説明

滑り制御ブーストブレーキシステム

加圧した流体圧ブレーキ流体を複数の車両ブレーキに適用するブレーキシステムを提供する。システムは加圧ブレーキ流体の源、第一ブレーキ流体回路、および源から第一回路へのブレーキ流体の流れを制御するブースト弁を含む。第一ブレーキ・アクチュエータは、第一回路からのブレーキ流体によって起動され、第二ブレーキ・アクチュエータは、第一回路からのブレーキ流体の適用によって動作する。システムはさらに、第二ブレーキ流体回路および第三ブレーキ流体回路を含む。第三ブレーキ・アクチュエータは、第二回路からのブレーキ流体によって起動される。第四ブレーキ・アクチュエータは、第三回路からのブレーキ流体によって起動される。マスタ・シリンダは1次ピストン、第一2次ピストン、および第二2次ピストンを含む。第一および第二2次ピストンは、加圧流体体を第一回路から適用し、それぞれ第三ブレーキ・アクチュエータを作動させる第二回路、および第四ブレーキ回路を作動させる第三回路内のブレーキ流体に加圧することによって、独立して動作自在に変位することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年1月20日出願の米国特許仮出願第60/645,262号、2004年12月3日出願の米国特許仮出願第60/632,787号、2004年7月29日出願の米国特許仮出願第60/592,221号、および2004年5月6日出願の米国特許仮出願第60/568,748号に対する優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に、車両ブレーキに流体圧ブレーキ制御(hydraulic braking control)を適用するブレーキシステム(braking system)に関する。
【0003】
特に、本発明は電気および流体圧の故障中に流体圧ブレーキを適用するブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
電気流体圧式ブレーキシステム(electric−hydraulic braking system)は通常、遮断弁を通して車両車輪上の車両ブレーキに結合され、手動で動力が供給されるマスタ・シリンダを含む。車両の運転者がブレーキ・ペダルに圧力を加えると、加圧された作動流体がペダル・シミュレータに提供され、従来通りのブレーキシステムで運転者の足に対して加えられる圧力をシミュレートする。圧力変換器が運転者の入力によってペダルに加えられた圧力の印加力を測定し、運転者の所望のブレーキ労力を表す信号を生成する。印加圧力を示す信号は、電子制御ユニットに提供され、これは1つまたは複数のモータ作動のポンプの動作を制御し、加圧されたブレーキ作動流体の流れを車両のブレーキ・アクチュエータに送出する。
【0005】
典型的な流体圧ペダル・シミュレータは、車両のブレーキ・アクチュエータに加圧する実際のブレーキ回路から隔離されている。これらのペダル・シミュレータは、マスタ・シリンダからの加圧された流体圧ブレーキ流体がペダル・シミュレータ内の1つの室にのみ流れるように、ブレーキ回路内で構成される。室から加圧された流体圧ブレーキ流体が放出されるのは、運転者がブレーキ・ペダルを解放した結果であり、これによって加圧されたブレーキ流体をペダル・シミュレータのばねと協働して室から取り出すことができる。その結果、モータ作動のポンプによって流体圧ブレーキが適用されるブレーキ作動中に、運転者は、加圧した流体圧ブレーキ流体を車両のブレーキ・アクチュエータに供給する回路から隔離される。(ピストンの第一室の反対側にある)ペダル・シミュレータの第二室に結合された流体回路を有するシステムがあるが、これはピストンが変位できるように室を大気圧へと通気するためのものである。
【0006】
さらに、電気または流体圧の故障中に、電子流体圧ブレーキシステムは、流体圧の故障または電気の故障が生じた場合の安全装置を含み、したがって手動のプッシュ・スルー動作(manual push through operation)を使用することができる。これは通常、モータ作動のポンプで補助されずに、マスタ・シリンダから車両のブレーキ・アクチュエータへの(バックアップ回路を介した)手動ブレーキを直接実行できるように、1つまたは複数の遮断弁への電源を遮断することを含む。しかし、(Robert Bosch GmbHに譲渡された米国特許第6,733,090号にあるような)システムは通常、マスタ・シリンダからの加圧ブレーキ流体が1つまたは複数の車両ブレーキ・アクチュエータをそれぞれ起動できるようにするために、1つまたは複数の遮断弁に頼る。流体圧ブレーキ流体を1組の車輪(つまり前輪または後輪の組)または2つの回路(つまり第一組の車輪の第一回路および第二組の車輪の第二回路)、両方の組の車輪に適用するために1つの回路を含むブレーキシステムもある。しかし、このようなシステムは、マスタ・シリンダからの流体圧ブレーキ流体を車両のブレーキ・アクチュエータへと流すことができる遮断弁消勢して開放するという仮定に基づく。このようなシステムは、遮断弁が閉位置で動作不能になる場合、または流体体漏れが生じた場合に、手動プッシュ・スルーを有さないことがある。
要約
【0007】
本発明の1つの態様では、加圧した流体圧ブレーキ流体を複数の車両ブレーキに適用するブレーキシステムが提供される。システムは、加圧したブレーキ流体の源、第一ブレーキ流体回路、および源から第一回路へのブレーキ流体の流れを制御するブースト弁を含む。第一ブレーキ・アクチュエータは、第一回路からのブレーキ流体によって起動し、第二ブレーキ・アクチュエータは、第一回路からのブレーキ流体の適用によって動作する。システムは第二ブレーキ流体回路を含む。第三ブレーキ・アクチュエータは、第二回路からのブレーキ流体によって起動する。システムはさらに、第三ブレーキ流体回路を含む。第四ブレーキ・アクチュエータは、第三回路からのブレーキ流体によって起動する。マスタ・シリンダは1次ピストン、第一2次ピストン、および第二2次ピストンを含む。第一および第二2次ピストンは、加圧した流体を第一回路から適用して、それぞれ第三ブレーキ・アクチュエータを作動させる第二回路および第四ブレーキ回路を作動させる第三回路内のブレーキ流体に加圧することによって、独立して動作自在に変位することができる。
【0008】
本発明のさらに別の態様では、ブレーキシステムは、第二回路と流体連絡する第一2次室を有するマスタ・シリンダを含む。第一2次ピストンは第一2次室内に配置される。第二2次室は前記第三回路と流体連絡する。第二2次ピストンは第二2次室に配置される。第一2次ピストンおよび第二2次ピストンは、ブレーキの故障中に第三ブレーキ・アクチュエータおよび第四ブレーキ・アクチュエータを起動するために、第一および第二2次室それぞれの中でブレーキ流体を加圧する。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、ブレーキシステムは第一室、第二室、ペダル・シミュレータ・ピストン、およびペダル・シミュレータばねを含むペダル・シミュレータを含む。ペダル・シミュレータ・ピストンは第一室と第二室とを分離する。ペダル・シミュレータばねは、ブレーキを適用する動作中に協働状態でブレーキ・ペダルに抵抗力を提供するために、第二室内に配置される。第一室は、ブレーキを適用する動作中に1次室からブレーキ流体を受け取るために、マスタ・シリンダの1次室と流体連絡する。第二室は、ブレーキを解放する動作中に第一回路からのブレーキ流体の戻り通路を提供するために、第一回路と流体連絡する。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、ブレーキシステムは、自在弁体、シミュレータ・スリーブ、およびシミュレータ・ピストンを有するペダル・シミュレータを含む。シミュレータ・スリーブは、様々なサイズの直径のシミュレータ・ピストンを受け取るように構成可能である。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、ブレーキシステムは、第一、第二、第三、第四組の弁それぞれ、および加圧ブレーキ流体の源と流体連絡し、その間に配置された中圧アキュムレータを含む。中圧アキュムレータは、加圧ブレーキ流体の源からの中圧ブレーキ流体を保存する第一圧力室、および加圧ブレーキ流体の源からの高圧ブレーキ流体を保存する第二圧力室を含む。第一圧力室内の中圧ブレーキ流体は、低流量ブレーキ要求中に第一回路へと選択的に適用され、第二圧力室内の高圧ブレーキ流体は、高流量ブレーキ要求中に第一回路へと選択的に適用される。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、ブレーキシステムは、協働状態でブースト弁から受け取ったブレーキ流体を第一ブレーキ・アクチュエータに供給し、協働状態で第一ブレーキ・アクチュエータから加圧ブレーキ流体を解放するために第一回路と流体連絡する第一組の弁を含む。第二組の弁は、協働状態でブースト弁から受け取った加圧ブレーキ流体を第二ブレーキ・アクチュエータに供給し、協働状態で第二ブレーキ・アクチュエータから加圧ブレーキ流体を解放するために第一回路と流体連絡する。第三組の弁は、協働状態でブースト弁から受け取った加圧ブレーキ流体を供給し、第三ブレーキ・アクチュエータを起動するために第二回路に作用し、協働状態で第三ブレーキ・アクチュエータから加圧ブレーキ流体を解放するために第一回路と流体連絡する。第四組の弁は、協働状態でブースト弁から受け取った加圧ブレーキ流体を供給し、第四ブレーキ・アクチュエータを起動するために第三回路に作用し、協働状態で第四ブレーキ・アクチュエータから加圧ブレーキ流体を解放するために第一回路と流体連絡する。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、ブレーキシステムは、1次ピストンの周囲に配置された誘導コイルを有するマスタ・シリンダを含む。誘導コイルは、前記マスタ・シリンダの1次ハウジング内で1次ピストンの位置を誘導感知するために、1次ピストンに高周波電流を誘導する。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、ブレーキシステムは、第二中間室と第三中間室と流体連絡し、その間に配置されたマスタ・シリンダ・ブリード弁を含む。ブリード弁は、ブレーキを適用していない状態の間、閉じ込められたガスをマスタ・シリンダからパージするために、マスタ・シリンダの第二中間室および第三中間室を通るブレーキ流体の指向性流れを制御する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1には、ブレーキシステム内で能動的流体圧ブーストを適用する、本発明による車両ブレーキ・システムの第一の実施形態が、全体的に20で示されている。ブレーキ・システム20は、4つの車輪および車輪ごとにブレーキを有する自動車のような陸上車両で適切に使用することができる。さらに、ブレーキ・システム20には、車両の操作者に対する通常の応答およびペダルの感触をシミュレートしながら、車両を効果的にブレーキするためにアンチロック・ブレーキおよび他のスリップ抑制形体のような他のブレーキ機能を設けることができる。
【0016】
ブレーキ・システム20は、車両をブレーキするために後車軸(図示せず)上の第一車両ブレーキ24aおよび第二車両ブレーキ24bを起動し、前車軸(図示せず)上の第三車両ブレーキ24cおよび第四車両ブレーキ24dを起動するために、協働状態でブレーキ・モジュール23とともに作用するリザーバ45と流体連絡するマスタ・シリンダ22を含む。各車両ブレーキ24a〜dは、加圧したブレーキ流体を適用することにより動作する従来通りのブレーキ・アクチュエータを含む。ブレーキ・アクチュエータは、関連する車輪のブレーキを実行するために車輪を回転する摩擦要素(ブレーキ・ディスクなど)と係合するために車両に装着されたブレーキ・キャリパなどでよい。
【0017】
図2でも見られるように、マスタ・シリンダ22はマスタ・シリンダ・ハウジング103を含む。マスタ・シリンダ・ハウジング103は、以下では個々のハウジング部分として説明されているが、マスタ・シリンダ・ハウジング103は単体のハウジングとして形成するか、あるいは別個に形成され、相互に結合された2つ以上のハウジングでもよい。マスタ・シリンダ22は、マスタ・シリンダ・ハウジング105の第一端107に形成された1次ハウジング106を含む。第一端107は、第一直径の第一開放端円筒内腔(open ended first cylindrical bore)109を含む。第一円筒内腔109は、1次ハウジング106内で第一円筒内腔109より大きい直径を有する第二円筒内腔111へと階段状になる。第一円筒内腔109および第二円筒内腔111は、相互に軸方向に位置合わせされる。1次ハウジング106は、流体回路72(以下で検討)に結合された第一ポートを含む。
【0018】
1次ハウジング106は、第三円筒内腔113を含む第一中間ハウジング108へと一体形成される。1次ハウジング106の第二円筒内腔111は、第二円筒内腔111より小さいが第一円筒内腔109より大きい直径を有する第三円筒内腔113へと階段状になる。第二円筒内腔111は、第三円筒内腔113と軸方向に位置合わせされる。第三中間ハウジングは、リザーバ45と流体連絡する流体回路99に結合した第二ポートを含む。
【0019】
