説明

滅菌庫及び滅菌庫を備えたアイソレータシステム

【課題】アイソレータのチャンバーを効率良く滅菌しつつ設備コストを低減する。
【解決手段】作業者が内部で作業を行う操作用チャンバーと接続するための接続部を有する筺体と、接続部を介して操作用チャンバーと連通可能である滅菌用チャンバーと、滅菌用チャンバーの上部に設けられる滅菌ガス発生装置と、滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを少なくとも滅菌用チャンバーへ供給する滅菌ガス供給回路とを備え、滅菌用チャンバーは、被滅菌物を外部から出し入れするための第1の扉と、操作用チャンバーと連通するための接続部に設けた第2の扉と、滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを導入するための滅菌ガス導入口とを有し、滅菌ガス供給回路は、滅菌ガスを滅菌用チャンバーの滅菌ガス導入口に供給する第1ガス供給回路と、操作用チャンバーに滅菌ガスを供給するための出力ポートをその一端に有する第2ガス供給回路とを有する滅菌庫。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌庫及び滅菌庫を備えたアイソレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インキュベータと連結されて、同インキュベータで培養される細胞に対し所定の前処理等を無菌的に施すために外気と隔離されたアイソレータが知られている。また、このアイソレータと連結されて、同アイソレータに細胞や培養に必要な物品等を搬入する前にこれらを滅菌するために外気と隔離された滅菌庫が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この滅菌庫は、滅菌ガス発生装置等の滅菌手段を備えている。例えば、作業者は、先ず、アイソレータ及び滅菌庫のチャンバーどうしを隔てる扉を閉じた状態で、滅菌庫のチャンバー内に細胞や物品等を搬入し、同チャンバー内でこれらを滅菌する。次に、作業者は、前述した扉を開けて、無菌状態に保持されたアイソレータのチャンバー内に滅菌庫のチャンバー内で滅菌された細胞や物品等を搬入する。
【0004】
上記の無菌的に施す作業とは無菌環境で行う作業であり、無菌環境とは作業に必要な物質以外の混入を回避するために限りなく無塵、無菌に近い環境をいう。また、上記滅菌とは、無菌環境を実現するための処理を指す。
【0005】
また、滅菌は、1)前処理工程、2)ガス曝露工程、3)置換工程からなり、それぞれ、
1)前処理工程は、滅菌対象空間のリークテストを含む、滅菌ガスを供給するまでの準備工程、
2)曝露工程は、滅菌ガスを対象空間へ供給する工程
3)置換工程は、滅菌対象空間の滅菌ガスを無害化して排気し、外気と置き換える工程
である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−301138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、インキュベータで培養された細胞をアイソレータを経て滅菌庫から搬出した後、同アイソレータを再度無菌状態とすることがある。この場合、前述した特許文献1に開示されたアイソレータ及び滅菌庫では、それぞれのチャンバーどうしを隔てる扉を開けた状態で、滅菌庫の外装滅菌用の滅菌ガス発生装置等から発生する滅菌ガスをアイソレータのチャンバーに導くことによって、同チャンバーを滅菌していた。これは滅菌の効率が悪く、滅菌処理にも時間がかかるという問題があった。
【0008】
一方、アイソレータにも滅菌手段を設ければ、そのチャンバー内の滅菌の効率は向上するが、これではアイソレータ及び滅菌庫の双方とも滅菌手段を個別に備えることになるため、その分だけ設備コストが嵩むという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための発明は、作業者が内部で作業を行う操作用チャンバーと接続するための接続部を有する筺体と、前記接続部を介して前記操作用チャンバーと連通可能である滅菌用チャンバーと、前記滅菌用チャンバーの上部に設けられる滅菌ガス発生装置と、前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを少なくとも前記滅菌用チャンバーへ供給する滅菌ガス供給回路と、を備え、前記滅菌用チャンバーは、被滅菌物を外部から出し入れするための第1の扉と、前記操作用チャンバーと連通するための前記接続部に設けた第2の扉と、前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを導入するための滅菌ガス導入口とを有し、前記滅菌ガス供給回路は、前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを前記滅菌用チャンバーの滅菌ガス導入口に供給する第1ガス供給回路と、前記操作用チャンバーに前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを供給するための出力ポートをその一端に有する第2ガス供給回路とを有する、滅菌庫である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アイソレータのチャンバーを効率良く滅菌しつつ、設備コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】滅菌庫を含むアイソレータシステムの構成例を示す回路図である。
【図2】滅菌庫の外観構成例を示す斜視図である。
【図3】アイソレータシステムの外観構成例を示す図である。
【図4】滅菌用チャンバーの滅菌工程における滅菌ガスの流れを示す回路図である。
【図5】滅菌用チャンバー及び細胞操作用チャンバーの滅菌工程における滅菌ガスの流れを示す回路図である。
【図6】滅菌用チャンバーの清浄用フィルタの滅菌工程における滅菌ガスの流れと、細胞操作用チャンバーの清浄用フィルタの滅菌工程における滅菌ガスの流れとをともに示す回路図である。
【図7】滅菌用チャンバーの置換工程における空気の流れと、細胞操作用チャンバーの置換工程における空気の流れとをともに示す回路図である。
【図8】連結装置の滅菌工程における滅菌ガスの流れを示す回路図である。
