説明

滴定投与可能な経皮送達系

【課題】治療薬の全身的な送達のための滴定投与可能な経皮送達系の提供。
【解決手段】この送達系は一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む。この複数のパッチ単位は、一又は複数の分離線を有する一又は複数の境界に沿って各単位に分割可能である。各パッチ単位は境界により囲まれている。この治療薬パッチは、少なくとも支持層と治療薬を含有する層とを含む。この経皮送達系により患者に送達される治療薬の投与量は、治療毎に貼付されるパッチ単位数に比例する。この送達系によって、医師の指示の下で患者による調整が可能である滴定可能な用量の治療薬を、皮膚または粘膜を通して全身的に投与することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、治療薬を全身に送達するために宿主の皮膚または粘膜上に貼付される経皮送達系に関する。特に、本発明は、一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む滴定投与可能な経皮送達系に関する。この複数のパッチ単位は、一又は複数の分離線を有する一又は複数の境界に沿った各単位に分割可能である。この経皮送達系により提供される用量は、医師の決定に従って使用者により貼付される単位数に比例する。各パッチ単位は少なくとも支持層と少なくとも一つの治療薬が配合された薬剤層とを含む。この経皮送達系によって、宿主の皮膚または粘膜に、固体支持体上の滴定可能な用量の治療薬を投与することが可能になる。更に、本発明はこの経皮送達系を製造する方法に関する。なお更に、本発明は、本発明の経皮送達系を用いて、滴定可能な量の治療薬を宿主に供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
治療薬の持続的送達の一つの方法は、経皮パッチなどの経皮送達系の使用である。一般に、経皮パッチは、治療薬と、この経皮デバイスを患者の皮膚に接着するための接着剤とを含有し、これによりこのデバイスから患者の皮膚経由で活性剤を通過させることが可能となる。経皮パッチを使用する種々の利点は、治療薬の一定の送達速度、長い作用時間(このパッチは皮膚に1、3、7日あるいは更に長い間接着する能力がある)、非侵襲的な貼付、患者のコンプライアンスの改善を包含するものであり、またこの送達系を引き剥がすことによりいつでも治療薬の供給を中断できる。この投与手段の重要性は、胃腸管を横断することなく、そして標的部位に到達するのに先立って肝臓系を通る「第1パス」を回避することなく、治療薬を血流に送達することができるという事実にある。これにより、胃腸における医薬の不適合性および胃腸管内での医薬の代謝による望ましくない破壊を回避できる。治療薬が、いったん皮膚層を透過すると、血流中に吸収され、そこで所望の薬理治療効果を発揮することができる。これらのメリットは、専門家が治療薬を投与することを要せずに、得られるだろう。経皮吸収は、このような不適合性と代謝に関する患者間および患者内の変動を最少限にする。経皮吸収により、体内でより一定の医薬濃度を提供し、より大きい医薬効率を実現することが可能となると考えられる。適当な経皮吸収により、治療薬の効果的な投与が可能である。
【0003】
現行の医薬実務によれば、固定した用量で治療薬を送達する経皮系または経皮パッチが提供されている。パッチから宿主の皮膚または粘膜への治療薬の送達速度は、流出速度として知られているが、これは一定であり、処方される個別のパッチにより予め決められる。製造の経済性と国の承認の点で、異なる用量のパッチの入手が制限される。現状では、薬剤師は、種々の用量の治療薬を含有する多種のパッチをストックする必要がある。例えば、薬剤師は、時間当たり25、50、75、100、150単位などの用量強度(マイクログラム/時)を有する5種類の異なる経皮パッチをストックする必要がある。医師が患者に対してある用量強度を有するパッチを処方すると、患者は固定した用量の治療薬を有する経皮パッチの製品を充分量で購入する。この処方量が強すぎる場合には、患者は低減した用量の治療薬を有する経皮パッチの別な製品を購入しなければならない。この処方量が弱すぎる場合には、患者は増加した用量の治療薬を有する経皮パッチの別な製品を購入しなければならない。この現行の方法においては、患者に対して最適な用量を提供しないパッチは廃棄される。
【0004】
このように、滴定可能な用量の治療薬を送達することができる経皮送達系を提供する必
要性が存在し、長い間認識されながら、現在もなお未達成である。この滴定投与可能な経皮送達系は、最適な用量の治療薬を提供しない経皮パッチの廃棄を最少限にする利点を有する。患者に送達される治療薬の用量の細かいコントロールを可能にする経皮系の必要性も存在する。本発明の経皮送達系は、単一の経皮送達系から調節可能な用量の治療薬を提供することによりこの問題を解決する。本発明は、薬剤師によりストックされる必要がある種々の用量強度を有する異なるタイプの経皮パッチの数を減少させる。例えば、上記に挙げた薬剤師は2つのタイプの本発明の経皮送達系をストックする必要があるのみである。一つのタイプはパッチ当たり25単位の用量を有し、第2のタイプは単位パッチ当たり75単位の用量を有する。これらの2つのタイプのパッチから、25、50、75、100、150単位などの種々の用量強度を送達することが可能である。例えば、50単位の強度を得るためには、単位パッチ当たり25単位の用量のパッチを2つ使用してもよい。100単位の強度を得るためには、同一タイプのパッチを4つ使用してもよい。150単位の強度を得るためには、単位パッチ当たり75単位の用量のパッチを2つ使用してもよい。異なる用量を含有する5種類の異なるパッチをストックする代わりに、2種類の異なるパッチのみをストックすればよい。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
本発明は、滴定投与可能な経皮送達系により最適量の治療薬が宿主の皮膚または粘膜に送達されるという本発明者の観察に基づく。本発明の送達系は現状技術の3つの欠点に取り組むものである。第1に、経皮パッチの出現による、患者による自己投与が一般に関係する。貼付指示への患者の遵守が重要性をおびる。本発明の送達系は、本発明の送達系を使用することによって、医師からの簡単な指示に従って患者が治療薬の用量を調節する容易な方法を提供する。第2に、本発明の送達系は、薬剤師がストックする必要がある用量の異なる治療薬パッチの数を減少させる。第3に、本発明の送達系は、最適未満の用量の治療薬を有する経皮パッチの廃棄量を低減させる。
【0006】
一又は複数の治療薬を全身に送達するために、宿主の皮膚または粘膜に適用する滴定投与可能な経皮送達系を提供することが本発明の目的である。
【0007】
この送達系は、一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む。各パッチ単位は、上面と下面を有する支持層;この支持層の上面に配置された薬剤層;およびこのパッチ単位を宿主の皮膚層または粘膜層に接着する手段を含み、ここで、各パッチ単位はこの境界上の一又は複数の分離線により規定されている。
【0008】
一つの実施形態においては、この送達系は一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む。各パッチ単位は、(a)上面と下面を有する支持層;(b)この支持層の上面に配置されたマトリックス層付きの薬剤層;および(c)マトリックス層付きの薬剤層上に配置された接着層を含み、ここで、各パッチ単位はこの境界上の一又は複数の分離線により規定されている。
【0009】
一つの実施形態においては、この送達系は一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む。各パッチ単位は、(a)上面と下面を有する支持層;(b)その支持層の上面に配置されたマトリックス層付きの薬剤層;(c)マトリックス層付きの薬剤層上に配置された接着層;および(d)その接着層上に配置された被覆層を含み、ここで、各パッチ単位はこの境界上の一又は複数の分離線により規定されている。
【0010】
別な実施形態においては、この経皮送達系は一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む。各パッチ単位は、上面と下面を有する支持層;この支持層の上面に配置された薬剤と接着剤との層(a drug and adhesive layer);およびその接着層上に配
置された被覆層を含み、ここで、各パッチ単位はこの境界上の一又は複数の分離線により規定されている。
【0011】
更に、一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む経皮送達系を提供することが本発明の目的である。各パッチ単位は、上面と下面を有する支持層;この支持層の上面に配置された薬剤と接着剤との層;その薬剤と接着剤との層上に配置された放出制限層;その放出制限層上に配置された第2の薬剤と接着剤との層;およびその放出制限層上に配置された被覆層を含み、ここで、各パッチ単位はこの境界上の一又は複数の分離線により規定されている。
