説明

滅菌検知インジケータおよびその製造方法

【課題】高熱や高温高圧蒸気による滅菌処理の際に、表面のフィルム剥がれを確実に防止し、反りの発生を充分低減しうる滅菌検知インジケータおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】滅菌検知インジケータ10は、紙製または多孔質材製の基材1上の一部分に、測定すべき温度、および/または高圧蒸気に反応して変色するインジケータ部2が付され、熱可塑性高分子材3がインジケータ部2ごと基材1を被覆しつつ基材1の内部へ浸透されて一体化している保護膜6を形成しているというものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジケータ部の表面を保護膜で被覆した滅菌検知インジケータおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院などの医療現場で用いられる医療器具は、感染を防止するため、滅菌・包装処理が施され、直前に開封されて使用されたり、煮沸消毒されて使用されたりする。滅菌処理は、例えばオートクレーブ内で高温高圧蒸気に曝されたり、熱湯中で煮沸されたりして、行われる。
【0003】
このような滅菌処理により滅菌が完了したことを確認する方法として、インジケータ部が付されたカード状の滅菌検知インジケータが用いられている。インジケータ部は、所定の温度に達したり高温蒸気に曝されたりすると、それを形成しているインジケータ組成物の成分が化学的に変化したり物性的に変化したりして、インジケータ部の色調が温度に応じて変化したり、基材上に目視可能に文字やマークとして現れたりするものである。この滅菌検知インジケータを、滅菌処理する医療器具に貼り付けたり、医療器具の包装袋に同封したりしておくと、滅菌処理により所定温度まで加熱されたときに、インジケータの表示で滅菌完了を目視で確認することができる。
【0004】
インジケータ組成物には、例えば、高圧蒸気で化学反応を起こして色調を変化させる成分である、メチン系染料およびシアニン系染料とカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有する油溶性樹脂が含有されている。このインジケータ部の保護や、医療器具へのインジケータ組成物の付着防止のために、インジケータ部の表面にプラスチックフィルム層を形成したものが例えば特許文献1に開示されている。プラスチックフィルム層は、予めフィルム化されたプラスチックをインジケータ部上に積層したり、あるいはプラスチックを含む溶液または分散液でコートしたりして形成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−48715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の滅菌検知インジケータでは、高温高圧蒸気等による滅菌処理の際に、フィルム層と基材との熱収縮率の違いの所為でフィルムの剥がれや反りが生じたり、水蒸気の水分子がフィルム層と基材との層間に浸入することでフィルムが剥がれたりする。特に、紙製の基材の場合には、水蒸気の影響を受け易い。剥がれに対する保護強化のために、インジケータ部ごと基材を、2枚の非透水性フィルムで挟み込んで接着したり、フィルムで包み込んでフィルム端部を熱融着して密封したりする方法もあるが、フィルムや粘着剤を余計に用いるためコストアップを招くばかりか、フィルムの剥がれを完全に防止できない。フィルムは平滑であるため、滅菌状況等の情報を鉛筆やポールペンのような筆記用具でフィルム上に記録し難い。
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高温高圧蒸気等による滅菌処理の際に、表面のフィルムの剥がれや反りを確実に防止でき、温度履歴管理に有用な滅菌検知インジケータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の滅菌検知インジケータは、紙製または多孔質材製の基材上の一部分に、測定すべき温度で、および/または高圧蒸気に反応して、変色するインジケータ部が付され、熱可塑性高分子材が前記インジケータ部ごと前記基材を被覆しつつ前記基材の内部へ浸透されて一体化している保護膜を形成していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の滅菌検知インジケータは、請求項1に記載されたもので、前記熱可塑性高分子材が、熱成型フィルム、および/またはワックスであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の滅菌検知インジケータの製造方法は、測定すべき温度で、および/または高圧蒸気に反応して、変色するインジケータ部を紙製または多孔質材製の基材上の一部分に付し、それらに熱可塑性高分子材を被せてから加熱溶融して、該インジケータ部ごと該基材に被覆させつつ、該基材に浸透させ、一体化した保護膜を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の滅菌検知インジケータの製造方法は、請求項3に記載されたもので、前記熱可塑性高分子材を、前記基材側に向かって押圧しつつ、前記加熱溶融させることにより、前記浸透させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の滅菌検知インジケータの製造方法は、請求項3に記載されたもので、前記基材上で前記熱可塑性高分子材をその溶融温度よりも低温に加熱して軟化させて前記基材に密着させた後、その熱可塑性高分子材を前記加熱溶融することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の滅菌検知インジケータの製造方法は、請求項3に記載されたもので、前記熱可塑性高分子材よりも低い温度で熱溶融する熱溶融性粘着剤を介して、前記熱可塑性高分子材を前記インジケータ部ごと前記基材に被せてから、前記温度に加熱し、軟化した前記熱溶融性粘着剤で粘着させた後、その熱可塑性高分子材を前記加熱溶融することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の滅菌検知インジケータによれば、熱可塑性高分子材がインジケータ部ごと基材を被覆しつつ基材の内部へ浸透されて一体化している保護膜を形成していることにより、保護膜の剥がれを確実に防止することができる。また、基材に高分子材が浸透しているため、基材と保護膜との熱収縮率の違いが小さくなり、反りの発生を充分に低減することができる。
