説明

漁業用回転体及びその回転体を備えた洗浄装置

【課題】ザラボヤとか他の雑物が大量に付着した貝付きロープであっても、それがスリップせずに確実に引き上げ可能な漁業用回転体と、洗浄装置を提供する。
【解決手段】海中に吊るしてある貝付きロープを胴体に掛けて引き上げる漁業用回転体において、細幅の長板を波形に曲げて貝付きロープを係止可能とした波板、又はその波板を波の高さ方向に多数本連続させて貝付きロープを係止可能とした波状網を胴体表面に取り付けた。貝類が吊下げロープに係止された貝付きロープを海中から引き上げる回転体を備え、回転体の外周に掛けて引き上げた貝付きロープを洗浄可能な洗浄装置の回転体として前記漁業用回転体を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、吊下げ養殖する帆立貝、あこや貝、牡蠣といった貝類を係止して海中に吊下げてある貝付きロープ、昆布や他の海産物(これらをまとめて「養殖・天然物」という。)を海中から引き上げるとき、又は引き上げ後に洗浄して海中に戻すとき、或いは新規に養殖物・天然物を海中に投入するときに、養殖・天然物を案内するのに適する漁業用回転体及びこれを備えた洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帆立貝、あこや貝、牡蠣等(以下、「貝類」という。)は、ロープに差し込んだ樹脂製の係止ピンやテグスを貝類に開けた孔に通し、貝の付いたロープを海中に吊下げて養殖する吊下げ養殖(帆立貝の養殖では耳吊り養殖といわれている。)という方法で養殖されることがある。
【0003】
吊下げ養殖では貝類を海中に吊しておく間に貝表面にザラボヤ、ムラサキイガイ、海草、その他海中の生物や塵芥等(以下これらを「雑物」という。)が大量に付着する。雑物が付着すると貝の成長に好ましくないばかりでなく、体裁が悪くて出荷時に問題となるため、養殖の途中で貝を海から引上げて洗浄しているのが現状である。
【0004】
吊下げ養殖中の貝類を洗浄するには海中に吊るしてある貝付きロープを引き上げている。このとき、貝付きロープをドラムなどの回転体の外周に回して海中から鉛直方向に引き上げ、回転体で水平方向に向きを変えて引き上げ、その貝付きロープを洗浄装置に引き込んで洗浄している。
【0005】
本件出願人は、本願に先立って吊下げ養殖中の貝類を洗浄する洗浄装置を特許出願している(特許文献1)。この特許出願に係る洗浄装置も回転体を備えており、この回転体を通じて吊下げ養殖中の貝付きロープを引き上げ、洗浄装置内に引き込んで洗浄装置の洗浄通路を通過する間に貝類とロープの汚れを洗浄除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−191041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貝類を係止して海中に吊下げられた8mm径のロープの場合、その長さと取り付ける貝の枚数にもよるが、例えば、海中に投入後半年程度で貝及びロープにザラボヤなどが大量に付着して、見かけ上100〜200mmの径となり、その重量も1本当たり30〜50kgにもなることがある。このように重くなった貝付きロープを引き上げると、貝付きロープが回転体の胴体外周面でスリップしてスムースに引き上げられないとか、貝が回転体とこすれてロープから落下するといったことがある。このため、場合によっては、作業員が貝付きロープを洗浄装置の出口側に引いてスリップを防止していることもある。この場合は、ロープを引くために専属の作業員が必要になり、人件費増大の一因になる。
【0008】
本願発明の課題は、養殖・天然物、特に、昆布等のように長い海産物や、雑物が大量に付着している貝付きロープ等の養殖・天然物を海中から引き上げるときに、それらがスリップせずに確実に引き上げられ、海中から引き上げて洗浄した養殖・天然物を海中に戻すとき、或いは新規に海中に吊るす貝付きロープ等を海中に投入するときに、それらがスリップせずに海中に送り込まれるようにする漁業用回転体と、この漁業用回転体を備えた洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の漁業用回転体は、海中に吊るしてある貝付きロープを胴体に掛けて引き上げる漁業用回転体において、細幅の長板を波形に曲げて貝付きロープを係止可能とした波板、又はその波板を波の高さ方向に多数本連続させて貝付きロープを係止可能とした波状網を胴体表面に取り付けたものである。
