説明

滅菌工程をモニターするためのインジケータシステム

本発明は、少なくとも1色の色変化を生じることが可能な潜在顔料と有機酸とを含むポリマーの少なくとも1層を備えるか、または、少なくとも1色の色変化を生じることが可能な潜在顔料を含むポリマーの1層と有機酸を含むポリマーの1層とを備える、時間、温度の積分値をモニターするためのデバイスであって、当該潜在顔料がその顔料形態に転化され、それによって色変化が生じるデバイスに関する。当該デバイスは、医療用品、キッチン用品、および缶詰食品の滅菌、ならびに電子レンジ食品の加熱具合をモニターするために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間および温度の積分値をモニターするための色変化型デバイスに関する。当該デバイスは、医療用品、キッチン用品、および缶詰食品の滅菌、ならびに電子レンジ食品の加熱具合をモニターするために使用することができる。
【0002】
様々な医療用品が、例えば、蒸気、エチレンオキシド、プラズマ、過酢酸、ホルムアルデヒド、および高エネルギー放射などの材料および技術を用いて滅菌される。台所用品、例えば、皿、刃物、ならびに家庭およびレストランで使用される台所器具なども食洗機において、通常約90℃の熱湯および熱気によって滅菌される。これらのアイテムが滅菌されていることを保証することは不可欠である。
【0003】
熱による滅菌を保証するために、インジケータまたはドシメータにより、2つのパラメータ、すなわち時間および温度、の積分値が特定できなければならない。当該インジケータは、多くの場合、他のパラメータ、湿度、蒸気、エチレンオキシド、および放射によって実質的に影響を受けないことが望ましい。
【0004】
今日、調理済み冷凍食品が広く用いられている。調理済み冷凍食品は、(例えば、天然ガスまたは電気で加熱される)従来のオーブンにおいて、またはより簡便に電子レンジにおいて加熱される。電子レンジは、食品を一様に加熱するわけではない。食品の一部は加熱されず、その一方で、他の部分が加熱され過ぎるような場合もある。
【0005】
家庭、レストラン、およびケータリング業者は、台所用品、例えば、皿、刃物、および台所器具などを使用するが、これらは、通常100℃未満において、乾燥熱、熱湯、および蒸気のいずれかによって滅菌する必要がある。調理用具がある特定の積分値の熱を受けていることを確認するためのインジケータも必要とされている。
【0006】
様々な食品、特に缶詰食品、ならびに医薬品、病院用品、および医療用品が滅菌される。これらの製品および他の製品、例えば、リンネル製品など、では、許容可能なレベルまで生物を殺すために滅菌される。無菌性を直接試験するのは、破壊試験であり高価であるため、色変化インジケータなどの間接的試験方法が用いられる。
【0007】
文献において多くの蒸気滅菌インジケータが報告されており、それらのうちのいくつかは、滅菌をモニターするために使用される。それらのうちのいくつかは、重金属および毒性金属、例えば鉛など、を使用している。よって、毒性金属および重金属を使用しない滅菌インジケータが必要とされている。
【0008】
米国特許第3,523,011号には、硫化カルシウムおよび炭酸鉛からなるインジケータ材料について記載されている。120℃の蒸気に晒されると、硫化カルシウムが分解され、水酸化カルシウムおよび硫化水素が形成される。当該硫化水素は、炭酸鉛と反応して黒硫化鉛を形成する。米国特許第5,064,576号の蒸気感応性組成物は、金属錯体(例えば、クロラニル酸ジルコニウム)および交換配位子(例えば、クエン酸塩または酒石酸塩ならびにアミノカルボン酸)、バインダー(例えば、ニトロセルロースおよびエチルセルロース)、ならびに色変化速度調整剤(例えば、Resino blue、Resino yellow)を含有する。米国特許第4,514,361号では、担持体(例えば、ろ紙など)、pH値指示剤(例えば、ブロモクレゾールパープルなど)、ならびに(a)2,4−ジヒドロキシ安息香酸とその金属塩および(b)フェニルプロピオン酸とその金属塩を含有する化学組成物、を含有する蒸気滅菌インジケータについて開示されている。蒸気滅菌条件下では、炭酸塩または重炭酸塩(塩基)が形成されるために、混合物のpHが所定のpH(5.8〜6.2)を超え、それによってインジケータの色が変化して滅菌が完了していることを示す。米国特許第5,158,363号には、(a)蒸気の不在下における融点が滅菌温度より高い水溶性有機化合物と、(b)インク染料とを含有する蒸気滅菌インジケータについて記載されている。当該染料は、蒸気に晒されると、その色が透明から暗茶色または黒に変化する。米国特許第5,087,659号には、インクジェット印刷における使用のための蒸気滅菌インジケータとしてのインク組成物について記載されている。当該組成物には、フェノール樹脂と塩を形成する有機染料が用いられている。当該インク組成物は、蒸気滅菌条件下において退色するかまたはその色を変化させる。米国特許第3,981,683号、同第3,932,134号、同第4,195,055号、および同第4,410,493号には、インジケータ化学物質(例えば、セバシン酸およびサリチルアミドなど)ならびに染料の浸潤またはウィッキングを用いる方法が示されている。米国特許第4,486,387号には、使い捨ての予備真空蒸気滅菌器試験デバイスについて記載されている。蒸気滅菌の完了を示す他のインジケータについては、米国特許第4,121,714号、同第3,360,339号、同第2,826,073号、同第3,568,627号、同第3,360,338号、同第2,798,885号、同第3,386,807号、同第3,360,337号、および同第3,862,824号において報告されている。時間、温度、および湿度の積分値をモニターするインジケータは、多くの場合、本明細書において共通して蒸気インジケータと呼ばれる。
【0009】
国際公開第01/10471号では、エチレンオキシドによる滅菌をモニターするためのインク配合物およびデバイスについて開示されている。当該デバイスは、(a)ポリマー性バインダー、(b)エチレンオキシド反応性塩、例えば、チオシアン酸ナトリウムおよび臭化テトラエチレンアンモニウムなど、ならびに(c)pH感応性染料、例えば、ブロモチモールブルーおよびブロモクレゾールパープルなど、による混合物でコーティングすることによって作成される。当該デバイスは、エチレンオキシドと接触した場合に、水酸化ナトリウムなどの塩基が生成することにより、少なくとも1色の色変化が生じる。しかしながら、これらのデバイスおよび配合物は、エチレンオキシドに対してのみ選択的である。
【0010】
国際公開第00/61200号では、プラズマによる滅菌をモニターするための配合物およびデバイスが開示されている。当該デバイスは、少なくとも1種の(a)ポリマー性バインダー、(b)プラズマ活性剤、および(c)プラズマインジケータによる混合物をコーティングすることによって作成される。当該デバイスは、プラズマ、特に過酸化水素のプラズマによって処理された場合に、色変化を生じる。例えば、ポリアクリレートなどのバインダー中におけるフェノールレッドおよび臭化テトラエチルアンモニウムのコーティングでは、過酸化水素およびそのプラズマに晒されると、染料がハロゲン化されることによって、黄色から青への色変化を生じる。しかしながら、これらのデバイスおよび配合物は、プラズマに対してのみ選択的である。
【0011】
国際公開第9633242(A2)号は、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂と、少なくとも1種の着色剤と、およびアミン末端触媒とによる水ベースの分散液を含有するインジケータインク組成物に関するものである。これらのインジケータインク組成物は、例えば乾燥処理などによって表面に固定されており、時間、温度、湿度、圧力、および色変化によるある特定の化学薬品の存在もしくは不在といった、特定の条件に応答する。組成物は、所定の条件に対する暴露を検出するための手段を提供し、ほぼ任意の物品に対して、固定することができるかまたは別の方法で取り付けることができ、あるいは材料上のパターンとしてデザインすることができる。特定の条件に対する当該インジケータインクの暴露において、当該インジケータインクは、当該事象の永久的に検出可能な記録を提供する。さらに、配合物中のアミン末端触媒の量を変えることによって、インジケータ組成物が色を変化させるであろう特定の条件を変更することができる。そのような組成物は、滅菌法の有効性を特定するのに特に有用である。
