説明

溶解性を改善したジフェンヒドラミン含有医薬組成物

【課題】
経口投与時の溶解吸収特性が改善され、これにより速やかな眠気の発現が期待できるジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩を含有する医薬組成物、並びに該医薬組成物を充填してなるカプセル剤を提供し、ジフェンヒドラミン製剤の有効性を著しく高める。
【解決手段】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩1重量部に対し、マクロゴール1〜20重量部を含有してなる医薬組成物、並びに該医薬組成物を充填してなるカプセル剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性を改善したジフェンヒドラミンの経口投与用組成物、及びこれを含有するカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミン及びその酸付加塩は抗ヒスタミン作用と中枢作用を有し、鼻炎、感冒薬及び鎮咳去痰薬の有効成分として用いられているが、副作用として眠気を生じることが判明している。現在、この副作用である眠気をいわば効能とした睡眠改善薬として、ジフェンヒドラミン及びその酸付加塩は使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−300872号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、現在用いられているジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩含有製剤の剤形は錠剤型であり、その錠剤は服用後体内で崩壊した後、溶解吸収されるため、崩壊及び溶解に時間を要した。睡眠改善薬としてジフェンヒドラミン含有製剤を服用する際は、速やかな眠気の発現が求められるため、迅速な溶解吸収は製剤の性能を著しく向上させるものである。上記特開2003−300872号の特許出願を初めとして、溶解性を向上するための製剤も提案されているが、必ずしも十分な効果が得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩をマクロゴールに溶解せしめることによって、速やかな溶解吸収特性を有する医薬組成物を確立した。
【0006】
従って、本発明は下記の医薬品組成物に関する。
(1)ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩1重量部に対しマクロゴール1〜20重量部を含有してなる医薬組成物。
【0007】
(2)さらに、界面活性剤及び/または可塑剤を含有する(1)記載の医薬組成物。
【0008】
(3)さらに、溶解補助剤を含有する(1)または(2)に記載の医薬組成物。
【0009】
上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の医薬組成物を充填してなるカプセル剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩含有医薬組成物は、水分散性に優れ、経口投与時に速やかな溶解吸収が期待できるため、製剤の有効性を著しく高めることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の医薬組成物はジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩をマクロゴールに溶解することを特徴とした経口製剤である。
【0012】
本発明に使用するマクロゴールは、酸化エチレンと水との付加重合体であり、例えば、マクロゴール200,マクロゴール300,マクロゴール400,マクロゴール600,マクロゴール1000,マクロゴール1500,マクロゴール1540,マクロゴール4000,マクロゴール6000,マクロゴール20000及びマクロゴール35000またはそれらの合成品から選択される1種またはそれ以上の物質である。
【0013】
マクロゴールは、ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩1重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、より好ましくは5〜10重量部の量で含まれる。
【0014】
本発明に使用する界面活性剤は、例えばグリセリン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、飽和ポリグリコール化グリセリド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等から選択される、1種またはそれ以上の物質であるが、本発明は前記物質に限定されるものではない。
【0015】
界面活性剤は、ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩1重量部に対し、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.1重量部の量で含まれる。
【0016】
本発明の医薬組成物またはこれを含有するカプセル剤において、可塑剤及びその他慣用の添加剤を含有させることにより、更に流動性が改善され、溶液の安定性を高める効果を奏することが確認された。
【0017】
可塑剤の例としては、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ミリスチン酸イソプロピル、グリセリン、ソルビトール、不飽和脂肪酸、中鎖脂肪酸トリグリセリド及びクエン酸トリエチルから選択される1種またはそれ以上の物質が挙げられる。
【0018】
本発明の医薬組成物は更に溶解補助剤を含有してもよい。溶解補助剤の例としては、クロスポビドン、ポビドン、コポリビドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルメロース等の合成高分子、ならびにゼラチン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天及び加工デンプン等の天然由来高分子から選択される1種またはそれ以上の物質が挙げられる。
【0019】
本発明の医薬組成物またはこれを含有するカプセル剤において、溶解補助剤を含有させることにより、ジフェンヒドラミンの溶解安定性を更に高める効果を奏することが確認された。
【0020】
溶解補助剤は、ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩1重量部に対し、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の量で含まれる。
【0021】
本発明のカプセル剤は、軟カプセル剤であっても硬カプセル剤であってもよい。軟カプセル剤は、平板法、ロータリーダイ法、シームレスカプセル法等、常法により、本発明の医薬組成物をゼラチン等の軟カプセル用の皮膜に充填することにより製造することができ、また硬カプセル剤は、常法により、本発明の医薬組成物をゼラチン等の硬カプセルに封入することにより製造することができる。
【0022】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
下記の表1に示す成分を混合し医薬組成物を調製した。該医薬組成物を常法により充填して、軟カプセル剤を製造した。

【0024】
【表1】

【実施例2】
【0025】
下記の表2に示す成分を混合し医薬組成物を調製した。該医薬組成物を常法により充填して、軟カプセル剤を製造した。
【0026】
【表2】

【実施例3】
【0027】
下記の表3に示す成分を混合し医薬組成物を調製した。該医薬組成物を常法により充填して、軟カプセル剤を製造した。
【0028】
【表3】

【0029】
〔溶出試験〕
各実施例で製造された軟カプセル剤について、日本薬局方溶出試験法により、ジフェンヒドラミンの溶出試験を実施した。
結果を図1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、速やかな溶解吸収特性を有するジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩含有医薬組成物を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例製剤からのジフェンヒドラミンの溶出挙動を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩1重量部に対しマクロゴール1〜20重量部を含有してなる医薬組成物。
【請求項2】
さらに、界面活性剤及び/または可塑剤を含有する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらに、溶解補助剤を含有する請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物を充填してなるカプセル剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−150298(P2008−150298A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337929(P2006−337929)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000222200)東洋カプセル株式会社 (14)
【Fターム(参考)】