説明

漁礁及びその製造方法

【課題】 生分解性樹脂を使用して使用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解させることができ海洋汚染を引き起こすことがないと共に、破壊強度が高く海流により容易に破壊されず、また比重が高く水中に安定して設置でき、さらに集魚効果が高く藻礁としても極めて優れた魚礁及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 砂40〜70wt%を平均粒径500μ以内に粉砕し、この微粉砕された砂を生分解性樹脂エマルジョンに浸漬した後乾燥して砂外周面に生分解性樹脂被膜を形成すると共に、この生分解性樹脂被膜を有する砂に生分解性樹脂ペレットを30〜60wt%混合して成型するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類の集魚・育成、藻の付着・育成に優れ、微生物の働きにより徐々に自然の土にもどる生分解性を有する漁礁及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平2003−116400公報には、プラスティックをバインダーとして木材の小片を所定の形状に成型した成形体であって、前記成形体の表面が海水にさらされるように海中に設置することを特徴とする人口漁礁部材が記載されている。
【0003】
そして、プラスティックと木材チップを混合し固化して漁礁部材を作るので、コンクリート中のアルカリ性の成分の溶出を抑えつつ、天然素材である木材チップの中に海水の染み込ませを行わせる。したがって海中において、海藻の配偶体や胞子が付着、生育しやすい漁礁が得られる。また海中において海水の流れが緩やかになる凹部やトンネルを設けたものでは、これら凹部やトンネルが稚魚の隠れ家となり魚類の繁殖に適している旨記載されている。
【0004】
しかしながら、この発明においては、人口漁礁部材が生分解性樹脂を使用していないので、使用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解させることができない。木材チップを使用しているので海中においては短期間で腐敗しコンクリート固形物として形状をとどめることが出来ないほど崩壊してしまう。また、木材チップでは充分な集魚効果や魚に充分な栄養を与えることが出来ない。
【0005】
また、特開平2005−23735公報には、生分解性プラスティック人工浮藻及び大型海藻種苗付浮藻を海底に沈設された人口漁礁などの構造物および小型浮き漁礁・延縄・中古漁網に固着させ、これを集積化・持続化によって、自然再生をめざした藻場造成に関する技術であって、人工浮藻は繋留施設からみれば、中層延縄式、底延縄式、立縄式、漁網固定式、浮沈延縄式、あと施工などに分類される生分解性プラスティック人工浮藻および大型海藻種苗付浮藻の集積化・持続化による藻場造成が記載されている。
【0006】
そして、人工海藻の多くはプラスティックシート又は合成ゴムを素材としているので使用中太陽光線による劣化や台風などによる損壊のため流出し、環境公害要因となる可能性があったが、生分解性プラスティック人工浮藻を用いているので、使用中は通常のプラスティックと同じ特性を持ちながら、用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される旨記載されている。
【0007】
しかしながら、この発明においける生分解性プラスティック人工浮藻および大型海藻種苗付浮藻の集積化・持続化による藻場造成はどうしても浮藻であるので、台風などの影響による流出が免れず海洋汚染の要因となる。また、この浮藻のみでは充分な集魚効果や魚に充分な栄養を与えることが出来ない。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生分解性樹脂を使用して使用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解させることができ海洋汚染を引き起こすことがないと共に、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度が高く海流により容易に破壊されず、また比重が高く水中に安定して設置でき、さらに集魚効果が高く藻礁としても極めて優れた魚礁を提供することを課題とする。
【課題を解決する手段】
【0009】
請求項1の発明は、平均粒径500μ以内の砂に生分解性樹脂ペレットをバインダーとして混合して得られた成形体であって、比重が1.5〜2.0、曲げ強度80〜110MPa、曲げ弾性率350〜420MPa(kgf/cm/38000)、アイゾット衝撃強度25〜34J/m(kgfcm/cm/2,59〜3,50)である漁礁を提供するものである。
【0010】
この発明においては、生分解性樹脂ペレットを使用して使用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解させることができ海洋汚染を引き起こすことがないと共に、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度が高く、高剛性と適度な軟性があり、かつ海流により容易に破壊されず、また比重が高く水中に安定して設置できる。
【0011】
上記砂の平均粒径が500μを超えると押出機のスクリュウに対する負荷で混練が良くできない、また吐出量と圧力に問題が発生し材料の流れが悪く成型が出来ない。好ましくは50μ以内であり、より好ましくは10μ以内である。
【0012】
請求項2の発明は、砂40〜70wt%を平均粒径500μ以内に粉砕し、この微粉砕された砂を生分解性樹脂エマルジョンに浸漬した後乾燥して砂外周面に生分解性樹脂被膜を形成すると共に、この生分解性樹脂被膜を有する砂に生分解性樹脂ペレットを30〜60wt%混合して成型するようにした漁礁の製造方法を提供するものである。
【0013】
この発明においては、生分解性樹脂ペレットを使用して使用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解させることができ海洋汚染を引き起こすことがなく、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度を高くすることができ高剛性と適度な軟性により海流により容易に破壊されず、また比重が高く水中に安定して設置できると共に、砂が40〜70wtの範囲であるので、押出機のスクリュウに対する負荷が解消でき、生分解性樹脂との混練が良好で成型性に優れた魚礁の製造方法を提供することができる。
【0014】
また、砂が70wt%を超えると砂は無機質であり、樹脂が30%未満となれば押出機のスクリュウに対する負荷が発生して混練が良くできない、また吐出量と圧力とに問題が発生し材料の流れが悪く成型が出来ない。砂が40wt%未満であると、比重が低減して水中での安定性が悪くなり、安価な砂の量が少なくなるので製造価格が高くつく。また、生分解性樹脂ペレットが60wt%を超えると、成型はスムーズであるが比重が低減して水中での安定性が悪くなり、安価な砂の量が少なくなるので製造価格が高くつく。即ち、如何に安価な砂とのブレンド成型が出来るかである。生分解性樹脂ペレットが30wt%未満であると製品成型過程で砂との混練がうまくできず不成型となる。
【0015】
請求項2の発明は、前記成型体面に焼酎廃液から抽出されたアミノ酸を塗布した請求項1及び2記載の魚礁及びその製造方法を提供するものである。
【0016】
この発明においては、魚礁の表面で焼酎廃液から抽出されたアミノ酸を徐々に溶出することにより、焼酎廃液独特の臭いと栄養成分により集魚効果が高く、さらに藻礁の付着及び育成に極めて優れた効果を発揮する魚礁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の漁礁及びその製造方法の一実施形態を説明する。図1はブロック状の魚礁、図2は内部に空洞を有する魚礁(例えば、蛸壺等)である。
【0018】
砂を第1表に示す平均粒径となるように粉砕し、この微粉砕された砂を生分解性樹脂エマルジョンと混合攪拌してポリ乳酸のエマルジョンに浸漬した。浸漬後、低温にてポリマー乾燥機で約2時間乾燥させ、砂外周面にポリ乳酸エマルジョンの被膜を形成した。その後このポリ乳酸のエマルジョンの被膜を有する砂に生分解性樹脂ペレットであるポリ乳酸ペレットを第1表の割合で混合して押し出し成型した。得られた各試料について、各試料の比重、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度を測定して第1表に示す。
【0019】
比重は通常の比重測定方法、曲げ強度はポリ乳酸試験方法:ASTM D−790、曲げ弾性率はポリ乳酸試験方法:ASTM D−790、アイゾット衝撃強度はポリ乳酸試験方法:ASTM D−256により測定した。これらの測定結果による各試料の評価を第2表に示す。
【0020】

