説明

溶融金属浴の制御装置および溶融めっき金属帯の製造方法

【課題】溶融金属浴に浸漬された状態で溶融金属の流れや異物の動きを制御可能な制御装置及びこの装置を利用した溶融めっき金属帯の製造方法を提供する。
【解決手段】溶融金属中に浸漬される電場創生手段と磁場創生手段を備えるとともに、該電場創生手段と磁場創生手段は、それらにより創生される電場と磁場によりローレンツ力が発生するよう配置され、該ローレンツ力を溶融金属に作用させることで、(1)溶融金属の流れをローレンツ力で制御する、(2)異物の動きをローレンツ力と逆向きの力として異物に作用する電磁アルキメデス力で制御する、のいずれかまたは両方を行うようにした。また、溶融めっき金属帯の製造方法は、上記制御装置を溶融金属浴中に設置し、溶融金属の流れや異物の動きをめっき処理に適した状態に制御しつつ、金属帯に溶融めっきを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属浴において溶融金属の流れやドロスなどの異物の動きを制御するための制御装置およびこの制御装置を用いた溶融めっき金属帯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属帯を連続してめっきする方法として、金属帯を亜鉛、アルミニウムなどの溶融金属中に浸漬することで金属帯表面にめっきを施す溶融めっき法が知られている。
この溶融めっき法を、鋼帯に溶融亜鉛めっきを施す場合を例に説明すると、冷間圧延された鋼帯または熱間圧延された後に表面のスケールが除去された鋼帯を、無酸化性または還元性雰囲気に保たれた焼鈍炉に導入して、表面酸化膜の除去を兼ねた焼鈍処理を施した後、溶融亜鉛の温度とほぼ同程度の温度まで冷却し、引き続き鋼帯を溶融亜鉛浴(めっき槽)中に導入し、浴中に設けられたシンクロールに巻き付けて略V字形の経路で溶融亜鉛浴中を通板させ、その表面に溶融亜鉛を付着させる。そして、溶融亜鉛浴から引き出された直後の鋼帯の両面にガスワイピングノズルからワイピングガスを吹き付け、過剰の溶融金属を払拭してめっき付着量の調整を行う。
【0003】
溶融めっき法は、電気めっき法と比較した場合、めっき鋼帯を安価に製造できる、厚めっきの鋼帯を容易に製造できるなど多くの利点がある。なかでも溶融亜鉛めっきを施した後、めっき層を合金化処理して製造される合金化溶融亜鉛めっき鋼帯は、耐食性、溶接性および加工性に優れた特性を有するため、主に自動車用鋼帯として広く使用されているが、特に外装用鋼帯として使用される場合には、塗装後の高鮮映性も要求されるなど、品質に対する要求が益々厳しくなっている。さらに、昨今の旺盛なニーズに対応するため、増産も強く求められている。
【0004】
溶融亜鉛めっき鋼帯の製造プロセスにおいて、生産性向上のためにライン速度を上げると、溶融亜鉛浴から鋼帯が引き出される際に、鋼帯に付着して持ち上がる溶融亜鉛の持ち上げ量が多くなる。このとき、めっき付着量を増速前と同等にするには、ガスワイピングにより払拭する溶融亜鉛を増やす、すなわちワイピング能力を上げなければならない。ワイピング能力を上げるには、ワイピングのガス圧を高くするなどの必要が生じるが、ガス圧を高くするとスプラッシュと呼ばれる溶融亜鉛の飛沫が増大してしまう。スプラッシュが増大すると、これが鋼帯に付着して表面品質欠陥を生じたり、或いはガスワイピングノズルのスリットギャップに入り込んでノズル詰まりを誘発し、ワイピング不良によるスジ状の表面品質欠陥を生じたりする。このため、品質レベルを保ちながらの増速は容易でなく、溶融亜鉛めっき鋼帯製造プロセスにおける大きな課題となっている。
【0005】
この課題の根本は、増速に伴う亜鉛持ち上げ量の増大であり、従来、これを抑制するための提案が幾つかなされている。例えば、鋼帯が溶融亜鉛浴から引き上げられると溶融亜鉛の温度が低下し、これによる溶融亜鉛の粘度の増大が、溶融亜鉛の自然流下量を減少させているという観点から、溶融亜鉛浴面からの立ち上り部で鋼帯を加熱し、溶融亜鉛の流動性低下を抑制することで、ワイピング部への亜鉛持ち上げ量を低減させる技術が提案されている(特許文献1)。
また、交流磁場を用いたローレンツ力により、立ち上り部の溶融亜鉛浴面を下方に圧縮することで、見かけ上の重力を増加させ、亜鉛持ち上げ量を低減させる技術も提案されている(特許文献2)。
【0006】
一方、溶融亜鉛めっきのめっき槽内では、鋼帯から溶出するFeとZnとが反応して、FeZnを主成分とするドロスが生成され、このドロスがめっき槽内を浮遊し或いは槽底部に堆積する。めっき槽内では、鋼帯の通板およびシンクロールの回転に伴って溶融亜鉛浴が流動し、めっき槽底部に堆積したボトムドロスが浴中に巻き上げられて鋼帯に付着することがある。ボトムドロスが付着しためっき鋼帯をプレス加工すると、めっき鋼帯の表面に不均一部分が生じ、鮮映性が損なわれる。また、付着したドロスが金型に損傷を与えるおそれもある。ボトムドロスの巻き上げは、鋼帯の通板速度が大きいほど激しくなるため、さきに述べたように増産のための増速が求められる状況下では、特に大きな問題となる。
【0007】
ドロスの付着を防止する手段として、浴内にAlを添加し、下記(1)式の反応によりボトムドロスをFeAlに変えることによって浮上させ、トップドロスとして回収する方法がある。
2FeZn+5Al→FeAl+14Zn …(1)
