説明

溶解成分採水装置

【課題】採取場所で固形物を濾過し、採水時の水質を維持したまま分析に供することができ、かつ、長期に亘る連続採水にも対応できる溶解成分採取装置を提供する。
【解決手段】固形物を含む水を濾過する中空糸膜1と、該中空糸膜1を中心部に固定する整流容器2と、該整流容器2の上部及び底部は開口し、前記固形物を含む水を中空糸膜1面上にクロスフローさせて濾過するためのエアーを供給するエアーポンプ6と、前記中空糸膜1から該中空糸膜1によって濾過された濾液を吸引する吸引ポンプ4と、該吸引ポンプ4により吸い上げた濾液を切換弁9によって濾液を採水する濾液採水容器7と、を含む装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は河川、湖沼、排水処理等において、固形物を含んだ水から溶解成分だけを含んだ水を採水する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、環境水や排水中の固形物を含んだサンプルを濾過する方法として、採水瓶中のサンプルを吸引してガラス繊維濾紙等で濾過する方法が知られている。(非特許文献1参照)
また、特許文献1には中空糸膜からなる膜面積の少ないモジュールを採水瓶中の水中に浸漬し、該採水瓶に所定の空気圧をかけ、該モジュールによって水を濾過する方法が開示されている。
【0003】
これらの方法は、固形物を含んだサンプルを環境水等(現場)から直接採取するのではなく、サンプルを採取した後、採水瓶に入れてサンプルを濾過するものである。
【0004】
環境水や排水中の溶解成分の分析を行う際、現場で固形物を含んだサンプルを採取し、持ち帰って、別の場所で上記方法を用いて、溶解成分サンプルとし、各種分析に供しているのが現状である。
【0005】
なお、本発明で使用する「溶解成分」という語は、化学的に溶解しているものとは異なり、環境分野における、1μmの濾紙を通過したものをいう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「下水道試験方法 上巻」社団法人日本下水道協会 1997年、p116〜p117
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−191038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、現場でサンプルを採取し、持ち帰って、上記濾過方法等を用いて溶解成分サンプルとすると、次のような問題点が生ずる。
現場すなわちサンプル採取場所から持ち帰る際、時間経過に伴い、溶解成分と固形物(主に一般細菌)との反応が進み、採水時点の状態からサンプルの性状が変化する可能性がある。長期の連続採水では、水質分析するまでにさらに時間を要し、冷蔵保存してもサンプルの性状が変化し正確な水質を把握できないという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、現場すなわち採取場所で、固形物を濾過し、採水時の水質を維持したまま分析に供することができ、かつ、長期に亘って連続採水できる溶解成分採水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は固形物を含む水を濾過する中空糸膜と、該中空糸膜を中心部に固定した整流容器と、前記固形物を含む水を中空糸膜面上にクロスフローさせて濾過するためのエアーを供給するエアーポンプと、前記中空糸膜から該中空膜によって濾過された濾液を吸引する吸引ポンプと、該吸引ポンプにより吸い上げた濾液を切換弁によって濾液を採水する濾液採水容器を含む装置であることを特徴としている。
【0011】
また、前記エアーポンプと前記吸引ポンプの作動・停止及び前記切換弁の開閉を、制御によって自動作動させる制御部を有することをも特徴としている。
【0012】
さらに、前記中空糸膜の目詰まり警報を出す機能を有するように、前記中空糸膜と前記吸引ポンプ間に圧力計を配設することをも特徴としている。
これにより、中空糸膜の洗浄や交換の時期を知ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、現場すなわち採取場所でサンプルを濾過するため、固形物との反応が無く、水質が変化することがないので、採水時の水質を維持したまま分析に供することができ、正確な水質分析ができる。
また、水質が変化しないので、比較的長期に亘る採水にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る採水装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について添付の図に基づいて説明する。
図1は本発明に係る採水装置の概念図を示す。
【0016】