【0015】
請求項2に記載の滅菌検知インジケータによれば、熱可塑性高分子材が、熱成型フィルムの場合には、定型性のために基材上で位置合わせし易く、しかも加熱した際に収縮せず、剥がれてしまうのを確実に防止できるために、インジケータの反りを低減できる。また、ワックス、またはそれを含有する熱可塑性高分子材の場合には、比較的低い温度で速やかに溶融して基材に浸透するのでインジケータの製造効率が向上する。
【0016】
請求項3に記載の滅菌検知インジケータの製造方法によれば、熱可塑性高分子材でインジケータ部ごと基材を被覆しつつ基材の内部へ浸透させて一体化させることができる。
【0017】
請求項4に記載の滅菌検知インジケータの製造方法によれば、熱可塑性高分子材を、基材側に向かって押圧しつつ、前記加熱溶融させることにより、基材に高分子材を充分に浸透させることができ、基材と保護膜とを確実に一体化することができる。
【0018】
請求項5に記載の滅菌検知インジケータの製造方法によれば、基材上で熱可塑性高分子材をその溶融温度よりも低温に加熱して軟化させて基材に接着させた後、その熱可塑性高分子材を前記加熱溶融することにより、ずれることなく高分子材の加熱溶融の作業をスムーズに行うことができる。
【0019】
請求項6に記載の滅菌検知インジケータの製造方法によれば、熱可塑性高分子材よりも低い温度で熱溶融する熱溶融性粘着剤を介して、熱可塑性高分子材をインジケータ部ごと基材に被せてから、その温度に加熱し、軟化した熱溶融性粘着剤で接着させた後、その熱可塑性高分子材を加熱溶融することにより、複雑な工程を経ることなく、ずれずに高分子材の加熱溶融の作業を簡単かつスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0021】
図1には、本発明を適用する滅菌検知インジケータの製造方法の一例を示す概要図が示されている。図1では、滅菌検知インジケータを構成する部材が断面で示されている。
【0022】
滅菌検知インジケータ10は、カード状で紙製または多孔質製の基材1を支持体として用いる。この基材1のおもて面側の一部分に、予め、測定すべき温度、および/または高圧蒸気に反応して変色するインジケータ組成物を含むインジケータ用インクによって所期のマークや文字等の形状に印刷し、インク層からなるインジケータ部2を形成する。
【0023】
基材1と同じ大きさの熱可塑性高分子材である樹脂製の熱成型フィルム3を、インジケータ部2ごと基材1上に被せる。このフィルム3は、熱成型によって形成されたものであり、成型時に一方向または二方向に延伸させずに無延伸で製造されたものである。このフィルム3の材質は、ポリプロピレンやポリエステル、ポリビニル、ポリアミド等を、使用する温度条件に応じ適宜選択するのが好ましい。中でも、延伸性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン(登録商標)のようなポリアミドであることが好ましい。
【0024】
次に、加熱押圧板20によって、フィルム3を、その溶融温度よりも低温に加熱して軟化させつつ基材1側に向かって軽く押圧し、基材1とフィルム3とをファンデルワールス力で弱く相互作用して密着し、初期固定する。初期固定しておくことで、位置ずれが防止され、次の作業工程を容易に行うことができる。
【0025】
続いて、加熱押圧板20によって、フィルム3を、その溶融温度以上で加熱溶融しつつ基材1側に向かって強く押圧して、インジケータ部2ごと基材1に被覆させつつ、基材1に浸透させて、基材1と一体化した保護膜6(図2参照)を形成する。溶融したフィルム3は、基材1に向かって押圧されることで、インジケータ部2には孔部分がないため浸透せず、その上にフィルム層(保護膜6)を形成するが、それ以外の部分では基材1の紙の繊維間や孔部分といった空隙に充分に浸透して、高分子浸透層5(図2参照)を形成する。押圧によって溶融したフィルム3がほとんど基材1に浸透することで、保護膜6がごく薄く形成されて、基材1表面の紙や多孔質材特有の微細な凹凸などの質感が、インジケータ部2上を除いた部分の保護膜6の観察面側(図2の上面側)に形成される。
【0026】
図2には、完成した本発明の滅菌検知インジケータ10の断面図が示されている。
【0027】
同図に示されるように、滅菌検知インジケータ10には、紙製または多孔質材製の基材1上の一部分に、測定すべき温度、および/または高圧蒸気に反応して変色するインジケータ部2が付され、熱可塑性高分子材がインジケータ部2ごと基材1の上面を被覆しつつ基材1の内部へ浸透されて一体化している保護膜6が形成されている。浸透した熱可塑性高分子材は、高分子浸透層5を形成する。保護膜6は、インジケータ部2上を保護しつつ高分子浸透層5と繋がって基材1と一体化されている。
【0028】
保護膜6の表面には、前記したように基材1表面の紙や多孔質材特有の微細な凹凸が形成されている。このため、鉛筆やボールペンのような筆記器具で滅菌日時や滅菌状況などの情報を記入することができる。
【0029】