しかし、このトップドロスが鋼帯に付着して品質欠陥を引き起こす場合もあるため根本的な解決にはならない。さらに、Alは合金化を抑制する働きがあるため、合金化溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する際に、合金化不良を引き起こすという問題もある。
【0008】
溶融亜鉛に比べ、ボトムドロスは比重が大きいので最終的には底部に沈降し、トップドロスは比重が小さいので浴面に浮上するが、粒径が小さいものは浴中に浮遊している時間も長く、その際、鋼帯に付着するリスクが高まる。そこで、従来、ドロスの浮遊時間を短くしたり、ドロスを鋼帯に近づけないようにするための様々な提案がなされている。
例えば、溶融亜鉛浴内に気泡を発生させ、この気泡により浴中の浮遊ドロスを捕捉し、速やかに浴面まで浮上させて除去する技術が提案されている(特許文献3)。また、溶融亜鉛浴からの鋼帯立上り部の浴上に移動磁場を発生させ、この移動磁場による電磁力を用いて浴面に浮遊するドロスを鋼帯の周辺から除去する技術が提案されている(特許文献4)。さらに、溶融亜鉛浴からの鋼帯立上り部の浴中にメタル流(溶融亜鉛流)を発生させ、浴中の浮遊ドロスが鋼帯に付着するのを防止する技術も提案されている(特許文献5)。
【0009】
【特許文献1】特開昭57−155357号公報
【特許文献2】特開平4−254564号公報
【特許文献3】特開平5−320846号公報
【特許文献4】特開平11−6046号公報
【特許文献5】特開2004−169068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、亜鉛持ち上げ量を抑制するための上記従来技術には、以下のような問題がある。
まず、特許文献1の方法は、めっき表層部を酸化させてめっき品質を劣化させたり、亜鉛と鉄との合金化をいたずらに促進させる恐れがある。また、めっき表層部の酸化を防止するために、還元炉式の加熱装置を用いるなどの工夫をした場合には、加熱装置が大型化するため溶融亜鉛浴面とガスワイピングノズルとの間に設置できない可能性もある。また、仮に設置できたとしても、ガスワイピングノズルによって払拭された溶融亜鉛が加熱装置に降り積もることになり、装置を故障させたり、或いは降り積もった亜鉛が鋼帯に再付着してめっき表面欠陥になる懸念がある。
【0011】
特許文献2の方法は、上記同様、払拭された溶融亜鉛が磁場印加装置に降り積もることによる問題があるとともに、トップドロス(亜鉛とアルミニウムとの金属間化合物または酸化亜鉛)が生成すると十分に機能しないという問題もある。さらに、この方法では、交流磁場によって発生する誘導電流を電場として用いるので、溶融亜鉛浴の表層にしか電流が流れないこと、大電流が流せないこと、磁場と電場を独立に調整できないことなどの問題もある。
亜鉛持ち上げ量を低減するには、鋼帯が溶融亜鉛から上方に引き上げられる際に、浴中の鋼帯近傍に発生する溶融亜鉛の随伴流を抑制すれば良いことが知られている。これをガスワイピングノズル直下や溶融亜鉛浴面でない場所にコンパクトな装置を設置することで実現できれば望ましい。
【0012】
また、溶融亜鉛浴中に発生するドロスに対処するための上記従来技術には、以下のような問題がある。
まず、特許文献3の方法は、気泡により浴中の浮遊ドロスをすべて捕捉することは不可能であり、仮に捕捉できたとしても気泡の挙動を制御することができないので、鋼帯に付着してしまう懸念がある。
特許文献4の方法は、浴面の浮遊ドロス(トップドロス)が鋼帯に近づかないようにするには効果的であるが、浴中には電磁力が十分に作用しないため、浴中の浮遊ドロスの付着防止には無力である。
特許文献5の方法は、浴中の浮遊ドロスに効果がある点では優れているが、鋼帯に対するメタル流の角度や、メタル流の速度勾配、或いは鋼帯通板速度とメタル流速との関係によっては効果が無くなる場合がある。その場合には、単に浮遊ドロスが鋼帯付近を流れているに過ぎず、浮遊ドロスの付着防止には効果がない。
【0013】
したがって本発明の目的は、溶融めっき浴などのような溶融金属浴中に浸漬された状態で、溶融金属の流れやドロスなどの異物の動きを適切に制御することができる制御装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような制御装置を用いて溶融めっき浴中の溶融金属の流れや異物の動きを制御しつつ溶融めっき金属帯を製造する方法であって、例えば、金属帯に随伴する溶融金属流を制動し、金属帯が溶融金属浴から引き出される際の溶融金属の持ち上げ量を抑制したり、或いは溶融金属浴中の異物を金属帯から遠ざけ、金属帯に付着しないようにすることができる溶融めっき金属帯の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、溶融亜鉛を含めた多くの溶融金属は導電体であることに着目し、溶融金属中に電場創生手段と磁場創生手段を配置し、それらにより創生される電場と磁場とによりローレンツ力を発生させ、このローレンツ力を溶融金属に作用させることにより、溶融金属の流れを制御(溶融金属流の制動または加速、溶融金属の流動化など)できること、また、ドロスなどの異物は溶融金属に比べて電気伝導度が遥かに低いことから、異物には溶融金属が受けるローレンツ力とは逆方向に電磁アルキメデス力が働くので、この電磁アルキメデス力により異物の動きを制御できることを見出した。このような方式によれば、溶融金属中に設置されるコンパクトな装置により溶融金属の流れやドロスなどの異物の動きを制御することができ、例えば、溶融めっき金属帯の製造において、金属帯に随伴する溶融金属流を制動し、金属帯が溶融金属浴から引き出される際の溶融金属の持ち上げ量を適切に抑制・制御したり、或いは溶融金属浴中のドロスなどの異物を金属帯から遠ざけ、金属帯に付着させないようにすることができることが判った。