【0012】
国際公開第0061200(A1)号は、プラズマによる滅菌をモニターするためのデバイスであって、少なくとも1色の色変化を生じることが可能なインジケータおよび当該インジケータのための活性剤が層中に組み入れられた、ポリマーの少なくとも1つの層を備えるデバイスに関するものである。当該活性剤が当該プラズマに接触すると、プラズマと反応して、インジケータの色変化を生じる生成物が生成される。さらに、これらのデバイスを作成する方法およびこれらのデバイスを使用する方法が提供されている。
【0013】
欧州特許出願公開第1990064(A1)号には、第一チャンバー、当該第一チャンバー内の活性酵素の供給源、当該第一チャンバーと当該チャンバー内の活性酵素の供給源とを流体連結するルーメン、ならびにインジケータ試薬混合物を収容している第二チャンバーを備えた滅菌試験パックであって、滅菌サイクルが完了した後に当該インジケータ試薬混合物を活性酸素の供給源と接触させることができるように当該第二チャンバーが当該第一チャンバーと流体連結されている滅菌試験パックについて記載されている。
【0014】
国際公開第2009023503(A1)号は、少なくとも1種のヨウ化物塩と、少なくとも1種のバインダーと、少なくとも1種の炭酸塩および/または少なくとも1種の硫酸塩と、少なくとも1種の酸化防止剤とを含むインジケータ組成物に関するものである。当該インジケータ組成物は、少なくとも1種の染料、錯化剤、抑制剤、および/または溶媒を含有し得る。当該特許では、上記のインジケータ組成物を含む滅菌インジケータが開示されている。当該滅菌インジケータは、酸化化学を伴う滅菌プロセスをモニターするために使用することができる。
【0015】
国際公開第2008082728(A2)号は、滅菌インジケータ、ならびに容積を最小化し、pHおよび増殖を緩衝または媒介する影響を最小化した上で表面積を最小に制限することによって発生されたシグナルを濃縮する方法に関するものである。当該滅菌インジケータは、第一表面および第二表面を有する担持体と、第一セクションおよび第二セクションを有する支持体であって、当該担持体が当該支持体の第一セクションを覆い、当該担持体の第二表面が、当該支持体の第一セクションに接着されている支持体と、当該担持体によって支持されている生物学的インジケータとを備え得る。当該支持体の第二セクションは、当該生物学的インジケータに触れることなく、当該滅菌インジケータの取り扱いを可能にするのに十分な寸法であり得る。当該滅菌インジケータを作成する方法および当該滅菌インジケータを使用する方法が開示されている。
【0016】
国際公開第0186289号では、時間、温度、および水蒸気の積分値をモニターするためのデバイスであって、少なくとも1色の色変化を生じることが可能な異性体インジケータを含むポリマーの少なくとも1層と、水蒸気と接触した場合の色変化のために必要な時間および温度に影響を及ぼすことができる、当該インジケータのコントローラとを備え、当該インジケータが異性化反応を受け、それによって当該インジケータが色変化を生じるデバイスが開示されている。
【0017】
国際公開第2008008208(A2)号は、(a)イオン感応性インクと、イオン性光開始剤と、プロトン供給源とを含むインジケータ層、(b)基材、およびUV吸収剤を含む被覆層を備える多層食品滅菌用量インジケータに関するものである。当該インクは、既知の量の滅菌性放射に晒されると色変化を生じる。
【0018】
独国特許出願公開第10303914(A1)号では、200℃未満において著しい色変化を生じる1種以上の不可逆的サーモクロミック性の潜在顔料を含む着色剤を含有する配合物が開示されている。当該配合物は、印刷物を形成するために使用される。IRレーザーを用いて、当該印刷物の色を変えることが可能である。例えば、機械で読み込み可能なバーコードを作成することができる。
【0019】
特開昭63−274584号公報によれば、着色剤もしくはその前駆体および酸性物質を有機溶媒に溶解させており、このとき、総有機溶媒量の30質量%以上の蒸気圧は、20℃において最高でも50mmHgであり、ならびに粘度は、20℃において5cp以下である。この方法において、圧力低下紙のための減感インクの盛量判定用組成物が製造される。アリザリンレッド、ブロモクレゾールグリーンなどが、着色物質またはその前駆体として使用され、安息香酸、サリチル酸、ラウリン酸、クエン酸などが酸性物質として使用される。
【0020】
米国特許出願公開第2008145948号では、基材と、当該基材上のロイコ染料錯体を含むコーティングとを備える化学インジケータ試験ストリップであって、当該コーティングが水に不溶性であり、かつ有機検体に対して反応性であり、当該コーティングがロイコ染料および顕色剤の溶液に由来する、化学インジケータ試験ストリップが提供されている。別の局面において、当該コーティングは、さらに、検体に対する検出下限を拡張する、水に不溶性で、極性で、疎水性で、被プロトン性の材料の形態における補助剤を含む。
【0021】
米国特許第4407960号は、エチレンオキシドによる滅菌を視覚的にモニターするためのインジケータシステムおよびデバイスに関するものである。当該インジケーティング組成物は、本明細書において定義される群から選択されるアリールメタン染料のロイコ前駆体と、酸性成分とを含む。酸性有機化合物、例えば、ジフェノール酸(4,4−ビス[4−ヒドロキシフェニル]ペンタン酸)などは、色相を強め、発色させ、ならびに最終的な色変化を安定化させることから、有効な酸性成分である。
【0022】
米国特許第5840449号では、基材を含む材料を製造するための方法であって、(a)少なくとも1種の潜在顔料の溶液または溶融物によって当該基材をコーティングする工程と、(b)当該潜在顔料を部分的にまたは完全にその不溶性顔料形態に転化させる工程とを含む方法が提供されている。米国特許第5840449号はさらに、この方法において製造された構造材料、色フィルターとしての、もしくはデジタル情報の永久記録媒体のための使用、ならびにそこに記録されているデジタル情報を、光源により照射して反射または透過した光ビームの強度を測定することによって読み出す方法、にも関するものである。米国特許第5840449号によれば、潜在顔料からそれらの不溶性形態への転化(b)は、択一的に、熱処理(特に、熱源に近づけるか、または赤外光を照射することにより、例えば、50〜400℃の間の温度、好ましくは100〜200℃の温度で加熱する)、光分解処理(例えば、375nm以下の波長のUV光による照射)、または化学処理(有機または無機のプレンステッド酸もしくはルイス酸または塩基、例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸、三フッ化ホウ素、アンモニア、または4−ジメチルアミノピリジンなど、の蒸気への暴露)によって、非常に容易に実施することができる。
【0023】
米国特許第6495250号は、溶融可能なまたは溶媒可溶性の顔料前駆体を熱的に活性化されている酸前駆体の存在下においてフラグメント化することにより得られる有機顔料の有効着色量をその細孔中に含む、有色の、好ましくは天然の多孔性材料であって、当該フラグメント化が、40〜160℃の温度で、触媒前駆体から得られる強酸の有効量の存在下において生じることを特徴とする多孔性材料、ならびに低〜中温度での製造方法に関するものである。触媒前駆体の熱反応から結果として生じる強酸は、好ましくは2以下のpKa、最も好ましくは1以下のpKaを有する。
【0024】
米国特許出願公開第2007269737号は、所望の波長またはエネルギーレベルにおいて発色することが可能なカラー画像を基材上に形成するための組成物および方法に関するものである。当該色形成組成物は、担持体系とペンダント基を有する潜在顔料とを含み得、当該潜在顔料は、ペンダント基を有しているときは無色または淡色であるが、ペンダント基を取り除くと有色顔料へ変換可能である。
【0025】
米国特許出願公開第2007269737号の実施例2において、p−トルエンスルホン酸(pka=0.7)およびそれらに溶存する放射アンテナ染料を含むUV硬化性マトリックスが製造される。使用されている潜在顔料は、下記のLatent Pigment 3;
【化1】

