説明

滑落補助板

【課題】結露などの悪環境下においてもパウチ商品の自動販売機販売におけるシューター上でのパウチ商品滞留を無くする機能を実現するに際して、シューターの取外しが発生しないなど作業性が高く、低コストであり、多機種のシューターへ使用できる汎用性および長期使用への耐久性を実現する。
【解決手段】本発明である滑落補助板は、凸部と凹部が左右方向に複数に連続して前後方向に伸びている波板形状をもつ滑落部材を主部材として、接着層や磁性体を含有するマグネットシートを介してシューターに貼付して使用する。滑落部材の凹凸のレールにより接触面の少なくなったパウチ商品は結露時においても円滑にシューター上を滑り、取出し口まで達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機に対して使用するものであり、特にパウチ容器商品を販売する際に安定的に商品取出し口まで移動させることを目的とした自動販売機のシューターに取付ける滑落補助板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パウチ容器に入った飲料や食品(以下パウチ商品という)を販売する自動販売機が市場に出現している。その中で、二枚のレールにパウチ商品のスパウト部分を吊下げてソレノイドを駆動装置としてパウチ商品をレール外に払い出し、落下させて、シューター部分を滑らせて商品取出し口まで移動させ販売するパウチ容器送出装置がある(例えば特許文献1参照)。当該装置を取り付けた自動販売機において、パウチ商品がシューター部分を滑って移動しなくてはならず、安定的な移動のためにはシューター上の摩擦抵抗が小さくなくてはならない。
【0003】
シューター部分の摩擦を低減させる方法としては、従来からポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素樹脂を使用してシューターを処理する方法がある(例えば特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2008−262339
【特許文献2】特願平11−162963
【特許文献3】特願2001−93513
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にいうパウチ容器送出装置は新規の自動販売機のみならず、中古の自動販売機(以下、中古自販機という)にも取り付けることができ、飲料会社の中古自販機活用の道を拓いている。一方、中古自販機はたくさんの機種があり、パウチ商品が滑って移動しなくてはならないシューター部分についてはその角度や材質がさまざまで、機種によってはパウチ商品が取出し口まで達する確率が低いものが存在する。
【0006】
更に、古い年式の機種ではシューターが部分的に傷や浅い腐食を起こしているものもあり、このようなシューターをもつ中古自販機においても、パウチ商品が取出し口まで達する確率が低いものが存在する。
【0007】
シューターの滑り性を改善するに際して、先行技術の如くフッ素樹脂をシューターに塗装する方法がある。しかし、フッ素系樹脂を用いた塗装をしたシューターに水滴を噴霧し、かつパウチ商品の落下の高さを最低にした劣悪な環境での滑り性試験において、パウチ商品がシューター上で停止する確率は0.4%と実運用にはやや不安の残る値であった。
【0008】
また、フッ素樹脂等をシューターに塗装する方法は、(1)自動販売機からのシューターを取外す(2)シューターにフッ素樹脂等の塗装処理を行う(3)自動販売機に取付ける、といった工程が必要となり、原材料も含め高コストになってしまう。更に、特許文献1にいうパウチ容器送出装置の中古自販機への取付けは、自動販売機専用の工場で行うのみではなく市場に設置している自動販売機にも現地で取付けを行っている。現地取付けの自動販売機に際してシューターを取外し、新たにフッ素樹脂等の処理をしたシューターを取付け、取外したシューターを持ち帰って次の取付けの為にシューターを在庫として保管するというオペレーションは、実運用上極めて煩雑となる。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目して案出されたものであり、その目的はシューターの滑り性を改善するとともに、安価で、取付け作業の容易性を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明である滑落補助板は、複数の凹凸のある波板状のレール構造を有する部材であり、中古を含めた既存の自動販売機のシューターのパウチ商品の動線上に貼付することによりパウチ商品を商品取出し口まで導く。
【0011】
滑落補助板は、通常自動販売機のシューター部に用いられることのない柔軟性ある合成樹脂を主素材として構成されており、様々な形状のシューターへの貼付に適応できる。
【0012】
また、パウチ商品が自動販売機シューター用滑り部材上に落下した際の衝撃で、貼付部が剥離しないように下層はマグネットシートで構成され、磁力による固定力を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明はシューターのフッ素樹脂加工では不十分であったパウチ商品の滑りを完全なものとし、中古自販機・新品自販機を問わずすべてのシューターに対応でき、一定レベルの耐久性を有し、安価で、取付けが容易であることを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の使用状態を表す斜視図
