説明

滑り軸受

【課題】スティックスリップ現象等に起因する不快音の発生を更に確実に阻止すること。
【解決手段】滑り軸受1は、円筒状の軸受本体11と、軸受本体11に設けられているスリット14から18と、軸受本体11の内側に軸方向Aに伸びて設けられていると共に軸心周りの方向Bにおいて隣り合うスリット14から18間に配されている直線溝35から39と、軸受本体11の内側に設けられていると共にスリット14から18及び直線溝35から39により方向Bにおいて部分的に分断された摺動面19と、軸受本体11の外面20に設けられた装着溝21と、装着溝21に嵌装された弾性リング22とを具備しており、直線溝35から39の夫々は、端面12側で閉塞されていると共に端面13側で開放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のラック軸等の軸とハウジングとの間に介在される滑り軸受を具備した軸受機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1においては、合成樹脂製の円筒状の軸受本体と、この軸受本体に設けられていると共に軸受本体の軸方向の一方の端面から軸受本体の軸方向の他方の端面に向かって伸びた複数の一方のスリットと、軸受本体に設けられていると共に軸受本体の他方の端面から軸受本体の一方の端面に向かって伸びた他方のスリットと、軸受本体の内側に設けられていると共に両スリットにより軸心周りの方向において部分的に分断された摺動面と、軸受本体の外面に設けられた少なくとも一つの装着溝と、軸受本体の外面から径方向に部分的に突出すると共に軸受本体を縮径させるように装着溝に嵌装された弾性リングとを具備している滑り軸受が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−151289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
滑り軸受は、転がり軸受に比べ、価格が安く、振動吸収性に優れるという利点を有するものの、滑り軸受とラック軸との間に適度のクリアランス(軸受隙間)を必要とするため、ラック軸に生じる振動によりラック軸と滑り軸受との間に衝突音を発生し、自動車を運転する者に不快音として伝達されるという問題がある。この衝突音の発生を抑制すべく滑り軸受とラック軸との間のクリアランスを小さくすると、摩擦トルクが増大する上に、直動開始時と直動中との摩擦トルクの差が大きくなると共にラック軸の外径寸法誤差によるスティックスリップ現象等に起因して直動中において摩擦トルクの変動が生じる等の摩擦トルクの安定性を阻害する要因となる。
【0005】
また、ラック軸は、滑り軸受を介してハウジングに直動自在に支承されるのであるが、ハウジングの内径の真円度は通常それ程高くなく、斯かるハウジング内に合成樹脂からなる滑り軸受を圧入、固定すると、ハウジングの内径の真円度に影響されて滑り軸受が歪んでラック軸との間のクリアランスに差異が生じ、これによっても摩擦トルクの安定性を阻害することになる。
【0006】
特許文献1の滑り軸受は、上述のように、複数のスリット及び装着溝が設けられた円筒状の軸受本体に弾性リングを嵌装してなるため、ラック軸との衝突音をなくし得る上に、直動摩擦抵抗を減少でき、しかも、直動開始時と直動中との直動摩擦抵抗の差を小さくできると共にラック軸の外径寸法誤差及びハウジングの内径の真円度等に影響されないで、安定した直動摩擦抵抗を得ることができ、而して、ラック軸を円滑に支承できてラック軸の直動をよりスムースに行わせることができるものであるが、ラック軸には様々な外径寸法誤差が生じている場合があり、当該外形寸法誤差に基づくスティックスリップ現象等に起因する不快音の発生を如何なる場合においても確実に阻止するのは困難である。
【0007】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、スティックスリップ現象等に起因する不快音の発生を更に確実に阻止し得る滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の滑り軸受は、円筒状の軸受本体と、この軸受本体に設けられていると共に軸受本体の軸方向の一方の端面から軸受本体の軸方向の他方の端面に向かって伸びた一方のスリットと、軸受本体に設けられていると共に軸受本体の他方の端面から軸受本体の一方の端面に向かって伸びた他方のスリットと、軸受本体の内側に軸方向に伸びて設けられていると共に軸心周りの方向において両スリット間に配されている少なくとも一つの直線溝と、軸受本体の内側に設けられていると共に両スリット及び直線溝により軸心周りの方向において部分的に分断された摺動面と、軸受本体の外面に設けられた少なくとも一つの装着溝と、軸受本体の外面から径方向に部分的に突出すると共に軸受本体を縮径させるように装着溝に嵌装された弾性リングとを具備しており、少なくとも一つの直線溝は、軸受本体の軸方向の一方の端面側で閉塞されていると共に軸受本体の軸方向の他方の端面側で開放されている。
【0009】
本発明の滑り軸受によれば、特に、軸受本体の内側に軸方向に伸びて設けられていると共に軸心周りの方向において両スリット間に配されている少なくとも一つの直線溝を具備しており、この直線溝が軸受本体の軸方向の一方の端面側で閉塞されていると共に軸受本体の軸方向の他方の端面側で開放されているために、スティックスリップ現象等に起因する不快音の発生を更に確実に阻止し得る。
