説明

滞在目的推定装置、方法及びプログラム

【課題】ユーザの行動遷移パターンの事前定義や店舗・施設データベースを必要とすることなく、ユーザの滞在目的を正確に推定することが可能とする。
【解決手段】ユーザの位置情報及び活動量を表す情報を入出力インタフェース1で受信して記録部2に蓄積すると共に、このうち位置情報からは滞在地情報算出部3によりユーザの滞在地情報を算出して記録部2に記憶させる。この状態、開始トリガが入力された場合に、上記滞在地情報をもとに滞在地ごとにその滞在頻度及び滞在継続時間を算出すると共に、上記活動量情報をもとに上記滞在地ごとの活動量を算出し、これらを滞在地・活動量統合情報とする。そして、滞在目的推定部4の制御の下で、上記滞在地ごとに算出された滞在頻度、滞在継続時間及び活動量を、予め決められた分類決定木に従い複数の滞在目的のどれに該当するかを判定するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザの滞在地ごとの滞在目的を推定するために用いる滞在目的推定装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)等の位置計測手段を利用して、ユーザの位置を計測し管理する機能を備えた携帯端末或いは車載端末が増えている。そして、この種の機能を利用してユーザの滞在地の位置情報を計測し、この位置情報をもとに滞在地を推定しその情報からユーザの行動パターンを抽出する技術が提案されている。
【0003】
例えば非特許文献1には、先ずGPSデータを滞在場所を並べた離散的な系列に変換し、続いてその系列に対し頻出パターンを選択する頻出系列マイニング処理を適用し、さらに特徴パターン選択処理を行うことによりユーザの行動パターンを抽出する技術が記載されている。
【0004】
一方、計測されたユーザの位置情報と、ユーザの属性別に事前に定義した行動の遷移パターンを用いてユーザの行動を推定する方法も提案されている(例えば非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】西野他、“滞在地遷移情報からの行動パターン抽出方式の検討”、情報処理学会研究報告、2008-UBI-20(10), Nov., 2008
【非特許文献2】宮崎他、“ユーザの行動に合わせたサービス実現のための行動推定技術の開発”、NTT Docomo テクニカル・ジャーナル vol.17, No.3, pp55-61, Oct., 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来文献により提案されている方法には以下のような解決すべき課題があった。すなわち、先ず非特許文献1に記載された方法では、ユーザの特徴的な滞在パターンを抽出することはできるが、滞在地ごとにユーザがどのような目的で滞在したかについては推定することが困難である。一方、非特許文献2に記載された方法ではユーザの行動パターンとして主として「自宅」と「仕事」の2種類しか分別することができない。また、事前にユーザの属性に基づく行動の遷移パターンを定義しておく必要があり、この行動遷移パターンが途中で変更されると行動の推定精度が低下する。
【0007】
また別の方法として、ユーザの位置情報と、滞在地の店舗・施設を紹介するデータベース等とを組み合わせることにより、滞在地におけるユーザの滞在目的を推定する試みもなされている。しかし、一般に滞在地となりうるすべての場所の店舗・施設データベースを用意することは困難である。このため上記推定方法では、滞在地によっては店舗・施設データベースを参照することができず、ユーザの滞在目的を推定することは不可能である。また、店舗・施設データベースが用意された滞在地であっても、店舗或いは施設の情報だけからではユーザの滞在目的を正確に推定することは難しい。例えば、滞在地の店舗又は施設が飲食店と分かったとしても、ユーザが客として滞在しているのか、或いは料理人や給仕人等の従業員として働いているのかまでは判定することができない。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ユーザの行動遷移パターンの事前定義や店舗・施設データベースを必要とせず、かつユーザの滞在目的を正確に推定することが可能な滞在目的推定装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、ユーザの位置情報を時系列に従い取得してこの取得された位置情報を当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶すると共に、上記ユーザの活動量を表す情報を時系列に従い取得してこの取得された活動量情報を当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶する。