説明

滅菌放射活性シード

【課題】滅菌放射活性シード、およびシードを滅菌するための乾熱法、ならびに当該方法で滅菌されたシードを用いた製品を提供すること。
【解決手段】上記課題は、1個以上の放射活性シードを滅菌条件下で含み、該シードが、放射活性シードを、少なくとも140℃の温度で滅菌を達成するのに十分な時間乾熱に付し、その後放射活性シードを冷却することを含む、1個以上の放射活性シードの滅菌法で滅菌されている、製品により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌放射活性シード、およびシードを滅菌するための乾熱法に関する。特に、使用する滅菌法が乾熱である、密閉コンテナ中に存在し得る滅菌遊離シードに関する。
【背景技術】
【0002】
放射活性シードは、癌、特に前立腺癌または再狭窄のような、種々の臨床的状態の処置(ブラキテラピー)のための放射活性永久インプラントである。このようなシードは、生体適合性コンテナ(典型的にチタンまたはステンレススチール)内に密閉された放射性同位体(典型的に125Iまたは103Pd)を含む。各患者の線量は、腫瘍のサイズに依存して個々に計算するが、典型的に前立腺癌の処置の場合、患者当り50−120シードである。シードを計算した線量に従って三次元マトリックスにインプラントする。シードは、インプラント用針に入れるのに十分小さくなければならない。
【0003】
選り抜きの放射活性同位体は125Iである。この同位体は60日の半減期を有し、インプラントしたシードが、過剰に長い期間損傷を加えること無しに、患者体内に永久的に残ることを可能にするのに十分短い。125Iは、処置される組織の容量が主にインプラントしたシードの付近、即ち腫瘍に限定されることを確実にする、低エネルギーX線(30KeV)を放射する。
【0004】
現在入手可能である一つの放射性ヨウ素シードにおいて、ヨウ素125は銀棒に吸着され、溶接したチタンカプセルに封入されている。銀棒はX線マーカーとして働く。シードは、内部直径1mmの針またはカテーテルに適合するように設計した円筒状、4.5mm長および0.8mm直径である。このようなシードはUS4323055に記載されている。これらの放射性ヨウ素シードは商品として入手可能である。それらはISO2919:1999(E)の温度試験5に適合するように設計および製造されている。この試験は、シードを−40℃に20分間;+600℃に1時間維持する;そしてシードを+600℃から+20℃の熱ショックに付すことを必要とする。これらの試験は、種々のストレスに付された場合の製品の安全性性能を評価するために単純に設計されている。放射活性を放射しない設計が試験に合格する。したがって、このような試験は慣用のシード製造過程ではなく、与えられたシード設計の確認の部分を形成する。結果として、試験の結果としてのシード製品の性能における劣化は測定されない。
【0005】
ブラキテラピーシードは3つの形:
a)遊離、非滅菌で、ねじぶた付きバイアル内に提供;
b)柔軟縫合糸(suture)中で滅菌;
c)硬化縫合糸中で滅菌
として入手可能である。
【0006】
最後の製品(RapidStrand商品名により販売)は、一定間隔で包含されたシードを有する最初は柔軟な細長い生体吸収可能物質よりなる。次いで、より糸を加熱し、それによりその柔軟性を低くし、腫瘍の周りまたは腫瘍中へのインプラントの工程を助ける。米国特許5460592に記載されるように、このRapidStrand製品は、化学滅菌剤で処理されたことによる滅菌状態で販売されている。しかし、化学滅菌は、下記のように問題を含み、遊離シードには適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放射活性であるにも関わらず、放射性ヨウ素シードは自己滅菌されていないことは注目し得る。これは、シードの表面での放射線量が、微生物を殺すのに必要な程度には十分ではないためである。非滅菌遊離放射性ヨウ素シードを購入した顧客は、使用前に滅菌する必要がある。シードに添付された指示書は蒸気滅菌の使用を教示し、特に、シードを滅菌するための乾熱または化学剤の使用に対する忠告をする。しかし、顧客による放射活性シードの不必要な操作は本来望ましくない。