説明

溶解含有させた断熱添加成分塗料及び塗膜と製造法

【課題】反射を利用した遮熱効果だけに頼らず、断熱添加成分自体がより高い断熱性能を持ち合わせかつ、添加成分を塗料に完全溶解させることによって、従来の塗料では実現できなかった塗膜全体が断熱性能を持ち合わせているために、添加成分が完全に中和することを可能にすることによって塗料または塗膜全体の断熱効果がムラなく高い、遮熱効果に頼らずに色の選択の自由や塗膜表面の仕上げを自由に選択でき表面被膜内に収まることによっても高い断熱効果を得られる塗料又は塗膜を提供する。
【解決手段】断熱溶解成分として組成式CaH及び組成式NaP及び分子式NHを含有し、又は添加した断熱塗料又は断熱塗膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築構造物や各種設備等の構造物の主として外表面または内部表面そして各表面の表皮内部への塗布に用いられる断熱塗料または断熱塗膜とその製造法に関する。さらに詳しくは組成式TiO(酸化チタン)を含んだ水性塗料に断熱性能成分添加としての原料は組成式CaH2O2(水酸化カルシウム)及び組成式NaP(リン酸三ナトリウム)を分子式NH(窒化水素)で溶解させた成分を含有させる事によって、色によっては遮熱効果が色に頼らず断熱効果が容易に得られる塗料又は塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料などで塗布することによって遮熱や断熱効果を発揮する技術としては、従来はセラミックガラスの真空、中空ビーズ(アルミノ珪酸ソーダガラスともいう)などを塗料に含有することにより、遮熱や断熱塗膜を形成する物が知られている。
【0003】
これらの塗料は一般に壁、天井、屋根又は鉄部などの塗装に用いられるアクリルエマルジョン系ペイント(そのほかシリコン系、ウレタン系、カチオン系など種類は多様にあるがこれらに含有させる断熱成分はほぼ同じである)などに上記のビーズを含有した塗料を建物などに塗装するものである。
【0004】
そしてこれらの塗料の遮熱効果は白色もしくは淡色により太陽光などを反射することを利用している。断熱塗料としての効果は塗膜内に形成されるビーズ層が反射しきれずに、表面に帯びた熱の伝達時間を空気層などの効果で遅らせることによって得られるものである。
【0005】
上記含有のビーズは例えばNASAやJAXAの航空機の宇宙技術を応用したもので、アメリカでは MHCB 日本国内においては SLBGほかさまざまな製品があるがいずれも10μ〜100μの粉末状の製品である。この製品は塗料中には粒状で溶解することがなく、仮に溶解させると空気層が無くなり効果が出ない。
【0006】
この技術を添加として用いた塗料又は塗膜として、例えば以下に示す特許文献などが存在する。
【特許文献1】特開2004−10903号公報
【特許文献2】特開2002−105358号広報
【特許文献3】特開平11−80599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上の技術によって、塗料に含有させることにより形成された塗料および塗膜は遮熱としての効果は白色または淡色によって、太陽光を反射させることにその効果を頼る部分がほとんどであり、厚塗りなどする事により塗膜の中に敷き詰めるように形成されたビーズ層により、熱の伝達時間を利用して塗膜内に上昇する温度を伝達することを遅らせ、少々の断熱効果を得ているものである。
【0008】
しかし、塗膜を濃い色にしたり、塗膜表面に他の建材、物質を塗り重ねるもしくは、貼り付けることによって(タイル、ボードなどの仕上げ建材)反射率が下がると、断熱効果にも影響があり反射によって遮熱していた性能が無くなって被膜温度が高くなり、断熱効果の性能がビーズにしかないために追いつかなくなる。そしてビーズが塗料の中で溶解しないので、均一性もないので隙間などから熱が伝わりやすいという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の目的は、反射を利用した遮熱効果だけに頼らず、断熱添加成分自体がより高い断熱性能を持ち合わせかつ、添加成分を塗料に完全溶解させることによって、従来の塗料では実現できなかった塗膜全体が断熱性能を持ち合わせているために、添加成分が完全に中和することを可能にすること。それによって塗料または塗膜全体の断熱効果がムラなく高い、遮熱効果に頼らずに色の選択の自由や塗膜表面の仕上げを自由に選択でき表面被膜内に収まることによっても高い断熱効果を得られる塗料又は塗膜を提供することにある。