この状態で、上記ユーザごとに、当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶された位置情報をもとに当該ユーザの滞在地集合を求めて、この滞在地集合に含まれる滞在地ごとにその滞在頻度及び滞在継続時間を算出すると共に、上記ユーザの識別情報に関連付けて記憶された活動量情報をもとに上記滞在地ごとの活動量を算出する。そして、滞在目的推定手段において、上記滞在地ごとに算出された滞在頻度、滞在継続時間及び活動量を、予め決められた分類決定木に従い判定して複数の滞在目的に分類し、この分類された滞在目的を表す情報を上記滞在地を表す情報に関連付けて記憶するようにしたものである。
【0010】
したがって、滞在目的を推定する際に、滞在地ごとに算出された滞在頻度と滞在継続時間に加え、滞在地におけるユーザの活動量を参照して滞在目的が判定される。このため、単にユーザの滞在パターンを用いる場合や滞在地の店舗または施設情報を用いる場合に比べ、滞在目的を正確に推定することができる。また、ユーザの行動遷移パターンの事前定義が不要であり、また店舗・施設データベースを利用する必要もないので、システムが大掛かりになる心配もない。
【0011】
また、この発明の1つの観点は、滞在地を表す情報に関連付けて記憶された滞在目的を表す情報に基づいて滞在地ごとに当該滞在地に対し滞在目的が発生し得る確率を算出し、この算出された確率を前記滞在地を表す情報に関連付けて記憶する処理を、さらに行うことも特徴とする。
このようにすると、1つの滞在地に対し推定された滞在目的が複数だった場合に、これらの滞在目的の発生確率が算出される。このため、例えば滞在目的に基づいてレコメンドサービスを行う場合に、ユーザの滞在目的に対しより一層適合したレコメンド情報を配信することが可能となる。
【0012】
また、滞在目的を推定する際には、滞在地ごとに、先ず上記算出された滞在頻度を第1のしきい値と比較して滞在頻度が第1のしきい値以上か未満かを判定し、上記滞在頻度が第1のしきい値以上と判定された場合には、上記算出された滞在時間を第2のしきい値と比較して滞在時間が第2のしきい値以上の場合に滞在目的を仕事と判定し、第2のしきい値未満の場合には自宅と判定する。また、上記滞在頻度が第1のしきい値未満と判定された場合には、上記算出された活動量を第3のしきい値及びこの第3のしきい値より小さい第4のしきい値とそれぞれ比較し、上記活動量が第3のしきい値以上の場合に滞在目的を運動系レジャーと判定すると共に、上記活動量が前記第3のしきい値未満でかつ上記第4のしきい値以上の場合には滞在目的をショッピングと判定する。さらに、上記算出された活動量が第4のしきい値未満と判定された場合には、上記算出された滞在時間を第5のしきい値と比較して、滞在時間が第5のしきい値以上の場合に鑑賞と判定し、第5のしきい値未満の場合に食事と判定する。
このようにすると、ユーザの日常の行動パターンにおいて滞在目的として想定される、「自宅」、「仕事」、「運動系レジャー」、「ショッピング」、「映画等の鑑賞」、「食事」を的確に推定することができる。
【発明の効果】
【0013】
すなわちこの発明の1つの観点によれば、ユーザの行動遷移パターンの事前定義や店舗・施設データベースを必要とすることなく、ユーザの滞在目的を正確に推定することが可能な滞在目的推定装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態に係わる滞在目的推定装置の機能構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した滞在目的推定装置の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】図2に示した滞在目的推定装置に設けられる位置情報記憶エリアに記憶される位置情報の一例を示す図。
【図4】図2に示した滞在目的推定装置に設けられる滞在地情報記憶エリアに記憶される滞在地情報の一例を示す図。
【図5】図2に示した滞在目的推定装置に設けられる活動量情報記憶エリアに記憶される活動量情報の一例を示す図。
【図6】図2に示した滞在目的推定装置に設けられる滞在地・活動量統合情報記憶エリアに記憶される滞在地・活動量統合情報の一例を示す図。
【図7】図2に示した滞在目的推定装置に設けられる滞在目的情報記憶エリアに記憶される滞在目的情報の一例を示す図。
【図8】図2に示した滞在目的推定装置による全体の処理手順と処理内容を示すフローチャート。
【図9】図8に示した全体の処理手順のうち滞在目的推定処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【図10】図9に示した滞在目的推定処理に用いる決定木の一例を示す図。