【0015】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]溶融金属浴中に浸漬される電場創生手段と磁場創生手段を備えるとともに、該電場創生手段と磁場創生手段は、それらにより創生される電場と磁場とによりローレンツ力が発生するよう配置され、該ローレンツ力を溶融金属に作用させることにより、下記(1)または/および(2)の制御を行うように構成したことを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
(1)溶融金属の流れをローレンツ力により制御する。
(2)溶融金属中に存在し、該溶融金属よりも電気伝導度が低い異物の動きを、ローレンツ力と逆向きの力として異物に作用する電磁アルキメデス力により制御する。
[2]上記[1]の制御装置において、電場創生手段が溶融金属中に電流を流すための対向した1対の電極を備えることを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
[3]上記[2]の制御装置において、電場創生手段は、溶融金属中に流す電流量の調整が可能であり、該電流量の調整により溶融金属に作用するローレンツ力の大きさを調整可能としたことを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
【0016】
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの制御装置において、磁場創生手段が永久磁石で構成されることを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
[5]上記[1]〜[3]のいずれかの制御装置において、磁場創生手段が電磁石で構成されることを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
[6]上記[5]の制御装置において、磁場創生手段は、電磁石に流す電流量の調整が可能であり、該電流量の調整により溶融金属に作用するローレンツ力の大きさを調整可能としたことを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの制御装置において、電場創生手段および磁場創生手段を支持するための支持体を備え、該支持体内側の空部を貫通する方向にローレンツ力が作用するように、電場創生手段と磁場創生手段を支持体に設けることを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
【0017】
[8]上記[7]の制御装置において、支持体が枠体からなり、該枠体の対向する部分(p1),(p2)に電場創生手段を構成する1対の電極を設けるとともに、枠体の対向する部分であって且つ前記部分(p1),(p2)と90°の位置関係にある部分(p3),(p4)に、磁場創生手段を構成する1対の磁石を異なる磁極が対向するようにして設け、前記1対の電極間で電場を創生するとともに、前記1対の磁石間で、前記電場と直交する磁場を創生するようにしたことを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
[9]連続通板する金属帯が溶融金属浴に浸漬されることで溶融めっきが行われる溶融めっき金属帯の製造方法において、上記[1]〜[8]のいずれかの溶融金属浴の制御装置(X)を溶融金属浴中の1箇所または2箇所以上に設置し、該制御装置(X)により溶融金属の流れまたは/および異物の動きを制御しつつ、金属帯に溶融めっきを行うことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0018】
[10]上記[9]の製造方法において、上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、浴中で上方に方向転換されて移動する金属帯に随伴する溶融金属流を制動することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
[11]上記[9]または[10]の製造方法において、上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、溶融金属浴の底部方向に流れる溶融金属流を制動することを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【0019】
[12]上記[9]〜[11]のいずれかの製造方法において、上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、溶融金属浴中の異物に、該異物を金属帯から遠ざける方向に電磁アルキメデス力を作用させることを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