【0012】
加えて、滴定可能な用量の薬剤を患者に送達する経皮送達系を製造する方法を提供することが本発明の目的である。この方法は、上面と下面を有する支持層を形成し、この支持層を一又は複数の分離線で一つ以上の単位に分割することを含む。薬剤含有マトリックス層(a drug-in-matrix layer)を、この支持層の各単位の上面に配置し、それにより支持層上の全ての側部上に境界を残す。接着層を、薬剤含有マトリックス層上および支持層の境界上に配置する。次に、被覆層をこの接着層の上面に配置する。
【0013】
なお更に、一つの実施形態においては、この方法は、高くなった壁により規定された囲い内のリザーバー小室を複数個、支持層上に直接に形成することを含む。各リザーバー小室は、表面を有する境界により囲まれている。一又は複数の分離線を境界上に形成して、複数のリザーバー小室を別々の単位に分割する。薬剤層を各リザーバー小室中に配置する。次に、接着層を、薬剤層の上面上と境界の表面上に配置する。次に、被覆層を、境界と接着層の表面を被覆する接着層上に配置する。
【0014】
更に、滴定可能な用量の薬剤を患者に送達する経皮送達系を製造する方法を提供することが本発明の目的である。この方法は、上面と下面を有する支持層を形成し、この支持層を一又は複数の分離線で一つ以上の単位に分割することを含む。薬剤含有接着層(a drug-
in-adhesive layer)を、この支持層の各単位の上面に配置し、それにより支持層上の全ての側部上に境界を残す。次に、被覆層をこの接着層の上面に配置する。
【0015】
更に、一つの実施形態においては、この方法は、上面と下面を有する支持層を形成し、この支持層を一又は複数の分離線で一つ以上の単位に分割する行程を含む。薬剤含有接着層を、この支持層の各単位の上面に配置し、それによりこの支持層上の全ての側部上に境界を残す。半透過性膜をこの支持フィルム上に配置して、この薬剤含有接着剤を境界内に保持する。第2の薬剤含有接着層を、この半透過性膜上に配置する。境界を接着剤により被覆する。被覆層をこの薬剤含有接着層上に配置する。
【0016】
最後に、患者の皮膚また粘膜を通して治療薬を送達する方法を提供することが本発明の目的である。この方法は、経皮送達系を準備し;処方された数のパッチ単位を少なくとも一つの分離線に沿って経皮送達系から分離し;そして被覆層を除去して、接着層を露出させ、これを皮膚または粘膜上に貼付することを含む。
【0017】
添付の図面と一緒に発明の詳細な説明を読むことにより、本発明の種々の利点と新規な特徴が更に明白になるであろう。図面では類似の参照番号は類似の部分を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の経皮送達系
一般に、本発明は、患者の皮膚または粘膜に滴定可能な用量の治療薬を送達することが
できる分割可能な経皮送達系に関する。本発明の送達系は、一又は複数の境界に沿って連結された複数のパッチ単位を含む。言い換えれば、この送達系は、分割可能な治療薬パッチの単位を含み、パッチ単位の数に比例した制御された量の治療薬を所望のように送達する。図1に図示するように、滴定可能な経皮送達系10は複数の単位を含む。この実施形態においては、系10には4つの単位20が2行2列に配列されている(すなわち、2×2フォーマット)。各単位20は、治療薬送達ゾーン40を囲む4つの境界30を含む。この複数の治療薬パッチは境界に沿って分割可能である。この境界にミシン目を付けて分離線を形成して、これによりこの治療薬パッチを一又は複数の用量の治療薬を含む一又は複数の単位に分割するのを容易にする。この実施形態においては、各単位20は2つの分離線50を有する。
【0019】
図2で図示されるような別な実施形態においては、滴定可能な経皮送達系10は、一列に配列された複数の治療薬パッチ単位を含む。ここでは、系10には5つの単位20がある。各単位20は、治療薬送達ゾーン40を囲む4つの境界30を含む。図1における実施形態と同様、この複数の治療薬パッチはこの境界に沿って分割可能である。この実施形態においては、経皮送達系10の末端の2つの単位20は1つの分離線50を有し、それに対して経皮送達系の中間の3つの単位は2つの分離線を有する。
【0020】
本発明による使用に好適なパッチは、少なくとも(1)支持層と(2)治療薬を含む層とを含有しなければならない。各パッチ単位は治療薬のない境界により囲まれている。このパッチは、皮膚または粘膜の表面に固着するための接着手段を含んでもよい。好ましい実施形態においては、治療薬を含む層を保護する被覆層も存在する。別な好ましい実施形態においては、この被覆層は、気密性の剥離型シールを含み、これをヒートシールまたは接着剤により形成してもよい。別な好ましい実施形態においては、被覆層は、パッチから被覆層を容易に分離せしめる切り目を有する。
【0021】
本発明での使用に好適である好ましいパッチは、例えば、(1)マトリックスタイプのパッチ;(2)リザーバータイプのパッチ;(3)モノリシックな薬剤含有接着剤タイプのパッチ;および(4)マルチラミネートの薬剤含有接着剤タイプのパッチを包含する(Ghosh,T.K;Pfister,W.R.;Yum,S.I.,Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Interpharm Press,Inc.p.249−297)。これらのパッチは当分野でよく知られている。他のパッチも当業者により決められるように本発明に有用であることもある。
【0022】
本発明を実施するためには、マトリックスタイプのパッチが最も好ましい。
【0023】
マトリックスタイプの経皮系
図3aはマトリックスパッチを使用する本発明の送達系の実施形態を図示する。このマトリックスパッチは2つの相対する表面を含む支持層60を含む。この表面の一つは、治療薬を含有するマトリックス層である薬剤/マトリックス層(a drug with matrix layer)
70および接着層80と接触する。薬剤/マトリックス層70は、パッチ単位の全面積を被覆せず、図1および2に示すように薬剤送達ゾーン40に限定され、薬剤送達ゾーン40を囲む境界30を残す。分離線50は、隣接するパッチ単位20の境界30を分割する。この分離線は、この送達系の個別単位への分割を容易にする。分離線は、支持層中に作られたミシン目または脆弱個所により形成してもよい。
【0024】
好ましい実施形態においては、剥離ライナー(図示せず)を、接着層80または薬剤/マトリックス層70の上に配置する。ある場合には、支持フィルムへの薬剤の移行を最少
限とするために、不透過性層(図示せず)を、薬剤/マトリックス層70と接触する支持層60の表面上に包含することが必要である(例えば、米国特許第4,336,243号)。治療薬を含有する該マトリックスを、接着層80により皮膚に保持する。パッチと皮膚との接着を更に増すために、接着剤は、境界30の表面上にも存在してよい。
【0025】
支持層は、織った又は編んだ繊維又は線維、膜、ポリマー製の多孔性又は繊維状の骨組みにより形成されてよい。治療薬パッチの形成に有用なポリマーは、生体適合性であり、かつ皮膚または粘膜に対して刺激性でないものでなければならない。支持層は、使用する治療薬に対し不透過性である医薬的に許容しうる材料で製造され得る。支持層は、好ましくは治療薬に対する保護被覆として機能し、かつ支持機能をも提供しうる。支持層を製造するのに好適な材料の例は、合成ポリマー、例えば高密度および低密度のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ(エチレンフタレート)などのポリエステルのフィルム、金属箔、好適なポリマーフィルムの金属箔ラミネート、布帛である。支持材料の他の例は、木綿、羊毛などのような天然材料のものである。好ましくは、支持層に使用される材料は、このようなポリマーフィルムとアルミニウム箔などの金属箔とのラミネートである。一つの好ましいタイプの支持材料は、例えば、マイヤーらの米国特許第5,230,701号で記述されているような不織ウレタン材料である。更に好ましくは、この支持フィルムは密封性であり、ポリオレフィン油から構成されている。合成ポリエステルなどの密封性の支持フィルムは、結果として角質層の外層の水和を生じ、一方、非密封性支持体はこの領域の通気を可能にする(すなわち、皮膚表面からの水蒸気透過を促進する)。支持層は、所望の保護および支持機能を与える任意の適切な厚さとすることができる。好適な厚さは約10から約200ミクロンまでである。望ましい材料と厚さは当業者には明白であろう。
【0026】