【0010】
本願発明の洗浄装置は、貝類が吊下げロープに係止された貝付きロープを海中から引き上げる回転体を備え、回転体の外周に掛けて引き上げた貝付きロープを洗浄可能な洗浄装置の回転体として前記漁業用回転体を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の漁業用回転体は、胴体表面に貝付きロープを係止可能とした波板又は波状網を取り付けてあるため、ザラボヤなどの雑物が大量に付着した貝付きロープであっても、ロープが回転体の胴体表面でスリップすることなく、確実に引き上げることができる。
【0012】
本願発明の洗浄装置は、前記効果のある漁業用回転体が装備されているので、漁業用回転体を介して引き上げた貝付きロープが確実に洗浄装置内に引き込まれ、貝付きロープを海中から引き上げながら連続的に効率良く洗浄作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本願発明の漁業用回転体を備えた洗浄装置の一例を示す断面図、(b)はその洗浄装置の外観図。
【図2】(a)は回転体の一例を示す斜視図、(b)は本願発明の漁業用回転体の一例を示す斜視図。
【図3】(a)は本願発明の漁業用回転体に巻付けられる波状網の一例を示す平面図、(b)は波状網の部分斜視図。
【図4】本願発明の洗浄装置の一例を示す分解説明図。
【図5】(a)は櫛型押し具を備えた洗浄装置を示す説明図、(b)は上下に搬送体を備えた洗浄装置を示す説明図。
【図6】(a)〜(c)は本願発明の洗浄装置による洗浄時の貝と押し具の説明図。
【図7】本願発明の洗浄装置における洗浄済み貝付きロープの送り出し部分の説明図。
【図8】ドラム式洗浄装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(洗浄装置の概要)
本願発明の漁業用回転体及びその回転体を備えた洗浄装置の第1の実施形態を図に基づいて説明する。本願発明の洗浄装置は海中から引き上げた昆布や他の海産物の洗浄にも利用できるものであるが、図示した洗浄装置は貝付きロープLを海中から引き上げる場合の実施形態である。図1(a)は漁業用回転体1を備えた洗浄装置2を示す側面図であり、この洗浄装置2は船上に設置して、海中から引き上げた貝付きロープ(貝類4が係止されている吊下げロープ3)Lに付着している前記雑物を除去すると共に吊下げロープ3及び貝類4を洗浄する(以下、これら除去及び洗浄を合わせて「洗浄」という)。
【0015】
吊下げ養殖とは、吊下げロープ(縦ロープ)3に間隔をあけて差し込んだ係止ピン5や吊下げロープ3に結んだテグスを貝類4に開けた孔に通して貝類を係止し、吊下げロープ3を海中に吊下げることにより貝類4を海中に吊るして養殖する方法である。
【0016】
(漁業用回転体の実施形態1)
漁業用回転体1の一例として図2(a)に示すものは、円筒状の胴体16の両端に、胴体16の径よりもやや大きな径の鍔17を備えたいわゆるドラムである。胴体16の形状は円筒に限らず多角筒状とすることも可能であり、鍔17は省略することもできる。胴体16は中心軸を回転軸として図2(b)の矢印Y方向に回転可能であり、引き上げ装置の引張力による吊下げロープ3に伴って自由回転する構造とすることも、モータなどの駆動装置を備えて強制回転させる構造とすることもできる。漁業用回転体1自身が回転する構造とした場合はその回転を搬送体6(図4)の駆動スプロケット9aの回転と同期回転させると、漁業用回転体1で引き上げられた貝付きロープLが通路8内にスムースに引き込まれる。
【0017】
漁業用回転体1の図2(a)に示す胴体16の表面には、図2(b)に示すように波状網19が巻きつけられ、スリップしないように胴体16にビスとか他の止め具、接着剤などで固定されている。波状網19は図3(a)に示すように、細長板20をコの字形に曲げた波部20aが繰り返し形成された波板が、波部20aの高さH方向に多数列並べられて網状にしてある。この波部20aの形状はコの字形に限らず、半円形としたり、三角形としたり、五角形とするなど任意の形状を選択できるうえ、板材のほか棒材やパイプ材、特に角棒で角パイプで成形することもできる。