【図9】連結装置の置換工程における空気の流れを示す回路図である。
【図10】Opチャンバーの滅菌工程における滅菌ガスの流れと、清浄用フィルタの滅菌工程における滅菌ガスの流れとを示す回路図である。
【図11】Opチャンバーの置換工程における空気の流れを示す回路図である。
【図12】もう1つのアイソレータシステムの外観構成例を示す図である。
【図13】更にもう1つのアイソレータシステムの外観構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
===滅菌庫の構成===
図1乃至図3を参照しつつ、本実施の形態の滅菌庫1の構成例について説明する。
図1は、滅菌庫1を含むアイソレータシステム6の構成例を示す回路図である。
図2は、滅菌庫1の外観構成例を示す斜視図である。
図3は、アイソレータシステム6の外観構成例を示す図である。尚、同図において、(a)は、(b)の正面外観のA−A’における断面を表わす。
【0013】
<<<滅菌用チャンバーと、Opチャンバーに対する出口及び入口ポート>>>
図1に例示されるように、滅菌庫1は、滅菌ガス発生装置10と、被滅菌物を搬入するための第1の扉111を備えた滅菌用チャンバー11と、例えば3つの顕微鏡用チャンバー(外部チャンバー)24、25、26(以後「Opチャンバー24、25、26」と称する)に滅菌ガスを出力する出力ポート13a、13b、13c(「出力ポート13」と総称する)と、Opチャンバー24、25、26から滅菌ガスを入力する入力ポート14と、滅菌用チャンバー11及びOpチャンバー24、25、26のそれぞれに滅菌ガスを循環させるための配管等の手段とを備えている。
【0014】
滅菌用チャンバー11に滅菌ガスを循環させるための手段は、配管167、161、117、105と、電磁弁161a、117aと、送風機12とを備えて構成される。詳しくは、滅菌ガス発生装置10のガス流出側(図1の紙面上側)は配管167により電磁弁161a、162a、163a、164a、165a、166aに分岐し、そのうちの電磁弁161aと滅菌用チャンバー11の滅菌ガス導入口11aとは配管161により接続されている。一方、滅菌用チャンバー11の滅菌ガス排出口11dと送風機12のガス流入側(図1の紙面下側)とは配管117により電磁弁117aを介して接続され、送風機12のガス流出側(図1の紙面上側)と滅菌ガス発生装置10のガス流入側(図1の紙面下側)とは配管105により流量計12aを介して接続されている。以上の構成によって、滅菌ガスは、滅菌用チャンバー11の滅菌ガス導入口11aを通して同チャンバー11内に供給され、滅菌用チャンバー11の滅菌ガス排出口11dを通して同チャンバー11外に排出される。この滅菌用チャンバー11に滅菌ガスを循環させる構成が、第1ガス供給回路に対応する。尚、滅菌用チャンバー11の滅菌ガス排出口11dの直下流側には、微粒子を捕集するための例えばHEPAフィルタ等の清浄用フィルタ114が設けられている。また、本実施の形態では、例えば滅菌用チャンバー11等のチャンバーに「滅菌ガスを循環させる」ことは、滅菌ガス生成装置10により生成された滅菌ガスを含む空気をチャンバーに供給し、同チャンバー内で滅菌を行なった後の残留滅菌ガスを含む空気を同チャンバー外に排出させ、排出された空気に対し滅菌ガス生成装置10により生成された滅菌ガスを混合し、滅菌ガスが混合された空気をチャンバーに再度供給する工程を繰り返すことを意味する。
【0015】
Opチャンバー24、25、26に滅菌ガスを循環させるための手段は、配管167、184、185、186、164、165、166、144、145、146、147、108、106、105と、電磁弁164a、165a、166a、147a、108a、106aと、送風機12とを備えて構成される。詳しくは、滅菌ガス発生装置10のガス流出側(図1の紙面上側)は配管167により電磁弁161a、162a、163a、164a、165a、166aに分岐し、そのうちの例えば電磁弁164aと出力ポート13aとは配管184により接続され、出力ポート13aとOpチャンバー24のガス導入口24aとは配管164により接続されている。一方、Opチャンバー24のガス排出口24bと入力ポート14とは配管144により接続され、入力ポート14と送風機12のガス流入側(図1の紙面下側)とは配管147、108、106により電磁弁147a、108a、106aを介して接続され、送風機12のガス流出側(図1の紙面上側)と滅菌ガス発生装置10のガス流入側(図1の紙面下側)とは配管105により流量計12aを介して接続されている。以上の構成によって、滅菌ガスは、例えば、Opチャンバー24のガス導入口24aを通して同チャンバー24内に供給され、Opチャンバー24のガス排出口24bを通して同チャンバー24外に排出される。これは、図1に例示されるように、他のOpチャンバー25、26のガス導入口25a、26a及びガス排出口25b、26bと、同チャンバー25、26にそれぞれ対応する電磁弁165a、166a、出力ポート13b、13c、配管185、186、配管165、166、及び配管145、146についても同様である。このOpチャンバー24、25、26に滅菌ガスを循環させる構成が、第2ガス供給回路に対応する。尚、入力ポート14の下流側における配管108及び配管106の境界には、清浄用フィルタ107が設けられている。
【0016】
尚、滅菌ガス発生装置10には、滅菌ガス(例えば過酸化水素ガス:H)の原料(例えば過酸化水素水)を収容する容器104と、同容器104から原料を汲み上げるポンプ103と、汲み上げられた原料を清浄用フィルタ101を介して滅菌ガス発生装置10に供給するための配管102とが設けられている。
【0017】
本実施の形態では、滅菌庫1は、滅菌ガス発生装置10、各種電磁弁、各種送風機等の電気機器を制御するための制御装置1dを更に備えている。
【0018】
<<<細胞操作用チャンバーに対する第2の扉及び出口ポート>>>
図1に例示されるように、滅菌庫1は、更に、アイソレータ3(図3参照)の細胞操作用チャンバー(外部チャンバー)30に滅菌ガスを出力する出力ポート162bと、第2の扉112と、細胞操作用チャンバー30に滅菌ガスを循環させるための配管等の手段とを備えている。
【0019】
