説明

溶解装置と溶解方法

【課題】 材料温度保持プール内における溶解した液相材料の温度の不用意な低下を防止し、それによって、材料温度保持用加熱手段に対する負荷を軽減させることができ、材料温度保持プールにおける材料の品質を向上させ、又、溶湯の取出作業の容易化を図ることが可能な溶解装置と溶解方法を提供すること。
【解決手段】 溶解装置本体と、材料溶解部と、溶解材料加熱プールと、溶解材料温度保持プールと、上記溶解材料加熱プール内に導入された液相材料を直接的に加熱するとともに上記材料溶解部において固相溶解対象材料を間接的に加熱して加熱・溶解させる材料加熱手段と、上記溶解材料温度保持プール内に導入された液相材料を加熱してその温度を保持する材料温度保持用加熱手段とを具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インゴット状のアルミニウム合金等の固相溶解対象材料を投入してこれを加熱・溶解し、且つ、所定温度でその溶解状態を保持するための溶解装置と溶解方法に係り、特に、材料温度保持プールの手前に溶解材料加熱プールを配置し、該溶解材料加熱プールにおいて溶解された液相材料を所定温度迄加熱するようにすると共に、溶湯の取出作業の容易化を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶解装置としては、例えば、特許文献1に記載されたようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平7−252544号公報
【0004】
上記特許文献1に記載されている溶解装置を図5に示す。図5は、特許文献1に記載されている溶解装置の構成を示す断面図である。まず、溶解装置本体101がある。上記溶解装置本体101内は中空状になっていて、図5中右上には材料投入口103が設けられている。又、上記溶解装置本体101内であって、図5中右下には湯溜り部105が形成されているとともに、図5中その左側には隔壁107を介して溶湯保持部109が形成されている。又、上記溶湯保持部109の図5中左側には溶湯取出口111が設けられている。
【0005】
又、溶解装置本体101の上記湯溜り部105の略上方位置には、火炎照射用バーナ113が設置されているとともに、上記溶湯保持部109の上方位置には、溶湯温度保持用バーナ115が設置されている。
尚、上記材料投入口103の上には排熱ダクト117が取り付けられている。
【0006】
上記構成において、まず、固相溶解対象材料、具体的には、過共晶Al−Si系合金(A)を材料投入口103より溶解装置本体101内に投入する。上記過共晶Al−Si系合金(A)は、図示するように塊状になっていて、そのような塊状の過共晶Al−Si系合金(A)が、湯溜り部105内に浸漬された状態となる。そして、この湯溜り部105においては火炎照射用バーナ113による直接的な加熱・溶解が行われており、それによって、上記塊状の過共晶Al−Si系合金(A)は徐々に溶解していくことになる。
【0007】
但し、図示するように、湯溜り部105内においては、完全に溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(C)と、高融点で且つ高Si含有量の未溶解材(B)と、未だ全く溶解していない過共晶Al−Si系合金(A)の3種類が混在した状態となっている。
【0008】
そして、上記湯溜り部105内において溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(C)は、隔壁107を越流して溶湯保持部109内に流入し、そこに溜められることになる。又、この溶湯保持部109内では、溶湯温度保持用バーナ115による加熱が行われていて、過共晶Al−Si系合金溶湯(C)の温度を一定保持するようにしている。
後は、溶湯取出口111より過共晶Al−Si系合金溶湯(C)を適宜取り出して、例えば、鋳造材料として使用することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
すなわち、上記従来の構成の場合には、湯溜り部105内にて過共晶Al−Si系合金(A)の溶解を行う構成になっており、その際、湯溜り部105内に、完全に溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(C)と、高融点で且つ高Si含有量の未溶解材(B)と、未だ全く溶解していない過共晶Al−Si系合金(A)の3種類が混在した状態となる。そのため、一旦、溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(C)の温度が所定温度まで上昇しないおそれがあった。
つまり、一旦、溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(C)の温度が、未だ完全に溶解していない高融点で且つ高Si含有量の未溶解材(B)と、未だ全く溶解していない過共晶Al−Si系合金(A)の2種類によって、低下してしまうからである。
【0010】