第一中間ハウジング108は、第二中間ハウジング110および第三中間ハウジング112に一体形成される。第二中間ハウジング110は第四円筒内腔115を含み、第三中間ハウジング112は第五円筒内腔117を含む。第三中間ハウジング108の第三円筒内腔113は、第四円筒内腔115と第五円筒内腔117の両方へと階段状になる。第四円筒内腔115および第五円筒内腔117は、相互に平行であり、等しい直径を有し、これは第三円筒内腔113および両方の円筒内腔115および117より非常に小さい。
【0020】
第二中間ハウジング110は第一2次ハウジング114に一体形成される。第一2次ハウジング114は第六円筒内腔119を含む。第四円筒内腔115は、第四円筒内腔115より大きい直径である第六円筒内腔119へと階段状になる。第六円筒内腔119は、第四円筒内腔115から軸方向にずれる。
【0021】
同様に、第三中間ハウジング112は第二2次ハウジング116に一体形成される。第二2次円筒内腔116は第七円筒内腔121を含む。第五円筒内腔117は、第五円筒内腔117より大きい直径である第七円筒内腔121へと階段状になる。第七円筒内腔121は、第五円筒内腔117から軸方向にずれる。
【0022】
第一2次ハウジング114は、流体回路94に結合された第四ポート、流体回路123に結合された第五および第六ポート、および流体回路67に結合された第七ポートを含み、これについては以下で検討する。同様に、第二2次ハウジング116は、流体回路96に結合された第八ポート、流体回路125に結合された第九および第十ポート、および流体回路67に結合された第十一ポートを含み、これについては以下で検討する。
【0023】
ブレーキ・ペダルは第一端107で受け取られ、マスタ・シリンダ22の1次ピストン26の第一端に結合される。行程センサ(travel sensor)40は、ブレーキ・ペダル38の行程の長さを示す信号を生成するために、1次ハウジング106に結合される。
【0024】
1次ピストン26は、第一円筒内腔109の内径よりわずかに小さい外径を有する第一円筒部分27を含む。1次ピストン26の第一円筒部分27は、第一円筒内腔109内で滑動可能である。1次ハウジング106の第一円筒部分27と第一円筒内腔109の内面との間をブレーキ流体が通過するのを防止するために、第一円筒内腔109の内面にシール35が埋め込まれる。
【0025】
第一円筒部分27は第二円筒部分29へと階段状になる。第二円筒部分29の外径は、第一円筒部分27より非常に大きい。第二円筒部分29は、第二円筒内腔111内で滑動可能であり、第二円筒部分29と第二円筒内腔111の内面との間をブレーキ流体が流れるのを防止するために、外径の周囲にシール37を含む。
【0026】
1次ピストン26の第二円筒部分29は、第三円筒部分31へと階段状に小さくなる。第三円筒部分31の外径は、第二円筒部分29の外径より小さい。第三円筒部分31は、第二円筒内腔111および第三円筒内腔113の両方の内部で滑動可能である。第三円筒部分31は、第三円筒部分29と第三円筒内腔113の内面との間をブレーキ流体が流れるのを防止するために、外径の周囲にシール39を含む。シール35とシール39の間にブレーキ流体の環状1次室70が形成される。
【0027】
第二円筒部分29および第三円筒部分31は、1次ピストンばね139を受け取る一葉の内腔33を含む。ばね117が、1次ピストン26の接触面(abutment surface)127と接触部材(abutment member)133の接触面129との間の一様な内腔33内に予圧状態で配置される。接触部材133は、接触面129上に1次ピストンばね139を保持するために階段状部分135を含んでよい。
【0028】
1次ピストン26の第二端面118は、第一中間ピストン28の第一端120と位置合わせされる。第一中間ピストン28は、第一中間ハウジング108および第二中間ハウジング110の両方の内部に配置される。第一中間ピストン28は、第一中間ピストン28と第四円筒内腔115の内面との間をブレーキ流体が流れるのを防止するために、外径の周囲に配置されたシール41を含む。同様に、1次ピストン26の第二端面118は、第二中間ピストン30の第一端122と位置合わせされる。第二中間ピストン30は、第一中間ハウジング108および第三中間ハウジング112の両方の内部に配置される。第二中間ピストン30は、第二中間ピストン30と第五円筒内腔117の内面の間をブレーキ流体が流れるのを防止するために、外径の周囲に配置されたシール43を含む。ブレーキ流体の第一中間室59は、シール39およびシール41および43それぞれによって形成される。
【0029】
第一2次ピストン32が、第一2次ハウジング114内に滑動自在に配置される。第一2次ピストン32の外径は第二中間ピストン28の外径より大きい。第一中間ピストン28の第二端126と第二2次ピストン32の端部分126とは、相互に接触するために、軸方向にずれるが、滑動自在に位置合わせされる。第一2次ピストン28は、第一2次ピストン32と第六円筒内腔119の内面との間をブレーキ流体が流れるのを防止するために、外径の周囲に配置された1対のシール61および63を含む。ブレーキ流体60の第二中間室が、シール41と61の間に形成される。ブレーキ流体64の第一2次室が、シール63および第一2次ハウジング114によって形成される。第一2次ピストン32を偏倚するために、第一2次ハウジング114内に予圧状態でばね47が配置される。
【0030】
第二2次ピストン34が、第二2次ハウジング116内に滑動自在に配置される。第二2次ピストン34の外径は第三中間ピストン30の外径より大きい。第二中間ピストン30の第二端128および第二2次ピストン34の端部分130は、相互に接触するために、軸方向にずれるが、滑動自在に位置合わせされる。第二2次ピストン34は、第二2次ピストン34と第七円筒内腔121の内面との間をブレーキ流体が流れるのを防止するために、外径の周囲に配置された1対のシール65および69を含む。ブレーキ流体62の第三中間室が、シール43と65の間に形成される。ブレーキ流体66の第二2次室が、シール65および第一2次ハウジング116によって形成される。第二2次ピストン34を偏倚するために、第二2次ハウジング116内に予圧状態でばね77が配置される。
【0031】
1次回路36は、電動モータ42によって駆動されたポンプ46にリザーバ45からの流体圧ブレーキ流体を提供する。好ましい実施形態では、モータ42は、以下で検討する自身のトルク出力を本質的に感知する線束切り換えブラシなしモータ(flux switching brushless motor)である。高圧アキュムレータ(HPA)44は、流体回路36を介してポンプ46と流体連絡する。図示のHPA44は、滑動シール、およびばねとして作用する事前に装填された窒素を有するピストン・スタイルである。金属、ゴム、プラスチック、または他のエラストマで作成した隔膜がある隔膜タイプのHPAも使用することができる。圧縮可能な体積を有する他のタイプの適切なガスを使用してよい。HPA44に含まれた事前装填窒素は、HPA44が流体接続するようにピストンを偏倚する。言うまでもなく、任意の適切なアキュムレータの設計を使用することができ、HPA44は図示されたピストン・タイプの設計である必要はない。例えば、HPA44は、ブラダまたは隔膜で駆動されるアキュムレータでよい。アキュムレータは、ブレーキ流体が全て放出された場合の実際のガス体積に従ってサイズ決定される。任意のアキュムレータについて使用可能な圧力範囲のブレーキ流体の使用可能な体積は、作業体積として知られ、これをアキュムレータから放出するために使用可能な圧縮性ガスの量による影響を受ける。作業体積(working volume)は、圧縮性ガスの圧力および温度の変動とともに変動する。アキュムレータのサイズを決定する場合は、充填および放出の率も考慮する必要がある。
【0032】
ポンプ46からの加圧ブレーキ流体は、電気流体圧式パイロットで作動するブースト弁48と協働でHPA44に供給される。ブースト弁48は、加圧したブレーキ流体でHPA44に加圧するために、加圧ブレーキ流体がポンプ46の放出部からHPA44へと流れることができるように流体回路36内の圧力を維持することができる可変流量弁である。ブースト弁48はさらに、車両のブレーキ24a〜dを起動するために、加圧ブレーキ流体が第一回路49を介して流れることを可能にする。
【0033】
第一組の遮断弁55および56は、ブースト弁48から受け取ったブレーキ流体を第一ブレーキ・アクチュエータ24aに協働状態で供給し、第一ブレーキ・アクチュエータ24bから加圧ブレーキ流体を協働状態で解放するために、第一回路49と流体連絡する双方向遮断弁である。第二組の遮断弁57および58は、ブースト弁48から受け取った加圧ブレーキ流体を第二ブレーキ・アクチュエータ24bに協働状態で供給し、第二ブレーキ・アクチュエータ24bから加圧ブレーキ流体を協働状態で解放するために、第一回路と流体連絡する双方向遮断弁である。
【0034】
第三組の遮断弁51および52は、ブースト弁48から受け取った加圧ブレーキ流体を協働状態で供給し、第三ブレーキ・アクチュエータ24cを起動し、第三ブレーキ・アクチュエータ24cから加圧ブレーキ流体を協働状態で解放するために、第一回路49および流体回路94と流体連絡する。
【0035】
第四組の遮断弁52および54は、前記第二ブースト弁48から受け取った加圧ブレーキ流体を協働状態で供給し、第四ブレーキ・アクチュエータを起動し、前記第四ブレーキ・アクチュエータ24bから加圧ブレーキ流体を協働状態で解放するために、第一回路49および流体回路96と流体連絡する。
【0036】
ペダル・シミュレータ74は、運転者がブレーキ・ペダル38で感じるような従来通りのブースト・システムの特徴をシミュレートする。ペダル・シミュレータは、ブレーキを適用する動作中に1次室70からブレーキ流体を受け取るためにマスタ・シリンダ22の1次室70と流体連絡する第一室78を含む。ペダル・シミュレータのピストン80およびペダル・シミュレータのばね82が、第一室78と第二室84の間に配置される。第二室84は、ブレーキを解放する動作中に第一回路49からのブレーキ流体の戻り通路を提供するために、第一回路49と流体連絡する。
【0037】
減衰オリフィス(dampening orifice)76が、1次室70とペダル・シミュレータ74の間に配置される。減衰オリフィス76は、断面が狭くなった通路を含み、これは減衰オリフィス76を通って流れることができる流体圧ブレーキ流体の量を制限する。逆止め弁98が、減衰オリフィス76と平行に1次室70とペダル・シミュレータ74との間に結合される。
【0038】
バイパス弁88は、ばねを装填した流体圧制御弁で、起動すると加圧された流体圧ブレーキ流体を流体回路86から流体回路90へと流すことができる環状のフローアラウンド室(flow−around chamber)を含む。バイパス弁は、流体回路86を介したペダル・シミュレータと、流体回路90を介したリザーバとの間に接続される。ばねを装填したバイパス弁のピストン92は、流体で弁を開閉し、ブレーキ流体の流れを可能にする。
【0039】
ブレーキ・モジュール22は、流体回路72および第一回路49を介してマスタ・シリンダ22の1次室70と流体連絡するフェールセーフ弁102を含む。フェールセーフ弁102は、流体回路72と49間の圧力差に基づいて開閉するばね装填ピストンおよびボールを含む。
【0040】
シャトル弁105が、流体回路72を介して1次室70と、流体回路36を通してブースト弁と流体連絡する。シャトル弁105は、流体回路72と36間の圧力差に基づいて、シャトル弁を開位置と閉位置の間でポートする(porting)シャトル・ボールを含む。シャトル弁はさらに、前記ブレーキシステム内に閉じ込められたガスをパージするために、シャトル弁に手動で偏倚させるばね起動のピストンを含む。
【0041】
ブレーキシステム20の典型的なブレーキ状態において、ブレーキ・ペダル38は車両の操作者によって押下される。ブレーキ・ペダル38は、ブレーキ・ペダル38の行程の長さを示す信号を生成し、信号を制御モジュール(図示せず)に提供するために、行程センサ40に結合される。制御モジュールは様々な信号を受信して、信号を処理し、受信した信号に応答してブレーキ・システム20の様々な構成要素の動作を制御する。好ましくは制御モジュールは、先進のブレーキ制御方式(例えばアンチロックブレーキ(AB)、トラクション制御(TC)、および車両安定性制御(VSC))の間に調整されたブレーキを提供するために、動力伝達系列制御モジュール(図示せず)および車両の他の追加のブレーキ制御装置と連絡する。制御モジュールは、HPA44内の流体の蓄えを維持するために必要な流れと相関する信号を電動モータ42に提供する。1次回路36は、電動モータ42によって駆動されたポンプ46に、リザーバ45からの流体圧ブレーキ流体を提供する。
【0042】
ポンプ46からの加圧ブレーキ流体は、電気流体圧式パイロットで作動するブースト弁48と協働でHPA44に供給される。ポンプの最大出力は、HPA44の枯渇を防止するのに十分であり、必要な場合に少なくとも圧力を固定するように供給することができる。ブースト弁48は、制御モジュールによって電気的に位置決めされる制御弁を含む。ブースト弁48の制御圧力が、制御モジュールから受信した付勢電気信号に比例するように、ブースト弁48を制御することが望ましい。ブースト弁48は、所望の制御圧力を達成するために必要な流れを可能にするように、自身を位置決めする。これは、完全に開いたポートまたは完全に閉じたポートとは逆に、流体圧ブレーキ流体の可変流を可能にする。
【0043】