高圧蒸気に反応して変色するインジケータ部2を用いた場合には、滅菌検知インジケータ10の基材1側から高圧蒸気が浸透し、インジケータ部2に下側(図2の下側)から高圧蒸気が到達することでインジケータ部2が変色する。この場合、保護膜6が蒸気の透過性を有する熱可塑性高分子材で形成されている場合には、保護膜6の表側(図2の上側)から透過した蒸気によってもインジケータ部2が変色する。
【0030】
なお、図3に示されるように、インジケータ部2の付された基材1に、フィルム3よりも低温で溶融する熱溶融性粘着剤4が付されたフィルム3を、被せてから、加熱押圧板20によって、フィルム3の溶融温度よりも低温かつ熱溶融性粘着剤4の溶融する温度に加熱しつつ、基材1側に向かって押圧して、粘着させ初期固定を行ってもよい。この場合には、ファンデルワールス力よりも強い粘着力でフィルム3を基材1に確実に初期固定することができる。初期固定後、加熱押圧板20でフィルム3を加熱溶融しつつ、基材1側に向かって押圧する。
【0031】
この場合も図2に示されるのと同様な滅菌検知インジケータ10が製造され、形成された保護膜6は、インジケータ部2の表面を保護しつつ高分子浸透層5によって基材1と一体化されている。熱溶融性粘着剤4は、溶融したフィルム3と混ざり合って、高分子浸透層5に含まれる。粘着剤にはポリエチレン樹脂などの融点の低い樹脂が望ましい。
【0032】
熱溶融性粘着剤4が付されたフィルム3に換えて、熱溶融性粘着剤4を付してからフィルム3を貼付してもよい。
【0033】
また、上記で説明したフィルム3に換えて、熱可塑性高分子材であるワックス8(図1、3参照)を用いてもよい。ワックス8は、溶融温度が測定すべき温度や高圧蒸気よりも高温で溶融するものが望ましい。
【0034】
また、インジケータ部2は印刷による塗布層に限られず、シート状であっても、カプセル状であっても、インジケータ組成物を含有するマイクロカプセルが含まれた層であってもよい。また、フィルム3やワックス8で基材1の側面まで保護膜6を形成してもよい。また、基材1よりも小さく、かつインジケータ部2を被覆できる大きさのフィルム3やワックス8を用いて、保護膜6を基材1の表面の一部に形成することもできる。基材1の非観察面側にも同様に、フィルム3やワックス8で保護膜6を形成してもよい。
【0035】
また、基材1の材料の紙には、植物繊維で製造されたもの以外にも、合成樹脂繊維で製造されたものも含まれる。また、多孔質材は、布帛、不織布、プラスチック等の合成樹脂や、セラミック、金属、木材等に小さい孔が無数に形成されて、溶融した高分子材が浸透するものであれば用いることができる。
【0036】
インジケータ部2に含有されるインジケータ組成物としては、例えば、一般式(I)
【0037】
【化1】

【0038】
で示されるモノアゾ染料と、有機酸または有機酸の金属塩の少なくとも一種とを含有する組成物が挙げられる。式(I)中のR1は水素基、メチル基、エチル基またはアシルアミノ基である。R2は水素基、水酸基、メトキシ基またはエトキシ基である。R3およびR4は水素基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、アシルオキシ基で置換された主鎖炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基で置換された主鎖炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基で置換された主鎖炭素数1〜4のアルキル基である。
【0039】
有機酸や有機酸の金属塩は、高圧蒸気による変色を促進するとともに変色条件を調整する成分である。有機酸としては、例えばアクリル酸、アジピン酸、L−アスパラギン酸、アゼライン酸、安息香酸、アントラニル酸、イソフタル酸、イタコン酸、ウンデシレン酸、クエン酸、グルタコン酸、サリチル酸、シアヌル酸、ジグリコール酸、DL−酒石酸、スルファニル酸、セバシン酸、ソルビン酸、テレフタル酸、ナフテン酸、ニコチン酸、馬尿酸、バルビツール酸、ピバリン酸、ピルビン酸、フタル酸、フマル酸、ベンジル酸、マレイン酸、マロン酸、メタクリル酸およびメタニル酸が挙げられる。有機酸の金属塩としては、上記の有機酸のカルシウム塩や亜鉛塩が挙げられる。なかでもサリチル酸カルシウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛およびアジピン酸が好適である。
【0040】
また、インジケータ組成物は、モノアゾ染料の0.01〜3重量部と、有機酸および有機酸の金属塩のうちの少なくとも一種の9〜12重量部とを含有する組成物が挙げられる。モノアゾ染料の適切な含有量は0.01〜3.0重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部である。
【0041】
有機酸としては、前記例示したものが挙げられる。有機酸の金属塩としては、例えば、前記の有機酸のカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。なかでもクエン酸、マロン酸、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、サリチル酸カルシウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛およびo-クレソチン酸が好適である。
【0042】
また、インジケータ組成物は、例えば、組成物100重量部中に、一種または複数種の遷移金属化合物を2〜15重量%と、硫化亜鉛、チオ尿素、メチルチオ尿素、1-フェニル−2-チオ尿素、1,3-ジフェニル−2-チオ尿素、2,2'−ジトリルチオ尿素、o-トリルチオ尿素のいずれかの硫黄化合物および硫黄のうちの少なくとも一種を5〜30重量部と、一般式(II)
【0043】
【化2】

【0044】