このように、一旦、溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(C)の温度が所定温度まで上昇しない状態で、溶湯保持部109内に流入した場合には、当然のことながら、溶湯保持部109内の温度も低下してしまうことになり、その為、溶湯温度保持用バーナ115による加熱に大きな負担が掛かってしまうという問題があった。又、溶湯温度保持用バーナ115の稼働率も高くなり、その結果、溶湯保持部109内の雰囲気温度も上昇し、酸化物の発生が促進されてしまうという問題もあった。
【0011】
又、その関係で、溶湯保持部109内における保持量についても、溶解量の略3倍は必要となり、それによって、溶湯保持部109ひいては装置全体の大型化を誘発していた。すなわち、低温の過共晶Al−Si系合金溶湯(C)が流れ込んだ場合、溶湯保持部109内における保持量が少ないと、全体の温度が急激に低下してしまうことになり、そこで、上記したように、溶解量の略3倍程度の保持量を必要としてしまうことになる。
【0012】
又、湯溜り部105内にて溶解する際、いわゆる「ノロ」及び「不純物」が発生する。そのような「ノロ」及び「不純物」は隔壁107が存在するものの、過共晶Al−Si系合金溶湯(C)と共に溶湯保持部109内に流入してしまうこともあり、それによって、溶湯保持部109内の過共晶Al−Si系合金溶湯(C)が汚れを含んだ品質の悪いものになってしまうという問題もあった。
又、従来の火炎照射用バーナ113による加熱は一方向からの直接加熱であるために、いわゆる「棚つり」の発生が懸念されていた。
又、別の問題として溶湯保持部109内からの溶湯の取出作業が困難であるという問題があった。すなわち、従来の構成の場合には溶湯取出口111より過共晶Al−Si系合金溶湯(C)を適宜取り出すことになるが、その際の作業性は決して良好なものではなかった。
【0013】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、材料温度保持プール内における溶解した液相材料の温度の不用意な低下を防止し、それによって、材料温度保持用加熱手段に対する負荷を軽減させることができ、材料温度保持プールにおける材料の品質を向上させ、又、溶湯の取出作業の容易化を図ることが可能な溶解装置と溶解方法を提供することにある。
【0014】
尚、本願発明に関連するものとして、既に挙げた特許文献1以外にも、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5等がある。
【0015】
【特許文献2】特願平09−176754号公報
【特許文献3】特開平10−147822号公報
【特許文献4】特開2000−130948号公報
【特許文献5】特開2000−355719号公報
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するべく本願発明による溶解方法は、材料投入口を備えた溶解装置本体と、上記溶解装置本体に設けられ上記材料投入口より投入された固相溶解対象材料を溶解させるための材料溶解部と、上記溶解装置本体に設けられ上記材料溶解部にて加熱・溶解された液相材料を受け入れて所定温度迄加熱するための溶解材料加熱プールと、上記溶解材料加熱プールにて所定温度迄加熱された液相材料を受け入れて加熱することによりその温度を保持するための溶解材料温度保持プールと、上記溶解材料加熱プール内に導入された液相材料を直接的に加熱するとともに上記材料溶解部において固相溶解対象材料を間接的に加熱して加熱・溶解させる材料加熱手段と、上記溶解材料温度保持プール内に導入された液相材料を加熱してその温度を保持する材料温度保持用加熱手段と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項2による溶解装置は、請求項1記載の溶解装置において、上記溶解材料温度保持プールは坩堝であることを特徴とするものである。
又、請求項3による溶解装置は、請求項2記載の溶解装置において、上記坩堝は液相材料受入位置と液相材料搬出位置との間で移動可能に設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による溶解装置は、請求項3記載の溶解装置において、上記坩堝は軌条に沿って移動可能に設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項5による溶解装置は、請求項4記載の溶解装置において、上記坩堝にはフィルター板が設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項6による溶解方法は、固相溶解対象材料を加熱・溶解させ、加熱・溶解された液相材料を溶解材料加熱プール内に導入して所定温度迄加熱し、加熱された液相材料を溶解材料温度保持プール内に導入して加熱することによりその温度を保持し、上記溶解材料保持プールを適宜移動させて液相材料を搬出するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように本願発明の請求項1による溶解方法は、材料投入口を備えた溶解装置本体と、上記溶解装置本体に設けられ上記材料投入口より投入された固相溶解対象材料を溶解させるための材料溶解部と、上記溶解装置本体に設けられ上記材料溶解部にて加熱・溶解された液相材料を受け入れて所定温度迄加熱するための溶解材料加熱プールと、上記溶解材料加熱プールにて所定温度迄加熱された液相材料を受け入れて加熱することによりその温度を保持するための溶解材料温度保持プールと、上記溶解材料加熱プール内に導入された液相材料を直接的に加熱するとともに上記材料溶解部において固相溶解対象材料を間接的に加熱して加熱・溶解させる材料加熱手段と、上記溶解材料温度保持プール内に導入された液相材料を加熱してその温度を保持する材料温度保持用加熱手段と、を具備した構成になっているので、まず、溶解材料加熱プールにおいて、溶解された材料を所定温度まで加熱するようにしているので、溶解材料温度保持プール内には、所定温度迄加熱された溶解材料のみが導入されることになる。