説明

滴定装置

【課題】最適の指示薬を使用し、連続して多検体の光学滴定を効率よく、迅速に、且つ、高精度にて行うことのできる滴定装置を提供する。
【解決手段】試料に滴定試薬を供給し、光度プローブにて色調変化を検出し、光度滴定を行う滴定装置において、光度プローブ7にて検出される色に対応した波長の光のみを透過させる干渉フィルタfであって、透過させる光の波長が異なる干渉フィルタを複数備えており、複数の干渉フィルタf1、f2は、測定される試料により予め設定された波長の光を透過させる干渉フィルタに自動的に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指示薬法による色調変化を検出する光度滴定を行う滴定装置に関し、例えば、具体的には、水溶液中の鉛イオンの分析、食用油の酸価の分析、ニッケルメッキ液中のNi2+イオンの分析、硫酸イオン(SO42-)の分析、上水の全硬度の分析、カルシウムとマグネシウムの分別定量、などに利用される滴定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、指示薬法による色調変化を検出する光度滴定を行う滴定装置は、例えば、水溶液中の鉛イオンの分析、食用油の酸価の分析、ニッケルメッキ液中のNi2+イオンの分析、硫酸イオン(SO42-)の分析、上水の全硬度の分析、などに好適に利用されている。図5に、従来の光度滴定を行う滴定装置1Aの一例を示す。
【0003】
本例において、滴定装置1Aは、滴定装置本体2と、滴定試薬を被検液(試料)に制御可能に供給する滴定試薬供給装置(滴定ビュレット)3と、試料を撹拌する撹拌装置(スターラ)9aと、光度プローブ7を備えた光度測定ユニット5と、を備えている。
【0004】
スターラ9aには、試料を収容したビーカなどの試料容器Cが載置される。ビーカC内には光度プローブ7と、滴定ノズル8が配置されており、試料中に浸漬されている。試料は、スターラ9aの作用により、ビーカ内に配置された撹拌子(スターラチップ)9bが回転することにより撹拌可能とされる。
【0005】
滴定ビュレット3は、ピストン31を備えたシリンジ32と、シリンジ32のピストン31を駆動する駆動装置33と、滴定試薬を収容した滴定試薬容器34とを備えている。駆動装置33によりシリンジ32のピストン31を駆動することにより、滴定試薬容器34内の滴定試薬が三方コック35を介して、シリンジ32内に導入される。また、シリンジ32内の滴定試薬は、駆動装置33によりシリンジ32のピストン31を駆動することにより、三方コック35を介して滴定ノズル8へと送給され、試料中に注入される。
【0006】
滴定ビュレット3内の駆動装置33、三方コック35等は、滴定装置本体2内に設けた滴定制御部2bにより制御駆動され、試料中に滴定試薬を少量ずつ供給する。
【0007】
光度プローブ7が接続された光度測定ユニット5は、発光部51と受光部52とを備えている。発光部51から光は、光ファイバ10により光度プローブ7に伝達され、光度プローブ7が浸漬されている試料中を透過し、試料中を透過した光は光度プローブ7から光ファイバ11により受光部52へと伝達され、試料中を通る透過光量の大きさが検出されている。
【0008】
つまり、試料中には指示薬が予め添加されており、滴定試薬を供給することによるビーカC内の試料の色調変化は、光度測定ユニット5に接続された光度プローブ7により透過光量の変化として検出され、光度測定ユニット5からの検出信号は、アンプ53、A/D変換器54を経由して、滴定装置本体2に設けたデータ処理部2cに送信され、自動的に分析される。その結果は、表示部2dに表示される。
【0009】
光度滴定を行う場合、使用する指示薬の種類により、変色する色が異なる。そのために、従来、上記構成の滴定装置1Aにおいては、図5に示すように、光度測定ユニット5の発光部51の光源としては、例えば、広域の連続波長を含むタングステンランプ或いはLEDのような一つの光源を固定して使用し、使用する指示薬及び変化する色に応じて、受光部52に入射する光を光学フィルタ(干渉フィルタ)fにて特定波長のみに制限する構成とされている。そのために、複数の干渉フィルタを準備して、必要に応じて、手動操作により所望のフィルタに交換して滴定することが行われていた。