加圧ブレーキ流体が流体接続部を通してHPA44に流入すると、HPA44のピストンが移動して、事前に充填した窒素ガスをさらに圧縮する。この状態で、HPA44は、圧縮された窒素ガスの影響でピストンにより加圧されたブレーキ流体の蓄えを含み、これはポンプ46が動作しているか、していないかに関わらず、車両ブレーキ24a、b、cおよびdの起動を補助するために使用することができる。
【0044】
ブレーキが必要な場合は、ブースト弁48に付勢し、HPA44およびポンプ46によって提供された加圧ブレーキ流体が第一回路49を介して車両ブレーキ24a、b、cおよびdを起動できるようにする。遮断弁55および56は、消勢位置でポートされ、ブレーキ起動のために加圧ブレーキ流体を車両の後部ブレーキ24aおよび24bへと配向できるようにする。遮断弁51および53は、消勢位置でポートされ、加圧ブレーキ流体が第二中間室60および第三中間室62それぞれに流れることができるようにする。第二および第三中間室60および62に入る加圧された流体圧ブレーキ流体は、第一2次ピストン32および第二2次ピストン34それぞれに力を加える。第一および第二2次ピストン32および34に加えられた力は、第一2次室64および第二2次室66内のブレーキ流体に加圧する。第一2次室64内で加圧された流体圧ブレーキ流体は、第二回路67を介して車両のブレーキ24cを起動するために車両のブレーキ24cと流体連絡する。同様に、第二2次室26内で加圧された流体圧ブレーキ流体は、第三回路68を介して車両のブレーキ24dを起動するために車両のブレーキ24dと流体連絡する。
【0045】
ブースト動作中に運転者にペダルのフィードバックを提供するために、1次ピストン26は、押下されたブレーキ・ペダル38に応答して、流体圧ブレーキ流体を1次室70から出し、流体回路72を介してペダル・シミュレータ74へと追いやる。
【0046】
1次室70とペダル・シミュレータ74の間に配置された減衰オリフィス76が、減衰オリフィス76を通って流れることができる流体圧ブレーキ流体の量を制限する。流体圧ブレーキ流体が減衰オリフィス76を通って移動すると、ブレーキ・ペダル38を押下している操作者は、減衰オリフィス76内で制限された流体圧ブレーキ流体の流れのせいで抵抗を感じる。流体圧ブレーキ流体の流れがこのように制限されるので、1次室70内の圧力はペダル・シミュレータ74内より高くなる。ペダル・シミュレータ74によって、追加の抵抗がさらに提供される。流体圧ブレーキ流体が流体回路72からペダル・シミュレータの第一室78へと押し込まれると、加圧された流体圧ブレーキ流体がシミュレータのピストン80に力を加え、これがシミュレータのばね82に力を加え、これを圧縮する。減衰オリフィス76と協働するシミュレータのばね82によって加えられた抵抗力は、運転者がブレーキ・ペダル38で感じるような従来通りのブースト・システムの特徴をシミュレートする。
【0047】
加圧された流体圧ブレーキ流体がペダル・シミュレータの第一室78を充填し、これを膨張させると、ペダル・シミュレータの第二室84に保存されている流体圧ブレーキ流体が、流体回路86を通して押し出される。バイパス弁88は、起動されると、加圧された流体圧ブレーキ流体を流体回路86から流体回路90へと流れることができるようにする。流体回路90はリザーバ45に流体接続され、これは流体圧ブレーキ流体を保存するために大気圧にて通気される。ばねを装填したバイパス弁のピストン92は流体回路36に流体接続される。モータ42またはHPA44によって流体回路36に加えられた圧力が、バイパス弁のピストン92に力を加える。所定の量の圧力を流体回路36からバイパス弁のピストン92に加えると、環状のフローアラウンド室は、加圧された流体圧ブレーキ流体がリザーバ45へと流れることができるために、流体圧ブレーキ流体を流体回路36から流体回路90へとポートする。流体回路36内の余分な圧力は、流体が回路86および90を通ってリザーバ45へとバイパスするまで、ピストン92をさらに動作させる。
【0048】
運転者がブレーキ・ペダル38を解放すると、制御モジュールが行程センサ40から信号を受信し、車両のブレーキ24a、b、cおよびdを停止するための運転者の動作を識別する。制御モジュールは、信号を提供してブースト弁48を消勢する。消勢位置にあると、ポンプ46およびHPA44からの加圧された流体圧ブレーキ流体の流れは車両ブレーキ24a、b、cおよびdに制限される。さらに、消勢位置にある間、ブースト弁48は、車両ブレーキ24a、24b、cおよびdを起動する流体回路内の加圧された流体圧ブレーキ流体を除去するようにポートされる。消勢時、ブースト弁48は流体回路49を流体回路86へポートし、これによって流体回路49、94および96内の加圧された流体圧ブレーキ流体をペダル・シミュレータの第二室84へ、およびバイパス弁88を通って解放することができる(ブレーキ内で変位する体積は、恐らくペダル・シミュレータ内で変位する体積と等しくない)。
【0049】
消勢位置へのブースト弁48のポートに応答して、マスタ・シリンダ22の第二中間室60および第三中間室62内の圧力が緩和する。第二および第三中間室60および62内の圧力緩和に応答して、第一2次室64および第二2次室66内の個々の2次ピストンばねが、第一2次ピストン32および第二2次ピストン34に力を加える。第一および第二2次ピストン32および34は、個々の2次ピストンばねの抵抗力に応答して変位し、その結果、第二中間室60および第三中間室62内の流体圧ブレーキ流体が個々の各室から押し出される。第二および第三中間室60および62内の流体圧ブレーキ流体は、流体回路94および流体回路96それぞれへと配向される。流体回路94および96の流体圧ブレーキ流体は、遮断弁52および54それぞれを通して、およびその後は流体回路134へとポートされ、これはペダル・シミュレータ74の第二室84を介して回路86と流体連絡する。
【0050】
ペダル・シミュレータの第二室84に入る流体圧ブレーキ流体の流れはペダル・シミュレータばね82と協働して、ペダル・シミュレータ室20内に反対方向の力の圧力を加え、ペダル・シミュレータのピストン80に対して作用する。ペダル・シミュレータ第一室78内の流体圧ブレーキ流体は、流体回路72を介してマスタ・シリンダ22の1次室70へと押しやられる。1次ピストンばね139は、ブレーキ・ペダル38に力が加わっていない場合、1次室内のブレーキ流体の戻りと協働して、1次ピストン26をブレーキを加えない位置へと協働して戻す。
【0051】
その結果、通常のブーストブレーキ操作中にブレーキ・ペダル38に力を加えるか、そこにかかる圧力を除去する場合、ペダル圧力が運転者から決して遮断されない。1次室15内の流体圧ブレーキ流体がブレーキ・ペダル38によって加圧され、ペダル・シミュレータ第一室78に入ると、ペダル・シミュレータバネ82は、減衰オリフィス76と協働して、抵抗力を維持する。ブレーキ・ペダル38が解放されると、個々の車両ブレーキを起動するために使用される個々の各回路内で加圧された流体圧ブレーキ流体が、ペダル・シミュレータ第二室84に戻り、ブレーキ・ペダル38が解放されると、それに(ペダル・シミュレータばね82と協働して)抵抗力が加えられる。その結果、通常のブレーキ状態では、ブレーキ・ペダル38に加えられる個々の流体圧ブレーキ回路からのペダル圧力が維持される。
【0052】
例えば、運転者が現在のブレーキ位置からブレーキ・ペダル38を解放すると、ブレーキ・ペダル38に結合された1次ピストン26は、1次室70内の圧力を緩和させるように変位し、これはペダル・シミュレータ第一室78内の圧力を緩和させる。ペダル・シミュレータ第一室78への圧力の解放に応答して、ペダル・シミュレータばね82はシミュレータ・ピストン80に反対方向の力を加え、流体圧ブレーキ流体をペダル・シミュレータ第一室78から流体回路72を介して1次室70へと押しやる。逆止め弁98が減衰オリフィス76に並列して結合され、これによって流体圧ブレーキ流体は、減衰オリフィス76で可能な速度より速く1次室70へと流れることができる。逆止め弁98は、流体圧ブレーキ流体をペダル・シミュレータ74から1次室70へと流れさせるためにのみポートされる。ブレーキ・システム20の利点は、ブースト動作中に動力が失われた場合に、ブースト弁48によって適用された流体圧ブレーキ流体が、バイパス弁88を通してリザーバ45へと配向されるのではなく、ペダル・シミュレータ74を介して1次室70へと戻るので、ペダルの落下が回避されることである。
【0053】
先に検討したように、線束切り換えブラシなしモータ42を使用して、ポンプ46を駆動することが好ましい。従来の電気流体圧式ブレーキシステムでは、通常、個々の流体回路内の圧力を測定するために、1つまたは複数の圧力センサがポンプの下流に含まれる。感知された圧力は、制御モジュールによって監視され、個々の回路内の流体圧ブレーキ流体の圧力を維持するようにポンプの動作を制御するために、モータにフィードバックを提供する。しかし、線束切り換えブラシなしモータ42を統合することにより、ブレーキ・モジュール23内の圧力センサが削除される。モータ42は、電流とトルクとの相関に基づいてその出力トルクを自己監視し、電流と圧力との相関に基づいて制御モジュールによって指令された通りに流体回路36内の個々の圧力を維持する。制御モジュールは行程センサ40を監視し、車両全体に配置されて信号入力を制御モジュールに供給し、システムの要求に応じてHPA44を十分に充填状態に維持するために必要なポンプの流れを決定するのを補助する他のセンサと協働して、運転者によるブレーキ要求入力を測定する。制御モジュールが受信する他のセンサ入力は、車両の各車輪の車輪速度、車両の減速、操舵角度、車両の首振り率、車速、車両の横揺れ率、およびレーダ、赤外線、超音波または同様の振動回避システム、自動速度制御システム(AICC−Autonomous Intelligent Cruise Control Systemsを含む)からの信号などを含む。
【0054】
電気式ブレーキの故障時に、ブレーキ・システム20は手動ブレーキを提供する。電気的故障中に、モータ42は動作を停止し、それによってポンプ46から加圧された流体圧ブレーキ流体を生成しない。さらにブースト弁48は、付勢されると消勢位置に戻る。手動ブレーキを提供するには、運転者がブレーキ・ペダル38に大きい力を加える。1次室70内の流体圧ブレーキ流体が加圧され、流体回路72を通して配向される。以降で詳細に検討するブリード弁105によって、流体回路36へと流れることができる。所定の第一閾値圧力が流体圧によりブースト弁48に加えられると、ブースト弁48は流体圧で起動し、適用位置になる。ブースト弁48は、車両ブレーキ24a、b、cおよびdを起動するために、上記で検討したように加圧された流体圧ブレーキ流体が流体回路49を通って流れるようにポートされる。また、HPA44内に加圧された作動流体があれば、それもブレーキの起動に使用することができる。
【0055】
ブースト弁48の電気的および流体圧の故障時、流体圧ブレーキ流体を車両ブレーキ24a、b、cおよびdに供給する代替手段として、フェールセーフ弁102を設ける。この状態で、ブースト弁48は消勢位置に戻り、手動で加圧した流体圧ブレーキ流体をHPA44から車両ブレーキ24a、b、cおよびdに供給するために、適用位置へと開放することができない。フェールセーフ弁は、流体回路72と流体回路49の間に配置される。流体回路72の加圧された流体圧ブレーキ流体が所定の第二閾値圧力に到達すると、フェールセーフ弁102が開き、これによって上記で検討したように回路72の加圧された流体圧ブレーキ流体が流体回路49へと流れ、車両ブレーキ24a、b、cおよびdを起動することができる。
【0056】
流体回路(例えば流体回路49)内で漏れが生じて、ブーストの補助動作が動作不可能になるなど、流体圧の故障が生じた場合は、手動のプッシュ・スルー動作を使用して、車両の前部ブレーキ24cおよび24dをブレーキすることができる。ブレーキ・モジュール23のブースト補助回路(例えば回路49)内で流体圧ブレーキ流体が有意に漏れると、通常のブースト状態(フェールセーフ弁102を使用する手動制御を含む)にて流体圧ブレーキ流体が不適切に加圧されることがある。このような場合、車両の後部ブレーキ24aおよび24bが動作不可能になる。このような状態で車両を停止するためにバックアップのフェールセーフ状態を提供するために、車両の運転者は、車両の前部ブレーキ24aおよび24bを起動するためにマスタ・シリンダ22の個々の各ピストンを手動で押す(プッシュ・スルー)ことができる。車両の前部ブレーキ24cおよび24dは、それぞれ別個の回路67および68で動作するので、車両ブレーキの1つが、他のブレーキの動作不可能時に動作可能であり続ける。従来通りのブレーキシステムでは、ブレーキ・ペダルに加えられる個々の力について、車両ブレーキに加えられる圧力が、ブレーキ・ペダルに加えられる力に比例する。従来通りのシステムでブレーキ回路が動作不可能になると、喪失回路を補償するために、車両ブレーキにかかる増分量の圧力を生成するために、ブレーキ・ペダルにかかる増分量の力が必要である。本発明では、ブレーキ回路の1つが失われると、同じブレーキ力(つまり4つの車両ブレーキ・アクチュエータのブレーキに使用される)が、動作可能なブレーキ・アクチュエータ上でさらに大きい力を生成する。例えば、回路49内で後部ブレーキ・アクチュエータ24aおよび24bが失われることになる漏れが生じると、車両ブレーキ24a〜dのブレーキに使用するブレーキ・ペダルに加えられる同じブレーキ力が、車両ブレーキ24aおよび24bにかかるさらに大きい力を生成する。その結果、マスタ・シリンダ22がブレーキ回路の喪失を補償し、したがってブレーキ・ペダルに加えられる同じブレーキ力が、動作可能な前部ブレーキ・アクチュエータにかかるさらに大きい圧力を生成する。