よって、溶解材料温度保持プール内における温度保持のための加熱が軽減されることになり、エネルギー消費量の低減を図ることができる。又、溶解材料温度保持プール内における保持量を最小限に抑えることができ、それによって、溶解材料温度保持プールひいては装置全体の小型化を図ることができる。
又、確実に高温の溶湯を保持できるので、高温出湯に対しても容易に対応することができる。
又、材料溶解部における溶解により発生する「ノロ」、「不純物」の溶解材料温度保持プール内への流入は、溶解材料加熱プールによって確実に防止されるので、溶解材料温度保持プール内の溶湯の品質を高めることができる。
又、溶解材料温度保持プール内における温度保持のための加熱が軽減されることにより、付着する酸化物の量も減少することになる。
又、上記溶解材料温度保持プールを坩堝として構成した場合には、溶解材料の搬出等の作業が容易になる。
又、上記坩堝を液相材料受入位置と液相材料搬出位置との間で移動可能に設置した場合にはそのような効果をさらに高めることができる。
又、上記坩堝を軌条に沿って移動可能に設置した場合には坩堝の移動作業が容易になり、上記効果をさらに高めることができる。
又、上記坩堝にフィルター板を設置した場合には不純物を効率良く除去することができる。
又、本願発明による溶解方法によると、固相溶解対象材料を加熱・溶解させ、加熱・溶解された液相材料を溶解材料加熱プール内に導入して所定温度迄加熱し、加熱された液相材料を溶解材料温度保持プール内に導入して加熱することによりその温度を保持し、上記溶解材料保持プールを適宜移動させて液相材料を搬出するようにしているので、溶解作業が容易なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1乃至図4を参照して本発明の一実施の形態を説明する。まず、溶解装置本体1があり、この溶解装置本体1の図1中上端には、固相材料投入口3が形成されていて、この固相材料投入口3の上には、固相材料投入シュート5が取り付けられている。又、図2及び図3に示すように、上記固相材料投入シュート5の側方には、固相材料投入機7が設置されている。この固相材料投入機7によって固相材料を上記固相材料投入シュート5内に投入する。投入された固相材料は上記固相材料投入口3を介して溶解装置本体1内に搬入されることになる。
【0019】
上記溶解装置本体1内であって上記材料投入口3の下方位置には、図4に示すように、材料溶解部9が設けられている。この材料溶解部9は緩やかな傾斜面11を備えている。上記材料溶解部9において溶解した材料は、この傾斜面11に沿って、図4中左側に流下していくことになる。上記溶解装置本体1内であって、上記材料溶解部9の図4中左側には、溶解材料加熱プール13が設けられており、さらにその左側には溶解した液相材料が流下・流出していく液相材料流出路15が設けられている。上記溶解材料加熱プール13の図4中左側の壁は越流壁13aとなっている。
【0020】
又、上記液相材料流出路15は図4中左側に向けて下り勾配にて設けられていると共にさらにその左側には溶解材料温度保持プールとしての坩堝17が設置されている。上記坩堝17内にはフィルター板19が設置されている。又、上記坩堝17は坩堝支持構造物21によって支持されている。
尚、上記フィルター板19の代わりに単なる仕切り壁を使用する構成も想定される。
【0021】
上記坩堝支持構造物21は、図1及び図4中前後方向に移動可能に設置されている。すなわち、床23上には一対のレール25、25が敷設されている。一方、上記坩堝支持構造物21側には走行車輪27が前後・左右に夫々1個ずつ取り付けられている。そして、上記4個の走行車輪27を介して上記一対のレール25、25に沿って、図1中前後方向に移動可能に構成されているものである。
【0022】
そして、上記坩堝支持構造物21は、液相材料流出路15を介して流出する液相材料を坩堝17内に受け入れる液相材料受入位置と受け入れた液相材料を搬出する液相材料搬出位置との間で適宜移動するものである。
【0023】
又、図1に示すように、上記溶解装置本体1には、点検用開平扉29、31が夫々設けられていて、これら点検用開平扉29、31を適宜開放することにより、溶解装置本体1内を点検するものである。
【0024】
又、上記溶解材料加熱プール13の略上方位置には、材料加熱手段としての溶解材料加熱用バーナ33が設置されている。又、上記坩堝17の下部であって側方には、図3に示すように、溶解材料温度保持用加熱手段としての溶解材料温度保持用加熱バーナ35が設置されている。又、上記溶解材料加熱用バーナ33の向きは、溶解装置の仕様に応じて適宜設定して取り付けるようになっている。