一般に、マトリックス層は,制御可能な速度で医薬が通過できる薄い壁または被覆を形成しうる生物学的に許容しうるポリマーから形成される。好適なマトリックス材料の例は、限定ではないが、親油性ポリマー、例えばポリジメチルシロキサン、及び親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチンベースのヒドロゲル、またはポリビニルピロリドン/ポリエチレンオキシド混合物を包含する。このポリマーマトリックスのための代表的な材料は、限定ではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、シリコーン、ゴム、ゴム様の合成ホモ−、コ−あるいはブロックポリマー、ポリアクリルエステルとそのコポリマー、ポリウレタン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリメタクリレートポリマー(ヒドロゲル)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−ビニルオキシエタノールコポリマー、シリコーン、例えばポリシロキサン−ポリメタクリレートコポリマーなどのシリコーンコポリマー、セルロースポリマー(例えば、エチルセルロースとセルロースエステル)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの混合物を包含する。
【0027】
このマトリックス層のための好ましい材料は、一般ポリジメチルシロキサン構造の任意のシリコーンエラストマー、例えばシリコーンポリマーであってよい。好ましいのは医薬的に許容しうる架橋シリコーンポリマーである。このポリマーマトリックス層のための他の好ましい材料は、適当な過酸化物触媒を用いて架橋することができるジメチルおよび/またはジメチルビニルシロキサン単位を有する架橋性コポリマーであるシリコーンポリマーである。また、好ましいのは、スチレンと1,3−ジエンをベースとするブロックコポリマー(特に、線状スチレン−イソプレン−ブロックコポリマー又はスチレン−ブタジエンブロックコポリマー)、ポリイソブチレン、アクリレートおよび/またはメタクリレートをベースとするポリマーからなる上記ポリマーである。
【0028】
このポリマーマトリックス層は、医薬的に許容しうる架橋剤を、場合によっては包含してもよい。好適な架橋剤は、例えば、テトラプロポキシシランである。
【0029】
接着層を使用して、この経皮パッチを患者の皮膚に所望の投与期間、例えば、約5から約8日固定しうる。この経皮パッチの接着層が所望の期間接着性をもたらすことができないならば、例えば、接着テープ、例えば外科用テープにより経皮パッチを患者の皮膚に固定することにより、経皮パッチと皮膚との間の接着性を維持することが可能である。この経皮パッチが必要とされる投与期間患者の皮膚に接着される限り、患者の皮膚へのこの経皮パッチの接着が、経皮パッチの接着層によってのみ得られるか、あるいは外科用テープなどの補足的な接着源と組み合わせによって得られるかどうかは本発明の目的には重要でない。
【0030】
好ましい接着層は、このパッチを宿主の皮膚または粘膜に接合し、かつ活性成分を透過する接着層である。これは、また、好ましくは皮膚病学的に許容しうるものである。この活性成分透過性接着層は、好ましくは感圧接着剤である。薬剤を通過移行せしめる皮膚病学的に許容しうるよく知られた感圧接着剤のいずれも本発明で使用することができる。
【0031】
いくつかの好適な透過性接着剤は、アクリルあるいはメタクリル樹脂、例えばアクリルあるいはメタクリル酸とアルコール(例えばn−ブタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、1−メチルブタノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、イソオクタノール、n−デカノールまたはn−ドデカノール)とのアルコールエステルポリマー単独、またはエチレン性不飽和モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド、N−アルコキシメチルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、イタコン酸、酢酸ビニル、N−分枝状アルキルマレアミド酸(ただしアルキル基は10−24個の炭素数を有する)、グリコールジアクリレート、またはこれらのモノマー混合物と共重合されたもの;ポリウレタンエラストマー;ビニルポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドンおよびポリ酢酸ビニル;尿素ホルムアルデヒド樹脂;フェノールホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂;セルロース誘導体、例えばエチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレートおよびカルボキシメチルセルロースなどの;および天然ガム、例えばグアー、アカシア、ペクチン、澱粉、デストリア、ゼラチン、カゼインなどを包含する。他の好適な感圧接着剤は、ポリイソブチレン感圧接着剤、ゴム感圧接着剤およびシリコーン感圧接着剤を包含する。また、これらの接着剤を、当分野でよく知られた粘着剤および安定剤と混合してもよい。よく知られた皮膚病学的に許容しうる低アレルギー性の感圧接着剤のいずれも本発明の実施において使用することができる。
【0032】
代表的な接着剤は、アクリルあるいはメタクリル樹脂、例えばアクリルあるいはメタクリル酸とアルコール(例えばn−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、1−メチルブタノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、イソオクタノール、n−デカノールまたはn−ドデカノール)とのアルコールエステルポリマー単独、またはエチレン性不飽和モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシメチルアクリルアミド、N−アルコキシメチルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、イタコン酸、酢酸ビニル、N−分枝状アルキルマレアミド酸(ただしアルキル基は10−24個の炭素数を有する)、グリコールジアクリレート、またはこれらのモノマー混合物と共重合されたもの;天然あるいは合成ゴム、例えばスチレンブタジエン、ブチルエーテル、ネオプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンお
よびポリイソプレン;ポリ酢酸ビニル;尿素ホルムアルデヒド樹脂;フェノールホルムアルデヒド樹脂;レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂;セルロース誘導体、例えばエチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレートおよびカルボキシメチルセルロース;および天然ガム、例えばグアー、アカシア、ペクチン、澱粉、デキストリン、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、などを包含する。これらの接着剤を、当分野でよく知られた粘着剤および安定剤と混合してもよい。
【0033】
活性剤の透過性の点で好ましい接着剤は、好ましくは25〜35g/mの被覆重量のAvery Chemical CompanyのAS−351HSXなどのアクリルコポリマー接着剤である。この感圧接着剤は、約52%の全固体含量、約7.4ポンド/ガロンの重量で約15,000〜25,000センチポイズのブルックフィールド粘度(LVT/スピンドル番号4/12RPM、摂氏25度で)を有する永久に粘着性の膜を形成する架橋性ポリマーである。特に慣用の被覆装置で使用するために、これをヘキサンまたはトルエンにより所望の固体分および/または粘度範囲まで希釈することもできる。
【0034】
好ましい実施形態においては、この経皮パッチは剥離性の保護被覆層を包含する。この保護被覆層は、貼付に先立ち剥離されるものであり、例えばシリコーン処理により剥離性とされる限り、上述の支持層に使用される材料からなる。他の剥離性の保護被覆層は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、処理紙、アロファン、ポリ塩化ビニルなどである。一般に、この剥離性保護層は、接着層と接触し、所望の適用時間まで接着層の完全性を維持する便利な手段となる。
【0035】
別な好ましい実施形態においては、この経皮送達系は、再封できる小袋に貯蔵される複数の治療薬パッチを含む。
【0036】
リザーバータイプの経皮系
図3bはリザーバータイプのパッチを使用する本発明の送達系の実施形態を図示する。このリザーバータイプのパッチのデザインは、支持層60と、好ましくは、半透過性膜(図示せず)により皮膚から分離されている、溶液または懸濁液の形の薬剤層75を入れたリザーバー小室90とを特徴とする(例えば、米国特許第4,615,699号)。リザーバー小室90は支持層60と連続している。リザーバー小室90内の保護容積を規定する側壁35を有するように支持層60を成型および成形する。リザーバー小室90内に入れてもよい薬剤の量は、リザーバー小室90の寸法と側壁35の高さにより規定される。支持層60は上面65、側壁35を有し、これにより、図1および2に示すような薬剤送達ゾーン40と、薬剤送達ゾーン40全体に広がるリザーバー小室90とが規定される。接着層80を薬剤層75の上面および支持層65の表面上に配置する。これは、境界30を形成するリザーバー境界の周りにも延び、これにより皮膚とのシールを形成し、この経皮系の望ましい数の単位パッチを貼付する皮膚または粘膜に接してリザーバーを保持しうる。この境界では、分離線50は、支持層60により形成された高くなった壁100を通って延びる。