【0057】
流体圧ブレーキシステム中に漏れが存在するか否かの検出は、通常、リザーバ45内のブレーキ流体のレベルによって決定される。低レベルのブレーキ流体状態が存在するかを判断するために、リザーバ45に適応する流体レベル・スイッチ104を使用する。ブレーキ流体が低いと流体レベル・スイッチ104が表示すると、ブレーキシステムに保守が必要かチェックしなければならないという警告が車両の操作者に提供される。しかし、操作者が個々のブレーキ起動について通常のブレーキ・ペダルのフィードバックを感じると、操作者は警告インジケータを無視し、存在する状態の過酷さを認識しないことがある。
【0058】
従来通りのブレーキシステムでは、ブレーキ・ペダル38に適用される直接の圧力が、マスタ・シリンダ内の1つまたは複数のピストンに力を加え、これは流体圧ブレーキ流体をブレーキ回路に通して、複数の車両ブレーキへと押しやる。ブレーキ回路内の流体圧ブレーキ流体の抵抗力は、従来のブレーキシステム内では直接的なペダルのフィードバックを提供する。従来通りのブレーキシステム内で漏れが存在する状態では、保守を要求する警告灯に加えて、操作者がブレーキ・ペダルから一般的でないフィードバック抵抗(例えばスポンジ状のブレーキ)を感じ、それによってブレーキシステムが保守を必要としていることに操作者が気づく。しかし、本発明のブレーキシステムでは、ペダル・シミュレータが従来通りのブレーキシステムと同じブレーキ・ペダルからの抵抗フィードバックを適用しないことがある。本発明でブレーキ・ペダル38に対して適用される抵抗力は、シミュレータ・ピストン80に対して流体圧ブレーキ流体が加圧するマスタ・シリンダ22内の1次ピストン26の結果であり、これはシミュレータばね82に力を加え、これを圧縮する。ペダル・シミュレータ74によって適用されるような圧力フィードバックは、従来通りのブレーキシステムの直接的な圧力フィードバックと比較して、他の圧力センサと協働して行程センサが感知するような個々のペダル変位に予想されるはずの圧力に基づく。その結果、ペダル・シミュレータは、従来通りのブレーキシステムと同じ抵抗ブレーキ力フィードバックを提供しないことがある。運転者は警告灯を認識するかもしれないが、ブレーキ・ペダルの抵抗力が操作者にとって正常と感じされると、操作者は即座の保守が必要ないと見なすことがある。
【0059】
即座の注意が必要なブレーキ故障が生じていることを判断する上で操作者をよりよく補助するために、2次警告が操作者に提供される。ブレーキシステムに追加のセンサを追加し、漏れを検出することができるが、追加のセンサは費用がかかり、本発明にて実現するには実際的でないことがある。例えば、車両の前部ブレーキの流体回路両方の間に、圧力差スイッチを配置することができる。2つのブレーキ回路間の大きい圧力差は、ブレーキ回路の1つで漏れが発生していることを示す。しかし、圧力差スイッチは個々の比例弁(または遮断弁)と個々の車両ブレーキの間に配置する必要があるので、圧力差スイッチは、ブレーキシステムがアンチロックブレーキを適用している場合に生じる急速な圧力差を経験する。このような圧力差の結果、偽の警告が生じてしまう。
【0060】
システムに追加のセンサを追加せずに、システム内に流体圧ブレーキ流体の漏れが存在するか判断するために、ブレーキ状態にてブレーキシステムに提供される所定量の流量に基づいて判断することができる。好ましい実施形態では、線束切り換えブラシなしモータを使用して、ポンプを駆動する。モータはその速度を自己監視する。モータの動作速度に基づき、ポンプによって出力されるような流体圧ブレーキ流体の流量について判断することができる。モータの速度およびブレーキ回路が使用する流体圧ブレーキ流体の量(例えばリザーバが放出するブレーキ流体の量)によって測定されるようなポンプが出力する流体圧ブレーキ流体の流量に基づいて相関させる。個々のブレーキ状態で所定の閾値より大きい比率(例えば行程センサが検出するような高圧ブレーキまたは低圧ブレーキ)が与えられると、これがブレーキシステム内に漏れが存在するかを判断する。別の好ましい実施形態では、従来通りのモータ(例えばブラシがあるモータ)を使用する。ポンプが出力する流体圧ブレーキ流体の流量を、従来通りのモータの電流引き込みによって測定する。さらに別の好ましい実施形態では、ブースト弁に流れる作動流体の流量は、高圧アキュムレータが再充填される頻度によって測定することができる。
【0061】
流体圧ブレーキ流体の供給回路の個々の流体回路内で有意の漏れがあると、1次ピストン26が流体圧ブレーキ流体を圧縮しようとするので、マスタ・シリンダ22の1次室70内で流体圧ブレーキ流体の圧力が失われる。流体圧ブースト機能、さらに手動のブレーキは両方とも、この有意の漏れのせいでブレーキシステムを加圧することができない。車両の前部ブレーキ24cおよび24dをブレーキするために手動のプッシュ・スルーを適用するには、運転者がブレーキ・ペダル38にさらに長い行程を加える。行程が長くなると、1次ピストンが正常なブースト動作中に使用される範囲を超えて変位する。1次ピストン26の第二端面118が第一中間ピストン28および第二中間ピストン30に接触し、これを変位する。その後、第一および第二中間ピストン28および30が、第一および第二2次ピストン32および34を変位する。第一および第二2次ピストン32および34が変位すると、第一および第二2次室64および66内のブレーキ流体が加圧され、車両の前部ブレーキ24cおよび24dを起動する力を加える。
【0062】
2次室の1つで漏れが発生し、個々の2次室内で作動流体が失われた場合は、車両の前部ブレーキが両方とも独立して起動可能であるので、車両の個々の前部ブレーキの1つをブレーキに使用することができる。車両の後部ブレーキ24aおよび24b、および流体圧ブレーキ流体を維持する車両の個々の前部ブレーキを、手動で制御することができる。
【0063】
回生ブレーキシステム、アンチロックブレーキシステム(ABS)、トラクション制御(TC)、調整された車両安定性制御、ヒル・ホールド(hill hold)、自動衝突回避、または自動クルーズ制御などのブレーキ・システム21によって、様々な2次ブレーキ方式を実行、または協働状態で実行することができる。したがって、車両の運転者がブレーキ・ペダル38を押下しなくても、これらの目的のために1つまたは複数の車両ブレーキ24a、b、cおよびdを起動することが望ましいことがある。同様に、操作者がブレーキ・ペダル38を押下しなくても、アンチロックブレーキの目的などのために、1つまたは複数の車両ブレーキ24a、b、cおよびdのブレーキ力を個々に、または協働して一時的に減少させることが望ましいことがある。
【0064】
図3は、図2で示すような方向で面A−Aにて切り取ったマスタ・シリンダの一部の断面図を示す。断面図A−Aは、1次ピストン26と第一中間ピストン28と第二中間ピストン30との位置合わせを示す(ハウジングおよび他の要素を除く)。1次ピストンの第二端面の全体を118で示す。先に検討したように、1次ピストンは環状であり、ばね(図示せず)を受け取るために全体を通して一様な内腔137を含む。第一中間ピストン28および第二中間ピストンは、端面120および122(図2で図示)が1次ピストンの第二端面118と位置合わせされるように、位置合わせされる。
【0065】
図4は、本発明の第二の好ましい実施形態によるマスタ・シリンダの拡大図を示す。同様の参照番号については図2で説明したものと同じ要素番号を使用した図示のマスタ・シリンダは、第一および第二2次ピストン32および34と第二および第三中間ピストン28および30の位置合わせを除いて同じものである。第一および第二2次ハウジング114および116は、図2で示したような軸方向にずれたハウジングとは異なり、第二および第三中間ハウジング110および112それぞれと軸方向に位置合わせされる。軸方向の位置合わせは、第二および第三中間室60および62が加圧されるので、2次ピストン32および34のいずれにもかかる側方負荷が減少するという利点を提供する。
【0066】
図2で示すような2次ハウジングは、ずれている(つまり第二および第三中間ハウジングと軸方向に位置合わせされていない)。図2で示すように2次ハウジングをずらすと、それぞれが個々の2次室と軸方向に位置合わせされないので、第二および第三中間ハウジング110および112を相互にさらに近づけることができる。第二および第三中間室110および112が相互に近づいた結果、自身内に配置された第一および第二中間ピストンと接触するために、1次ピストン26の直径を減少させることができる。1次ピストン26の直径を減少させることの利点は、1次ピストン26の入力と出力との間の効率が上がることである。
【0067】
図5は、全体的に20で示された本発明による車両ブレーキ・システムの第三の好ましい実施形態を示す。同様の参照番号については図1で説明したものと同じ要素番号を使用し、(図1で示したような)HPAは高い圧力保存能力を有する中圧アキュムレータ(MPA)132に置換されている。MPA132は、加圧されたブレーキ流体の源(つまり電動モータ42によって作動するポンプ46)および流体回路134と流体連絡する。MPAは、流体回路138を介してリザーバとも流体連絡する。
【0068】
図6でも見られるように、MPA132は2室アキュムレータで、中圧の流体圧ブレーキ流体を第一(中)圧力室148に、高圧の流体圧ブレーキ流体を第二(高)圧力室154に蓄積することができる。
【0069】
MPA132は、ピストン式アキュムレータと協働して事前充填した窒素を使用するのとは異なり、1対のばね式ピストンを含む。中圧室148は、ハウジング150と中圧アキュムレータ・ピストン152の上面との間に配置される。縁面165が、所定量の行程の後、中圧アキュムレータ・ピストンの移動を制限する。
【0070】
高圧室の全体を154で示す。高圧室154は、中圧アキュムレータ・ピストン154の底面と高圧アキュムレータ・ピストン156の上面との間に配置される。第一ばね158および第二ばね160が、高圧アキュムレータ・ピストン156の底面の下に配置される。あるいは、高いゲージ厚さを有し、第一および第二ばね158および160の組み合わせた圧縮力と同じばね力を有する1つのばねを使用してよい。
【0071】
加圧した流体圧ブレーキ流体をMPA132に供給するために、第一ポート161を流体回路138に結合する。加圧したブレーキ流体を車両のブレーキからMPA132に戻すために、第二ポート162を流体回路134に結合する。加圧したブレーキ流体をリザーバ45に戻すために、第三ポート163を流体回路136に結合する。(図1で示すような)バイパス弁88の機能は、MPA132に統合される。
【0072】
低圧のブレーキ流体がポンプ46(図5に図示)からMPA132に提供されると、弁が開き、低圧のブレーキ流体が中圧アキュムレータ室148に入ることができる。中圧アキュムレータ室148に入った低圧ブレーキ流体は、中圧アキュムレータ・ピストン152に力を加え、これは中圧アキュムレータ・ピストン152の縁面164がMPA132内の階段状表面165と突き当たるまで、第一および第二ばね158および160を圧縮する。中圧アキュムレータ・ピストン152は、第一および第二ばね158および160をそれ以上圧縮することができない。ポンプ46が高圧ブレーキ流体をMPA132に提供すると、弁が閉じ、高圧の流体が高圧室154に入ることができる。第一および第二ばね158および160がさらに圧縮し、それによって高圧アキュムレータ・ピストン156を前進させる。高圧ブレーキ流体が高圧アキュムレータ室154内に蓄積し、それによって高圧アキュムレータ・ピストン156を変位させ、第一および第二ばね158および160をさらに圧縮する。高圧アキュムレータ室154が過剰に加圧されると、高圧アキュムレータ・ピストン156が限界止め部166に到達し、これは逆止め弁のボール167を高圧アキュムレータ・ピストン167内で外し、それによって高圧室内の過剰な圧力のブレーキ流体を第三ポート163を介してリザーバ45へと放出する。
【0073】
前述したように、中位の流量のブースト状態では、流体圧ブレーキ流体が中圧で第一室内に蓄積することができる。第一室が容量まで充填されると、第二ばね式ピストンの余分な行程によって、流体圧ブレーキ流体を第二室に保存することができ、これは第一室と比較するとさらに高い圧力で加圧されている。MPA132は、ポンプの出力を中圧室と高圧室の間で切り換えることができる。第二室内の高い圧力を使用して、突然のABS遮断弁の流れ要求を提供することができる。
【0074】
図5を参照すると、ペダル・シミュレータは、流体回路134および放出弁52、54、56および58を介してMPA132と流体連絡し、それらの器具によって放出された流体圧ブレーキ流体を蓄積する。MPA132の第一室と第二室が容量いっぱいになった(capacitized)場合に、加圧された流体圧ブレーキ流体をリザーバ45へと放出するために、MPA132とリザーバ45の間に流体回路136が流体接続される。
【0075】
