説明

漁礁形成具並びに漁礁形成方法

【課題】どこでも簡単に設置することができる漁礁形成具、並びにこのような漁礁形成具を用いた漁礁形成方法を提供する。
【解決手段】漁礁形成具1は、プラスチック製の浮体2と、材木集合体3とを備える。材木集合体3は、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の材木3Aが、わら縄4で結束されて構成されたものである。材木3Aには、複数の切れ目3Bが形成されている。漁礁形成具1は、材木3Aの水分通導管に対して略平行方向に且つ材木3Aに囲まれた空間に通されると共に、両端に開口部が形成され、材木3Aの水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有する竹筒7を備える。漁礁形成具1は、竹筒7の内部に通されると共に、一端が浮体2に取付けられ、さらに材木集合体3の長さよりも長い針金5を備える。漁礁形成具1は、針金5の他端に取付けられた錘6と、プレート部材8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漁礁形成具並びに漁礁形成方法に関する。詳しくは、例えば海底に沈下させて漁礁を形成するための、漁礁形成具並びに漁礁形成方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
沿岸海域は、内陸部における広葉樹林の減少と人工林の荒廃の影響を大きく受け、さらには、埋立て、工業排水および生活排水によって汚染されているので、漁業資源が壊滅的打撃を受けている。
【0003】
このような漁業資源の打撃に対処するため、コンクリートブロックの人工漁礁を海中に設置して、魚類の生育場所と隠れ場を形成することが行なわれている。しかし、このような人工漁礁は、海中に栄養分を供給する機能を有していない。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、図5に示されるようなハイブリッド漁礁110が記載されている。すなわち、ハイブリッド漁礁110は、孔部111Aが貫通して形成されたコンクリート製の底盤111と、底盤111上の孔部111Aの角部近傍に立設された鋼製の柱材112と、柱材112の上端部を連結する横桁材113と、鋼材(114、115、116)によって形成された各棚部上に横置状として並置固定された間伐材118とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3092961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたハイブリッド漁礁は、コンクリート製の底盤を備えているので、設置場所がある程度平らな場所に限定されてしまい、しかも、間伐材の交換時にハイブリッド漁礁を吊り上げて回収する為の大掛かりな装置が必要であった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、どこでも簡単に設置することができる漁礁形成具、並びにこのような漁礁形成具を用いた漁礁形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の漁礁形成具は、浮体と、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、前記植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ前記植物に囲まれた空間に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える。
【0009】
また、上記の目的を達成するために、本発明の漁礁形成具は、浮体と、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、前記植物の水分通導管に対して略平行方向に前記植物集合体に取付けられると共に、両端に開口部が形成され、前記植物の水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有する植物円筒体と、該植物円筒体の内部に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、前記植物円筒体の断面積よりも小さい断面積を有し、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える。
【0010】
ここで、植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ植物に囲まれた空間に通されると共に、一端が浮体に取付けられ、さらに水分通導管の方向において植物集合体の長さよりも長い線状部材と、線状部材の他端に取付けられた錘とによって、錘が水中に沈み、錘に引っ張られる形で植物に囲まれた空間に通された線状部材が鉛直方向に延びるようになる。
【0011】