細胞操作用チャンバー30に滅菌ガスを循環させるための手段は、配管167、162、304、117、105と、電磁弁162a、117aと、送風機12とを備えて構成される。詳しくは、滅菌ガス発生装置10のガス流出側(図1の紙面上側)は配管167により電磁弁161a、162a、163a、164a、165a、166aに分岐し、そのうちの電磁弁162aと出力ポート162bとは配管162により接続され、出力ポート162bと細胞操作用チャンバー30の滅菌ガス導入口30bとは配管304により接続されている。一方、滅菌用チャンバー11の滅菌ガス排出口11dと滅菌ガス発生装置10のガス流入側(図1の紙面下側)との接続のし方は、前述した滅菌用チャンバー11に滅菌ガスを循環させるための手段として前述した通りである。
【0020】
以上の構成によって、滅菌ガスは、細胞操作用チャンバー30の滅菌ガス導入口30bを通して同チャンバー30内に供給され、開放された第2の扉112を介し、滅菌用チャンバー11の滅菌ガス排出口11dを通して同チャンバー11外に排出される。この細胞操作用チャンバー30に滅菌ガスを循環させる構成が、第2ガス供給回路に対応する。
【0021】
尚、細胞操作用チャンバー30は、細胞培養用チャンバー40内で培養される細胞に対し所定の前処理等を無菌的に施すために外気と隔離された部屋である。滅菌用チャンバー11は、細胞操作用チャンバー30に対し細胞や培養に必要な物品等を搬入する前にこれらを滅菌するために外気と隔離された(細胞操作用チャンバー30よりも小さな)部屋である。細胞操作用チャンバー30は、滅菌用チャンバー11とその第2の扉112を介して隙間なく連結されている。
【0022】
また、細胞操作用チャンバー30は、滅菌用チャンバー11の第2の扉112と対向する側に、滅菌された物品等を細胞培養用チャンバー40側に搬出するための扉30aを備えている(図3参照)。
【0023】
更に、細胞操作用チャンバー30には、同チャンバー30に残留する滅菌ガスをガス導入口30c及びガス排出口30dを通して空気で置換するための手段として、滅菌ガス低減用触媒301b、302bと、配管301、302と、電磁弁301a、302aと、送風機33、34とが設けられている。
【0024】
また更に、細胞操作用チャンバー30には、ガス導入口30cの直上流側の清浄用フィルタ31及びガス排出口30dの直下流側の清浄用フィルタ32を滅菌するべく同フィルタ31、32を通して送風機33の空気を循環させるための配管等の手段が設けられている。ここで、同手段は、細胞操作用チャンバー30のガス導入口30c及びガス排出口30eを送風機33を介して接続する配管303と、同配管303上に設けられた電磁弁303aである。
【0025】
本実施の形態では、前述した配管167、電磁弁162a、配管162、及び出口ポート162bが第2ガス供給回路に対応する。
【0026】
<<<連結装置に対する出口及び入口ポート>>>
図1に例示されるように、滅菌庫1は、前述した細胞操作用チャンバー30及びインキュベータ4(図3参照)の細胞培養用チャンバー40を連結する中空の連結装置(外部チャンバー)35に滅菌ガスを出力する出力ポート163bと、同連結装置35から滅菌ガスを入力する入力ポート147cと、同連結装置35に滅菌ガスを循環させるための配管等の手段を備えている。
【0027】
連結装置35に滅菌ガスを循環させるための手段は、配管167、163、351、352、147、108、106、105と、電磁弁163a、147b、108a、106aと、送風機12とを備えて構成される。詳しくは、滅菌ガス発生装置10のガス流出側(図1の紙面上側)は配管167により電磁弁161a、162a、163a、164a、165a、166aに分岐し、そのうちの電磁弁163aと出力ポート163bとは配管163により接続され、出力ポート163bと連結装置35のガス導入口35aとは配管351により接続されている。一方、連結装置35のガス排出口35bと入力ポート147cとは配管352により接続され、入力ポート147cと送風機12のガス流入側(図1の紙面下側)とは配管147、108、106により電磁弁147b、108a、106aを介して接続され、送風機12のガス流出側(図1の紙面上側)と滅菌ガス発生装置10のガス流入側(図1の紙面下側)とは配管105により流量計12aを介して接続されている。
【0028】
以上の構成によって、滅菌ガスは、連結装置35のガス導入口35aを通して同装置35内に供給され、連結装置35のガス排出口35bを通して同装置35外に排出される。この連結装置35に滅菌ガスを循環させる構成が、第2ガス供給回路に対応する。
【0029】
尚、インキュベータ3の細胞培養用チャンバー40は、細胞操作用チャンバー30と中空の連結装置35を介して隙間なく連結されている。また、細胞培養用チャンバー40は、細胞操作用チャンバー30との連結時に同チャンバー30の扉30aと対向する側に、滅菌物を搬入するための扉40aを備えている(図3参照)。
【0030】
本実施の形態では、前述した配管167、電磁弁163a、配管163、及び出口ポート163bが第2ガス供給回路に対応する。
【0031】
<<<滅菌用及びOpチャンバーの滅菌ガスを空気で置換するための構成>>>
図1に例示されるように、滅菌庫1は、送風機15と、滅菌用チャンバー11のガス導入口11bの直上流側に設けられた清浄用フィルタ113と、滅菌用チャンバー11に残留する滅菌ガスを空気で置換するための配管等の手段と、Opチャンバー24、25、26に残留する滅菌ガスを空気で置換するための配管等の手段とを更に備えている。
【0032】
滅菌用チャンバー11に残留する滅菌ガスを空気で置換するための手段は、配管152、115、116、171と、電磁弁152a、115a、116aとを備えて構成される。この滅菌用チャンバー11に残留する滅菌ガスを空気で置換する構成が、置換回路に対応する。
【0033】
Opチャンバー24、25、26に残留する滅菌ガスを空気で置換するための配管等の手段は、配管152、151、106、105、167、184、185、186、164、165、166、144、145、146、147、108、173、171と、電磁弁152a、151a、106a、164a、165a、166a、147a、173aとを備えて構成される。このOpチャンバー24、25、26に残留する滅菌ガスを空気で置換する構成が、置換回路に対応する。