【0010】
本発明の滑り軸受では、軸受本体は、当該軸受本体の他方の端面から一方の端面に向かって軸方向に伸びて徐々に縮径して摺動面の環状の端縁で終端していると共に、他方のスリットにより軸心周りの方向において分断されたテーパ面を具備しており、軸受本体の軸方向の一方の端面側に位置する直線溝の一端は、軸受本体の摺動面によって閉塞されており、軸受本体の軸方向の他方の端面側に位置する直線溝の他端は、摺動面よりも軸受本体の他方の端面側に位置するテーパ面に位置していてもよい。
【0011】
本発明の滑り軸受では、直線溝は、摺動面に対して軸受本体の外面側に位置した軸方向に伸びた底面と、この底面の軸心周りの方向における両縁と前記摺動面とに連接した軸方向に伸びた一対の側壁とによって規定されていてもよい。斯かる一対の側壁は、軸受本体の他方の端面から一方の端面に向かって互いに徐々に接近するように形成されていてもよい。
【0012】
本発明の滑り軸受では、少なくとも二つの直線溝を具備しており、一方のスリットが複数個設けられており、当該複数個の一方のスリットのうちの少なくとも一つの一方のスリットは、軸受本体の中心を通る仮想直径線で分断される軸受本体の一方の半円筒部に設けられており、複数個の一方のスリットのうちの残余の一方のスリットは、軸受本体の中心を通る仮想直径線で分断される軸受本体の他方の半円筒部に設けられており、一方の半円筒部に設けられた少なくとも一つの一方のスリットは、仮想直径線に対して平行な方向における幅が軸受本体の一方の半円筒部の内側から外側まで同幅となるように又は当該幅が軸受本体の一方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて徐々に大きくなるように、仮想直径線に対して直交する方向に伸びており、他方の半円筒部に設けられた残余の一方のスリットは、仮想直径線に対して平行な方向における幅が軸受本体の他方の半円筒部の内側から外側まで同幅となるように又は当該幅が軸受本体の他方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて徐々に大きくなるように、仮想直径線に対して直交する方向に伸びており、少なくとも二つの直線溝のうちの一つの直線溝は、複数個の一方のスリットのうちの少なくとも一つの一方のスリットと他方のスリットとの間に位置して一方の半円筒部に設けられており、少なくとも二つの直線溝のうちの残余の直線溝は、複数個の一方のスリットのうちの残余の一方のスリットと他方のスリットとの間に位置して他方の半円筒部に設けられていてもよい。斯かる滑り軸受によれば、一方の半円筒部用の外型と他方の半円筒部用の外型との二つの分割された外型でもって両スリットと共に軸受本体を成形しても、成形後に容易に二つの分割された外型を軸受本体から外側に引き抜いて軸受本体から除去することができ、而して、外型で形成すべきスリットの数に対応した個数に分割された外型を用いなくても外面側を成形でき、複数のスリット及び装着溝を有した滑り軸受を容易に製造できてコスト低減を図り得る。
【0013】
本発明の滑り軸受では、一方の半円筒部に設けられた少なくとも一つの一方のスリットは、一方の半円筒部の内側から外側に向かう方向において平坦であって互いに平行に伸びる一方の半円筒部の一対の平坦壁で規定されていてもよく、一方の半円筒部の内側から外側に向かう方向において平坦に伸びる一方の半円筒部の一方の平坦壁と、一方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて平坦壁から徐々に離反して平坦に伸びる一方の半円筒部の他方の平坦壁とで規定されていてもよく、一方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて互いに徐々に離反して平坦に伸びる一方の半円筒部の一対の平坦壁で規定されていてもよい。
【0014】
他方の半円筒部に設けられた残余の一方のスリットは、他方の半円筒部の内側から外側に向かう方向において平坦であって互いに平行に伸びる他方の半円筒部の一対の平坦壁で規定されていてもよく、他方の半円筒部の内側から外側に向かう方向において平坦に伸びる他方の半円筒部の一方の平坦壁と、他方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて平坦壁から徐々に離反して平坦に伸びる他方の半円筒部の他方の平坦壁とで規定されていてもよく、他方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて互いに徐々に離反して平坦に伸びる他方の半円筒部の一対の平坦壁で規定されていてもよい。
【0015】
本発明の滑り軸受では、弾性リングが装着された軸受本体がハウジングの内周面に挿入されると、軸受本体の外周面から部分的に突出する弾性リングは、ハウジングの内周面に対して締め代をもって弾性変形し、当該弾性変形によりハウジングの内径の真円度等の寸法誤差を吸収できる。また、軸受本体の両端面に対して開口端を有したスリットにより縮径自在となっている本発明の軸受本体は、弾性リングによって縮径されてその内部に挿通されたラック軸を摺動面を介して締め付けるので、ラック軸との間のクリアランスを零にできて、ラック軸との間の衝突をなくし得、結果として不快音として伝達される衝突音の発生をなくし得る上に、直動開始時と直動中との直動摩擦抵抗の差を小さくできると共にラック軸の外径寸法誤差を吸収できて安定した直動摩擦抵抗を得ることができる。