その結果、植物集合体の水分通導管は水面に対して略垂直になり、言い換えれば水中で植物が立った状態になり、よって植物に加わる上下の水圧差と植物の中の空気の浮力によって、植物の水分通導管に下から水が浸入し、空気が上方から追い出され、植物が水より重くなって、植物集合体は沈む。
【0012】
また、植物円筒体が、植物の水分通導管に対して略平行方向に植物集合体に取付けられる場合、植物円筒体が植物に囲まれた空間に通される場合よりも、束ねられた植物集合体に後から植物円筒体を取付けることができるので、漁礁形成具を製作しやすい。
【0013】
また、本発明の漁礁形成具は、植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ植物に囲まれた空間に通されると共に、両端に開口部が形成され、植物の水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有し、さらに線状部材の断面積よりも大きい断面積を有する植物円筒体を備え、線状部材は、植物円筒体の内部に通されたこととすることができる。
【0014】
この場合、線状部材の断面積よりも植物円筒体の断面積の方が大きく、しかも円筒形であるので、線状部材が植物円筒体の内部において引っ掛かりにくくなる。
【0015】
また、本発明の漁礁形成具は、線状部材のうち、浮体と植物集合体との間の領域および植物集合体と錘との間の領域にそれぞれ固定されると共に、水分導通管に対して略垂直方向において、植物に囲まれた空間の長さよりも長いプレート部材を備えることとすることもできる。
【0016】
この場合、植物集合体が沈み始めると、浮体と植物集合体との間の領域に固定されたプレート部材との距離が拡がり、また、植物集合体と錘との間の領域に固定されたプレート部材との距離が縮まるので、植物集合体が沈み始めたかどうかを確認しやすくなる。
【0017】
また、この場合、水分導通管に対して略垂直方向において、植物に囲まれた空間の長さよりも長いので、プレート部材と浮体との間の線状部材を切断し、浮体から切り離して植物集合体を海底に沈める場合には、プレート部材が植物集合体に引っ掛かり、線状部材が植物集合体から抜け難くなる。
【0018】
また、本発明の漁礁形成具において、植物円筒体の半径方向における錘の長さは、植物円筒体の直径よりも短いこととすることができる。
【0019】
この場合、植物集合体の植物中の空気が抜けて植物集合体が沈んでも、錘は植物円筒体の内部を通るので、植物集合体と共に沈むことはなく、その後の錘の回収の手間を省くことができる。
【0020】
また、本発明の漁礁形成具において、浮体から離れた植物の端部は、浮体に近い植物の端部よりも植物の根に近い箇所であることとすることができる。
【0021】
この場合、植物は、根から茎を通って枝先へ水が流れるように構成されており、さらに、浮体から離れた植物の端部は、浮体に近い植物の端部よりも海中深くに位置して大きな水圧を受けるので、水が植物中を通りやすくなり、それによって植物中の空気も抜けやすくなる。
【0022】
また、本発明の漁礁形成具において、結束体および線状部材は、それぞれ鉄製であることとすることができる。
この場合、鉄から鉄イオンが放出され、鉄を栄養分とする微生物を繁殖させることができ、よって、微生物を餌とする魚を引きつけることができる。
【0023】
また、本発明の漁礁形成具において、結束体および線状部材は、それぞれ植物繊維で構成されたこととすることができる。
この場合、微生物を繁殖させやすく、よって、魚が好んで寄ってくる。また、この場合、鉄製の結束体や鉄製の線状部材に比べて分解が速い。
【0024】
また、本発明の漁礁形成具において、植物の両端は、植物の水分通導管に対して略垂直方向に切断加工されたこととすることができる。
【0025】
この場合、植物の両端が開放口になり、この開放口が空気の出口になるので、植物中の空気が抜けやすくなる。
【0026】
また、本発明の漁礁形成具において、植物は、複数の切れ目を有することとすることができる。
【0027】
この場合、切れ目によって、植物の水分通導管を切断することになり、チップ状にする効果と同等の効果が得られる。
また、切れ目によって、植物を断片状にすることができると共に、水分通導管を縦方向に制御できる。
また、切れ目によって、植物の浮力消滅までの時間を著しく短縮できる。
【0028】
また、上記の目的を達成するために、本発明の漁礁形成方法は、浮体と、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、前記植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ前記植物に囲まれた空間に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える漁礁形成具を水に浮かせる工程と、水に浮かんだ前記漁礁形成具の前記植物集合体が、浮かび始めの前記植物集合体の位置から沈んだか確認する工程と、前記植物集合体が沈んだことを確認した場合に、前記植物集合体を前記浮体から分離して水底へ沈める工程とを備える。
【0029】
