説明

滑らかで優れた口中感を有する油性菓子

【課題】
果汁パウダー、乾燥果実、酸味料などを使用し有機酸を含有する滑らかで口中感に優れた油性菓子を提供することを目的とする。
【解決手段】
有機酸を含有する油性菓子において、レファイニング前に、例えばHLBが7以下のショ糖脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上の乳化剤を例えば0.1〜1.0重量%添加する。これにより、滑らかで口中感に優れた油性菓子を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸を含有する油性菓子であって、滑らかで優れた口中感を有する油性菓子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チョコレート等油性生地の製造方法として、通常レファイニングによる粉砕後、コンチングを行うことで滑らかで良好な口中感を得る。その工程において凝集塊の発生を防止することが必要となる。
またチョコレート等の油性菓子は、様々な種類の原料を含有させることができ、それにより様々な風味を創出することができる。油性菓子に使用される原料のうち、果汁パウダー、乾燥果実、酸味料など有機酸を含有する原料は、油性菓子に特徴ある風味を付与することが可能であるが、これを使用することにより、ざらつき感を呈し、食した際の口中感を損なうことがある。このような現象を解決する策は、未だ開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、果汁パウダー、乾燥果実、酸味料などの有機酸を含有し、滑らかで口中感に優れた油性菓子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、有機酸を含有しながら、滑らかで口中感に優れた油性菓子を提供することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、以下に示すものである。
(1)有機酸を含有する油性菓子であって、ショ糖脂肪酸エステルおよびグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上の乳化剤がレファイニング前に添加されていることを特徴とする油性菓子。
(2)上記乳化剤のHLBが7以下であることを特徴とする(2)に記載の油性菓子。
(3)上記乳化剤の添加量が0.1〜1.0重量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の油性菓子。
(4)有機酸を含有する原料として、果汁パウダー、乾燥果実、酸味料の1つもしくは2種以上を使用することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の油性菓子。
【発明の効果】
【0005】
本発明の油性菓子は、有機酸を含有しながら、ざらつき感がなく滑らかで口中感に優れた品質を呈する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0007】
本発明の油性菓子には、たとえばホワイトチョコレート、ミルクチョコレートまたはスイートチョコレート等いずれの種類のチョコレートでもよく、チョコレート類の表示に関する公正競争規約に定めるチョコレート、準チョコレートに限らず、それらに該当しないテンパータイプ、ノンテンパータイプのファットクリームなどあらゆる種類の油性菓子が対象となる。
【0008】
本発明の油性菓子は、有機酸を含有する。有機酸含有原料としては例えば、レモン果汁パウダー、オレンジ果汁パウダー、みかん果汁パウダー、グレープフルーツ果汁パウダー、ぶどう果汁パウダー、いちご果汁パウダー、ラズベリー果汁パウダー、りんご果汁パウダー、キウイ果汁パウダー、パインアップル果汁パウダー等の果汁パウダー、乾燥レモン、乾燥オレンジ、乾燥みかん、乾燥グレープフルーツ、乾燥ぶどう、乾燥いちご、乾燥ラズベリー、乾燥りんご、乾燥キウイ、乾燥パインアップル等の乾燥果実、クエン酸、L-酒石酸、乳酸、氷酢酸、DL-リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸等の酸味料が挙げられる。また、その他発酵乳パウダー、ワインパウダー、醸造酢パウダー等が挙げられる。
【0009】
本発明の油性菓子には、ショ糖脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上からなる乳化剤を添加する。2種以上のショ糖脂肪酸エステルを添加してもよいし、2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを添加してもよい。またショ糖脂肪酸エステルとグリセリン脂肪酸エステルを組み合わせても良い。当該乳化剤のHLBは7以下が好ましい。HLBが7より大きいと得られる油性菓子の滑らかさ、口中感が劣り、本発明の効果は小さくなる。
【0010】
本発明の効果を得るための当該乳化剤の添加量は0.1重量%以上1.0重量%以下が好ましく、0.1重量%以上0.5重量%以下がより好ましい。添加量が0.1重量%未満では本発明の効果は小さくなる。添加量が1.0重量%を超えても発明の効果は大きく変わらず、コスト的にも不利である。また乳化剤特有の呈味により油性菓子の風味が損なわれ好ましくない。
【0011】
本発明におけるレファイニングとは、油性菓子生地を粉砕する工程をいう。通常レファイニングを行うことで油性菓子生地中固形分の粒度を低下させ油性菓子に滑らかで良好な口中感が得られる。一般的にはロールレファイナーが使用される。
【0012】
本発明による油性菓子の製造工程は例えば次の通りである。砂糖、乳糖、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー等の粉体原料と、上記有機酸含有原料と、上記乳化剤と、融解させたカカオマス、ココアバター、植物油脂やレシチン等の油性液状原料とを、レファイニングに適した油分(通常25〜30%)になるよう攪拌混合してペースト状の種生地を得、当該種生地をレファイニングし、得られたフレークをコンチングし、ペースト状に液化した後、所望の油分、粘度になるよう更にココアバター、植物油脂等の油脂原料、及び、レシチンを添加し、攪拌混合する。更にこれに、必要に応じ香料等を添加してもよい。
当該乳化剤は、油性菓子の製造工程中、レファイニング前に添加される。レファイニング後での添加では得られる油性菓子の滑らかさ、口中感が劣り、発明の効果は得られ難い。
【実施例】
【0013】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
ココアバター19.950重量部、砂糖23.400重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、オレンジ果汁パウダー2.100重量部、乾燥レモン粉末2.000重量部、クエン酸0.400重量部、レシチン0.250重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.500重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例2】
【0015】
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが1(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−10)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例3】
【0016】
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが2(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−20W)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例4】
【0017】
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが3(三菱化学フーズ製、商品名:リョートーシュガーエステルS−370)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例5】
【0018】
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが7(三菱化学フーズ製、商品名:リョートーシュガーエステルS−770)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例6】
【0019】
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが8(三菱化学フーズ製、商品名:リョートーシュガーエステルF−70)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、やや滑らかさが劣るが、良好な口中感を有していた。
【実施例7】
【0020】