【0016】
滑り軸受は、好ましい例では、ラック軸等が貫通するハウジング内に装着されるが、装着溝に嵌装された弾性リングは、弾性リングの弾性係数にもよるが、その外径が、ハウジングの内周面の径よりも0.3mmから1.0mm程度大きいものを、その内径が、装着溝の底面の径よりも0.3mmから1.0mm程度小さいものを好ましい例として提示し得るが、要は、ハウジングの内周面に対して締め代をもち、かつ摺動面を介してラック軸等の軸を適度な弾性力で締め付けて摺動面とラック軸等の軸との間のクリアランスを零とする程度に、軸受本体の外周面から突出すると共に軸受本体を縮径させるようになっていればよく、具体的には、少なくとも、外径がハウジングの内周面の径よりも大きく、内径が溝の底面の径よりも小さければよい。
【0017】
いずれの弾性リングも、断面円形状の所謂Oリングであってよいが、その他の断面X字形状、断面U字形状又は断面台形状のリング等であってもよく、弾性リングを形成する弾性材料としては、天然ゴム、合成ゴム、弾性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばポリエステルエラストマーのいずれであってもよい。
【0018】
本発明においては、軸受本体には一方及び他方のスリットの夫々を複数個設けてもよく、一方及び他方のスリットは、軸心周りの方向において交互に配されていてもよく、各摺動面は、軸受本体の両端面から軸方向において所定距離だけ離れた位置間で軸受本体の内側に設けられていてもよく、また、好ましい例では、軸受本体の外周面には軸方向において互いに離間された少なくとも二つの装着溝が設けられており、各装着溝に軸受本体の外周面から部分的に突出すると共に軸受本体を縮径させるように弾性リングが嵌装されており、軸方向において二つの装着溝間に摺動面の軸方向の中央部が位置しており、摺動面は、軸方向において二つの装着溝間で軸受本体の内側に設けられていてもよく、また軸方向において二つの装着溝を越えて軸受本体の内側に設けられていてもよい。
【0019】
装着溝に嵌装される弾性リングは、装着溝において隙間なしに軸受本体にぴったりと配されている必要はなく、軸受本体に対して若干の隙間をもって装着溝に嵌装されていてもよく、軸受本体の外周面から径方向に部分的に突出する弾性リングの部位がハウジングによって正規に押圧された場合に変形して装着溝を完全に埋めるようになっていてもよく、或いはこのようにハウジングによって正規に押圧された場合にも軸受本体に対して若干の隙間をもつ一方、意図しない外力によりハウジングがラック軸に対して正規の位置から偏心して部分的にハウジングによって強く押圧された場合には斯かる過度に押圧された部位で変形して溝を完全に埋めて剛性を増大し、これによりハウジングの意図しない偏心に逆らうようになっていてもよい。
【0020】
滑り軸受は、好ましくは、ハウジングに対して自由端部となる部位での軸受本体の径方向の最大厚みの0.3%から10%の幅をもったクリアランスがハウジングの内周面と自由端部となる部位での軸受本体の外周面との間に生じるようになっている。クリアランスが0.3%よりも少ないと、意図しない外力によりハウジングがラック軸に対して正規の位置から偏心した場合に、ハウジングが容易に軸受本体に接触して異常音等を発生させる虞があり、クリアランスが10%よりも大きいと、意図しない外力によりハウジングがラック軸に対して正規の位置から容易に大きく偏心して軸受機構による調心効果を低下させる虞があり、したがって、上記のようになっていると、ハウジングの軸受本体への接触を回避できてハウジングをラック軸に対して正規の位置に確実に保持できる。
【0021】
本発明の滑り軸受では、ラック軸の軸方向の移動においてハウジング内に対するハウジング外の空気の大きな出入を確保するために、ハウジング内とハウジング外とを連通させる通気用溝を軸受本体の外面側又は内面側に設けてもよい。
【0022】
好ましい例では、軸受本体の内側は、軸受本体の一方の端面から摺動面の軸方向の一端まで伸びると共に徐々に縮径した一方のテーパ面と、軸受本体の他方の端面から摺動面の軸方向の他端まで伸びると共に徐々に縮径した他方のテーパ面とを具備しており、ここで、一方のテーパ面は、他方のテーパ面の軸方向長より長い軸方向長を有していてもよく、一方のテーパ面は、他方のテーパ面のテーパ角度より大きなテーパ角度を有していてもよく、斯かるテーパ面を有した滑り軸受によれば、一方のテーパ面側から軸受本体をラック軸の外周面へ容易に装着できる結果、組付け工数を大幅に削減できる。
【0023】
本発明において、軸受本体は、合成樹脂から一体成形されたものであり、軸受本体を形成する合成樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂及び四ふっ化エチレン樹脂などの熱可塑性合成樹脂を好ましい例として挙げることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スティックスリップ現象等に起因する不快音の発生を更に確実に阻止し得る滑り軸受を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好ましい例において滑り軸受の図2に示すI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図1に示す例の滑り軸受の右側面説明図である。
