説明

溶融鋼もしくは溶融鋼におけるパラメータを測定するかまたは試料を採取するための装置

【課題】特にスラグ試料を採取するためのサンプラを改善して、正確な分析を可能にする品質的に高価値の試料を提供する。
【解決手段】溶融鋼もしくは溶融鋼におけるパラメータを測定するかまたは試料を採取しならびに溶融鋼もしくは溶融鋼上に位置しているスラグから試料を採取するための装置が、浸漬端部と側方の周面とを有する支持管1を備えており、該支持管1の浸漬端部に、浸漬端部と側方の周面とを有する測定ヘッド2が配置されており、支持管1の側方の周面に流入開口4が配置されており、該流入開口4が、流入通路を介して、支持管1の内部に配置された前室13に開口しており、該前室13が、測定ヘッド2の浸漬端部と反対の側の端部に入口開口15を有しており、該入口開口15が、前室13の、浸漬端部と反対の側で前記装置の内部に配置されたスラグ試料室16に開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融鋼もしくは溶融鋼におけるパラメータを測定するかまたは試料を採取しならびに溶融鋼もしくは溶融鋼上に位置しているスラグから試料を採取するための装置であって、該装置が、浸漬端部と側方の周面とを有する支持管を備えており、該支持管の浸漬端部に、浸漬端部と側方の周面とを有する測定ヘッドが配置されており、該測定ヘッドの浸漬端部に、少なくとも1つのセンサが配置されているかまたは前記装置の内部に存在する試料室に対する少なくとも1つの流入開口が配置されている装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、たとえばドイツ連邦共和国特許第19758595号明細書に基づき公知である。この公知の明細書には、熱電対と試料室に対する流入開口とが端面側に配置された装置が記載されている。試料室は、スラグ試料を採取するために適している。さらに、公知の装置の端面側には、溶融金属試料を採取するために適した試料室に対する別の入口が配置されている。前述した刊行物に基づき公知の別の装置は、2つの側方の流入開口を備えたサンプラ(試料採取器)を有している。
【0003】
類似のサンプラが、ドイツ連邦共和国特許第19752743号明細書に基づき公知である。さらに、スラグ試料のためのサンプラが、欧州特許第1183513号明細書に基づき公知である。これらの公知のサンプラは、すでにドイツ連邦共和国特許第19758595号明細書に基づき公知のサンプラにほぼ対応している。
【0004】
スラグと別の非金属包含物とが液状の金属から沈降する溶融金属のためのサンプラが、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第4129930号明細書または米国特許第5415052号明細書または米国特許第5515739号明細書に基づき公知である。これらの公知の明細書では、それぞれ溶融金属に対する試料室に前置された前室内に不純物が集められる。この不純物は、金属試料の品質を改善するために、試料室内への溶融金属の流入時に溶融金属から分離されることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19758595号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第19752743号明細書
【特許文献3】欧州特許第1183513号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4129930号明細書
【特許文献5】米国特許第5415052号明細書
【特許文献6】米国特許第5515739号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特にスラグ試料を採取するためのサンプラを改善して、正確な分析を可能にする品質的に高価値の試料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明に係る装置によれば、支持管の側方の周面または測定ヘッドの側方の周面に流入開口が配置されており、該流入開口が、流入通路を介して、支持管の内部または測定ヘッドの内部に配置された前室に開口しており、該前室が、測定ヘッドの浸漬端部と反対の側の端部に入口開口を有しており、該入口開口が、前室の、浸漬端部と反対の側で前記装置の内部に配置されたスラグ試料室に開口している。
【0008】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、支持管の側方の周面に金属製の防沫層が配置されている。
【0009】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、防沫層が、管状に形成されている。
【0010】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、防沫層が、支持管の側方の周面に配置された流入開口を取り囲んでいて、該流入開口を、有利には覆っていない。