また、上記の目的を達成するために、本発明の漁礁形成方法は、浮体と、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、前記植物の水分通導管に対して略平行方向に前記植物集合体に取付けられると共に、両端に開口部が形成され、前記植物の水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有し、さらに前記線状部材の断面積よりも大きい断面積を有する植物円筒体と、該植物円筒体の内部に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える漁礁形成具を水に浮かせる工程と、水に浮かんだ前記漁礁形成具の前記植物集合体が、浮かび始めの前記植物集合体の位置から沈んだか確認する工程と、前記植物集合体が沈んだことを確認した場合に、前記植物集合体を前記浮体から分離して水底へ沈める工程とを備える。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る漁礁形成具は、どこでも簡単に設置することができる。
本発明に係る漁礁形成方法は、どこでも簡単に漁礁形成具を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の漁礁形成具の第一の実施態様を示す概略図である。
【図2】本発明の漁礁形成具の材木集合体を浮体側から見た様子を示す概略図である。
【図3】本発明の漁礁形成具の第二の実施態様を示す概略図である。
【図4】本発明の漁礁形成具を海底に設置する様子を説明するための概略図である。
【図5】従来のハイブリッド漁礁を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明の漁礁形成具の第一の実施態様を示す概略図である。また、図2は、本発明の漁礁形成具の材木集合体を浮体側から見た様子を示す概略図である。
【0033】
本発明の漁礁形成具1は、例えばプラスチック製の浮体2を備える。
【0034】
また、本発明の漁礁形成具1は、材木集合体(植物集合体の一例である。)3を備える。ここで、材木集合体3は、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の材木(植物の一例である。)3Aが、わら縄(結束体の一例である。)4で結束されて構成されたものである。
【0035】
また、材木3Aには、複数の切れ目3Bが形成されている。
材木3Aとしては、例えば、杉の間伐材や檜の間伐材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、結束体として、わら縄を挙げているが、その他にも例えば、わら縄で編んだ網、麻縄、もしくは麻縄で編んだ網で、複数の材木を結束してもよい。
【0037】
また、本発明の漁礁形成具1は、材木3Aの水分通導管に対して略平行方向に且つ材木3Aに囲まれた空間に通されると共に、両端に開口部が形成され、材木3Aの水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有する竹筒(植物円筒体の一例である。)7を備える。
【0038】
また、図2に示されるように、竹筒7の周囲に、材木3Aが配置され、わら縄4で結束される。
また、図2から判るように、材木3Aの端部は、水分通導管に対して略垂直方向に切断加工されており、年輪が表れている。また、図示されていないが、材木3Aの反対側の端部も同様に切断加工されており、年輪が表れている。
【0039】
また、浮体2から離れた材木3Aの端部は、浮体2に近い材木3Aの端部よりも材木の根に近い箇所である。
【0040】
また、本発明の漁礁形成具1は、竹筒7の内部に通されると共に、一端が浮体2に取付けられ、竹筒7の断面積よりも小さい断面積を有し、さらに水分通導管の方向において材木集合体3の長さ(例えば約2m)よりも長い(例えば約3〜3.5m)針金(線状部材の一例である。)5を備える。
【0041】
また、本発明の漁礁形成具1は、針金5の他端に取付けられた錘6を備える。錘6の質量は、例えば50〜100kgである。
また、竹筒7の半径方向における錘6の長さは、竹筒7の直径よりも長いが、竹筒7の直径よりも短いこととしてもよい。
【0042】
また、本発明の漁礁形成具1は、針金5のうち、浮体2と材木集合体3との間の領域および材木集合体3と錘6との間の領域にそれぞれ固定されると共に、水分導通管に対して略垂直方向において、材木3Aに囲まれた空間の長さよりも長い、すなわち竹筒7の直径よりも長いプレート部材8を備える。
また、プレート部材8は鉄製である。
【0043】
ここで、線状部材が、植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ植物に囲まれた空間に通されるのであれば、線状部材は、必ずしも植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ植物に囲まれた空間に通された植物円筒体に通されなくてもよい。
【0044】