であり、これは、UV硬化性マトリックス中に不溶性である。上記において製造された組成物による1〜10μmの厚さのコーティングを、放射アンテナ染料に適合する波長に晒すことにより(少なくとも130℃の熱を発生させる)、Latent Pigment 3の溶融および/または拡散が生じる。p−トルエンスルホン酸とLatent Pigment 3との間の相互作用により、下記のマゼンタ顔料PR122:
【化2】

が生成される。
【0026】
本発明の目的は、温度および時間の積分値をモニターすることができるインジケータを提供することである。本発明の別の目的は、経済的に製造および使用されるインジケータを提供することである。
【0027】
少なくとも1色の色変化を生じることが可能な潜在顔料と有機酸とを含むポリマーの少なくとも1層を備えるか、あるいは、少なくとも1色の色変化を生じることが可能な潜在顔料を含むポリマーの1層と有機酸(光酸発生剤(PAG)または熱酸発生剤(TAG)でもあり得る)を含むポリマーの1層とを備え、ならびに当該潜在顔料が、顔料形態へと転化され、それによって色変化が生じる、温度および時間の積分値をモニターするためのデバイス、ならびに
−a)基材へ本発明のインジケータ配合物を適用する工程を含む、当該デバイスを作成する方法、
−a)当該デバイスを、当該材料または当該材料を収容している容器に取り付ける工程と、b)滅菌のプロセスを実施する工程と、d)滅菌の進行を示す色変化を観察する工程とを含む、材料の滅菌をモニターするためのデバイスを使用する方法が提供される。当該潜在顔料は、当該顔料を適用媒体に対して可溶化する基であって、熱または放射によって切り離すことができ、それによって当該潜在顔料が顔料形態へと転化されるような基、を有する顔料であり、当該有機酸は、1〜5の範囲のpKa値を有する。
【0028】
そのようなデバイスは、医療用品および缶詰食品の滅菌ならびに電子レンジ食品の加熱具合をモニターするために使用することができる。
【0029】
図1は、以下の化合物:
【化3】

(A−1)の、様々な温度での様々な量の4−クロロサリチル酸(B−2)を伴う明度の変化を示している。
【0030】
図2は、135℃での3%の4−クロロサリチル酸を伴う、化合物A−1の色の変化を示している。
【0031】
当該デバイスは、それぞれがインジケータ、有機酸、およびバインダーを含有する2層以上のインジケータ層を備え得るであろう。両方の層が必ずしも色変化を生じなければならないわけではない。インジケータは、任意によるトップコートを有していてもよく、または透明なフィルムでラミネートされていてもよい。当該インジケータは、2つの層の間に挟装されていてもよく、好ましくは一方の層は、色変化を視察するために透明である。インジケータも2つの層で構成されていてもよく、そのうちの1層は潜在顔料を含有しており、そのうちの1層は有機酸を含有している。
【0032】
所望の色および色変化は、適切な潜在顔料と、任意により他の着色剤を適切な量において混合することによって得ることができる。同様に、色変化のために必要な時間は、適切な量における潜在顔料と有機酸との適切な混合物を使用することによって変えることができる。所望の色ならびに色変化のために必要な時間は、適合性のあるバインダーと添加剤とによる適切な混合物を選択することによって得ることができる。
【0033】
当該デバイスは、潜在顔料および有機酸を含有する自己支持型ポリマーフィルムであり得るだろうが、基材上に製造するのが望ましい。当該デバイスは、基材上にインジケーティング配合物をコーティングすることによって作成することができる。当該基材は、例えば、1種以上のポリマー性材料、紙、セラミック、金属、織物繊維、不織繊維、またはそれらの2つ以上の組み合わせから作成された任意の固体表面であり得るだろう。
【0034】
当該基材は、滅菌されるべきアイテムまたは調理されるべき食品のための容器、例えば、バッグ、ポーチ、缶など、あるいは容器の蓋であり得るであろう。当該滅菌インジケータはさらに、ステッカー、ストリップ、またはテープといった形態において製造することもできる。
【0035】
滑らかな表面を有する任意の固体基材を使用することができるが、好ましい基材は、柔軟で透明なプラスチックフィルム、および天然(セルロース)および合成(例えば、スパンボンドポリオレフィン、例えば、Tyvak(登録商標)など)紙である。プラスチックフィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、セロハン、およびセルロースのエステルなど、を透明基材として使用することができる。例えばアルミニウムなどの金属箔を使用することができる。最も好ましい基材は、ポリエチレンテレフタレート、セルロース紙、およびTyvak(登録商標)による厚さ5〜300μmのフィルムである。当該インジケータは、任意の形状、例えば、ドット、正方形、長方形、画像、イメージ、およびメッセージなど、の形態であってもよいであろう。
【0036】
当該デバイスは、a)本発明の当該インジケータ配合物を基材に適用する工程、によって作成される。
【0037】
当該デバイスはさらに、使用者が滅菌処理の終了を判断する手助けとなる参照色も備え得る。当該参照色の色は、所定の時間−温度積分後のインジケータ層の色に調節される。
【0038】
当該デバイスは、配合物が安価である、成分が無毒であると考えられる、適切な成分をインク増量剤中に混合するだけで容易にインク配合物が作成される、当該インクが必要なポットライフを備えている、染料のブリーディング/拡散が生じない、インクがグラビア印刷およびフレキソ印刷によってポリエステル、紙、印字上に印刷可能である、色変化のために必要な時間を簡単な方法で変更することができる、ならびに所望の色変化(出発時の明色、例えば黄色など、から、最終的な暗色、例えばボルドーレッドなどへ)を提供するなどの多くの利点を提供する。
【0039】
当該(滅菌)インジケータ配合物は、潜在顔料、1〜5の範囲のpKa値を有する有機酸、およびバインダーを含む。
【0040】
いわゆる「潜在顔料」は、当該顔料を適用媒体に対して可溶化する基であって、熱または放射によって切り離すことができ、それによって当該潜在顔料が顔料形態へと転化されるような基、を有する顔料である。
【0041】
当該潜在顔料は、概して、次の式:A(B)x(I)
[式中、
xは1〜8の整数であり、
Aは、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、インダントロン、イソインドリノン、イソインドリン、ジオキサジン、アゾ、フタロシアニン、またはジケトピロロピロール系の発色団の基であり、1個以上のヘテロ原子によってx個の基Bに結合しており、これらのヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択され、ならびに基Aの一部を形成しており、
Bは、式:
【化4】

の基であり、基Bは、xが2〜8の数の場合、それぞれ同一であっても、または異なっていてもよく、
Lは、溶解性を付与するために好適である所望の任意の基である]を有する。
【0042】
Lは、好ましくは、式:
【化5】

[式中、
1、Y2、およびY3は、それぞれ互いに独立して、C1〜C6アルキルであり、
4およびY8は、それぞれ互いに独立して、C1〜C6アルキル、または酸素、硫黄、もしくはN(Y122で中断されているC1〜C6アルキル、あるいは無置換の、またはC1〜C6アルキル−、C1〜C6アルコキシ−、ハロ−、シアノ−、もしくはニトロ−置換されたフェニルまたはビフェニルであり、
5、Y6、およびY7は、それぞれ互いに独立して、水素またはC1〜C6アルキルであり、
9は、水素、C1〜C6アルキル、あるいは式:
【化6】