(式(II)中、R5は水素基、メチル基、エチル基またはアシルアミノ基、R6は水素基、メトキシ基またはエトキシ基、R7、R8およびR9は水素基、水酸基、硝酸基、炭素数1〜4のアルキル基、アシルオキシ基で置換された主鎖炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基で置換された主鎖炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基で置換された主鎖炭素数1〜4のアルキル基)で示される一種または複数種のモノアゾ染料を0.1〜3.5重量部と、有機酸および有機酸の金属塩のうちの少なくとも一種を4.8〜15重量部とを含有する組成物が挙げられる。組成物を構成する遷移金属化合物、硫黄、硫黄化合物は、高圧蒸気により変色する成分である。
【0045】
遷移金属化合物としては、例えばニッケル、コバルト、銅、鉛、ビスマスの塩基性炭酸塩、水酸化物、酸化物およびステアリン酸化合物が挙げられる。遷移金属化合物の適切な含有量は、組成物総量の2〜15重量部、好ましくは5〜10重量部である。
【0046】
硫黄化合物は、無機または有機の硫黄化合物が使用可能である。無機硫黄化合物としては、例えば硫化亜鉛が挙げられる。有機硫黄化合物としては、例えばチオ尿素、メチルチオ尿素、1-フェニル−2-チオ尿素、1,3-ジフェニル−2-チオ尿素、2,2'−ジトリルチオ尿素およびo-トリルチオ尿素が挙げられる。硫黄や硫黄化合物の適切な含有量は、組成物総量の5〜30重量部、好ましくは8〜15重量部である。
【0047】
モノアゾ染料の適切な含有量は、組成物総量の0.1〜3.5重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部である。有機酸としては、例えば、前記した有機酸やクレソチン酸が挙げられる。
【0048】
有機酸の金属塩としては、例えば、上記の有機酸のカルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。なかでもクエン酸、マロン酸、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、サリチル酸カルシウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛およびo-クレソチン酸が好適である。これら有機酸および有機酸の金属塩の適切な含有量は組成物総量の4.8〜15重量部、好ましくは4.8〜10重量部である。
【0049】
また、インジケータ組成物は、例えば、糖類の0.1〜50重量部と、モノアゾ染料の0.01〜3重量部とを含有する組成物が挙げられる。また、必要に応じて溶剤、樹脂、またはそれらを含むインキビヒクルを10〜1000重量部用いてもよい。
【0050】
この場合、糖類は、遊離のアルデヒド基若しくはヘミアセタール基を少なくとも一つ有する還元性の単糖類、または単糖類を構成単位とする多糖類を用いることが好ましい。単糖類は、グルコース、ガラクトース、マンノース、アラビノース等のアルドヘキソースが挙げられる。それらを修飾した誘導体であってもよい。多糖類は、冷水または熱水に対して可溶性の多糖類とりわけ天然多糖類であることが好ましい。このような水可溶性の多糖類は、高圧蒸気滅菌を施す際に高圧蒸気を変色層内に保持する作用を示し、またその温度範囲において、部分的に加水分解を起こし易いものである。多糖類は、具体的には、単糖分子の還元基と他の単糖分子のアルコール性水酸基とが結合した基を有する還元性の多糖類、より具体的には、澱粉、デキストリン、アルギン酸、カラギーナン、アラビアゴム、寒天やその一成分であるアガロース、ガラクタン、ペクチンが挙げられる。それらを修飾した誘導体であってもよい。
【0051】
このモノアゾ染料は、高圧蒸気下で、遊離のアルデヒド基を有する単糖類や、ヘミアセタール基を有する単糖類、部分的に加水分解した多糖類と反応して変色し、又、エチレンオキサイドガスと反応して変色する色素である。モノアゾ染料は、置換基を有していてもよい芳香族基同士がモノアゾ基を介して結合したものであると好ましく、その一方の芳香族基を、含窒素芳香族複素環基、または芳香族炭化水素基とし、他方の芳香族基を、アミノ基含有芳香環基、またはエナミン含有芳香族複素環基にすると一層好ましい。
【0052】
前記誘導体は、塩であることが好ましい。さらに有機酸を最大で50重量部含有してもよい。この有機酸は、より具体的には、アジピン酸、マレイン酸のような飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸;フタル酸のような芳香族カルボン酸が挙げられる。溶剤は、必要に応じて樹脂と共に用いられるもので、インジケータ組成物がインキとしての優れた印刷性能を発現するためのものである。溶剤は、例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、ブチルセロソルブ、トルエン、キシレンのような有機溶媒;桐油、アマニ油、大豆油、ヒマシ油、乾性油、およびこれらの混合物のような乾性油を、含んでいてもよい。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0053】