【0010】
上記問題を解決するための本発明の塗料又は塗膜は断熱性分としてビーズではなく、組成式CaH2O2及び組成式NaPを含有し、溶解に分子式NHを添加したことを特徴としている。
【0011】
第2に、断熱性分が塗料に対して全添加成分中8〜30wt%含有されていることを特徴としている。
【0012】
第3に、組成式NaPが全添加成分の0.7wt%以上、望ましくは2wt%以下であることを特徴としている。
【0013】
第4に、添加成分として分子式NHを含有することを特徴としている。
【0014】
第5に、分子式NHが全添加成分の0.9wt%以下含有されていることを特徴としている。
【0015】
第6に、断熱成分が塗料に対して全添加成分中8〜30wt%含有されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
組成式CaH2O2及び組成式NaP及び分子式NHを含有する塗料又はその塗料により形成される塗膜には強力な断熱作用が付与される。さらに白色または淡色の顔料に添加することによっても反射率で十分な遮熱性能、効果を得られる。いずれの効果も添加成分が溶解して塗料全体に行き渡る為、塗膜全体が機能するため従来の性能を遥かに凌ぐことができる。
【0017】
組成式CaH2O2は組成式NaPを添加することによりその成分の約30wt%は溶解されるが、分子式NHを添加することによって100wt%溶解することができた。組成式CaH2O2には強力な断熱効果があるが、これを完全に溶解することができるため、塗料に容易に混ぜ込むことが可能になった。従来のビーズ含有塗料などの塗料内で溶解してない複合塗料の塗膜に比較して、塗膜全体に断熱効果を発揮する能力があるため、薄い塗膜でも遥かに従来品を凌ぐ性能を安定して発揮する。
【0018】
特に従来のビーズに比べてこの発明の添加成分は素材自体が断熱性能に優れているため、従来は不可能であった、遮熱機能を遮っての断熱性能の発揮、例えば濃い色にしたりして反射率を下げたり、ほかの素材で覆いかぶせるなどをした状態であっても、効果を発揮する断熱塗膜の形成が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の塗料は組成式CaH2O2及び組成式NaP及び分子式NH含有することを特徴とする。例えば組成式CaH2O2は次の分子を有する。組成式CaH2O2を得るための配合率は分子式でそれぞれCa(OH)は75%以下、CaOは23%以下、COは0.95%以下、SiOは0.15%以下、Alは0.10%以下、Feは0.2%以下、MgOは0.60%以下で組成されたCaH2O2である。
【0020】
組成式CaH2O2は水酸化カルシウムとして広く知られている。農業では土壌の改良に工業では錆止めとして、その他にグラウンドのラインや食品添加など幅広く使われている。本発明はこれら本来の用途以外に性質的に耐火、耐熱性に優れていることや素材自体が熱を吸収しにくいことに着目した。そして塗料に応用するために完全に溶解させた状態にすることができた。しかし現在、この組成式CaH2O2を断熱材として応用している塗料や塗膜は見当たらない。
【0021】
断熱塗料として実用化されていない理由に組成式CaH2O2が水に対して少量しか溶解しないこと、粒状になってしまい塗料との組み合わせには向かないこと、溶けきらない状態で断熱効果を発揮するための量は塗料に対して多量に必要になり塗膜強度が下がってしまうことなどが考えられる。しかし組成式Naを0.7%程度、分子式NHを0.9%未満加えることにより、組成式CaH2O2は完全に溶解して、透明な状態で純度が高い水溶液となる。なお組成式Naの配合に関しては0.7%以上2%以下であることが安定している。これ以下でもこれ以上でも有意な変質が見られない。分子式NHは0.9%以上では塗料にした状態の変質が始まるのでこれ以下で十分である。この状態の断熱成分を塗料に配合することによりビーズなどの成分を遥かに凌ぐ断熱効果の塗料又は塗膜が完成した。
【0022】