【0010】
このように、従来の滴定装置1Aでは、干渉フィルタを目的に合わせてその都度、交換することが必要とされ、フィルタ交換に手間がかかるという問題を有している。
【0011】
また、従来、ターンテーブルに多数のビーカを載置し、連続して多くの試料(多検体)の測定を行うことが行われている。
【0012】
この場合、連続的に測定できるものは、1つの特定波長のフィルタで測定可能なものを1セットとしてターンテーブル上に配置する必要があり、別の波長のフィルタを使用して測定する試料は、前記1セットの試料の測定終了後に別のセットとしてターンテーブル上に配置し、別の波長のフィルタに交換して、連続的に測定するようになっている。そのため、使用する波長の違う干渉フィルタを用いた多検体測定はできなかった。
【0013】
また、特許文献1は、二液系での滴定を必要とせず、さらに硬度が高い給水でも測定可能な硬度測定方法について記載されており、この装置において、金属指示薬が硬度(カルシウムまたはマグネシウム等)と反応した場合に生じる透過率を測定する場合、「硬度が低い場合と高い場合は、金属指示薬と硬度(カルシウムまたはマグネシウム等)とのキレートによる極大吸収波長が異なる」との考えに基づいて、これらの極大吸収波長近傍の光を透過する光学フィルタを複数個用意してそれぞれの波長で透過率を測定することを開示している。
【0014】
つまり、特許文献1の硬度測定装置1Bでは、図6に示すように、給水配管100から透明容器101内へと被測定溶液を流入させる。測定後、透明容器101内の被測定溶液は、排出配管102より排出させる。ここで、透明容器101内に、ポンプ103を介して金属指示薬104を流入させ、透明容器101内に一つの光源105から光を複数のフィルタ106、106を介して透明容器101を照射する。透明容器101を通過した光は、各フィルタ106、106に対応して配置された複数の受光素子107、107を用いて光を受光し、各受光素子107、107で受光した光から被測定溶液の透過率を求め、硬度を測定する構成とされている。
【特許文献1】特開2001−201497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、光源105は一つであるとしても、装置内にフィルタ106と受光素子107の組み合わせを複数組設置することが必要であり、構成部品が多くなると共に、装置の大型化を余儀なくする。
【0016】
更には、上記特許文献1の硬度測定装置1Bをもし、他の異なる試料の滴定装置として使用する場合には、当然のことながら、フィルタ106を試料毎に他のフィルタに交換することが必要となり、そのために、手間がかかるという問題を有している。
【0017】
また、上記特許文献1の硬度測定装置1Bの構成では、連続して種類の異なる多数の検体(試料)の滴定を行うことは不可能である。
【0018】
そこで、本発明の目的は、最適の指示薬を使用し、連続して多検体の光学滴定を効率よく、迅速に、且つ、高精度にて行うことのできる滴定装置を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、一つの検体に対して複数波長の光学滴定を行うことのできる滴定装置を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、部品点数を少なくし、小型化が可能な滴定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的は本発明に係る滴定装置にて達成される。要約すれば、本発明は、第一の態様によると、試料に滴定試薬を供給し、光度プローブにて色調変化を検出し、光度滴定を行う滴定装置において、
前記光度プローブにて検出される色に対応した波長の光のみを透過させる干渉フィルタであって、透過させる光の波長が異なる干渉フィルタを複数備えており、
前記複数の干渉フィルタは、測定される試料により予め設定された波長の光を透過させる干渉フィルタに自動的に切り換える、