尚、溶解装置本体1内の壁、天井には、酸化物の剥離を促進させるコーティング剤が塗布されている。この種のコーティング剤としては、例えば、ペースト状の「ヒロポンド(商品名、日本碍子株式会社製)」がある。
【0025】
又、上記坩堝17には、図3に示すように、湯抜き孔41、湯温熱電対43、湯面検知棒45が取り付けられている。又、図2に示すように、固相材料投入シュート5にはスライド式投入蓋51が取り付けられている。
【0026】
以上の構成に基づいてその作用を説明する。
図1乃至図4に示すように、固相材料投入機7、固相材料投入シュート5、固相材料投入口3より、固相溶解対象材料、例えば、過共晶Al−Si系合金(a)を投入する。この過共晶Al−Si系合金(a)は、図4に示すように、所定形状の塊、いわゆる「インゴット」として成形されており、そのようなインゴット状のものを投入するものである。
【0027】
一方、固相材料投入口3の近傍より材料溶解部9にかけての領域においては、材料加熱用バーナ33による放射熱や輻射熱や対流伝熱等の間接加熱によって溶解可能な雰囲気になっており、それによって、投入された過共晶Al−Si系合金(a)は徐々に溶解されていく。
【0028】
そして、材料溶解部9の領域において、完全に溶解して過共晶Al−Si系合金溶湯(c)となる。又、その上部においては、高融点で且つ高Si含有量の未溶解材(b)が存在することになる。つまり、固相材料投入口3から下方部分においては、全く溶解していない過共晶AL−Si系合金(a)、未だ完全には溶解していない高融点で且つ高Si含有量の未溶解材(b)、完全に溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(c)の3種類が混在した状態となっているが、材料溶解部9の部分においては、完全に溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(c)のみが存在するような状態となっている。
【0029】
材料溶解部9において溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯(c)は、傾斜面11を介して、溶解材料加熱プール13方向に流下していき、溶解材料加熱プール13内に流入する。この溶解材料加熱プール13においては、材料加熱用バーナ33による直接加熱が行われているので、過共晶Al−Si系合金溶湯(c)は加熱され所定の高温度になる。そして、所定温度迄加熱された過共晶Al−Si系合金溶湯(c)は越流壁13aを超えて液相材料流出路15内に流出し、この液相材料流出路15を介して坩堝17内に流入する。
【0030】
上記坩堝17内においては、フィルター板19を介して図4中右側から左側に液相材料が流通していき、その際、不純物が除去される。
尚、上記越流壁13aを超えたときにも不純物の除去がなされる。
又、坩堝17においては溶解材料温度保持用加熱バーナ25による加熱が行われており、それによって、過共晶Al−Si系合金溶湯(c)の温度を所定の高温に保持する。
【0031】
次に、坩堝17内に液相材料が所定量溜まったら、別の坩堝17と入れ替える。すなわち、既に液相材料が溜まっている坩堝17を、図4中前後方向の一方向に移動させると共に、別の坩堝17を前後方向他方向から液相材料受入位置まで移動させるものである。
以下、同様の作用を連続的に行い、所定の高温状態の過共晶Al−Si系合金溶湯(c)を適宜取り出し、使用に供することになる。
【0032】
以上本実施例によると次のような効果を奏することができる。
まず、溶解材料加熱プール13において、溶解された材料、すなわち、過共晶Al−Si系合金溶湯(c)を所定温度まで加熱するようにしているので、溶解材料温度保持プール17内には、所定温度迄加熱された過共晶Al−Si系合金溶湯(c)のみが導入されることになる。よって、坩堝17内の温度が不用意に低下してしまうようなことはなく、坩堝17における温度保持のための加熱、すなわち、溶解材料温度保持用加熱バーナ25による加熱が軽減されることになり、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
又、確実に高温の溶湯を保持できるので、高温出湯に対しても容易に対応することができる。
又、低温の過共晶Al−Si系合金溶湯(c)の流入がないので、坩堝17内における保持量を最小限に抑えることができる。つまり、低温の過共晶Al−Si系合金溶湯(c)が流入した場合、保持量が少ないと、全体の温度が急激に低下してしまうが、そのような流入がないので、保持量を少なくすることができる。それによって、坩堝17ひいては装置全体の小型化を図ることができる。
又、材料溶解部9における溶解により発生する「ノロ」、「不純物」の坩堝17内への流入は、溶解材料加熱プール13の越流壁13aによって確実に防止されるので、坩堝17内の溶湯の品質を高めることができる。又、坩堝17内にもフィルター板19が設置されているので、それによっても、不純物の除去ひいては品質の向上を図ることができる。
又、既に説明したように、坩堝17内における温度保持のための加熱が軽減されることにより、付着する酸化物の量も減少することになる。
又、本実施の形態の場合には、溶解材料温度保持プールとして坩堝17を使用し、且つ、その坩堝17を移動可能に設置しているので、溶解材料の搬出作業が容易なものとなる。すなわち、坩堝17を適所まで移動させ、そこで湯抜き孔41を介して液相材料を抜けばよいからである。
