説明

滑りシート

【課題】商品陳列棚の大きさに合った寸法に切断でき、その棚材の上に滑りシートを接着剤を使用せずに密着性を利用して貼り付けるだけでよいので形状を自由に変えることができ、また、材質が異なった商品でも滑る傾斜角度の差が小さいので、一つの傾斜角度で兼用でき、さらに、使用により滑りシートの滑り性が維持できなくなれば、棚表面より不要となった滑りシートのみを手でめくるだけで取り出せ、新たな滑りシートを敷くだけでシート交換ができる等、要求に合ったシートを安価に手配できると共に交換も簡単にでき、廃棄の問題も少ない滑りシートを提供すること。
【解決手段】基材1の一方の面に滑性層2と他方の面に密着層3とをそれぞれ形成された滑りシートにより、接着剤を使用せず貼り付けでき、簡単に剥がすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品陳列棚等において、棚を傾斜させることにより、容易に棚に載せた商品を移動させることが可能な棚材の上に設置できる滑りシートに関する。
【背景技術】
【0002】
商品陳列棚に載せた商品は、商品の一部が売れて商品スペースが生じると、次の商品が棚上を滑って空いた商品スペースに自動的に移動してくる。この棚は、金属板に滑り易い樹脂等を塗布した後、熱風炉、加熱炉、赤外線炉等で焼き付け硬化させた後に乾燥させた滑り性に優れた金属板である。
【0003】
【特許文献1】特開平8−183137
【特許文献2】特開2005−96442
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のようにフッ素樹脂等を金属板に塗布し240℃以上300℃以下で焼付け処理をして棚を製作すると労力と時間を要して高価になるという問題がある。
また、特許文献2のように金属板表面にエンボス加工を施したところにフッ素樹脂の潤滑性塗膜を形成するとさらに高価になるという問題がある。
そのため棚の大きさや形状はある程度規制されることになり、自由な大きさの商品陳列棚を製作することは困難であるし、また、陳列する商品が変わって商品の材質が、例えばガラス瓶からペットボトルやスチール缶に変わると、商品の底面と棚表面との間の静止摩擦係数がそれぞれ異なるので、商品が滑る傾斜角度が異なることになり、同じ傾斜の棚では商品が移動しないという問題があった。
さらに、初期の滑り性は優れるものの、棚の塗膜表面の滑る面と商品の底面とは面接触して滑るため塗膜が磨耗しやすく棚表面の滑り性が長期間維持できず、金属板の棚自身を新たに交換しなければならなくなる。そうすると、交換する新たな棚の費用も高価であり、陳列ケース内の棚交換もめんどうであるし、交換して不要になった棚の廃棄にも問題が生じることがあった。
本発明は、上記の点に鑑み、商品陳列棚の大きさに合った寸法に切断でき、その棚材の上に滑りシートを接着剤を使用せずに密着性を利用して貼り付けるだけでよいので形状を自由に変えることができ、また、材質が異なった商品でも滑る傾斜角度の差が小さいので、一つの傾斜角度で兼用でき、さらに、使用により滑りシートの滑り性が維持できなくなれば、棚表面より不要となった滑りシートのみを手でめくるだけで取り出せ、新たな滑りシートを敷くだけでシート交換ができる等、要求に合ったシートを安価に手配できると共に交換も簡単にでき、廃棄の問題も少ない滑りシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材の一方の面に滑性層と他方の面に密着層とをそれぞれ形成されたことを特徴とする滑りシートにより前記の課題を解決した。さらに、前記滑性層に少なくともシリコーン樹脂を使用することにより滑り性をよくすることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の滑りシートによれば、商品陳列棚の大きさや必要な箇所の形状に滑りシートを切断して、棚材の上に置くだけで商品が移動する滑り面が形成されるので商品陳列棚の大きさを自由にできる。また、材質が異なった商品でも滑り性がよく、また、滑り性に大きな差がないため、商品が滑る傾斜角度も小さく一つの傾斜角度で兼用できる利点がある。 さらに、滑り性が維持できなくなれば廉価で簡単に交換できるし、滑性層に潤滑剤の微粒子を含有させることにより、滑りシートの表面を粗面化して商品の底面との接点を小さくすることによる摩擦係数の低減のほか、微粒子自身が有する潤滑性も付与することができるので、滑り性の異なるシートの製作も簡単にできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の実施形態を説明する。