【0011】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、防沫層が、支持管と反対の側の少なくとも250cmの表面を有している。
【0012】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、測定ヘッドの浸漬端部と、支持管の側方の周面または測定ヘッドの側方の周面に配置された流入開口との間の間隔が、50cmよりも小さく設定されている。
【0013】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、測定ヘッドの浸漬端部と、支持管の側方の周面または測定ヘッドの側方の周面に配置された流入開口との間の間隔が、15cmよりも大きく設定されている。
【0014】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、前室の容積が、スラグ試料室の容積よりも大きく設定されている。
【0015】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、支持管の側方の周面に配置された、前室への流入開口の直径が、スラグ試料室に開口した入口開口の直径よりも大きく設定されている。
【0016】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、支持管の側方の周面に配置された流入開口が、可燃性の材料、特に紙または板紙によって覆われている。
【0017】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、スラグ試料室が、前室に近い方の端部と、前室から遠い方の端部とにおいて、金属製プレートによって仕切られている。
【0018】
本発明に係る装置の有利な態様によれば、スラグ試料室が、前室に近い方の端部と、前室から遠い方の端部とにおいて、円錐形に形成された壁によって仕切られている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、1つには、本発明に係る装置の、溶融鋼内に深く浸漬させられる端面側での測定または試料採取が可能となり、もう1つには、より高い位置である、溶融鋼上に位置しているスラグ層の範囲からの試料採取が可能となる。この範囲では、まず、スラグが前室内に案内され、その後、試料室内に案内される。スラグは、溶融鋼よりも軽いので上昇し、場合により前室内に一緒に侵入した重い溶融金属成分は前室内に残される。これによって、高価値のスラグ試料を得ることができる。
【0020】
浸漬深さと、溶融鋼上に位置しているスラグ層の厚さとは、比較的正確に知られているので、端面側が溶融金属内に配置されるのに対して、側方の流入開口はスラグ層内に配置されるように、本発明に係る装置の浸漬深さを極めて正確に制御することができる。
【0021】
通常、本明細書に記載した浸漬プローブの場合、測定ヘッドは、支持管の浸漬端部に配置された別個の構成部材であって、この別個の構成部材にセンサまたは試料室が配置されている。このような測定ヘッドは、たいてい、主として、金属、特に鋼から形成されているかまたは鋳物砂またはセメントから形成されている。支持管は、通常、板紙から形成されていて、いわゆる「ランス」に差し被せられる。このランスは自動的にまたは手動で操作され、支持管を測定ヘッドと共に溶融物内に浸漬させる。ランスが複数回の使用のために適しているのに対して、支持管は測定ヘッドと共に1回の測定後に消費されていて、置き換えられなければならない。
【0022】
特に支持管の側方の周面に金属製の防沫層が配置されていると有利である。この防沫層は、有利には管状に形成されていてよい。この態様では、防沫層が支持管の外壁に全周にわたって接触している。
【0023】
有利には、防沫層が、支持管の側方の周面に配置された流入開口を取り囲んでいてよい。ただし、この態様では、防沫層が、流入開口それ自体を覆っていないかまたは遮蔽していない。防沫層は、特に支持管と反対の側、すなわち、半径方向外側の少なくとも250cmの表面を有していてよい。このことは、たとえば約80mmの直径を有する従来の支持管の場合に有利である。
【0024】
防沫層は、支持管の材料を流入開口のすぐ周辺において防護していて、これによって、スラグ層内への支持管の浸漬時に、支持管の一部またはその燃焼生成物が前室内に到達し、次いで、試料室内に到達して、試料を悪化させることを阻止している。これによって、試料品質が改善される。有利には、防沫層が、支持管をその浸漬端部から、支持管の側方の周面に配置された流入開口の上方まで取り囲んでいる。
【0025】
防沫層は比較的肉薄に、たとえば約0.5mmの厚さを備えて形成されていてよい。このことは、防沫層が、スラグ層内への本発明に係る装置の進入の間に支持管を防護しており、これによって、スラグによる試料室の質的に高価値の充填が保証されているようにするために有利である。次いで、防沫層は、溶融物からの本発明に係る装置の引出し後、本発明に係る装置からの試料を有する試料室のより容易な取外しが可能となるようにするために、有利には取り除くことができる。