また、インジケータ組成物は、例えば、金属粉、2価金属および/または3価金属と無機酸との強酸塩から選ばれる少なくとも何れか無機物の0.1〜50重量部、およびモノアゾ染料の0.01〜3重量部を含有する組成物が挙げられる。この場合、モノアゾ染料が、置換基で置換されていてもよい芳香族基を二つ有するモノアゾ化合物であり、その一方の芳香族基を、含窒素芳香族複素環基、または芳香族炭化水素環基とし、他方の芳香族基を、アミノ基含有芳香環基、またはエナミン含有芳香族複素環基とすることが好ましい。含窒素芳香族複素環基は、具体的にはチアゾール−2−イル基のようなチアゾール環基、ベンゾチアゾール−2−イル基のようなベンゾチアゾール環基、ベンゾイミダゾール−2−イル基のようなベンゾイミダゾール環基、1,2,4−トリアゾール−5−イル基のようなトリアゾール環基、ピリジン−2−イル基のようなピリジン環基、キナゾリン−2−イル基のようなキナゾリン環基、1,2,4−チアジアゾール−5−イル基のようなチアジアゾール環基、キノリン−2−イル基のようなキノリン環基、ベンゾ〔f〕キノリン−2−イル基のようなベンゾキノリン環基が挙げられる。芳香族炭化水素環基はフェニル基が挙げられる。アミノ基含有芳香環基は、p−アミノフェニル基が挙げられる。エナミン含有芳香族複素環基は、インドール−3−イル基、1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ〔f〕キノリン−6−イル基、カルバゾール−3−イル基が挙げられる。これらの芳香族基は、置換基を有していてもよい。そのような置換基は、例えば、水酸基、炭素数1〜4の低級アルキルスルホ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4の低級アルキル基、低級アルキルオキシ基、ヒドロキシ低級アルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、フェニル基、フェノキシ基、アラルキル基、ニトロ基、シアノ基、アシルアミノ基が挙げられる。さらにこれらのアルキル基が、アシルオキシ、シアノ、アルコキシでさらに置換されていてもよい。
【0054】
さらにこのモノアゾ染料が、下記化学式(III)
【0055】
【化3】

【0056】
(式(III)中、R10は、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキルスルホ基、炭素数1〜4のアルコキシル基、またはニトロ基、R11およびR12は、同一または異なり、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、またはアシルアミノ基、R13およびR14は、同一または異なり、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、またはアシルオキシ置換、シアノ置換、アルコシキル置換若しくはヒドロキシ置換された炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表わされ、または、下記化学式(IV)
【0057】
【化4】

【0058】
(式(IV)中、R15およびR16は、同一または異なり、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基またはアシルアミノ基、R17およびR18は、同一または異なり、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、R19およびR20は、同一または異なり、水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、またはシアノ置換、ヒドロキシ置換若しくはアシルオキシ置換された炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表わされる少なくともいずれかのモノアゾ化合物を用いることが好ましい。
【0059】
前記式(I)〜(IV)で示されるモノアゾ染料は、変色成分であり、より具体的には、C.I.(カラーインデックス)ディスパースレッド4、C.I.ディスパースレッド17、C.I.ディスパースレッド58、C.I.ディスパースレッド72、C.I.ディスパースレッド73、C.I.ディスパースレッド88、C.I.ディスパースレッド110、C.I.ディスパースレッド111、C.I.ディスパースレッド117、C.I.ディスパースレッド137、C.I.ディスパースレッド206、C.I.ディスチャージレッド88、C.I.ディスチャージレッド117、C.I.ディスチャージレッド137、C.I.ディスパースバイオレット38、C.I.ディスパースバイオレット43、C.I.ディスチャージバイオレット43、C.I.ディスパースブルー102のような公知のものが使用出来る。
【0060】
金属粉は、900μm以下の金属微粉末であることが望ましい。上記した無機物中、金属粉を構成する金属、強酸塩を構成する金属は、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、スズ、亜鉛、鉛、銅、マンガン、またはそれらのうちのいずれかの合金を用いることが好ましく、前記した強酸塩には、塩酸塩、硫酸塩、または硝酸塩を用いることが好ましい。さらに有機酸を最大で50重量部含有してもよい。この有機酸は、カルボン酸が挙げられ、特に好ましいのは、芳香族カルボン酸誘導体が挙げられる。
【0061】
芳香族カルボン酸誘導体として、ヒドロキシ基、アルコキシ基またはオキソ基を有していてもよい芳香族モノカルボン酸、例えばベンゼンカルボン酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,3,4−トリメチル安息香酸、2,3,5−トリメチル安息香酸、2,4,5−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、3,4,5−トリメチル安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸、2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、2,3−ジメトキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸、2,4,5−トリメトキシ安息香酸;
【0062】
