属上にあるスラグ層のパラメータの測定のための装置

【課題】溶融金属又は溶融金属の表面上にあるスラグ層のパラメータの正確な測定が可能となる改良した測定装置を提供する。
【解決手段】該装置は、キャリア管(2)を備え、キャリア管の一端部において、測定ヘッド(3)が配置されて本体がキャリア管内に取り付けられ、A/D変換器(11)が、測定ヘッド又はキャリア管内に配置され、A/D変換器(11)は、測定ヘッド上又は測定ヘッド内に配置された少なくとも一つのセンサ(5、6、7)に接続され、測定ヘッドは接点部(14)を有し、該接点部は、その接点端子(13)を介してA/D変換器の信号出力部に電気的に接続され、接点部は、キャリア管に挿入されたランス(1)に接続され、該ランス内にせいぜい二つの信号線(16)が配置され、該信号線は、一端部がA/D変換器に接続され、他端部がコンピュータ又は分析装置(17)に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属(好ましくは溶融鉄又は溶融鋼)又は溶融金属の表面上にあるスラグ層の少なくとも一つのパラメータの測定のための装置に関する。該装置はキャリア管を有し、キャリア管の一端部には測定ヘッドが配置され、測定ヘッドの本体がキャリア管内に固定される。A/D(アナログ/デジタル)変換器が、測定ヘッド又はキャリア管内に配置され、また、A/D変換器は、測定ヘッド内又は測定ヘッド上に配置された少なくとも一つのセンサに接続される。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、WO03/060432A1より知られている。ここでは、ドロップイン(落とし入れもしくは投入)プローブ内の使い捨ての電気計測部品の使用が記述され、センサ信号が分析ステーションへ無線送信される。該装置は、そのため、溶融金属中への投入時にケーブルに煩わされない。慣用の浸漬プローブ、すなわち、測定又はサンプリングのために溶融金属中に短時間浸漬され、次いで、再び引き上げられるプローブは、それらのキャリア管により、慣用のランス(測定ランス)に取り付けられ、これは、例えば、DE29805881U1、EP69433、DE3641225A1又はWO03/064714A1より知られており、該ランスを通じて測定信号の伝送が行われる。
【特許文献1】WO03/060432A1
【特許文献2】DE29805881U1
【特許文献3】EP69433
【特許文献4】DE3641225A1
【特許文献5】WO03/064714A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の第一の目的は、改良した測定装置を利用できるようにすることであり、該装置により、溶融金属又は溶融金属の表面上にあるスラグ層のパラメータ(特徴的な特性)の正確な測定が可能となる。
【0004】
この目的は、独立請求項の特徴によって実現される。有利な実施形態は、従属請求項において規定される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、測定ヘッドは接点部を有し、該接点部は、A/D変換器の信号出力部及び電源ラインに電気的に接続される。更に、該接点部は、キャリア管内に挿入されたランスに接続される。ランス内に、少なくとも一つの信号線及び少なくとも一つの電源ラインが配置され、これらは、一端部が接点部に接続され、他端部がコンピュータ又は分析装置に接続され、その結果、デジタル信号としてのセンサからの測定信号の伝送が可能となる。この手段により、環境によって引き起こされる電気的妨害(障害)が大きく程度除去され、該ライン(及び線)の補償又は遮蔽が不要となる。アナログ信号は、非常に短い距離に対してのみ伝送され、これを電源が問題なく可能にする。既知のランス/測定装置において、測定誤り又は誤信号を発生させ得る、電気的接点端子及び電気的接続部等の現存する重要なポイントは、デジタル技術及びラインの数の制限により、少なくとも最小にされる。ここで、すべての既知のセンサ、例えば、温度センサ、電気化学センサ又は光学センサが基本的に装備可能である。
【0006】
信号は、上記ラインに接続された慣用の接点部を介して伝送され、該ラインは、ランスを通って送られ、分析装置に接続される。ランスは、慣用のキャリアランスであり、ランス上に測定用のキャリア管が押し付けられ、キャリア管は、測定中、ランスと共に保持される。ここで、一つ又は二つのラインとして、ランスの金属スリーブ又は測定ヘッドと一体化したもしくは測定ヘッドを囲む金属スリーブを使用することができる。従って、一つのみのラインがランスを通って与えられる必要がある。測定信号及び電源は、デジタル技術を用いることにより、信号線を介して送信され得る。
【0007】
上記接点部は、好ましくは、A/D変換器に電源接続部に電気的に接続される。有利には、デジタル信号の送信のために多くても二つの信号線がランス内に配置され、これら各ラインは、一端部が接点部の接点端子に、他端部がコンピュータ又は分析装置に接続される。
【0008】
電源ラインがランス内に配置されることが好ましく、該ラインは、一端部が接点部の接点端子に、他端部が電源に接続される。
【0009】
ランス内に信号線が配置され得、これは、一端部が接点部の接点端子に、他端部が測定装置又は分析装置に接続される。また、第2信号線は、ランスの金属管を用いて形成され得、これは、接点部の一つの接点端子に電気的に接続される。ランス内に配置された信号線は、電源ラインとしても機能し得、電源に接続され得る。
【0010】