【0026】
測定ヘッドの浸漬端部と、支持管の側方の周面または測定ヘッドの側方の周面に配置された流入開口との間の間隔が、50cmよりも小さく設定されていると有利である。さらに、この間隔が、15cmよりも大きく設定されていると有利である。これによって、スラグ層内への側方に配置された流入開口の極めて確実な位置決めと同時に、溶融鉄内または溶融鋼内への測定ヘッドの浸漬端部の十分な浸漬が行われる。
【0027】
有利には、前室の容積が、スラグ試料室の容積よりも大きく設定されており、これによって、全体的に流入した材料からのスラグの十分な分離が可能となり、試料室内のスラグ試料が最適な品質を有している。この態様では、前室が試料室の約2倍の大きさに設定されていると有利である。さらに、側方の周面に配置された、前室への流入開口の直径が、スラグ試料室に開口した入口開口の直径よりも大きく設定されていると有利である。有利には、側方の周面に配置された流入開口が、可燃性の材料、特に紙または板紙によって覆われていてよい。
【0028】
さらに、スラグ試料室が、前室に近い方の端部と、前室から遠い方の端部とにおいて、金属製プレートによって仕切られていると有利である。なぜならば、これによって、1つには、試料の冷却プロセスが促進され、もう1つには、分析のために使用することができる平滑な試料表面が発生させられるからである。
【0029】
さらに、スラグ試料室が、前室に近い方の端部と、前室から遠い方の端部とにおいて、円錐形に形成された壁によって仕切られていると有利である。なぜならば、これによって、試料室からの試料のより容易な取出しが可能となるからである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る装置の浸漬端部を示す図である。
【図2】本発明に係る装置の別の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明に係る装置の浸漬端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0032】
図1に示した実施の形態では、測定ヘッド2を保持するための板紙製の支持管1が設けられている。測定ヘッド2は支持管1の浸漬端部に配置されている。測定ヘッド2は鋳物砂またはセメントから形成されている。測定ヘッド2の浸漬端部は、搬送およびスラグ層を通る浸漬に際して、測定ヘッド2に配置されたセンサまたは試料室を防護する防護キャップ3を備えている。この防護キャップ3は鋼から形成されている。測定ヘッド2の上方で(防護キャップ3の)浸漬端部から約20〜25cmの距離を置いて、支持管1の側方に流入開口4が配置されている。
【0033】
支持管1の浸漬端部は、測定ヘッド2を起点として流入開口4の数cm上方まで、約0.5mmの厚さの防沫層5によって取り囲まれている。この防沫層5は鋼から形成することができる。流入開口4はその外側で板紙製の層によって覆われている。
【0034】
図2には、類似のアッセンブリが示してある。このアッセンブリでは、防沫層5’が、すでに支持管1の浸漬端部で始まっておらず、すなわち、直接的に測定ヘッド2で始まっておらず、数cm下方で初めて、すなわち、浸漬方向で見て流入開口4の前方で始まっていて、浸漬端部と反対の側の端部では、流入開口4の数cm後方に延びている。
【0035】
図3には、本発明に係る装置の1つの実施の形態の詳細が示してある。測定ヘッド2には、防護キャップ3によりカバーされた酸素センサ6が配置されている。この酸素センサ6は電気化学式のセンサである。また、測定ヘッド2には、対向電極としての相応の浴接点7も配置されている。さらに、測定ヘッド2は、同じくキャップによって防護されている温度センサ8としての熱電対を支持している。有利には、測定ヘッド2の浸漬端部に、溶融金属のための試料室10に対する流入開口9が配置されている。
【0036】
側方の流入開口4は石英管11から形成されている。この石英管11はセメント12によって支持管1に位置固定される。石英管11は、スラグ試料採取のための前室13に開口していて、そこで、金属製ホルダ14によって保持される。前室13は浸漬端部と反対の側の端部にスラグ試料室16に対する入口開口15を有している。流入開口4は、入口開口15の約3倍の大きさの直径を有している。流入開口4は板紙層17によって覆われている。この板紙層17は前室13とスラグ試料室16とを試料採取前に閉鎖していて、前室13またはスラグ試料室16への材料の不本意な侵入を阻止している。
【0037】
スラグ試料室16の浸漬端部と、この浸漬端部と反対の側の端部とは、鋼製ディスク18;18’によって仕切られている。スラグ試料室16の側方の周面19も同じく鋼から形成されている。スラグ試料室16もしくは周面19は、凝固した試料をより容易に取り出すことができるように、僅かに円錐形に形成されている。前室13の直径とスラグ試料室16の平均直径とは約35mmに設定されている。前室13は、スラグ試料室16の約2倍の大きさの容積を有している。スラグ試料室16の容積は約40cmに設定されており、これによって、スラグ試料が80gの重量を有している。通常、スラグ分析のためには、少なくとも40gが必要となる。