【図11】図8に示した全体の処理手順のうち滞在目的情報算出処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
【図12】図11に示した滞在目的情報算出処理により得られた滞在目的情報の一例を示す図である。
【図13】滞在目的の分別方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[装置の機能構成]
図1は、この発明の一実施形態に係わる滞在目的推定装置の機能構成を示すブロック図である。
この装置は、入力インタフェース1により、位置情報取得機器からユーザの位置情報を受信すると共に、活動量情報取得機器からユーザの活動量を表す情報を受信し、この受信された位置情報及び活動量情報を記録部2に格納している。そして、滞在地情報算出部3において、上記記録部2に記憶された位置情報をもとに滞在地情報を算出し、この算出された滞在地情報と上記記憶された活動量情報をもとに、滞在目的推定部4により滞在地ごとにユーザの滞在目的を推定する。さらに、滞在地目的情報算出部5により、上記滞在目的の推定結果をもとに滞在地に対し推定された滞在目的の発生確率を計算し、これにより得られた滞在地目的情報を記録部2に格納するものとなっている。
【0016】
位置情報取得機器は、例えばGPS(Global Positioning System)を利用して定期的にユーザの位置情報を算出するもので、この位置情報をメモリに蓄積する。位置情報は、時刻、緯度及び経度により表される。そして、位置情報取得機器は、一定時間分の位置情報が蓄積されるごとに、或いは緯度経度が所定量以上変化するごとに、上記蓄積された位置情報をメモリから読み出して滞在目的推定装置へ送信する。
【0017】
一方、活動量取得機器は、心拍計等のバイタルセンサの検出データをもとに定期的にユーザの活動量を算出し、この活動量を表す情報をメモリに蓄積する。そして、活動量取得機器は、一定時間分の活動量情報が蓄積されるごとに、この蓄積された活動量情報をメモリから読み出して滞在目的推定装置へ送信する。活動量は、例えば身体活動の強さを表す指標として知られている「メッツ」により表される。メッツとは、身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位であり、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当する。このメッツの定義については、例えば厚生労働省、“健康づくりのための運動指針2006-生活習慣病予防のために(エクササイズガイド2006)”, Jul, 2006に詳しく述べられている。
上記位置情報取得機器及び活動量取得機器の各機能は、ユーザが所持する携帯電話機やスマートホン、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末に内蔵される。
【0018】
[装置の具体的構成]
図2は、図1に示した滞在目的推定装置の具体的な構成を示すブロック図である。
同図に示すように滞在目的推定装置は、中央処理ユニット(Central Processing Unit;CPU)11を備え、このCPU11に対しバス12を介してプログラムメモリ13及びデータメモリ14を接続し、さらに通信インタフェース16、入出力インタフェース17及びタイマ・インタフェース20を接続したものとなっている。
【0019】
通信インタフェース16は、ユーザが所持する携帯端末(図示せず)との間でIP網等からなる通信ネットワークを介して通信を行う。入出力インタフェース17には入力デバイス18及び表示デバイス19が接続される。入力デバイス18は、キーボード及びマウスからなる。表示デバイス19は液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイからなる。タイマ・インタフェース20は、タイマ21から発生された開始トリガ信号を受信してCPU11に通知する。
【0020】
データメモリ14には、この発明を実施する上で必要な情報データを記憶するエリアとして、位置情報記憶エリア141と、滞在地情報記憶エリア142と、活動量情報記憶エリア143と、滞在地・活動量統合情報記憶エリア144と、滞在目的情報記憶エリア145が設けられている。
【0021】
プログラムメモリ13には、この発明を実施する上で必要なアプリケーション・プログラムとして、入出力制御プログラム131と、滞在地算出プログラム132と、滞在地・活動量統合プログラム133と、滞在目的推定プログラム134と、滞在目的情報算出プログラム135が格納されている。
【0022】