ブーストが必要な場合は、ブースト弁48に付勢して、MPA132から加圧した作動流体が流れることができるようにする。ポンプ46の動作中に、ポンプからの流量が高い場合はMPA132が制限機構を含み、これは高圧のブレーキ流体が第一室に蓄積するのではなく、個々のブレーキ回路に適用されるように、加圧された流体圧ブレーキ流体が第一室に入るのを制限する。MPA132に保存された加圧された流体圧ブレーキ流体を使用して個々の車両ブレーキを起動する場合は、加圧された流体圧ブレーキ流体が流体回路138を通してシャトル弁140を介してブースト弁48へと流れることができる。流体回路144はシャトル弁140を介してブースト弁48に接続され、流体回路142は、シャトル弁140を運転者がペダル・シミュレータ74内に適用した圧力に接続する。シャトル弁140内のボールが第一位置から第二位置へと往復して、流体圧ブレーキ流体が個々の第三流体回路に流れるのを防止しながら、個々の流体回路の対に流体接続する。例えば、マスタ・シリンダ22の1次室70と比較すると、さらに高い圧力の流体圧ブレーキ流体がMPA132(またはポンプ46)から加えられると、シャトル弁140内のボールが第一位置へと往復して、流体圧ブレーキ流体が1次室70から流れるのを防止しながら、流体圧ブレーキ流体がMPA132(またはポンプ46)からブースト弁48へと流れることができるようにする。MPA132(またはポンプ46)と比較して、1次室70からの圧力の方が高い場合は、シャトル弁140内のボールが第二位置へと往復して、流体圧ブレーキ流体がMPA132へと流れるのを防止しながら、流体圧ブレーキ流体が1次室70からブースト弁48へと流れることができるようにする。シャトル弁140、さらに図1のブリード弁105は、手動で開放する措置を含む。組み立て工場でブレーキ・システムにブレーキ流体を充填する前に、導管から空気を排出しながら、通常は電磁弁に付勢する必要がある。シャトル弁140は、どの弁も付勢する必要なく、各ブレーキ・システム20から空気をパージできるように、開位置に保持される。
【0076】
運転者がブレーキ・ペダル38に直に大きい力を適用した場合は、望ましくないペダルの落下を防止するために、運転者が圧力を介して使用可能な手動の押す力より大きい圧力を、ブレーキが遮断弁の上流でブースト弁48から加えることが望ましい。MPA132の高圧室からの加圧された流体圧ブレーキ流体を使用して、車両ブレーキを起動する場合は、流体回路136、138および49を瞬時に加圧して、ブースト機能を提供する。これは、大部分のHPAで一般的なことである。しかし、加圧された流体圧ブレーキ流体をブースト弁48に供給するためにMPA132の中圧室を使用する場合は、ポンプが所望の高い圧力を送出できるようになる前に、遅延が存在する。その結果、運転者は、車両ブレーキを起動するために個々のブレーキ回路がMPA132の中圧室によって十分に加圧される前に、場合によっては手動でブレーキすることがある。MPA132がブースト機能を供給する前に運転者が車両ブレーキを手動でブレーキするのを防止するために、減衰オリフィス76がフェールセーフ弁102の上流に接続される。フェールセーフ弁102の上流で減衰オリフィス76を通る加圧流体圧ブレーキ流体の制限された流れは、フェールセーフ弁102を開放するために必要な圧力上昇を遅延させる。遅延によって、MPA132の中圧室から供給される加圧流体圧ブレーキ流体が、手動ブレーキを防止するのに十分になり、その一方でポンプには、高い圧力を生成するのに必要な出力流を送出するのに十分な時間が与えられる。
【0077】
減衰オリフィス76がフェールセーフ弁102の上流に接続されているので、減衰オリフィス76が遮断される場合には、手動ブレーキに必要な加圧作動流体の流れが使用可能にならないことがある。このような状態を識別するために、圧力センサの行程センサ40を1次室70と減衰オリフィス76の間に配置する。減衰オリフィス76が遮断されると、圧力センサの入力を他のセンサ入力(図示せず)と組み合わせて使用し、モジュールを制御して、マスタ・シリンダ22の1次室70内の過度の圧力を識別することができる。可視表示、可聴表示、または他のタイプの警告のような警告を運転者に提供することができる。また、減衰オリフィスが遮断されると、ブースト弁48およびフェールセーフ弁102への流体圧ブレーキ流体の流れが制限され、したがってブースト弁48の流体圧起動またはフェールセーフ弁102を介した手動ブレーキを無効にする。さらに、減衰オリフィス76が遮断された状態で、マスタ・シリンダ22の1次室70内の流体圧ブレーキ流体は1次室70から出ることができない。その結果、1次室70は圧力ロック状態になり、したがって1次室70内の圧力ロック状態のせいで、ブレーキ・ペダル38を押下することができない。その結果、ペダルの移動が発生せず、したがって行程センサ40が運転者のブレーキ要求を示す信号を制御モジュールに供給することができない。したがって、行程センサ40を使用して、1次室70内で加えられた圧力を感知し、ワイヤによってブレーキを掛けるために、それに応じてこの情報を制御モジュールに提供する(つまり、流体圧ブーストを適用するために、ブースト弁48およびモータ42を電気制御する)。
【0078】
同様の参照番号については図1で説明したものと同じ要素番号を使用した図7は、本発明の第四の好ましい実施形態によるブレーキシステムのブレーキ・モジュールの略図を示す。マスタ・シリンダ(M/C)弁168は、消勢位置では常時開にポートされた電気起動の弁である。M/C弁168は、マスタ・シリンダの1次室70と流体連絡した流体回路72と、第一回路49との間に流体結合される。流体回路72内の流体圧力を監視するために、圧力センサ146が流体回路72に結合される。リザーバ遮断弁176が前記ペダル・シミュレータ74とリザーバ176に流体連絡し、その間に配置される。
【0079】
ブリード弁180は、ばね起動のピストンを含み、これによってブレーキ・システム22から閉じ込められたガスをパージすることができる。ばね式逆止め弁182が、ポンプ46と第一回路の間に(ブースト弁48とブリード弁182に並列で)接続される。
【0080】
この実施形態では、図1のブースト機能と同様に、ブレーキが必要である場合、ブースト弁48に付勢して、HPA44およびポンプ46によって提供された加圧ブレーキ流体が流体回路49を通って流れ、車両ブレーキ24a、24b、24cおよび24dを起動できるようにする。電気的故障の場合、ブースト弁48は能動状態を維持せずに、消勢位置へと戻り、これによりHPA44からのブースト機能を適用しない。ブースト弁48は電気起動のブースト弁である(つまり、図1および図5で示したような流体圧および電気で起動するブースト弁とは異なる)。電気的故障の場合は、手動のプッシュ・スルー動作を使用して、車両の前部ブレーキ24cおよび24dおよび車両の後部ブレーキ24aおよび24bをブレーキすることができる。車両の前部ブレーキ24cおよび24dの手動プッシュ・スルー動作は、図1に関連して検討したものと同じである。車両の後部ブレーキ24aおよび24bの手動プッシュ・スルー動作は、操作者によって手動で提供され、1次室70内の作動流体に加圧するためにブレーキ・ペダル14に力を加え、流体回路72を介してM/C遮断弁168へと流体圧ブレーキ流体を押しやる。流体圧ブースト動作中に、M/C遮断弁168は電気的に閉位置にポートされ、作動流体がペダル・シミュレータ74に流れることができるようにする。電気的故障中に、M/C遮断弁168は消勢されて開位置になり、流体圧ブレーキ流体が車両の後部ブレーキ24aおよび24bに流れることができる。M/C遮断弁168が開位置にある場合、流体圧ブレーキ流体は弁を通過中に制限されない。その結果、流体圧ブレーキ流体が車両ブレーキへと通過できるようにするために、ポートを開くように内部ばね力を克服するのにフェールセーフ弁102に追加の力を加える必要がある(図1および図5の)フェールセーフ弁102とは反対に、M/C遮断弁168を強制的に開くために、車両の操作者は追加の圧力を必要としない。
【0081】
車両のブレーキ24a、24b、24cおよび24dを起動するために流体圧ブーストの増強が必要である場合は、M/C遮断弁168に付勢して閉位置にし、車両ブレーキを起動するために流体回路49へ流れる流体圧を増加することができる。圧力差が回路72と比較して回路49の方が非常に大きい高いブースト期間中に、M/C遮断弁168は、大きい圧力差のせいで流体圧で閉鎖状態にロックされる。この状態で、流体圧ブーストの圧力が低下しすぎ、手動で押す必要がある場合、操作者がブレーキ・ペダル38に力を加えて、電気的に起動して閉じたM/C遮断弁168と、回路49内にまだ存在する残留ブースト圧力の両方を克服する。この手動プッシュ・スルーの制限を最小限に抑えるために、M/C遮断弁168を消勢する。M/C遮断弁168は消勢されるが、流体圧でロックされた状態を維持するために十分大きい圧力差が流体回路49と流体回路72の間にある限り、M/C遮断弁168は閉状態のままになることがある。手動プッシュ・スルーが必要な場合に、ブースト圧力が低下すると、流体圧でロックされた状態で、付勢されて閉じたM/C遮断弁168とは異なり、操作者はこの圧力差(流体圧ロック状態)を克服するためにブレーキ・ペダルに力を加えるだけでよい。さらに、M/C遮断弁168は、減衰オリフィス76の上流で1次室70とペダル・シミュレータ74の間に配置される。減衰オリフィス76の下流に配置された(図5の)フェールセーフ弁102と異なり、1次室70からM/C遮断弁168への加圧ブレーキ流体の流れは、減衰オリフィス76によって制限されない。
【0082】
操作者がブレーキ・ペダル38に突然に大きいブレーキ力を加えた場合、運転者が車両を瞬間的にブレーキして、ブレーキを即座に解放するために大きいブレーキ力を加えているのか、運転者が車両を停止させるために、大きいブレーキ力を維持しようとしているのか、判断されない。両方の状態で、流体圧ブーストは迅速に圧力を蓄積して、車両のブレーキ24a、b、cおよびdを起動する。ブースト弁48が付勢されて開き、これによってポンプ46およびHPA44が車両のブレーキ起動のために流体回路49内の圧力を増加させることができる一方、流体回路72を介した1次室70からのマスタ・シリンダの1次流量は、流体回路49内のブースト圧力より大きいことがある。これらの状態で、流体回路72と流体回路49間の圧力差によって、M/C遮断弁168を強制的に開くことができる。M/C遮断弁168がこのような状態で開くのを防止するために、M/C遮断弁168に十分に付勢して閉じ、流体回路49内の瞬間的圧力増大が弁を開くのを防止する。
【0083】
M/C遮断弁168のエネルギ消費量を最小限に抑えるために、M/C遮断弁168は流体圧ブレーキ流体の流量に応じて電流が制限される。つまり、M/C遮断弁168が低い流量で付勢されて閉じると、M/C遮断弁168に供給される電流を流量に比例して減少させることができる。閉位置を維持するために、少量のエネルギしか必要ないからである。あるいは、個々の流体回路内で高い流量が予想される場合は、M/C遮断弁168に供給される電流を、比例して増加させることができる。閉位置を維持するために、M/C遮断弁168にかかる圧力増大を克服するのに、より大量のエネルギが必要だからである。
【0084】
行程センサ40は主に、運転者のブレーキの意図を判断するために使用される。ペダルの行程は、大きいブレーキ力が適用された場合は、運転者のブレーキ要求に関する正確な情報を提供しないことがある。例えば、ブレーキ・ペダル38に初期力が適用された場合、ブレーキ・ペダル38は有意な距離だけ移動することができるが、M/C1次圧力の増加が最小になることがある。あるいは、ブレーキ・ペダル38に大きい力が適用され、ブレーキ・ペダル38に加えられた力が徐々に減少した場合、ブレーキ・ペダルの行程は小さい距離だけ減少するが、ペダルの力が大きく減少することがある。ブースト圧力とペダルの行程をよりよく相関するために、圧力センサ146を使用して、流体回路72内の圧力を測定し、ブレーキ要求の識別を補助する。例えば、ブレーキ・ペダル38に初期力が適用されると、行程センサ40が、運転者のブレーキ要求を判断するために、さらに正確な指標になる。ブレーキ・ペダル38に大きい力が適用され、減少した場合、圧力センサ146によって測定された圧力は、この状態で行程センサ14より正確な指標になる。ブレーキ力の大きな減少が、小さい距離しか移動していないブレーキ・ペダル38の結果であることもあるからである。その結果、ブレーキ調整下で運転者のブレーキ要求を判断するために、圧力センサ146が測定した圧力を、行程センサ40との組合せで使用し、したがって圧力センサ146への信号が行程センサの出力を確認するまで、ブースト圧力の適用が制限される。いずれの場合も、ブースト圧は車輪ロック圧力に制限することができる。車輪ロック状態に必要な圧力より高いブースト圧力を維持することに、追加の利点がないからである。
【0085】
行程センサ40は、マスタ・シリンダ22から供給される流体圧ブレーキ流体の流量を測定するためにも使用することができる。この流量は、ペダル減衰オリフィス76およびマスタ・シリンダ遮断弁168の上流の圧力を推定するために、圧力センサ146からの信号と組み合わせて使用することができる。これは、M/C遮断弁168に付勢する場合に必要な閉じる力を決定するために予想される流量の指標を提供する。
【0086】