【図3】図1に示す例の滑り軸受の左側面説明図である。
【図4】図1に示す例において滑り軸受の平面説明図である。
【図5】図3に示すV−V線矢視拡大断面図である。
【図6】図5に示すVI−VI線矢視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を、好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【実施例】
【0027】
図1から図6において、本例の滑り軸受1は、ハウジング2の円筒状の内周面3とハウジング2内に挿着されるラック軸4の円筒状の外周面5との間に介在されるようになっている。
【0028】
滑り軸受1は、円筒状の軸受本体11と、軸受本体11に設けられていると共に軸受本体11の軸方向Aの一方の端面12から軸受本体11の軸方向Aの他方の端面13に向かって伸びた2個一組の合計2組のスリット14及び15と、軸受本体11に設けられていると共に軸受本体11の他方の端面13から軸受本体11の一方の端面12に向かって伸びた2個一組の合計3組のスリット16、17及び18と、軸受本体11の内側に軸方向Aに伸びて設けられていると共に軸心周りの方向Bにおいてスリット14及び16間、スリット15及び17間、スリット14及び18間、スリット15及び18間、スリット16間並びにスリット17間のうちの少なくとも一つの間に配されている少なくとも一つの直線溝、本例では、軸心周りの方向Bにおいてスリット14及び16間とスリット15及び17間との夫々に配された2個一組の合計2組の直線溝35及び36並びに方向Bにおいてスリット14及び18間とスリット15及び18間と2個のスリット16間と2個のスリット17間との夫々に配された2個一組の合計3組の直線溝37、38及び39と、軸受本体11の内側に設けられていると共にスリット14から18及び直線溝35から39により軸心周りの方向Bにおいて部分的に分断された円筒状の摺動面19と、軸受本体11の外面20に設けられた少なくとも一つ、本例では2つの装着溝21と、軸受本体11の外面20から径方向外方向に部分的に突出すると共に軸受本体11を縮径させるように装着溝21の夫々に嵌装された弾性リング22と、2つの装着溝21間に配されていると共に軸受本体11の外面20に設けられた3つの環状溝25とを具備している。
【0029】
スリット14及び15により方向Bにおいて分断されていると共にハウジング2の円環状の係止溝23に嵌合される鍔部24を一体的に有した軸受本体11は、その内側に、摺動面19に加えて、端面12から端面13に向かって軸方向Aに伸びると共に徐々に縮径して摺動面19の一方の端縁で終端し、しかも、スリット14及び15により方向Bにおいて分断されたテーパ面31と、端面13から端面12に向かって軸方向Aに伸びると共に徐々に縮径して摺動面19の他方の環状の端縁で終端し、しかも、スリット16から18により方向Bにおいて分断されたテーパ面32と、軸受本体11の外側であって端面13側にスリット14及び15に連通させて設けた通気用溝85及び86とを具備しており、摺動面19の一方の端縁は、スリット14及び15により方向Bにおいて分断されており、摺動面19の他方の端縁は、スリット16から18及び直線溝35から39により方向Bにおいて分断されている。
【0030】
端面12において開口すると共に軸方向Aにおいて端面13側の装着溝21を超えて伸びた複数個の一方のスリット14及び15のうちの少なくとも一つの一方のスリット、本例では2個のスリット14の夫々は、軸受本体11の中心Oを通る仮想直径線41で分断される軸受本体11の一方の半円筒部42に設けられており、複数個の一方のスリット14及び15のうちの残余の一方のスリット、本例では2個のスリット15の夫々は、軸受本体11の中心Oを通る仮想直径線41で分断される軸受本体11の他方の半円筒部43に設けられている。
【0031】
半円筒部42に設けられた2個のスリット14の夫々は、仮想直径線41に対して平行な方向Cにおける幅Dが半円筒部42の内側44から外側45に向かうに連れて徐々に大きくなるように、仮想直径線41に対して直交する方向Eに伸びており、スリット14の夫々は、仮想直径線41に対して直交する方向Eであって半円筒部42の内側44から外側45に向かう方向に平坦に伸びる半円筒部42の平坦壁46と、半円筒部42の内側44から外側45に向かうに連れて平坦壁46から徐々に離反して平坦に伸びる半円筒部42の平坦壁48とで規定されている。
【0032】
2個のスリット14の夫々は、中心Oを通ると共に仮想直径線41に直交した直交仮想直径線49に関して夫々略45°の角度をもって対称に配されている。
【0033】
半円筒部43に設けられた2個のスリット15の夫々は、2個のスリット14の夫々と同様に、仮想直径線41に対して平行な方向Cにおける幅Dが半円筒部43の内側54から外側55に向かうに連れて徐々に大きくなるように、仮想直径線41に対して直交する方向Eに伸びており、スリット15の夫々は、仮想直径線41に対して直交する方向Eであって半円筒部43の内側54から外側55に向かう方向に平坦に伸びる半円筒部43の平坦な平坦壁56と、半円筒部43の内側54から外側55に向かうに連れて平坦壁56から徐々に離反して伸びる半円筒部43の平坦壁58とで規定されている。
【0034】
2個のスリット15の夫々は、2個のスリット14の夫々と同様に、中心Oを通ると共に仮想直径線41に直交した直交仮想直径線49に関して夫々略45°の角度をもって対称に配されていると共に仮想直径線41に関して2個のスリット14の夫々に対して対称に配されている。