【0038】
支持管1の内部には、いわゆる「内側の板紙管20;20’」が配置されている。この板紙管20;20’によって、スラグ試料室16と、前室13と、別の組込み部材とが位置決めされる。これによって、装置の比較的簡単な製造と、個々の部材の正確な位置調整とが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 支持管
2 測定ヘッド
3 防護キャップ
4 流入開口
5,5’ 防沫層
6 酸素センサ
7 浴接点
8 温度センサ
9 流入開口
10 試料室
11 石英管
12 セメント
13 前室
14 金属製ホルダ
15 入口開口
16 スラグ試料室
17 板紙層
18,18’ 鋼製ディスク
19 周面
20,20’ 板紙層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融鋼もしくは溶融鋼におけるパラメータを測定するかまたは試料を採取しならびに溶融鋼もしくは溶融鋼上に位置しているスラグから試料を採取するための装置であって、該装置が、浸漬端部と側方の周面とを有する支持管を備えており、該支持管の浸漬端部に、浸漬端部と側方の周面とを有する測定ヘッドが配置されており、該測定ヘッドの浸漬端部に、少なくとも1つのセンサが配置されているかまたは前記装置の内部に存在する試料室に対する少なくとも1つの流入開口が配置されている装置において、支持管の側方の周面または測定ヘッドの側方の周面に流入開口が配置されており、該流入開口が、流入通路を介して、支持管の内部または測定ヘッドの内部に配置された前室に開口しており、該前室が、測定ヘッドの浸漬端部と反対の側の端部に入口開口を有しており、該入口開口が、前室の、浸漬端部と反対の側で前記装置の内部に配置されたスラグ試料室に開口していることを特徴とする、溶融鋼もしくは溶融鋼におけるパラメータを測定するかまたは試料を採取しならびに溶融鋼もしくは溶融鋼上に位置しているスラグから試料を採取するための装置。
【請求項2】
支持管の側方の周面に金属製の防沫層が配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
防沫層が、管状に形成されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
防沫層が、支持管の側方の周面に配置された流入開口を取り囲んでいて、該流入開口を、有利には覆っていない、請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
防沫層が、支持管と反対の側の少なくとも250cmの表面を有している、請求項2から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
測定ヘッドの浸漬端部と、支持管の側方の周面または測定ヘッドの側方の周面に配置された流入開口との間の間隔が、50cmよりも小さく設定されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
測定ヘッドの浸漬端部と、支持管の側方の周面または測定ヘッドの側方の周面に配置された流入開口との間の間隔が、15cmよりも大きく設定されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前室の容積が、スラグ試料室の容積よりも大きく設定されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
支持管の側方の周面に配置された、前室への流入開口の直径が、スラグ試料室に開口した入口開口の直径よりも大きく設定されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
支持管の側方の周面に配置された流入開口が、可燃性の材料、特に紙または板紙によって覆われている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
スラグ試料室が、前室に近い方の端部と、前室から遠い方の端部とにおいて、金属製プレートによって仕切られている、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
スラグ試料室が、前室に近い方の端部と、前室から遠い方の端部とにおいて、円錐形に形成された壁によって仕切られている、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−88436(P2013−88436A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231955(P2012−231955)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】