【0018】
図3(b)に示すように、細長板20に設けられた各波部20aの上端部には上挿入孔20bが、下端部には下挿入孔20cがそれぞれ設けられ、上側に配置された細長板20の下挿入孔20cと、下側に配置された細長板20の上挿入孔20bが重ねられて、下挿入孔20cと上挿入孔20bを連結軸21が貫通している。このように連結軸21によって上下に配置された細長板20は相互にピン固定され、細長板20同士は回転自由に連結されて網状になっている。
【0019】
前記のように波状網19は、細長板20同士が回転自由に連結されているため、図2(b)のように胴体16の円筒形状に対しても追随して巻き付け可能となる。波状網19を構成する細長板20及び連結軸21は、金属製や樹脂製等とすることができるが、金属製とする場合は海中使用するため防錆加工を施すかステンレス製とすることが望ましい。
【0020】
従来の胴体16はザラボヤなどの雑物が大量に付着した貝付きロープLは胴体16でスリップし、漁業用回転体1が空転することで引き上げできない場合があったが、本願発明の漁業用回転体1は図3(a)に示す波状網19が巻きつけられており、波状網19には波部20aによる多数の空間18もあるため、貝付きロープLの貝類4が空間18内に入って波状網19の波板に係止し易くなり、確実に引き上げ可能となる。
【0021】
(洗浄装置の実施形態1)
本発明の洗浄装置の一例を図4に示す。この洗浄装置2は貝付きロープLを搬送する無端コンベア式の搬送体6と、その上方に無端コンベア状の押し具7が対向して配置されて、両者の間に貝付きロープLが通過可能な通路8(図5(a)、図6(a))が形成され、搬送体6の下方と押し具7の上方とに洗浄具13が対向配置されて、通路8を通過する被洗浄物に両洗浄具13から高圧の洗浄液を噴射して洗浄するものである。
【0022】
海中に向けて鉛直方向に吊り下げられている貝付きロープLを洗浄のために引き上げる際は、図4のように船の上に洗浄装置2を設置し、漁業用回転体1を船の側面に取り付けて海上に付き出させ、漁業用回転体1の外周に貝付きロープLを掛け、漁業用回転体1を回転させて貝付きロープLを鉛直方向から水平方向へ方向転換して海中から連続的に引き上げ、引き上げた貝付きロープLを前記通路8に引き込みながら洗浄する。
【0023】
搬送体6は図4に示すように搬送体駆動機構の外周に金属製の網状の網状走行体22aを巻き付けて回転可能としてある。搬送体駆動機構は駆動軸23の軸方向両端寄りと中央に駆動スプロケット9aが固定された駆動回転体と、従動軸24の軸方向両端寄りと中央に従動スプロケット9bが回転可能に取り付けられた従動回転体と、これら両回転体の間に配置された走行体ガイド25とから構成されている。従動スプロケット9bの径は駆動スプロケット9aの径よりも小さくしてある。走行体ガイド25は底板のない長方形の箱状であり、上板の中央部に開口部が設けられている。前記網状走行体22aには図3(a)に示す波状網19を使用するのが望ましい。
【0024】
網状走行体22aの下にはローラ状の底面支持具11を配置して網状走行体22aの底面を上方に押し上げて網状走行体22aに張りをもたせる(テンションを付与する)と共に当該底面が下方へ垂れ下がるのを防止してある。
【0025】
図4の搬送体6は、駆動スプロケット9aをモータ等の駆動源により回転させると駆動軸23が回転し、駆動軸23と共に駆動スプロケット9bも回転し、その回転に伴って従動軸24が回転し、網状走行体22aが駆動スプロケット9bと走行体ガイド25と従動スプロケット9bの外周を走行回転するようにしてある。
【0026】
搬送体6は図1(a)のように筐体14内に収容されている。この場合、図4の駆動軸23を筐体14内の下部前方に回転可能に取り付け、従動軸24を同筐体14内の下部後方に固定する。走行体ガイド25は筐体14内の下部で且つ前記駆動軸23と従動軸24との間にビスやボルト、ナット等の止め具により固定されている。
【0027】