上記で記述の添加成分単体では断熱塗膜を形成することが出来ないため塗料を利用した。塗料はそれ単体では仕上げや下塗り材に使用されているため密着強度などは本発明の添加材の適切な配合ならば塗料本来の密着強度を妨げずに作用する。特に水性系の塗料との相性がよく添加成分との親和性には全く問題がないことが配合研究の結果でわかった。
【0023】
本発明塗料としての組成は組成式CaH2O2、組成式Na、分子式NHが塗料に対して8〜30wt%(重量パーセント)、塗料が70〜92wt%である。この配合率内が最も安定した機能を発揮する。
【0024】
さまざまな塗料との配合研究、実験の結果この範囲外の配合率に関しては本発明の断熱成分が塗料に対して少なくなると断熱性の低下がみられた。逆に多すぎる場合には断熱性能にはさほど変わりがないが、塗料本来の付着制度が落ち始めていく。本発明の断熱塗料又は断熱塗膜には上記範囲内の配合が好ましい。
【0025】
配合塗料は例えば、水性塗料全般(アクリル系、シリコン系、ウレタン系、カチオン系、シーラー系など1液、2液を問わず)、弱溶剤系塗料全般などを用いることができる。
【0026】
以上のような構成の本発明塗料を、たとえば建築建物やその他の様々な構造物の内外装の仕上げや仕上げ材施工前に下地などに塗布することにより容易に断熱塗膜が形成できる。従来は下地に使用できなかったものが可能になったことで様々な断熱工事に利用できる。また、塗膜も薄くても効果を十分に発揮するため、施工も手軽で従来は断熱処理をしたくても施工スペースが取れなかった物への施工が容易に可能になる。成分も完全に溶解しているため仕上げ材として使用してもビーズ層を含有する塗膜層に比べザラザラでない滑らかな塗膜の形成もできる。
【0027】
本発明の断熱被膜を形成する塗料の製造は上記説明のように殆どの種類の塗料に親和性が良く断熱成分を適切に配合することによって効果を発揮する。断熱成分が溶解しているため配合自体は容易である。
【0028】
このように形成された塗膜は組成式組成式CaH2O2、組成式NaP、分子式HNを8〜30wt%含有し、残部は塗料などの樹脂及び其れに担持された水分他添加成分となる。
【0029】
以下に本発明の塗料、塗膜の実質的な性能を示すための実験例を示す。まず一つ目の実施例は、厚みが1mmで一辺150mmの正方形の鉄板を使い、本発明塗料を鉄板の片面に塗装したものを用意する。そして従来のビーズ塗料で同じく片面に塗装したものと無塗装の鉄板を箱型の実験機に乗せて一定時関、100wの反射型白熱電球(ナショナルレフ100w/100V)を熱源として塗装面にあるいは裏面の無塗装面に照射する。そして、照射している反対側の面の温度上昇の様子を照射時間の経過とともに非接触赤外線温度測定機(Raytek社製/MiniTemp)で測定しグラフ化した。この実験機材は素材の遮熱性能や断熱性能を測定するために用いられる方法のひとつで、具体的には一辺150mmの上部開口型の直法体上の鉄の箱内に。通気性を確保しながら上記熱源を上に向けて箱内に収容し、上部の開口面に試験の鉄板を乗せて計測した。試験条件を同じにするために温度の計測点である鉄板の真ん中に印をつけて鉄板と測定器の距離は5cmの間隔を維持した。そして二つ目の実施例は本発明で完成した塗膜片を試験機関に依頼して熱伝導のデータを取得したデータを示した。
【0030】
遮熱及び断熱性能の実験用に、素材が厚み1mmの試験鉄板の片面に本発明の組成の塗料と従来のビーズ塗料とをそれぞれ塗布し48時間乾燥させて、それぞれ厚さ0.8mmの塗膜を鉄板に形成した物を用意した。塗布方法はエアーガンによるスプレー工法により行った。なお計測時の室温は28℃で湿度が22%に対し、いずれの計測時にも試験鉄板は25℃に統一して調整後に行った。
試験鉄板A−1 白色エマルジョン塗料65wt%+本発明配合25wt%+水10wt%
試験鉄板B−1 白色エマルジョン塗料65wt%+ビーズ材25wt%+水10wt%
試験鉄板C−1 両面が無塗装の鉄板
【実施例1】
【0031】
本発明塗膜を熱伝導率試験用の塗膜片にして1.01mm〜2.71mmの8種類の厚みで用意した。その塗膜片を公的工業研究所にて「塗膜片熱流計法伝導率測定装置/英弘精機/オートΛHC−072」を用いて測定を行った。試験項目はJIS A 1412−1994「断熱材の熱伝導率及び抵抗値の測定方法」でその結果を図1に示す。塗膜片の厚みごとに熱伝導率、熱抵抗を表にまとめた。
【実施例2】
【0032】