シードが揮発性放射性ヨウ素同位体を含むため、加熱が関与する取扱い操作は望ましくない。更に、ヨーロッパにおける規制は、それらが永久的に人体にインプラントされる場合、非滅菌形での放射活性シードの販売を許可していない。したがって、遊離滅菌放射活性シードを供給する必要がある。本発明は、その必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様において、本発明は1個以上の放射活性シードの滅菌法を提供する。本方法は、放射活性シードを滅菌を達成するのに十分な時間乾熱に付し;続いて放射活性シードを冷却することを含む。乾熱滅菌工程の温度は少なくとも140℃、好ましくは150−200℃、最も好ましくは160−165℃でなければならない。“乾熱”なる用語は滅菌の分野で使用され、加熱を、シードを沸騰水または蒸気と接触させることなく達成する、即ち、湿潤加熱と対照的であることを意味する。“冷却”なる用語は、シードがゆっくりと環境温度に冷却するための受動的方法(例えば、熱源を除くまたはスイッチを切る)、およびシードがより早く冷却するためのより能動的な方法(例えば、シードを冷却領域に移す、またはファンのような冷却手段の適用)の両方を含む。
【0009】
他の態様において、本発明は、上記乾熱滅菌工程により調製した製品を提供する。製品は、滅菌状態で、好ましくは密閉コンテナ中に1個以上の放射活性シードを含み、ここで、シードは乾熱により滅菌されている。
【0010】
他の態様において、本発明は滅菌状態で1個以上の放射活性シードを含む密閉コンテナを含む製品を提供し、ここで放射活性シードは水分および化学滅菌に特有な化学残留物を含まず、製品はガンマ照射による滅菌に特有な分解をしていない。
【0011】
本発明の乾熱法は、オーブン(電気、ガスまたは固形燃料のような慣用の手段で加熱);放射熱(例えば、熱ワイヤフィラメントから);加熱高沸点有機溶媒(例えば、シリコンのような油)の浴への浸潤;火炎;または赤外線照射のような、必要な水分の実質的な非存在および必要な時間の温度制御の達成を可能にする種々の加熱手段の使用により行い得る。残った高沸点溶媒または表面燃焼付着物の除去のような、付加的段階を必要とする加熱法はあまり好ましくない。電気またはガス加熱であり得、熱を高温の空気により伝達し、温度制御環境を有するオーブンの使用が好ましい。電子レンジは、このような加熱がシードのような金属物体に関して安全でなく、シードが破壊する危険の可能性があるため、好ましくない。また、マイクロ波加熱は熱をシードの内部に伝えるが、一方、本発明はシードの外表面を、人体と接触するであろうシードのその部分を滅菌するために加熱する必要がある。本発明での使用に適したオーブンは、種々の形およびサイズで商品として入手可能であり、好ましくは電気的に加熱し、研究室使用のために設計されている。
【0012】
本発明の乾熱は、好ましくは酸素を含む雰囲気中で行うべきであり、好ましくはそして簡便には空気中で行う。酸化の存在は、酸化的過程による微生物の破壊を促進する。加熱手段がオーブンである場合、高温の空気を熱を滅菌するシードに伝達するために使用する。したがって、シードを密閉コンテナ中で滅菌した場合、コンテナ中のシードの上のヘッドスペースガスは酸素を含まなければならず、好ましくはそして簡便には大気圧の空気である。
【0013】
いずれの加熱手段を使用するにせよ、シードを加熱するゾーンの周りが適当な温度制御されている必要がある。この温度制御は、手動で、例えば、温度読取に応じた加熱の調節により、または、好ましくは温度制御オーブンの一部としてのサーモスタット制御された加熱手段を介して好ましくは自動で達成し得る。使用する加熱手段内の特定の場所(例えば、オーブン内の異なる領域または棚)の温度は、シードの位置の周りの加熱ゾーンに伝達される温度が、本発明により必要であるものであることを示すために、使用前に確認すべきである。使用した加熱ゾーンの最も低温の部分が確立されたら、乾熱滅菌中に温度測定装置は常にその場所に位置すべきであり、必要な最低温度が常に達成されていることを確認する。加熱ゾーンの全ての部分での滅菌サイクルの効力は、種々の場所での微生物の信頼できるサンプルが殺されることを証明することにより確認すべきであり、これは例えば、乾熱サイクル後に培養したとき、生育がないことにより示される。温度読取は、好ましくは乾熱滅菌工程中記録し得る(例えば、図形的プリントアウトまたは電子的記録として)。この記録は、有効にはシードの滅菌の証拠としてのバッチ記録の一部に包含させることができる。