本発明に従う装置は、いわゆるドロップインプローブ、すなわち、ある高さの容器から溶融金属内へと落下されるプローブとして具現化され得る。該装置は、この実施形態においてランスを有さないが、キャリア管が装備され得る。この装置は、溶融金属又は溶融金属の表面上にあるスラグ層の少なくとも一つのパラメータの測定のためのものであり、測定ヘッドを有し、また、該装置において、A/D変換器が測定ヘッド内に配置され、A/D変換器が、測定ヘッド上又は測定ヘッド内に配置された少なくと一つのセンサに接続される。該装置は、A/D変換器の信号出力部が、コンピュータ又は分析装置に接続される多くても二つの信号線に接続されることにより特徴付けられる。
【0011】
接点部が、A/D変換器とコンピュータ又は分析装置との間、好ましくは信号線とコンピュータ又は分析装置との間に配置されることが有利である。該接点部を介して、A/D変換器は、コンピュータ又は分析装置に電気的に接続される。好ましくは、接点部は、A/D変換器の電源接続部に電気的に接続される。
【0012】
A/D変換器は、プリント回路基板(又は電気的構成要素を含むように設計された回路フレームもしくは別の素子)上に配置され得る。
【0013】
本発明は、更に、上述した装置と溶融物容器内に収容された溶融金属とを備え、かつ該装置が少なくとも部分的に浸漬される測定装置に関する。該測定装置は、A/D変換器が上記装置の浴接点に接続されること、及び、浴接点とコンピュータ又は分析装置との間の溶融金属が電気的接続部の一部を形成することにより特徴付けられる。
【0014】
本発明に従う装置は、原則的に、すべての電子測定構成要素が使い捨て材として構成される。該使い捨て材は、一回の使用後、測定ヘッド及びキャリア管と共に処分される。測定ヘッドは、例えば、酸素センサ、光学センサ又は温度センサ等の追加のセンサを有し得る。該センサは、慣用の態様で接点部を介して電子的分析装置に接続され得る。グラウンド電位の分路が、信号線を介してのみならず、溶融金属を介して存在し得る。これにより、ケーブルの形態の一つだけの信号線で足りる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示す本発明に従う装置は、いわゆるサブランスに関する。測定ヘッド3を有するキャリア管2はランス1に配置される。キャリア管2は厚紙で形成され、測定ヘッド3は、セメント又は鋳物砂等の耐熱(耐火)材料から本質的に形成される。測定ヘッド3はセンサキャリアを有し、センサキャリアの外側端部上に、浸漬端部、酸素センサ5、温度センサ6、及びいわゆる浴接点7が配置される。上記センサは、センサキャリア4に取り付けられる第1保護キャップ8によって測定開始まで保護される。キャリア管2から突出する測定ヘッド3の全部分は、付加保護キャップ9で囲まれる。測定ヘッド3内に配置されるセンサキャリア4の後方端部上に、いわゆるワイヤ接続部10が配置され、ワイヤ接続部10は、センサ5、6、7をA/D変換器11に接続する。A/D変換器11は、その他端部すなわち出力側に二つの信号線12を有し、信号線12は、接点部14の対応する接点端子に接続される。接点部14は、機械的コネクタ15上に配置される(該コネクタは、測定ヘッド3に対するランス1の機械的接続部としての役割を果たす)。接点部14の後方端部には、二つの信号線16が配置され、信号線16は、ランス1を通って電源及び/又は分析装置17に接続される。
【0016】
図2に示すサブランスは、図1に示すサブランスと類似に構成される。これらは、A/D変換器11が一つの信号線12を介して接点部14にのみ接続され、かつ、一つだけの信号線16が接点部14からキャリア管(ランス)1を通って分析装置17及び/又は電源に与えられる点で異なる。電気回路を形成するのに必要な第2ラインは浴接点によって形成され、該浴接点は、溶融金属への浸漬後、溶融金属を介して、図2に象徴的に示す(溶融金属に対応する)信号線18によってグラウンド電位19に接続される。グラウンド電位19は分析装置17に接続される。
【0017】
図3に示すサブランスは図1と同様に構成されるが、図1とは異なり、接点部14がA/D変換器11とは反対側を向く端部で信号線16に電気的に接続される。信号線16は、ランス1を通って並びにランス1自体に対して与えられる。ランス1は、少なくとも部分的に金属から構成され、従って伝導(導線)性があり、更に、その非浸漬端部がグラウンド(アース)ライン20を介して分析装置17に接続される。
【0018】
いわゆるドロップイン(落とし入れ)センサ21としての本発明の実施形態は図4に示される。ドロップインセンサ21は、かなりの高さから溶融金属内へと通常自動的に落とされる。ドロップインセンサ21は、信号ケーブル22を介して接点部23に接続される。接点部23は、通常、ドロップポイントの近くに配置され、分析装置17及び/又は電源に接続される。複数のセンサを有するドロップインセンサ21の内部構成は、図1による測定ヘッドの構成に本質的に相当する。
【0019】
図5に示すドロップインセンサ21’も同様に構成されるが、これは、A/D変換器からから先導する一つだけの信号線22を有する。第2ラインすなわちグラウンドラインは、ドロップインセンサ21’を溶融金属へ浸漬した後(図6)、図2の構成と同様に溶融金属を介して実現される。この目的のため、ドロップインセンサ21’内において、A/D変換器は、そのセンサキャリアとは反対側(電気的接続部の反対側という意味)の端部で、グラウンド接点24並びに信号線22に接続される。グラウンド接点24は、ドロップインセンサ21’の材料を介して溶融金属に接続される。溶融金属はグラウンド電位にあり、そのため、溶融金属は、分析装置17のグラウンドライン25を介して分析装置17に接続される。この種の接触(コンタクト)は、そのため、図2に示す回路と類似する。図6において、ドロップインセンサ21’は、鋼溶融物の測定中にて示される(該溶融金属は図示しない)。鋼溶融物を通るグラウンドラインは参照番号26で示される。このグラウンドラインは、ドロップインセンサ21’を分析装置17に接続する。