【0037】
一つの実施形態においては、薬剤送達ゾーン40は長方形である。あるいは、薬剤送達ゾーン40は、限定ではないが、卵形、円形、楕円形、三角形、長方形、六角形などの種々の形状であってもよい。好ましい実施形態においては、薬剤送達ゾーン40は同一の形状を有し、それゆえこの経皮系のパッチ単位に対し同心性である。
【0038】
リザーバーまたはマトリックス中に包含しうる医薬的に許容しうる他の化合物は、溶媒、例えばイソプロパノールなどのアルコール;後述のものなどの透過増進剤;およびセルロース誘導体、グアーガムなどの天然又は合成ガムなどの増粘剤を包含する。
【0039】
好ましい経皮送達系は、また、このリザーバーまたはマトリックス中に軟化剤を含有する。好適な軟化剤は、ドデカノール、ウンデカノール、オクタノールなどの高級アルコール、アルコール成分がポリエトキシラート化アルコールであるカルボン酸エステル、ジ−n−アジピン酸ブチルなどのジカルボン酸のジエステルを包含し、トリグリセリド、特にカプリル酸/カプリン酸の中鎖トリグリセリドまたはココナツ油が特に好適であることが判明した。好適な軟化剤の更なる例は、多価アルコール、例えば、レブリン酸、コクプリル酸(cocprylic acids)グリセロールおよび1,2プロパンジオールであり、これは、ま
た、ポリエチレングリコールによってエーテル化も可能である。
【0040】
モノリシックな薬剤含有接着剤タイプの経皮系
図3cはモノリシックな薬剤含有接着剤タイプのパッチを使用する本発明の送達系の実施形態を図示する。このモノリシックな薬剤含有接着剤タイプのパッチのデザインは、皮膚に接触する接着層中に治療薬製剤を含有する薬剤含有接着層100、支持層60、および好ましくは剥離ライナー(図示せず)により特徴付けられる。この接着剤は治療薬を放出し、かつまたパッチを皮膚に接着させる。この薬剤含有接着剤タイプ送達系は別個の接着層を必要とせず、パッチの厚さが最小化される(例えば、米国特許第4,751,087号)。それゆえ、薬剤含有接着剤タイプのパッチは薄く、快適である。図1および2に図示されるように、この経皮系の各単位は、薬剤送達ゾーン40を囲む支持層により形成される一又は複数の境界を含む。薬剤含有接着層100は、このパッチ単位の全面積を被覆せず、図1および2に示すように薬剤送達ゾーン40に限定され、薬剤送達ゾーン40を囲む境界30を残す。治療パッチ単位を皮膚に更に固着するために、境界30を接着剤により被覆する。いずれのパッチデザインにおけると同様に、複数の治療パッチを境界に沿って分離できる。この境界にミシン目を付けて分離線50を形成してもよく、これによりこの治療パッチを、一又は複数の投与量の治療薬を含む一又は複数の単位に分割するのが容易になる。
【0041】
マルチラミネートの薬剤含有接着剤タイプの経皮系
図3dはマルチラミネートの薬剤含有接着剤タイプのパッチを使用する本発明の送達系の実施形態を図示する。このマルチラミネート薬剤含有接着剤タイプパッチのデザインでは、単一支持層60下で、2つ以上の異なる薬剤含有接着層100の間に、追加の半透過性膜200を更に組み入れる(Peterson,T.A.and Dreyer,S.J.Proceed.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater:21:477−478)。各々の薬剤含有接着層100または半透過性の膜200は、パッチ単位の全面積を被覆せず、図1および2に示すように薬剤送達ゾーンに制限され、これにより薬剤送達ゾーンを囲む境界30を残す。各々の半透過性膜200の縁150を支持フィルム60に固着し、これにより薬剤含有接着層を所定の位置に保持する。治療薬パッチ単位を皮膚により固着するために、境界30を接着剤により被覆する。いずれのパッチ設計におけると同様に、複数の治療薬パッチはこの境界に沿って分離しうる。この境界にミシン目を付けて分離線50を形成してもよく、これによりこの治療薬パッチを一又は複数の投与量の治療薬をそれぞれ含む一又は複数の単位に分割するのが容易になる。
【0042】
一つの実施形態においては、任意のパッチデザイン、特にリザーバー型あるいはマルチラミネート型パッチにおいて放出制限層を使用してもよく、例えば、微小ラミネート固相リザーバー型パッチで使用される薄い非多孔性のエチレン酢酸ビニルフィルムまたは薄い微小多孔性のポリエチレンフィルムを使用してもよい。好適な放出制限層は、限定ではないが、感圧性剥離ライナー(例えば、シリコーン−フルオロシリコーンおよびペルフルオロカーボンベースのポリマー)の薄被膜付きの、閉塞性で不透明又は透明なポリエステルフィルムを含む。所望により速度制御性であってもなくとも、本発明の放出制限層の材料は当分野で既知である。この放出制限層は市販のものであり、R.E.Kesting,
Synthetic Polymer Membranes,McGraw Hill,Chapters 4 and 5,1971;1.D.Ferry,Ultrafiltration Membranes,Chemical Review,Vol.18, p.373,1934で記述されているように、いくつかの異なる方法により製造され得る。最も有利な結果を得るためには、当分野で既知の方法に従って、この材料を所望の形態の構造物に成形して、薬剤の所望の放出速度を得なければならない。加えて、本発明のパッチの要素として使用する場合,この材料は、使用される薬剤に対して適切な耐薬品性を有し、かつ非毒性でなければならない。
【0043】
本発明において使用される速度制御性制限層を形成するのに有用な材料は、限定ではないが、下記のものを包含する。ポリカーボネート、すなわちビスフェノールAなどのジヒドロキシ芳香族化合物のホスゲン化によりカーボネート基がポリマー鎖中で繰り返す、線状の炭酸ポリエステル;このような材料は、General Electric Companyにより商品名Lexanとして販売されている。ポリ塩化ビニル;このような一つの材料は、B.G.Goodrich Chemical Companyにより商品名Geon121として販売されている。ポリヘキサメチレンアジパミドなどのポリアミドおよび「ナイロン」として一般に知られている他のこのようなポリアミド。モダクリル(Modacrylic)コポリマー、例えばポリ塩化ビニル(60パーセント)およびアクリロニトリル(40パーセント)から作られる、商品名DYNELとして販売されているもの、およびスチレン−アクリル酸コポリマーなど。線状鎖中のジフェニレンスルホン基により特徴付けられるタイプのものなどのポリスルホンが有用である。このような材料は、商品名P−1700としてUnion Carbide Corporationから入手される。Pennsalt Chemical Corporationにより商品名Kynarとして販売されているポリフッ化ビニリデン、E.I.DuPont de Nemours & Co.により商品名Tedlarとして販売されているポリフッ化ビニル、およびAllied Chemical Corporationにより商品名Aclarとして販売されているポリフルオロハロカーボンなどのハロゲン化ポリマー。Hercules Incorporatedにより商品名Pentonとして販売されているポリクロロエーテル、および他のこのような熱可塑性ポリエーテル。E.I.DuPont de Nemours & Co.により商品名Delrinとして販売されているポリホルムアルデヒドなどのアセタールポリマーなど。ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸n−ブチルなどのアクリル樹脂。
【0044】
また、その他のポリマー、例えばポリウレタン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリ酢酸ビニル、芳香族および脂肪族ポリエーテル、セルロースエステル、例えば、三酢酸セルロース;セルロース;コロジオン(11%の窒素を含む硝酸セルロース);エポキシ樹脂;オレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン;多孔性ゴム;架橋ポリエチレンオキシド;架橋ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルアルコール;米国特許第3,549,016号および第3,546,141号で示されるようなタイプの2つのイオン会合性ポリマーから形成された高分子電解質構造物;ポリスチレン誘導体、例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびポリビニルベンジルトリメチル塩化アンモニウム;ポリヒドロキシエチルメタクリレート;ポリイソブチルビニルエーテルなども使用されてよい。前述の列挙したポリマーからのモノマーを種々の比率で反応させることにより形成することができる多数のコポリマーも、本発明で使用される速度制御性制限層の製造に有用である。
【0045】