しかし、線状部材を、植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ植物に囲まれた空間に通す場合よりも、植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ植物に囲まれた空間に通された植物円筒体に通す方が、線状部材と植物集合体が互いに引っ掛かりにくくなり、円滑に植物集合体が線状部材に沿って沈むことができるので好ましい。
【0045】
また、浮体2は必ずしも1つでなくてもよく、本発明の漁礁形成具1は、複数の浮体を備えることもできる。
【0046】
また、植物集合体が、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成されていれば、植物には、枝葉が付いていてもよい。
【0047】
また、植物集合体を結束できるのであれば、結束体は必ずしも、わら縄でなくてもよく、例えば、結束体として針金を用いてもよいし、また、わら縄と針金を併用してもよい。
【0048】
また、線状部材が、植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ植物に囲まれた空間に通され、一端が浮体に取付けられ、さらに水分通導管の方向において植物集合体の長さよりも長いのであれば、必ずしも針金でなくてもよく、例えば、麻紐などの天然繊維製の紐であってもよい。
【0049】
また、植物円筒体として、竹筒を用いているが、必ずしも竹筒でなくてもよく、杉などの材木の内部を空洞にして得られた円筒体を用いてもよい。
【0050】
また、植物集合体が、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成されていれば、必ずしも浮体から離れた植物の端部は、浮体に近い植物の端部よりも植物の根に近い箇所でなくてもよい。
【0051】
しかし、浮体から離れた植物の端部は、浮体に近い植物の端部よりも植物の根に近い箇所であれば、植物は、根から茎(幹)を通って枝先へ水が流れるように構成されており、さらに、浮体から離れた植物の端部は、浮体に近い植物の端部よりも海中深くに位置して大きな水圧を受けるので、水が植物中を通りやすくなり、それによって植物中の空気も抜けやすくなって好ましい。
【0052】
また、植物集合体が、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成されていれば、必ずしも植物の両端は、植物の水分通導管に対して略垂直方向に切断加工されていなくてもよい。
【0053】
しかし、植物の両端が、植物の水分通導管に対して略垂直方向に切断加工されていれば、植物の両端が開放口になり、この開放口が空気の出口になるので、植物中の空気が抜けやすくなり、好ましい。
【0054】
また、必ずしも材木に切れ目が形成されていなくてもよい。
しかし、材木に切れ目が形成されていれば、水分通導管(例えば、道管や仮道管)を切断して、材木をチップ状にする効果と同等の効果が得られるので好ましい。
【0055】
また、材木に切れ目が形成されていれば、材木を断片状にすることができると共に、水分通導管(例えば、道管や仮道管)を全て縦方向に制御できるので好ましい。
また、材木に切れ目が形成されていれば、材木の浮力消滅までの時間を著しく短縮できるので好ましい。
【0056】
図3は、本発明の漁礁形成具の第二の実施態様を示す概略図である。
図3に示された本発明の漁礁形成具の第二の実施態様において、竹筒7は、材木3Aに囲まれた空間に通されるのではなく、材木集合体3の外側に取付けられている。
【0057】
また、本発明の漁礁形成具の第二の実施態様において、プレート部材8は、針金5のうち、浮体2と竹筒3との間の領域および竹筒7と錘6との間の領域にそれぞれ固定されると共に、竹筒の水分導通管に対して略垂直方向において、竹筒7の直径よりも長い。
その他の点は図1に示された本発明の漁礁形成具の第一の実施態様と同じである。
【0058】
図4は、本発明の漁礁形成具を海底に設置する様子を説明するための概略図である。図4を用いて本発明の漁礁形成具を用いた漁礁形成方法を説明する。
【0059】
海水9に投入された本発明の漁礁形成具1は、図4(a)に示されるように、浮体2によって海水9において浮く。また、一端に浮体2が取付けられた針金5の他端には、錘6が取付けられているので、錘6が水中に沈み、錘6に引っ張られる形で材木集合体3に通された針金5が鉛直方向に延びる。
【0060】
また、図4(a)に示されるように、海水9に投入されて間もないときは、材木集合体3の材木中に空気が多く存在しているので、材木3Aは海水9よりも軽く、従って材木集合体3は、浮体2近くのプレート部材8に接する位置にある。
【0061】
次に、浮かび始めから3〜21日程度経過した後、浮かび始めの位置から材木集合体3が沈んだかを確認する。
【0062】
そして、材木集合体3の材木中の空気が抜けて、図4(b)に示されるように、材木集合体3が錘6近くのプレートへ沈んだことが確認された場合に、図4(c)に示されるように、針金5を切断して、錘6、針金5およびプレート部材8と共に、材木集合体3を浮体2から分離し、海底10に沈める。
【0063】