の基であり、
10およびY11は、それぞれ互いに独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、N(Y122、あるいは非置換の、またはハロ−、シアノ−、ニトロ−、C1〜C6アルキル−、もしくはC1〜C6アルコキシ−置換されたフェニルであり、
12およびY13は、C1〜C6アルキルであり、Y14は、水素またはC1〜C6アルキルであり、ならびにY15は、水素、C1〜C6アルキル、あるいは非置換の、またはC1〜C6アルキル−置換されたフェニルであり、
Qは、非置換の、あるいはC1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、またはC2〜C12ジアルキルアミノによるモノ−またはポリ−置換されたp,q−C2〜C6アルキレンであり、この場合、pおよびqは、異なる位置を表す数であり、
Xは、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子であり、mは、Xが酸素または硫黄の場合には0であり、Xが窒素の場合には1であり、
1およびL2は、それぞれ互いに独立して、非置換の、あるいはモノ−またはポリ−C1〜C12アルコキシ−、−C1〜C12アルキルチオ−、−C2〜C24ジアルキルアミノ−、−C6〜C12アリールオキシ−、−C6〜C12アリールチオ−、−C7〜C24アルキルアリールアミノ−、または−C12〜C24ジアリールアミノ−置換されたC1〜C6アルキルまたは[−(p’,q’−C2〜C6アルキレン)−Z−]n−C1〜C6アルキルであり、nは1〜1000の数であり、p’およびq’は異なる位置を表す数であり、各Zは、すべての互いに独立して、ヘテロ原子である酸素、硫黄、またはC1〜C12アルキル−置換された窒素であり、繰り返し[−C2〜C6アルキレン−Z−]ユニット中のC2〜C6アルキレンは、同一であってもまたは異なっていてもよく、
ならびにL1およびL2は、飽和していても、または1〜10箇所において不飽和であってもよく、中断されていなくても、または−(C=O)−および−C64−からなる群より選択される1〜10個の基によって任意の位置で中断されていてもよく、ならびにさらなる置換基を有していなくてもよいし、またはハロゲン、シアノ、およびニトロからなる群より選択される1〜10個のさらなる置換基を有していてもよい]の基である。特に関心が高いのは、式(I):[式中、Lは、
【化7】

、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、または
【化8】

であり、ここで、Qは、C2〜C4アルキレンであり、Y1およびY2は、それぞれ互いに独立して、C1〜C6アルキルであり、ならびにL1およびL2は、[−C2〜C12アルキレン−Z−]n−C1〜C12アルキルであるか、あるいはC1〜C12アルコキシ、C1〜C12アルキルチオ、またはC2〜C24ジアルキルアミノによってモノ−もしくはポリ−置換されたC1〜C12アルキルであり、mおよびnは、前述において定義された通りである]の化合物である。
【0043】
特に興味深いのは、式(I)[式中、Lは、
【化9】

、C4〜C5アルキル、C3〜C6アルケニル、または
【化10】

であり、ここで、QはC2〜C4アルキレンであり、Y1およびY2は、それぞれ互いに独立して、C1〜C6アルキルであり、Xは酸素であり、mはゼロであり、
ならびにL1は、[−C2〜C12アルキレン−O−]n−C1〜C12アルキルであるか、またはC1〜C12アルコキシでモノ−置換もしくはポリ−置換されたC1〜C12アルキルである]の化合物であり、特に−Q−X−が式−C(CH32−CH2−O−の基である化合物である。
【0044】
好適な式(I)の化合物の例は、欧州特許出願公開第0648770号、同第0648817号、同第0742255号、同第0761772号、国際公開第98/32802号、同第98/45757号、同第98/58027号、同第99/01511号、同第00/17275号、同第00/39221号、同第00/63297号、および欧州特許出願公開第086984(A1)号において開示されている。当該顔料前駆体は、単独で、あるいは他の顔料前駆体または着色剤、例えば関心対象の用途のための従来の染料など、との混合物において使用され得る。
【0045】
Aは、基本構造A(H)xを有する既知の発色団の基であり、この場合、Aは、好ましくは、x個の基Bに結合している各ヘテロ原子のすぐ横に隣接するかまたは共役している少なくとも1個のカルボニル基を有しており、例えば、例として、
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

ならびに各場合におけるそれらの既知の誘導体すべてが挙げられる。
【0048】
さらに、水/アルコール、好ましくは水、に可溶な「潜在顔料」、例えば、欧州特許出願公開第1125995号に記載されているものなど、を使用することも可能である。そのような水溶性潜在顔料は、例えば、式I[式中、Bは、
【化14】

の基であり、xは1〜5の数であり、X1は、水素原子、アルカリ金属カチオン、またはアンモニウムカチオンであり、X2は置換基であり、X3、X4、X5、およびX6は、水素原子またはC1〜4アルキル基であり、lおよびl1は0〜4の数であり、この場合、置換基X2は、lが2〜4の場合は、互いに結合して環を形成していてもよい]の潜在顔料である。式I[式中、Bは、
【化15】

の基である]の潜在顔料は、あまり好ましくない。
【0049】
特記するのにふさわしいのは、式A(H)xの顔料が、カラーインデックスのピグメントイエロー13、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー94、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー175、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー194、ピグメントオレンジ31、ピグメントオレンジ71、ピグメントオレンジ73、ピグメントレッド122、ピグメントレッド144、ピグメントレッド166、ピグメントレッド184、ピグメントレッド185、ピグメントレッド202、ピグメントレッド214、ピグメントレッド220、ピグメントレッド221、ピグメントレッド222、ピグメントレッド242、ピグメントレッド248、ピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントレッド262、ピグメントレッド264、ピグメントブラウン23、ピグメントブラウン41、ピグメントブラウン42、ピグメントブルー25、ピグメントブルー26、ピグメントブルー60、ピグメントブルー64、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット29、ピグメントバイオレット32、ピグメントバイオレット37、あるいは、3,6−ジ(4’−シアノ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、3,6−ジ(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、または3−フェニル−6−(4’−tert−ブチル−フェニル)−2,5−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオンであるような可溶性発色団である。さらなる例については、Willy HerbstおよびKlaus Hungerにより「Industrial Organic Pigments」(ISBN 3−527−28161−4,VCH/ワインハイム 1993)に記載されている。概して、これらの可溶性顔料前駆体は、脱プロトン可能なカルボン酸基またはスルホン酸基を有していない。
【0050】
特に好ましい潜在顔料を以下に示す:
− C.I.ピグメントレッド254:
【化16】

(A−1)をベースとする潜在顔料であり、蛍光イエロー(潜在顔料)からボルドーレッド(顔料)への色変化を示す;
− C.I.ピグメントレッド254:
【化17】

(A−2)をベースとする潜在顔料であり、蛍光イエロー(潜在顔料)からボルドーレッド(顔料)への色変化を示す;
− C.I.ピグメントバイオレット37:
【化18】