膜の性状、その多孔性および組み合わせて使用される膜の数に依って、この速度制御性放出制限層は種々の厚さを有することができる。典型的には、20〜200ミクロンの厚さが使用される。
【0046】
利用できる治療薬
この経皮パッチ上に配置することができる利用可能な治療薬は、いかなる治療物質または薬剤でもよい。この治療薬は、種々の物理的な状態、例えば、分子分散形、結晶形またはクラスター形のものでよい。治療薬をリポソームによりカプセル化してもよい。本発明で有用な治療薬を含むリポソームを、当分野で既知の多数の方法で製造しうる。例えば、ポリマー性材料の壁または膜を有するマイクロカプセルの製造のためのマイクロカプセル化法は、Microencapsulation and Related Drug Processes by P.D.Deasy,Marcel Dekker Inc.New York(1984)などの文献に記述されている。
【0047】
本発明の実施においては、この経皮パッチを貼付する体表面により吸収されうるいかなる全身性の活性薬剤も、それらの既知の用量と用法に従って、使用することができる。勿論、所望の治療効果を得るのに必要な薬剤量は、使用する特定の薬剤に依って変わる。本発明の送達系による投与に好適な全身性の薬剤は、米国特許第4,031,894号で記述されているような嘔吐と吐き気を治療するのに有用なもの、例えば好ましくはスコポラミンを包含する。
【0048】
他の好適な全身性の薬剤は、米国特許第3,996,934号で記述されており、限定はないが、ペニシリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロラムフェニコール、およびスルホンアミドなどの抗菌剤;フェンタニルとエトルフィンなどのよく効く麻酔剤および鎮痛剤;およびブプレノルフィン、ペンゾカイン、モルフィンとモルフィン誘導体、リドカイン、プリロカイン、メピバカインなどの局所麻酔薬またはインドメタシン、ジクロフェナックまたはエトペナメートなどの非ステロイド性抗リューマチ薬/抗炎症剤;ペントバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、セコバルビタールナトリウム、コデイン、(a−ブロモイソバレリル)尿素、カルブロマール、およびナトリウムフェノバルビタールなどの鎮静剤、3−(2−アミノプロピル)インドールアセテート、3−(2−アミノブチル)インドールアセテートなどの精神興奮薬;レセルピン、塩酸クロルプロマジン、および塩酸チオプロパゼートなどのトランキライザー;アドレノコルチコステロイド、例えば6−α−メチルプレドニソロンなどのホルモン;アンドロゲン性ステロイド、例えば、メチルテストステロン、およびフルオキシメステロン;エストロゲン性ステロイド、例えばエストロン、17−β−エストラジオールおよびエチニルエストラジオール;プロゲステロン、およびノルエチンドロン;およびチロキシン;アスピリン、サリシルアミド、およびナトリウムサリシレートなどの解熱剤;モルフィンおよび他の麻酔性鎮痛剤;抗糖尿病薬、例えば、インスリン;心臓血管薬、例えばニトログリセリン、およびジギトキシン、ジゴキシン、ウアバインなどの強心配糖体;アトロピン、メトスコポラミンブロミド、フェノバルビタール付きのメトスコポラミンブロミドなどの鎮痙剤;4−アミノキノリン、9−アミノ−キノリン、およびピリメタミンなどの抗マラリア薬;およびビタミン、必須アミノ酸、および必須脂などの栄養剤、を包含する。
【0049】
加えて、本発明の実施においては、多様な局所性の活性薬剤を、それらの既知の用量と用法に合わせて、使用することができる。好適な薬剤は、限定ではないが、制汗剤、例えば、塩化アルミニウム;脱臭剤、例えば、ヘキサクロラフェン、メチルベンゼトニウムクロリド;収斂薬、例えば、タンニン酸;刺激剤、例えば、メチルサリシレート、ショウノウ、カンタリス;角質溶解薬、例えば、安息香酸、サリチル酸、レゾルシノール、ヨードクロルヒドロキシキン;抗真菌剤、例えばトルナフテート、グリセオフルビン、ナイスタチンおよびアンホテリシン;抗炎症剤、例えばコルチコステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアモイノロンアセトニド、フルドロコルチゾン、フルランドレノトン、フルメタゾン、デキサメタゾンナトリウムホスフェート、ベタメタゾン、デサメタゾンナトリウムホスフェー
ト、ベタメタゾンバレレート、フルオシノロンアセトニド;フルオロメトロン;および塩酸プラモキシン;新生物抑制剤、例えばメトトレキセート、および抗菌剤、例えばバシトラシン、ネオマイシン、エリトロマイシン、塩酸テトラサイクリン、塩酸クロロテトラサイクリン、クロラムフェニコール、オキシテトラサイクリン、ポリミキシンB、ニトロフラクソン、マフェニド(アルファ−アミノ−p−トルエンスルホンアミド)、ヘキサクロロフェン、ベンザルコニウムクロリド、セタルコニウムクロリド、メチルベンゼトニウムクロリド、および硫酸ネオマイシン、を包含する。
【0050】
薬剤の前述の列挙に関して、薬剤が「全身性あるいは局所性に」活性であるという特性付けは分類のためであり、一つの薬剤は使用方法に依って全身性かつ局所性に活性であることができることは明白であろう。
【0051】
心拡張に関連する症状の治療の助けに使用される薬剤は、本発明での使用に好適な治療薬でありうる。例えば、ジゴキシン、アンギオテンシン転換酵素、ACE阻害薬、例えばカプトプリルおよびエナロプリルを使用してもよい。
【0052】
他の好適な薬剤は、硝酸塩部分を有する化合物など、米国特許第3,742,951号に記述されている冠状血管拡張薬を包含する。いくつかの好適な冠状血管拡張薬は、有機および無機の硝酸塩、例えば硝酸アミル、ニトログリセリン(三硝酸グリセリル)、硝酸ナトリウム、四硝酸エリスリチル、四硝酸ペンタエリスリトール、二硝酸イソソルビド、六硝酸マンニトール、トロールナイトレート(trolnitrate)ホスフェート(トリエタノー
ルアミンビスホスフェート)などを包含する。ニトログリセリンが好ましい冠状血管拡張薬である。また、好適なのは、プロパノールオルなどのベータアドレナリン作用性遮断薬である。
【0053】
本発明の実施の場合、シクロピロックス、クロロキシレノール、トリアセチン、サルコナゾール、ナイスタチン、ウンデシレン酸、トルナフテート、ミコニゾール、クロトリマゾール、オキシコナゾール、グリセオフルビン、エコナゾール、ケトコノゾール、およびアンホテリシンBなどの抗真菌剤を組み込んでもよい。ムピロシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、銀スルファジアジンなどの抗生剤も使用してもよい。ヨウ素、ポビドン−ヨウ素、ベンザルコニウムクロリド、安息香酸、クロルヘキシジン、ニトロフラゾン、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、ヘキサクロロフェン、フェノール、レゾルシノール、およびセチルピリジニウムクロリドなどの防腐剤を、同様にこの局所性薬剤組成物またはパッチの中に組み込むことができる。更に、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、トリアムシロロン、ベタメタゾン、デキサメタゾンなどの抗炎症剤を組み込んでもよい。
【0054】
上述の薬剤に加えて、本発明の実施において、所望のポリマー透過性または輸送性を有する、上記薬剤の単純な医薬的に許容しうる誘導体、例えば
エーテル、エステル、アミド、アセタール、塩など、あるいはこれらの薬剤の組成物を製造および使用することができる。上述の薬剤は、1又は複数の他の薬剤と組み合わせて使用可能である。
【0055】
上記の薬剤および他の薬剤は、単独で、あるいは医薬キャリアと組み合わせた形で、本発明の治療パッチ中に存在させることができる。本発明の目的に適合する医薬キャリアは、薬剤、宿主、またはこの経皮送達系を含む材料に悪影響を及ぼさない当分野で既知のキャリアである。好適な医薬キャリアは、殺菌した水、食塩水、ブドウ糖、水または食塩水中のブドウ糖、ヒマシ油1モル当たり約30〜35モルのエチレンオキシドを結合した、ヒマシ油とエチレンオキシドとの縮合生成物、低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル、低アルカノール、油、例えばトウモロコシ油、ピーナッツ油、ゴマ油、炭化水素、
例えば鉱物油、及びシリコーンであって、乳化剤、例えば脂肪酸のモノ若しくはジグリセリド、またはホスファチド、例えばレシチンを加えたもの、グリコール、ポリアルキレングリコール、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどを含有する水性媒体、それ単独、あるいはさらに好適な分散剤、例えばレシチン、ステアリン酸ポリオキシエチレンを加えたもの、を包含する。このキャリアは、また、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤などの補助剤も含有してよい。
【0056】
極めて多数の全身性の活性薬剤が経皮経路での投与に好適であることが判明した。ある種の医薬は皮膚からある程度吸収される。これは経皮医薬吸収と呼ばれる。吸収される医薬と共に吸収促進化合物(皮膚透過増進剤とも呼ばれる)を使用することにより、ある種の医薬の経皮吸収速度を増大させることができることが見出されている。