ことを特徴とする滴定装置が提供される。
【0022】
本発明の第二の態様によると、試料に滴定試薬を供給し、光度プローブにて色調変化を検出し、光度滴定を行う滴定装置において、
前記光度プローブは、入力側光ファイバと、出力側光ファイバと、前記入力側光ファイバ及び出力側光ファイバの一端に設けられた試料の色調変化を検出する測定部と、を備えており、
前記入力側光ファイバの前記測定部とは反対側の入射端に光を投射する発光部と、前記出力側光ファイバの前記測定部とは反対側の出射端からの出射光を受光する受光部と、前記光度プローブにて検出される色に対応した波長の光のみを透過させる干渉フィルタであって、透過させる光の波長が異なる干渉フィルタを複数備えたフィルタ装置と、を備え、
前記フィルタ装置は、前記光ファイバ出射端と前記受光部との間の光路中に、前記複数の干渉フィルタのいずれかの干渉フィルタを配置することができ、
前記光ファイバ出射端と前記受光部との間の光路中に配置される干渉フィルタは、測定される試料により予め設定された波長の光を透過させる干渉フィルタに自動的に切り換えられる、
ことを特徴とする滴定装置が提供される。
【0023】
本発明にて、一実施態様によると、試料を収容した試料容器を複数載置することのできるターンテーブルを備えた容器移送装置を備えており、
前記ターンテーブルに配置した前記試料容器毎に前記光度プローブにて検出される色に対応した光の波長を設定し、
前記試料の光度滴定を開始する前に、前記測定される前記試料容器毎に前記予め設定された波長の光を透過させる干渉フィルタに自動的に切り換える。
【0024】
本発明にて、他の実施態様によると、一つの試料容器に対して、連続的に前記干渉フィルタを切り替えて、各々の前記フィルタに対して、前記光度プローブにて色調変化を検出する光度滴定を段階的に行う。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、
(1)最適の指示薬を使用し、連続して種類の異なる多検体の光学滴定を効率よく、迅速に、且つ、高精度にて行うことができる。
(2)一つの検体に対して複数波長の光学滴定を行うことができる。
(3)部品点数を少なくし、小型化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る滴定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0027】
実施例1
図1及び図2を参照して、本発明に係る滴定装置の一実施例を説明する。
【0028】
図1には、本実施例の滴定装置1の概略全体構成がブロック図にて示されている。本実施例にて、滴定装置1は、先に図5を参照して説明した従来の滴定装置1Aと同様に、滴定装置本体2と、滴定試薬を被検液(試料)に制御可能に供給する滴定試薬供給装置(滴定ビュレット)3と、を有している。
【0029】
更に、本実施例の滴定装置1は、容器移送装置4を備えている。容器移送装置4は、図2を参照するとより良く理解されるように、装置本体41と、装置本体41の上部にて回転することのできるターンテーブル42とを備えている。ターンテーブル42には、検体である試料を収容したビーカなどとされる試料容器C(C1、C2、C3、・・・・・・Cn)を複数、例えば、最大100個、載置することができる。ただ、ターンテーブル42の大きさは、これに限定されるものではない。
【0030】
各試料容器Cは、ターンテーブル42を回転することにより、光度プローブなどが設置された測定位置(図1、図2における試料容器C1の位置)へと移送される。このような容器移送装置4は、例えば、本特許出願人により「ターンテーブル TTT−510(商品名)」(東亜ディーケーケー株式会社製)などとして種々のタイプのものが市販されており、当業者には周知である。従って、容器移送装置4についての詳しい説明は省略するが、簡単に説明すると次の通りである。
【0031】