(A−3)をベースとする潜在顔料であり、マゼンタ(潜在顔料)からバイオレット(顔料)への色変化を示す;
− 式:
【化19】

(A−4)の潜在顔料であり、蛍光オレンジ(潜在顔料)からマゼンタ(顔料)への色変化を示す;
− 式:
【化20】

(A−5)の潜在顔料であり、無色(潜在顔料)からイエロー(顔料)への色変化を示す;ならびに
− 式:
【化21】

(A−6)をベースとする潜在顔料であり、純粋形態における無色(潜在顔料)から、バイオレットからブルーまで(顔料)の色変化を示す。最も好ましいのは、A−1である。
【0051】
アルキルまたはアルキレンは、直鎖状、分岐鎖状、単環式、または多環式であってもよい。したがって、C1〜C12アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、n−オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、トリメチルシクロヘキシル、デシル、メンチル、ツジル、ボルニル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、またはドデシルである。
【0052】
2〜C12アルキルが、一価不飽和または多価不飽和の場合、それは、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C2〜C12アルカポリエニル、またはC2〜C12アルカポリイニルであり、2つ以上の二重結合は、適切であれば、例えば、ビニル、アリル、2−プロペン−2−イル、2−ブテン−1−イル、3−ブテン−1−イル、1,3−ブタジエン−2−イル、2−シクロブテン−1−イル、2−ペンテン−1−イル、3−ペンテン−2−イル、2−メチル−1−ブテン−3−イル、2−メチル−3−ブテン−2−イル、3−メチル−2−ブテン−1−イル、1,4−ペンタジエン−3−イル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、1−p−メンテン−8−イル、4(10)−ツジェン−10−イル、2−ノルボルネン−1−イル、2,5−ノルボルナジエン−1−イル、7,7−ジメチル−2,4−ノルカラジエン−3−イル、ならびにヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、およびドデセニルの様々な異性体などのように、独立してまたは共役していてもよい。
2〜C4アルキレンは、例えば、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、2,3−ブチレン、1,4−ブチレン、および2−メチル−1,2−プロピレンである。
5〜C12アルキレンは、例えば、ペンチレン、ヘキシレン、オクチルエン、デシルエン、またはドデシルエンの異性体である。
1〜C12アルコキシは、O−C1〜C12アルキル、好ましくはO−C1〜C4アルキルである。
6〜C12アリールオキシは、O−C6〜C12アリール、例えば、フェノキシまたはナフチルオキシ、好ましくはフェノキシである。
1〜C12アルキルチオは、S−C1〜C12アルキル、好ましくはS−C1〜C4アルキルである。
6〜C12アリールチオは、S−C6〜C12アリール、例えば、フェニルチオまたはナフチルチオ、好ましくはフェニルチオである。
2〜C24ジアルキルアミノは、N(アルキル1)(アルキル2)であり、2つの基アルキル1およびアルキル2における炭素原子の合計は2〜24であり、好ましくはN(C1〜C4アルキル)−C1〜C4アルキルである。
7〜C24アルキルアリールアミノは、N(アルキル1)(アリール2)であり、2つの基アルキル1およびアリール2における炭素原子の合計は7〜24であり、例えば、メチルフェニルアミノ、エチルナフチルアミノ、またはブチルフェナントリルアミノ、好ましくはメチルフェニルアミノまたはエチルフェニルアミノである。
12〜C24ジアリールアミノは、N(アリール1)(アリール2)であり、2つの基アリール1およびアリール2における炭素原子の合計は12〜24であり、例えば、ジフェニルアミノまたはフェニルナフチルアミノ、好ましくはジフェニルアミノである。
ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素であり、好ましくはフッ素または塩素、特に塩素である。
【0053】
概して、分解温度の低下、または所定の温度での潜在顔料の分解の速度は、酸性度(pKa値)および使用される酸の極性、ならびに使用されるバインダーの性質に応じて変わる。酸性度が高すぎる場合、潜在顔料の時期尚早の分解が室温で生じ得る。酸性度が低すぎる場合、効果は全く確認され得ない。したがって、好ましい有機酸のpKa値は、1〜5、特に1.5〜4.5の範囲である。加えて、好ましい酸は、適用媒体中において、中〜低程度の範囲の極性を示す。適用媒体の例としては、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。
【0054】
分解が加速する速度も、使用される酸の量に応じて変わる。概して、酸の量を増加させると、所定の温度での潜在顔料の分解の速度が高まる。加えて、所望の分解速度を生じる温度が低下し得る。概して、印刷用インク中の酸の量は、印刷用インクの総重量に対して、0.1〜20質量%、好ましくは0.5−10質量%の範囲である。
【0055】
「有機酸」なる用語は、1〜5の範囲のpKa値、特に1.5〜4.5の範囲のpKa値を有する有機化合物を意味する。当該用語はさらに、有機酸の前駆体、例えば、いわゆる「光酸発生剤」(PAG)または「熱酸発生剤」(TAG)など、も包含する。PAGまたはTAGは、照射または熱の適用により、所望の酸(特定のpKa値を有する)を放出する。好適なPAGは、例えば、Ciba Inc.から入手可能である。そのような化合物の例を以下に示す:
【化22】

PAGおよびTAGは、あまり好ましくない。
【0056】
本発明の組成物中において使用することができる有機酸の例は、α−カルボニルカルボン酸、例えば、グリオキシル酸およびベンゾイルギ酸(B−14)など、安息香酸、特に置換された安息香酸、例えば、化合物B−1〜B−7、B9、およびB11など、ベンジル酸および誘導体、例えば、化合物B−8など、アスコルビン酸およびそれらの誘導体、例えば、アスコルビン酸のエステル、例えば、アスコルビン酸パルミテート(B−15)など、アミノ酸、例えば、化合物B−16、B−17、およびB−18など、シクラミン酸塩およびそれらの誘導体、サッカリンおよびそれの誘導体である。
【0057】
本発明のインジケータシステムは、適切な潜在顔料ならびに有機酸の種類および量を選択することにより、所望の時間−温度条件に容易に適合させることが可能である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、有機酸は、式:
【化23】