【0057】
透過増進剤を、該薬剤組成物またはパッチ中に包含して、皮膚の中への、および皮膚を通しての送達を最適化することができる。Ghosh,T.K.et al,1993,Pharm.Tech.17(3):72−98;Ghosh,T.K.et al,1993,Pharm.Tech.17(4):62−89;Ghosh,T.K.et al,1993,Pharm.Tech.17(5):68−76。透過増進剤は、患者の血流中への治療薬の透過および/または吸収を促進する化合物である。この透過増進剤は、医薬的に不活性、非毒性、かつ非アレルゲン性であり、急速かつ可逆的に作用を開始し、そして薬剤組成物と適合性でなければならない(Pfister et al,19
90,Pharm.Tech.14(9):132−140,これを参照してこの明細書に組み込む)。本発明の目的に好適な透過増進剤は、宿主、薬剤に悪影響を及ぼさず、あるいは経皮送達系を形成する材料に変化又は悪影響を及ぼさない。この透過増進剤を単独で使用するか、あるいは許容しうるキャリアなどと混和することができる。
【0058】
有用な透過増進剤は、限定ではないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、またはオクトリルフェニルポリエチレングリコールを包含する。更に好ましい透過増進剤は、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N−デシルメチルスルホオキサイド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、およびモノオレイン酸プロピレングリコール);N−メチルピロリドン;ヘキサノール、シクロヘキサンなどの4から12個の炭素数を有する1価の飽和および不飽和の脂肪族、脂環式および芳香族アルコール;ヘキサン、シクロヘキサン、イソプロピルベンゼンなどの5から12個までの炭素数を有する脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素;シクロヘキサノンなどの4から10個までの炭素数を有する脂環式および芳香族アルデヒドおよびケトン;アセトアミド;N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−(2ヒドロキシエチル)アセトアミドなどのN,N−ジ(低級)アルキルアセトアミド;および脂肪族、脂環式および芳香族エステルなどの他の輸送剤;N,N−ジ(低級)アルキルスルホキサイド;精油;ハロゲン化あるいは硝化された脂肪族、脂環式および芳香族の炭化水素;サリシレート;ポリアルキレングリコールシリケート;界面活性剤;これらの混合物などを包含する。
【0059】
あるいは、例えば、刈毛、剃毛または脱毛剤の使用により貼付部位から毛を除去することにより、治療薬の透過を増進してもよい。別な透過増進剤は熱である。とりわけ、この経皮パッチの貼付後、貼付部位に赤外ランプなどの輻射熱の形を使用することにより、熱による増進を誘起することができると考えられる。
【0060】
種々の方法を使用して、治療薬をこのパッチ上に配置してもよい。例えば、この治療薬を吸収、吸着、化学結合、および共有結合によりこのパッチ上に配置してもよい。
【0061】
薬剤含有マトリックスタイプのパッチでは、米国特許第4,839,174号、第4,
908,213号、および第4,943,435号で開示されているように、活性剤が皮膚まで拡散するポリマーマトリックスフィルム中に治療薬を溶解あるいは懸濁する。
【0062】
本発明での使用に好適な治療薬は、上記に説明したようにリザーバー、マトリックス、またはマイクロカプセル中に存在してよい。パッチ上に配置する場合、キャリアを治療薬と共に使用してもよい。キャリア材料は、典型的には、2つのタイプのうちの1つである。1つのタイプは、むしろ経時的に均一に生体侵食されるものであり、従ってキャリアの生体侵食も、パッチから薬剤を放出させる主要な機構である。第2のタイプは、薬剤の放出期間の実質的な部分の間、本質的に無傷のままで留まる材料である。薬剤の放出機構は、キャリアが同時に生体侵食されることを必要としない拡散または他の機構によるものである。多数のキャリア材料が、本発明の送達系の種々の実施形態に好適であろう。これらのキャリア材料は、天然産物、例えばケラチン、トリグリセリド、脂肪酸、脂質、ラテックス、並びに誘導体、セルロース誘導体の塩、セルロースアセテートフタレートのアルカリ塩あるいはアルカリ土類塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのアンモニウム塩、ポリサッカライド、合成ポリマー、例えば、ポリグリコール酸、及びポリエチレングリコールの誘導体、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、およびこれらのコポリマー;他の材料、例えば澱粉、脂肪アルコール、アルギネートポリマー、アルブミン、カルシウムカゼインネート、カルシウムポリペクテートまたはジェランガム、であってよい。
【0063】
薬剤含有接着剤タイプのパッチと共に使用するための接着剤は、当分野でよく知られたものであり、通常の熟練者ならば容易に選択しうる。普通に使用される3つの基本的なタイプは、ポリイソブチレン、シリコーン、およびアクリルである。本発明で有用な接着剤は、高および低湿度、入浴、発汗などの広範囲の条件下で機能することができる。好ましくは、この接着剤は、天然あるいは合成ゴム、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサン、およびヒドロゲル(例えば、高分子量ポリビニルピロリドンとオリゴマー型ポリエチレンオキシド)をベースとした組成物である。最も好ましくはポリアクリレートである。
【0064】
また、粘着性を呈する多数の既知の合成物、天然物あるいは変成した天然物により、治療薬または薬剤をこのパッチ上に接着してもよい。この接着剤は、キャリアを形成する材料、並びに薬剤と適合しなければならない。種々の接着剤が、パッチを皮膚または粘膜上に接着させるために、および治療薬または薬剤をパッチ上に保持するために本発明に好適である。一つの接着剤はゼラチンとポリ(L−グルタミン酸)(PLGA)から構成されるヒドロゲルである。このヒドロゲルはゼラチンとポリ(L−グルタミン酸)を化学架橋することにより形成される。別な接着剤はフィブリングルーである。好適なフィブリングルーは、フィブリノーゲン、トロンビン、塩化カルシウムおよび因子VIIIを包含する。別の接着剤ファミリーはシアノアクリレートである。好ましいシアノアクリレートは、ブチル−2−シアノアクリレート(ヒストアクリル)、エチル−2−シアノアクリレート、およびオクチル−2−シアノアクリレートを包含する。ゼラチン−レゾルシノールホルムアルデヒド−グルタルアルデヒドは、別の好適な接着剤である。他の接着剤は、カルボキシメチルおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他のセルロース誘導体;トラガカント、カラヤ、イナゴ豆および他の合成および天然ガム、例えばアルギン、キトサン、澱粉、ペクチン、および天然樹脂を包含する。加えて、限定ではないが、好適な接着特性を有する多数のポリマー、例えば、アミノ基、ジ−およびトリ官能性ジオールを有するポリウレタン;ポリ酢酸ビニル;ポリアミド;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸;ポリスチレン;ポリラクチド;ポリラクトン;ポリエステル、ポリアミド、およびポリウレタンを含むブロックコポリマー;およびこれらの組み合わせと混合物、も使用することができる。
【0065】
別な実施形態においては、この治療薬を、被膜または層としてパッチ上に塗布する。異
なる治療薬を有する一つ以上の被膜をパッチに塗布してもよく、それにより一つ以上の治療薬および/またはキャリアをパッチ上に組み込んでもよい。用いる治療薬の拡散あるいは溶離速度、並びにこの治療薬を体組織に送達する所望の速度により、この異なる層の配置を決めうる。
【0066】
治療薬の経皮送達のための適切な投与量の選択は重要な考慮事項である。所望の治療効果を得るためにパッチ上に組み込まれる活性剤の量は、所望の投与量、使用する特定の薬剤に対する、使用するパッチの速度制御性材料の透過性、およびパッチを皮膚または体粘膜上に維持すべき時間の長さに依って変わる。本発明は、滴定可能な用量の薬剤を提供するように設計されているので、この経皮送達系により提供される投与量は、貼付されるパッチ単位数に比例する。投与量の下限は、最少限の可能な投与量を維持するために充分な量の薬剤が各パッチ単位に残らなければならないという事実により決められる。投与量と投与頻度は訓練された医学専門家により決められる。この治療パッチ上の治療薬の濃度または装填量は、所望の治療効果に応じて変えられる。また、装填量は、パッチ中のキャリアに対する治療薬の比率の点から、使用する治療薬とキャリアのタイプおよびパッチ上の治療薬が体組織に放出される速度に依存する。一般に、このパッチは、0.1から90重量%、あるいは好ましくは10から45重量%で治療薬を含有してよい。最も好ましくは、25から40重量%で治療薬をパッチ中に組み込まなければならない。