[13]上記[9]〜[12]のいずれかの製造方法において、上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、溶融金属浴中の異物に、溶融金属浴内の異物集積部方向に電磁アルキメデス力を作用させることを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明による溶融金属浴の制御装置によれば、溶融金属中に設置されるコンパクトな手段により、溶融金属の流れやドロスなどの異物の動きを自在に制御(溶融金属の流れの制御としては、例えば、溶融金属流の制動または加速、溶融金属の流動化など。異物の動きの制御としては、例えば、異物の金属帯側への接近抑制、異物の特定の場所への移動・集積など)することができる。
また、本発明による溶融めっき金属帯の製造方法によれば、そのような制御装置を用いて、例えば、(a)金属帯に随伴する溶融金属流を制動し、金属帯が溶融金属浴から引き出される際の溶融金属の持ち上げ量を適切に抑制・制御できる、(b)溶融金属浴の底部方向に流れる溶融金属流を制動し、溶融金属浴の底部またはその近傍に存在する異物の巻き上げを抑制できる、(c)溶融金属浴中のドロスなどの異物を金属帯側に接近させず(異物を金属帯から遠ざける)、金属帯に付着しないようにできる、(d)溶融金属浴中のドロスなどの異物を溶融金属浴内の異物集積部に移動・集積させることができるなど、溶融金属浴内の溶融金属の流れやドロスなどの異物の動きを溶融めっき処理に適した状態に適切に制御することができ、これにより高品質の溶融めっき金属帯を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の溶融金属浴の制御装置は、溶融金属中に浸漬される電場創生(形成)手段Aと磁場創生(形成)手段Bを備えるとともに、これら電場創生手段Aと磁場創生手段Bは、それらにより創生(形成)される電場と磁場とによりローレンツ力が発生するよう配置され、このローレンツ力を溶融金属に作用させることにより、下記(1)または/および(2)の制御を行うように構成したものである。
(1)溶融金属の流れをローレンツ力により制御(制動または加速)する。
(2)溶融金属中に存在し、該溶融金属よりも電気伝導度が低い異物の動きを、ローレンツ力と逆向きの力として異物に作用する電磁アルキメデス力により制御する。
【0022】
前記電場創生手段A(電場創生部)は、通常、溶融金属中に電流を流すために対向して配置される1対の電極を備え、この電極間に電流が流されることにより電場が形成される。また、前記磁場創生手段B(磁場創生部)は永久磁石または電磁石で構成され、前記電流の流れと直交する方向に磁場を形成することで、ローレンツ力を発生させる。すなわち、電場と磁場を直交するように創生すると、フレミング左手の法則に従いそれぞれと直交する方向にローレンツ力が発生する。このローレンツ力を溶融金属に作用させることにより、溶融金属の流れを制御することができる。
【0023】
また、ドロスなどの異物は溶融金属に比べて電気伝導度が遥かに低いことから、上記のようにローレンツ力を発生させると、溶融金属に較べて異物に対するローレンツ力は遙かに小さくなる。このため異物には溶融金属が受けるローレンツ力とは逆方向に相対的な力、すなわち電磁アルキメデス力が働くことになり、この力を利用して溶融金属中のドロスなどの異物の動きを制御することができる。ここで、溶融金属中に存在する異物は、ドロスが主たるものである。
【0024】
前記電場創生手段Aを構成する1対の電極(陽極、陰極)は、各電極部が複数の電極からなるものであってもよい。一般に溶融金属は導電体であることが多いので、電極を設けて電圧をかければ電流が流れ、電場を創生することができる。基本的に溶融金属中の任意の場所に電場を創生することが可能となる。溶融亜鉛など溶融金属の種類によっては、その中に浸漬された金属が溶出してしまう恐れがあるが、例えば電極に金めっきを施すなどの工夫をすれば特に問題はない。
前記電場創生手段Aは、溶融金属中に流す電流量を調整可能とすることが好ましい。電極間に流れる電流量を変化させると、電場の強さを調整することができる。ローレンツ力の大きさは電場の強さに比例するので、溶融金属に作用させるローレンツ力の大きさを調整することができ、溶融金属の流れの制御をより適切に行うことが可能となる。また、そのようなローレンツ力の大きさを調整することを通じて、異物に働く電磁アルキメデス力の大きさを調整できるので、異物の動きの制御もより適切に行うことが可能となる。
【0025】
前記磁場創生手段Bは永久磁石や電磁石で構成されるが、通常、1対の磁石を異なる磁極(N極およびS極)が対向するように配置し、この磁石(磁極)間で磁場を創生する。
磁場創生手段Bを永久磁石で構成する場合、上記のように1対の永久磁石を異なる磁極が対向するように配置すれば、特にコンパクトな装置構成で磁場を創生することができる。また、溶融亜鉛浴は通常460℃程度と高温であるが、例えば、アルニコ磁石などのような耐熱温度が500℃以上の永久磁石を用いれば問題はない。
【0026】
一方、磁場創生手段Bを電磁石で構成する場合、例えば、コイルにニッケル線などの耐熱電線を用いれば、溶融亜鉛浴中の温度環境下でも機能する電磁石を得ることができ、これをセラミックスなどで適切にケーシングすれば、使用上は特に問題はない。