【0020】
ドロップインセンサ21、21’の本体は鋼から成り、これは、溶融金属(例えば鋼溶融物)の表面にあるスラグの貫通を保証し、また、図5及び6に従う接触(コンタクト)を可能するためである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従うサブランスである。
【図2】本発明に従う更なるサブランスである。
【図3】サブランスの更なる実施形態である。
【図4】本発明に従うドロップインプローブである。
【図5】ドロップインプローブの第2実施形態である。
【図6】溶融物の測定中の図5に従うドロップインプローブである。
【符号の説明】
【0022】
1 ランス
2 キャリア管
3 測定ヘッド
4 センサキャリア
5 酸素センサ
6 温度センサ
7 浴接点
8 第1保護キャップ
9 付加保護キャップ
10 ワイヤ接続部
11 A/D変換器
12、16、18 信号線
14 接点部
15 機械的コネクタ
17 分析装置
19 グラウンド電位
20 グラウンドライン
21、21’ ドロップインセンサ
22 信号ケーブル
23 接点部
24 グラウンド接点
25、26 グラウンドライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属又は溶融金属の表面上にあるスラグ層の少なくとも一つのパラメータの測定のための装置であって、キャリア管を備え、キャリア管の一端部において、測定ヘッドが配置されて本体がキャリア管内に取り付けられ、A/D変換器が、測定ヘッド又はキャリア管内に配置され、A/D変換器は、測定ヘッド上又は測定ヘッド内に配置された少なくとも一つのセンサに接続され、測定ヘッドは接点部を有し、該接点部は、その接点端子を介してA/D変換器の信号出力部に電気的に接続され、接点部は、キャリア管に挿入されたランスに接続され、該ランス内にせいぜい二つの信号線が配置され、該信号線は、一端部がA/D変換器に接続され、他端部がコンピュータ又は分析装置に接続されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記接点部は、前記A/D変換器の電源接続部に電気的に接続されることを特徴とする請求項1に従う装置。
【請求項3】
デジタル信号の伝送のためのせいぜい二つの信号線が前記ランス内に配置され、該各信号線は、一端部が前記接点部の接点端子に接続され、他端部がコンピュータ又は分析装置に接続されることを特徴とする請求項1又は2に従う装置。
【請求項4】
前記ランス内に電源ラインが配置され、該ラインは、一端部が接点部の接点端子に接続され、他端部が電源に接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに従う装置。
【請求項5】
一端部が前記接点部の接点端子に接続され、かつ他端部がコンピュータ又は分析装置に接続される信号線が前記ランス内に配置され、該ランスは、前記接点部の一つの接点端子に電気的に接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに従う装置。
【請求項6】
前記ランス内に配置される信号線は、前記電源ラインとしても機能し、かつ電源に接続されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一つに従う装置。
【請求項7】
溶融金属又は溶融金属の表面上にあるスラグ層の少なくとも一つのパラメータの測定のための装置であって、測定ヘッドを備え、A/D変換器が測定ヘッド内に配置され、A/D変換器は、測定ヘッド上又は測定ヘッド内に配置された少なくとも一つのセンサに接続され、A/D変換器の信号出力部は、せいぜい二つの信号線に接続され、該信号線は、コンピュータ又は分析装置に接続されることを特徴とする装置。
【請求項8】
前記A/D変換器と前記コンピュータ又は分析装置との間、好ましくは前記信号線と前記コンピュータ又は分析装置との間に接点部が配置され、該接点部を通じてA/D変換器はコンピュータ又は分析装置に接続されることを特徴とする請求項7に従う装置。
【請求項9】
前記接点部は、前記A/D変換器の電源接続部に電気的に接続されることを特徴とする請求項8に従う装置。
【請求項10】
前記A/D変換器は、プリント回路基板上に配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに従う装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに従う装置を有する測定装置であって、溶融金属が溶融物容器内に収容され、該容器内に前記装置が少なくとも部分的に浸漬され、前記A/D変換器は、前記装置の浴接点に接続され、該溶融金属は、浴接点とコンピュータ又は分析装置との間の電気的接続の一部を成すことを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−199063(P2007−199063A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14012(P2007−14012)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】