【0035】
半円筒部42に設けられた2個のスリット16の夫々は、仮想直径線41に対して直交する方向Eであって軸受本体11の半円筒部42の内側44から外側45に向かう方向に、当該仮想直径線41に対して平行な方向Cにおける幅dが同幅となるように伸びており、スリット16の夫々は、仮想直径線41に対して直交する方向Eに平坦であって互いに平行に伸びている半円筒部42の一対の平坦壁61で規定されており、方向Bにおいて2個のスリット14の間に配されていると共に直交仮想直径線49に関して夫々略20°の角度をもって対称に配されている。
【0036】
半円筒部43に設けられた2個のスリット17の夫々は、仮想直径線41に対して直交する方向Eであって軸受本体11の半円筒部43の内側54から外側55に向かう方向に、当該仮想直径線41に対して平行な方向Cにおける幅dが同幅となるように伸びており、スリット17の夫々は、仮想直径線41に対して直交する方向Eに平坦であって互いに平行に伸びている半円筒部43の一対の平坦壁62で規定されており、方向Bにおいて2個のスリット15の間に配されていると共に直交仮想直径線49に関して夫々略20°の角度をもって対称に配されている。
【0037】
半円筒部42と半円筒部43との境界部に設けられた2個のスリット18の夫々は、仮想直径線41に対して平行な方向Cであって半円筒部42と半円筒部43との境界部における軸受本体11の半円筒部42及び43の内側44及び54から外側45及び55に向かう方向に、当該仮想直径線41に対して直交する方向Eにおける幅dが同幅となるように伸びており、スリット18の夫々は、仮想直径線41に対して平行な方向Cに平坦であって互いに平行に伸びている半円筒部42及び43の一対の平坦壁63で規定されており、スリット18の夫々は、仮想直径線41上であって直交仮想直径線49に関して夫々略90°の角度をもって対称に配されている。
【0038】
軸方向Aに伸びて軸受本体11に設けられた直線溝35から39の夫々は、軸受本体11の軸方向Aの端面12側で閉塞されていると共に軸受本体11の軸方向Aの端面13側で開放されている。直線溝35から39の夫々の一端65は、端面12側に位置していると共に軸受本体11の摺動面19によって閉塞されており、直線溝35から39の夫々の他端66は、摺動面19よりも軸受本体11の端面13側であってテーパ面32の軸方向Aにおける中間部に位置している。直線溝35から39の夫々の軸方向Aの長さは、本例では夫々互いに等しい。
【0039】
2個一組の合計2組の直線溝35及び36のうちの一方の直線溝、本例では2個の直線溝35の夫々は、方向Bにおいてスリット14及び16間に配されており、軸受本体11の中心Oを通る仮想直径線41で分断される軸受本体11の一方の半円筒部42に設けられている。半円筒部42に軸方向Aに伸びて設けられた2個の直線溝35のうちの一方は、例えば図5及び図6に示すように、断面矩形状であってその角部にR面取り等の面取りが施されており、摺動面19に対して外面20側に位置した底面75と、底面75の方向Bにおける両縁と摺動面19とに連接した一対の側壁76とによって規定されている。底面75は、軸方向Aに伸びた平坦面77と、端面12側において平坦面77に連接していると共に一端65において端面13から端面12に向かうに従って半円筒部42の外側45から内側44に向かって傾斜した傾斜面78とからなる。一対の側壁76の夫々は、軸方向Aに互いに平行に伸びた平坦面からなり、他端66においてテーパ面32と連接する一対の側壁76の夫々の連接縁部79は、テーパ面32と同様に傾斜している。
【0040】
2個の直線溝35のうちの他方は、2個の直線溝35のうちの一方と同様に形成されているので図に適宜同符号を付してその詳細な説明を省略する。2個の直線溝35の夫々は、中心Oを通ると共に仮想直径線41に直交した直交仮想直径線49に関して互いに等しい角度をもって対称に配されている。直線溝36の底面75の方向Bに関する幅は直線溝35の方向Bに関する幅と等しい。直線溝36の溝深さは直線溝35の溝深さと等しい。
【0041】
2個一組の合計2組の直線溝35及び36のうちの他方の直線溝、本例では2個の直線溝36の夫々は、方向Bにおいてスリット15及び17間に配されており、軸受本体11の中心Oを通る仮想直径線41で分断される軸受本体11の他方の半円筒部43に設けられている。半円筒部43に軸方向Aに伸びて設けられた2個の直線溝36の夫々は、半円筒部42に設けられた2個の直線溝35の夫々と同様に形成されているので図に適宜同符号を付してこれらの詳細な説明を省略する。2個の直線溝36の夫々は、中心Oを通ると共に仮想直径線41に直交した直交仮想直径線49に関して互いに等しい角度をもって対称に配されており、前記角度は、中心Oを通る直交仮想直径線49に関する2個の直線溝35の夫々の上述の角度と等しい。
【0042】