入出力制御プログラム131は、ユーザが所持する携帯端末から位置情報及び活動量情報を図示しない通信ネットワークを介して受信し、この受信した位置情報及び活動量情報をそれぞれユーザ識別情報(ユーザID)に関連付けてデータメモリ14の位置情報記憶エリア141及び活動量情報記憶エリア143に記憶させる処理を、上記CPU11に実行させる。
【0023】
図3は、上記位置情報記憶エリア141に記憶される位置情報の一例を示すもので、位置情報は計測時刻、緯度及び経度により表される。図5は、活動量情報記憶エリア143に記憶される活動量情報の一例を示すもので、日時を表す情報と活動量により表される。活動量は先に述べたようにメッツで表される。
【0024】
また入出力制御プログラム131は、携帯端末においてユーザ(操作者)が滞在目的推定処理の開始指示操作を行った場合に、その開始トリガを携帯端末から受信して滞在目的推定部4に通知する処理機能も有する。
【0025】
滞在地算出プログラム132は、ユーザIDごとに上記位置情報記憶エリア141から位置情報を読み出し、この読み出された位置情報に基づいてユーザの滞在地情報を生成し、この生成された滞在地情報をユーザIDに関連付けて滞在地情報記憶エリア142に記憶させる処理を、CPU11に実行させる。滞在地情報は、ユーザが一定時間以上連続して留まった地点を時系列に従い抽出したもので、地点を表す滞在地識別情報(滞在地ID)と、滞在開始時刻及び終了時刻と、緯度及び経度により表される。図4は滞在地情報記憶エリア142に記憶される滞在地情報の一例を示すものである。
【0026】
滞在地・活動量統合プログラム133は、以下の処理をCPU11に実行させる。
(1) ユーザIDごとに予め指定された推定対象期間に含まれる滞在地情報を上記滞在地情報記憶エリア142から読み出し、この読み出された滞在地情報をもとに滞在地ごとの累計滞在頻度(滞在回数)及び滞在継続時間を算出する処理。
(2) ユーザIDごとに推定対象期間に含まれる活動量情報を上記活動量情報記憶エリア143から読み出し、この読み出された活動量情報をもとに上記滞在地ごとの活動量平均値を算出する処理。
(3) 上記算出された累計滞在頻度(滞在回数)、滞在継続時間及び活動量平均値を、滞在地ごとに統合して滞在地・活動量統合情報を生成し、この生成された滞在地・活動量統合情報をユーザIDと関連付けて滞在地・活動量統合情報記憶エリア144に記憶させる処理。
【0027】
図6は、上記滞在地・活動量統合情報記憶エリア144に記憶される滞在地・活動量統合情報の一例を示すもので、滞在地ID、滞在開始時刻、滞在終了時刻、累計滞在頻度(滞在回数)、滞在継続時間及び活動量平均値により表される。累計滞在頻度(滞在回数)は、予め設定した単位期間(例えば1ヶ月)にその滞在地に何回滞在したかをカウントすることにより求められる。滞在継続時間は、滞在終了時刻から滞在開始時刻を引き算することにより求められる。なお、図6の例では滞在目的を表す情報が滞在地・活動量統合情報に付加されているが、この滞在目的を表す情報は次に述べる滞在目的推定プログラム134により付加される。
【0028】
滞在目的推定プログラム134は、上記滞在地・活動量統合情報記憶エリア144から、滞在地ごとに累計滞在頻度(滞在回数)、滞在継続時間及び活動量平均値を読み出す。そして、この読み出された累計滞在頻度(滞在回数)、滞在継続時間及び活動量平均値を予め用意された決定木に従い複数の滞在目的に分類し、その分類結果を滞在目的の推定結果を表す情報として上記滞在地・活動量統合情報に付加する処理を、CPU11に実行させる。図10は上記決定木の一例を示すもので、「自宅」、「仕事」、「運動系レジャー」、「ショッピング」、「映画等の鑑賞」、「食事」を分類対象の滞在目的としている。
【0029】
滞在目的情報算出プログラム135は、上記滞在目的推定プログラム134により推定された滞在目的を滞在地IDごとに集計し、滞在地IDごとの滞在目的の発生確率(スコア)を算出する。そして、この算出された滞在目的のスコアを、滞在目的情報として滞在目的情報記憶エリア145に記憶させる処理を、CPU11に実行させる。図7は、滞在目的情報記憶エリア145に記憶される滞在目的情報の一例を示すものである。
【0030】
[装置の動作]
次に、以上のように構成された滞在目的推定装置の動作を説明する。
(1)位置情報及び活動量情報の記憶処理