【図2】本発明を取付けたシューターの平面図
【図3】本発明の部分斜視図
【図4】本発明の部分斜視図
【図5】本発明の部分斜視図
【図6】本発明の斜視図
【図7】本発明を取付けたシューターの断面図
【図8】本発明の正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(パウチ商品送出基本動作の確認)
図1を参照にパウチ商品送出の基本動作を説明する。自動販売機の庫室は庫壁32で仕切られており、庫室上部の金具で吊下げられたハウジング20にはパウチ商品40を吊下げてストックするパウチ容器送出装置21が付設され、販売行為に応じてパウチ商品40はパウチ容器送出装置21の先端より払出される。払出されたパウチ商品40はハウジングカバー22の傾斜面を滑り、シューター30上に落下して更にシューター30上を滑って、シューター30の末端に繋がる取出し口まで運ばれる。
【0016】
(課題の確認)
前述のとおり中古自販機へパウチ容器送出装置21を使用した場合、パウチ商品40が取出し口に達するまでにシューター30上で停止してしまうことが散見されている。この状態が顕著なのは梅雨などの湿潤時期であり、湿潤時期ではシューター30およびパウチ商品40に結露を発生しやすく、結露の発生した状態では水分による表面張力によりパウチ商品40がシューター30上で停止しやすくなる。更にパウチ商品40は自由落下の勢いで取出し口まで達することから、最下段のパウチ容器送出40からの払出しの場合に停止の確率は高まる。このことからパウチ商品40とシューター30を濡れた状態にして最下段のパウチ容器送出装置21からパウチ商品40を払出す際の環境を以下、悪環境という。
悪環境においてパウチ商品40を1000本排出させてシューター30上で停止してしまう確率(以下、停止確率という)は5年以上使用した亜鉛鋼板製のシューター30では1.0%と実運用には不十分な発生頻度であった。更にシューター30に着目してみると中古自販機は様々な仕様がありシューターの素材、シューターの傾斜角度が異なるとともに、過年度使用によるシューター上の傷や腐食などの同機種であってもシューターの状態に個体差がある。従って、シューター30の傾斜角度が小さくて腐食部位のある滑り条件の悪いシューター30を有する中古自動販売機の場合の停止確率は更に高くなる可能性がある。
【0017】
(課題の確認2)
シューター30の摩擦抵抗を下げるべく亜鉛鋼板のシューター30にフッ素樹脂加工処理を施した場合、悪環境での停止確率は0.4%、亜鉛鋼板のシューター30にガラスコート処理をした場合は同0.2%と滑りの改善はなされているものの実運用に際しては不安の残る状態であった。
【0018】
(課題の確認3)
シューター30にフッ素樹脂やガラスなどの加工処理を加える方法は悪環境下において有効な改善方法ではあるが不安を完全には払拭できないとともに、シューター30の取外し、加工、取付けといった煩雑な工程が発生し、原材料費・作業費・複数の形状のあるシューター30の管理など、シューター30の改善が高コストとなってしまう。また、実運用としては工場に滞留している中古自販機のみならず既設の自動販売機に対して現地でパウチ送出装置21を取付けることもあるため、シューター30の取外し・取付け・在庫管理を伴うオペレーションは難しい。
【0019】
(課題の整理)
本発明に求められるのは悪環境下においての停止確率が低く、シューター30の取外しが発生しない作業性、廉価であるコスト性、多機種のシューター30へ使用できる汎用性、長期使用への耐久性を満たすことである。
【0020】
(基本構成)
図4、図6、図8に図示のとおり本発明である滑落補助板1bは、凸部6と凹部7が左右方向に複数に連続して前後方向に伸びている波板形状をもつ滑落部材2を有し、磁性体を含有するマグネットシート5と滑落部材2が接着層3により重合されて構成されている。
【0021】
(基本的使用方法)
図1・図2に図示のとおり、滑落補助板1bはシューター30上のパウチ商品40の落下動線上にマグネットシート5の磁力により貼付して使用する。
【0022】
(原理)
パウチ飲料40がシューター30上に停止するのは摩擦力や水滴による表面張力が主な要因であるが、本発明である滑落補助板1bの表面にある滑落部材2の連続した凹凸がパウチ飲料40の表面との接触面積を減らすとともに、前後方向に何本もの凸部6がレール様に傾斜して下方取出し口方向に延びていることからパウチ飲料40は滑落補助板1bとの接触面を少なくしたまま凸部6のレールに沿ってシューター30手前方向へ導かれ取出し口まで運ばれる。
【0023】
(柔軟性の必要性)
図7は滑落補助板1bをシューター30に貼付した状態の前後方向の断面図である。図7(A)の如くシューター30面が平坦なシューターもあれば、図8(B)の如くシューター31のいずれかの位置に屈折点33を有するシューターもある。従って、本発明が多機種のシューターに対応すべき汎用性をもつためには、シューター面が平坦な場合にも屈折した場合にも対応するように柔軟性を有する必要がある。
【0024】
(素材)