また、磁場創生手段Bを電磁石で構成する場合には、電磁石に流す電流量を調整可能とすることが好ましい。電磁石に流す電流を変化させると、磁場の強さを調整することができる。ローレンツ力の大きさは磁場の強さにも比例するので、溶融金属に作用させるローレンツ力の大きさを調整することができ、溶融金属の流れの制御をより適切に行うことが可能となるのである。また、そのようなローレンツ力の大きさを調整することを通じて、異物に働く電磁アルキメデス力の大きさを調整できるので、異物の動きの制御もより適切に行うことが可能となる。
【0027】
図1は、本発明の溶融金属浴の制御装置の一実施形態を模式的に示すもので、この実施形態の装置は、電場創生手段Aおよび磁場創生手段Bを支持するための支持体を備え、この支持体内側の空部を貫通する方向にローレンツ力が発生するように、電場創生手段Aと磁場創生手段Bを支持体に設けたものである。
本実施形態では、前記支持体は、内側に空部100(窓孔)を有する枠体1(フレーム構造体)で構成されている。この枠体1は長方形状であり、この長方形状の枠体1の対向する2辺(部分p1,p2)に電場創生手段Aを構成する1対の電極2a,2b(陽極および陰極)を設けるとともに、他の対向する2辺(前記部分p1,p2と90°の位置関係にある部分p3,p4)に、磁場創生手段Bを構成する1対の磁石3a,3bを異なる磁極(N極およびS極)が対向するようにして設け、前記1対の電極2a,2b間で電場を創生するとともに、前記1対の磁石3a,3b間で、前記電場と直交する磁場を創生するようにしてある。
【0028】
前記電極2a,2bは、それぞれ1つの大きな電極でも、複数の小さな電極を並べたものでもよい。また、前記磁石3a,3bは永久磁石、電磁石のいずれで構成してもよく、各磁石3a,3bは1つの大きな磁石でも、または複数の小さな磁石を並べたものでもよい。
前記電極2a,2b(陽極および陰極)と磁石3a,3b(N極およびS極)は、これらが創生する電場と磁場が直交するように配置されているため、フレミング左手の法則に従いそれぞれと直交する方向、すなわち、枠体1の内側の空部100(窓孔)を貫通する方向にローレンツ力が発生し、このローレンツ力で溶融金属の流れを制御(溶融金属流の制動または加速、溶融金属の流動化など)できる。また、溶融金属にローレンツ力が作用することにより、ドロスなどの異物には溶融金属が受けるローレンツ力とは逆方向に電磁アルキメデス力が働くので、この電磁アルキメデス力により異物の動きを制御(異物の金属帯側への接近抑制など)できる。
【0029】
このような制御装置を溶融金属中で使用する場合、制御(例えば、制動)しようとする溶融金属流が前記空部100(窓孔)内を流れるような位置に装置を配置し、或いは制御しようとする異物が前記空部100(窓孔)内を通るような位置に装置を配置すれば、ローレンツ力を最も効率的に制御対象である溶融金属流に作用させ、或いは電磁アルキメデス力を最も効率的に制御対象である異物に作用させることができる。
また、必要に応じて、電場創生手段Aの電極2a,2b間に通電させる電流量を変化させること、或いは磁場創生手段Bが電磁石の場合に電磁石に通電させる電流量を変化させることにより、ローレンツ力や電磁アルキメデス力の大きさを変化させ、溶融金属や異物に作用する力を調整することができる。
【0030】
本発明の溶融金属浴の制御装置は、図1の形態以外に種々の形態をとることができる。例えば、枠体1を備えた装置の場合には、枠体1は円形状、楕円形状、任意の多角形状などに構成できる。また、電場創生手段Aや磁場創生手段Bは、枠体1以外の任意の支持体(構造体)で溶融金属中に支持することができる。
また、本発明の溶融金属浴の制御装置は、以下に説明するような溶融めっき金属帯の製造方法の他、溶融金属を扱う種々の方法、設備に適用することができる。
【0031】
次に、以上のような本発明の溶融金属浴の制御装置Xを用いた溶融めっき金属帯の製造方法について説明する。
この溶融めっき金属帯の製造方法は、連続通板中の金属帯が溶融金属浴に浸漬されることで溶融めっきが行われる溶融めっき金属帯の製造方法であり、制御装置Xを溶融金属浴中の1箇所または2箇所以上に設置し、この制御装置Xにより溶融金属の流れまたは/および異物の動きを制御しつつ、金属帯に溶融めっきを行う。溶融金属の流れの制御形態としては、さきに述べた理由から、金属帯に随伴する溶融金属流を制動し、金属帯が溶融金属浴から引き出される際の溶融金属の持ち上げ量を抑制する形態が最も有用である。また、溶融金属浴の底部方向に流れる溶融金属流を制動し、溶融金属浴の底部またはその近傍に存在するドロスなどの異物の巻き上げを抑制する形態も有用である。さらに、異物の動きの制御形態としては、さきに述べた理由から、溶融金属浴中のドロスなどの異物を金属帯から遠ざけ、金属帯に付着しないようにする形態が最も有用である。また、溶融金属浴中のドロスなどの異物を溶融金属浴内の異物集積部に移動・集積させる形態も有用である。
【0032】
ここで、一般に行われる金属帯の溶融めっき工程では、上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出されることにより、金属帯に溶融めっきが施される。したがって、制御装置Xを利用する本発明の溶融めっき金属帯の製造方法では、下記(イ)〜(ニ)のうちの1つ以上の作用が実現されるものであることが好ましい。
(イ)制御装置Xが発生させるローレンツ力により、浴中で上方に方向転換されて移動する金属帯に随伴する溶融金属流を制動し、金属帯が溶融金属浴から引き出される際の溶融金属の持ち上げ量を抑制する。