滞在目的推定装置は、以下のような手順で処理を実行する。図8はその全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、滞在目的推定装置は入出力制御プログラム131の制御の下で、携帯端末からの情報の到来を監視している。この状態で、携帯端末から位置情報又は活動量情報が送信され、この情報が通信インタフェース16で受信されたとする。この場合、滞在目的推定装置は、入出力制御プログラム131の制御の下で、ステップS1からステップS4に移行し、ここで受信情報が位置情報であるか活動量情報であるかを判定する。そして、位置情報であれば、ステップS5において、この受信された位置情報をユーザIDと関連付けてデータメモリ14内の位置情報記憶エリア141に記憶させる。これに対し、上記受信情報が活動量情報だったとすれば、ステップS8において、この受信された活動量情報をユーザIDと関連付けてデータメモリ14内の活動量情報記憶エリア143に記憶させる。なお、受信情報が位置情報か活動量情報かの判定は、例えば携帯端末において位置情報及び活動量情報にその種別を示すフラグ情報を付与することで可能である。
【0031】
(2)滞在地情報の算出
上記位置情報記憶エリア141に位置情報が記憶されると、装置はステップS6において滞在地算出プログラム132を起動する。そして、この滞在地算出プログラム132の制御の下で、ユーザIDごとに上記位置情報記憶エリア141から位置情報を読み出し、この読み出された位置情報に基づいてユーザの滞在地情報を生成し、この生成された滞在地情報をユーザIDに関連付けて滞在地情報記憶エリア142に記憶させる(ステップS7)。滞在地情報は、図4に例示したように、滞在開始時刻及び終了時刻と緯度及び経度を滞在地IDに関連付けたものからなる。1つの滞在地情報の区切りは滞在を開始してから終了するまでとなり、一旦滞在を終了すると、その後同じ滞在地に再度滞在した場合には新たな滞在地情報が生成される。
【0032】
(3)滞在目的の推定
携帯端末においてユーザが滞在目的推定処理の開始指示操作を行ったとする。そうすると、携帯端末において開始トリガが生成され、この開始トリガが滞在目的推定装置に向け送信される。開始トリガには、滞在目的推定処理を実行する開始フラグと、推定対象とするユーザIDと、算出対象期間の情報が含まれる。なお、ユーザIDには、滞在目的推定装置内において位置情報や活動利用情報、滞在地情報等に関連付けられるユーザIDと同じものが使用される。算出対象期間には、算出対象開始時刻と算出対象終了時刻が含まれる。
【0033】
上記開始トリガが通信インタフェース16で受信されると、滞在目的推定装置はステップS1からステップS2に移行し、以下のように滞在目的推定処理を実行する。図9はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。また、図13は滞在目的の判定処理の概要を示すもので、先ず滞在頻度及び滞在継続時間をもとに「自宅」、「仕事」をそれ以外と分類し、次に活動量及び滞在継続時間をもとに「運動系レジャー」、「ショッピング」、「食事」、「映画」を分類する場合を示している。
【0034】
すなわち、滞在目的推定装置は、先ず滞在地・活動量統合プログラム133を起動し、ステップS201によりデータメモリ14内の滞在地情報記憶エリア142及び活動利用情報記憶エリア143からそれぞれ、上記開始トリガにより指定されたユーザIDに対応しかつ算出対象期間に該当する滞在地情報及び活動量情報を読み出す。そして、ステップS202において、上記読み出された滞在地情報をもとに滞在地ごとの累計滞在頻度(滞在回数)及び滞在継続時間を算出すると共に、上記読み出された活動量情報をもとに上記滞在地ごとの活動量平均値を算出し、この算出された累計滞在頻度(滞在回数)、滞在継続時間及び活動量平均値を滞在地ごとに統合した滞在地・活動量統合情報を生成する。そして、この生成された滞在地・活動量統合情報をユーザIDと関連付けて滞在地・活動量統合情報記憶エリア144に記憶させる。
【0035】
次に滞在目的推定プログラム134を起動し、この滞在目的推定プログラム134の制御の下で以下のように推定処理を実行する。すなわち、滞在地・活動量統合情報記憶エリア144から上記滞在地・活動量統合情報を読み出し、この滞在地・活動量統合情報から滞在目的が未判定の滞在地を1つ選択する。
【0036】
そして、この選択した滞在地について、先ずステップS210において滞在地IDごとに上記滞在頻度(滞在回数)が予め設定された第1のしきい値以上か否かを判定する。このとき第1のしきい値は、定常的に滞在する滞在地と一時的に滞在する滞在地とを区別可能とするために比較的大きな値に設定される。上記判定の結果、滞在頻度(滞在回数)が第1のしきい値以上だったとすると、続いてステップS220において滞在時間を第2のしきい値と比較し、滞在時間が第2のしきい値以上であればステップS221で「自宅」と判定し、第2のしきい値未満であればステップS222で「仕事」と判定する。
【0037】
