説明

滑車

【課題】二つの転がり軸受を使用した、製作が容易で手間とコストの掛らない滑車を提供することを課題とする。
【解決手段】一本の軸棒に二つの転がり軸受を並列させて取り付け、更に該二つの転がり軸受の外輪外周に沿って所定の厚み及び所定の溝幅及び所定の溝高を有する溝部材が該部材の外側面を二つの転がり軸受に接触させて環状に形成されている。少なくとも以上の構造を有する滑車に於いて、該滑車の溝部材の環の軸側の所定の箇所に二つの転がり軸受の間を仕切り、軸方向に伸長する所定の寸法の仕切り部が形成されていることを特徴とする滑車を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紐状部材を使用し、物を引き又は引き上げる際に、引く方向を変換する為の滑車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本発明で説明する滑車は、本発明者が特願2007−319640等で以前に出願しているものの中で、庇状の突起の付いた回転ローラーとして示されているものである。その点から、この滑車の形状は従来公知であるが、以前の出願に於いては一つの回転ローラーに溝状の突起を形成すると云う考え方だけを示すものであった。それを実用化する方法として一つには、一つの転がり軸受の外輪外側に溝を有する部材を嵌め合わせて形成する方法が公知としてあるが、従来の方法では嵌め合わせの際に圧力を加えるので、溝部を硬質の薄いプラスチックなどで製作する場合には割れ等の不具合が生じ、手間及び製作コストの面から、実施が容易ではなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明に於いては、発明者は滑車への荷重及び回転数の点から一つの大きな転がり軸受では無く、それよりも小さな転がり軸受を二つ使用しても性能及びコストが其れほど変わらないことに注目し、二つの転がり軸受を使用した、製作が容易で手間とコストの掛らない滑車を提供することを課題とする。
【課題を解決する為の手段】
【0004】
上記問題を解決する為に、本発明は次の如き滑車を提供する。
I、一本の軸棒に二つの転がり軸受を並列させて取り付け、更に該二つの転がり軸受の外輪外周に沿って所定の厚み及び所定の溝幅及び所定の溝高を有する溝部材が該溝部材の外側面を二つの転がり軸受の外輪に接触させて環状に形成されている。少なくとも以上の構造を有する滑車に於いて、該滑車の溝部材の環の軸側の所定の箇所に二つの転がり軸受の間を仕切り、軸方向に伸長する所定の寸法の仕切り部が形成されていることを特徴とする滑車。
2、溝部材を環に沿って二分し、分割した其々に仕切り部を形成したことを特徴とする上記第1項に記載の滑車。
【発明実施の形態】
【0005】
以下、図面を参照しながら本発明の各種態様に係る滑車に関して説明する。以下の説明は本発明の技術思想を具現化するいくつかの具体例を説明するものであり、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0006】
図1は本発明の一態様に係る滑車の全体の構造を示す正面図(a)と側面図(b)である。図1に於ける滑車は軸棒1に二つの転がり軸受(図1及び後記図面に於いて転がり軸受は内輪2と外輪3と玉7が一体となった部材を示す。)が並列して取り付けられており、内輪2を内側にして其の周囲を外輪3が回転する構造となっている。この回転は転がり軸受のコロ又は玉7によってなされるものである。(図1に於いては玉7の保持部は省略している。更に側面図(b)では玉7は上下のみ記載し他は省略している。)そして、二つの転がり軸受の外輪3の外周外側面に沿って其の外側に紐を掛ける為の環状の溝部材4が其の軸方向の面即ち環の内側の面を二つの転がり軸受の外輪3に接触させて形成されている。溝部材4は所定の厚さと溝幅と溝高を有している。更に溝部材4の環の軸側の中央部から軸方向に伸長して、二つの転がり軸受の間を仕切る仕切り部5が形成されている。組み立て使用する際には二つの転がり軸受の間が広がらない様に内輪2を軸棒1に固定部材6で固定している。以下組み立て方法及び機能に就いては図2の断面図で示す。
【0007】
図2は図1の断面線c−c´部分を示す断面図である。図2では組み立てた構成部材を判り易くする為、実際には接触している部分も所定の寸法を有した形で示している。組み立て方は以下の通りである。先ず軸棒1に一つ目の転がり軸受の内輪2を嵌め込む。この際軸棒1には内輪2の動きを止める固定部材6が形成されていることが好ましい。一つ目の転がり軸受を嵌め込んだ後、次に溝部材4を一つ目の転がり軸受の外輪3の外周面にスライドさせ嵌め込む。この場合、実施上、両部材の間隙は0.3ミリ以下程度が好ましい。力を入れないと嵌らないものでは不適合であるからである。溝部材4の片側を外輪3に嵌め合わせたら、更に二つ目の転がり軸受の内輪2を軸棒1に嵌め込み、更に溝部材4の内側にスライドさせ嵌め込む。