【0033】
尚、本発明は前記一実施例の形態に限定されるものではない。
まず、材料加熱プール13の容量等については仕様に応じて適宜決定すればよい。
又、各加熱手段としてはガスバーナに限定されず、その他のものであってもよい。
又、溶解対象の材料としては、過共晶Al−Si系合金に限定されることはない。
又、坩堝を移動させない構成も考えられると共に、移動させる場合の構成については様々なものが想定される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば、インゴット状のアルミニウム合金等の固相溶解対象材料を投入してこれを加熱・溶解し、且つ、所定温度でその溶解状態を保持するための溶解装置と溶解方法に係り、特に、材料温度保持プールの手前に溶解材料加熱プールを配置し、該溶解材料加熱プールにおいて溶解された液相材料を所定温度迄加熱するようにし、又、溶湯の取出作業の容易化を図ったものに関し、例えば、過共晶Al−Si系合金を溶解させるための溶解装置、溶解方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、溶解装置の構成を一部切り欠いて示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のII−II矢視図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す図で、溶解装置の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す図で、溶解装置の構成を示す側断面図である。
【図5】従来例を示す図で、溶解装置の構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 溶解装置本体
3 固相材料投入口
5 固相材料投入シュート
7 固相材料投入機
9 材料溶解部
11 傾斜面
13 溶解材料加熱プール
15 液相材料流出路
17 坩堝
19 フィルター板
21 坩堝支持構造物
23 床
25 レール
27 走行車輪
29 点検用開閉扉
31 点検用開閉扉
33 溶解材料加熱用バーナー
35 溶解材料温度保持用加熱バーナー
a 全く溶解していない過共晶AL−Si系合金
b 未だ完全には溶解していない高融点で且つ高Si含有量の未溶解材
c 完全に溶解した過共晶Al−Si系合金溶湯





























【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料投入口を備えた溶解装置本体と、
上記溶解装置本体に設けられ上記材料投入口より投入された固相溶解対象材料を溶解させるための材料溶解部と、
上記溶解装置本体に設けられ上記材料溶解部にて加熱・溶解された液相材料を受け入れて所定温度迄加熱するための溶解材料加熱プールと、
上記溶解材料加熱プールにて所定温度迄加熱された液相材料を受け入れて加熱することによりその温度を保持するための溶解材料温度保持プールと、
上記溶解材料加熱プール内に導入された液相材料を直接的に加熱するとともに上記材料溶解部において固相溶解対象材料を間接的に加熱して加熱・溶解させる材料加熱手段と、
上記溶解材料温度保持プール内に導入された液相材料を加熱してその温度を保持する材料温度保持用加熱手段と、を具備したことを特徴とする溶解装置。
【請求項2】
請求項1記載の溶解装置において、
上記溶解材料温度保持プールは坩堝であることを特徴とする溶解装置。
【請求項3】
請求項2記載の溶解装置において、
上記坩堝は液相材料受入位置と液相材料搬出位置との間で移動可能に設置されていることを特徴とする溶解装置。
【請求項4】
請求項3記載の溶解装置において、
上記坩堝は軌条に沿って移動可能に設置されていることを特徴とする溶解装置。
【請求項5】
請求項4記載の溶解装置において、
上記坩堝にはフィルター板が設置されていることを特徴とする溶解装置。
【請求項6】
固相溶解対象材料を加熱・溶解させ、加熱・溶解された液相材料を溶解材料加熱プール内に導入して所定温度迄加熱し、加熱された液相材料を溶解材料温度保持プール内に導入して加熱することによりその温度を保持し、上記溶解材料保持プールを適宜移動させて液相材料を搬出するようにしたことを特徴とする溶解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−285679(P2007−285679A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116679(P2006−116679)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(596015435)株式会社ザ・トーカイ (3)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【出願人】(506137273)東京モーレックス坩堝株式会社 (2)
【出願人】(000244176)明智セラミックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】