図4を用いて、材木集合体3と共に錘6、針金5およびプレート部材8も沈めた例を説明したが、材木集合体3を浮体2から分離することができれば、針金5を切断する必要はない。
【0064】
例えば、錘6近くのプレート部材8を省略すると共に、竹筒7の半径方向における錘6の長さを竹筒7の直径よりも短くすれば、材木集合体3の材木中の空気が抜けて材木集合体3が沈んでも、錘6は竹筒7の内部を通るので、材木集合体3だけを浮体2から分離することができる。
【0065】
また、本発明の漁礁形成具1を複数個連結し、漁礁の形成予定場所まで、漁船が複数の漁礁形成具1を曳航すると、曳航中に、単に漁礁形成具1を浮かばせた場合よりも早く材木集合体3の材木中の空気が抜け、漁船が漁礁の形成予定場所に到着したときに、すぐに材木集合体3を浮体2から分離して海底10に沈めることができる。
空気の抜けが早くなる理由としては、曳航中の水流などが影響しているからだと考えられる。
【0066】
以上のように、本発明の漁礁形成具は、材木の水分通導管に対して略平行方向に且つ材木に囲まれた空間に通される(すなわち、材木に囲まれた空間に通された竹筒に通される)と共に、一端が浮体に取付けられ、さらに水分通導管の方向において材木集合体の長さよりも長い針金と、針金の他端に取付けられた錘とを備えるので、錘が水中に沈み、錘に引っ張られる形で材木に囲まれた空間に通された針金が鉛直方向に延びるようになる。
【0067】
その結果、材木集合体の水分通導管は水面に対して略垂直になり、言い換えれば水中で材木が立った状態になり、よって材木に加わる上下の水圧差(例えば直径10cm、長さ3mの材木の場合、23kg)と材木の中の空気の浮力によって、材木の水分通導管に下から水が浸入し、空気が上方から追い出され、材木が水より重くなって、材木集合体は沈む。
【0068】
よって、漁礁を形成したい場所付近に、本発明の漁礁形成具を浮かばせておくだけで、材木集合体が沈み始め、材木集合体を浮体から分離させて海底に沈めるだけで、どのような形状の海底でも簡単に漁礁を設置できる。
【0069】
特に、竹筒の半径方向における錘の長さを、竹筒の直径よりも短くすれば、材木集合体の材木中の空気が抜けて材木集合体が沈んでも、錘は竹筒の内部を通るので、材木集合体だけを浮体から分離して海底に沈めることができ、本発明の漁礁形成具を浮かばせておくだけで漁礁を設置できる。
また、錘が材木集合体と共に沈むことはなく、その後の錘の回収の手間を省くことができる。
【0070】
また、材木を結束する「わら縄」は、植物繊維で構成されており、微生物を繁殖させやすく、よって、魚が好んで寄ってくる。
【0071】
また、針金も材木集合体と一緒に海底に沈められ、漁礁の一部となるが、針金の鉄から鉄イオンが放出され、鉄を栄養分とする微生物を繁殖させることができ、よって、微生物を餌とする魚を引きつけることができる。
【0072】
また、プレート部材は、針金のうち、浮体と材木集合体との間の領域および材木集合体と錘との間の領域にそれぞれ固定されているので、材木集合体が沈み始めると、浮体と材木集合体との間の領域に固定されたプレート部材との距離が拡がり、材木集合体と錘との間の領域に固定されたプレート部材との距離が縮まる。よって、材木集合体が沈み始めたかどうかを確認しやすい。
【0073】
また、プレート部材は、水分導通管に対して略垂直方向において、竹筒の直径よりも長いので、プレート部材が竹筒に引っ掛かり、針金が竹筒さらには材木集合体から抜け難い。
【0074】
また、浮体から離れた材木の端部は、浮体に近い材木の端部よりも材木の根に近い箇所であるから、材木は、根から幹を通って枝先へ水が流れるように構成されており、さらに、浮体から離れた材木の端部は、浮体に近い材木の端部よりも海中深くに位置して大きな水圧を受けるので、水が材木中を通りやすくなり、それによって材木中の空気も抜けやすい。
【0075】
さらに、材木の両端部は、水分通導管に対して略垂直方向に切断加工されているので、材木の両端が開放口になり、この開放口が空気の出口になるので、材木中の空気が抜けやすい。
【0076】
また、材木には、切れ目が形成されているので、水分通導管(例えば、道管や仮道管)が切断されて、材木をチップ状にする効果と同等の効果が得られる。
また、材木に切れ目が形成されているので、材木を断片状にすることができると共に、水分通導管(例えば、道管や仮道管)を全て縦方向に制御できる。
また、材木に切れ目が形成されているので、材木の浮力消滅までの時間を著しく短縮できる。
【符号の説明】
【0077】
1 漁礁形成具
2 浮体
3 材木集合体
3A 材木
3B 切れ目
4 わら縄
5 針金
6 錘
7 竹筒
8 プレート部材
9 海水
10 海底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体と、
互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、
前記植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ前記植物に囲まれた空間に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、