本実施例の容器移送装置4にて、容器移送装置本体41の上部に設置されたターンテーブル42は、モータなどの駆動手段(図示せず)により回転自在とされ、滴定装置本体2に設けられたターンテーブル制御部2eにより制御される。
【0032】
また、本実施例では、図2を参照すると理解されるように、容器移送装置4には、光度プローブ作動装置43が設置されている。作動装置43は、ホルダー44を備えており、光度プローブ7を保持している。なお、ホルダー44は、本実施例では、光度プローブ7と同時に、滴定ノズル8、更には、試料容器C内の試料を撹拌するためのスターラ9を保持している。スターラ9は、モータなどの駆動手段(図示せず)と連結されて回転する撹拌翼などを好適に用いることができる。
【0033】
作動装置43は、図2に示すように、ホルダー44を駆動して、
(1)光度プローブ7、滴定ノズル8、スターラ9を、図2に示す測定位置(図1に示す試料容器C1の位置)に移送されてきた試料容器C内に装入、配置する第1のポジションP1と、
(2)測定が終了した後に、光度プローブ7、滴定ノズル8、スターラ9を試料容器C内から上方に引き上げ(第2のポジションP2)、洗浄槽45の位置へと移送し(第3のポジションP3)、次いで、洗浄槽45内へと挿入配置し、洗浄する第4のポジションP4と、
の各ポジションに光度プローブ7、滴定ノズル8、スターラ9を移動することができる。
【0034】
作動装置43の制御は、ターンテーブル42の制御に連動して、移送装置本体41に設けた制御部4a(図1参照)により制御される。
【0035】
また、スターラ9は、作動装置43の作動と連動して制御部4aにて駆動制御され、試料容器C中の試料、指示薬、滴定試薬を撹拌混合する。勿論、本実施例のスターラ9の代わりに、従来技術にて説明したように、ビーカ内に配置された撹拌子(スターラチップ)が回転する構成のマグネチックスターラとすることも可能である。
【0036】
光度プローブ7は、図3に示すように、試料容器Cの試料(被検液)中に浸漬される測定部71aを備えた光度プローブ本体71に、入力側及び出力側の光ファイバ10、11の一端が接続されている。光度プローブ7に接続された入力側及び出力側の光ファイバ10、11の、前記測定部71aとは反対側の入射端10a及び出射端11aは、図1に示すように、光度測定ユニット5に着脱自在に取り付けられている。
【0037】
図1にて、滴定ノズル8は、滴定ビュレット3に接続され、滴定ビュレット3から所定量の滴定試薬が供給される。
【0038】
次に、滴定ビュレット3について説明する。
【0039】
滴定ビュレット3は、従来と同様の構成とされ、滴定装置本体2とは別体とされる滴定ビュレット装置本体30を備えている。装置本体30には、ピストン31を備えたシリンジ32と、シリンジ32のピストン31を駆動する駆動装置33と、滴定試薬を収容した滴定試薬容器34とを備えている。
【0040】
駆動装置33によりシリンジ32のピストン31を駆動することにより、滴定試薬容器34内の滴定試薬が三方コック35を介して、シリンジ32内に導入される。また、シリンジ32内の滴定試薬は、駆動装置33によりシリンジ32のピストン31を駆動することにより、所定量だけ、三方コック35を介して滴定ノズル8へと送給され、試料容器Cに収容された試料(被検液)中に供給される。
【0041】
滴定ビュレット3内のシリンジ駆動装置33、三方コック駆動装置(図示せず)等は、滴定装置本体2内に設けた滴定制御部2bにより制御駆動され、予め指示薬が添加された試料中に滴定試薬を所定量ずつ供給する。
【0042】
本実施例の滴定装置1にて、複数の滴定試薬の使用を可能とするために、上記構成の滴定ビュレット3を異なる滴定試薬毎に設けることも可能である。この場合には、複数の滴定ビュレット3の数分だけ滴定ノズル8を用意し、所定の滴定試薬に該当するビュレット3を駆動させて接続された滴定ノズル8から滴定試薬を供給する構成とする。
【0043】
次に、図1を参照して、光度プローブ7が接続された光度測定ユニット5について説明する。
【0044】