図4の押し具7も搬送体6と略同様の構造であり、押し具駆動機構の外周に金属製の網状の網状走行体22bを巻き付けて回転可能としてある。その駆動機構は駆動軸31に駆動スプロケット7a(図6)が取り付けられ、前方従動軸12aに前方従動スプロケット7b(図6)が回転可能に取り付けられた前方駆動回転体と、後方従動軸12bに後方従動スプロケット7c(図6)が回転可能に取り付けられた後方従動回転体とが、二枚平行に配置されている側板30(図4)間に回転可能に取り付けられている。二枚の平行な側板30間には補強材が渡されている。前記網状走行体22bにも図3(a)に示す波状網19を使用するのが望ましい。網状走行体22bの上走行部22c(図6)は押しローラ39により屈曲部40側に押されている。押し具7は入り口側が持ち上がって、貝付きロープLを搬送体6との間の通路に引き込み易くしてある。
【0028】
図4の押し具7は、前記駆動軸31に連結された駆動スプロケット7aがモータ等の駆動源により回転駆動されると網状走行体22bが回転し、それにつれて前記前方従動スプロケット7b((図6(a))及び後方従動スプロケット7c(図8(a))が回転し、網状走行体22bが連続回転する。押し具7も筐体14内に収容されている。
【0029】
図4に示す洗浄具13は搬送体6と押し具7との間の通路8を通過する貝付きロープLに高圧洗浄液を噴射して洗浄するためのものであり、搬送体6の外側下方と押し具7の外側上方とに対向させて配置してある。この洗浄具13は回転可能なロータリージョイントに連結された給水パイプ13aから4本の分岐パイプ13bが分岐され、その先端に噴射ノズルが取り付けられており、給水パイプ13aが回転すると分岐パイプ13b及び噴射ノズルが回転して、貝付きロープLに万遍なく洗浄液が高圧で噴射されるようにしてある。分岐パイプ13bの本数は4本以上であっても以下であってもよい。洗浄体13は貝付きロープLを洗浄できれば図5(a)、(b)のように配置するとか、他の配置とすることもできる。
【0030】
筐体14の下半分は、筐体14内で被洗浄物を洗浄した汚水や洗浄によって被洗浄物から落下した付着物等を回収する回収容器を兼ねており、筐体14の底からは排水路15を外部に突設して、それに排水用のホースを接続して、洗浄除去された汚れや洗浄具13から噴射された高圧洗浄液がその排水路15から排水ホース内を通って外部に排出されるようにしてある。
【0031】
筐体14には貝付きロープLを導入するための入口34と、被洗浄物を送り出す出口35とが開口されており(図1)、更に、筐体14の側面には貝付きロープLを横から搬送体6と押し具7との間に出し入れするための側面導入口33が開口され、それが筐体14の入口34と出口35に連通している。この側面導入口33があると貝付きロープLを洗浄作業の前に側面導入口33から横スライドさせて引き込んで搬送体6と押し具7との間の通路8内に出し入れすることができるため、一々入口34から出口35に通す必要がなく、洗浄作業開始前の被洗浄物のセッティングが容易になる。図1(b)に示すように、側面導入口33の外側には多数本の樹脂製の繊維状のカーテン材を縦に配列した洗浄液飛散防止具36を設けて、洗浄具13から高圧噴射される洗浄液が側面導入口33から外側に飛散しないようにしてある。この洗浄液飛散防止具36は貝付きロープLを側面導入口部33の外側から筐体14内に横スライドさせて引き込むときに内側に曲がって貝付きロープLがスムースに引き込まれ、引き込んだ後に自動的に復帰できる可撓性と復元性を備えたものが好ましい。図1(b)の洗浄液飛散防止具36はそれ以外の形状、構造であってもよい。例えばゴムシートや金属板などであってもよく、金属板の場合は貝付きロープLを側面導入口部33の外から筐体14内に横スライドさせて引き込むと上昇して貝付きロープLがスムースに筐体14内に入り、引き込み後は降下するようにしてもよい。洗浄液飛散防止具36は場合によって外すこともできる。
【0032】