(ロ)制御装置Xが発生させるローレンツ力により、溶融金属浴の底部方向に流れる溶融金属流を制動し、溶融金属浴の底部またはその近傍に存在する異物(例えば、ボトムドロス)の巻き上げを抑制する。
(ハ)制御装置Xが発生させるローレンツ力により、溶融金属浴中の異物に、該異物を金属帯から遠ざける方向に電磁アルキメデス力を作用させ、異物を金属帯から遠ざける。
(ニ)制御装置Xが発生させるローレンツ力により、溶融金属浴中の異物に、溶融金属浴内の異物集積部方向に電磁アルキメデス力を作用させ、異物を異物集積部に移動・集積させる。
【0033】
以下、溶融亜鉛めっき鋼帯を製造する場合を例に、本発明の溶融めっき金属帯の製造方法を説明する。以下に説明する図2〜図9において、4は溶融亜鉛浴(めっき浴)、5は鋼帯、6はシンクロール、7はガスワイピングノズル、8は溶融亜鉛浴を保持するめっき槽である。
図2は、溶融亜鉛浴(めっき浴)中での溶融亜鉛の流動状態を示している。上方から溶融亜鉛浴4に進入した鋼帯5は、シンクロール6によって上方(鉛直方向)に方向転換された後、溶融亜鉛浴4から引き上げられるが、シンクロール6で方向転換されて上方に移動する鋼帯5の近傍には、鋼帯に随伴して上昇する溶融金属流f1(随伴流)が存在する。この随伴流は溶融亜鉛の持ち上げ量を左右する重要な流れであり、この流れが大きいと持ち上げ量が増えてしまう。
【0034】
また、前記溶融金属流f1(随伴流)は、溶融亜鉛浴4の浴面付近で鋼帯5から離れる方向(図面に向かって右方向)に向きを変え、さらに前方の壁面80に衝突した後、溶融亜鉛浴4の底部方向に向かう溶融金属流f2(下降流)となる。また、シンクロール6の回転により、シンクロール6の鋼帯入側(図面に向かって左側)にも溶融亜鉛浴4の底部方向に向かう溶融金属流f3(下降流)が発生する。これらの溶融金属流f2,f3(下降流)は、溶融亜鉛浴4の底部またはその近傍に存在する異物、特に底部に堆積するボトムドロスと言われる鉄と亜鉛の金属間化合物を巻き上げてしまう原因となり、特にライン速度が大きいほど、下降流も大きくなり、ボトムドロス巻き上げ量も増加する傾向にある。巻き上げられたボトムドロスは、鋼帯5に付着して表面品質欠陥(ドロス欠陥)となることがあるので、高品質を保ちながら増速を図るには、この下降流の抑制も重要となる。
【0035】
図3は、上記(イ)の作用の実現を主目的とする製造方法の一実施形態を示すものであり、シンクロール6によって上方(鉛直方向)に方向転換された後、溶融亜鉛浴4から引き上げられる直前の鋼帯部分50(以下、「浴中立上り部50」という)の表裏両側であって、且つ浴面直下の位置に、図1に示すような制御装置Xを配置し、ローレンツ力により鋼帯5に随伴する溶融金属流f1を制動し、鋼帯5が溶融亜鉛浴4から引き出される際の溶融亜鉛の持ち上げ量を抑制するようにしたものである。
前記各制御装置Xは、浴中立上り部50に向かって斜め下方にローレンツ力Lが発生するように斜めに配置されている。このような形態でローレンツ力Lが発生することにより、鋼帯5から多少離れたところに配置された制御装置Xからでも、溶融金属流f1(随伴流)を制動することができ、鋼帯5による亜鉛持ち上げ量の低減が可能となる。また、制御装置Xの電極2a,2b間に流す電流量を調整するなどしてローレンツ力の大きさを調整すれば、例えば、ライン速度に応じて亜鉛持ち上げ量を適切な量に制御することもできる。なお、制御装置Xは、1つの装置で鋼帯5の全幅をカバーする幅を有するものでもよいし、複数の装置を板幅方向に配置したものでもよい。
【0036】
図4は、上記(ロ)の作用の実現を主目的とする製造方法の一実施形態を示すものであり、溶融亜鉛浴4の底部方向に流れる溶融金属流f2,f3が生じている部分に、図1に示すような制御装置Xを配置して、ローレンツ力により溶融金属流f2,f3を制動し、溶融金属浴の底部またはその近傍に存在する異物、特に底部に堆積するボトムドロスの巻き上げを抑制するようにしたものである。前記制御装置Xは、前記浴中立上り部50が対向するめっき槽8の壁面80の近傍位置と、シンククロール6の鋼帯入側の下方位置に、それぞれ上向きにローレンツ力Lが発生するように配置され、各位置における溶融金属流f2,f3(下降流)を制動するようにしている。このような溶融金属流f2,f3の制動により、ボトムドロスなどの巻き上げ量の低減が可能となる。なお、制御装置Xが発生するローレンツ力の調整や、装置の鋼帯幅方向での配置については、図3で述べたと同様である。
図5は、図3と図4で各設置された制御装置Xを全て配置した実施形態であり、このような形態で制御装置Xを設置することで、品質も生産性も高い溶融亜鉛めっき鋼帯の製造が可能となる。
【0037】
図6は、上記(ハ)の作用の実現を主目的とする製造方法の一実施形態を示すものであり、浴中立上り部50の表裏両側であって、且つ浴面から所定の深さ位置に、図1に示すような制御装置Xを配置し、電磁アルキメデス力により溶融亜鉛浴4中のドロスなどの異物(以下、便宜上「ドロス」という)を鋼帯5から遠ざけ、鋼帯5に付着しないようにしたものである。
前記各制御装置Xは、浴中立上り部50に向かって斜め下方にローレンツ力Lが発生し、したがってドロスに働く電磁アルキメデス力Eが反鋼帯方向(鋼帯5から遠ざかる方向)の斜め上方に向かって作用するように配置されている。この実施形態は上記(ハ)の作用の実現を主目的としているため、図3の実施形態よりも浴面下の深い位置に制御装置Xを配置し、且つローレンツ力Lの作用方向の浴中立上り部50に対する傾きが図3の実施形態よりも大きい。この実施形態では、ドロスに電磁アルキメデス力Eが働くことにより鋼帯5への異物の接近が抑えられ、鋼帯5へのドロス付着が防止される。なお、制御装置Xが発生するローレンツ力の調整や、装置の鋼帯幅方向での配置については、図3で述べたと同様である。