ばね式逆止め弁174は、M/C遮断弁168が遮断されるか、消勢して開位置にすることができない場合に、手動プッシュ・スルーを可能にするために提供される。ばね式逆止め弁174は、M/C遮断弁168の正常な動作(消勢)の前に開かないようにサイズ決定される。M/C遮断弁168に消勢して開く前に開かないよう補助するために、M/C遮断弁168の後であるがばね式逆止め弁174の前に減衰オリフィス76を配置する。減衰オリフィス76は、流体圧ブレーキ流体の流れを制限し、したがって、M/C遮断弁168ではばね式逆止め弁174での圧力より高い圧力の流体圧ブレーキ流体が見られる。さらに、以前に検討したように、ブレーキ・システム20は、回生ブレーキのような様々な2次ブレーキ状態で運転者を遮断し、運転者の入力圧力が回生ブレーキを終了すべきだったと示した場合に、ブーストした圧力が許容不可能なほど低いと、効率的なプッシュ・スルーを可能にする。さらに、ブレーキ・システム20は、例えばマスタ・シリンダの圧力が高く、回生ブレーキ圧力が低い場合のように、特定の場合に手動プッシュ・スルーを可能にせず、それによって手動プッシュ・スルーとは異なり、ブースト動作が車両のブレーキ動作に滑らかに遷移できるようにすることが好ましい。ばね式逆止め弁174は、このブレーキ制御方式、およびマスタ・シリンダ側よりブースト側で圧力が低い他の先進のブレーキ制御方式を通して手動プッシュ・スルーを可能にしないように適切にサイズ決定される。
【0087】
リザーバ遮断弁176は、ペダル・シミュレータ74またはブースト弁48から流体回路90を介してリザーバ45へ加圧流体の流れを方向転換する常時閉弁であり、リザーバは流体圧ブレーキ流体を保存するために大気圧で通気される。リザーバ遮断弁176は、後部ブレーキへの流体圧ブレーキ流体の手動プッシュ・スルーを可能にしながら、ペダル・シミュレータ74への失われたブレーキ・ペダルの移動を防止する。リザーバ遮断弁176は、消勢位置にある場合に常時閉にポートされた電気起動の弁である。M/C遮断弁168と同様に、リザーバ遮断弁176は、エネルギを保存するために流体圧ブレーキ流体の流量に応じて電流が制限される。高い流量では、リザーバ遮断弁176は、大きい電流引き込みを使用して十分に付勢され、ブースト弁48またはペダル・シミュレータ74から戻る加圧流体圧ブレーキ流体の流れの力が弁を閉じるのを防止する。低い流量の状態では、リザーバ遮断弁176が比較的小さい電流引き込みを使用して付勢され、リザーバ遮断弁176に加えられた小さな力によって開いた弁を維持する。
【0088】
放出弁52、54、56および58から戻る流体圧ブレーキ流体の流れは、流体回路178を介してリザーバに配向される。個々の放出弁からリザーバ45に流体圧ブレーキ流体が直接戻ると、(図1で示すように)流体圧ブレーキ流体をペダル・シミュレータ74へと配向するのとは異なり、ABSのような2次ブレーキ補助機能を使用する場合に運転者が感じるような脈動フィードバックが減少するという利点を有する。これによって、加圧された流体圧ブレーキ流体がリザーバ45に戻ることができ、これはブレーキ流体の戻りについては本質的に無制限である。流体圧ブレーキ流体が流体回路178を介して戻ることの別の利点は、この回路が実際に、放出弁52、54、56、58からブレーキ流体を引き込むことである。流体回路178は、リザーバ45への戻り線であることに加えて、ブースト圧力を供給するか、HPA44を充填するためにモータ42およびポンプ46が動作している場合に、ポンプ46に流体を提供する。ポンプ46がまだ動作している間に、流体圧ブレーキ流体が放出弁52、54、56、58から放出されると、ポンプ46が、ポンプ46に入る流体圧ブレーキ流体にかかる真空として機能する。ポンプ46によって生成された真空は、ポンプ46が動作していない場合より速い流速で放出弁52、54、56、58から流体圧ブレーキ流体を引き出す。
【0089】
組み立て工場でブレーキシステムにブレーキ流体を充填する前に、導管から空気を排出しながら、通常は電磁弁に付勢する必要がある。ブリード弁180は、どの弁も付勢する必要なく、ブレーキ・モジュール22から空気をパージできるように、ばねによって開位置に保持される。ブレーキ・モジュール22から空気がパージされ、ブレーキシステムが起動されると、小さい流量のポンプ流体がブリード弁180を閉じ、低い圧力がブリード弁180を閉位置に維持する。閉位置にある場合、ブレーキ流体はブリード弁180を介してブースト弁48をバイパスすることができない。
【0090】
ポンプ46およびHPA44が活動中にブースト弁48が遮断されるか、動作不可能である場合、またはHPA44からブレーキ流体を放出するために、HPA44が所定の高い圧力を超え、車両のブレーキが起動されていない場合、ばね式逆止め弁182を設けて、HPA44に保存されている高圧のブレーキ流体を放出する。このような状態は、ブレーキせずに車両を運転することによって、HPA44に保存されている流体圧ブレーキ流体が所定の高圧を超える場合に生じることがある。エンジン室の高い温度は、HPA44内の流体圧ブレーキ流体の圧力を増加させ、それによってHPA44内の過剰圧力状態を引き起こすことがある。ばね式逆止め弁182は、過剰圧力状態のHPA44を緩和するために、ポンプ46と遮断弁51、53、55および57の間に(ブースト弁と平行に)設けられる。ばね式逆止め弁182は、HPA44内に保存されている加圧ブレーキ流体が、流体回路49の圧力と逆止め弁ばねのばね力との組合せより大きい圧力を有する場合に開く。あるいは、ばね式逆止め弁182とブリード弁180は両方とも、流体回路178を介して流体圧ブレーキ流体をリザーバ45へと排出するように、相互に平行にポンプ46とリザーバ45との間に配置される。
【0091】
先に検討したようなペダル・シミュレータ74は、ブレーキ・ペダル38のブレーキフィードバックをシミュレートするために、車両のブレーキ・ペダル38に対して間接的に抵抗力を提供する反対方向の力を流体回路72に加える。ペダル・シミュレータは概して、ブレーキシステムの要件に基づいて個々の車両に合わせてサイズ決定される。その結果、様々な車両用途は、異なるサイズのシミュレータ・ピストンを使用する様々なサイズのシミュレータ・モジュールを必要とする。個々の外径を有するシミュレータ・ピストンは、シミュレータ・ピストンを収容するようにサイズ決定されたシミュレータ・スリーブを使用する。個々の車両用途のサイズ要件に基づいて、全く新しいHCU(つまりヘッド制御ユニット)を設計変更する必要をなくすために、全ての車両用途にモジュール式ペダル・シミュレータを使用することができる。モジュール式ペダル・シミュレータは、各車両用途に使用される汎用弁体を含む。汎用弁体は、ピストンのサイズに関係なく変化しないままである。シミュレータ・スリーブの内部寸法(つまり内径)は、様々なサイズのピストンに対応するために変更されるが、モジュール式ペダル・シミュレータの外部寸法(例えば外径)を含むシミュレータ・スリーブの外部寸法は、同じままである。その結果、特定サイズのシミュレータ・ピストンを必要とする個々の車両用途で、モジュール式ペダル・シミュレータに特定サイズのシミュレータ・ピストンおよびスリーブが取り付けられ、様々な車両用途に対応する汎用弁体に適応する。
【0092】
図8は、図7で示した多機能弁の断面図である。図7の流体圧の略図について検討した弁の大部分は、別個に独特なものとして図示されているが、多機能弁は複数の弁の複数の機能を統合し、実行する。多機能弁は、ペダル・シミュレータ74(図7で図示)への流体圧ブレーキ流体の流れを制限する減衰オリフィス76を含む。逆止め弁98のマスタ・シリンダ22の側が反対側と比較して圧力差が小さい場合に、流体圧ブレーキ流体の流れがペダル・シミュレータから戻ることができるように、逆止め弁98の機能が統合されている。M/C遮断弁168が遮断されるか、動作不可能である場合に手動プッシュ・スルーを可能にするばね式逆止め弁が、174で図示されている。図7の制限オリフィス184およびブリード弁180は、図6の131で全体的に図示されている。さらに、HPA44に保存されている過剰圧力のブレーキ流体を解放するばね式逆止め弁(つまり緊急開放弁)が、182で図示されている。
【0093】
電気的故障の場合にHPA44内の圧力を手動で軽減する手動開放弁187が、図6に図示されている。図1および図3では、電気的故障が存在すると、ブレーキをポンピングすることによってHPA44から流体圧ブレーキ流体を抜くことができる。ブースト弁をポートして、HPA44からブレーキ流体を放出するために、ブースト弁48を流体圧で起動することができるからである。図6のブースト弁48は、電気的故障の場合に流体圧で起動するように設計されていない。圧力を手動で軽減するために、多機能弁は、ねじ部分186を含む前部分189を含む。前部分189をねじの周囲で回転すると、HPA44からブレーキ流体を抜くために、手動放出弁187が多機能弁と多機能弁ハウジング191の間に開口を生成する。
【0094】
図9は、本発明の第五の好ましい実施形態によるマスタ・シリンダの拡大図である。以前の実施形態で検討したように、ブレーキ・ペダル38は、ブレーキ・ペダル38の移動長さを示す信号を生成するために、ペダル変位変換器に結合される。この好ましい実施形態では、マスタ・シリンダ22は、マスタ・シリンダ22の1次ピストン26の行程を誘導感知する行程センサ40を含む。行程センサ40は、1次ピストン26の上面に高周波電流を誘導するために1次ピストン26の一部を囲む誘導コイル170を含む。誘導磁界によって生成された渦電流が、1次ピストン26の上面に沿って流れる。ブレーキ・ペダル38に力が加えられると、1次ピストン26がマスタ・シリンダのハウジング103内で変位する。誘導コイル170が、1次ピストン26の正確な位置を求めるために1次ピストン26の上面で渦電流の変化を測定し、その結果、システムはブレーキ・ペダル38の移動長さを求めることができる。
【0095】
図9はさらに、マスタ・シリンダ22を車両のエンジン室(図示せず)内に装着する汎用装着システムを示す。適応性がある面装着プレート190は、マスタ・シリンダ22を受ける第一口を含む。適応性がある面装着プレート190はさらに、複数の締結具188を受ける複数の口195を含む。複数の締結具188は、適応性がある面装着プレート190を使用してマスタ・シリンダ22を装着面192に固定するように図示されている。複数の締結具を固定すると、適応性がある面装着プレート190が行程センサ40、およびマスタ・シリンダ・ハウジングの適応性装着プレート側から組み付けたマスタ・シリンダ22の他の関連する構成要素を保持する。異なる車両は、様々なパッケージング位置および個々の車両エンジン室の周囲の構成要素のせいで、異なる形状の面装着プレートを必要とすることがある。この実施形態では、装着面192に位置合わせされた複数の口195が、エンジン室の締結具の穴位置と、マスタ・シリンダ22を受ける複数の口195との間に固定される。その結果、マスタ・シリンダ22は、マスタ・シリンダ22を車両の様々な装着位置および表面に適応させるために様々な形状の面装着プレートを使用することができる。さらに、マスタ・シリンダ22および行程センサ40への全ての接続部は、車両のエンジン室からアクセス可能である。
【0096】
図10は、本発明によるブレーキ・モジュールの第六の好ましい実施形態を示す。独立した前部と後部の車軸ブレーキ制御要件を有する車両は、前車軸と後車軸に異なる圧力を加えることが望ましい。これは、他の車軸に対して1つの車軸に加える圧力を減少させることによって遂行することができる。車両の個々の車軸で圧力を減少するには、個々の車軸の両方の車両ブレーキが、ほぼ同じ圧力で加えられるブレーキ力を有する必要がある。個々の車軸の個々の組のブレーキにほぼ一様なブレーキ力を加えるには、ブレーキの剛性およびパッド摩擦など、個々の各車輪間で外部要因が一定であると仮定し、個々の各ブレーキに同量の流量の加圧ブレーキ流体を適用する必要がある。
【0097】
車軸に電磁抵抗力を加えながら、圧力を同時に減少させることによってエネルギを回復するために、通常は車両の個々の車軸の1つに回生ブレーキを加える。エネルギを最大限に回復するために個々の車軸に回生ブレーキを加えるブレーキ期間中に、ブレーキの混合が生じ、したがって個々の車軸に加えられる回生ブレーキが、車両の各車軸間にトルクの不均衡を生成しない。車両の個々の領域に過剰な車輪トルクがかかると、車輪の滑り状態を引き起こす。その結果、回復エネルギと均衡したブレーキとの間に平衡が維持される。ブレーキの平衡は、アンチロックブレーキなどの個々の滑り制御を適用した状態で、さらに複雑になる。このような状態では、非回生ブレーキ車軸の個々の各車両ブレーキは、個々のブレーキからの圧力を供給、維持または放出するために、個々の遮断弁および個々の放出弁によって制御される。個々の遮断弁は2位置弁である(つまり完全に開くか完全に閉じる)。アンチロックブレーキ中に遮断弁が脈動するので、車両の各ブレーキ回路内に異なる流量を生成することができ、その結果、個々の車軸の個々の各車輪に不均衡なブレーキ力を適用することができる。
【0098】
この好ましい実施形態では、個々の車軸の個々の車両ブレーキの組内の加圧ブレーキ流体の流量を平衡させるために、遮断弁55および57は比例弁を含む。比例弁200は、放出弁56および58と流体回路178との間で流体回路198に接続される。比例弁200は、流体回路198と流体回路178を継手で結合する前に配置される。
【0099】