【0014】
乾熱の時間は採用した温度に依存する。イギリスおよびヨーロッパ薬局方は、乾熱滅菌のために、少なくとも160℃の温度で120分の最小保持時間を推奨している。考えられるところでは、より短い最小保持時間をより高い温度で使用し得、例えば、170℃では約60分、および180℃では30分であるが、薬局方プロトコールを採用するのが好ましい。乾熱の時間設定は手動で、または好ましくは、例えば、マイクロプロセッサー制御された、温度プログラミングコントロールを有する適当なオーブンを使用して、自動で行うことができる。
【0015】
好ましくは、シードは遊離している。好ましくは、シードは、滅菌温度に耐えることができるガラスまたはプラスチック材料の密閉コンテナ中に提供される。密閉ガラスアンプルを使用できるが、コンテナは好ましくは、例えば、シリコンまたは関与する滅菌温度に耐えることができる他の材料から作られた取り外しができるクロージャーを有するガラスバイアルである。クロージャーは気密性でなければならず、通常、典型的に本質的にひだがあり、金属であって、オーバーシールを伴って所定の位置に固定されている。このような配置は、コンテナ中の滅菌シードの回りの環境の維持を確実にする。顧客による取扱いを簡単にするために、コンテナ中に存在する遊離シードは好ましくは乾燥状態である。
【0016】
本発明の放射活性シードはまた、それらが音波を発生するように、即ち、それらが臨床的周波数(約7.5MHz)の超音波を、慣用のシードよりも広い範囲の角度で超音波トランスデューサーに反射させるように、修飾し得る。このような音波発生シードは、共通して譲渡されたPCT/GB99/03668に記載のように、少なくとも、その外部表面の部分が粗くなっていてもよい。粗化は、シードコンテナの表面に、溝、窪み、擦過傷等の形を取り得る。溝は表面上に無作為に、またはより制御されたパターンで、例えば、正方形または円形のような幾何学的形またはパターンで、または、シードの軸に実質的に平行または垂直な線として、またはらせん配置で配置され得る。好ましくは、溝等は、4分の1波長につき1個以上の繰り返しを有する非常に繰り返されたパターンでは、このようなパターンが光学的格子として機能し、反響の戻りの全方向性の損失を導き得るため、配置されない。好ましくは、不規則性または不連続性は、コンテナの表面上のらせん状溝(例えば、シヌソイドプロフィールを有する)の形である。らせんのピッチは、直角配向に関して一定の特異的角度で反射した超音波が一次最高となるように選択し得る。例えば、慣用の放射活性シード4.5mm長および0.8mm直径に関して、7.5MHz超音波で、約0.6mmのピッチは直角から10°で最高となるが、約0.3mmのピッチは直角から約20°で最高となる。このようなシードに関して、頂点から底までの溝の深さは約40から60μmであるべきである。線源の軸に沿った反復的溝の間隙は狭すぎてはならず、そうでなければ超音波分散の最小が90°(即ち直角)に近い角度で起こり得る。粗化は種々の異なる方法で作り得る。したがって、シードコンテナの外表面は、表面上に溝を与えるために、隆起したまたはギザギザになったダイスまたはネジ切り装置の力を適用することにより、粗くするか形作り得る。同様の効果を、ミリングにより作り得る。表面を機械的摩擦の結果として、例えば、ワイヤーブラシまたはやすり、または適当なグレード、例えば、粗いグレードのサンドペーパーの使用によりまた粗くし得る。外部表面はまた、例えば、レーザーまたはウォータージェットカッターを使用して、または電解的エッチングによりエッチングし得る。ブラスティング、例えば、サンドブラストも使用し得る。ブラスティングは乾燥、またはウォータージェットブラスティングのような湿潤で行い得る。
【0017】
1−200、例えば1−100、好ましくは1−50個の範囲の異なる数の放射活性シードを含む放射活性シードのバッチを、本発明の方法を使用して滅菌し得る。好ましくは、これらのバッチを、各々滅菌中密閉コンテナ中の中身を示すラベルまたはマーカーを付けた密閉コンテナ中に提供する。
【0018】