【0034】
尚、配管152の大気側の開口端部には、滅菌ガス低減用触媒152bが設けられるとともに、配管171の大気側の開口端部には、滅菌ガス低減用触媒171aが設けられている。
【0035】
<<<清浄用フィルタを滅菌するための構成>>>
図1に例示されるように、滅菌庫1は、清浄用フィルタ113、114を滅菌するべく同フィルタ113、114を通して送風機15の空気を循環させるための配管等の手段を備えている。ここで、同手段は、配管118、115と、電磁弁115a、118aとを備えて構成される。
【0036】
<<<外観構成例>>>
図2に例示されるように、滅菌庫1は、滅菌用チャンバー11が設けられた中央部1bと、同中央部1bの鉛直方向上側に設けられて滅菌ガス発生装置10等を収納する上部1aと、同中央部1bの鉛直方向下側に設けられて架台の機能を果たす下部1cと、同下部1cにより画成される空間内に設置される前述した制御装置1dとを備えている。
【0037】
本実施の形態では、上部1a及び下部1bが筐体1eを構成している。上部1a内には、例えば過酸化水素水等の滅菌ガスの原料を収容する容器14や滅菌ガス発生装置10等が収納されており、細胞操作用チャンバー30に滅菌ガスを供給するための前述した出力ポート162bと、連結装置35に滅菌ガスを供給するための前述した出力ポート163bとが設けられている。中央部1bにおける第2の扉112が設けられた側はアイソレータ3に対する接続部として、第2の扉112が開閉する開口の周囲に、所定のシール材1gが設けられている。尚、前述した他のポート13、14、147cの図示は省略されている。
【0038】
図3に例示されるように、滅菌庫1の滅菌用チャンバー11と、アイソレータ3の細胞操作用チャンバー30の一方側(図3の紙面右側)とは、同滅菌用チャンバー11の第2の扉112を介して隙間なく連結されている。
【0039】
また、アイソレータ3の細胞操作用チャンバー30の他方側(図3の紙面左側)と、インキュベータ4の細胞培養用チャンバー40とは、中空の連結装置35、細胞操作用チャンバー30の扉30a、及び細胞培養用チャンバー40の扉40aを介して隙間なく接続されている。
【0040】
尚、細胞操作用チャンバー30には、例えばグローブ3a、3b、3cや遠心分離機5等が設けられている。例えばグローブ3aを用いて、細胞操作用チャンバー30を無菌に保持したまま、扉30aを開閉できる。また、例えばグローブ3cを用いて、滅菌用チャンバー11を無菌に保持したまま、第2の扉112を開閉できる。
滅菌庫1の滅菌ガス発生装置10からは、配管162、304を介して細胞操作用チャンバー30に滅菌ガスが供給されるようになっており、配管163、351を介して連結装置35に滅菌ガスが供給されるようになっている。
尚、本実施の形態では、アイソレータ3及び滅菌庫1は、アイソレータシステム6を構成する。
【0041】
===滅菌庫の動作===
図4乃至図11を参照しつつ、前述した構成を備えた滅菌庫1による滅菌工程及び置換工程の動作について説明する。
図4は、滅菌用チャンバー11の滅菌工程における滅菌ガスの流れを示す回路図である。
図5は、滅菌用チャンバー11及び細胞操作用チャンバー30の滅菌工程における滅菌ガスの流れを示す回路図である。
図6は、滅菌用チャンバー11の清浄用フィルタ113、114の滅菌工程における滅菌ガスの流れと、細胞操作用チャンバー30の清浄用フィルタ31、32の滅菌工程における滅菌ガスの流れとをともに示す回路図である。
図7は、滅菌用チャンバー11の置換工程における空気の流れと、細胞操作用チャンバー30の置換工程における空気の流れとをともに示す回路図である。
図8は、連結装置35の滅菌工程における滅菌ガスの流れを示す回路図である。
図9は、連結装置35の置換工程における空気の流れを示す回路図である。
図10は、Opチャンバー24の滅菌工程における滅菌ガスの流れと、清浄用フィルタ107の滅菌工程における滅菌ガスの流れとを示す回路図である。
図11は、Opチャンバー24の置換工程における空気の流れを示す回路図である。
尚、図4乃至図11では、便宜上、それぞれ太線で示される滅菌ガス又は空気の流れと直接関係する部材のみに番号を付してある。但し、各部材の番号は、前述した図1で付した番号と同一である。
【0042】
<<<滅菌用チャンバーの暴露工程>>>
図4の太線の矢印で例示されるように、滅菌用チャンバー11の第1の扉111及び第2の扉112が閉じた状態で、先ず、滅菌ガスは、滅菌ガス発生装置10、配管167、電磁弁161a、配管161を経て、滅菌ガス導入口11aから滅菌用チャンバー11内に供給される。次に、滅菌用チャンバー11内で滅菌を行なった後の残留滅菌ガスを含む空気(これも「滅菌ガス」と称する)は、滅菌ガス排出口11dから滅菌用チャンバー11外に排出され、清浄用フィルタ114、配管117、同配管117上の電磁弁117a、送風機12、配管105、同配管105上の流量計12aを経て、滅菌ガス生成装置10内に入り、同装置10により新たに生成された滅菌ガスが混合される。尚、図4では、滅菌ガスが太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。
【0043】
以上の滅菌ガスの流れは、送風機12により形成される。また、滅菌工程において、滅菌ガス発生装置10は、ポンプ103により容器104から汲み上げられた滅菌ガスの原料(例えば過酸化水素水)から滅菌ガス(例えば過酸化水素ガス)を生成する動作を実行する。
【0044】
<<<細胞操作用チャンバーの滅菌工程>>>