個々の車軸上で個々のブレーキの組に平衡した流量のブレーキ流体を適用するために、比例弁55および57を調節して、車両ブレーキ24aおよび24bそれぞれへの加圧ブレーキ流体の量を可変制御する。放出弁56および58は、平衡した比例圧力制御の間、連続的に開状態で保持される。これらの弁はそれぞれ、放出流量が加熱を軽減するために低いデルタ圧力を予想する場合に、パルス幅で変調される。放出弁56および58は、閉位置にあると、ブースト弁48を介した加圧ブレーキ流体が車両ブレーキ24aおよび24bに適用されるように、ブレーキ圧力を維持する。放出弁56および58は、開位置にあると、ブレーキ流体を個々の車両ブレーキから放出できるようにする。アンチロックブレーキ(または他の滑り制御)の期間中は、車両の各ブレーキ24aおよび24b内の圧力が不均衡であることが望ましいことが多い。車軸にかかるブレーキ圧力を平衡させるために、放出弁56および58の下流で流体回路198内に比例弁200を設ける。比例弁200は、流体回路198と流体回路178を継手で結合する前に配置される。その結果、回路178内の放出弁52および54からの流量は影響を受けないままである。
【0100】
比例弁200は、放出弁56および58を出る加圧ブレーキ流体の流量および体積を制御する。比例弁200は、弁を突然開閉するのではなく、加圧ブレーキ流体の流量を徐々に変更できるように可変調節される。さらに、車両のブレーキ24aおよび24bを出る加圧ブレーキ流体の流量は、高いブレーキ圧力で放出弁56および58によって制御されるので、比例弁200は小さいサイズにすることができる。これは、両方の放出弁56および58の下流で流れを制限しないほど十分に開放した区域があるようにサイズ決定されても、比例弁20が原則的に低いブレーキ圧力で機能するからである。
【0101】
あるいは、放出弁56および58は、比例弁200を組み込まずに車両ブレーキ24dおよび24cを離れる加圧ブレーキ流体の流量を可変制御する比例弁を含むことができるが、追加の費用が加わる。というのは、別個の常時閉比例弁の設計が必要となり、別個の圧力平衡電磁弁または余分な圧力変換器を追加する必要があるからである。
【0102】
単純な外部配管変更(external re−plumbing)によって前車軸の圧力を比例して減少させるために、この同じ回路を使用することができる。後部ブレーキ24aおよび24bを、弁51と52の間、および弁53と54の間のそれぞれのポートに接続する。弁55と56の間、および57と58の間のポートは、それぞれ前部ブレーキ24cおよび24dに対応するMC室に接続される。
【0103】
図11はさらに、本発明の第七の好ましい実施形態によるマスタ・シリンダ22内に閉じ込められたガスをパージするブレーキシステムを示す。通常、マスタ・シリンダ室は、閉じ込められたガスをパージするためにリザーバへと通気するのに、流体圧機械式または電磁弁を必要としない。マスタ・シリンダ室にリザーバへの通気部が設けられているからである。車両に装着されたマスタ・シリンダは通常、ブレーキ・モジュールより高く位置決めされ、したがって閉じ込められたガスは自然にマスタ・シリンダからブレーキ・モジュールへと流れない。しかし、マスタ・シリンダおよびブレーキ・モジュールが相互に近い位置に装着されている場合、ガスはブレーキ・モジュールへと下方向に流れ、次に別個の戻り路を介してマスタ・シリンダのリザーバへと戻ることができる。ブレーキ・モジュールおよびマスタ・シリンダが遠く離れて装着されたブレーキシステムでは、ブレーキ・モジュールを介してマスタ・シリンダからリザーバへ閉じ込められたガスをパージすることが、これより困難になる。
【0104】
この実施形態では、ブレーキ・モジュール23がマスタ・シリンダ22から離れた距離に装着された場合に、閉じ込められたガスをパージするには、ブリード弁202を、流体回路213を介して第二中間室60と、流体回路212を介して第三中間室62との間に流体接続する。ブリード弁202は、第一中間室59にも流体接続する。図12でも見られるように、ブリード弁202は、室のハウジング218およびピストン210を囲むブリード弁ハウジング217を含む。ピストン210を事前に負荷を掛けた状態に位置決めするために、室ハウジング218の第一端220とピストン210の第一端222との間に、ばね208を配置する。ばね208は、非ブレーキ状態ではピストン210を室ハウジング218の第二端224に維持する。
【0105】
第一ポート226は、ピストン210がハウジング内で変位した場合に、第一室204を通気して圧力ロック状態を防止するために、流体が(図11で示すような)流体回路206を介してリザーバ45と第一室204の間で流れることを可能にする。ブリード弁202は、第二および第三室214および216と流体連絡する第二ポート228を含む。ブリード弁はさらに、第三および第四室216および219と流体連絡する第三ポート230を含む。第三ポート230は、流体通路240および流体通路242を介して第二室216とも流体連絡する。
【0106】
リップ・シール232はリップ・シール脚部236を含み、リップ・シール234はリップ・シール脚部238を含み、流体が1方向に(つまり第三室216から第二室214へ)しか流れることができないように配向される。
【0107】
車両が非ブレーキ状態にある場合、ブレーキ・モジュール23、さらに他の2次ブレーキモジュールの流体回路は、流体の流れがほとんど、または全くなく、(HPA44内に高い圧力を維持するポンプ46とHPA44とブースト弁48との間の流体回路36を除き)低い圧力に維持される。非ブレーキ状態では、ブレーキ・ペダル38は休止位置にあり、マスタ・シリンダ22の1次ピストン26、さらに中間ピストンおよび2次ピストンに加えられるブレーキ力がない。その結果、マスタ・シリンダ22内の各室内の加圧ブレーキ流体は、加圧されないままである。第一中間室59内の流体圧ブレーキ流体は、加圧されない状態で、流体回路206を介してブリード弁202の第一室204の流体圧ブレーキ流体と平衡である。平衡状態にある間、ブリード弁202内のばね208は、予め圧縮した状態に維持される(つまりブリード弁に挿入される場合のように予め圧縮される)。予め圧縮した状態で、ばね208はブリード弁202内のピストン210に力を加え、これはピストン210をブリード弁202内の室ハウジングの反対側に往復させる。ピストン210が反対側に往復すると、ピストン210がブリード弁202をポートして、開位置にする。ピストン210の反対側からピストンおよびばね208に加える抵抗力はない。非ブレーキ状態中に、ブースト弁48によって加えられている流体圧ブースト圧がないからである。
【0108】
マスタ・シリンダ22内に閉じ込められたガスをパージするために、ブースト弁48を変動自在に開き、非常に少ない流量の加圧流体圧ブレーキ流体がマスタ・シリンダ22の第三中間室62に流れることができるようにする。常時開M/C遮断弁168は、ブリード・モード中に付勢されて閉じ、少ない流量の加圧流体圧ブレーキ流体がマスタ・シリンダ22の第三中間室62のみに流れることができるようにする。流体圧ブレーキ流体がHPA44内で非常に加圧されているが、ブースト弁48は部分的に開き、したがって少量の加圧流体圧ブレーキ流体のみがブースト弁48を通り、流体回路49および96を介して第三中間室62へと流れることができる。少ない流量の結果、流体回路49および96内の流体圧ブレーキ流体の圧力上昇が少なくなる(例えば1バール)。
【0109】
低く加圧された流体圧ブレーキ流体の流れは、流体回路96を介してマスタ・シリンダ22の第三中間室62に入り、流体導管212を介して第三中間室62を出る。ブリード弁202が開位置へとポートされた状態で、低く加圧されたブレーキ流体は流体回路212を介して第三室216に入る。ブリード弁202内のリップ・シール(図12で図示)は、第三室216から第二室214へ、ブリード弁202内の流体圧ブレーキ流体の指向性流れを制御する。流体圧ブレーキ流体は第二室214からブリード弁202を出て、流体回路213、マスタ・シリンダ22の第二中間室62、および流体回路94および36を通ってリザーバ45へと流れる。遮断弁51が閉位置にポートされ、放出弁52が開位置にポートされて、流体圧ブレーキ流体がリザーバ45に流れることができるようにする。低く加圧された流体圧ブレーキ流体の流れが第二および第三中間室60および62に入り、出ると、閉じ込められたガスが強制的にこれらの室から出て、ブレーキ・モジュール23を介してリザーバへと移送され、ここで閉じ込められたガスがリザーバ45へとパージされる。
【0110】
このようにマスタ・シリンダから閉じ込められたガスをパージする動作は、制御モジュールがブースト弁を定期的に(つまり非ブレーキ状態で)開き、個々の流体回路内に低圧の流体流量を生成することにより、周期的に開始することができる。任意の時間に流体圧ブーストブレーキが必要である場合、ブースト弁48は、電気流体圧で補助されたブレーキを提供するために、マスタ・シリンダへの加圧作動流体の流量を増加させる。ブースト弁48から加えられた圧力が増大すると、加圧された流体圧ブレーキ流体が流体回路212を介して第四室219へ向かい、ピストン210を閉じたポート位置へと往復させ、ブリード弁202を通る加圧ブレーキ流体の流れを防止する。ブリード弁202はリップ・シール(図12で図示)を含み、これはブリード弁202内の流体圧ブレーキ流体の流れが両方向に流れるのを防止する。むしろ、流体圧ブレーキ流体の流れは、開位置にポートされると、1方向に(つまり第三室216から第二室214に)しか流れることができない。
【0111】
図12は、ブリード弁202の内部構成要素、および個々の室を開閉するピストンの往復運動を示す。ピストン210が往復して、ブリード弁202を(図示のように)開位置へとポートすると、ブースト弁48(図11で図示)によって生成された低い加圧流体圧ブレーキ流体が第三ポート230に入り、通路240および242を通って流れ、リップ・シール232を過ぎて第三室216に入る。その後、低い加圧ブレーキ流体は第三室216から流れ、リップ・シール234を過ぎて第二室214に入る。次に、流体圧ブレーキ流体は、第二ポート228を介してブリード弁202の第二室214を出る。
【0112】
リップ・シール232および234は、第二室214と第三室216の間で流体圧ブレーキ流体の指向性流れを維持する。リップ・シール232および234は、図示のようにJ字形である。作動流体が個々の方向からリップ・シール脚部236および238に加えられると、各脚部と室ハウジング218の内壁との間で個々の通路が開く。作動流体の流れが個々の反対方向からリップ・シール脚部236および238に加えられると、各リップ・シール脚部と室ハウジング218の内壁との間にシールが生成される。
【0113】
車両の運転者によってブレーキが適用されると、ブースト弁48によって加圧されたブレーキ流体が適用され、先に検討したように車両のブレーキを起動する。ブースト圧が適用されると、流体圧ブレーキ流体がマスタ・シリンダ22の第三中間室62内で加圧される。流体は強制的に流体回路212を通って第三ポート230に至り、第四室219に入る。加圧流体圧ブレーキ流体の流れが増加して、ばね208の抵抗力を克服すると、ピストン210が室ハウジング218の第一端220に向かって往復する。ピストン210が第一端220に向かって往復すると、リップ・シール232が通路242の上で移動する。リップ・シール232の脚部236は、室ハウジング218の内壁とシールを生成し、第三ポート230にさらに加圧流体圧ブレーキ流体が入っても、リップ・シール232を過ぎて第三室216へと流れることができない。
【0114】
同様に、ブースト圧がマスタ・シリンダ22の第二中間室60(図11で図示)に適用されると、加圧流体圧ブレーキ流体が強制的に第二ポート228に入り、流体回路213(図11で図示)を通って、その後に第二室214に入る。リップ・シール234の脚部238は、室ハウジング218の内壁とシールを生成し、流体圧ブレーキ流体がリップ・シール234を過ぎて第二室214から第三室216へと流れるのを防止する。その結果、流体圧ブレーキ流体は、ブレーキが適用されると、いずれの方向にもブリード弁202を通って流れることができない。非ブレーキ状態である場合は、リップ・シール232の脚部236がブリード弁202内に位置決めされ、マスタ・シリンダ22内に閉じ込められたガスをリザーバ45へとブレーキ・モジュール23を介してパージするために、非常に低い圧力の流体圧ブレーキ流体が第三中間室を通ってマスタ・シリンダ22の第二中間室62へと指向的に流れることができる。
【0115】
以上の説明から、当業者は本発明の基本的特徴を容易に把握することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用法および状態に適応さえるために、それに様々な変更および改造を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の第一の好ましい実施形態によるブレーキシステムの略図である。
【図2】本発明の第一の好ましい実施形態によるマスタ・シリンダの拡大略図である。
【図3】図2で示したような面A−Aで切り取ったマスタ・シリンダの一部の断面図である。
【図4】本発明の第二の好ましい実施形態によるマスタ・シリンダの拡大略図である。
【図5】本発明の第三の好ましい実施形態によるブレーキシステムの略図である。
【図6】図5で示した中圧アキュムレータの断面図である。
【図7】本発明の第四の好ましい実施形態によるブレーキシステムの略図である。
【図8】図7で示したような多機能弁の断面図である。
【図9】本発明の第五の好ましい実施形態によるマスタ・シリンダの拡大図である。
【図10】本発明の第六の好ましい実施形態によるブレーキシステムの略図である。