放射活性シードのための乾熱の選択は、明白なまたは当然のものではなかった。これを説明するために、以下に利用可能な種々の滅菌法を記載する。第一の選択は:
(i)無菌取扱い、
(ii)蒸気滅菌、
(iii)蒸気(多孔性負荷)、
(iv)化学物質(例えば、酸化エチレン)、
(v)ガンマ照射、
(vi)乾熱
である。
【0019】
(i)無菌取扱い
これは、滅菌シードを作るための一つの試みである。実質的に、これは全シード製造工程を無菌条件(クリーンルーム、空気浄化等)の下で行うことを意味する。これは、特に、放射活性安全性および取扱いの警戒がまた必要であるとき、製造を困難にし、激しい労働を要し、高価であるため、魅力的な考察ではない。従って、いわゆる“最終滅菌”(即ち、全ての成分が非滅菌環境において集められた後のみ滅菌)がより好ましい。(ii)−(vi)は最終滅菌の第一の選択である。
【0020】
(ii)蒸気滅菌(湿潤加熱)
これは典型的にオートクレーブを使用して行う。この方法は、通常、100℃を越える温度の飽和蒸気としての、湿潤加熱の使用が関与する。これは、微生物の酵素および構造タンパク質の不可逆的変性による微生物の絶滅を達成する。遊離シードの密閉コンテナを滅菌するとき、密閉コンテナ中に水が存在しなければならないことを暗示する。これは、良好な熱伝達を確実にするためであり、すなわち、蒸気は表面で凝縮されなければならない。相変化はエネルギーの分散に依存し、即ち、蒸気の凝縮は熱を放出し、それが表面に伝達される。これは、滅菌されているが、顧客へ輸送する製品は、コンテナ/バイアル中で湿っていることを意味する。遊離シードが現在販売されているバイアルに関して、約0.5cmの水が10cm容量のバイアルで必要であると概算される。これはそれ自体魅力的な製品ではなく、使用前にシードを乾燥させなければならない等の臨床医の取扱い問題を提起する。
【0021】
これに関する不測の問題は、運搬中(例えば、冷環境または飛行機貨物室で輸送されるとき)、水が凍結し得、シードの溶接の破裂の危険に曝すのに十分であり得る大きな圧力をもたらすことである。したがって、蒸気滅菌は標準法ではあるが、滅菌遊離シードの商品提供物に適用したとき、著しい不利益を有する(運搬中に滅菌完全性を維持するためのコンテナ、封じ込めまたは包装中で輸送する必要がある)。
【0022】
蒸気滅菌をシードの開放バイアルと組合わせて使用した場合、付加的段階が必要となる−第1に、バイアルの中身の乾燥、および続くバイアルの無菌条件下での栓。したがって、次いで、これはもはや好ましい“最終滅菌”段階とならず、更なる滅菌取扱い手続を必要とする。
【0023】
(iii)蒸気滅菌(多孔性負荷)
蒸気滅菌は、考えられるところでは、蒸気の入口および出口を可能にし得る適当な多孔性クロージャー/栓と共に使用するが、これは残った水の完全な除去を確実にするための明らかな技術的問題を提起し、更なる遮蔽または2次的封じこめが、シードからの放射活性の漏れがある場合、必要となる。
【0024】
(iv)化学物質、例えば酸化エチレン(EtO)
酸化エチレンガス(EtO)は、あるシード製品、例えばNycomed Amersham's RapidStrandの滅菌に使用されている。この物質の使用は、幾つかの深刻な問題がある。第一にそれは非常に有毒であり、したがって、EtOの除去が完全であることを確実にする徹底的な脱気が必須である。また可燃性である−放射活性プラントと関連して使用したとき明らかに危険である。徹底的な脱気の必要性の結果、EtOを使用した滅菌は遅い。上記(iii)のように、多孔性包装材料が最終滅菌にEtOを使用するために必要である。EtOはまた滅菌した物質の表面に微量の有機残留物(酸化エチレンそれ自体、エチレンクロロヒドリン、エチレングリコールおよび酸化エチレン縮合ポリマー)を残すことが知られている。
【0025】
明白に、密閉コンテナ中の化学滅菌は、コンテナの中身の滅菌に有効ではない。放射活性シードを化学滅菌に付す場合、それらをその後密閉コンテナに導入しなければならず、これが工程に複雑さを加える。
【0026】
EtOに代わる別の化学物質が存在するが、シード上への液体化学物質の直接使用は、シードカプセルの、特に放射活性物漏出の付随した危険性がある溶接部の損傷の危険を冒す。EtOに関してと同様、シードが人体にインプラントする目的であるため、使用した化学物質の完全な除去の達成および証明の両方の文献がまたある。