図5の太線の矢印で例示されるように、滅菌用チャンバー11の第1の扉111及び細胞操作用チャンバー30の扉30aが閉じ且つ滅菌用チャンバー11の第2の扉112が開いた状態で、先ず、滅菌ガスは、滅菌ガス発生装置10、配管167、電磁弁162a、配管162、出口ポート162b、配管304を経て、滅菌ガス導入口30bから細胞操作用チャンバー30内に供給される。次に、細胞操作用チャンバー30内で滅菌を行なった後の残留滅菌ガスを含む空気(これも「滅菌ガス」と称する)は、第2の扉112が開いた状態の滅菌用チャンバー11に供給された後、滅菌ガス排出口11dから同チャンバー11外に排出され、配管117、同配管117上の電磁弁117a、送風機12、配管105、同配管105上の流量計12aを経て、滅菌ガス生成装置10内に入り、同装置10により新たに生成された滅菌ガスが混合される。尚、図5では、滅菌ガスが太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。また、細胞操作用チャンバー30内で滅菌を行なった後の滅菌ガスは、滅菌用チャンバー11内でも滅菌を行なうことができる。つまり、滅菌ガス導入口30bを通して細胞操作用チャンバー30に供給された滅菌ガスは、同チャンバー30内を滅菌するだけでなく、開放された第2の扉112から滅菌用チャンバー11に供給されて、同チャンバー11内を滅菌し、その滅菌ガス排出口11dから排出される。これにより、細胞操作用チャンバー30内を滅菌したとき、滅菌用チャンバー11内も共に滅菌されることになる。
【0045】
以上の滅菌ガスの流れは、送風機12により形成される。また、滅菌工程において、滅菌ガス発生装置10は、ポンプ103により容器104から汲み上げられた滅菌ガスの原料(例えば過酸化水素水)から滅菌ガス(例えば過酸化水素ガス)を生成する動作を実行する。
【0046】
これにより、アイソレータ3は、滅菌庫1からの滅菌ガスを出口ポート162bを通して細胞操作用チャンバー30内に直接取り込むことができるため、同チャンバー30内を効率良く滅菌できる。これにより、滅菌処理にかかる時間も短縮できる。また、アイソレータ3は、個別に滅菌手段を備える必要がないため、その分だけ設備コストを低減できる。
【0047】
<<<滅菌用チャンバー及び細胞操作用チャンバーの清浄用フィルタの滅菌工程>>>
図6の右側の太線の矢印で例示されるように、滅菌用チャンバー11の第1の扉111及び第2の扉112が閉じた状態で、先ず、空気は、送風機15、配管115、同配管115上の電磁弁115a、清浄用フィルタ113を経て、ガス導入口11bから滅菌用チャンバー11内に供給される。次に、空気は、ガス排出口11eから滅菌用チャンバー11外に排出され、清浄用フィルタ114、配管118、同配管118上の電磁弁118aを経て、送風機15に戻る。尚、図6では、滅菌ガスが太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。以上の空気の流れは、送風機15により形成される。また、このような空気の循環の際、前述した図4に例示される滅菌用チャンバー11内を滅菌するための滅菌ガスの流れが並行して形成されている。或いは、このような空気の循環の際、滅菌用チャンバー11内は、前述した図4に例示される滅菌工程が終了した後に、滅菌ガスが滞留した状態にあってもよい。
【0048】
図6の左側の太線の矢印で例示されるように、細胞操作用チャンバー30の扉30aと、滅菌用チャンバー11の第1の扉111及び第2の扉112とが全て閉じた状態で、先ず、空気は、送風機33、配管303、清浄用フィルタ31を経て、ガス導入口30cから細胞操作用チャンバー30内に供給される。次に、空気はガス排出口30eから細胞操作用チャンバー30外に排出され、清浄用フィルタ32、配管303、同配管303上の電磁弁303aを経て、送風機33に戻る。尚、図6では、滅菌ガスが太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。以上の空気の流れは、送風機33により形成される。また、このような空気の循環の際、前述した図5に例示される滅菌用チャンバー11及び細胞操作用チャンバー30内を滅菌するための滅菌ガスの流れが並行して形成されている。或いは、このような空気の循環の際、滅菌用チャンバー11及び細胞操作用チャンバー30内は、前述した図5に例示される滅菌工程が終了した後、滅菌ガスが滞留した状態であってもよい。
【0049】
尚、滅菌工程において、滅菌ガス発生装置10は、ポンプ103により容器104から汲み上げられた滅菌ガスの原料(例えば過酸化水素水)から滅菌ガス(例えば過酸化水素ガス)を生成する動作を実行する。
【0050】
また、前述した例では、滅菌用チャンバー11の清浄用フィルタ113、114の滅菌工程と、細胞操作用チャンバー30の清浄用フィルタ31、32の滅菌工程とは個別に行なわれるものであったが、これに限定されるものではない。例えば第2の扉112が開いた状態で、双方の工程が同時に行なわれてもよい。滅菌用チャンバー11の清浄用フィルタ113、114と、細胞操作用チャンバー30の清浄用フィルタ31、32とを同時に滅菌することによって、例えば、双方のチャンバー11、30のフィルタ113、114、31、32の滅菌処理が相乗的となり、よって滅菌効果も向上する。
【0051】
以上により、滅菌用チャンバー11及び細胞操作用チャンバー30のそれぞれの内部をより確実に滅菌できる。
【0052】
<<<滅菌用チャンバー及び細胞操作用チャンバーの置換工程>>>
前述した図4乃至図6に例示される滅菌用チャンバー11、細胞操作用チャンバー30、清浄用フィルタ113、114、31、32等の滅菌工程の後、残留する滅菌ガスを大気中の空気によって置換する工程が実行される。
【0053】
図7の右側の太線の矢印で例示されるように、滅菌用チャンバー11の第1の扉111及び第2の扉112が閉じた状態で、先ず、大気中の空気は、滅菌ガス低減用触媒152b、配管152、同配管152上の電磁弁152a、送風機15、配管115、同配管115上の電磁弁115a、清浄用フィルタ113を経て、ガス導入口11bから滅菌用チャンバー11内に供給される。次に、空気は、ガス排出口11cから滅菌用チャンバー11外に排出され、清浄用フィルタ114、配管116、同配管116上の電磁弁116a、配管171、滅菌ガス低減用触媒171aを経て、大気中に放出される。尚、図7では、空気が同図の右側の太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。以上の空気の流れは、送風機15により形成される。
【0054】