【図11】本発明の第七の実施形態によるブレーキシステムの略図である。
【図12】図11で示したようなブリード弁の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した流体圧ブレーキ流体を複数の車両ブレーキに適用するブレーキシステムであって、
加圧ブレーキ流体の源と、
第一ブレーキ流体回路と、
前記源から前記第一回路へのブレーキ流体の流れを制御するブースト弁と、
前記第一回路からのブレーキ流体によって起動される第一ブレーキ・アクチュエータと、
前記第一回路からブレーキ流体を適用することによって動作する第二ブレーキ・アクチュエータと、
第二ブレーキ流体回路と、
前記第二回路からのブレーキ流体によって起動される第三ブレーキ・アクチュエータと、
第三回路ブレーキ流体回路と、
前記第三回路からのブレーキ流体によって起動される第四ブレーキ・アクチュエータと、
1次ピストン、第一2次ピストン、および第二2次ピストンを含むマスタ・シリンダとを備え、前記第一および第二2次ピストンが、加圧した流体を前記第一回路から適用して、それぞれ前記第三ブレーキ・アクチュエータを作動させる前記第二回路、および前記第四ブレーキ回路を作動させる前記第三回路内のブレーキ流体に加圧することによって、独立して動作自在に変位することができるブレーキシステム。
【請求項2】
前記加圧ブレーキ流体の源が、電動モータによって駆動されるポンプを含む、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記ポンプからの加圧ブレーキ流体出力の流量が、前記モータの前記動作速度に基づいて決定される、請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記マスタ・シリンダが前記第二回路と流体連絡する第一2次室を含み、前記第一2次ピストンが前記第一2次室内に配置され、さらに前記第三回路と流体連絡する第二2次室を含み、前記第二2次ピストンが前記第二2次室内に配置され、前記第一2次ピストンおよび前記第二2次ピストンが、ブレーキの故障中に前記第三ブレーキ・アクチュエータおよび前記第四ブレーキ・アクチュエータを起動するために、それぞれ前記第一および第二2次室内のブレーキ流体に加圧する、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
さらに、
前記ブースト弁から受け取ったブレーキ流体を前記第一ブレーキ・アクチュエータに協働して供給し、前記第一ブレーキ・アクチュエータから加圧したブレーキ流体を協働して解放するために、前記第一回路と流体連絡する第一組の弁と、
前記ブースト弁から受け取った加圧ブレーキ流体を前記第二ブレーキ・アクチュエータに協働して供給し、前記第二ブレーキ・アクチュエータから加圧したブレーキ流体を協働して解放するために、前記第一回路と流体連絡する第二組の弁と、
前記ブースト弁から受け取った加圧ブレーキ流体を協働して供給し、前記第三ブレーキ・アクチュエータを起動するために前記第二回路に作用し、前記第三ブレーキ・アクチュエータから加圧したブレーキ流体を協働して解放するために、前記第一回路と流体連絡する第三組の弁と、
前記ブースト弁から受け取った加圧ブレーキ流体を協働して供給し、前記第四ブレーキ・アクチュエータを起動するために前記第三回路に作用し、前記第四ブレーキ・アクチュエータから加圧したブレーキ流体を協働して解放するために、前記第一回路と流体連絡する第四組の弁と、
を備える、請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記マスタ・シリンダが1次室を含み、前記ブレーキシステムがさらに、前記1次室および前記第一回路と流体連絡して、その間に配置されたフェールセーフ弁を備え、前記1次室内に配置された前記1次ピストンが、ブレーキの故障中に前記フェールセーフ弁を開いて、前記第一および第二ブレーキ・アクチュエータを起動するために、前記1次室内の前記ブレーキ流体に加圧する、請求項5に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
さらに、第一室、第二室、ペダル・シミュレータ・ピストン、およびペダル・シミュレータばねを含むペダル・シミュレータを備え、前記ペダル・シミュレータ・ピストンが前記第一室と前記第二室とを分離し、前記ペダル・シミュレータばねが、ブレーキ適用動作中にブレーキ・ペダルに抵抗力を協働して提供するために、前記第二室内に配置され、前記第一室が、ブレーキ適用動作中に前記1次室からブレーキ流体を受け取るために、前記マスタ・シリンダの前記1次室と流体連絡し、前記第二室が、ブレーキ解放動作中に前記第一回路からブレーキ流体の戻り通路を提供するために、前記第一回路と流体連絡する、請求項6に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
さらに、前記第一、第二、第三、第四組の弁それぞれ、および前記加圧ブレーキ流体の源と流体連絡して、その間に配置された中圧アキュムレータを備え、前記中圧アキュムレータが、前記加圧ブレーキ流体の源からの中圧ブレーキ流体を保存する第一圧力室と、前記加圧ブレーキ流体の源からの高圧ブレーキ流体を保存する第二圧力室を含み、前記第一圧力室内の前記中圧ブレーキ流体が、低い流量のブレーキ要求中に前記第一回路へと選択的に適用され、前記第二圧力室内の前記高圧ブレーキ流体が、高い流量のブレーキ要求中に前記第一回路へと選択的に適用される、請求項7に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
さらに、前記ペダル・シミュレータと前記フェールセーフ弁の間に配置された減衰オリフィスを備え、前記減衰オリフィスが、低い流体流量の間に前記1次室から前記フェールセーフ弁へのブレーキ流体の加圧流を遅延させる、請求項8に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
さらに、前記1次室、前記ブースト弁、および前記中圧アキュムレータそれぞれと流体連絡するシャトル弁を備え、前記シャトル弁が、前記中圧アキュムレータ内のブレーキ流体圧力が前記1次室内のブレーキ流体圧力より高いブレーキ故障中に、前記1次室からブレーキ流体を提供して、前記第一、第二、第三、および第四ブレーキ・アクチュエータをそれぞれ起動するために、前記シャトル弁を前記中圧アキュムレータと前記ブースト弁の間でポートするシャトル・ボールを含む、請求項8に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
前記シャトル・ボールが、前記1次室内の前記ブレーキ流体圧力が前記中圧アキュムレータ内のブレーキ流体圧力より高いブレーキ故障中に、前記1次室からブレーキ流体を提供して、前記第一、第二、第三、および第四ブレーキ・アクチュエータをそれぞれ起動するために、前記シャトル弁を前記1次室と前記ブースト弁の間でポートする、請求項10に記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記シャトル弁が、前記ブレーキシステム内に閉じ込められたガスをパージするために手動で前記シャトル弁を偏倚するばね起動のピストンを含む、請求項10に記載のブレーキシステム。
【請求項13】
前記マスタ・シリンダが1次室を含み、前記ブレーキシステムがさらに、前記1次室および前記第一回路と流体連絡して、その間に配置されたマスタ・シリンダ遮断弁を備え、前記マスタ・シリンダ遮断弁が付勢されて閉位置にある場合は、前記1次室内に配置された前記1次ピストンが前記ブレーキ流体に加圧して、前記ブレーキ流体が、前記ペダル・シミュレータへと配向され、前記マスタ・シリンダ遮断弁が消勢されて開位置にある場合は、前記ブレーキ流体が、前記第一ブレーキ・アクチュエータおよび前記第二ブレーキ・アクチュエータを起動するために前記第一回路へと配向される、請求項7に記載のブレーキシステム。
【請求項14】
前記マスタ・シリンダ遮断弁が、前記第一回路のブレーキ流体流量に応答して電流を制限される、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項15】
さらに、リザーバおよびリザーバ遮断弁を備え、前記リザーバ遮断が、前記ペダル・シミュレータおよび前記リザーバと流体連絡して、その間に配置され、前記リザーバ遮断弁は、付勢されて開位置にある場合は、ブレーキ流体の流れを前記ペダル・シミュレータから前記リザーバへと配向し、消勢されて閉位置にある場合は、ブレーキ流体の流れを前記第一回路から前記ペダル・シミュレータへと配向する、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項16】
前記リザーバ遮断弁が、前記第一回路内の前記ブレーキ流体の流量に応答して電流を制限される、請求項15に記載のブレーキシステム。
【請求項17】
加圧したブレーキ流体の流量を、同じ車軸と動作自在に係合するような構成である前記第一および第二ブレーキ・アクチュエータに平衡させるために、前記第一組の弁の1つ、および前記第二組の弁の1つが、前記第一ブレーキ・アクチュエータおよび前記第二ブレーキ・アクチュエータそれぞれに適用される前記ブレーキ流体を可変制御する双方向比例弁を含む、請求項5に記載のブレーキシステム。
【請求項18】
さらにリザーバと、前記第一および第二ブレーキ・アクチュエータからの加圧流体圧ブレーキ流体を解放する場合に、加圧ブレーキ流体の流量を調整するために、前記第一組の弁、前記第二組の弁それぞれ、および前記リザーバと流体連絡して、その間に配置された双方向比例弁とを備える、請求項17に記載のブレーキシステム。
【請求項19】
さらに、非ブレーキ適用状態中に前記マスタ・シリンダから閉じ込められたガスをパージするために、前記マスタ・シリンダの前記第二中間室および前記第三中間室を通るブレーキ流体の指向性流れを制御するために、前記第二中間室および第三中間室と流体連絡して、その間に配置されるマスタ・シリンダ・ブリード弁を備える、請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項20】
前記マスタ・シリンダ・ブリード弁を通る前記ブレーキ流体の前記流れが1方向である、請求項19に記載のブレーキシステム。
【請求項21】
前記閉じ込められたガスが、前記非ブレーキ適用状態にて所定の時間隔で前記マスタ・シリンダからパージされる、請求項19に記載のブレーキシステム。
【請求項22】
さらに、
多機能弁を備え、前記多機能弁がピストンおよび多機能弁ハウジングを含み、前記ピストンが多機能弁ハウジング内に配置され、前記ピストンが、前記ブレーキシステムからブレーキ流体を手動で抜くために前記多機能ハウジング内で変位可能であり、さらに、
前記加圧ブレーキ流体の源から過剰圧力状態を緩和する第一ばね式逆止め弁と、
前記マスタ・シリンダ遮断弁と平行して手動で押すことができるようにする第二ばねとを備え、前記第二ばね式逆止め弁は、ブレーキ故障中に前記1次室から前記第一回路へのブレーキ流体の手動プッシュ・スルーを可能にし、さらに、
前記1次室から前記ペダル・シミュレータへのブレーキ流体の流れを制限する減衰オリフィスと、
圧力差が、前記マスタ・シリンダ遮断弁のマスタ・シリンダ側の方が低い場合に、前記ペダル・シミュレータからのブレーキ流体の戻り流れを配向する逆止め弁とを備える、請求項13に記載のブレーキシステム。
【請求項23】
前記マスタ・シリンダが、前記1次ピストンの周囲に配置された誘導コイルを含み、前記誘導コイルが、前記マスタ・シリンダの前記1次ハウジング内で前記1次ピストンの位置を誘導感知するために、前記1次ピストンに高周波電流を誘導する、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項24】
前記ブースト弁が、電気流体圧制御の3方可変比例ブースト弁を含む、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項25】
前記比例ブースト弁が電気制御の3方可変比例ブースト弁を含む、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項26】
さらに、加圧したブレーキ流体を前記ブースト弁に提供するために電動モータによって駆動されるポンプを備え、前記ブースト弁への前記加圧ブレーキ流体の流量が、前記電動モータの電流引き込みによって決定される、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項27】
さらに、加圧ブレーキ流体を前記比例ブースト弁に提供する高圧アキュムレータを備え、前記ブースト弁への加圧ブレーキ流体の流量が、前記高圧アキュムレータを再充填するのに必要な継続時間に基づいて決定される、請求項26に記載のブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−536147(P2007−536147A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511705(P2007−511705)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/016179
【国際公開番号】WO2005/108179
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(599153493)ケルシ・ヘイズ、カムパニ (7)
【Fターム(参考)】