ココアバター19.950重量部、砂糖23.650重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、オレンジ果汁パウダー2.100重量部、乾燥レモン粉末2.000重量部、クエン酸0.400重量部、レシチン0.250重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.250重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを常法通り、レファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例8】
【0021】
ココアバター19.950重量部、砂糖23.800重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、オレンジ果汁パウダー2.100重量部、乾燥レモン粉末2.000重量部、クエン酸0.400重量部、レシチン0.250重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.100重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例9】
【0022】
ココアバター19.950重量部、砂糖22.900重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、オレンジ果汁パウダー2.100重量部、乾燥レモン粉末2.000重量部、クエン酸0.400重量部、レシチン0.250重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)1.000重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例10】
【0023】
ココアバター19.950重量部、砂糖23.400重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、ラズベリー果汁パウダー2.100重量部、乾燥いちご粉末2.000重量部、DL-リンゴ酸0.400重量部、レシチン0.250重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.500重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例11】
【0024】
ココアバター19.950重量部、砂糖23.400重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、パインアップル果汁パウダー2.100重量部、乾燥キウイ粉末2.000重量部、DL-リンゴ酸0.400重量部、レシチン0.250重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.500重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例12】
【0025】
砂糖30.300重量部、カカオマス25.000重量部、全粉乳20.000重量部、ココアバター5.000重量部、オレンジ果汁パウダー5.000重量部、クエン酸0.500重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.500重量部、レシチン0.250重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター13.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.200重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例13】
【0026】
ココアバター19.950重量部、砂糖23.400重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、クエン酸4.500重量部、レシチン0.250重量部、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.500重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【実施例14】
【0027】
ココアバター19.950重量部、砂糖23.400重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、オレンジ果汁パウダー2.100重量部、乾燥レモン粉末2.000重量部、クエン酸0.400重量部、レシチン0.250重量部、HLBが2のグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製、商品名:ポエムTR−FB)0.500重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、滑らかで良好な口中感を有していた。
【0028】
(比較例1)
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが9.5(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−90)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、ざらつきを感じ、好ましくない口中感を有していた。
【0029】
(比較例2)
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが11(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−110)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、ざらつきを感じ、好ましくない口中感を有していた。
【0030】
(比較例3)
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが13(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−140)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、ざらつきを感じ、好ましくない口中感を有していた。
【0031】
(比較例4)
使用したショ糖脂肪酸エステルのHLBが15(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−160)である以外は実施例1と同じ方法にて油性菓子を調製した。当該油性菓子は、ざらつきを感じ、好ましくない口中感を有していた。
【0032】
(比較例5)
ココアバター19.950重量部、砂糖23.400重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、オレンジ果汁パウダー2.100重量部、乾燥レモン粉末2.000重量部、クエン酸0.400重量部、レシチン0.250重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークに対し、HLBが6のショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬製、商品名:DKエステルF−50)0.500重量部を加え、常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、ざらつきを感じ、好ましくない口中感を有していた。
【0033】
(比較例6)
ココアバター19.950重量部、砂糖23.900重量部、全粉乳13.000重量部、脱脂粉乳10.000重量部、乳糖10.000重量部、クエン酸4.500重量部、レシチン0.250重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。当該フレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター18.000重量部、レシチン0.250重量部、香料0.150重量部を添加し、十分に混合し、油性菓子を得た。当該油性菓子は、ざらつきを感じ、好ましくない口中感を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸を含有する油性菓子であって、ショ糖脂肪酸エステルおよびグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種または2種以上の乳化剤がレファイニング前に添加されていることを特徴とする油性菓子。
【請求項2】
上記乳化剤のHLBが7以下であることを特徴とする請求項1に記載の油性菓子。
【請求項3】
上記乳化剤の添加量が0.1〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性菓子。
【請求項4】
有機酸を含有する原料として、果汁パウダー、乾燥果実、酸味料の1つもしくは2種以上を使用することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の油性菓子。