図7の左側の太線の矢印で例示されるように、細胞操作用チャンバー30の扉30aと、滅菌用チャンバー11の第1の扉111及び第2の扉112とが全て閉じた状態で、先ず、大気中の空気は、滅菌ガス低減用触媒301b、配管301、同配管301上の電磁弁301a、送風機33、清浄用フィルタ31を経て、ガス導入口30cから細胞操作用チャンバー30内に供給される。次に、空気は、ガス排出口30dから細胞操作用チャンバー30外に排出され、清浄用フィルタ32、配管302、同配管302上の電磁弁302a、滅菌ガス低減用触媒302b、送風機34を経て、大気中に放出される。尚、図7では、空気が同図の左側の太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。以上の空気の流れは、送風機33、34により形成される。
【0055】
前述した例では、滅菌用チャンバー11の置換工程と、細胞操作用チャンバー30の置換工程とは個別に行なわれるものであったが、これに限定されるものではない。例えば第2の扉112が開いた状態で、双方の工程が同時に行なわれてもよい。滅菌用チャンバー30及び細胞操作用チャンバー11の双方の置換工程を同時に行なうことによって、例えば、双方のチャンバー11、30内からの滅菌ガスの除去が相乗的となり、よって滅菌ガスの除去効果も向上する。
【0056】
以上により、滅菌工程の後、滅菌用チャンバー11及び細胞操作用チャンバー30のそれぞれの内部から、細胞等に影響を与える滅菌ガスを確実に除去できる。
【0057】
<<<連結装置の滅菌工程>>>
図8の太線の矢印で例示されるように、中空の連結装置35を挟む細胞操作用チャンバー30の扉30a及び細胞培養用チャンバー40の扉40aの双方が閉じた状態で、滅菌ガスは、滅菌ガス発生装置10、配管167、電磁弁163a、配管163、出口ポート163b、配管351を経て、ガス導入口35aから連結装置35内に供給される。次に、連結装置35内で滅菌を行なった後の残留滅菌ガスを含む空気(これも「滅菌ガス」と称する)は、ガス排出口35bから連結装置35外に排出され、配管352、入口ポート147c、配管147、同配管147上の電磁弁147b、配管108、同配管108上の電磁弁108a、清浄用フィルタ107、配管106、同配管106上の電磁弁106a、送風機12、配管105、同配管105上の流量計12aを経て、滅菌ガス生成装置10内に入り、同装置10により新たに生成された滅菌ガスが混合される。尚、図8では、滅菌ガスが太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。
【0058】
以上の滅菌ガスの流れは、送風機12により形成される。また、滅菌工程において、滅菌ガス発生装置10は、ポンプ103により容器104から汲み上げられた滅菌ガスの原料(例えば過酸化水素水)から滅菌ガス(例えば過酸化水素ガス)を生成する動作を実行する。
【0059】
これにより、例えば、アイソレータ3とインキュベータ4とを、それぞれのチャンバー30、40内を無菌状態に保持したままで連結できる。
【0060】
<<<連結装置の置換工程>>>
前述した図8に例示される連結装置35の滅菌工程の後、残留する滅菌ガスを大気中の空気によって置換する工程が実行される。
【0061】
図9の太線の矢印で例示されるように、中空の連結装置35を挟む細胞操作用チャンバー30の扉30a及び細胞培養用チャンバー40の扉40aの双方が閉じた状態で、大気中の空気は、滅菌ガス低減用触媒152b、配管152、同配管152上の電磁弁152a、送風機15、配管151、同配管151上の電磁弁151a、清浄用フィルタ107、配管106、同配管106上の電磁弁106a、送風機12、配管105、同配管105上の流量計12a、滅菌ガス発生装置10、配管167、電磁弁163a、配管163、出口ポート163b、配管351を経て、ガス導入口35aから連結装置35内に供給される。次に、空気は、ガス排出口35bから連結装置35外に排出され、配管352、入口ポート147c、配管147、同配管147上の電磁弁147b、配管108、配管173、同配管173上の電磁弁173a、清浄用フィルタ172、配管171、滅菌ガス低減用触媒171aを経て、大気中に放出される。尚、図9では、空気が太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。以上の空気の流れは、送風機15により形成される。
【0062】
尚、前述した置換工程において、滅菌ガス発生装置10の内部には、容器104から汲み上げられた滅菌ガスの原料(例えば過酸化水素水)及び滅菌ガス(例えば過酸化水素ガス)の双方とも残留していない状態であり、また、滅菌ガス発生装置10における滅菌ガスの原料から滅菌ガスを生成する動作及びポンプ103の動作は双方とも停止しているものとする。
【0063】
以上により、滅菌工程の後、連結装置35の内部から、細胞等に影響を与える滅菌ガスを確実に除去できる。
【0064】
<<<Opチャンバーの滅菌工程及び清浄用フィルタの滅菌工程>>>
例えばOpチャンバー24を、滅菌庫1を用いて滅菌する工程について説明する。
図10の太線の矢印で例示されるように、先ず、滅菌ガスは、滅菌ガス発生装置10、配管167、電磁弁164a、配管184、出口ポート13a、配管164を経て、ガス導入口24aからOpチャンバー24内に供給される。次に、Opチャンバー24内で滅菌を行なった後の残留滅菌ガスを含む空気(これも「滅菌ガス」と称する)は、ガス排出口24bからOpチャンバー24外に排出され、配管144、入口ポート14、配管147、同配管147上の電磁弁147a、配管108、同配管108上の電磁弁、清浄用フィルタ107、配管106、同配管106上の電磁弁106a、送風機12、配管105、同配管105上の流量計12aを経て、滅菌ガス生成装置10内に入り、同装置10により新たに生成された滅菌ガスが混合される。尚、図10では、滅菌ガスが太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。以上の滅菌ガスの流れは、送風機12により形成される。
尚、他のOpチャンバー25、26についても、以上と同様である。
【0065】
また、清浄用フィルタ107を滅菌する工程の場合も、空気の流れは、図10の滅菌ガスの流れと同じである。但し、この場合、前述したように、滅菌ガスの流れが並行して形成されているか、或いは、滅菌ガスによる滅菌工程が終了した後にOpチャンバー24、25、26に滅菌ガスが滞留しているものとする。
【0066】