光度測定ユニット5は、発光部51と受光部52とを備えている。発光部51から発した光は、光度測定ユニット5に接続された光ファイバ入射端10aに投射され、入力側光ファイバ10を通り光度プローブ本体71に伝達され、光度プローブ測定部71aが浸漬されている試料中を透過する。光度プローブ測定部71aにて試料中を透過した光は、出力側光ファイバ11により光度測定ユニット5へと伝達される。光度測定ユニット5に到達した光は、光ファイバ出射端11aから受光部52へと出射され、受光部52は、出射光の光度により試料中の透過光量の大きさを検出する。
【0045】
つまり、滴定試薬を供給することにより変化するビーカ内の色調変化は、光度測定ユニット5に接続された光度プローブ7により測定部71aの透過光量の変化として受光部52にて電気信号に変換される。受光部52からの出力信号は、アンプ53にて増幅され、A/D変換器54にてA/D変換されて、滴定装置本体2に設けたデータ処理部2cに送信される。滴定装置本体2は、データ処理部2cにて自動的に分析し、その結果を、液晶ディスプレーなどを備えた表示部2dにて表示するか、又は(或いは、同時に)、プリントアウトする。
【0046】
上記構成の光度滴定による滴定装置1は、滴定を有効に実施するために、試料(即ち、試料中の測定する目的物)によって使用する指示薬を異ならせることができ、使用する指示薬の種類により、変色する色が異なる。
【0047】
従って、本実施例の滴定装置1においては、光度滴定を効率よく、且つ、高精度に実施するために、図1に示すように、光度測定ユニット5の発光部51の光源としては、例えば、広域の連続波長を含むタングステンランプ、或いは、発光ダイオード(LED)のような一つの光源を固定して使用し、使用する試料及び指示薬、即ち、光度プローブ7にて検知される変色の色に応じて、出射端11aから受光部52に入射する光を光学フィルタ(干渉フィルタ)fにて特定波長のみに制限する。
【0048】
そのために、本実施例では、複数の干渉フィルタfを備えたフィルタ装置60を有する。フィルター装置60は、使用する試料及び指示薬に応じて、最適の干渉フィルタfが自動的に交換される。干渉フィルタfは、本実施例では、光度測定ユニット5における、光度プローブ7からの光が到達する光ファイバ出射端11aと受光部52との間に位置して、光ファイバ出射端11aと受光部52との光路を遮る態様で配置される。
【0049】
本実施例にて、複数の干渉フィルタfは、二つのフィルタf1、f2とされ、二つのフィルタf1、f2は、ソレノイドなどの駆動手段61により駆動され、いずれかのフィルタが光ファイバ出射端11aと受光部52との間に位置するように構成される。ソレノイド61は、滴定装置本体2に設けたフィルタ駆動制御部2fにより制御される。
【0050】
複数の干渉フィルタfを備えたフィルタ装置60は、上記実施例に限定されるものではなく、例えば、図4(a)、(b)に示す構成とすることもできる。
【0051】
つまり、フィルタ装置60は、回転自在の設けられた円盤状の基板、即ち、回転円板62を有し、この回転円板62に複数の干渉フィルタfが取り付けられている。本実施例では、複数の干渉フィルタfは、2個のフィルタf1、f2とされるが、所望により、3個或いは4個f1〜f4、或いは、それ以上とされる。回転円板62は、モータなどの駆動手段63により回転する構成とし、いずれかの干渉フィルタが光ファイバ出射端11aと受光部52との間の光路中に位置するように構成される。モータ63は、滴定装置本体2に設けたフィルタ駆動制御部2fにより制御される。
【0052】
上記構成の本実施例の滴定装置1によれば、容器移送装置4のターンテーブル42には複数の試料容器C(C1、C2、・・・・・・Cn)が配置される。そして、ターンテーブル42に配置した試料容器(即ち、被検液である試料)C(C1、C2、・・・・・・Cn)毎に目的波長の設定を行う。勿論、各試料容器Cには試料(被検液)に応じた最適の指示薬を予め添加しておく。更には、必要に応じて、使用する滴定試薬、即ち、滴定ビュレット3の設定を行う。
【0053】
目的波長の設定、滴定ビュレットの設定等は、滴定装置本体2の操作部2a、更には、滴定ビュレット本体の操作部(図示せず)により行う。これらの設定が終了した後、連続測定を開始する。