一方、上記ステップS210による判定の結果、滞在頻度が第1のしきい値未満と判定されたとする。この場合、装置はステップS230に移行してここで活動量が第3のしきい値以上か否かを判定する。そして、活動量が第3のしきい値以上であれば、ステップS231で滞在目的は「運動系レジャー」と判定する。これに対し、活動量が第3のしきい値未満だったとすると、ステップS240に移行してここで上記活動量を第4のしきい値と比較する。ここで、第4のしきい値は第3のしきい値より小さい値に設定されている。上記比較の結果、活動量が第4のしきい値以上であれば、ステップS241により滞在目的を「ショッピング」と判定する。
【0038】
また、上記ステップS240による比較の結果、活動量が第4のしきい値未満だったとすると、ステップS250に移行してここで滞在時間を第5のしきい値と比較する。そして、この比較の結果、滞在時間を第5のしきい値以上であればステップS251で滞在目的を「映画」と判定し、一方第5のしきい値未満であればステップS252で滞在目的を「食事」と判定する。
【0039】
以上の推定処理が終了すると、滞在目的推定装置はステップS280において、上記判定結果、つまり滞在目的の推定結果を表す情報を、滞在地・活動量統合情報記憶エリア144に記憶された滞在地・活動量統合情報の対応する滞在地IDに対応付けて記憶させる。図6にその記憶結果の一例を示す。
【0040】
滞在目的推定装置は、最後にステップS281において、上記ステップS201において滞在地・活動量統合情報記憶エリア144から読み出された滞在地・活動量統合情報中に、滞在目的が未判定の滞在地が残っているか否かを判定する。そして、残っていればステップS202に戻り、未判定の滞在地を選択してこの滞在地について上記ステップS210〜S280による一連の判定処理を実行する。以後、未判定の滞在地がなくなるまで以上の処理を繰り返す。
【0041】
(5)滞在目的情報の算出
上記滞在目的推定処理が終了すると、滞在目的推定装置は次に図8のステップS3に移行して滞在目的情報算出プログラム135を起動し、この滞在目的情報算出プログラム135の制御の下で以下のように滞在目的情報を算出する。図11はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0042】
すなわち、滞在目的推定装置は、先ずステップS301において滞在地・活動量統合情報記憶エリア144から算出対象期間の滞在地・活動量統合情報を読み出す。続いてステップS302において、上記読み出された滞在地・活動量統合情報からユーザIDと滞在地IDの組み合わせとなる一組を選択し、この選択した組み合わせに該当する滞在地・活動量統合情報を選択する。なお、選択するユーザIDと滞在地IDとの組み合わせは、今回読み出された滞在地・活動量統合情報に含まれるユーザIDと滞在地IDとの組み合わせの中で更新又は追加されていない組み合わせを選択する。
【0043】
滞在目的推定装置は、次にステップS303において、上記選択されたユーザIDと滞在地IDとの組み合わせに対応する滞在地・活動量統合情報から滞在目的スコアを計算する。滞在目的スコアは、各滞在目的の頻度を算出してそれぞれの滞在目的が起こり得る確率を算出することにより得る。滞在目的スコアが算出されると、ステップS304においてその算出結果を滞在目的情報記憶エリア145に記憶させる。
【0044】
最後にステップS305において、上記読み出された滞在地・活動量統合情報の中に、滞在目的スコアが更新又は追加されていないユーザIDと滞在地IDとの組み合わせが残っているか否かを判定し、まだ残っていればステップS302に戻ってその一組を選択し、上記ステップS303及びS304による滞在目的スコアの計算及び記憶処理を行う。以後同様に、滞在目的スコアが更新又は追加されていないユーザIDと滞在地IDとの組み合わせがなくなるまで、上記処理を繰り返す。
かくして、推定対象のユーザについて、その滞在地IDごとの滞在目的の発生確率が算出される。
【0045】
図7に滞在地IDごとの滞在目的スコアの計算結果の一例を示す。この例では、ユーザAが滞在地1に滞在する目的のすべて(100%)が滞在目的1となり、ユーザAが滞在地2に滞在する目的は90%が滞在目的2で、残りの10%は滞在目的nとなる。
また、図12は上記滞在目的情報算出処理により得られた滞在目的情報の他の例を示すものである。この例では、ユーザAが滞在地1に滞在する目的は、ショッピング80%、食事20%となる。またユーザBが滞在地1に滞在する目的は、仕事90%、食事及びショッピングがそれぞれ5%となる。従って、この滞在目的情報から、ユーザAは滞在地1に対する客である判定でき、ユーザBは滞在地1に存在する店舗の従業員であると判定できる。
【0046】