本発明は、図1に示すように、基材の一方の面に滑性層と他方の面に密着層とをそれぞれ形成された滑りシートからなり、基材は紙、各種加工紙、プラスチック、金属箔、薄板等でよく、好ましくは、厚さは50〜200μmのポリエステルフィルムがよく、50μmより薄すぎると滑りシートとしての強度が低下し、200μmよりも厚すぎるとコスト高となり経済的効果がなくなる。
滑性層を形成する潤滑剤は、公知のワックス類、高級脂肪酸のアミド、燐酸エステル類、エステルまたは塩類、高級アルコール、フッ素系化合物、チッ化ホウ素、二硫化モリブデン、シリコーン樹脂、アルコール変性シリコーンオイル、シリコーンワックス、シリコーン系ハードコート剤等であり、この滑性層は単に潤滑剤を基材の一方の面に塗工した後、乾燥や低温での加熱をするだけで形成されるが、例えば、信越化学工業株式会社の製品名KR400、KP851やSEPA-COATのシリコーン樹脂は塗工後常温での乾燥または約150℃以下で加熱するだけで、容易にまた廉価に高硬度で耐久性の優れた滑性層が形成できる。また、潤滑剤とイソシアネートとを化学反応させて形成してもよいし、潤滑剤をポリイソシアネートによりバインダー樹脂に化学結合させることにより形成してもよいので、潤滑剤は燐酸エステル系界面活性剤やアニオン性界面活性剤も用いられるが、アルキル燐酸エステル系のものが好ましい。また、バインダー樹脂はポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセトアセタール樹脂等が用いられ、特にポリビニルブチラール樹脂、ポリアセトアセタール樹脂が好ましい。潤滑剤とバインダーとを結合させるポリイソシアネートの使用量は、滑性層を構成する樹脂バインダー+潤滑剤の100重量部に対し5〜200重量部の範囲が適当である。 これらの材料をアセトン、トルエン等の適当な溶剤中に溶解または分散させた塗工液をグラビアコーター、ロールコーター、メイヤバー等の慣用の塗工手段により塗工および乾燥して形成するが、必要に応じて更に加熱処理して滑性層を形成することも可能である。滑性層の厚さは5〜200μmであり、5μmより薄いと商品の底面との磨耗により滑り性効果の持続性がなくなり、200μmより厚すぎると磨耗カスが多く発生し滑り性に影響が生じるからである。
また、滑り性をさらに良くするために滑性層に平均粒径0.1〜30μmの微粒子を添加して商品の底面との接触面積を小さくして滑性を増してもよい。微粒子の材質は特に限定されず金属、無機系、有機系の各種粒子を用いることができる。特にシリコーン球状粒子、合成非晶質シリカ、カーボンブラック、アルミナ、酸化チタン、珪酸カルシュウム、珪酸アルミニウムは有力である。特に平均粒径が0.5〜20μmが好ましい。なお、平均粒径が0.1μmより小さいと滑り性を付与する効果が得られず、30μmを超えると塗工安定性が低下する。さらに平均粒径が異なった2種類の微粒子の複合微粒子にすると塗工液における分散性を良くすることができる。微粒子の高分子物質に対する添加比率は0.1〜200重量%の範囲で用いることができる。特に6〜100重量%の範囲で安定した特性を示す。微粒子を含有することにより、滑りシートの表面を粗面化し、商品の底面との接点を小さくすることによる摩擦係数の低減のほか、微粒子自身が有する滑性も付与することができるので、摩擦係数の異なる滑りシートが自由に製作可能である。
基材上への滑性層の付着を確実にするため、あらかじめ基材上にプライマー層を設けておいてもよい。プライマーは基材の材料と滑性層の種類に応じて選択すべきである。例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂等から好適な材料を見出せばよい。