[式中、
1およびR2は、互いに独立して、H、OH、Cl、またはNO2であるが、ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはHではない]の化合物である。当該酸のpKa値は、好ましくは、1.5〜4.5の範囲、より好ましくは2.0超〜4.0の範囲である。
【0059】
好ましい有機酸は、請求項3に記載されている化合物B−1〜B−18:5−クロロ−サリチル酸(B−1)、4−クロロ−サリチル酸(B−2)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(B−3)、2−クロロ−4−ニトロ−安息香酸(B−4)、2−クロロ−安息香酸(B−5)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(B−6)、サリチル酸(B−7)、ベンジル酸(B−8)、3−ニトロ−安息香酸(B−9)、サッカリン(B−10)、3,4−ジヒドロキシ−安息香酸(B−11)、シクラミン酸塩(B−12)、ソルビン酸(B−13)、フェニル−ピルビン酸(B−14)、6−パルミチル−L−アスコルビン酸(B−15)、L−フェニルアラニン(B−16)、トリプトファン(B−17)、L−ロイシン(B−18)、およびそれらの混合物である。
【0060】
当該潜在顔料、有機酸、および任意の他の添加剤を溶解または分散させることができるマトリックスまたは媒体は、本明細書においてバインダー、ポリマー、またはポリマー性バインダーと呼ばれる。潜在顔料および有機酸を溶解または分散させることが可能である限り、多様なポリマー性材料を当該インジケータ配合物のためのバインダーとして使用することができる。水性および非水性バインダーの両方を使用することができる。当該バインダーは、例えば、フレキソ印刷用インクおよびグラビア印刷用インクとしての使用のためのインク配合物として配合することができる。他のインク、例えば、インクジェット印刷、活版印刷、オフセット印刷、およびスクリーン印刷用のインクなど、も作成および使用することができる。ポリマーの選択は、使用される印刷/コーティング装置に応じて行われる。
【0061】
本発明の配合物は、好ましくはインクである。本発明によるインクは、通常の印刷用インクの場合のように、潜在顔料、有機酸、バインダー、助剤などを含む。
【0062】
バインダー樹脂については、熱可塑性樹脂を使用してもよく、そのような例としては、ポリエチレンベースのポリマー、[ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン(PP)、ビニルベースのポリマー[ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(塩化ビニリデン)(PVdC)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリ(ビニルホルマール)(PVF)]、ポリスチレンベースのポリマー[ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)]、アクリルベースのポリマー[ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、MMA−スチレンコポリマー]、ポリカーボネート(PC)、セルロース[エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(CA)、プロピルセルロース(CP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースニトレート(CN)]、フッ素ベースのポリマー[ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレンコポリマー(FEP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)]、ウレタンベースのポリマー(PU)、ナイロン[タイプ6、タイプ66、タイプ610、タイプ11]、ポリエステル(アルキル)[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)]、ノボラックタイプのフェノール樹脂などが挙げられる。加えて、熱硬化性樹脂、例えば、レゾールタイプのフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなど、ならびに天然樹脂、例えば、タンパク質、ゴム、セラック、コーパル、デンプン、およびロジンなど、も使用することができる。
【0063】
さらに、上記の樹脂は、水ベースの塗料での使用のために、エマルション形態であってもよい。水ベースの塗料での使用のためのエマルションとしては、例えば、酢酸ビニル(ホモポリマー)エマルション、酢酸ビニル−アクリル酸エステルコポリマーエマルション、酢酸ビニルエチレンコポリマーエマルション(EVAエマルション)、酢酸ビニル−ビニルバーサテートコポリマー樹脂エマルション、酢酸ビニル−ポリビニルアルコールコポリマー樹脂エマルション、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂エマルション、アクリルエマルション、アクリルシリコーンエマルション、スチレン−アクリレートコポリマー樹脂エマルション、ポリスチレンエマルション、ウレタンポリマーエマルション、ポリオレフィンクロリドエマルション、エポキシ−アクリレート分散液、SBRラテックスなどが挙げられる。
【0064】
さらに加えて、バインダーに、印刷フィルムの柔軟性および強度を安定させるための可塑剤、ならびにその粘度および乾燥特性を調整するための溶媒を、必要に応じて添加してもよい。印刷方法のタイプに応じて、約100℃の低沸点の溶媒および250℃以上の高沸点の石油系溶媒を使用することができる。例えば、アルキルベンゼンなどは、低沸点の溶媒として使用することができる。溶媒の例は、エトキシプロパノール、メチルエチルケトン、メトキシプロピルアセテート、ジアセトンアルコールなどである。
【0065】
さらに、乾燥特性、粘度、および分散性を向上させるために、様々な反応剤を含む助剤を好適に添加することができる。当該助剤はインクの性能を調整するためのものであり、例えば、インク表面の耐摩耗性を改善する化合物、ならびにインクの乾燥を促進する乾燥剤などを用いることができる。
【0066】
溶媒を使用しない光重合硬化性樹脂または電子ビーム硬化性樹脂も、展色材の主要成分であるバインダー樹脂として用いることができる。それらの例としては、アクリル樹脂が挙げられ、市販されているアクリルモノマーの具体例を下記に示す。
【0067】
使用することができる単官能性アクリレートモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシル−EO付加体アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート−カプロラクトン付加体、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノール−EO付加体アクリレート、(ノニルフェノール−EO付加体)−カプロラクトン付加体アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フルフリルアルコール−カプロラクトン付加体アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、(4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン)−カプロラクトン付加体アクリレート、(3−メチル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン)−カプロラクトン付加体アクリレートなどが挙げられる。
【0068】
使用することができる多官能基アクリレートモノマーとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、(ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート)−カプロラクトン付加体ジアクリレート、(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)−アクリル酸付加体、(ヒドロキシピバルアルデヒド−トリメチロールプロパンアセタール)ジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]メタン、水素化ビスフェノールA−エチレンオキシド付加体ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、(トリメチロールプロパンプロピレンオキシド)付加体トリアクリレート、グリセリン−プロピレンオキシド付加体トリアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートおよびペンタアクリレートの混合物、ジペンタエリトリトールおよび低級脂肪酸およびアクリル酸のエステル、ジペンタエリトリトール−カプロラクトン付加体アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェートなどが挙げられる。
【0069】
上記の樹脂を含むインクは溶媒を含んでおらず、電子ビームまたは電磁波を照射することによって連鎖反応において重合するように構成される。
【0070】
これらのインクのうちの紫外線照射タイプのインクに関しては、光重合開始剤、ならびに必要に応じて、増感剤、および助剤、例えば、重合禁止剤および連鎖移動剤など、を添加してもよい。
【0071】
光重合開始剤に関しては、(1)アリールアルキルケトン、オキシムケトン、アシルホスフィンオキシドなどの直接光分解タイプの開始剤、(2)ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体などのラジカル重合反応タイプの開始剤、(3)アリールジアゾニウム塩、アリールヨージニウム塩、アリールスルホニウム塩、およびアリールアセトフェノン塩などのカチオン重合反応タイプの開始剤、さらに、(4)エネルギー伝達タイプの開始剤、(5)光酸化還元タイプの開始剤、(6)電子移動タイプの開始剤など、が存在する。電子ビーム硬化性タイプのインクに関しては、光重合開始剤は必要ではなく、紫外線照射タイプのインクの場合と同じタイプの樹脂を使用することが可能であり、様々な種類の助剤を、必要に応じて添加することができる。
【0072】
当該インクは、インクの総質量に対して、全含有量が0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、最も好ましくは1〜4質量%の潜在顔料を含む。
【0073】
さらに、配合物中の有機酸の量を変えることによって、インジケータ組成物が色を変化させるであろう特定の条件を変更することが可能である。そのような組成物は、滅菌方法の有効性を特定するのに特に有用である。
【0074】
当該インクは、インクの総質量に対して、全含有量が0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、最も好ましくは1〜4質量%の酸を含む。
【0075】
潜在顔料分散インク組成物は、今までの従来の既知の様々な方法を用いることによって製造することができる。例えば、それぞれの成分(バインダー、添加剤、潜在顔料、および有機酸)を混合し、それらを溶解器などの攪拌機で混ぜ合わせて撹拌するか、またはそれらをボールミルで混ぜ合わせ粉砕することによって、容易に得ることができる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態において、潜在顔料は、標準的な分散機器、例えば、Scandexミキサーまたは溶解機(Zahnscheibenruehrer)など、を使用して、他のそれぞれの成分と一緒に分散される。潜在顔料の量は、インクの総質量に対して、0.5〜10質量%、好ましくは1〜4質量%の間で変わり得る。酸は、同時に添加してもよいし、後の段階において添加してもよい。あるいは、潜在顔料を含有する層の上または下の第二の層中に酸を配置することも可能である。後者の技術は、より多くの時間を必要とするが、添加された酸が、分散/溶解工程における潜在顔料の時期尚早の(部分的)分解の原因となる場合に用いることができる。
【0077】
当該インジケータは、非常に低い温度(例えば、室温)から加圧蒸気の非常に高い温度(例えば、150℃)まで色変化を生じることができる。色変化のために好ましい温度は、インジケータの用途に応じて変わる。食物の加熱具合および台所用品の滅菌をモニターする場合、温度は、60℃〜100℃であり得るだろう。缶詰食品の蒸気滅菌をモニターする場合、温度は、80℃〜120℃において変わり得、医療用品の場合、温度は、100℃〜150℃において変わり得るだろう。好ましい温度範囲は、80〜140℃である。
【0078】
色変化に必要な時間は、以下のパラメータ:バインダーおよびインジケータ層の厚さ、有機酸の濃度、潜在顔料の濃度、およびバインダーの性質、の1つ以上を変更することによって変えることができる。
【0079】
インジケータおよびバリアー層の厚さは、1ミクロン〜500ミクロンにおいて変わり得る。好ましい厚さは、およそ0.5〜50ミクロンであり、最も好ましい厚さは、およそ1〜20ミクロンである。
【0080】
インジケータにとって好ましい時間範囲は、用途および滅菌の温度に応じて変わるであろう。滅菌にとって好ましい時間は、1〜100分間である。最も好ましい時間は、2〜30分間である。食品の適度な加熱および台所用品の滅菌にとって好ましい時間範囲も、温めの温度に応じて変わる。食品の加熱具合にとって好ましい時間は、1〜100分間である。最も好ましい時間は2〜15分間である。
【0081】
本明細書において説明したデバイスは積分計であり、すなわち、それらは、時間および温度の積分値をモニターするものである。
【0082】
医療用品は、通常、100℃を超える温度において、例えば、125℃で約20分間および135℃で5分間など、において滅菌される。医療用品のための蒸気滅菌インジケータとしてインジケータを使用するためには、当該インジケータは、好ましくは100℃より低い温度で色変化を生じてはならない。さらに、高い周囲温度および湿度においても、色変化を生じてはならない。医療用品の滅菌にとって好ましいインジケータ組成物は、スクリーン印刷配合物におけるA−1およびB−8の1:1混合物から成る(実施例1)。そのようなインジケータ組成物は、40℃で2週間においても色が変化しない。
【0083】
電子レンジまたは従来のガスオーブンもしくは電気オーブンのいずれかで加熱されるべき冷凍食品は、好ましくは、少なくとも80℃より高い温度に加熱されるはずである。当該食品の適度な加熱に必要な時間は、当該食品の性質に応じて変わるであろう。食品の加熱具合をモニターするために使用される当該インジケータ組成物は、約60℃未満において色が変化すべきではない。
【0084】
家庭、レストラン、およびケータリング業者は、台所用品、例えば、皿、刃物、および台所器具など、を使用するが、これらは、通常100℃未満において、乾燥熱、熱湯、および蒸気のいずれかによって滅菌する必要がある。例えば、90℃で10分間、調理用具が、ある特定の積分値の熱および/または湿気に晒されたことを確認するためのインジケータ組成物も必要とされている。
【0085】
潜在顔料と1〜5の範囲のpKa値を有する有機酸とを含む組成物は新規であり、本発明のさらなる目的を形成する。
【0086】
好ましい組成物は以下を含む。
【0087】
【表1】