以上詳述したようにこの実施形態では、滞在目的推定装置が以下のような処理を行う。すなわち、先ずユーザの位置情報及び活動量を表す情報を携帯端末から受信してデータメモリ14に記憶すると共に、このうち位置情報からはユーザの滞在地情報を算出して記憶する。この状態、携帯端末から開始トリガが送られた場合に、上記滞在地情報をもとに滞在地ごとにその滞在頻度及び滞在継続時間を算出すると共に、上記活動量情報をもとに上記滞在地ごとの活動量を算出し、これらを滞在地・活動量統合情報として記憶する。そして、滞在目的推定プログラム134の制御の下で、上記滞在地ごとに算出された滞在頻度、滞在継続時間及び活動量を、予め決められた分類決定木に従い複数の滞在目的のどれに該当するかを判定するようにしている。
【0047】
したがって、滞在目的を推定する際に、滞在地ごとに算出された滞在頻度と滞在継続時間に加え、滞在地におけるユーザの活動量を参照して滞在目的が判定される。このため、単にユーザの滞在パターンを用いる場合や滞在地の店舗または施設情報を用いる場合に比べ、滞在目的を正確に推定することができる。また、ユーザの行動遷移パターンの事前定義が不要であり、また店舗・施設データベースを利用する必要もない。
【0048】
またこの実施形態では、上記滞在目的の推定結果に基づいて、滞在地ごとに当該滞在地に対し滞在目的が発生し得る確率、つまり滞在目的スコアを算出し、この算出された滞在目的スコアを滞在地IDに関連付けて滞在目的情報記憶エリア145に記憶するようにしている。したがって、1つの滞在地に対し推定された滞在目的が複数だった場合に、これらの滞在目的の発生確率を知ることができる。このため、例えば滞在目的に基づいてレコメンドサービスを行う場合に、ユーザの滞在目的に対しより一層適合したレコメンド情報を配信することが可能となる。
【0049】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では携帯端末から送信される開始トリガに従い、滞在目的推定処理及び滞在目的情報算出処理を順次実行するようにした。しかし、これに限定されるものではなく、滞在目的推定装置内において、タイマ21が定期的に発生する開始トリガに従い、滞在目的推定処理及び滞在目的情報算出処理を順次実行するようにしてもよい。
【0050】
その他、滞在目的推定装置の構成や、入出力制御プログラム、滞在地算出プログラム、滞在地・活動量統合プログラム、滞在目的推定プログラム、滞在目的情報算出プログラムによる処理手順と処理内容、判定対象とする滞在目的の種類等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0051】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…入出力インタフェース、2…記録部、3…滞在地情報算出部、4…滞在目的推定部、5…滞在地目的情報算出部、11…中央処理ユニット(CPU)、12…バス、13…プログラムメモリ、131…入出力制御プログラム、132…滞在地算出プログラム、133…滞在地・活動量統合プログラム、134…滞在目的推定プログラム、135…滞在目的情報算出プログラム、14…データメモリ、141…位置情報記憶エリア、142…滞在地情報記憶エリア、143…活動量情報記憶エリア、144…滞在地・活動量統合情報記憶エリア、145…滞在目的情報記憶エリア、16…通信インタフェース、17…入出力インタフェース、18…入力デバイス、19…表示デバイス、20…タイマ・インタフェース、21…タイマ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの位置情報を時系列に従い受信し、この受信された位置情報を当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶する手段と、
前記ユーザの活動量を表す情報を時系列に従い受信し、この受信された活動量情報を当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶する手段と、
前記ユーザごとに、当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶された位置情報をもとに当該ユーザの滞在地集合を求めて、この滞在地集合に含まれる滞在地ごとにその滞在頻度及び滞在継続時間を算出し、かつ前記ユーザの識別情報に関連付けて記憶された活動量情報をもとに前記滞在地ごとの活動量を算出する手段と、
前記滞在地ごとに算出された滞在頻度、滞在継続時間及び活動量を、予め決められた分類決定木に従い判定して複数の滞在目的に分類し、この分類された滞在目的を表す情報を前記滞在地を表す情報に関連付けて記憶する滞在目的推定手段と
を具備することを特徴とする滞在目的推定装置。
【請求項2】
前記滞在地を表す情報に関連付けて記憶された滞在目的を表す情報に基づいて、滞在地ごとに当該滞在地に対し滞在目的が発生し得る確率を算出し、この算出された確率を前記滞在地を表す情報に関連付けて記憶する手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の滞在目的推定装置。