ヒドロキシ基、アルコキシ基またはオキソ基を有していてもよい芳香族ポリカルボン酸、例えばベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、5−メチルイソフタル酸、4,5−ジメトキシフタル酸、2−(カルボキシメチル)安息香酸、3−(カルボキシメチル)安息香酸、4−(カルボキシメチル)安息香酸、2−(カルボキシカルボニル)安息香酸、3−(カルボキシカルボニル)安息香酸、4−(カルボキシカルボニル)安息香酸が挙げられる。
【0063】
さらに、インジケータ組成物は、ニコチン酸アミド、イソニコチン酸ヒドラジド、ビスマス化合物、硫黄もしくは硫黄化合物、ポリアミド/ニトロセルロース樹脂、アクリル/繊維素系樹脂を含有する組成物や、ビスマス化合物、硫黄を含む硫黄化合物、有機酸化合物、ウレタン/ニトロセルロース樹脂、ポリアミド/ニトロセルロース樹脂、アクリル/アルキッド/ニトロセルロース樹脂を含有する組成物や、ビスマス化合物、硫黄を含む硫黄化合物、有機酸化合物、ウレタン/ニトロセルロース樹脂、ポリアミド/ニトロセルロース樹脂、アクリル/アルキッド/ニトロセルロース樹脂を含有する組成物や、長鎖脂肪酸の金属塩とフロログルシン誘導体とを含有する組成物や、紺青、無機アルカリ性物質をバインダーに分散させた組成物や、メチン系染料および/またはシアニン系染料と、マレイン酸樹脂および/またはスチレン−マレイン酸樹脂と、有機溶剤とからなる組成物や、ビスマス化合物とチオ尿素化合物と合成ゴム系樹脂とを含有する組成物や、モノアゾ染料と有機酸触媒とを含有する組成物や、硫黄または硫黄化合物およびビスマス化合物とエチレンオキサイドガスで変色するアゾ系の分散染料と有機酸と樹脂とを含有する組成物などが挙げられる。
【0064】
上記したような組成物とインキ用ビヒクルとをボールミル、ロールミル、サンドミル等の分散機を用いて混合し、例えばグラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ、フレキソ印刷インキのような印刷インキの形にし、紙等の基材に印刷して使用する。
【0065】
また、これらの材料以外に別な有色色素や発色増強剤、防錆剤、界面活性剤をはじめ、従来の専用インジケータ組成物に用いられている各種の添加剤を加えても良い。例えば、シリカ、硫酸バリウム、クレイ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を添加すれば、印刷された組成物皮膜へのエチレンオキサイドガスの透過性を向上することができる。また、耐熱性、耐ガス性に優れた色素の添加により、変色前の色と変色後の色を調整することもできる。
【0066】
なお、モノアゾ染料は、アルコール類、セロソルブ類に可溶なため、インキ用ビヒクルには、アルコール類やセロソルブ類を主溶剤としたもので、インジケータの変色性を損なわず、且つ被印刷物への付着性が優れた樹脂を使用する。例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、ブチラール樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂およびロジン変性マレイン酸樹脂等が挙げられる。上記の条件を満たしている市販のインキ用ビヒクルを使用しても良い。
【0067】
なお、上記したインジケータ組成物は例示であって、これらに限定されるものではない。
【0068】
このように、上記した滅菌検知インジケータおよびその製造方法によれば、熱可塑性高分子材である熱成型フィルムやワックスがインジケータ部2ごと基材1を被覆しつつ基材1の内部へ浸透されて一体化している保護膜6を形成することにより、保護膜6の剥がれを確実に防止することができる。また、基材1に高分子材が浸透しているため、基材1と保護膜6との熱収縮率の違いが小さくなり、反りの発生を充分に低減することができる。
【0069】
また、熱可塑性高分子材が加熱溶融された状態で、基材1側に向かってこの高分子材を押圧することにより、基材1に高分子材を充分に浸透させることができ、基材1と保護膜6とを確実に一体化することができる。
【0070】
また、熱可塑性高分子材として、熱成型フィルム3を用いた場合には、加熱した際に収縮せず、剥離を確実に防止でき、反りを充分に低減できると共に、フィルムは定型性を有しているため基材上に位置合わせを容易に行うことができる。また、ワックスを用いた場合には、容易に溶融して基材に浸透して高分子浸透層5を確実に形成することができる。
【0071】
また、本発明の滅菌検知インジケータ10は、高温高圧蒸気による滅菌処理の完了の確認に好適に用いることができるが、これに限定されるものでなく、高温下での滅菌処理や、煮沸消毒での滅菌処理などの完了の確認に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の滅菌検知インジケータの製造方法によって本発明の滅菌検知インジケータを製造した実施例1〜6と、本発明を適用外の製造方法で本発明を適用外のインジケータを製造した比較例1〜6とを、説明する。
【0073】
実施例1〜3は、図1を用いて説明した本発明の滅菌検知インジケータの製造方法で製造した図2に示される本発明の滅菌検知インジケータに対応する。
【0074】
(実施例1)
C.I.ディスパースレッド88 2重量部
ミケトンブリリアントブルー 2重量部
(三井東圧染料社製)
サリチル酸亜鉛 10重量部
30%アクリル樹脂ブチルセロソルブ溶液 100重量部
ブチルセロソルブ 30重量部
上記の配合物をボールミルで24時間混練して赤色のインジケータ用インキを調整した。カード状で紙製の基材の上面の一部分に、得られたインジケータ用インキをグラビア印刷によって塗布し、インキ層のインジケータ部を形成した。その上に基材の上面と同じ大きさのポリプロピレン製の熱成型フィルムを被せ、ポリプロピレンの溶融温度よりも低い120℃で基材に向かって加熱押圧板で押圧し、軟化させて密着させ初期固定を行った。更に、ポリプロピレンの溶融温度よりも高い190℃以上の高温で、ポリプロピレンが基材に浸透し、熱成型フィルム表面の光沢がなくなるまで、加熱押圧板で押圧し、滅菌検知インジケータを得た。