密着層を形成する高分子物質は、発泡性樹脂、シリコーンゴムがよく、シリコーンゴムは過酸化物架橋型のシリコーン重合体や付加重合型のシリコーン重合体であってもよいし、好ましくは、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンや両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンがよい。これらから選ばれたシリコーン塗工液を滑性層を形成する時と同様の慣用の塗工手段により塗工および乾燥して形成するが、必要に応じて加熱処理をして密着層を形成してもよい。密着層の厚さは1.1〜100μmであり、1.1μmより薄いと良好な密着性が発揮できず、100μmを超えると廉価な滑りシートを製作しにくくなるからである。
この様にして製作される滑りシートは、前記物質の組み合わせを換えることで透明性のあるシ−トも製作可能であるので、ガラス製陳列棚にも使用でき、さらに染料や顔料を添加することによって着色された滑りシートも製作可能となる。この着色された滑りシートは商品の区別に使用したり、暖かさや涼しさの雰囲気を表現したい棚等に使用可能である。
この滑りシートの使用方法として、商品陳列棚に2〜5度程度の傾斜を持たせた棚上面にこの滑りシートの密着層の密着性を利用して設置すると、最前列にある商品の一部が取り除かれると、その位置にある後列の商品が、重力により自然に滑り出し、取り除かれた商品の後を補充する。
滑りシートは厚さ0.5mm程度であるため、一般のはさみで自由な形状に切断でき、また、商品の滑りが悪くなったり汚れたりすれば、滑りシートは接着剤で棚材の上に接着されているのではなく、単に密着層の密着性によって棚との間で吸着されているだけであるので、滑りシートの端部を指で持ち上げれば簡単に剥離でき、新しい滑りシートと交換可能である。
また、潤滑剤の種類や表面の粗面化の程度を変えることで滑り性を簡単に変えることもできるので材質の異なる多種類の商品の移動に適用できる。
【実施例】
【0008】
この発明を実施例をあげて説明する。
実施例1
ポリエチレンテレフタレートフィルムの基材の一方の面にシリコーンウレタン樹脂とイソシアネートとを混合した塗工液を塗工して滑性層を形成し、他方の面にポリオルガノシロキサンからなるシリコーンを塗工して密着層を形成した厚さ0.5mm、幅100mm、長さ200mmの滑りシートを作成した。
比較例1として厚さ3mm、幅100mm、長さ200mmのガラス板を準備した。
比較例2として鉄製の薄板をメラミン樹脂でコーティングし加熱処理した厚さ0.5mm、幅100mm、長さ200mmのメラミン板を準備した。
これらのシートおよび各板を新東科学株式会社製の静摩擦係数測定機TYPE:10の上昇板に順次取り付け、そのシート等上にスチール缶、ペットボトル、ガラス瓶の3種類の商品を順次載せて、それぞれ水平状態から上昇板が傾斜し始め、各商品が滑り始めたときの傾斜角度を読みと取った。測定は同じ組み合わせで3回づつ行い、3回の平均値を滑り角度とした。
その結果を表1に示した。
【0009】
(表1) 単位:度

【0010】
上記の試験結果より明らかな通り、実施例1の滑りシートは、商品の種類(材質)が異なっても、滑り角度に大差がなく滑り性が優れていた。
一方、比較例1のガラス板や比較例2のメラミン板は、商品の種類(材質)が異なると滑り角度が大きく異なり、本発明の滑りシートよりも滑り性が劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す。
【符号の説明】
【0012】
1基材
2滑性層
3密着層



































【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に滑性層と他方の面に密着層とをそれぞれ形成されたことを特徴とする滑りシート。
【請求項2】
前記滑性層に少なくともシリコーン樹脂を含む請求項1記載の滑りシート。

































【図1】
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【公開番号】特開2008−12078(P2008−12078A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186190(P2006−186190)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】