本発明の装置構成は、固形物を含む水を濾過する円筒の中空糸膜1と、該中空糸膜1を中心部に固定した、上部及び底部は固形物を含む水が通過するように開口している整流容器2と前記固形物を含む水を中空糸膜1の面上をクロスフローさせて濾過するためのエアーを供給するエアーポンプ6と、前記中空糸膜から該中空糸膜1によって濾過された濾液を吸引する吸引ポンプ4と、該吸引ポンプ4により吸い上げた濾液を所定の濾液採水容器7に採水する切換弁9とを含んでいる。
さらにそれぞれの構成部位の詳細について説明する。
【0017】
整流容器2中の中空糸膜1は、孔径1μmであり、片側は閉じられている。
中空糸膜1のもう一方の吸引ポンプ4側に、硬質チューブ[例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブ]からなる濾液吸引管3が設けられて、他端は吸引ポンプ4に接続されている。
中空糸膜1によって濾過された濾過水は、吸引ポンプ4により濾液吸引管3を通して吸い上げられる構造になっている。
【0018】
そして、前記中空糸膜1は塩ビからなる整流容器2の円筒軸中心に配設されるように整流容器2に固定されている。その場合、整流容器2中の水流を妨げないように、中空糸膜1の上下両端付近から整流容器の上下両端付近に細い釣り糸等で固定されている。
【0019】
なお、濾液吸引管3として硬質チューブを用いたのは吸引による負圧で容易に潰れないようにするためである。
【0020】
以上のような装置において、固形物を含む水は以下のような過程で固形物が濾過され採水される。
すなわち、中空糸膜1を内設した整流容器2を採水したい対象である固形物を含む液に浸漬する。次にエアーポンプ6により、エアー供給管5を通して整流容器2の下端側にエアーを供給し、中空糸膜1面上にクロスフローを作る。
次にフラックスが、例えば0.2m/日以下になるように吸引ポンプを作動して、濾液を得る。
なお、中空糸膜1面上の流速は30cm/sec以上が望ましい。
中空糸膜により濾過された濾液は、吸引ポンプ4を作動させ、濾液吸引管3を通して濾液を吸い上げ、切換弁9の弁の切換により、各濾液採集容器7に濾液を採水する。
【0021】
なお、以上の実施形態では中空糸膜1が1本の場合について記載したが、採取サンプル量を多く必要とする場合は複数の中空糸膜を用いてもよい。
濾液採集容器7中の採水液は濾液なので、無菌であるが、菌の発生を極力防ぐために冷蔵庫8を設けて冷蔵保存してもよい。
【0022】
また、中空糸膜1と吸引ポンプ4間に接続された濾液吸引管3に圧力計12を設けてもよい。
圧力を連続計測し、中空糸膜1が目詰まりすると、濾液吸引管3の圧力(内圧)が低くなるので、これを制御部10で検知し、目詰まり警報を出すようにすると、中空糸膜1の洗浄あるいは交換時期を知らせることができる。
【0023】
また、前記エアーポンプ6、吸引ポンプ4および切換弁9を制御ボックス10で電源・制御系配線11を通してシーケンス制御し、自動運転することにすると、人が容易に採水できない深夜の時間帯でも採水できるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
河川、湖沼、排水処理等において、固形物を含んだ水から溶解成分だけを含んだ水を採水する装置として利用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 中空糸膜
2 整流容器
3 濾液吸引管
4 吸引ポンプ
5 エアー供給菅
6 エアーポンプ
7 濾液採水容器
8 冷蔵庫
9 切換弁
10 制御ボックス
11 電源・制御系配線
12 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含む水を濾過する円筒状の中空糸膜と、
該中空糸膜を中心部に固定した整流容器と、
前記固形物を含む水を中空糸膜面上にクロスフローさせて濾過するためのエアーを供給するエアーポンプと、
前記中空糸膜から該中空糸膜によって濾過された濾液を吸引する吸引ポンプと、該吸引ポンプにより吸い上げた濾液を切換弁によって濾液を採水する濾液採水容器と、
を含む溶解成分採水装置。
【請求項2】
前記エアーポンプと前記吸引ポンプの作動・停止及び前記切換弁の開閉を、制御することによって自動作動させる制御部を有してなる請求項1に記載の溶解成分採水装置。
【請求項3】
前記中空糸膜の目詰まり警報を出す機能を有するように、前記中空糸膜と前記吸引ポンプとの間に圧力計を配設してなる請求項1に記載の溶解成分採水装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−173133(P2012−173133A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35354(P2011−35354)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】