【0088】
本発明の様々な特徴および局面について、以下の実施例においてさらに例証する。これらの実施例は、本発明の範囲内での実施方法について当業者に示すために提示されるものであるが、それらは、本発明の範囲を限定するものとして機能するわけではなく、本発明の範囲はクレームにおいてのみ定義される。以下の実施例、ならびに明細書および請求の範囲のいずれかにおいて特に示されない限り、全ての部およびパーセントは質量によるものであり、全ての温度は摂氏温度であり、ならびに圧力は大気圧または大気圧付近である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、化合物(A−1)の、様々な温度での様々な量の4−クロロサリチル酸(B−2)を伴う明度の変化を示している。
【図2】図2は、135℃での3%の4−クロロサリチル酸を伴う、化合物A−1の色の変化を示している。
【0090】
実施例
実施例1
スクリーン印刷のための標準ビニルインク配合物:
当該インク配合物は、Movital B20H(6.5%、ビニルアルコール/酢酸ビニルコポリマー)、Foralyn 5020−F(1.5%)、エトキシプロパノール(30%)、酢酸メトキシプロピル(40%)、およびジアセトンアルコール(22%)から成る。
【0091】
0.5gの潜在顔料(3%)および0.5gの有機酸(3%)を、16.7gの印刷用インク配合物および60gの3mmガラスビーズと一緒に混合する。当該混合物を、Skandexミキサーで20分間分散させ、続いて、ドクターブレード(#2=ウエットで12μmの層厚)を用いて白黒の紙の上に塗工する。反応速度測定は、加熱プレート(Praezitherm 1100、Harry Gestigkeit GmbH Duesseldorf)を使用して実施する。発色は、比色計(Eye1、Gretag−Mcbeth)を用い、毎分において測定する。
【0092】
第1表に、ベンジル酸B−8との化合物A−1(1:1;組成物C−8)の発色を示す:
【表2】

【0093】
実施例2
ベンジル酸の代わりに有機酸としてフェニル−ピルビン酸(B−14)を使用する以外、実施例1と同様である(組成物C−14)。
【0094】
第2表に、フェニル−ピルビン酸(B−14)との化合物A−1の混合物(1:1)の発色について示す(組成物C−14):
【表3】

【0095】
実施例3
ベンジル酸の代わりに有機酸としてサッカリン(B−10)を使用する以外、実施例1と同様である。
【0096】
第3表に、サッカリン(B−10)との化合物A−1(1:1;組成物(C−10))の発色を示す:
【表4】

【0097】
実施例4
ベンジル酸の代わりに有機酸として4−クロロサリチル酸(B−2)を使用し、有機酸の量が変わっていること以外、実施例1と同様である。
【0098】
結果を図1および2に示す。図1から明かであるように、潜在顔料の分解温度は、使用される酸の量に依存している。より多くの酸を用いた場合、分解温度はさらに低くなる。
【0099】
実施例5
グラビア印刷用の標準ビニルインク配合物:
当該インク配合物は、Vinylite VYHH(14%、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー)、エトキシプロパノール(10%)、メチルエチルケトン(76%)から成る。
【0100】
0.5gの潜在顔料(3%)および0.5gの有機酸(3%)を、16.7gの印刷用インク配合物および60gの3mmガラスビーズと一緒に混合する。当該混合物を、Skandexミキサーで20分間分散させ、続いて、ドクターブレード(#2=ウエットで12μmの層厚)を用いて白黒の紙の上に塗工する。反応速度測定は、加熱プレート(Praezitherm 1100,Harry Gestigkeit GmbH Duesseldorf)を使用して実施する。発色は、比色計(Eye1,Gretag−Mcbeth)を用いて、毎分において測定する。
【0101】
第4表に、化合物A−1とベンジル酸(B−8)との発色(1:1;組成物C−8)を示す:
【表5】

【0102】
実施例6
ベンジル酸の代わりに有機酸として6−パルミチル−L−アスコルビン酸(B−15)を使用する以外、実施例5と同様である。
【0103】
第5表に、化合物A−1と6−パルミチル−L−アスコルビン酸(B−15)との発色(1:1;組成物(C−15))を示す:
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在顔料、1〜5の範囲のpKa値を有する有機酸、およびバインダーを含む、(滅菌)インジケータ配合物であって、該潜在顔料が、熱または放射によって切り離すことができ、それによって該潜在顔料が顔料形態へと変換される、顔料を適用媒体に対して可溶化する基を有する顔料である前記インジケータ配合物。
【請求項2】
少なくとも1色の色変化を生じることが可能な潜在顔料と有機酸とを含むポリマーの少なくとも1層を備えるか、または少なくとも1色の色変化を生じることが可能な潜在顔料を含むポリマーの1層と有機酸を含むポリマーの1層とを備える、時間および温度の積分値をモニターするためのデバイスであって、該潜在顔料がその顔料形態に変換され、それによって色変化が生じ、該潜在顔料が、熱または放射によって切り離すことができ、それによって該潜在顔料が顔料形態へと変換される、顔料を適用媒体に対して可溶化する基を有する顔料であり、該有機酸が1〜5の範囲のpKa値を有する前記デバイス。
【請求項3】
前記有機酸が、式:
【化1】

[式中、R1およびR2は、互いに独立して、H、OH、Cl、またはNO2であるが、ただし、R1およびR2のうちの少なくとも1つはHではない]の化合物である、請求項1に記載のインジケータ配合物または請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記有機酸が、
【化2】