2個の直線溝37の夫々は、方向Bにおいてスリット14及び18間に配されて半円筒部42に設けられており、2個の直線溝38の夫々は、方向Bにおいてスリット15及び18間に配されて半円筒部43に設けられており、2個の直線溝39のうちの一方は、方向Bにおいて2個のスリット16間に配されて半円筒部42に設けられており、2個の直線溝39のうちの他方は、方向Bにおいて2個のスリット17間に配されて半円筒部43に設けられている。直線溝37から39の夫々は、直線溝35及び36と略同様に形成されているので図に適宜同符号を付してこれらの詳細な説明を省略する。直線溝37から39の夫々の底面75の方向Bに関する幅は、夫々互いに等しく、直線溝35及び36の方向Bに関する幅よりも狭い。直線溝37から39の溝深さは直線溝35及び36の溝深さと夫々等しい。2個の直線溝37の夫々は直交仮想直径線49に関して互いに等しい角度をもって対称に配されており、2個の直線溝38の夫々は直交仮想直径線49に関して互いに等しい角度をもって対称に配されており、2個の直線溝39の夫々は直交仮想直径線49上に位置して対称に配されている。半円筒部42において、2個の直線溝37間には2個の直線溝35及び2個の直線溝39のうちの一方が配されており、2個の直線溝35間には2個の直線溝39のうちの一方が配されている。半円筒部43において、2個の直線溝38間には2個の直線溝36及び2個の直線溝39のうちの他方が配されており、2個の直線溝36間には2個の直線溝39のうちの他方が配されている。
【0043】
本例では、軸受本体11には、方向Bにおいて隣接するスリット14から18間のすべてに直線溝35から39が設けられているが、例えば、スリット14及び16間、スリット15及び17間、スリット14及び18間、スリット15及び18間、2個のスリット16間及び2個のスリット17間の少なくとも一つの間に少なくとも一つの直線溝が設けられていてもよい。
【0044】
尚、直線溝35から39の少なくとも一つの底面75は、例えば、端面13側からみて凹曲面又は凸曲面となるように形成されていてもよく、直線溝35から39の少なくとも一つの底面75の方向Bにおける幅は、例えば、端面13から端面12に向かうに従って漸次狭まるように形成されていてもよく、直線溝35から39の少なくとも一つの溝深さは、例えば、端面13から端面12に向かうに従って外面20から摺動面19側に向かうように、軸方向Aに伸びる線に対して傾斜して、端面13側で深く、端面12側で浅くなっていてもよく、直線溝35から39の少なくとも一つの一対の側壁76は、端面13から端面12に向かうに従って互いに徐々に接近するように形成されていてもよい。
【0045】
直線溝35から39には、潤滑剤が配されていてもよく、斯かる場合には、潤滑剤はラック軸4の軸方向Aの移動等によって摺動面19上に供給される。直線溝35から39に配された潤滑剤の摺動面19への供給は、当該直線溝35から39の幅及びR面取り等の面取り形状等の大きさを適宜変更することによって好適に調整し得る。
【0046】
通気用溝85は、端面13から軸方向Aに伸びてスリット14の軸方向Aの他端の夫々に接続されていると共に軸受本体11の外面20に設けられており、斯かる通気用溝85は、傾斜した底面87と、平坦壁46に連接されていると共に方向Eに平坦に伸びている平坦壁88と、平坦壁48に連接されていると共に方向Eに伸びている平坦壁89とによって規定されている。
【0047】
通気用溝86は、端面13から軸方向Aに伸びてスリット15の軸方向Aの他端の夫々に接続されていると共に軸受本体11の外面20に設けられており、斯かる通気用溝86は、傾斜した底面90と、平坦壁56に連接されていると共に方向Eに平坦に伸びている平坦壁91と、平坦壁58に連接されていると共に方向Eに伸びている平坦壁92とによって規定されている。
【0048】
通気用溝85及び86は、端面13から端面12に向かうに連れて徐々に深くなっていてもよい。
【0049】
鍔部24を含めて軸受本体11は、合成樹脂、例えばポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性合成樹脂から一体成形されたものである。
【0050】
軸受本体11の外面20に軸方向Aにおいて互いに離間されて設けられている二つの装着溝21のうちの一方は、軸受本体11の外面20側での環状の二つの突起71a及び72aにより規定されており、軸受本体11の外面20に軸方向Aにおいて互いに離間されて設けられている二つの装着溝21のうちの他方は、軸受本体11の外面20側での環状の二つの突起71b及び72bにより規定されており、突起71a及び72a並びに突起71b及び72bにおける軸受本体11の外面20の径は、夫々互いに等しい一方、ハウジング2の内周面3の径より小さく、突起71a及び72a並びに突起71b及び72bにおける軸受本体11の外面20とハウジング2の内周面3との間に環状の隙間(クリアランス)74が生じるようになっている。
【0051】
Oリングからなる各弾性リング22は、ハウジング2の内周面3に嵌装されていない一方、装着溝21に装着されている状態で、ハウジング2の内周面3の径よりも大きい外径を有し、ハウジング2の内周面3に嵌装されていない上に、装着溝21にも装着されていない状態で、装着溝21の底面75の径よりも小さい内径を有しており、而して、軸受本体11の突起71a及び72a並びに突起71b及び72bにおける外面20から部分的に突出すると共に軸受本体11を縮径させるように装着溝21に嵌装されている弾性リング22の夫々は、締め付けられて変形して部分的に外面20から突出するようになっている。
【0052】
各弾性リング22は、その外周面で締め代をもってハウジング2の内周面3に嵌装されており、軸受本体11は、その外面20とハウジング2の内周面3との間に隙間74をもってハウジング2の内周面3に配されていると共に摺動面19を介してラック軸4を弾性リング22の弾性力をもって当該ラック軸4を軸方向Aに移動自在に締め付けてラック軸4の外周面5に装着されている。