【0054】
連続測定が開始されると、容器移送装置4のターンテーブル42が駆動され、所定の試料容器Cが測定位置にセットされる。光度測定ユニット5では、測定位置に移送された試料容器Cに対応して最適のフィルタfの選択が行われ、滴定ビュレット3が作動して光度滴定を行う。一つの試料(検体)の測定が終了すると、移送装置4の作動装置43が作動し、光度プローブ7等を試料容器Cから引き上げる。次いで、ターンテーブル42が駆動され、次の試料容器が測定位置にセットされる。この時、必要に応じて、作動装置43が作動され、ホルダーに保持された光度プローブ7等を洗浄槽へと移送し、洗浄する。
【0055】
その後、作動装置43により、光度プローブ等が測定位置にセットされた次の試料容器C中に挿入され、測定を開始する。
【0056】
上記実施例の滴定装置を使用した具体例について説明する。本実施例の滴定装置を使用して、例えば、水溶液中の鉛の分析、水溶液中のニッケルの分析、において多検体の光学滴定を実施することができる。本具体例では、以下の構成とされた。
【0057】
試料容器Cを5個使用し、各試料容器C1、C2、C3、C4、C5には、試料として、メッキ液や廃液を使用し、各試料容器には、指示薬として、下記のものを添加した。滴定試薬としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩溶液を使用し、滴定ビュレット3は1台とした。なお、次に示す各試料容器C1、C2、C3、C4、C5は、それぞれ異なった所から得られた試料であり、対象とする鉛またはニッケルの濃度は各々で異なっている。
(指示薬)
C1、C3、C4:キシレノールオレンジ(水溶液中の鉛の分析)
C2、C5:ムレキシド(水溶液中のニッケルの分析)
干渉フィルタとしては、透過する光の波長が異なる2個の干渉フィルタf1、f2を使用し、上記試料容器毎に自動的に交換して光度滴定を行った。
(干渉フィルタ)
f1:透過波長530nm(試料容器C1、C3、C4に対して使用)
f2:透過波長630nm(試料容器C2、C5に対して使用)
(光源)
タングステンランプ
【0058】
上記構成の本発明に従った滴定装置にて、各試料の滴定試薬及び指示薬に対応した干渉フィルタを適切に選定することにより、極めて効率よく、迅速に、且つ、高精度にて試料の分析を行うことができた。
【0059】
一方、従来の滴定装置では、先ずf1の干渉フィルタで試料容器C1、C3、C4の分析を連続的に行った後に、装置の動作を一端停止してからf2の干渉フィルタへ手動操作で交換し、次の試料容器C2、C5の分析を連続的に行う必要があり、余分な時間と手間がかかってしまう。
【0060】
このように、本実施例の滴定装置1によれば、光度滴定において、使用されるフィルタが複数の波長の干渉フィルタの中の所望のフィルタに自動で切り替えられる。また、光度滴定の多検体測定においては、検体毎に目的波長の干渉フィルタに切り替えることができる。従って、滴定の目的物質により、最適の指示薬を使用することができ、最適な波長の干渉フィルタに切り替え、波長の異なる光度滴定を連続で効率よく、迅速に、且つ、高精度にて実施することができる。
【0061】
また、必要に応じて、一つの検体に対して、連続的に複数個の干渉フィルタを切り替えて、各々のフィルタに対して、光度プローブにて色調変化を検出することによって、例えば低波長のフィルタから高波長のフィルタへと、段階的に光度滴定を実施することができる。従って、上記背景技術の特許文献1で説明したような、給水の硬度測定も、本実施例の滴定装置を使用して、即ち、一つの光源にて、複数個の干渉フィルタを切り替えて使用して、段階的に光度滴定を行うことにより、効率よく、迅速に、且つ、高精度にて実施可能である。なお、前記のように段階的に光度滴定を実施する以外に、複数個のフィルタを、例えば同期をとって一定時間ごとに交互に切り替えながら、光学滴定を実施することも可能である。
【0062】
更に、本実施例の滴定装置は、従来装置に比較し、装置構成部材の数を減少することができ、滴定装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る滴定装置の概略全体構成を示すブロック図である。