【0067】
送達速度は、種々のタイプのパッチにおいて放出制限層と接着層により制御されるので、経皮送達系中の薬剤の濃度は実質的に制約を受けない。しかしながら、この濃度は、少なくとも、いったん保護被覆層を除去したならば、薬剤がそのビヒクルから遊離される程度の大きさでなければならない。本発明の一つの利点は、薬剤量/単位面積/単位時間が、薬剤の適切な投与に不充分ならば、本発明の経皮パッチの単位を追加使用してもよいということである。しかしながら、充分に高い薬剤濃度を使用して、パッチサイズを抑えることが更に有利である。最も有利であるのは、医学的な点、美的な点、および患者の便宜の点を考慮して、貼付部位に合理的に関連する領域において、治療に有用な程度で、薬剤を送達することのできる送達系である。これらの制約は当分野の製品設計者によく知られている。
【0068】
経皮送達系の製造方法
本発明は、また、この経皮送達系を製造する方法にも関する。本発明のこの方法は、一般に、上面と下面を有する支持層を形成することを伴う。この支持層を一又は複数の分離線で一つ以上の単位に分割する。薬剤層をこの支持層の各単位の上面に配置し、支持層上の各単位のすべての側部上に境界を残す。接着手段を使用して、患者の皮膚または粘膜上にこの経皮送達系を取り付ける。
【0069】
一つの実施形態においては、この方法は、薬剤層上及び支持層の境界上に接着層を配置することを更に含む。次に、被覆層をこの接着層の上面に配置する。
【0070】
一つの実施形態においては、本発明の方法は、上面と下面を有する支持層を形成することを伴う。この支持層を一又は複数の分離線で一つ以上の単位に分割する。次に、薬剤含有マトリックス層を、この支持層の各単位の上面に配置し、支持層上のすべての側部上に境界を残す。次に、接着層を薬剤含有マトリックス層上及び支持層の境界上に配置する。最後に、被覆層を接着層の上面に配置する。
【0071】
この分離線は、支持層上に個別の分離したパッチ単位を形成する。これらはまた経皮送達系の各単位を規定する。支持層は上述の材料でできている。支持層は一又は複数の分離線を有する。複数の分離線は、好ましくは相互に平行および/または垂直である。好ましくはまた、分離線は、支持体の長さおよび/または幅に沿って規則的な間隔で配置される
。医師の指示通りに使用者が経皮送達系を所望の数の単位に比較的きれいに分離することができる限り、この分離線は種々の形状であってよい。また、患者がこの線に沿って引き裂くか、あるいははさみで切断することができるように、この分離線は、支持体の脆弱箇所または分離線の印刷であってもよい。好ましい分離線はミシン目の線である。この支持体の脆弱箇所は、支持体中に成形あるいは形成された支持体の薄くした部分であってよい。ある場合には、最適な用量を投与するため、経皮送達系を所望の単位の数に確実にきれいに分離するために、脆弱箇所による線とミシン目とを組み合わせることも望ましい。この分離線を構築する他の有用な方法は、米国特許第5,496,605号に記述されている。この分離線によって、経皮送達系を適用毎に所望の数の単位に容易に分割できることが重要である。この経皮送達系を一又は複数の分離線を有する経皮送達系と記述したが、当業者ならば、もう一つの態様において、本発明の特徴として、経皮送達パッチの複数の単位が、同一の1又は複数の分離線に沿って相互に連結されうることを理解するであろう。この特徴に関係なく、本発明は、単一の経皮送達系を用いて種々の投与量の治療薬または薬剤を送達するための経皮送達系および方法を提供する。
【0072】
薬剤含有マトリックス層は、活性剤を通過させて皮膚にまで拡散させうるポリマーマトリックス中に、治療薬を溶解あるいは懸濁することにより形成される。薬剤含有マトリックス層を形成する方法は、米国特許第4,839,174号、第4,840,796号、第4,908,213号、および第4,943,435号に記述されている。薬剤含有マトリックス層を支持層の各単位の上面に配置する場合には、薬剤含有マトリックス層は、支持層の単位全体とは同一の拡がりをもたない。支持層を薬剤含有マトリックス層により完全に被覆しないように、すべての側部上に境界を残す。これは、薬剤が分離線から漏れることを防止するためである。種々の方法を使用して、以下に述べるように薬剤を経皮送達系上に配置してよい。次に、接着層を薬剤含有マトリックス層上に配置する。また接着層はこの支持層の境界も被覆する。この境界は、好ましくは幅が均一であり、約0(ゼロ)cmから約2.0cmまでの範囲とすることができる。この経皮送達系の各パッチ単位を別々に保護するように、被覆層を接着層上に配置する。この被覆層上に切り目を形成して、経皮パッチを使用する時に、被覆層を接着層から容易に分離できるようにする。
【0073】
本発明は、高くなった壁により規定された囲い内に複数のリザーバー小室を、直接に支持層上で形成することを伴う、本発明の送達系を製造する方法を更に提供する。各リザーバー小室は、表面を有する境界により囲まれる。この複数のリザーバーを境界上の一又は複数の分離線により分割する。このリザーバー小室の各単位上に薬剤層を配置する。次に、接着層を、薬剤層上と境界の表面上とに配置する。次に、この接着層上に被覆層を配置する。
【0074】
本発明の経皮送達系を製造するこの方法においては、複数のリザーバー小室が支持層上に形成される。既述したように、各パッチ単位は境界により囲まれている。周囲の境界を高くするか、あるいは境界内にへこみを作ることにより、リザーバー小室の側壁を支持層上に形成してよい。高くなった壁の高さは、リザーバー小室上に堆積されるべき治療薬の量により決められる。しかしながら、壁の高さは、患者による使用において快適であるように5mm未満でなければならない。各リザーバー小室は境界により囲まれる。分離線はこの境界上に存在し、このリザーバー小室を単位に分割するのを可能とせしめる。
【0075】
本発明は、また、上面と下面を有する支持層を形成することを伴う、本発明の送達系を製造する方法を提供する。支持層を、この境界上の一又は複数の分離線により分割する。次に、薬剤含有接着層を、この支持層の各単位の上面に配置し、支持層のすべての側部上に境界を残す。次に、この接着層の上面に被覆層を配置する。
【0076】
本発明の経皮送達系を製造するこの方法においては、一又は複数の薬剤を接着剤と混合
し、この組成物を、支持層上の各単位の上面に配置することにより、この薬剤含有接着層を形成する。経皮送達系の各単位が別々に保護されるように、被覆層をこの薬剤含有接着層上に配置する。
【0077】
本発明は、上面と下面を有する支持層を形成することを伴う、本発明の送達系を製造する方法を更に提供する。この支持層を、境界上の一又は複数の分離線により1つ以上の単位に分割する。次に、薬剤含有接着層をこの支持層の各単位の上面に配置し、支持層のすべての側部上に境界を残す。半透過性膜を薬剤含有接着層上に配置する。この半透過性膜を支持フィルムに固着して、薬剤含有接着剤を境界内に保持する。次に、第2の薬剤含有接着層をこの半透過性膜上に配置する。次に、境界を接着剤により被覆する。最後に、被覆層を各単位パッチの上に配置する。
【0078】
本発明の経皮送達系を製造するこの方法においては、一又は複数の薬剤を接着剤と混合することにより、薬剤含有接着層を製造するのに使用する組成物を形成し、そしてこの組成物を、境界内の支持層上の各単位の上面に配置する。
【0079】
発明を使用する方法
本発明の方法を使用して、治療薬または薬剤を、患者の皮膚または粘膜を通して全身的に送達することができる。
【0080】
この方法は本発明の経皮送達系を準備する段階を含む。次に、使用者は、境界に沿った少なくとも一つの分離線に沿って、処方された数のパッチ単位を経皮送達系から分離する。次に、被覆層を除去し、接着層を露出し、処方された数の経皮送達パッチ単位を皮膚または粘膜上に貼付する。あるいは、使用者は、処方された数のパッチ単位に対する被覆層を経皮送達系から除去し、次に処方された数のパッチ単位を経皮送達系から分離する。医師の指示の下に、使用者は、適用毎に、使用するパッチ単位の数を増加したり、あるいは減少してもよい。好ましい実施形態においては、適用毎に、使用するパッチ単位の数は、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つであってもよい。
【0081】
この治療薬パッチからの経皮送達の速度は、皮膚透過性の関数であり、皮膚透過性は角質層の厚さに依って、解剖学的部位ごと、変わることが示された。例えば、この透過性は、一般に、足底足弓、外側足根関節、手掌、腹側前腕、背側前腕、背部、胸部、大腿、腹、頭皮、腋の下、前頭、および陰嚢から順に増加する(Wester,R.C.and Maibach,H.I.(1989)Regional Variation in Percutaneous Absorption:In Percutaneous Absorption,Mechanism,Methodology,Drug Delivery,2nd ed.,Eds.R.L.Bronaugh and H.I.