以上により、インキュベータ4で培養される細胞や培養に必要な物品等を滅菌庫1で滅菌できるとともに、同滅菌庫1とは扉を介して連結されていないOpチャンバー24、25、26でも物品の外装滅菌やチャンバー内の滅菌等が行なえる。また、Opチャンバー24、25、26は、個別に滅菌手段を備える必要がないため、その分だけコストを低減できる。
【0067】
<<<Opチャンバーの置換工程>>>
前述した図10に例示されるOpチャンバー24の滅菌工程の後、残留する滅菌ガスを大気中の空気によって置換する工程が実行される。
【0068】
図11の太線の矢印で例示されるように、大気中の空気は、滅菌ガス低減用触媒152b、配管152、同配管152上の電磁弁152a、送風機15、配管151、同配管151上の電磁弁151a、清浄用フィルタ107、配管106、同配管106上の電磁弁106a、送風機12、配管105、同配管105上の流量計12a、滅菌ガス発生装置10、配管167、電磁弁164a、配管184、出口ポート13a、配管164を経て、ガス導入口24aからOpチャンバー24内に供給される。次に、空気は、ガス排出口24bからOpチャンバー24外に排出され、配管144、入口ポート14、配管147、配管108、配管173、同配管173上の電磁弁173a、清浄用フィルタ172、配管171、滅菌ガス低減触媒171aを経て、大気中に放出される。尚、図11では、空気が太線の矢印で示された流れを形成するべく、制御装置1dによって、各種電磁弁の開閉状態が設定されている。以上の空気の流れは、送風機15により形成される。
【0069】
尚、前述した置換工程において、滅菌ガス発生装置10の内部には、容器104から汲み上げられた滅菌ガスの原料(例えば過酸化水素水)及び滅菌ガス(例えば過酸化水素ガス)の双方とも残留していない状態であり、また、滅菌ガス発生装置10における滅菌ガスの原料から滅菌ガスを生成する動作及びポンプ103の動作は双方とも停止しているものとする。
【0070】
以上により、滅菌工程の後、Opチャンバー24、25、26の内部から、細胞等に影響を与える滅菌ガスを確実に除去できる。
【0071】
===アイソレータシステム6’、6”===
本実施の形態のアイソレータシステムは、前述した図3に例示されるアイソレータシステム6に限定されるものではなく、例えば以下の図12及び図13にそれぞれ例示されるアイソレータシステム6’、6”であってもよい。
図12は、アイソレータシステム6’の外観構成例を示す図である。尚、同図において、(a)は、(b)の正面外観のB−B’における断面を表わす。
図13は、アイソレータシステム6”の外観構成例を示す図である。尚、同図において、(a)は、(b)の正面外観のC−C’における断面を表わす。
ここで、図3、図12、及び図13に例示される部材において、同一の部材については、同一の番号を付し、詳しい説明を省略する。
【0072】
<<<アイソレータシステム6’>>>
図12に例示されるアイソレータシステム6’は、2つのアイソレータ3、3’及び1つの滅菌庫1’を備えて構成される。ここで、滅菌庫1’は、滅菌用チャンバー11’における第1の扉111に隣接する両側に第2の扉112、112’を備えている。
滅菌庫1’の滅菌用チャンバー11’と、アイソレータ3の細胞操作用チャンバー30の一方側(図12の紙面右側)とは、同滅菌用チャンバー11’の第2の扉112を介して隙間なく連結されている。アイソレータ3の操作用チャンバー3の他方側(図12の紙面左側)と、インキュベータ4の培養用チャンバー40とは、中空の連結装置35、細胞操作用チャンバー30の扉30a、及び細胞培養用チャンバー40の扉40aを介して隙間なく接続されている。滅菌庫1’の滅菌ガス発生装置10からは、配管162、304を介して細胞操作用チャンバー30に滅菌ガスが供給されるようになっており、配管163、351を介して連結装置35に滅菌ガスが供給されるようになっている。尚、細胞操作用チャンバー30には、例えばグローブ3a、3b、3cや遠心分離機5等が設けられている。
【0073】
滅菌庫1’の滅菌用チャンバー11’と、アイソレータ3’の細胞操作用チャンバー30’の一方側(図12の紙面左側)とは、同滅菌用チャンバー11’の第2の扉112’を介して隙間なく連結されている。アイソレータ3’の操作用チャンバー3’の他方側(図12の紙面右側)と、インキュベータ4’の培養用チャンバー40’とは、中空の連結装置35’、細胞操作用チャンバー30’の扉30a’、及び細胞培養用チャンバー40’の扉40a’を介して隙間なく接続されている。滅菌庫1’の滅菌ガス発生装置10からは、配管162’、304’を介して細胞操作用チャンバー30’に滅菌ガスが供給されるようになっており、配管163’、351’を介して連結装置35’に滅菌ガスが供給されるようになっている。尚、細胞操作用チャンバー30’には、例えばグローブ3a’、3b’、3c’や遠心分離機5’等が設けられている。
【0074】
以上の構成を備えたアイソレータシステム6’によって、例えば、2つのインキュベータ4、4’でそれぞれ培養される細胞や培養に必要な物品等を1つの共通の滅菌庫1’で滅菌できる。
【0075】
<<<アイソレータシステム6”>>>
図13に例示されるアイソレータシステム6”は、2つのアイソレータ3、3”及び1つの滅菌庫1’を備えて構成される。ここで、滅菌庫1’は、前述した図12の場合と同様である。
【0076】
滅菌庫1’の滅菌用チャンバー11’と、アイソレータ3の細胞操作用チャンバー30と、インキュベータ4の細胞培養用チャンバー40との関係は、前述した図12の場合と同様である。
滅菌庫1’の滅菌用チャンバー11’と、アイソレータ3”の細胞操作用チャンバー30”と、インキュベータ4’の細胞培養用チャンバー40’との関係は、細胞操作用チャンバー30”の形状以外は、前述した図12の場合と同様である。
【0077】
また、図13に例示されるように、滅菌庫1’の滅菌ガス発生装置10からは、配管184、164を介してOpチャンバー24に滅菌ガスが供給されるようになっている。
以上の構成を備えたアイソレータシステム6”によって、例えば、2つのインキュベータ4、4’でそれぞれ培養される細胞や培養に必要な物品等を1つの共通の滅菌庫1’で滅菌できるとともに、同アイソレータシステム6”と扉を介して連結されていないOpチャンバー24でも物品の滅菌やチャンバー内の滅菌等が行なえる。
【0078】