【0021】

【0022】
第1表及び第2表から理解されるように、砂の平均粒径が500μを超える試料番号1、砂の混合率が70wt%を超える試料番号7、ポリ乳酸ペレットの混合率が30wt%未満の試料番号8、ポリ乳酸エマルジョンに粉砕した砂を浸漬しなかった試料番号5a、6aのものは何れも成型が不可能であった。また、砂の混合率が40wt%未満の試料番号4、ポリ乳酸ペレットの混合率が70wt%を超える試料番号12のものは比重が1.5以下と軽くなった。
【0023】
尚、比重が1.5未満であると水中での安定性が保てない。曲げ強度が80MPa未満、曲げ弾性率350MPa未満、アイゾット衝撃強度が25J/m未満では海流などの水圧により魚礁としての成型体が容易に崩壊する。また、曲げ強度が110MPa、曲げ弾性率350MPa、アイゾット衝撃強度が25J/mを超えるのことは、砂と生分解性樹脂ではそれ以上の強度を期待することが出来ない。
【0024】
さらに、成型性が良好であった試料番号について、図1のブロック体表面及び図2の空洞を有するブロック体の空洞内面に焼酎廃液から抽出されたアミノ酸を塗布し、それぞれ5基ずつ海に沈めて45日〜90日間放置した。それらの結果、図1及び図2の何れのブロックも藻の付着が多く、魚介類の集魚効果が極めて良好であったことが確認されている。
【0025】
生分解性樹脂エマルジョンとしては、ポリ乳酸のほかは水中での分解をしないが、成型が可能であれば澱粉が使用できる。また、生分解性樹脂ペレットとしては、ポリ乳酸のほかは水中での分解をしないが、成型が可能であれば澱粉が使用できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、生分解性樹脂ペレットを使用して使用後微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解させることができ海洋汚染を引き起こすことがないと共に、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度が高く、海流により容易に破壊されず、また比重が高く水中に安定して設置できる。また、砂が40〜70wtの範囲であるので、押出機のスクリュウに対する負荷が解消でき、生分解性樹脂との混練も良好で成型性に優れている。さらに、魚礁の表面において焼酎廃液から抽出されたアミノ酸を徐々に溶出することにより、焼酎廃液独特の臭いと栄養成分により集魚効果が高く、さらに藻礁の付着及び育成に極めて優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ブロック状の魚礁の斜視図、
【図2】内部に空洞を有する魚礁の斜視図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径500μ以内の砂に生分解性樹脂ペレットをバインダーとして混合して得られた成形体であって、比重が1.5〜2.0、曲げ強度80〜110MPa、曲げ弾性率350〜420MPa(kgf/cm/38000)、アイゾット衝撃強度25〜34J/m(kgfcm/cm/2,59〜3,50)である漁礁。
【請求項2】
砂40〜70wt%を平均粒径500μ以内に粉砕し、この微粉砕された砂を生分解性樹脂エマルジョンに浸漬した後乾燥して砂外周面に生分解性樹脂被膜を形成すると共に、この生分解性樹脂被膜を有する砂に生分解性樹脂ペレットを30〜60wt%混合して成型するようにした漁礁の製造方法。
【請求項3】
前記成型体面に焼酎廃液から抽出されたアミノ酸を塗布した請求項1及び2記載の魚礁及びその製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−295441(P2008−295441A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169733(P2007−169733)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(507216054)
【出願人】(507216065)
【Fターム(参考)】