【0027】
またある化学物質処理がシードの外部表面に“粘性”を付与し得る可能性もあり、これは使用者による針への続く充填およびインプラントをより困難にする。
【0028】
(v)ガンマ照射
高エネルギーガンマエミッター(例えば、60Co)での照射は医薬物質の最終滅菌のために使用される標準技術である。この試みの問題は、ガンマ照射放射性同位体の過重な遮蔽を伴う、かなりのプラントが必要であることである。慣用のガンマ照射プラントがそれ自体放射活性である生産物を扱うために形成されていない場合も当て嵌まる。したがって、かなりの容量のガンマ照射プラントおよび装置に関して、適当な封じ込めおよび遮蔽等の問題がある。シード包装のある部分が高エネルギーガンマ線により損傷する可能性もある。したがって、ガラス材料を使用する場合(例えば、バイアル)、ガラスは照射により色が褐色になる。材料上のラベルは恐らくまた脱色する。
【0029】
(vi)乾熱
この方法は製品を少なくとも140℃、好ましくは150−200℃、好ましくは少なくとも160℃の温度で加熱することを含む。この場合の滅菌は、微生物細胞構成成分の酸化を介して起こると考えられる。乾熱を使用した滅菌は、湿潤加熱よりも高い温度と長い曝露時間を必要とすることが知られている。製品をその温度に滅菌を達成するのに十分な時間、典型的に最低2時間維持し、次いで冷却するか、冷却させる。
【0030】
本発明の乾熱シード滅菌工程は早く、生産研究室に通常見られる装置を使用し、確認および制御が相対的に容易であり、非常に高い滅菌保証レベルを提供する利点を有する。密閉シードコンテナは工程中開放する必要がなく、したがって本当の最終滅菌である。毒性化学物質の除去を確実にするための特異的なアッセイまたはチェックの必要がなく、製品は顧客の使用が容易な形である。
【0031】
記載のように、この試みは直ぐに明白となるものではない。揮発性放射核種を含む密閉カプセルの強い加熱は、内部圧上昇の付随する危険性を意味する。明らかに、カプセルまたは溶接の破壊が放射活性の重大な漏れをもたらす。この方法で加熱するシードの数が多くなると、発生する問題の感知できる危険が大きくなる。どのように行うかに依存して、非常に小さく(約4.5mm長×0.8直径の円筒状)、放射活性であり、熱い(温度)シードが明らかな取り扱い問題を提示する。
【0032】
先に記したように、現在利用可能な放射活性シードは、600℃で1時間の加熱+600℃から+20℃の熱ショックに、放射活性の完全さを失うことなく、耐えることができる。しかし、このような加熱がシード内の放射性同位体の化学的性質を変える(例えば、酸化を介して)、またはシード内の放射性同位体を再分布し、シードの周りの放射線量輪郭(“等線量曲線”)の変化を導くことが予測される。各個々のシードの周りの線量分布は完全に等方性ではないが、その何らかの変化が生産物の効果を危うくさせるので、望ましい医学的処置のために実質的に均質な線量が重要である。本発明を確認する試験において、2時間、160℃の乾熱滅菌は各個々の放射性ヨウ素シードの周りの等方性線量分布を実質的に危うくせず、同じことが103Pdシードでも当て嵌まると予期される。
【0033】
本発明の好ましい密閉コンテナは、隔壁シールまたは他のゴムまたはプラスチッククロージャーを伴うガラスバイアルである。このようなゴムまたはプラスチッククロージャーに関する問題は、一般的に、強い加熱がクロージャーからの望ましくない有機不純物の滲出、シードの汚染の可能性を促進し得ることである。明らかにこれは医薬製品に関しては非常に不満足である。またクロージャーは加熱中に変形してはならず、即ち、シールは維持されなければならない。多くの標準バイアルクロージャーは単純に乾熱滅菌に必要な温度に耐えない。一つのシリコンクロージャーが必要な特性を有すると同定されている。それはThe West Company Danmark ASにより販売されているシリコンストッパー1185であり、液体シリコンラバーSilastic(登録商標)9280/40Eから作られていると報告されている。
【0034】