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含むものである。
【0079】
前述した実施の形態では、滅菌ガスとして、過酸化水素ガスを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばオゾン等であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 滅菌庫 1a 上部 1b 中央部 1c 下部
1d 制御装置 1e 筐体 1f 接続部 1g シール材
3 アイソレータ 3a、3b、3c グローブ 4 インキュベータ
5 遠心分離機 6 アイソレータシステム 10 滅菌ガス発生装置
11 滅菌用チャンバー 11a 滅菌ガス導入口 11d 滅菌ガス排出口
11b、24a、25a、26a、30c、35a ガス導入口
11c、11e、24b、25b、26b、30d、30e、35b ガス排出口
12、15、33、34 送風機 12a 流量計
13、13a、13b、13c、162b、163b 出口ポート
14、147c 入口ポート 24、25、26 Opチャンバー
30 細胞操作用チャンバー 30a、40a 扉 30b 滅菌ガス導入口
31、32、101、107、113、114、172 清浄用フィルタ
35 連結装置 40 細胞培養用チャンバー
103 ポンプ 104 容器 111 第1の扉 112 第2の扉
152b、171a、301b、302b 滅菌ガス低減用触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が内部で作業を行う操作用チャンバーと接続するための接続部を有する筺体と、
前記接続部を介して前記操作用チャンバーと連通可能である滅菌用チャンバーと、
前記滅菌用チャンバーの上部に設けられる滅菌ガス発生装置と、
前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを少なくとも前記滅菌用チャンバーへ供給する滅菌ガス供給回路と、を備え、
前記滅菌用チャンバーは、被滅菌物を外部から出し入れするための第1の扉と、前記操作用チャンバーと連通するための前記接続部に設けた第2の扉と、前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを導入するための滅菌ガス導入口とを有し、
前記滅菌ガス供給回路は、前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを前記滅菌用チャンバーの滅菌ガス導入口に供給する第1ガス供給回路と、前記操作用チャンバーに前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを供給するための出力ポートをその一端に有する第2ガス供給回路とを有する、
滅菌庫。
【請求項2】
作業者が内部で作業を行う操作用チャンバーと、
前記操作用チャンバーと接続するための接続部を有する滅菌庫と、を備えたアイソレータシステムであって、
前記滅菌庫は、
前記接続部を介して前記操作用チャンバーと連通可能である滅菌用チャンバーと、
前記滅菌用チャンバーの上部に設けられる滅菌ガス発生装置と、
前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを少なくとも前記滅菌用チャンバーへ供給する滅菌ガス供給回路と、を備え、
前記滅菌用チャンバーは、被滅菌物を外部から出し入れするための第1の扉と、前記操作用チャンバーと連通するための前記接続部に設けた第2の扉と、前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを導入するための滅菌ガス導入口とを有し、
前記滅菌ガス供給回路は、前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを前記滅菌用チャンバーの滅菌ガス導入口に供給する第1ガス供給回路と、前記操作用チャンバーに前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを供給するための出力ポートをその一端に有する第2ガス供給回路とを有し、
前記滅菌用チャンバーの上部の位置は、前記操作用チャンバーの上部の位置よりも鉛直方向の位置において低く、
前記滅菌ガス発生装置の少なくとも一部は、前記滅菌用チャンバーの上部における、鉛直方向の位置における前記滅菌用チャンバーの上部の位置から前記操作用チャンバーの上部の位置までの空間に配置されている、
アイソレータシステム。
【請求項3】
作業者が内部で作業を行う副操作用チャンバーをさらに備え、
前記滅菌庫は、前記操作用チャンバーと前記副操作用チャンバーとの間に設けられ、かつ、前記滅菌用チャンバーと前記副操作用チャンバーとを連通可能である副接続部を有し、
前記滅菌用チャンバーは、前記副操作用チャンバーと連通するための前記副接続部に設けた第3の扉を有し、
前記滅菌ガス供給回路は、前記副操作用チャンバーに前記滅菌ガス発生装置で発生させた滅菌ガスを供給するための出力ポートをその一端に有する第3ガス供給回路を有し、
前記滅菌用チャンバーの上部の位置は、前記操作用チャンバーの上部の位置及び前記副操作用チャンバーの上部の少なくとも一方の上部よりも鉛直方向の位置において低く、
前記滅菌ガス発生装置の少なくとも一部は、前記滅菌用チャンバーの上部における、鉛直方向の位置における前記滅菌用チャンバーの上部の位置から前記操作用チャンバーの上部の位置及び前記副操作用チャンバーの上部の少なくとも一方の上部の位置までの空間に配置されている、
請求項2に記載のアイソレータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−99593(P2013−99593A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19339(P2013−19339)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−178086(P2009−178086)の分割
【原出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(592031097)パナソニックヘルスケア株式会社 (28)
【Fターム(参考)】