【0038】
また、本実施形態では、浴中立上り部50に向かって斜め下方にローレンツ力Lが発生するので、副次的な作用として、図3の実施形態と同様に鋼帯5に随伴する溶融金属流(図3の溶融金属流f1)が制動され、鋼帯5が溶融亜鉛浴4から引き出される際の溶融亜鉛の持ち上げ量が抑制される。
なお、本実施形態では、電磁アルキメデス力によってドロスを鋼帯5の面外方向に遠ざけるよう制御装置Xを設置しているが、鋼帯5の面内方向(鋼帯面に沿った方向)にドロスを遠ざけるように、すなわち板幅方向両エッジから外側方向にドロスを遠ざけるように、その方向に向かって電磁アルキメデス力を作用させてもよい。
【0039】
図7は、上記(ニ)の作用の実現を主目的とする製造方法の一実施形態を示すものであり、溶融金属浴内の特定の場所に異物集積部Sa(集積場所)を設定し、この異物集積部方向にドロスへの電磁アルキメデス力が作用するような位置に、図1に示すような制御装置Xを配置し、電磁アルキメデス力によりドロスを異物集積部Saに移動・集積させるようにしたものである。本実施形態では、めっき槽底部の隅部に異物集積部Saを設定し、各異物集積部Saにおいて、槽底部方向(鉛直下方)にドロスへの電磁アルキメデス力が作用するような位置と、槽側壁方向(水平方向)にドロスへの電磁アルキメデス力が作用するような位置に、それぞれ制御装置Xを配置してある。なお、制御装置Xが発生するローレンツ力の調整などについては、図3で述べたと同様である。
【0040】
なお、本実施形態では、めっき槽底部の特定の場所(隅部)を異物集積部Saとして設定しただけであるが、異物集積部は、ドロスを集積または集積・保持するための手段や集積したドロスを回収するための手段などを備えたものであってもよい。
また、本実施形態では、槽底部方向(鉛直下方)に異物への電磁アルキメデス力が作用するような位置に配置された制御装置Xについては、上向きのローレンツ力Lが発生するので、副次的な作用として、図4の実施形態と同様に下降する溶融金属流(図4の溶融金属流f2)が制動され、底部に堆積するボトムドロスの巻き上げが抑制される。
【0041】
図8は、上記(ニ)の作用の実現を主目的とする製造方法の他の実施形態を示すものであり、めっき槽底部に槽底面81との間に適当な間隔を設けてすのこ状部材9を配置し、このすのこ状部材9と槽底面との間をドロスを集積・静置するための異物集積部Sbに設定している。そして、すのこ状部材9を構成するすのこ板90間に、この異物集積部方向(鉛直下向き)にドロスへの電磁アルキメデス力が作用するよう、図1に示すような制御装置Xを配置し、ドロスを異物集積部Sbに移動・集積させるようにしてある。各すのこ板90は、上面にドロスが堆積しないようにするため、断面山形状に構成されている。なお、制御装置Xが発生するローレンツ力の調整などについては、図3で述べたと同様である。
また、本実施形態でも、上向きのローレンツ力Lが発生するので、副次的な作用として、図4の実施形態と同様に下降する溶融金属流(図4の溶融金属流f2)が制動され、底部に堆積するボトムドロスの巻き上げが抑制される。
【0042】
図9は、図6と図7で各設置された制御装置Xを全て配置した実施形態であり、このような形態で制御装置Xを設置することで、鋼帯へのドロス付着をより適切に防止でき、品質も生産性も高い溶融亜鉛めっき鋼帯の製造が可能となる。
以上述べた本発明の溶融めっき金属帯の製造方法は、溶融亜鉛めっき鋼帯の他、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼帯、アルミニウムめっき鋼帯など、任意の溶融めっき金属帯の製造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の溶融金属浴の制御装置の一実施形態を模式的に示す説明図
【図2】溶融亜鉛浴(めっき浴)中での溶融亜鉛の流動状態を示す説明図
【図3】本発明の溶融めっき金属帯の製造方法の一実施形態を示す説明図
【図4】本発明の溶融めっき金属帯の製造方法の他の実施形態を示す説明図
【図5】本発明の溶融めっき金属帯の製造方法の他の実施形態を示す説明図
【図6】本発明の溶融めっき金属帯の製造方法の他の実施形態を示す説明図
【図7】本発明の溶融めっき金属帯の製造方法の他の実施形態を示す説明図
【図8】本発明の溶融めっき金属帯の製造方法の他の実施形態を示す説明図
【図9】本発明の溶融めっき金属帯の製造方法の他の実施形態を示す説明図
【符号の説明】
【0044】
1 枠体
2a,2b 電極
3a,3b 磁石
4 溶融亜鉛浴
5 鋼帯
6 シンクロール
7 ガスワイピングノズル
8 めっき槽
9 すのこ状部材
50 浴中立上り部
80 壁面
81 槽底面
90 すのこ板
100 空部
A 電場創生手段
B 磁場創生手段
X 制御装置
p1,p2,p3,p4 部分
f1,f2,f3 溶融金属流
Sa,Sb 異物集積部
L ローレンツ力