図4に示すように、搬送体6と押し具7の間の通路8の出口よりも外側には、出口から送り出される貝付きロープLを案内する出口側案内体26が配置されている。この出口側案内体26はポール状の横案内体26aとポール状の縦案内体26bとからなり、縦案内体26bは樋状のシュータ26cの上に立設されている。この縦案内体26bはシュータ26cに回転可能に取り付けてもよく、回転しないように固定してもよい。シュータ26cは先端側を下り傾斜にしてある。搬送体6の出口とシュータ26cとの間には回収受け具26dを配置してある、この回収受け具26dは洗浄中に吊下げロープ3から外れた貝類4が搬送体6の出口から落下する位置に配置して、その貝類4を回収できるようにしてある。この回収受け具26dも樋状であり、先端に向けて下り傾斜にして、回収された貝類4が自重で自動的に先端方向に落下して、その先に配置してある回収篭に落下して回収されるようにしてある。これらの出口側案内体26、シュータ26c、回収受け具26dも筐体14に取り付けられている。この場合、出口側案内体26、シュータ26c、回収受け具26dは筐体14の出口よりも外側先方に取り付けて、洗浄装置2を船上に搭載固定したときに、シュータ26cの出口が海上に突出するようにしてある。出口側案内体26は横案内体26aと縦案内体26bのいずれか一方だけであってもよい。縦案内体26a、縦案内体26bの取り付け箇所は、それらの機能が発揮される任意の位置に取り付けることができる。
【0033】
前記横案内体26aや縦案内体26bには前記した漁業用回転体1から鍔17を取り外し、胴体16の外径を細くしたものを使用することもできる。
【0034】
洗浄装置2は図5(a)に示すように、図4の網状の押し具7に代えて櫛型押し具Fを備えたものとすることもできる。また、図5(b)に示すように図4の網状の押し具7に代えて上部にも養殖・天然物を引き込み可能な搬送体6を備えたものとすることもできる。
【0035】
図4の出口側案内体26は図7に示す様にすることもできる。この出口側案内体26は縦案内体26bを樋状のシュータ26cの上に立設固定してある。この出口側案内体26は上端部に溝付きプーリー26eが取付けられており、その溝にベルト38を掛けてモータ等の駆動体からの動力により回転させることができるようにしてある。シュータ26cにはその底板を下方に折り曲げて回収口37(図7)を形成して、洗浄中に貝付きロープLから外れた貝類4がこの回収口37から自重で落下し、その下に配置してある回収篭に回収されるようにしてある。出口側案内体26、シュータ26cは筐体14の内側に取り付けることも外側に取り付けることもできる。外側に取り付ける場合は筐体14の出口35(図1(a))よりも外側に取り付けて、洗浄装置2を船上に搭載固定したときにシュータ26cの出口が海上に突出して、シュータ26cから送り出される貝付きロープLが海中に投入されるようにするのがよい。
【0036】
本願発明の漁業用回転体1は図1(a)のように筐体14の外に取り付けて、洗浄装置2を船に搭載したときに船の側面から海上に突出して、海中の貝付きロープLを引き上げ易くするのがよい。漁業用回転体1は筐体14に取り付けずに筐体14と別にして船の側壁に取り付けることもできる。いずれの場合も漁業用回転体1の回転速度は搬送体6の走行回転速度と同期させて、漁業用回転体1の回転により海中から引上げられる貝付きロープLが搬送体6の入口にスムースに送り込まれるようにしてある。ちなみに、漁業用回転体1と搬送体6との回転が同期せずに、漁業用回転体1の回転速度が搬送体6の走行回転速度よりも速過ぎると貝付きロープLの送り込み量が多くなって貝付きロープLが搬送体6の手前に溜って絡まり、逆に、漁業用回転体1の回転速度が搬送体6の走行回転速度よりも遅過ぎると、搬送体6による貝付きロープLの引込みが速くなり過ぎてロープが切れるおそれがある。搬送体6と漁業用回転体1とを同期回転させるためには共通の駆動源で回転させるようにすればよい。
【0037】
(使用例)
前記した実施形態の洗浄装置2を用いて吊下げ養殖用の貝付きロープLを洗浄するには例えば次の様にする。
1.本願発明の洗浄装置2を船舶に搭載して固定する。
2.貝付きロープLの上端部を海中から引き上げて漁業用回転体1の外周に掛ける。
3.漁業用回転体1の外周に掛けた貝付きロープLを筐体14の側面に開口された側面導入口33(図1)から搬送体6と押し具7との間の通路8(図6(a))に引き込んでセットする。
4.モータの駆動により漁業用回転体1、搬送体6、押し具7を同期回転させて、搬送体6と押し具7の間に挟まれている貝付きロープLを筐体14の出口35側に搬送する。