滑落部材2は常温で柔軟性を有する合成樹脂でできており、例えばポリエチレンや塩化ビニルでできている。マグネットシート5は磁性体を含む柔軟素材であり、例えば磁性体を含む合成ゴムでできている。接着層3は滑落部材2とマグネットシート5を接着する素材であれば良く、例えば通常市販されている両面テープやアクリル系接着剤がある。今まで飲料における自動販売機のシューター部分については金属以外を用いることはないが、パウチ商品40の滑落補助という観点においては、合成樹脂やゴム材といった非金属でも滑落性能および耐久性を維持することができる。
【0025】
(固定)
パウチ商品40の滑りに直接的な効果を与えるのは滑落部材2である。滑落部材2をシューター30に固定する部材を含めたものが滑落補助板である。図3に示すように滑落部材2の底部に両面テープなどの接着層3を設けた滑落補助板1aにおいても、シューター30に貼付して使用することが可能である。シューター30の素材が亜鉛鋼板であり、貼付時にシューター30上の油やごみを綺麗にふき取って貼付した場合は、結露やパウチ飲料40が落下する際の衝撃によりシューター30から滑落補助板1aが剥離することはない。
【0026】
(固定2)
シューター30の素材は亜鉛鋼板だけでなく各種摩擦を減らす処理を行ったものがあり、例えばフッ素樹脂加工をされたものもある。この場合、滑落補助板1aの接着層3では十分な固定が得られず結露やパウチ飲料40の落下衝撃により滑落補助板1aが剥離する場合がある。図4に示す滑落補助板1bは前述のとおり底部にマグネットシート5を有するものであるが、滑落補助板1bであればシューター30が摩擦を減らす処理を行った素材でできていても磁力の作用によりパウチ飲料40の落下衝撃により滑落補助板1bが剥離することはない。
【0027】
(固定3)
パウチ飲料40の落下軌道は一定ではなく、まれにハウジングカバーの左右にぶつかりながら落下することがあり滑落補助板1bに左右の方向へ圧力がかかり、磁力のみで貼着している滑落補助板1bは所定の位置からズレることがある(多少のズレはパウチ商品移動上の問題は生じず、著しいズレがあった場合は自動販売機の商品補充時にオペレーターが修正することができる)。図5に示すとおり滑落補助板1cは、滑落補助板1bの有するマグネットシート5の底部に両面テープなどの接着層4を設けたものであり、マグネットシート5の磁力と接着層4による接着力にてシューター30上に貼付するものであり、シューター30の素材に関わらず滑落補助板1cを結露やパウチ飲料40の落下衝撃に対し完全に固定することができる。
【実施例1】
【0028】
滑落部材2の素材としてポリエチレンで凸部6の数が10あるものを用い、接着層3の素材を基材としてポリプロピレンフィルム・粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用した両面テープを用い、マグネットシート5の素材として磁性体入りの合成ゴムを用いた幅18mm長さ300mmの滑落補助板1bを、シューター30上に縦方向並行に2本貼付し、悪環境下パウチ容器送出装置21よりパウチ飲料40を1000本連続で送出・落下させたところパウチ容器40のシューター30上での停止は一度も発生しなかった。また、滑落部材2の表面に目立った傷は見当たらなかった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明である滑落補助板は、あらゆる中古自販機および既設自販機のシューターに対し取付け可能で、滑落補助板をシューター上に貼付するという低コストでかつ容易な作業性でパウチ商品を安定的に取出し口まで導くことができることから、多機種の中古自動販売機および既設自動販売機に対してパウチ容器送出装置を取付けて付加価値のある自動販売機としてリニューアルすること可能とする。
【符号の説明】
【0030】
1a 滑落補助板
1b 滑落補助板
1c 滑落補助板
2 滑落部材
3 接着層
4 接着層
5 マグネットシート
6 凸部
7 凹部
20 ハウジング
21 パウチ容器送出装置
22 ハウジングカバー
30 シューター
31 シューター
32 庫壁
33 屈折点
40 パウチ商品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部と凹部が左右方向に複数に連続しかつ前後方向に伸びている波板形状を表面にもつ合成樹脂製の滑落部材において該滑落部材の底部に接着層を有する滑落補助板であって、該滑落補助板を該接着層により自動販売機のシューター上に貼付することにより、パウチ容器送出装置より払出されてシューター上に落下してきたパウチ商品をシューター手前にある取出し口まで停止させず移動させることを特徴とする滑落補助板。
【請求項2】
請求項1に記載の滑落補助板の底部にマグネットシートを重合させ、該マグネットシートの磁力により自動販売機のシューターに貼付することを特徴とする請求項1に記載の滑落補助板。
【請求項3】
請求項2に記載の滑落補助板の底部に接着層を有し、磁力と接着力により自動販売機のシューターに貼付することを特徴とする請求項2に記載の滑落補助板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−198254(P2010−198254A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41596(P2009−41596)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(303020347)
【Fターム(参考)】