通常の医薬製品において、バッチは典型的に同じ材料の複数のユニットを含む。本製品に関して、状況は異なる。これは、医師が種々の数および/または活性のシードを、彼/彼女の個々の患者治療に必要な線量の計算に依存して注文するためである。結果として、乾熱滅菌する各密閉コンテナは種々の数のシード(例えば、1から50個)、または同じ数であるが、活性レベルが違うシードを含み得、即ち、各コンテナが異なる。好ましくは、同じまたは異なる数または活性の放射活性シードを含む、放射活性シードの複数のコンテナを一緒に滅菌する。これは簡便には、例えば、コンテナを、オーブンまたは乾熱を供給するために使用する他の手段にその後充填し得るトレイに充填することにより達成できる。
【0035】
種々の数および/または活性のシードは、包装の最後での放射活性含量、線量等のラベリングが非常に異なることを意味する。結果として、個々のバイアルの追跡可能性を工程の始めから終りまで有することは簡便である。したがって、シードコンテナを、乾熱滅菌段階中に印またはラベルがその場所に残るように、含まれるシードの数、放射性同位体活性含量などを示すラベルをするかまたはそうでなければ印をするのが好ましい。予期されるように、多くの紙をベースにしたラベルは使用するオーブンの温度に耐えられず、濃く着色し、褐色になる。これは、製品の体裁に関して明らかに望ましくない。同様に、ラベルに使用したいかなる印刷法もまた情報の損失なしに状況に耐えることが可能でなければならない。この問題の解決は、熱に耐えることができる印刷がされた、特定のプラスチックラベルの使用である。被覆白色ポリエステルフィルムをベースにし、Armorから商品名AXR7で販売されている熱転写リボンが、本発明での使用に適していることが判明している。
【0036】
本発明の以下の非限定的実施例により説明する:
実施例1は本発明の乾熱滅菌法を実施する好ましい方法を記載する。
【実施例1】
【0037】
1から50個の125Iシードを開放P6ガラスバイアルに移した。バイアルを空気中、大気圧でシリコンクロージャーで密閉し、オーバーシールを空気式クリンパーを使用してひだを寄せた。バイアルを研究室オーブン(LTE Scientific, Swallow model)に環境温度で移し、オーブンのドアを閉じた。オーブンの温度を、オーブンの最も低温の部分に位置する温度測定装置でモニターした。温度プログラムを次いで開始させ、それによりオーブン温度を165℃に上昇させ、その温度を135分維持し、次いで加熱のスイッチを切り、オーブンが環境温度にゆっくりと戻るように冷却させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上の放射活性シードを滅菌条件下で含み、シードが、放射活性シードを、少なくとも140℃の温度で滅菌を達成するのに十分な時間乾熱に付し、放射活性シードを冷却することを含む、1個以上の放射活性シードの滅菌法で滅菌されている、製品。
【請求項2】
放射活性シードが密閉コンテナ中にある、請求項1記載の製品。
【請求項3】
放射活性シードが水分または化学滅菌に特徴的な化学残留物を含まず、製品がガンマ照射による滅菌に特徴的な分解をしていない、1個以上の放射活性シードを滅菌条件で含む密閉コンテナを含む、製品。
【請求項4】
密閉コンテナが内容物の詳細を伝えるマーカーまたはラベルを付けている、請求項1から3のいずれかに記載の製品。
【請求項5】
密閉コンテナが、取り外しできる気体非通過性クロージャーを有する容器である、請求項1から4のいずれかに記載の製品。
【請求項6】
放射活性シードが125I−放射性ヨウ素または103Pd−パラジウムを含む、請求項1から5のいずれかに記載の製品。
【請求項7】
シードが音波を発生する、請求項1から6のいずれかに記載の製品。

【公開番号】特開2007−262071(P2007−262071A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107891(P2007−107891)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【分割の表示】特願2001−500285(P2001−500285)の分割
【原出願日】平成12年5月15日(2000.5.15)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】