該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える
漁礁形成具。
【請求項2】
前記植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ前記植物に囲まれた空間に通されると共に、両端に開口部が形成され、前記植物の水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有し、さらに前記線状部材の断面積よりも大きい断面積を有する植物円筒体を備え、
前記線状部材は、該植物円筒体の内部に通された
請求項1に記載の漁礁形成具。
【請求項3】
前記線状部材のうち、前記浮体と前記植物集合体との間の領域および前記植物集合体と前記錘との間の領域にそれぞれ固定されると共に、前記水分導通管に対して略垂直方向において、前記植物に囲まれた空間の長さよりも長いプレート部材を備える
請求項1または請求項2に記載の漁礁形成具。
【請求項4】
浮体と、
互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、
前記植物の水分通導管に対して略平行方向に前記植物集合体に取付けられると共に、両端に開口部が形成され、前記植物の水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有する植物円筒体と、
該植物円筒体の内部に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、前記植物円筒体の断面積よりも小さい断面積を有し、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、
該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える
漁礁形成具。
【請求項5】
前記植物円筒体の半径方向における前記錘の長さは、前記植物円筒体の直径よりも短い
請求項2または4に記載の漁礁形成具。
【請求項6】
前記浮体から離れた前記植物の端部は、前記浮体に近い前記植物の端部よりも植物の根に近い箇所である
請求項1〜5のいずれか1つに記載の漁礁形成具。
【請求項7】
前記結束体および前記線状部材は、それぞれ鉄製である
請求項1〜6のいずれか1つに記載の漁礁形成具。
【請求項8】
前記結束体および前記線状部材は、それぞれ植物繊維で構成された
請求項1〜6のいずれか1つに記載の漁礁形成具。
【請求項9】
前記植物の両端は、前記植物の水分通導管に対して略垂直方向に切断加工された
請求項1〜8のいずれか1つに記載の漁礁形成具。
【請求項10】
前記植物は、複数の切れ目を有する
請求項1〜9のいずれか1つに記載の漁礁形成具。
【請求項11】
浮体と、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、前記植物の水分通導管に対して略平行方向に且つ前記植物に囲まれた空間に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える漁礁形成具を水に浮かせる工程と、
水に浮かんだ前記漁礁形成具の前記植物集合体が、浮かび始めの前記植物集合体の位置から沈んだか確認する工程と、
前記植物集合体が沈んだことを確認した場合に、前記植物集合体を前記浮体から分離して水底へ沈める工程とを備える
漁礁形成方法。
【請求項12】
浮体と、互いに水分通導管が略平行に位置するよう並べられた複数の植物が結束体で結束されて構成された植物集合体と、前記植物の水分通導管に対して略平行方向に前記植物集合体に取付けられると共に、両端に開口部が形成され、前記植物の水分通導管に対して略平行に位置する水分通導管を有し、さらに前記線状部材の断面積よりも大きい断面積を有する植物円筒体と、該植物円筒体の内部に通されると共に、一端が前記浮体に取付けられ、さらに前記水分通導管の方向において前記植物集合体の長さよりも長い線状部材と、該線状部材の他端に取付けられた錘とを備える漁礁形成具を水に浮かせる工程と、
水に浮かんだ前記漁礁形成具の前記植物集合体が、浮かび始めの前記植物集合体の位置から沈んだか確認する工程と、
前記植物集合体が沈んだことを確認した場合に、前記植物集合体を前記浮体から分離して水底へ沈める工程とを備える
漁礁形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70(P2012−70A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139442(P2010−139442)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【特許番号】特許第4614375号(P4614375)
【特許公報発行日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(304049248)株式会社 宮田エンジニアリング (10)
【Fターム(参考)】