【0075】
(実施例2)
C.I.ディスパースレッド110 0.8重量部
フタロシアニンブルー 0.2重量部
マロン酸 4.0重量部
フタル酸 8.0重量部
エスレック(登録商標)B BL−1 7.0重量部
(商品名、積水化学製)
イソプロピルアルコール 50.0重量部
トルエン 15.0重量部
メチルセロソルブ 15.0重量部
上記の配合物をサンドミルで30分間混練し、赤紫色のインジケータ用インキを得た。カード状で紙製の基材の上面の一部分に、得られたインジケータ用インキをグラビア印刷によって塗布し、インキ層のインジケータ部を形成した。その上に基材の上面と同じ大きさのポリプロピレン製の熱成型フィルムを被せ、ポリプロピレンの溶融温度よりも低い120℃で基材に向かって加熱押圧板で押圧し、軟化させて密着させ初期固定を行った。更に、ポリプロピレンの溶融温度よりも高い190℃以上の高温で、ポリプロピレンが基材に浸透し、熱成型フィルム表面の光沢がなくなるまで、加熱押圧板で押圧し、滅菌検知インジケータを得た。
【0076】
(実施例3)
酸化ビスマス(Bi2O) 5.0重量部
1,3−ジフェニル-2-チオ尿素 10.0重量部
C.I.ディスパースレッド110 1.0重量部
サリチル酸カルシウム 9.0重量部
エチルセルロース 10.0重量部
ブチルセロソルブ 65.0重量部
上記の配合物をボールミルで24時間混練し、赤色のインジケータ用インキを得た。カード状で紙製の基材の上面の一部分に、インジケータ用インキを印刷によって予め塗布し、インキ層のインジケータ部を形成した。その上に基材の上面と同じ大きさのポリプロピレン製の熱成型フィルムを被せ、ポリプロピレンの溶融温度よりも低い120℃で基材に向かって加熱押圧板で押圧し、軟化させて密着させ初期固定を行った。更に、ポリプロピレンの溶融温度よりも高い190℃以上の高温で、ポリプロピレンが基材に浸透し、熱成型フィルム表面の光沢がなくなるまで、加熱押圧板で押圧し、滅菌検知インジケータを得た。
【0077】
実施例1〜3で製造した各々の滅菌検知インジケータの表面に水を付着させ、いずれのインジケータ部からもインキ成分の滲み出しがないことを確認した。また、各々の滅菌検知インジケータの表面を先端のとがった針で傷つけ、針でインジケータ部が直接削られないことで、各々全てのインジケータ部の表面に保護膜が形成されていることを確認した。
【0078】
実施例1〜3で製造した各々の滅菌検知インジケータを134℃で8分の高圧蒸気滅菌処理を行ったが、いずれも保護膜の剥がれは全く発生しなかった。実施例1で製造した滅菌検知インジケータのインジケータ部は赤色から青色に変色して滅菌処理を行ったことが確認できた。実施例2で製造した滅菌検知インジケータのインジケータ部は赤紫色から黒褐色に変色して滅菌処理を行ったことが確認できた。実施例3で製造した滅菌検知インジケータのインジケータ部は赤色から黒色に変色して滅菌処理を行ったことが確認できた。
【0079】
また、実施例1〜3で製造したいずれの滅菌検知インジケータの反りも認められなかった。実施例1〜3で製造した各々の滅菌検知インジケータを水濡れさせた状態で134℃で8分の高圧蒸気滅菌行ったが、保護膜の剥がれは全く無かった。
【0080】
実施例1〜3で製造したいずれの滅菌検知インジケータにも、基材の表層と同様の紙の微細な凹凸が表面に形成されていた。表面に鉛筆による筆記を容易に行うことできた。
【0081】
実施例4〜6は、図3を用いて説明した本発明の滅菌検知インジケータの製造方法で製造した図2に示される本発明の滅菌検知インジケータに対応する。
【0082】
(実施例4)
カード状で紙製の基材の上面の一部分に、実施例1と同様のインジケータ用インキをグラビア印刷によって塗布し、インキ層のインジケータ部を形成した。その基材の上面と同じ大きさのポリプロピレン製の熱成型フィルムの一面に、熱溶融粘着剤を塗布した。熱溶融粘着剤を介して、熱成型フィルムを、インジケータ部ごと基材に貼付した。ポリプロピレンの溶融温度よりも低く、熱溶融性粘着剤の溶融する80℃で基材に向かって加熱押圧板で押圧し、熱溶融性粘着剤を軟化させて粘着させ、初期固定を行った。さらに、実施例1と同様に190℃以上の高温で、表面の光沢がなくなるまで押圧し、滅菌検知インジケータを得た。
【0083】
(実施例5)
カード状で紙製の基材の上面の一部分に、実施例2と同様のインジケータ用インキをグラビア印刷によって塗布し、インキ層のインジケータ部を形成した。その基材の上面と同じ大きさのポリプロピレン製の熱成型フィルムの一面に、熱溶融粘着剤を塗布した。熱溶融粘着剤を介して、熱成型フィルムを、インジケータ部ごと基材に貼付した。ポリプロピレンの溶融温度よりも低く、熱溶融性粘着剤の溶融する80℃で基材に向かって加熱押圧板で押圧し、熱溶融性粘着剤を軟化させて粘着させ、初期固定を行った。さらに、実施例1と同様に190℃以上の高温で、表面の光沢がなくなるまで押圧し、滅菌検知インジケータを得た。
【0084】
(実施例6)
カード状で紙製の基材の上面の一部分に、実施例3と同様のインジケータ用インキをグラビア印刷によって塗布し、インキ層のインジケータ部を形成した。その基材の上面と同じ大きさのポリプロピレン製の熱成型フィルムの一面に、熱溶融粘着剤を塗布した。熱溶融粘着剤を介して、熱成型フィルムを、インジケータ部ごと基材に貼付した。ポリプロピレンの溶融温度よりも低く、熱溶融性粘着剤の溶融する80℃で基材に向かって加熱押圧板で押圧し、熱溶融性粘着剤を軟化させて粘着させ、初期固定を行った。さらに、実施例1と同様に190℃以上の高温で、表面の光沢がなくなるまで押圧し、滅菌検知インジケータを得た。
【0085】