この際、仕切り部5を両側の外輪3で挟み、固定部材6により内輪2を固定する。この固定により二つの転がり軸受の間が広がることが防がれる。この構造により、使用中に紐の引きが左右に強い力で振れた場合においても、其の振れによる溝部材4の外輪3上でのずれを規制することができるのである。実施上、本発明の滑車に於いて、紐の張力は3Kg程度である為、直径は50mm以下程度で良く、幅は20mm以下で良い。軸棒1は10〜15mmで良い。形状及び材質は任意である。実施上、ネジを切った丸棒を使用しても良い。溝部材4に就いては溝幅が20mm以下、溝高は15mm以下、厚みは5mm以下程度で良い。溝の形状及び材質は任意である。以上の寸法内に於いて転がり軸受の外輪3及び内輪2の寸法は経験的に決定されて良い。仕切り部5に就いては厚さ3mm以下、伸長する長さは6mm以下が好ましいが、詳細寸法は経験的に決定されてよい。又仕切り部5は連続した環でなくても良い。断続していても良い。又、材質も任意であるが、実施上は溝部材4と一体化させ、同じ材質で良い。又、実施上、転がり軸受は金属が好ましく溝部材4はプラスチックなどが好ましい。柔軟な部材も選択できる。又、固定部材6は其の止め方に種々あるので、其の方法に関しては経験的に決定されて良い。従来は一つの転がり軸受の外輪の外側に溝部材の環の内側を、外れることを防ぐ為に圧力を掛けて挿入していた方法を本発明の方法にすることにより、圧力を掛けること無く製作することができるので、溝部材4を硬度の有する薄いプラスチックで形成しても挿入時に割れることが無く、又、柔らかい部材で形成しても圧力による曲がりや歪みを防ぐことができる為、製作時間及びコストを大幅に低減することができるのである。
【0008】
図3は本発明の滑車の別の態様に係る構造を示す断面図である。図3も図2と同様に部材の構成を判り易くする為、各部材を間隔を有した形で記している。図3に於いて図2と異なる箇所は溝部材4が其の中央で環に沿って分割されており、分割された左右の溝部材4の其々に、仕切り部5が形成されていることである。仕切り部5は図2でも説明したが連続した環でなくても良い。断続していても良いし、左右が其々所定の間隔を有する歯車状(図4に示す)で形成され、順番に交差する形状でも良い。使用する際は、左右の仕切り部5を二つの転がり軸受で挟むことと、図2で説明した様に、固定部材6で内輪2を固定することで左右の溝部材4が合わされ溝を形成することができると共に、溝部材4を固定することができるのである。又、片側の溝部材4を製作することで、それを左右に使用することができ、又、構造が簡単になる為、プラスチックなどで製作する場合、成形型を小さく安価なものにすることができるのである。
【0009】
上記に於いて、本発明の滑車の各部分の好ましい形状及び寸法及び材質に就いて説明したが、上記説明に限定されること無く形状、寸法、材質は適宜経験的に決定できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の滑車によれば滑車の組み立てを従来に比較して極めて容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 本発明の一態様に係る滑車の正面図(a)と側面図(b)である。
【図2】 本発明の一態様に係る滑車の構造を示す断面図である。
【図3】 本発明の一態様に係る滑車の構造を示す断面図である。
【図4】 本発明の一態様に係る滑車の一部分の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0012】
1、軸棒
2、内輪
3、外輪
4、溝部材
5、仕切り部
6、固定部材
7、玉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本の軸棒に二つの転がり軸受を並列させて取り付け、更に該二つの転がり軸受の外輪外周に沿って所定の厚み及び所定の溝幅及び所定の溝高を有する溝部材が該部材の外側面を二つの転がり軸受の外輪に接触させて環状に形成されている。少なくとも以上の構造を有する滑車に於いて、該滑車の溝部材の環の軸側の所定の箇所に二つの転がり軸受の間を仕切り、軸方向に伸長する所定の寸法の仕切り部が形成されていることを特徴とする滑車。
【請求項2】
溝部材を環に沿って二分し、分割した其々に仕切り部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の滑車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−196538(P2011−196538A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88155(P2010−88155)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(591223138)
【Fターム(参考)】