【0053】
例えば図4及び図5に示すように、軸受本体11の外面20に軸方向Aにおいて互いに離間されて設けられている三つの環状溝25のうちの軸方向Aの端面12側に位置する一つの環状溝25は、突起72aと軸方向Aにおいて当該突起72aに対して間隔をもって隣接して軸受本体11の外面20側に設けられた突起95とによって規定されており、三つの環状溝25のうちの軸方向Aの端面13側に位置する一つの環状溝25は、突起72bと軸方向Aにおいて当該突起72bに対して間隔をもって隣接して軸受本体11の外面20側に設けられた突起96とによって規定されており、三つの環状溝25のうちの軸方向Aの中間に位置する一つの環状溝25は、突起95と突起96とによって規定されている。突起95及び96における軸受本体11の外面20の径は、突起71a及び72a並びに突起71b及び72bにおける軸受本体11の外面20の径と夫々等しい。
【0054】
軸方向Aに移動自在なラック軸4は、一方ではステアリングホイールに、他方では車輪に夫々連結機構を介して連結されており、斯かる連結機構は知られているので説明を省く。
【0055】
以上の滑り軸受1では、軸受本体11の外面20の装着溝21に弾性リング22を嵌装することにより、スリット14から18を有する軸受本体11は、弾性リング22の弾性圧縮力により縮径されており、こうして軸受本体11が縮径された状態の滑り軸受1はハウジング2内に配置され、その後、軸受本体11の内側にラック軸4を挿入することにより、軸受本体11は弾性リング22の弾性圧縮力に抗してスリット14から18により拡径すると共にラック軸4はその外周面5で弾性リング22の弾性圧縮力をもって摺動面19により締め付けられることになる一方、各弾性リング22は、その外周面で締め代をもってハウジング2の内周面3に接触されることになり、ハウジング2の円環状の係止溝23に嵌合された鍔部24により滑り軸受1は、ハウジング2に対して位置決めされることになる。
【0056】
したがって、摺動面19とラック軸4の外周面5との間のクリアランスは零となり、軸受本体11とラック軸4との間の衝突をなくし得、結果として運転者に不快音として伝達される衝突音の発生はなく、軸受本体11の装着溝21に嵌装された弾性リング22はハウジング2の内周面3に対して締め代をもっているので、弾性リング22は弾性変形し、当該弾性変形によりハウジング2の内径の真円度等の寸法誤差を吸収できる。
【0057】
滑り軸受1では、軸受本体11の内側に軸方向Aに伸びて設けられていると共に軸心周りの方向Bにおいて両スリット間に配されている少なくとも一つの直線溝、本例ではスリット14及び16間、スリット15及び17間、スリット14及び18間、スリット15及び18間、2個のスリット16間及び2個のスリット17間に夫々設けられた直線溝35から39を具備しており、直線溝35から39が軸受本体11の軸方向Aの一方の端面12側で閉塞されていると共に軸受本体11の軸方向Aの他方の端面13側で開放されているために、例えばラック軸4の軸方向Aの移動に基づくスティックスリップ現象等に起因する不快音の発生を更に確実に阻止し得、また、極微量の摺動音と自動車のメカニカルノイズとの共鳴をもなくし得る。
【0058】
滑り軸受1ではまた、ハウジング2内とハウジング2外とをスリット14及び15並びに通気用溝85及び86を介して連通させることができるので、ラック軸4の軸方向Aの移動においてハウジング2内に対するハウジング2外の空気の出入を確保でき、しかも、通気用溝85用の突起を有した半円筒部42用の外型と通気用溝86用の突起を有した半円筒部43用の外型との二つの分割された外型でもって両スリット14及び15並びに通気用溝85及び86と共に軸受本体11の外面側を成形しても、成形後に容易に両外型を方向Eに互いに逆に夫々引き抜いて当該両外型を軸受本体11から除去することができる。
【0059】
加えて、滑り軸受1では、2つのスリット14は、幅Dが半円筒部42の内側44から外側45に向かうに連れて徐々に大きくなるように方向Eに伸びており、2つのスリット15は、幅Dが半円筒部43の内側54から外側55に向かうに連れて漸次大きくなるように方向Eに伸びているために、半円筒部42用の外型と半円筒部43用の外型との二つの分割された外型でもって両スリット14及び15と共に軸受本体11の外面20側を成形しても、成形後に容易に両外型を方向Eにおいて互いに逆に夫々引き抜いて軸受本体11から除去することができる。滑り軸受1において、軸受本体11の摺動面19を含む内面側及びスリット16、17及び18は、軸受本体11の外面20側の成形と共に、スリット16、17及び18に相当する突起を有した成形用の中子を外型内に配置して成形され、成形後に中子を軸受本体11内から端面13側に引き抜くことにより成形される。
【0060】
したがって、滑り軸受1を製造するには、軸受本体11の外面20側を成形する半円筒部42用の外型と半円筒部43用の外型との2つの外型と軸受本体11の内面側を成形する中子との成形型を準備すればよいことになり、而して、複数のスリット14及び15並びに装着溝21を有した滑り軸受1を容易に製造できてコスト低減を図り得る。
【0061】