実施例4〜6で製造した各々の滅菌検知インジケータの表面に水を付着させ、いずれのインジケータ部からもインキ成分の滲み出しがないこと確認した。また、各々の滅菌検知インジケータの表面を先端のとがった針で傷つけ、針でインジケータ部が直接削られないことで、各々全てのインジケータ部の表面に保護膜が形成されていることを確認した。
【0086】
実施例4〜6で製造した各々の滅菌検知インジケータを134℃で8分の高圧蒸気滅菌処理を行ったが、いずれも保護膜の剥がれは全く発生しなかった。実施例4で製造した滅菌検知インジケータのインジケータ部は赤色から青色に変色して、滅菌処理を行ったことが確認できた。実施例5で製造した滅菌検知インジケータのインジケータ部は赤紫色から黒褐色に変色して滅菌処理を行ったことが確認できた。実施例6で製造した滅菌検知インジケータのインジケータ部は赤色から黒色に変色した滅菌処理を行ったことが確認できた。
【0087】
また、実施例4〜6で製造したいずれの滅菌検知インジケータの反りも認められなかった。実施例4〜6で製造した各々の滅菌検知インジケータを水濡れさせた状態で134℃で8分の高圧蒸気滅菌行ったが、保護膜の剥がれは全く無かった。
【0088】
実施例4〜6で製造したいずれの滅菌検知インジケータにも、基材の表層と同様の紙の微細な凹凸が表面に形成されていた。表面に鉛筆による筆記を容易に行うことできた。
【0089】
(比較例1〜6)
カード状で紙製の基材の上面の一部分に、実施例1と同様のインジケータ用インキをグラビア印刷によって塗布し、インキ層のインジケータ部を形成した。この基材の表面に熱溶融粘着剤を塗布した。その上にポリプロピレン製のフィルムを載せ、ポリプロピレンの溶融温度よりも低く、熱溶融性粘着剤の溶融する100℃で基材に向かって加熱押圧板で押圧し、本発明によらない比較例1としての通常の滅菌検知インジケータを得た。この比較例1と同様にして、インキだけを実施例2〜6のインジケータ用インキに換えて、本発明によらない比較例2〜6としての通常の滅菌検知インジケータを得た。
【0090】
比較例1〜6で製造した各々のインジケータの表面に光沢があることを確認した。また、比較例1〜6のフィルムを剥がすと、基材の紙が剥がれ、いずれも強固に接着していることを確認した。また、いずれも表面は滑って鉛筆で筆記できなかった。
【0091】
この比較例1〜6で製造したインジケータを134℃で8分の高圧蒸気滅菌処理を行ったところ、いずれもフィルムが収縮して表面から一部が剥がれた。また、いずれもフィルムの収縮によって、反りが見られた。
【0092】
比較例1〜6で製造したインジケータを水ぬれさせた状態で134℃で8分の高圧蒸気滅菌行ったところ、いずれもフィルムが完全に剥離してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の滅菌検知インジケータは、高熱や高温高圧蒸気による滅菌処理の際に、表面のフィルム剥離を確実に防止し、反りの発生を充分低減することができるため、医療器具や美容器具、各種の測定用器具、食器等の滅菌処理の確認に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明を適用する滅菌検知インジケータの製造方法の概要図である。
【図2】本発明を適用する滅菌検知インジケータの断面図である。
【図3】本発明を適用する別の滅菌検知インジケータの製造方法の概要図である。
【符号の説明】
【0095】
1は基材、2はインジケータ部、3は熱成型フィルム、4は熱溶融性粘着剤、5は高分子浸透層、6は保護膜、8はワックス、10は滅菌検知インジケータ、20は加熱押圧板である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製または多孔質材製の基材上の一部分に、測定すべき温度で、および/または高圧蒸気に反応して、変色するインジケータ部が付され、熱可塑性高分子材が前記インジケータ部ごと前記基材を被覆しつつ前記基材の内部へ浸透されて一体化している保護膜を形成していることを特徴とする滅菌検知インジケータ。
【請求項2】
前記熱可塑性高分子材が、熱成型フィルム、および/またはワックスであることを特徴とする請求項1に記載の滅菌検知インジケータ。
【請求項3】
測定すべき温度で、および/または高圧蒸気に反応して、変色するインジケータ部を紙製または多孔質材製の基材上の一部分に付し、それらに熱可塑性高分子材を被せてから加熱溶融して、該インジケータ部ごと該基材に被覆させつつ、該基材に浸透させ、一体化した保護膜を形成することを特徴とする滅菌検知インジケータの製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性高分子材を、前記基材側に向かって押圧しつつ、前記加熱溶融させることにより、前記浸透させることを特徴とする請求項3に記載の滅菌検知インジケータの製造方法。
【請求項5】
前記基材上で前記熱可塑性高分子材をその溶融温度よりも低温に加熱して軟化させて前記基材に密着させた後、その熱可塑性高分子材を前記加熱溶融することを特徴とする請求項3に記載の滅菌検知インジケータの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性高分子材よりも低い温度で熱溶融する熱溶融性粘着剤を介して、前記熱可塑性高分子材を前記インジケータ部ごと前記基材に被せてから、前記温度に加熱し、軟化した前記熱溶融性粘着剤で粘着させた後、その熱可塑性高分子材を前記加熱溶融することを特徴とする請求項3に記載の滅菌検知インジケータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−254620(P2009−254620A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107744(P2008−107744)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】