5.前記搬送中に、上下の洗浄具13から高圧洗浄液を噴射して貝付きロープLを上下から洗浄して、貝付きロープLの貝類4、吊下げロープ3に付着している雑物も除去する。
6.洗浄された貝付きロープLは筐体14の出口35から送り出され、出口側案内体26(図4)によりシュータ26cでガイドされて海中に投入される。
7.前記搬送中或は洗浄中に吊下げロープ3から外れた貝類4は、シュータ26cの底面に設けられた回収口37から落下してその下方に配置されている籠などの回収容器に回収さる。
8.洗浄により除去された付着物及び洗浄後の汚水は筐体14内に落下して自動的に回収され、筐体14の底の排水路15から筐体14の外部に排出され、図示されていないフィルターで濾過する等して処理される。
【0038】
前記使用例において、押し具7は搬送体6と押し具7との間の通路8を貝付きロープLが通過しないとき(通常時)とか、図6(a)のように、ほぼ同じ厚さの貝が押し具7の屈曲部40と通路8の出口35側との両方を同時に通過するときは、押し具7の下走行部22dは略水平になっているが、図6(b)に示すように通路8の間隔(上下の間隔)よりも厚い貝付きロープLが押し具7の屈曲部40の下を通過すると、屈曲部40が押し上げられて貝付きロープLは屈曲部40の下を円滑に通過する。貝付きロープLが押し具7の出口側に来ると図6(c)の様に出口側が押し上げられて貝付きロープLがその下を円滑に通過する。
【0039】
前記実施形態は養殖・天然物を海中から引き上げる場合に付いて説明したが洗浄済みの養殖・天然物を海中に投入する場合も利用できる。また、昆布とか他の海産物を海中から引き上げる場合も利用できる。本願発明の漁業用回転体は図8に示すようなドラム型の洗浄装置に組み込むこともできる。
【符号の説明】
【0040】
1 漁業用回転体
2 洗浄装置
3 吊下げロープ
4 貝類
5 係止ピン
6 搬送体
7 押し具
7a (押し具7の)駆動スプロケット
7b (押し具7の)前方従動スプロケット
7c (押し具7の)後方従動スプロケット
8 通路
9a (搬送体6の)駆動スプロケット
9b (搬送体6の)従動スプロケット
11 底面支持具
12a 前方従動軸
12b 後方従動軸
13 洗浄具
13a 給水パイプ
13b 分岐パイプ
14 筐体
15 排水路
16 胴体
17 鍔
18 空間
19 波状網
20 細長板
20a 波部
20b 上挿入孔
20c 下挿入孔
21 連結軸
22a (搬送体6の)網状走行体
22b (押し具7の)網状走行体
22c (網状走行体22aの)上走行部
22d (網状走行体22aの)下走行部
23 (搬送体6の)駆動軸
24 (搬送体6の)従動軸
25 走行体ガイド
26 出口側案内体
26a 横案内体
26b 縦案内体
26c シュータ
26d 回収受け具
26e 溝付きプーリー
30 側板
31 駆動軸
33 側面導入口
34 入口
35 出口
36 洗浄液飛散防止具
37 回収口
38 ベルト
39 押しローラ
40 屈曲部
F 櫛型押し具
L 貝付きロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に吊るしてある貝付きロープを胴体に掛けて引き上げる漁業用回転体において、
細幅の長板を波形に曲げて貝付きロープを係止可能とした波板、又はその波板を波の高さ方向に多数本連続させて貝付きロープを係止可能とした波状網を胴体表面に取り付けたことを特徴とする漁業用回転体。
【請求項2】
貝類が吊下げロープに係止された貝付きロープを海中から引き上げる回転体を備え、回転体の外周に掛けて引き上げた貝付きロープを洗浄可能な洗浄装置において、
回転体として請求項1記載の漁業用回転体を備えたことを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−87488(P2011−87488A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242164(P2009−242164)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(398000288)株式会社むつ家電特機 (17)
【Fターム(参考)】