説明

滑り止め塗料

【課題】建築資材に粒を付着させて凸形状を施すことにより、転倒防止対策となり、塗装作業の際の作業性が高く、美観を損ねない塗料、及びその塗料を塗布した建築資材を提供する。
【解決手段】発泡炭化珪素を混入した塗料を鉄、タイル、コンクリート、木部等の建築資材に塗布することで、発泡炭化珪素の粒による凸凹が形成され、建築資材上を歩行する時に滑りにくくすることができる。また、塗料を、混入する発泡炭化珪素と同色に予め調色しておくことで塗装表面の美観をも向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗膜に凹凸をつける塗料とその塗料により表面塗膜を形成した建築資材に関する。
【背景技術】
【0002】
雨等の水で濡れた鉄、タイル、コンクリート、木部の上を歩くと滑り易く危険である。そこで従来は、鉄、タイル、コンクリート、木部等の通路となりうる建築資材に粒を付着させて建築資材表面に凹凸を施すことにより転倒防止対策になるように、砂、炭化珪素、シリカゲルや木炭などを混入した塗料を建築資材に塗布することが行われてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、砂や炭化珪素は比重が大きく塗料に混入させてから塗布する際には沈殿し易く、均一に塗布することが容易でない。また、その欠点を解決するために比重が比較的小さいシリカゲルや木炭などを混入物として混ぜることも試されたが、シリカゲルや木炭は機械的強度が低く、塗装表面を踏みつけたときに簡単に破壊し、塗膜が長期間維持できないという欠点があった。また、混入物と塗料の色が違う場合は混入物の色が塗装表面に透けて現われることがあり、塗装表面の美観を損ねてしまうという欠点もあった。
【0004】
そこで、この発明は、混入物の沈殿が遅く塗布作業の作業性を高めつつ、塗装表面を歩いても塗膜が長期間維持される塗料およびその塗料を塗布した建築資材を提供することを課題とする。また、その際に混入物の色が塗装表面の美観を損ねないことも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明は、機械的強度の高い炭化珪素を混入物の物質として使用する。また、炭化珪素は混入前に予め発泡させておく。発泡させた炭化珪素は比重が1前後となり、従来の塗料に比重が近くなった発泡炭化珪素を塗料に混入させ、建築資材に塗布する。また、発泡炭化珪素を混入させる前の塗料を発泡炭化珪素と同じ色に予め調色しておき、その後に発泡炭化珪素を混入することで、塗装表面の色を均一にし、塗装表面の美観を向上させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発泡炭化珪素はその比重が塗料溶液に近い値を示す。そのため発泡炭化珪素を塗料に混入させた場合、塗料溶液中の発泡炭化珪素の沈殿が遅く、発泡炭化珪素は塗料溶液中において良好な分散状態を長時間保つことができる。その結果、発泡炭化珪素を均一に塗布する塗装作業の作業効率が高くなる。また、本発明の塗料を建築資材に塗布することにより、建築資材の塗装表面に凹凸が生じ、滑りにくく危険の少ない建築資材を提供することができる。さらに、発泡炭化珪素と塗料が同じ色であるため、塗装表面の美観も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態を、次に示す。まず従来の塗料に発泡炭化珪素を混入させる。混入する発泡炭化珪素の比重は0.7〜1.3グラム毎立方センチメートルで、形状は直径0.3〜1.2ミリメートル前後の粒状である。塗料の固形分中発砲炭化珪素の含有量は1〜20重量%の範囲とするのが好ましい。前記範囲未満であると滑り効果が得られにくく、前記範囲を超えると塗膜の強度が低下してくる。より好ましい範囲は5〜15重量%とすると良い。混入する発泡炭化珪素は灰色であるため、塗料の調色も発泡炭化珪素と同じ灰色に混入前に調色しておく。発泡炭化珪素を混入した後、粒状の発泡炭化珪素の表面に塗料をコーティングするために本発明の塗料を撹拌し、撹拌した本発明の塗料を塗料溶液の揮発を防ぐために塗料容器に入れる。塗料容器については、従来の塗料容器をそのまま使用することができる。
【0008】
次に建築資材に本発明の塗料の表面塗膜を形成させる。塗料容器に入れた本発明の塗料は、発泡炭化珪素を混入してから長期間保存されることが多く、その間に発泡炭化珪素が浮いたり沈殿しているため、建築資材に塗布する前に本発明の容器を再度撹拌する。この2度目の撹拌により、本発明の塗料を建築資材に塗布する作業のために十分な時間、発泡炭化珪素は塗料溶液中で良好な分散状態を保つことができる。撹拌した本発明の塗料は、発泡炭化珪素を混入させたこと以外は従来の塗料と同じであるため、従来の塗料塗布用の刷毛やローラーなどを用いて従来の塗料と同じ方法で本発明の塗料を階段の踏み板などの建築資材に簡単に塗布することができる。また塗料には表面張力があるため、塗膜表面は図1に示すように発泡炭化珪素を包んでコーティングした状態となる。塗膜厚みより発砲炭化珪素の直径が大きくなるように塗膜厚みを設けるのが好ましい。建築資材に塗布した後は、従来の塗料と同じ方法で本発明の塗料を乾燥させることにより、建築資材に本発明の塗料による表面塗膜を形成させる。
「実施形態の効果」
【0009】
この実施形態によれば、本発明の塗料の2度目の撹拌を行った後は、粒状の発泡炭化珪素が塗料溶液中で長時間分散状態を保つため、発泡炭化珪素を建築資材表面に均一に分散させ塗布する作業を、従来の砂や発泡させていない炭化珪素を混入させたときよりも容易にすることができる。本発明の塗料により形成された建築資材の表面塗膜は、図1に示すように発泡炭化珪素の部分で凸形状となるため、塗膜表面が濡れた状態でも靴底などとの摩擦を高く維持することができ、降雨時の屋外の鉄製階段などでの転倒事故を防止することができる。また、発泡炭化珪素は修正モース硬度で、ダイヤモンド、炭化ホウ素に次ぐ硬い物質であるため、シリカゲルや木炭などの従来の混入物を使用した場合と比べて、表面塗膜の凸形状を長期間維持することができる。さらには、発泡炭化珪素と塗料溶液の色を同色の灰色にすることにより、塗膜が薄く発泡炭化珪素の色が塗膜に透けて見える場合であっても、建築美観を損ねることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の建築資材の断面図である。
【符号の説明】
1 建築資材(鉄、タイル、コンクリート、木など)。
2 本発明の塗料による表面塗膜(灰色)。
3 表面塗膜内部にコーティングされた発泡炭化珪素(灰色)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料中に発泡炭化珪素を混入したことを特徴とする塗料。
【請求項2】
混入した発泡炭化珪素と同色に調色したことを特徴とする請求項1の塗料。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2の塗料により表面塗膜を形成させたことを特徴とする建築資材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−162758(P2011−162758A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39353(P2010−39353)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510051369)日亞ペイント株式会社 (1)
【Fターム(参考)】