Maibach,Marcel Dekker,Inc.,New York,pp.111−119)。
【0082】
本発明の経皮送達系を患者の皮膚のどの領域にも直接に貼付してもよく、下背部、胸部、上腕、および殿部が最適な領域である。似た方法で、このパッチを、例えば口蓋又は頬の粘膜への貼付により口の粘膜に貼付して、口の粘膜による薬剤の吸収を達成することができる。同様に、所望により、接触可能である場合には、このパッチを他の粘膜に貼付することができる。
【0083】
好ましい実施形態においては、複数の治療薬パッチ単位を含む経皮送達系は、再封可能な小袋中に貯蔵される。各貼付ごとに、経皮送達系をこの小袋から取り出し、かつ処方された数のパッチ単位をこの小袋から取り出し、患者の皮膚または粘膜上に貼付する。残ったパッチ単位をこの再封可能な小袋中に入れる。
【0084】
好ましい実施形態においては、この治療薬の持続的な送達は、約3日以上、好ましくは、少なくとも約1週間以上の長時間にわたるものである。がんまたは他の慢性的な症状の治療においては、薬剤を約1ヶ月までの期間にわたって送達することが好ましい。
【0085】
本発明は、以下の態様を含むものである。
(1) 複数のパッチ単位を含む経皮送達系であって、それぞれのパッチ単位が、
(a)上面と下面を有する支持層;
(b)前記支持層の上面上に配置された不透過性層;
(c)前記不透過性層上に配置され、治療薬のない前記支持層の境界によって囲まれた薬剤層;および
(d)前記薬剤層上及び前記支持層の境界上に配置された接着層 を含み、ここで前記薬剤層は薬剤含有マトリックス層であり、前記複数のパッチ単位は該パッチ単位の一又は複数の境界に沿って互いに連結されており、各パッチ単位が前記パッチ単位の境界上の一又は複数の分離線により規定される、上記経皮送達系;
(2) 前記接着層上に配置された被覆層を更に含む上記(1)に記載の経皮送達系;
(3) 放出制限層を更に含む上記(1)に記載の経皮送達系;
(4) 前記薬剤層が抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬、鎮痛剤、麻酔剤、鎮静剤、トランキライザー、ホルモン、抗糖尿病薬、強心配糖体、鎮痙薬、冠状血管拡張薬、アドレナリン性遮断剤、および栄養剤からなる群から選ばれる薬剤を含む上記(1)に記載の経皮送達系;
(5) 前記薬剤層がフェンタニル、エトルフィン、ブプレノルフィンおよびリドカインからなる群から選ばれる薬剤を含む上記(4)に記載の経皮送達系;
(6) 前記薬剤層中の薬剤がマイクロカプセルによりカプセル化されている上記(4)に記載の経皮送達系;
(7) 前記薬剤層が約0.1から90重量%の薬剤を含有する上記(4)に記載の経皮送達系;
(8) 前記薬剤層が約10から45重量%の薬剤を含有する上記(7)に記載の経皮送達系;
(9) 前記薬剤層が約25から40重量%の薬剤を含有する上記(7)に記載の経皮送達系;
(10)前記薬剤層がドデカノール、ウンデカノール、オクタノール、およびカルボン酸のエステルからなる群から選ばれる軟化剤を更に含む上記(1)に記載の経皮送達系;
(11)前記薬剤層が透過増進剤を更に含む上記(1)に記載の経皮送達系;
(12)前記接着層から前記被覆層を分離することを容易にするために、前記被覆層が切り目を含む上記(2)に記載の経皮送達系;
(13)前記経皮送達系が再封可能な小袋中に貯蔵される上記(1)に記載の経皮送達系;
(14)前記分離線が相互に平行および/または垂直である上記(1)に記載の経皮送達系;
(15)前記分離線がミシン目の線である上記(14)に記載の経皮送達系;
(16)前記分離線が規則的な間隔で配置されている上記(14)に記載の経皮送達系;
(17)前記分離線が約1cmから6cm離れている上記(14)に記載の経皮送達系;
(18)前記経皮送達系中に2から5個のパッチ単位が直列に連結されている上記(14)に記載の経皮送達系;
(19)前記経皮送達系中に4個のパッチ単位が2行および2列で配置されている上記(14)に記載の経皮送達系;
(20)上記(1)に記載の経皮送達系を製造する方法であって、
(a)上面と下面を有する支持層を形成すること、ただし該支持層は一又は複数の分離線により1つ以上のパッチ単位に分割されている;
(b)前記支持層の各パッチ単位の上面上に不透過性層を配置すること;
(c)前記不透過性層上に薬剤含有マトリックス層を配置して、前記支持層のすべての側部上に境界を残すこと;および
(d)前記薬剤含有マトリックス層上及び治療薬のない前記支持層の境界上に接着層を配置すること
を含む、上記製造方法;
(21)更に、前記接着層の上面に被覆層を配置することを含む、上記(20)に記載の経皮送達系の製造方法。
【0086】
本発明を、具体的な実施形態と連結して説明したが、多数の改変、置換および追加を行なってもよく、これらは、添付の請求項の意図された広い範囲内に含まれる。このように、本発明は、調節可能な投与量の治療薬を患者に全身的に送達するための他の方法と滴定投与可能な経皮送達系を使用することを包含することが理解されるであろう。
【0087】
種々の参考文献がこの明細書に引用され、これらの内容が完全に参照して組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は本発明の経皮送達系の一実施形態を示す概略図を図示する。
【図2】図2は本発明の経皮送達系の一実施形態を示す概略図を図示する。
【図3】図3aは本発明のマトリックスタイプの経皮送達系の断面を示す概略図を図示する。図3bは本発明のリザーバータイプの経皮送達系の断面を示す概略図を図示する。図3cは本発明のモノリシックな薬剤含有接着剤タイプの経皮送達系の断面を示す概略図を図示する。図3dは本発明のマルチラミネートの薬剤含有接着剤タイプの経皮送達系の断面を示す概略図を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパッチ単位を含む経皮送達系であって、それぞれのパッチ単位が、
(a)上面と下面を有する支持層;
(b)前記支持層の上面上に配置された不透過性層;
(c)前記不透過性層上に配置され、治療薬のない前記支持層の境界によって囲まれた薬剤層;および
(d)前記薬剤層上及び前記支持層の境界上に配置された接着層 を含み、ここで前記薬剤層は薬剤含有マトリックス層であり、前記複数のパッチ単位は該パッチ単位の一又は複数の境界に沿って互いに連結されており、各パッチ単位が前記パッチ単位の境界上の一又は複数の分離線により規定される、上記経皮送達系。
【請求項2】
前記接着層上に配置された被覆層を更に含む請求項1に記載の経皮送達系。
【請求項3】
放出制限層を更に含む請求項1に記載の経皮送達系。
【請求項4】
前記薬剤層が抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬、鎮痛剤、麻酔剤、鎮静剤、トランキライザー、ホルモン、抗糖尿病薬、強心配糖体、鎮痙薬、冠状血管拡張薬、アドレナリン性遮断剤、および栄養剤からなる群から選ばれる薬剤を含む請求項1に記載の経皮送達系。
【請求項5】
前記薬剤層がフェンタニル、エトルフィン、ブプレノルフィンおよびリドカインからなる群から選ばれる薬剤を含む請求項4に記載の経皮送達系。
【請求項6】
前記薬剤層中の薬剤がマイクロカプセルによりカプセル化されている請求項4に記載の経皮送達系。
【請求項7】
前記薬剤層が約0.1から90重量%の薬剤を含有する請求項4に記載の経皮送達系。
【請求項8】
前記薬剤層が約10から45重量%の薬剤を含有する請求項7に記載の経皮送達系。
【請求項9】
前記薬剤層が約25から40重量%の薬剤を含有する請求項7に記載の経皮送達系。
【請求項10】
前記薬剤層がドデカノール、ウンデカノール、オクタノール、およびカルボン酸のエステルからなる群から選ばれる軟化剤を更に含む請求項1に記載の経皮送達系。
【請求項11】
前記薬剤層が透過増進剤を更に含む請求項1に記載の経皮送達系。
【請求項12】
前記接着層から前記被覆層を分離することを容易にするために、前記被覆層が切り目を含む請求項2に記載の経皮送達系。
【請求項13】
前記経皮送達系が再封可能な小袋中に貯蔵される請求項1に記載の経皮送達系。
【請求項14】
前記分離線が相互に平行および/または垂直である請求項1に記載の経皮送達系。
【請求項15】
前記分離線がミシン目の線である請求項14に記載の経皮送達系。
【請求項16】
前記分離線が規則的な間隔で配置されている請求項14に記載の経皮送達系。
【請求項17】
前記分離線が約1cmから6cm離れている請求項14に記載の経皮送達系。
【請求項18】
前記経皮送達系中に2から5個のパッチ単位が直列に連結されている請求項14に記載の経皮送達系。
【請求項19】
前記経皮送達系中に4個のパッチ単位が2行および2列で配置されている請求項14に記載の経皮送達系。
【請求項20】
請求項1に記載の経皮送達系を製造する方法であって、
(a)上面と下面を有する支持層を形成すること、ただし該支持層は一又は複数の分離線により1つ以上のパッチ単位に分割されている;
(b)前記支持層の各パッチ単位の上面上に不透過性層を配置すること;
(c)前記不透過性層上に薬剤含有マトリックス層を配置して、前記支持層のすべての側部上に境界を残すこと;および
(d)前記薬剤含有マトリックス層上及び治療薬のない前記支持層の境界上に接着層を配置すること
を含む、上記製造方法。
【請求項21】
更に、前記接着層の上面に被覆層を配置することを含む、請求項20に記載の経皮送達系の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−143938(P2010−143938A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18105(P2010−18105)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【分割の表示】特願2002−544057(P2002−544057)の分割
【原出願日】平成13年11月13日(2001.11.13)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】