E 電磁アルキメデス力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属浴中に浸漬される電場創生手段と磁場創生手段を備えるとともに、該電場創生手段と磁場創生手段は、それらにより創生される電場と磁場とによりローレンツ力が発生するよう配置され、該ローレンツ力を溶融金属に作用させることにより、下記(1)または/および(2)の制御を行うように構成したことを特徴とする溶融金属浴の制御装置。
(1)溶融金属の流れをローレンツ力により制御する。
(2)溶融金属中に存在し、該溶融金属よりも電気伝導度が低い異物の動きを、ローレンツ力と逆向きの力として異物に作用する電磁アルキメデス力により制御する。
【請求項2】
電場創生手段が溶融金属中に電流を流すための対向した1対の電極を備えることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属浴の制御装置。
【請求項3】
電場創生手段は、溶融金属中に流す電流量の調整が可能であり、該電流量の調整により溶融金属に作用するローレンツ力の大きさを調整可能としたことを特徴とする請求項2に記載の溶融金属浴の制御装置。
【請求項4】
磁場創生手段が永久磁石で構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融金属浴の制御装置。
【請求項5】
磁場創生手段が電磁石で構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融金属浴の制御装置。
【請求項6】
磁場創生手段は、電磁石に流す電流量の調整が可能であり、該電流量の調整により溶融金属に作用するローレンツ力の大きさを調整可能としたことを特徴とする請求項5に記載の溶融金属浴の制御装置。
【請求項7】
電場創生手段および磁場創生手段を支持するための支持体を備え、該支持体内側の空部を貫通する方向にローレンツ力が作用するように、電場創生手段と磁場創生手段を支持体に設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶融金属浴の制御装置。
【請求項8】
支持体が枠体からなり、該枠体の対向する部分(p1),(p2)に電場創生手段を構成する1対の電極を設けるとともに、枠体の対向する部分であって且つ前記部分(p1),(p2)と90°の位置関係にある部分(p3),(p4)に、磁場創生手段を構成する1対の磁石を異なる磁極が対向するようにして設け、前記1対の電極間で電場を創生するとともに、前記1対の磁石間で、前記電場と直交する磁場を創生するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の溶融金属浴の制御装置。
【請求項9】
連続通板する金属帯が溶融金属浴に浸漬されることで溶融めっきが行われる溶融めっき金属帯の製造方法において、
請求項1〜8のいずれかに記載の溶融金属浴の制御装置(X)を溶融金属浴中の1箇所または2箇所以上に設置し、該制御装置(X)により溶融金属の流れまたは/および異物の動きを制御しつつ、金属帯に溶融めっきを行うことを特徴とする溶融めっき金属帯の製造方法。
【請求項10】
上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、
制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、浴中で上方に方向転換されて移動する金属帯に随伴する溶融金属流を制動することを特徴とする請求項9に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【請求項11】
上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、
制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、溶融金属浴の底部方向に流れる溶融金属流を制動することを特徴とする請求項9または10に記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【請求項12】
上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、
制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、溶融金属浴中の異物に、該異物を金属帯から遠ざける方向に電磁アルキメデス力を作用させることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。
【請求項13】
上方から溶融金属浴に進入した金属帯が、浴中で上方に方向転換された後、溶融金属浴から引き出される溶融めっき金属帯の製造方法であって、
制御装置(X)が発生させるローレンツ力により、溶融金属浴中の異物に、溶融金属浴内の異物集積部方向に電磁アルキメデス力を作用させることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の溶融めっき金属帯の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−13705(P2010−13705A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175160(P2008−175160)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】