断熱性能の実験のため、実験機材に試験鉄板A−1、B−1、C−1を上に載せて塗布していない裏面側に熱源を与えて鉄板表面に到達する温度を時間経過とともに非接触赤外線測定器で測定した記録を図2に示す。この測定器の熱源は無塗装鉄板でおよそ5分程度経過すると100℃を超えるため、1分刻みで5分間の測定とした。
【実施例3】
【0033】
次に遮熱性能の実験のため、実験機材に試験鉄板A−1、B−1、C−1を上に載せて塗布してある面に熱源を与えて鉄板裏面に到達する温度を時間経過とともに非接触赤外線測定器で測定した記録を図3に示す。この測定器の熱源は無塗装鉄板の測定でおよそ5分程度経過すると100℃を超えるため、1分刻みで5分間の測定とした。
【実施例4】
【0034】
本発明塗膜が表面に仕上げ貼り加工などをしても熱源を断熱するイメージを図4に示す。構造物に本発明塗料を塗装してその上にタイル材など貼った状態でも構造物に熱が伝わりにくいイメージを表した。例えば、タイル材などから伝わってきた熱を間に塗装した塗膜が構造物に伝えにくくしてタイル側に放出していく様子を表現した。
【実施例5】
【0035】
本発明塗膜が太陽光を遮熱するイメージを図5に示す。構造物に本発明塗料のみを塗装して太陽光の反射と表面上に熱を放出して構造物に熱が伝わりにくいイメージを表した。
例えば、太陽光などの熱源を一部反射し、塗膜全体が熱を帯びにくいため大きな熱が発生せず構造物にも伝わりにくい様子を表現した。
【0036】
本発明の断熱添加成分によれば、高い熱伝導率を可能にした塗料又は塗膜が形成できた。そのため従来塗料では不可能であった層間での断熱性能も実現でき、様々な分野での応用が可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の断熱添加成分で形成した塗料は、従来の先行技術用途のようにビル・住宅などの内外装や屋根、コンテナの塗装用途のほかに、下地材としても熱材として効果を発揮するため、スペースの取れない個所の設備類の断熱や建築仕上げ材の下断熱、精密機器類の断熱又、発泡スチロール梱包などに代わり、ダンボール紙等に本発明塗料を塗布することより同程度の断熱効果を発揮するので内部スペースが有効活用でき、廃棄物も減らすことも可能なため物流業界にも参入でき、環境にもやさしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の試験片の熱伝導率の結果を表した表である。
【図2】断熱性能を比較実験によって測定した時間−温度グラフである。
【図3】遮熱性能を比較実験によって測定した時間−温度グラフである。
【図4】本発明の塗膜の断熱の状態を表したイメージである。
【図5】本発明の塗膜の遮熱の状態を表したイメージである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱溶解成分として組成式CaH2O2及び組成式NaP及び分子式NHを含有し、又は添加した断熱塗料又は断熱塗膜。
【請求項2】
断熱溶解添加成分が塗料全体又は塗膜内に対して8〜30wt%含有されている請求項1に記載の断熱塗料又は断熱塗膜。
【請求項3】
組成式NaPの含有が断熱溶解添加成分内に0.7wt%以上、望ましくは2wt%以下である断熱塗料又は断熱塗膜。
【請求項4】
断熱溶解添加成分としてNHを含む請求項1,2又は3の断熱塗料又は断熱塗膜。
【請求項5】
断熱溶解添加成分に対してNHが0.9wt%以下である請求項4の断熱塗料又は断熱塗膜。
【請求項6】
断熱溶解成分含有塗料として組成式TiOを含有する請求項1,2,3,4又は5の断熱塗料又は断熱塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38065(P2011−38065A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204092(P2009−204092)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【特許番号】特許第4565079号(P4565079)
【特許公報発行日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(509248730)株式会社サードニックス (2)
【Fターム(参考)】