【請求項3】
前記滞在目的推定手段は、
滞在地ごとに、前記算出された滞在頻度を第1のしきい値と比較して、滞在頻度が第1のしきい値以上か未満かを判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段により前記滞在頻度が第1のしきい値以上と判定された場合に、前記算出された滞在時間を第2のしきい値と比較して、滞在時間が第2のしきい値以上の場合に滞在目的を仕事と判定し、第2のしきい値未満の場合には自宅と判定する第2の判定手段と、
前記第1の判定手段により前記滞在頻度が第1のしきい値未満と判定された場合に、前記算出された活動量を第3のしきい値及びこの第3のしきい値より小さい第4のしきい値とそれぞれ比較して、前記活動量が第3のしきい値以上の場合に滞在目的を運動系レジャーと判定すると共に、前記活動量が前記第3のしきい値未満でかつ前記第4のしきい値以上の場合に滞在目的をショッピングと判定する第3の判定手段と、
前記第3の判定手段により前記算出された活動量が第4のしきい値未満と判定された場合に、前記前記算出された滞在時間を第5のしきい値と比較して、滞在時間が第5のしきい値以上の場合に鑑賞と判定すると共に、第5のしきい値未満の場合に食事と判定する第4の判定手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の滞在目的推定装置。
【請求項4】
ユーザの位置情報を時系列に従い受信し、この受信された位置情報を当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶する過程と、
前記ユーザの活動量を表す情報を時系列に従い受信し、この受信された活動量情報を当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶する過程と、
前記ユーザごとに、当該ユーザの識別情報に関連付けて記憶された位置情報をもとに当該ユーザの滞在地集合を算出して、この滞在地集合に含まれる滞在地ごとにその滞在頻度及び滞在継続時間を算出する過程と、
前記ユーザの識別情報に関連付けて記憶された活動量情報をもとに、前記滞在地ごとの活動量を算出する過程と、
前記滞在地ごとに算出された滞在頻度、滞在継続時間及び活動量を、予め決められた分類決定木に従い判定して複数の滞在目的に分類し、この分類された滞在目的を表す情報を前記滞在地を表す情報に関連付けて記憶する滞在目的推定過程と
を具備することを特徴とする滞在目的推定方法。
【請求項5】
前記滞在地を表す情報に関連付けて記憶された滞在目的を表す情報に基づいて、滞在地ごとに当該滞在地に対し滞在目的が発生し得る確率を算出し、この算出された確率を前記滞在地を表す情報に関連付けて記憶する過程を、さらに具備することを特徴とする請求項4記載の滞在目的推定方法。
【請求項6】
前記滞在目的推定過程は、
滞在地ごとに、前記算出された滞在頻度を第1のしきい値と比較して、滞在頻度が第1のしきい値以上か未満かを判定する第1の判定過程と、
前記第1の判定過程により前記滞在頻度が第1のしきい値以上と判定された場合に、前記算出された滞在時間を第2のしきい値と比較して、滞在時間が第2のしきい値以上の場合に滞在目的を仕事と判定し、第2のしきい値未満の場合には自宅と判定する第2の判定過程と、
前記第1の判定過程により前記滞在頻度が第1のしきい値未満と判定された場合に、前記算出された活動量を第3のしきい値及びこの第3のしきい値より小さい第4のしきい値とそれぞれ比較して、前記活動量が第3のしきい値以上の場合に滞在目的を運動系レジャーと判定し、前記活動量が前記第3のしきい値未満でかつ前記第4のしきい値以上の場合には滞在目的をショッピングと判定する第3の判定過程と、
前記第3の判定過程により前記算出された活動量が第4のしきい値未満と判定された場合に、前記算出された滞在時間を第5のしきい値と比較して、滞在時間が第5のしきい値以上の場合に鑑賞と判定し、第5のしきい値未満の場合に食事と判定する第4の判定過程と
を備えることを特徴とする請求項4記載の滞在目的推定方法。
【請求項7】
前記滞在目的推定装置がコンピュータを備える場合に、前記請求項1乃至3のいずれかに記載の滞在目的推定装置が備える各手段に対応する処理を、前記コンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−253315(P2011−253315A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126209(P2010−126209)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)