(B−1;5−クロロサリチル酸)、
【化3】

(B−2;4−クロロ−サリチル酸)、
【化4】

(B−3;2,4−ジヒドロキシ安息香酸)、
【化5】

(B−4;2−クロロ−4−ニトロ−安息香酸)、
【化6】

(B−5;2−クロロ−安息香酸)、
【化7】

(B−6;2,5−ジヒドロキシ−安息香酸)、
【化8】

(B−7;サリチル酸)、
【化9】

(B−8;ベンジル酸)、
【化10】

(B−9;3−ニトロ−安息香酸)、
【化11】

(B−10;サッカリン)、
【化12】

(B−11;3,4−ジヒドロキシ−安息香酸)、
【化13】

(B−12、シクラミン酸塩)、
【化14】

(B−13;ソルビン酸)、
【化15】

(B−14;フェニル−ピルビン酸)、
【化16】

(B−15;6−パルミチル−アスコルビン酸(パルミチン酸アスコルビル))、
【化17】

(B−16;フェニルアラニン)、
【化18】

(B−17;トリプトファン)、
【化19】

(B−18;ロイシン)およびそれらの混合物から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載のインジケータ配合物またはデバイス。
【請求項5】
前記潜在顔料が、以下の式
A(B)x (I)
[式中、
xは1〜8の整数であり、
Aは、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、インダントロン、イソインドリノン、イソインドリン、ジオキサジン、アゾ、フタロシアニン、またはジケトピロロピロール系の発色団の基であり、前記基は、1個以上のヘテロ原子によってx個の基Bに結合しており、これらのヘテロ原子は、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択され、ならびに基Aの一部を形成しており、
Bは、式:
【化20】

の基であり、基Bは、xが2〜8の数の場合、それぞれ同一であっても、または異なっていてもよく、ならびに
Lは、溶解性を付与するために好適である任意の所望の基であり、特に、Lが、式:
【化21】

の基であり、ここで、Y1、Y2、およびY3は、それぞれ互いに独立して、C1〜C6アルキルであり、
4およびY8は、それぞれ互いに独立して、C1〜C6アルキル、または酸素、硫黄、もしくはN(Y122で中断されているC1〜C6アルキル、あるいは無置換の、またはC1〜C6アルキル−、C1〜C6アルコキシ−、ハロ−、シアノ−、もしくはニトロ−置換されたフェニルまたはビフェニルであり、
5、Y6、およびY7は、それぞれ互いに独立して、水素またはC1〜C6アルキルであり、
9は、水素、C1〜C6アルキル、あるいは式:
【化22】

の基であり、
10、およびY11は、それぞれ互いに独立して、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、N(Y122、あるいは非置換の、またはハロ−、シアノ−、ニトロ−、C1〜C6アルキル−、もしくはC1〜C6アルコキシ−置換されたフェニルであり、
12およびY13は、C1〜C6アルキルであり、Y14は、水素またはC1〜C6アルキルであり、ならびにY15は、水素、C1〜C6アルキル、あるいは非置換の、またはC1〜C6アルキル−置換されたフェニルであり、
Qは、非置換の、あるいはC1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、またはC2〜C12ジアルキルアミノによる一置換または多置換されたp,q−C2〜C6アルキレンであって、この場合、pおよびqは、異なる位置を表す数であり、
Xは、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択されるヘテロ原子であり、mは、Xが酸素または硫黄の場合には0であり、Xが窒素の場合には1であり、
1およびL2は、それぞれ互いに独立して、非置換の、あるいはC1〜C12アルコキシ−、C1〜C12アルキルチオ−、C2〜C24ジアルキルアミノ−、C6〜C12アリールオキシ−、C6〜C12アリールチオ−、C7〜C24アルキルアリールアミノ−、もしくはC12〜C24ジアリールアミノで一置換または多置換されたC1〜C6アルキルまたは[−(p’,q’−C2〜C6アルキレン)−Z−]n−C1〜C6アルキルであり、nは1〜1000の数であり、p’およびq’は、異なる位置を表す数であり、各Zは、任意に互いに独立して、ヘテロ原子である酸素、硫黄、またはC1〜C12アルキル−置換された窒素であり、繰り返し[−C2〜C6アルキレン−Z−]ユニット中のC2〜C6アルキレンは、同一であってもまたは異なっていてもよく、
ならびに、L1およびL2は、飽和であっても、または1〜10箇所において不飽和であってもよく、中断されていなくても、または−(C=O)−および−C64−からなる群より選択される1〜10個の基によって任意の位置で中断されていてもよく、ならびに、さらなる置換基を有していなくてもよいし、またはハロゲン、シアノ、およびニトロからなる群より選択される1〜10個のさらなる置換基を有していてもよく、あるいは、
Bは、式:
【化23】

の基であり、xは1〜5の数であり、X1は、水素原子、アルカリ金属カチオン、またはアンモニウムカチオンであり、X2は置換基であり、X3、X4、X5、およびX6は、水素原子またはC1〜4アルキル基であり、lおよびl1は0〜4の数であり、この場合、複数の置換基X2は、lが2〜4の場合は、互いに結合して環を形成していてもよい]を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のインジケータ配合物またはデバイス。
【請求項6】
前記潜在顔料が、
【化24】

またはそれらの混合物から選択される、請求項5に記載のインジケータ配合物またはデバイス。
【請求項7】
印刷用インクである、請求項1から6までのいずれか1項に記載のインジケータ配合物。
【請求項8】
前記バインダーが、熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンベースのポリマー、[ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー]、ポリプロピレン(PP)、ビニルベースのポリマー[ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(塩化ビニリデン)(PVdC)、ポリ(酢酸ビニル)(PVAc)、ポリ(ビニルホルマール)(PVF)]、ポリスチレンベースのポリマー[ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)]、アクリルベースのポリマー[ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、MMA−スチレンコポリマー]、ポリカーボネート(PC)、セルロース[エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(CA)、プロピルセルロース(CP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースニトレート(CN)]、フッ素ベースのポリマー[ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレンコポリマー(FEP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVdF)]、ウレタンベースのポリマー(PU)、ナイロン[タイプ6、タイプ66、タイプ610、タイプ11]、ポリエステル(アルキル)[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)]、ノボラックタイプのフェノール樹脂、熱硬化性樹脂、例えば、レゾールタイプのフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、および不飽和ポリエステルなど、天然樹脂、例えば、タンパク質、ゴム、セラック、コーパル、デンプン、およびロジンなど、光重合硬化性樹脂、ならびに電子ビーム硬化性樹脂から選択される、請求項7に記載のインジケータ配合物。
【請求項9】
a)請求項1または3から8までのいずれか1項に記載のインジケータ配合物を基材に適用する工程を含む、請求項2に記載のデバイスを作成する方法。
【請求項10】
材料の滅菌をモニターするために、請求項2から6までのいずれか1項に記載のデバイスを使用する方法であって、a)該デバイスを、該材料または該材料を収容している容器に取り付ける工程と、b)滅菌のプロセスを実施する工程と、c)滅菌の該プロセスの際に熱を導入する工程と、d)該滅菌の進行を示す色変化を観察する工程とを含む、方法。
【請求項11】
前記基材が、1種以上のポリマー性材料、紙、セラミック、金属、織り繊維、不織繊維、またはそれらの2つ以上の組み合わせを包含する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー性材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、セロハン、およびセルロースのエステル、あるいはそれらの2つ以上の混合物を包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記材料が、医療用品、食品、医薬品、または生物学的廃棄物である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
a)前記デバイスを熱に晒す工程と、
b)該デバイスの色変化を観察する工程と
を含む、温度をモニターするために請求項2に記載のデバイスを使用する方法。
【請求項15】
潜在顔料と、1〜5の範囲のpKa値を有する有機酸とを含む組成物であって、該潜在顔料が、熱または放射によって切り離すことができ、それによって該潜在顔料が顔料形態へと変換される、顔料を適用媒体に対して可溶化する基を有する顔料である前記組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526270(P2012−526270A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509021(P2012−509021)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056065
【国際公開番号】WO2010/128063
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】