【図2】容器移送装置の斜視図である。
【図3】光度プローブの構成図である。
【図4】フィルター装置の一実施例を示すものであって、図4(a)は、断面図であり、図4(b)は、複数のフィルタが取り付けられる円盤状の基板を示す正面図である。
【図5】従来の滴定装置の概略全体構成を示すブロック図である。
【図6】従来の滴定装置の概略全体構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0064】
1 滴定装置
2 滴定装置本体
3 滴定ビュレット(滴定試薬供給装置)
4 容器移送装置
5 光度測定ユニット
7 光度プローブ
8 滴定ノズル
9 スターラ
10 入力側光ファイバ
10a 入射端
11 出力側光ファイバ
11a 出射端
32 シリンジ
34 滴定試薬容器
35 3方コック
42 ターンテーブル
51 発光部
52 受光部
60 フィルタ装置
61、63 フィルタ駆動手段
62 回転円板
C 試料容器
f(f1、f2、f3、f4) 干渉フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に滴定試薬を供給し、光度プローブにて色調変化を検出し、光度滴定を行う滴定装置において、
前記光度プローブにて検出される色に対応した波長の光のみを透過させる干渉フィルタであって、透過させる光の波長が異なる干渉フィルタを複数備えており、
前記複数の干渉フィルタは、測定される試料により予め設定された波長の光を透過させる干渉フィルタに自動的に切り換える、
ことを特徴とする滴定装置。
【請求項2】
試料に滴定試薬を供給し、光度プローブにて色調変化を検出し、光度滴定を行う滴定装置において、
前記光度プローブは、入力側光ファイバと、出力側光ファイバと、前記入力側光ファイバ及び出力側光ファイバの一端に設けられた試料の色調変化を検出する測定部と、を備えており、
前記入力側光ファイバの前記測定部とは反対側の入射端に光を投射する発光部と、前記出力側光ファイバの前記測定部とは反対側の出射端からの出射光を受光する受光部と、前記光度プローブにて検出される色に対応した波長の光のみを透過させる干渉フィルタであって、透過させる光の波長が異なる干渉フィルタを複数備えたフィルタ装置と、を備え、
前記フィルタ装置は、前記光ファイバ出射端と前記受光部との間の光路中に、前記複数の干渉フィルタのいずれかの干渉フィルタを配置することができ、
前記光ファイバ出射端と前記受光部との間の光路中に配置される干渉フィルタは、測定される試料により予め設定された波長の光を透過させる干渉フィルタに自動的に切り換えられる、
ことを特徴とする滴定装置。
【請求項3】
試料を収容した試料容器を複数載置することのできるターンテーブルを備えた容器移送装置を備えており、
前記ターンテーブルに配置した前記試料容器毎に前記光度プローブにて検出される色に対応した光の波長を設定し、
前記試料の光度滴定を開始する前に、前記複数の干渉フィルタは、前記測定される前記試料容器毎に前記予め設定された波長の光を透過させる干渉フィルタに自動的に切り換える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の滴定装置。
【請求項4】
一つの試料容器に対して、連続的に前記干渉フィルタを切り替えて、各々の前記フィルタに対して、前記光度プローブにて色調変化を検出する光度滴定を段階的に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の滴定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−75019(P2009−75019A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246107(P2007−246107)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】