スリット14及び15としては、軸受本体11の半円筒部42及び43の内側44及び54から外側45及び55に向かうに連れて同幅となるようになっていても、方向Eであって互いに平行に伸びている半円筒部42及び43の一対の平坦壁で規定されていてもよく、更には、内側44及び54から外側45及び55に向かうに連れて互いに徐々に離反して平坦に伸びる半円筒部42及び43の一対の平坦壁で規定されていてもよい。
【0062】
滑り軸受1は、2個一組の合計2組の直線溝35及び36並びに2個一組の合計3組の直線溝37、38及び39に代えて、例えば、軸受本体11の内側に軸方向Aに伸びて設けられていると共に軸心周りの方向Bにおいてスリット14及び16間、スリット15及び17間、スリット14及び18間、スリット15及び18間、スリット16間並びにスリット17間に夫々配されている軸方向Aに伸びた複数の直線溝(図示せず)を具備し、当該複数の直線溝のうちの一の直線溝は、端面12側で閉塞されていると共に端面13側で開放されて軸受本体11に設けられており、軸心周りの方向Bにおいて前記一の直線溝に隣接する他の一の直線溝は、端面13側で閉塞されていると共に端面12側で開放されていてもよく、斯かる滑り軸受1においても上述と同様の効果を奏し得る。
【符号の説明】
【0063】
1 滑り軸受
11 軸受本体
12、13 端面
14、15、16、17、18 スリット
19 摺動面
20 外面
21 装着溝
22 弾性リング
35、36、37、38、39 直線溝
25 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の軸受本体と、この軸受本体に設けられていると共に軸受本体の軸方向の一方の端面から軸受本体の軸方向の他方の端面に向かって伸びた一方のスリットと、軸受本体に設けられていると共に軸受本体の他方の端面から軸受本体の一方の端面に向かって伸びた他方のスリットと、軸受本体の内側に軸方向に伸びて設けられていると共に軸心周りの方向において両スリット間に配されている少なくとも一つの直線溝と、軸受本体の内側に設けられていると共に両スリット及び直線溝により軸心周りの方向において部分的に分断された摺動面と、軸受本体の外面に設けられた少なくとも一つの装着溝と、軸受本体の外面から径方向に部分的に突出すると共に軸受本体を縮径させるように装着溝に嵌装された弾性リングとを具備しており、少なくとも一つの直線溝は、軸受本体の軸方向の一方の端面側で閉塞されていると共に軸受本体の軸方向の他方の端面側で開放されている滑り軸受。
【請求項2】
軸受本体は、当該軸受本体の他方の端面から一方の端面に向かって軸方向に伸びて徐々に縮径して摺動面の環状の端縁で終端していると共に、他方のスリットにより軸心周りの方向において分断されたテーパ面を具備しており、軸受本体の軸方向の一方の端面側に位置する直線溝の一端は、軸受本体の摺動面によって閉塞されており、軸受本体の軸方向の他方の端面側に位置する直線溝の他端は、摺動面よりも軸受本体の他方の端面側に位置するテーパ面に位置している請求項1に記載の滑り軸受。
【請求項3】
直線溝は、摺動面に対して軸受本体の外面側に位置した軸方向に伸びた底面と、この底面の軸心周りの方向における両縁と前記摺動面とに連接した軸方向に伸びた一対の側壁とによって規定されている請求項1又は2に記載の滑り軸受。
【請求項4】
一対の側壁は、軸受本体の他方の端面から一方の端面に向かって互いに徐々に接近するように形成されている請求項3に記載の滑り軸受。
【請求項5】
少なくとも二つの直線溝を具備しており、一方のスリットが複数個設けられており、当該複数個の一方のスリットのうちの少なくとも一つの一方のスリットは、軸受本体の中心を通る仮想直径線で分断される軸受本体の一方の半円筒部に設けられており、複数個の一方のスリットのうちの残余の一方のスリットは、軸受本体の中心を通る仮想直径線で分断される軸受本体の他方の半円筒部に設けられており、一方の半円筒部に設けられた少なくとも一つの一方のスリットは、仮想直径線に対して平行な方向における幅が軸受本体の一方の半円筒部の内側から外側まで同幅となるように又は当該幅が軸受本体の一方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて徐々に大きくなるように、仮想直径線に対して直交する方向に伸びており、他方の半円筒部に設けられた残余の一方のスリットは、仮想直径線に対して平行な方向における幅が軸受本体の他方の半円筒部の内側から外側まで同幅となるように又は当該幅が軸受本体の他方の半円筒部の内側から外側に向かうに連れて徐々に大きくなるように、仮想直径線に対して直交する方向に伸びており、少なくとも二つの直線溝のうちの一つの直線溝は、複数個の一方のスリットのうちの少なくとも一つの一方のスリットと他方のスリットとの間に位置して一方の半円筒部に設けられており、少なくとも二つの直線溝のうちの残余の直線溝は、複数個の一方のスリットのうちの残余の一方のスリットと他方のスリットとの間に位置して他方の半円筒部に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の滑り軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57717(P2012−57717A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201478(P2010−201478)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】